説明

血中コレステロール低下粉末素材、及び該血中コレステロール低下粉末素材を含む食品又は哺乳動物用飼料

【課題】血中のLDLコレステロール濃度、及び/又は、LDL/HDLコレステロール濃度比を低下させることができる、脱脂大豆由来の血中コレステロール低下粉末素材並びにそれを含む食品又は哺乳動物用飼料を提供すること。
【解決手段】本発明の血中コレステロール低下粉末素材は、脱脂大豆を原料として、組織化処理することにより得られる。本発明の食品又は哺乳動物用飼料は、かかる血中コレステロール低下粉末素材を含むので、その摂取により血中のLDLコレステロール等の低下作用が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱脂大豆由来の血中コレステロール低下粉末素材、及び該血中コレステロール低下粉末素材を含む食品又は哺乳動物用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆は栄養価に優れ、特に、蛋白質と脂質とを多く含むことから、様々な食品に利用されている。例えば、納豆や豆腐のような日本の伝統的加工食品としての用途だけでなく、大豆飲料等の飲料としての用途にも用いられ、その利用分野は拡大している。こうした背景には、蛋白質や脂質のような主要成分のみならず、イソフラボン、サポニン、レシチン等の微量成分が有する種々の生理活性効果が寄与していると考えられる。
【0003】
一方、近年生活習慣病のひとつであるメタボリックシンドロームが話題として多く取り上げられており、原因となる中性脂肪やLDLコレステロールの過剰摂取が問題視されている。そのため、LDLコレステロール等を低下させることで、かかる生活習慣病を予防するという観点から、一般食品に健康機能性を持たせる試みが種々、なされている。具体的には、特定保健用食品や栄養機能食品といった保健機能食品としての許認可が挙げられ、大豆の成分を関与成分とするものも存在する(「大豆からあげ」不二製油株式会社:許可番号176)。
【0004】
また、大豆蛋白のLDLコレステロール低下に関する研究も多くなされており(非特許文献1、非特許文献2参照)、大豆蛋白を中心としたLDLコレステロールの低下効果が解明されてきている。例えば、大豆蛋白の11Sグロブリンに着目したもの(特許文献1)、7S蛋白に着目したもの(特許文献2)、これら双方又は加水分解物を用いたもの(特許文献3)等が開示されている。
【0005】
また、大豆蛋白以外では、豆類に麹菌を接種することで得られたイソフラボンのアグリコン等に痩身作用があることが開示されている(特許文献4)。更に、繊維質にはLDLコレステロール低下作用があること(非特許文献3)から、繊維質とイソフラボンと大豆蛋白とを含有する乾燥オカラ(特許文献5)が提案されている。その他、大豆食物繊維を超高圧処理する方法(特許文献6)についても提案されている。
【0006】
しかし、上記のいずれの場合も本発明のように脱脂大豆に対して組織化処理を施す試みはなされていなかった。例えば、エクストルーダー処理したオカラ粉末を用いたパンの製造方法(特許文献7)では、オカラの食物繊維の機能については述べられているが、大豆蛋白を含む脱脂大豆の組織化に関しては述べられていない。特許文献8では、大豆胚芽をエクストルージョンクッキングする例が報告されているが、これは風味の改善や効率のよい加圧加熱処理を行う試みであって、LDLコレステロールの低下を主目的とするものではなく、また、脱脂大豆の組織化に関しては一切述べられていない。
【特許文献1】特開2002−114694号公報
【特許文献2】国際公開第04/009107号パンフレット
【特許文献3】特開2005−213233号公報
【特許文献4】国際公開第97/37549号パンフレット
【特許文献5】特開2004−147532号公報
【特許文献6】特開平2−49555号公報
【特許文献7】特公平7−63326号公報
【特許文献8】特開昭64−34273号公報
【非特許文献1】菅野道廣 ダイズタンパク質とコレステロール低下 59−68食品工業 9.30 1996
【非特許文献2】大豆たん白のコレステロール低下作用 69−74 ジャパンフードサイエンス 2000(7)
【非特許文献3】吉川ら キトサン含有即席麺によるLDL−コレステロール低下作用と食事療法への応用 27−36 健康・栄養食品研究 Vol.2 No.1 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、血中のLDLコレステロール濃度、及び/又は、LDL/HDLコレステロール濃度比を低下させることができる、脱脂大豆由来の血中コレステロール低下粉末素材並びに該血中コレステロール低下粉末素材を含む食品又は哺乳動物用飼料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、脱脂大豆を組織化処理することで得られた粉末素材が、従来の大豆素材に比して、血中のLDLコレステロール濃度、及び/又は、LDL/HDLコレステロール濃度の比を低下させる作用に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
請求項1記載の血中コレステロール低下粉末素材は、脱脂大豆を原料として、組織化処理することにより得られることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の血中コレステロール低下粉末素材では、水溶性窒素指数(NSI)が50以下であることが好ましい。
【0011】
請求項3記載の血中コレステロール低下粉末素材では、保水率が300〜500%であることが好ましい。
【0012】
請求項4記載の血中コレステロール低下粉末素材では、粒度が200メッシュパス(目開き75μm)95%以上であることが好ましい。
【0013】
請求項5記載の血中コレステロール低下粉末素材では、血中のLDLコレステロール濃度、及び/又は、LDL/HDLコレステロール濃度の比を低減させることが好ましい。
【0014】
請求項6記載の食品又は哺乳動物用飼料は、上記の血中コレステロール低下粉末素材を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、脱脂大豆に組織化処理を施したので、従来の大豆素材に比して血中のLDLコレステロールやLDL/HDLコレステロール濃度の比を飛躍的に低下させることができる。また、本発明の食品又は哺乳動物用飼料は、かかる血中コレステロール低下粉末素材を含むので、その摂取により血中のLDLコレステロール等の低下作用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の構成について具体的に説明する。
【0017】
本発明の血中コレステロール低下粉末素材は、脱脂大豆を原料として、組織化処理することにより得られることを特徴とする。
【0018】
本発明の血中コレステロール低下粉末素材では、コレステロール低下作用を高めるために、原料として脱脂大豆を用い、かかる脱脂大豆に組織化処理を施す。
【0019】
本発明の血中コレステロール低下粉末素材は、原料として脱脂大豆を用いる。脱脂大豆とは、大豆を脱脂して製造されるものである。大豆を脱脂する方法は特に問わず、例えば、大豆に圧力をかけて搾油する圧搾法やn−へキサン等の溶媒を用いて大豆から油を抽出する溶媒抽出法等が挙げられる。脱脂大豆の原料には、市場に流通している乾燥した大豆を使用することができる。例えば、エンレイ、リュウホウ、トヨホマレ、ミヤギシロメ等の国産大豆、及びIOM等の外国産大豆のいずれも用いることができ、遺伝子組み換えであるか、非遺伝子組み換えであるかも問わない。なお、本発明では、脱脂大豆は市販品を使用することもできる。脱脂大豆の市販品としては、例えば、昭和産業株式会社製の商品「ソーヤフレークS」が挙げられる。また、脱脂大豆は、低変性脱脂大豆と高変性脱脂大豆とのいずれであってもよく、特に限定されない。なお、脱脂していない全脂大豆を原料として用いることもできるが、全脂大豆を原料に用いた場合には、全脂大豆中に含まれる脂質が組織化処理によって酸化を受けやすいため、栄養上問題のある過酸化脂質の多い粉末素材となる。
【0020】
本発明における組織化処理とは、通常、さらさらしている脱脂大豆粉末を変質させ、肉質の食感にするような処理をいう。一般的には、エクストルーダーという装置を用いて行う。エクストルーダーは、1軸型であっても2軸型であってもよいが、好ましくは2軸型である。エクストルーダーによる組織化処理の方法は、詳細には実施例にて後述するので、ここでは簡単に一例を挙げる。まず、エクストルーダーに脱脂大豆粉末を入れ、攪拌しながら、加湿・加熱・加圧する。次いで、加熱・加圧等の処理をしたものをダイと呼ばれる部分の穴から押し出す。ダイから押し出されたものをカッターで粒状にし、乾燥させる。そして乾燥後、粉砕して粉末状の脱脂大豆を得る。
【0021】
本発明における組織化処理では、加湿は必須である。これは、適当な量の水分が存在することで、加熱・加圧処理の際に大豆蛋白が十分に溶融して組織化することができ、且つダイから押し出される際に水蒸気により十分に膨化することができるからである。なお、押し出し後の乾燥は必須ではない。湿った状態であっても、微細化することはできるからである。乾燥させる場合には、通常、温風乾燥法が用いられる。
【0022】
本発明では、組織化処理の条件は特に限定されず、大豆の投入量、大豆への加湿量、エクストルーダーのバレル部分における滞留時間、バレル温度、加圧力、スクリュー回転数等の条件を目的とする製品に応じて、当業者が適宜、選択することができる。
【0023】
本発明の血中コレステロール低下粉末素材では、水溶性窒素指数(NSI)は特に限定されないが、好ましくは50以下であり、より好ましくは30以下である。NSIとは、試料中に含まれる全窒素に占める水溶性窒素の割合(%)を示すものであって、水溶性窒素指数と呼ばれるものである。NSIは、試料の水抽出液に含まれる窒素をケルダール法で定量し、これを試料に含まれる全窒素を100としたときの相対量として表したものである。例えば、原料である脱脂大豆のNSIは通常80〜90である。本発明では、原料の脱脂大豆に上述の組織化処理を施すことで、NSIを調整するが、NSIが50以下であると、十分な組織化がされるので好ましい。
【0024】
本発明の血中コレステロール低下粉末素材では、保水率は特に限定されないが、下限は300%以上が好ましく、350%以上がより好ましい。また、上限は500%以下が好ましく、450%以下がより好ましい。保水率が300%以上であると、十分な組織化がされる。なお、保水率は、試料(本発明の血中コレステロール低下粉末素材)10gに100mlの水を加え、十分に攪拌後、遠心分離を行い、上清を除去して得られた沈殿物の重量を測定し、保水率(%)=(沈殿物の重量(g)−試料(g))÷試料(g)×100により算出した。原料の脱脂大豆は、上述のように加熱・加圧等の組織化処理後にダイから押し出されるが、高温高圧状態のダイから常圧下に押し出されることで、急激に膨化たり、多孔質化する。本発明では、この多孔質化の程度を示す指標として保水率を算出した。
【0025】
本発明では、組織化処理後の脱脂大豆は汎用性を高めるために粉砕する。粉砕は、通常、粉砕機を用いて行う。粉砕物は、微細化されればよく、粒度は特に限定されないが、汎用性向上、特に飲料等の用途を考慮すると、200メッシュパス(目開き75μm)95%以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の血中コレステロール低下粉末素材は、コレステロール低下作用を有する。コレステロール低下作用とは、血中の総コレステロール濃度の上昇を抑制する作用又は総コレステロール濃度を低下させる作用のいずれをも意味するが、LDLコレステロール濃度、及び/又は、LDL/HDLコレステロール濃度の比を低減させることが好ましい。HDLコレステロールは、血中のコレステロールを肝臓に戻すことで抗動脈硬化因子として機能しており、一般に善玉コレステロールと称されている。これに対して、LDLコレステロールは、肝臓からコレステロールを全身の細胞に運ぶため、動脈硬化因子となり、悪玉コレステロールと称されている。したがって、善玉であるHDLコレステロールの低下抑制若しくは上昇促進、又は、悪玉であるLDLコレステロールの上昇抑制若しくは低下促進がより好ましい作用といえる。
【0027】
本発明の食品又は哺乳動物用飼料は、本発明の血中コレステロール低下粉末素材を含むことを特徴とする。本発明の粉末素材は、コレステロール低下作用を有するので、例えば、ダイエット、肥満の予防、高脂血症や動脈硬化症等の生活習慣病の予防・治療等を目的とした食品又は哺乳動物用飼料として有用である。本発明の粉末素材は、そのまま経口摂取してもよいし、即席スープ、豆乳、栄養飲料等の各種飲料、ケーキやクッキー等の各種菓子類、豆腐やハンバーグ等の加工食品等の通常、大豆を使用する食品に配合することで摂取してもよい。また、そのままの状態で哺乳動物に給与できるほか、飼料原料に混合して各種飼料とすることもでき、牛や豚だけでなく、犬や猫といったペット類にも給与できる。配合量は、特に制限されず、当業者がその動物に応じて選択することができる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、「%」と記載した場合は、特に説明がなければ、「質量%」を意味する。
【0029】
<製造例>調製品の製造方法
低変性脱脂大豆(油分0.5%:日清オイリオグループ(株)製)を原料として、組織化処理を施した。組織化処理は、二軸型エクストルーダー(Wenger社製)により行った。低変性脱脂大豆100kg及び水40kgをエクストルーダー内に投入し、加圧・加熱処理を行った。このときのバレル温度は中間150℃、出口90℃、スクリュー回転数は200rpm、流量30kg/時であった。次いで、ダイから押し出すことで膨化させた後、乾燥させ、粉砕処理をして、調製品を得た。調製品のNSIは20、保水率は427%であった。また、調製品の多孔質の穴の直径を電子顕微鏡(日立製作所製)にて観測したところ、15nm〜400μmであった。
【0030】
<コレステロールの測定方法>
血漿中の総コレステロール濃度、HDLコレステロール濃度、及びLDLコレステロール濃度は、市販のキットにより測定した。総コレステロール濃度はコレステロールE−テストワコー(和光純薬工業(株)製)、HDLコレステロール濃度はHDL−コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業(株)製)、LDLコレステロール濃度はLDL−コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業(株)製)を用いた。
【0031】
<Vit.Mix(ビタミン製剤)の組成>
本実施例にて用いたVit.Mix(ビタミン製剤)の組成を表1に示す。
【表1】

【0032】
<Min.Mix(微量金属製剤)の組成>
本実施例にて用いたMin.Mix(微量金属製剤)の組成を表2に示す。
【表2】

【0033】
[試験例1]調製品のコレステロール低下能評価1
製造例にしたがって製造した低変性脱脂大豆の調製品を用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。
【0034】
モデル動物には、5週齢のSprague−Dawley系雄性ラット(株式会社日本医科学動物資材研究所)を用いた。飼料及び水は自由摂取とした。導入から7日間市販飼料(CP=23.6%、ME=3,600kcal/kg、商品名:MF、オリエンタル酵母工業(株)製)を給与した。6週齢時に体重を測定して平均体重に近い固体を選抜し、平均体重が等しくなるように各群(対照群:比較例1、調製品投与群:実施例1)4頭ずつ無作為に分けた。群分け後、両群の飼料を表3の試験飼料に切り換え、1日1回給与した。なお、各群ともに、試験飼料にはコレステロールを2%添加した。また、対照群の飼料は比較のため、蛋白源をカゼインのみとした。
【0035】
【表3】

【0036】
3週間の飼育期間終了後の9週齢時に、断頭屠殺して採血を行った。採血の8時間前から絶食した。屠殺により採血した血液から血漿を分離し、血漿中のLDLコレステロール濃度及びHDLコレステロール濃度を測定するとともに、LDL/HDLコレステロール濃度比を算出した。結果を表4に示す。
【0037】
【表4】

【0038】
調製品投与群(実施例1)は、対照群(比較例1)に比べてLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の上昇を有意に抑制した(t−検定:5%水準)。特に、LDLコレステロール濃度の上昇抑制効果は、非常に顕著であった。この結果から、低変性脱脂大豆を組織化処理した粉末素材は、LDLコレステロール濃度の上昇抑制効果及びHDLコレステロール濃度の低下抑制効果を有することが明らかとなった。
【0039】
[試験例2]調製品のコレステロール低下能評価2
<比較例2:対照群(カゼイン投与)>
蛋白源にカゼインを用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。表5の試験飼料を用いた以外は、試験例1と同様の投与方法を行った。
【0040】
<比較例3:対照群(低変性脱脂大豆投与)>
低変性脱脂大豆(油分0.5%:日清オイリオグループ(株)製)を用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。表5の試験飼料を用いた以外は、試験例1と同様の投与方法を行った。
【0041】
<比較例4:対照群(分離大豆蛋白投与)>
分離大豆蛋白(大豆蛋白90%:日清オイリオグループ(株)製)を用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。表5の試験飼料を用いた以外は、試験例1と同様の投与方法を行った。
【0042】
<実施例2:調製品投与群>
製造例にしたがって製造した低変性脱脂大豆の調製品を用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。表5の試験飼料を用いた以外は、試験例1と同様の投与方法を行った。
【0043】
【表5】

【0044】
評価は、試験例1と同様の方法により行った。結果を表6に示す。
【0045】
【表6】

【0046】
組織化処理を施した低変性脱脂大豆を投与した調製品投与群(実施例2)は、組織化処理を施していない低変性脱脂大豆を投与した対照群(比較例3)と比較して、LDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の上昇を有意に抑制した(t−検定:5%水準)。また、組織化処理を施していない低変性脱脂大豆を投与した対照群(比較例3)は、他の対照群(比較例2及び4)と同様の値を示した。この結果から、低変性脱脂大豆は組織化処理を行うことで、コレステロール低下能を有することが明らかとなった。
【0047】
[試験例3]調製品のコレステロール低下能評価3
<比較例5:対照群(カゼイン投与)>
蛋白源にカゼインを用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。表7の試験飼料を用いた以外は、試験例1と同様の投与方法を行った。
【0048】
<実施例3:調製品投与群(カゼインに対する置換割合25%)>
比較例5の試験飼料中のカゼイン25%を製造例にしたがって製造した低変性脱脂大豆の調製品に置換した飼料を用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。投与方法は、試験例1と同様である。各成分の配合は、表7に示した。
【0049】
<実施例4:調製品投与群(カゼインに対する置換割合50%)>
比較例5の試験飼料中のカゼイン50%を製造例にしたがって製造した低変性脱脂大豆の調製品に置換した飼料を用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。投与方法は、試験例1と同様である。各成分の配合は、表7に示した。
【0050】
<実施例5:調製品投与群(カゼインに対する置換割合75%)>
比較例5の試験飼料中のカゼイン75%を製造例にしたがって製造した低変性脱脂大豆の調製品に置換した飼料を用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。投与方法は、試験例1と同様である。各成分の配合は、表7に示した。
【0051】
<実施例6:調製品投与群(カゼインに対する置換割合100%)>
比較例5の試験飼料中のカゼインを全て製造例にしたがって製造した低変性脱脂大豆の調製品に置換した飼料を用い、コレステロール添加飼料を与えたラットの血漿中のLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の低下効果について検討を行った。投与方法は、試験例1と同様である。各成分の配合は、表7に示した。
【0052】
【表7】

【0053】
評価は、試験例1と同様の方法により行った。結果を表8に示す。
【0054】
【表8】

【0055】
表8に示したように、飼料中のカゼインの25%を調製品に置換しただけでLDLコレステロール濃度及びLDL/HDLコレステロール濃度比の上昇抑制効果が認められた(実施例3)。これは、対照群の効果と比較しても有意な差であった(t−検定:5%水準)。この結果から、本発明の粉末素材は、少量でも優れたコレステロール低下作用を発揮することが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱脂大豆を原料として、組織化処理することにより得られる血中コレステロール低下粉末素材。
【請求項2】
水溶性窒素指数(NSI)が50以下である請求項1記載の血中コレステロール低下粉末素材。
【請求項3】
保水率が300〜500%である請求項1又は2記載の血中コレステロール低下粉末素材。
【請求項4】
粒度が200メッシュパス(目開き75μm)95%以上である請求項1から3いずれか記載の血中コレステロール低下粉末素材。
【請求項5】
血中のLDLコレステロール濃度、及び/又は、LDL/HDLコレステロール濃度の比を低減させる請求項1から4いずれか記載の血中コレステロール低下粉末素材。
【請求項6】
請求項1から5いずれか記載の血中コレステロール低下粉末素材を含む食品又は哺乳動物用飼料。

【公開番号】特開2009−280517(P2009−280517A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133025(P2008−133025)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】