説明

血中微粒子製剤の除去装置

【課題】生理・薬理学的微粒子製剤を生体に投与した後の血液から微粒子製剤を除去した血液成分を当該生体に返還し、身体への負担を軽減させる分離装置の提供。
【解決手段】遠心分離装置11で分離された血漿成分は、導管L2を介して限外濾過膜装置12に、その導入ポート111から導入される。導管L2には、遠心分離装置11からの血液を限外濾過膜装置12に向けて送るためのポンプP2と、導管L2内の流路を開閉する開閉弁V2が設けられている。限外濾過膜装置により分離された血漿含有膜透過物は、膜透過物出口ポート112から導管L3を通して、生体SUBの血管内に返還される。血漿蛋白質濃度が低い場合には、血漿蛋白質を透過せず水と低分子量の電解質のみを透過させる限外濾過膜(例えば、限外分子量10,000Daのもの)や透析膜(血液透析器)を使用して血漿蛋白質を濃縮してから生体SUBの血管内に返還することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中微粒子製剤の除去装置に係り、特に、医療現場において、生理・薬理学的微粒子製剤を患者に投与した後の血液から該微粒子製剤を除去する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のナノテクノロジーの進歩により、生理・薬理学的微粒子(粒径10〜500nm)を使用した静注製剤が臨床現場でも使用されるようになってきてきた。例えば、両親媒性分子であるリン脂質が水中で二分子膜を形成しこれが小胞構造(リン脂質小胞体、リポソーム)を構成することが報告されて以来、このリン脂質小胞体を薬物担体として利用するいわゆるドラッグデリバリーシステムが展開されている。特に、抗癌剤や抗菌剤を担持させた薬剤は既に臨床認可されている。リポソーム粒子表面にポリエチレングリコールを結合させることで血中滞留時間の延長、所謂ステルス化が可能で、薬物の徐放性が得られる。また、リポソーム粒子表面に抗体を結合させることにより、治療部位への薬剤の標的輸送が可能となる。更に、高分子ミセル、リピドマイクロスフェア、コロイド、蛋白質重合体(アルブミン重合体など)、分岐型高分子(デンドリマー)等の微粒子製剤も薬物担体として開発が進められており、遺伝子治療、放射線治療、温熱療法、超音波療法等における薬物担体としての応用が期待され、また、診断のために、X線造影、超音波造影、MRI診断等において造影剤の担体として使用されている。
【0003】
また、微粒子製剤を人工酸素運搬体として使用する研究が進展している。歴史的には、赤血球の中に濃度高く存在するヘモグロビン(Hb)(分子量64,500)が酸素結合部位であるので、血液型抗原が存在する赤血球膜を除去した精製Hb分子を加工したHbナノ修飾体微粒子製剤(分子内架橋型、重合型、高分子結合型)の開発が先行し、臨床試験が今でも欧米で推進されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。全般に、投与した修飾Hbが血管内皮細胞由来の弛緩因子NOを吸着するため血管収縮(血圧亢進)の生起、Hbとの直接接触による血管内皮の障害、また、代謝異常や軽度の神経性副作用の指摘もあり、いずれもが全て赤血球とかけ離れた構造が原因となることが明らかにされている。Hb溶液が赤血球膜で覆われている生理学的意義から、赤血球と類似の構造が有用であることは当然であり、1950〜60年代には既に、高分子薄膜でできた球の中にHbを内包する方式や、エマルション粒子の中にHbを封入し、カプセル化する方法も検討された(非特許文献4)。また、非特許文献5には、リン脂質小胞体にHbを内包した「合成赤血球」が報告されている。その後、リン脂質二分子膜で高濃度Hb溶液を被覆する技術、特に毛細血管を容易に通過できる粒径の制御、また血中分散安定度の向上が達成され、「Hb小胞体」が完成した(非特許文献6、特許文献1、特許文献2)。内包Hb溶液の濃度は約35g/dLと高く、平均粒径は250nm、ポリエチレングリコール結合脂質を粒子表面に配置して小胞体粒子間の凝集抑制と分散安定度が得られ、室温にて2年以上保存できる系が構築できている(非特許文献7、特許文献3)。Hb小胞体の動物投与試験から、緊急時の出血ショックの蘇生液あるいは、術中の出血時に投与する輸液、体外循環回路(人工心肺)の補充液としての利用、術前血液希釈としての利用等に有効であることが確認されている(非特許文献8)。
【0004】
また、パーフルオロカーボンが極めて高い酸素溶解度を示すことから、これに脂質を添加して乳化した溶液(パーフルオロカーボン乳剤)も、全合成系の酸素を運搬する微粒子製剤の分散系として展開され(非特許文献9)、認可された例もある。アルブミン分子に合成ヘム誘導体を包接させた、アルブミン-ヘムが、全合成系のヘム蛋白質微粒子製剤として開発されている(非特許文献10)。
【0005】
薬物の標的輸送を目的としても、微粒子製剤から脱離して、標的部位に到達しない場合がある。また、生体適合性に優れた如何なる微粒子製剤でも、その一部、あるいは大半が、異物として認識され、貪食細胞が多く存在する、いわゆる細網内皮系(単核食細胞系)に移行する。細網内皮系の役割は、老廃物や異物の処理、生体防御であり、正常組織では、結合組織(組織球)、脳(ミクログリア細胞)、肝臓(クッパー細胞)、肺(肺胞マクロファージ)、副腎(皮質マクロファージ)、リンパ節(遊離/組織固定マクロファージ)、脾臓(遊離/組織固定マクロファージ)、腎臓(糸球体メサンギウム)、骨髄(組織固定マクロファージ)、体腔(胸腔/腹腔マクロファージ)、骨(破骨細胞)、神経細胞(小膠細胞)、皮膚(組織球)、関節嚢(骨液中マクロファージ)、その他組織液中マクロファージ等が知られている。
【0006】
例えば、Hb小胞体をラットに対して10mL/kgの投与をした場合は、血中半減期は2,3日程度で、特に肝臓、脾臓、骨髄に移行することが同位元素(99mTc)修飾したHb小胞体の体内動態の観測から解明された(非特許文献11)。ラットにHb小胞体を20mL/kg大量投与した場合、貪食細胞に捕捉されたHb小胞体が7日以内には分解消失することが組織病理学的に確認されている。またこれに伴い脾臓重量も3日目に1.5倍に増大を示すが7日後には正常値に戻り、血液生化学検査でも異常は無い(非特許文献12、非特許文献13)。40%の血液を急速交換した後の生存試験(ラット)でも1.5倍の脾臓肥大と肝臓脾臓にヘモジデリン沈着が認められるが、約1週間後には脾臓重量と赤血球量は正常値にまで回復している。
【非特許文献1】Levy et al., J. Thorac. Cardiovasc. Surg., 2002; 124:35-42
【非特許文献2】Lanzkron et al., Transfusion, 2002; 42:1422-7
【非特許文献3】Winslow. Artif. Organs, 2004; 28:800-6
【非特許文献4】Chang, Appl. Biochem. Biotechnol., 1984; 10:5-24
【非特許文献5】Djordjevich et al., Crit. Care Med., 1987; 15:318-23
【非特許文献6】Tsuchida, Ed., "Artificial Red Cells", Wiley, 1995
【非特許文献7】Sakai et al., Bioconjugate Chem., 2000; 11:425-32
【非特許文献8】Yoshizu et al., ASAIO J., 2004; 50:458-63
【非特許文献9】Spahn et al., Anesthesiology, 1999; 91:1195-208
【非特許文献10】Tsuchida et al., J. Biomed. Mater. Res. A., 2003; 64:257-61
【非特許文献11】Sou et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 2005; 312:702-9
【非特許文献12】Sakai et al., Biomaterials, 2004; 25:4317-25
【非特許文献13】Sakai et al., Am. J. Pathol., 2001; 159:1079-88
【特許文献1】特許第2936109号明細書
【特許文献2】特許第3479915号明細書
【特許文献3】特許第3466516号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微粒子製剤を担体とする薬剤の投与おいて、標的部位への輸送と薬物の取り込みが効率よく行えるようになったものの、正常細胞への輸送も少なからず生起する。特に抗癌剤の投与においてその副作用は甚大である。また、造影剤としての微粒子製剤の投与においても、診断を終了した後、不要になった時点でもその捕捉分解と代謝、排泄は、生体の処理機能に委ねるのみである。
【0008】
人工酸素運搬体であるHb小胞体の投与では、細網内皮系で見られた変化は可逆的であり、投与した物質は完全に分解消失し、問題となる所見は無い。しかしながら、例えば細網内皮系に疾患がある場合には十分な捕捉分解の機能が無いこともあり得る。それに緊急時の投与、或は術中の使用であれば、人工酸素運搬体の投与により、数時間の酸素供給が必要であるが、輸血等の適切な処置がなされた後なお血中にある人工酸素運搬体は、必要が無いにも拘らず数日間血中に存在し、経時的に細網内皮系に順次捕捉され消失していく運命であり、要するに細網内皮系に負荷を与えるだけである。また、細網内皮系の異物処理の機能が飽和すると、細菌等の感染源に対する防御機能が低下することも懸念されている。
【0009】
その他の人工酸素運搬体である微粒子製剤、パーフルオロカーボン乳剤や修飾Hb溶液、アルブミン−ヘムの成分も、最終的には細網内皮系で捕捉分解されることが知られているので、共通の課題であると言える。また、Hbを使用する人工酸素運搬体には、還元酵素系が含まれない場合が多く、血液中に存在する活性酸素種(O2-、H22、OH・)或はNOの作用により経時的にヘムが劣化(例えばメト化)して酸素運搬機能を失うが、それでもなお血液中に存在することになる。特に、敗血症など炎症反応が生起している場合には、血管内に活性酸素種やNOなどが過剰量産生されおり、ヘムの劣化が促進される。更にメト化したHbは、循環している間にヘムを遊離し、これが血管内皮細胞に障害を与えることが問題とされている。一酸化炭素中毒の場合、Hbは酸素の200倍の結合力がある一酸化炭素が結合しもはや酸素運搬機能を失う。シアン化物中毒、或はアジ化ナトリウム中毒の場合も、当該薬物がHbのヘムに強力に結合し、酸素運搬機能を失わせる。
【0010】
従って、本発明者らは、投与された微粒子製剤を必要が無くなった時点で循環血液から特異的に分離除去することができれば、正常細胞および細網内皮系に与える負荷を低減させることができるものと考えた。またCO、シアン化物、アジ化物中毒の場合には、当該薬物を人工酸素運搬体に結合させた後、血液から分離することが可能となると考えた。
【0011】
血液成分と微粒子製剤を分離する手法として、微粒子製剤と血液成分の物理的性質の違いを利用した方法が考えられるが、従来にはこれを効率良く、選択的に、連続的に実施する装置は知られていなかった。
【0012】
原理的には、比重の相違を活用する場合、遠心分離法により血球成分との分離が可能である。即ち、血球成分である赤血球、白血球、血小板は、比較的低い遠心力(1000×g程度)でも沈降し、上澄みとして血漿層が得られる。血液に投与した微粒子製剤は、これら血球成分よりも比重が小さいため、血漿中に分散したままである。この血漿を分離除去した後、沈降した血球成分を生理食塩水やアルブミン溶液等に分散させて血管内に戻す操作を連続的に行えば、血中に存在する微粒子製剤を血漿成分と一緒に除去することができる。しかし、この遠心分離では、投与微粒子製剤と血漿成分とを分離することができなかった。
【0013】
一方、血漿成分の中には、アルブミンやグロブリン、その他にも有用な血漿蛋白質が多く存在している。これら血漿蛋白質よりも投与微粒子製剤の粒子径が十分に異なる場合には、粒子径の差を利用した分離が可能となる。即ち、限外濾過膜を用いれば、投与微粒子製剤と血漿蛋白質との分離が容易である。
【0014】
例えば、リポソームは粒子径が100〜200nm程度、Hb小胞体は平均粒子径が250nm程度、パーフルオロカーボン乳剤も100乃至200nm程度であり、血漿蛋白質の大きさの約20〜30倍の大きさである。従って、例えば血漿交換療法の際に使用している限外濾過膜を用いれば、血漿から微粒子製剤を分離でき、得られた血漿蛋白質分画は体内に戻すことができる。しかし、限外濾過膜では微粒子製剤と血球成分を分離することができなかった。加えて、修飾Hb分子のように粒径が極めて小さく、血漿蛋白質の大きさと同程度の大きさの微粒子製剤の場合は、限外濾過膜による血漿蛋白質との分離は難しくなる。
【0015】
上述の遠心分離装置と限外濾過膜装置は、本来、血球と血漿層を分離するために開発された臨床機器であり、遠心分離装置と限外濾過膜装置は、同じ目的のために開発、販売されている相互に競合関係にある機器であり、投与微粒子製剤の分離を目的としたものではない。
【0016】
すなわち、遠心分離のみでは、微粒子製剤は血漿中に分散したままなので、血漿成分と共に除去されてしまう。一方、限外濾過膜を使用するだけでは、血漿分画は単離できるが、血球と微粒子製剤を分離することは困難である。
【0017】
本発明は、このような本発明者らの知見に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、医療現場において、生理・薬理学的微粒子製剤を生体に投与した後の血液から微粒子製剤を除去し、この微粒子製剤を除去した血液成分等を当該生体に返還し、もって当該生体の身体への負担を軽減させることができる血中微粒子製剤の分離装置を提供することにある。
【0018】
かかる課題は、従来存在せず、本発明者らが初めて見いだしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明によれば、生理・薬理学的微粒子製剤を血管内に投与した後の生体から採取された前記微粒子製剤を含む血液を、前記微粒子製剤を含む血漿層と前記微粒子製剤を実質的に含まない血球層とに遠心分離する遠心分離手段と、前記血球層を前記生体の血管内に返還するための第1の導管とを備えることを特徴とする、血中微粒子製剤の除去装置が提供される。
【0020】
本発明の装置は、前記遠心分離手段から得られた前記血漿層を、血漿成分を含む膜透過物と前記微粒子製剤を含む膜非膜透過物とに分離するための限外濾過膜手段と、前記膜透過物を前記生体の血管内に返還するための第2の導管とをさらに備えることができる。
【0021】
また、本発明の装置は、前記第1の導管に、前記血球層と前記血漿層とをそれらの色調の差により検知する検出手段が設けられていることが好ましい。そして、前記第1の導管に、前記検出手段が前記遠心分離手段からの前記血漿層の流出を検知したとき、前記第1の導管を閉じる電磁弁が設けられていることが好ましい。
【0022】
本発明の装置は、前記限外濾過膜手段からの前記膜非膜透過物を前記限外濾過膜手段に循環させる第3の導管を備えることができる。
【0023】
本発明において、前記微粒子製剤は、リン脂質小胞体、高分子ミセル、高分子カプセル、リピドマイクロスフェア、コロイド、蛋白質重合体または分岐型高分子を含むものであり得る。
【0024】
また、前記微粒子製剤は、人工酸素運搬体であり得、Hb小胞体でもあり得る。
【0025】
さらに、前記微粒子製剤は、人工心肺回路の補填液として使用した人工酸素運搬体であり得、また前記微粒子製剤は、人工酸素運搬体であり、そのヘムと、血中の余剰な活性酸素、一酸化窒素、一酸化炭素、血中に混入したシアン化物イオン、アジ化物イオンが反応した後、酸素運搬機能を失った該人工酸素運搬体を前記血液から分離除去することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、臨床現場で生理・薬理学的微粒子製剤(生理・薬理学的微粒子製剤の水性分散液等)を生体の血管内に投与した後、目的が達成され効果が得られた時点で血液から投与微粒子製剤を選択的に分離除去することが可能となる。また、投与微粒子製剤の選択的除去後の血液成分を当該生体の血管内に返還することにより、生体への影響を軽減できる。特に微粒子製剤として人工酸素運搬体を用いる場合には、投与量が極めて多いので、その除去効果は非常に大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0028】
本発明の分離装置は、医療現場において、生理・薬理学的微粒子製剤を血管内に投与した後のヒト、その他動物等の生体から採取された血液から微粒子製剤を除去し、この微粒子製剤を除去した血液成分を当該生体の血管内に返還するためのものであって、遠心分離手段を含む。
【0029】
医療現場において生体に投与される生理・薬理学的微粒子製剤には、先に記述したリン脂質小胞体、高分子ミセル、高分子カプセル、リピドマイクロスフェア、コロイド、蛋白質(アルブミン)重合体または分岐型高分子、人工赤血球/人工酸素運搬体(ヘモグロビン小胞体を含む)等が含まれる。人工酸素運搬体は、本来の酸素供給目的で使用することもできるが、血中に産生、または混入した余剰な活性酸素種、NO、CO、シアン化物、アジ化物中毒の場合に、当該物質を失活させる、或は結合させる目的にも使用することができる。また人工酸素運搬体は、人工心肺回路の補填液として使用することもできる。
【0030】
本発明の装置を構成する1つの要素である遠心分離手段は、生理・薬理学的微粒子製剤を投与した生体から採取された前記微粒子製剤を含む血液を、前記微粒子製剤を含む血漿成分層と前記微粒子製剤を実質的に含まない血球成分層とに遠心分離するものである。そのような遠心分離手段としては、例えば、手術中の出血液を回収する場合や成分献血の際に使用されている低速遠心分離を原理する血液成分分離装置を応用することができる。そのような装置には、AS. TEC 204(Fresenius社製)、自己血回収システムであるFresenius C,A,T,S,TM(Fresenius社製)、AUTOLOGTM(Medtronic社製)、Electra(Dideco S,p.A.社製)、Cell Saver 5(Haemonetics社製)、The Barat 2(COBE Lab.社製)等の市販装置が含まれる。これら装置は、血球成分の分離と体内への再投与の機能を有しているので、原理的には極めて速やかに投与微粒子製剤を含有する血漿層と血球層との分離が可能となる。
【0031】
遠心分離手段で分離された血球成分は、第1の導管を介して生体の血管内に返還され得る。こうして、微粒子製剤の滞留が生体に与える過剰な負荷を大幅に軽減することができる。
【0032】
本発明の血中微粒子除去装置は、遠心分離手段で分離された血漿層を、血漿を含む膜透過物と微粒子製剤を含む非膜透過物とに分離する限外濾過膜手段を備えることができる。限外濾過膜手段で分離された膜透過物は、第2の導管を介して生体の血管内に返還され得る。
【0033】
限外濾過膜手段を構成する限外濾過膜としては、プラズマフェレシス用の限外濾過膜を応用することができる。かかる限外濾過膜とこれを運転するための装置は市販されている。限外濾過膜としては例えば、Plasmaflo OP(旭化成メディカル社製)、Plasmacure PS(クラレ)、Sulflux FS(カネカ社製)、Plasmastar RR(ニプロ社製)、Propylex PP(宇部興産社製)、Plasma separator(カワスミ社製)、Diacrystal(ダイヤメディックス社製)等を例示することができる。これら限外濾過膜装置に使用されている限外濾過膜は、いずれも材質はポリエチレンやポリプロピレンであり、生体適合性が高く、公称膜孔径が0.2〜0.5μmであって、アルブミンの透過率がほぼ100%であり、これよりも遥かに大きい微粒子製剤の阻止率は極めて高い。これら限外濾過膜装置は、多数のホローファイバー(中空糸)型限外濾過膜を互いに離間させて円筒状外囲器内に収容したものであり、中空糸の内側または外側に微粒子製剤を含有する血漿層を通じる。限外濾過膜を透過した膜透過物(血漿成分)は、中空糸の外側または内側に得られる。限外濾過膜を運転するための装置としては、血液浄化装置(Plasauto EZ, Plasauto iQ21, ACH-10, 旭化成メディカル社製)などがある。
【0034】
限外濾過膜手段で分離された血漿成分は、好ましくは遠心分離装置で分離された血球成分とともに、第2の導管を介して生体の血管内に返還される。こうして、血漿蛋白等の血漿成分の有効利用が図られる。また、微粒子製剤の粒子径に応じて限外濾過膜の公称孔径あるいは限外分子量を調節し、阻止率を高めることも可能である。また、限外濾過膜装置は、平板型の濾過膜を互いに離間させて積層した形式でも良い。
【0035】
本発明の装置によれば、特に、人工酸素運搬体を緊急時に投与した後、必要なくなった時点で、細網内皮系に移行する前にできるだけ多くの人工酸素運搬体を除去し、細網内皮系への負担を軽減することができる。また、開心術において一般的に使用される体外循環回路(人工心肺)の充填液として、輸血の代わりに人工酸素運搬体が有効であることが生体実験で確認されている。特に小児患者を想定した場合には、自己の血液量に比較して回路補充液量が極めて多いので、結果として可成りの人工酸素運搬体を必要とし、また極度の血液希釈が生起する。人工心肺の運転時間は僅か数時間であり、この時間だけ酸素供給の役割を果たした後に回路内および血管内に存在する人工酸素運搬体のみを選択的に除去し、希釈された血液を元に濃縮する操作は極めて重要である。
【0036】
また、限外濾過膜手段からの膜非膜透過物は、第3の導管を介して限外濾過膜手段に再循環させることが好ましい。これにより、血漿蛋白等の有用血漿成分をより効率よく分離することができる。
【0037】
ところで、通常の血液であれば、血漿層と血球層との間で透明度に格段の差があるので、透明度の変化を検出する検出器を用いることにより、連続的な遠心分離が可能である。しかし、血液が微粒子製剤を大量に含有する場合には、血漿層はそれに含まれる微粒子製剤の存在によって光散乱により高い濁度を示し、十分な透明度或は光透過度が無いため、もはや連続操作が不可能である。また、微粒子製剤に担持させる薬物や機能物質によって血漿層の色調も異なる。そこで、本発明の装置には、血球層と、微粒子製剤が分散している血漿層を明確に識別するために、両者の色調の変化を検出する検出器を設けることが好ましい。かかる検出器を用いることにより、遠心分離手段から血球成分を選択的に取り出すことができ、連続操作が可能となる。
【0038】
図1は、遠心分離手段と限外濾過膜手段を備えた本発明の微粒子製剤除去装置の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本装置10は、上述の遠心分離装置(11)と、上述の限外濾過膜装置(12)を備える。
【0039】
遠心分離装置11の血液導入口には、血管内に生理・薬理学的微粒子製剤が投与されたヒト等の生体SUBからの血液を導入するための導管L1が接続され、この導管L1の他端は、生体SUBの血管に接続される。導管L1には、生体SUBからの血液を遠心分離装置に向けて送るためのポンプP1と、導管L1内の流路を開閉する開閉弁V1が設けられている。
【0040】
遠心分離装置11では、導入された血液が、遠心力により、血漿成分と血球成分に分離される。血漿成分は、上澄みとして得られ、微粒子製剤を含有するものであり、血球成分は、遠心分離装置11において沈降し、上澄み血漿成分層の下層を形成し、微粒子製剤を実質的に含まないものである。
【0041】
遠心分離装置11で分離された血漿成分は、導管L2を介して限外濾過膜装置12に、その導入ポート111から導入される。導管L2には、遠心分離装置11からの血液を限外濾過膜装置12に向けて送るためのポンプP2と、導管L2内の流路を開閉する開閉弁V2が設けられている。
【0042】
限外濾過膜装置12では、微粒子製剤を含有する血漿成分が、血漿を含む膜透過物と微粒子製剤を含む膜非膜透過物とに分離される。限外濾過膜装置12により分離された血漿含有膜透過物は、膜透過物出口ポート112から導管L3を通して、生体SUBの血管内に返還される。また、このとき、血漿蛋白質濃度が低い場合には、血漿蛋白質を透過せず水と低分子量の電解質のみを透過させる限外濾過膜(例えば、限外分子量10,000Daのもの)や透析膜(ダイアライザー:血液透析器)を使用して血漿蛋白質を濃縮してから生体SUBの血管内に返還することが好ましい。
【0043】
また、遠心分離装置11には、遠心分離装置11で分離された血球成分を案内する導管L4が設けられている。導管L4は、導管L3に合流する。この導管L4と導管L3の合流点には、三方活性弁V3が設けられている。また、導管L4には、遠心分離装置11の出口近傍に、分離された血漿成分と血球成分とを識別するための検出器13が設けられている。この検出器13は、血漿成分と血球成分とを色調の差により検知するものであり、例えば、色調センサー等、CCDカメラからのカラー映像信号をR、G、Bのデジタルデータに変換し、予め指定した色との一致度を判定し、検知する検出器を用いることができる。導管L4において、検出器13の下流には、検出器13が血漿成分の流出を検知している間は導管L4内の流路を開放したままとし、検出器13が血球成分の流出を検知したときに検出器13から送られる信号により導管L4内の流路を閉じる電磁弁V4と、その下流にポンプP5が設けられている。遠心分離装置11で分離された血球成分は、以後述べるように、導管L4およびL3を介して生体SUBの血管内に返還される。
【0044】
導管L3には、三方活性弁V3の下流および上流に、それぞれポンプP3およびP4が設けられている。
【0045】
さらに、限外濾過膜装置12の膜不膜透過物出口ポート113には、血漿成分導入ポート111に接続される導管L5が設けられている。この導管L5には、膜不膜透過物を貯留する貯留槽14と、導管L5内の流路を開閉する開閉弁V5と、ポンプP6が設けられている。限外濾過膜装置12からの膜非膜透過物は、貯留槽14に貯留された後、限外濾過膜装置12に再び導入され、血漿蛋白等をより効率良く分離することができる。貯留槽14内の微粒子濃度が高くなって、濾過効率が低下した時点で、貯留槽内の溶液を装置外に廃棄する。
【0046】
また、遠心分離装置11は、導管L6を介して生理食塩水の供給源15と接続されている。導管L6には、導管L6を開閉する開閉弁V7が設けられている。
【0047】
この装置10は、例えば、次のように用いることができる。すなわち、生体SUBに所要の生理・薬理学的微粒子製剤を投与し、その投与目的が達成された後、導管L1を生体SUBの血管に接続し、開閉弁V1を開き、ポンプP1の駆動により生体SUBから血液を遠心分離装置11に導入する。遠心分離装置11で血液を、微粒子製剤を含有する血漿成分と、血球成分とに分離した後、電磁弁V4を開放し、ポンプP5の駆動により、血球成分を遠心分離装置11から導出する。このとき、三方活性弁V3により、導管L4と導管L3を連通状態とし、ポンプP4の駆動により、血球成分を生体SUBの血管内に返還する。検出器13により、血球成分の流出が終了し、血漿成分の流出が検出された時点で電磁弁を閉じる。そのとき、遠心分離装置11内には、血漿成分が残存する。
【0048】
そこで、開閉弁V2を開き、ポンプP2の駆動により、遠心分離装置11内に残された血漿成分を導管L2を介して限外濾過膜装置12に導入する。限外濾過膜装置12での膜透過物(血漿)は、ポンプP3の駆動により、導管L3を介して生体SUBの血管内に返還される。
【0049】
他方、開閉弁限外濾過膜装置12での膜非膜透過物(微粒子製剤含有成分)は、開閉弁V5を開き、ポンプP6を駆動することにより、一度貯留槽14に貯留された後、導管L5を介して再び限外濾過膜装置12に導入され、さらに血漿成分が微粒子製剤から分離され、その血漿成分がラインL3を介して生体SUBの血管内に返還される。
【0050】
以上の操作は、連続的に行うことができる。
【0051】
なお、分離した血球層を分散流動させることを目的として、生理食塩水の供給源15から遠心分離装置11に導入することができる。
【0052】
いうまでもなく、三方活性弁V3の操作により、遠心分離装置11からの血球成分のみを生体SUBに変換することもできるし、限外濾過膜装置12からの血漿成分のみを生体SUBに変換することもできるし、遠心分離装置11からの血球成分を限外濾過膜装置12からの血漿成分とともに生体SUBに変換することもできる。遠心分離装置11からの血球成分と限外濾過膜装置12からの血漿成分の双方を生体SUBの血管内に返還することが好ましい。また、血管内に変換する前に、気泡が存在しないことを確認するためのセンサーを取り付けることが好ましい。
【0053】
また、ポンプは、いずれも、例えば、ローラポンプにより構成することができる。
【実施例】
【0054】
次に実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
【0055】
実施例1
Hb小胞体は、既報に従い調製した(Sou et al., Biotechnol. Prog., 2003; 19:1547-52; Sakai et al., Bioconjugate Chem., 2000; 11:56-64)。即ち、期限切れ赤血球から加熱処理とウィルス除去膜を使用して厳密に精製単離した高純度高濃度Hb溶液(40g/dL)に脂質成分(リン脂質、コレステロール、ポリエチレングリコールを結合した脂質等)を添加して分散させ、Hb溶液を内包したリン脂質小胞体を形成させ、エクストルージョン法によりその粒径を制御した。内包されなかったHbを除去後、脱酸素を行い、窒素雰囲気下に硝子瓶に封入して保存した。投与直前にこの硝子瓶を開封し、Hb内包リン脂質小胞体を5%アルブミンに分散させた(以下、Hb小胞体分散液;Hb濃度:8.6g/dL)。
【0056】
セボフルレン吸入麻酔条件下、ビーグル犬の循環血液量の50%を大腿動脈より脱血し、1時間経過以後にHb小胞体分散液を、脱血量と同量、蘇生液として投与した。脱血後の低血圧、アシドーシス、組織酸素分圧の低下は、Hb小胞体の投与によって急速に回復し、4時間安定した値を推移した。この後、大腿動脈より持続的に脱血し、直ちにACD液を加え、遠心分離式血液成分分離装置(AS.TEC204, Fresenius社製、回転数300〜2000rpm)装置にて遠心分離操作を行い、赤血球分画とHb小胞体を含む血漿分画に分離した。本機器に装備されている血球分画検出器は、流路内透過光の変化を基に血球層の有無を判断しているが、Hb小胞体が血漿中に存在すると十分な透過光が得られないため、既に血球があるものと誤認した。そこで色判別センサーにより色調の違いを判別した。沈降した血球層は赤黒色であるが、Hb小胞体が分散した血漿層は、ミルクとワインを混合したような桃色の分散液の層として判別された。得られた血球層は、生理食塩水を添加して分散させ、ビーグル犬の上腕静脈より投与した。
【0057】
この遠心分離操作により血球を除去した後のHb小胞体を含有する血漿分画について、プラズマフェレシス用の限外濾過膜システムを用い、血漿蛋白質との分離を実施した。膜型血漿分離器(プラズマフローOP−02W、旭化成メディカル社製、公称孔径0.3μm、膜面積0.2m2)を使用した。ホローファイバーの外側に溶液を流入させ、デッドエンド型の濾過を行い、ホローファイバーの内側に血漿溶液を得た。ホローファイバーの公称孔径は0.3μmであるが、得られた血漿にはHbが検出されず、完全にHb小胞体と分離できたことを確認した。得られた血漿蛋白質分画は、ビーグル犬の上腕静脈より投与した。
【0058】
実施例2
雄性スプラーグ−ドーリー(Sprague-Dawley)ラット5匹を用い、慢性人工心肺モデルを作成した。生体実験用の小型人工肺はホローファイバー型であり、内部に血液を灌流させ、外部には酸素ガスを通気した。セボフレン吸入麻酔下、カニュレーションは、脱血は経右内頸静脈的に右房から、送血は尾動脈を介するようにした。実施例1記載の方法により調製したHb小胞体を5%アルブミンに分散させた溶液で体外循環回路を満たし(80mL)、常温下、無拍動送血法で50mL/kg/分の流量で開始し、90分間継続した。ラットの循環血液量は20mL以下であり、ヘマトクリットは10%以下にまで低下したが、酸素消費量は維持された。その後、体外循環回路部分を満たしている血液(約80mL)を回収して、プラスチック製滅菌済み遠心用チューブに入れ、遠心分離(5,000g、10分)により血球分画とHb小胞体を含有する血漿層に分離した。血球分画は生理食塩水に分散させ、尾動脈より返血した。Hb小胞体を含有する血漿層は、更にプラズマフローOP-02W(旭化成メディカル)の研究用小型試作品により、Hb小胞体を分離除去し、血漿蛋白質分画を得たので、投与した。縫合し覚醒させたところ、全例が生存した。また14日後の組織病理学的検討では、肝臓、脾臓の体重に対する重量比は正常値であり、Hb小胞体の像は認められなかった。
【0059】
実施例3
実施例1記載の方法により調製したHb小胞体を5%アルブミンに分散させ、Hb濃度を8.6g/dLに調節した分酸液を調製した。雄性ウィスター(Wistar)系ラット20匹(体重約300g)に対し、セボフレン麻酔下、頸動静脈にカテーテルを挿入した。動脈側から1mLの脱血(1mL/分)と静脈側から1mLのHb小胞体の投与(1mL/分)を繰返し、循環血液量の40%を交換した。この時点で、ヘマトクリット値は当初約40%であったが、24%にまで低下した。血漿中のHb小胞体由来のHb濃度は、約4.5g/dLであった。この後6時間、血行動態および血液ガス組成が安定していた。20匹中10匹は、この時点で縫合、覚醒させ、ケージ内で飼育した(A群)。交換輸血の操作で得られた脱血液約8mLは、ヘマトクリット値が33%であったがHb小胞体が混在しているので、これを遠心分離(5000g×10分)し、沈降した血球分画を得た。また、Hb小胞体の含有する血漿分画は更にプラズマフローOP−02W(旭化成メディカル)の研究用小型試作品により、Hb小胞体を分離除去し、血漿蛋白質分画を得た。これを沈降した血球分画に添加して再分散させ、再構成血液を約6mL調製し、ヘマトクリット値を40%に調節した。血液交換終了後6時間経過した時点で、残りの10匹に対し、再構成血液の投与と脱血を繰返し、30%の血液を交換した。この操作により、ラット体内の血液のヘマトクリット値は24%が29%に増大し、血漿中のHb小胞体由来のHb濃度は、約3g/dLに低下した。同様に得られた脱血液からHb小胞体を分離して再構成血液を調製し、同様の血液交換を繰返し、最終的にヘマトクリット値が34%、血漿中Hb小胞体由来のHb濃度は約1.0g/dLにまで低下した。この時点で縫合し、覚醒させ、ケージ内で飼育した(B群)。3日後にA群、B群それぞれから5匹を選択し、血液を検査したところ、A群では血中にHb小胞体が残存したが、B群では完全に消失していた。また組織病理学的検査では、A群の脾臓重量が約2倍に増大していたが、B群では1.2倍の増大に留まった。また、7日後にA、B両群の残りの5匹ずつを検討したところ、両群とも脾臓重量は回復したが、A群ではHb小胞体が残存している像が認められた。B群ではHb小胞体は完全に消失していた。
【0060】
実施例4
雄性ウィスター系ラット(体重250±30g)に対しエーテル麻酔下、ラット尾静脈より留置針(24G)を使用して試料を投与した。試料としては、(i)Hb小胞体([Hb]=10g/dL、生理食塩水中)、20mL/kgの単独投与、および、Hb小胞体とリポポリサッカライド(LPS)の同時投与(Hb小胞体10mLに、6mg/mLの大腸菌由来のS−タイプ0111:B4(シグマ製)0.5mLを添加した溶液)とした。投与後12時間後に尾静脈に留置針を刺入し、Hct測定用ガラスキャピラリー3本分を採血後、直ちに遠心分離(12000rpm、5分)し、上澄みにHb小胞体を含有する血漿層を得た。メト化率を測定するため、可視吸光度計測用のキュベット内でリン酸緩衝液(pH7.4)に少量分散させ、窒素ガスを通気して完全に嫌気的雰囲気とし、ソーレー帯スペクトルにおけるメトHb由来のピーク(405nm)とデオキシHb由来のピーク(430nm)の吸光度の比から、メト化率を算出した。Hb小胞体の単独投与では、メト化率は19%に到達したが、Hb小胞体とLPSの同時投与では、メト化率は80%に到達した。LPSを同時に投与した場合には、免疫系が活性化され、過剰のNOや活性酸素が発生するが、血中のHb小胞体がこれと反応し、メト化が進行した。麻酔下、頸動静脈に挿管し、実施例3記載の方法と同様の方法によりメト化率80%のHb小胞体分画を選択的に血液成分から除去した。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一態様による血中の微粒子製剤の除去装置を示すブロック図。
【符号の説明】
【0062】
10…血中微粒子製剤除去装置
11…遠心分離装置
12…限外濾過膜装置
13…血漿/血球検出器
14…貯留槽
15…生理食塩水供給源
L1〜L6…導管
P1〜P6…ポンプ
V1〜V6…弁
SUB…生体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理・薬理学的微粒子製剤を血管内に投与した後の生体から採取された前記微粒子製剤を含む血液を、前記微粒子製剤を含む血漿層と前記微粒子製剤を実質的に含まない血球層とに遠心分離する手段と、前記血球層を前記生体の血管内に返還するための第1の導管とを備えることを特徴とする、血中微粒子製剤の除去装置。
【請求項2】
前記遠心分離手段により得られた前記血漿層を、血漿成分を含む膜透過物と前記微粒子製剤を含む膜非膜透過物とに分離するための限外濾過膜手段と、前記膜透過物を前記生体の血管内に返還するための第2の導管とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の導管に、前記血球層と前記血漿層とをそれらの色調の差により検知する検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の導管に、前記検出手段が前記遠心分離手段からの前記血漿層の流出を検知したとき、前記第1の導管を閉じる電磁弁が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記限外濾過膜手段からの前記膜非膜透過物を前記限外濾過膜手段に循環させる第3の導管を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記微粒子製剤が、リン脂質小胞体、高分子ミセル、高分子カプセル、リピドマイクロスフェア、コロイド、蛋白質重合体または分岐型高分子を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記微粒子製剤が、人工酸素運搬体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記微粒子製剤が、ヘモグロビン小胞体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記微粒子製剤が、人工心肺回路の補填液として使用した人工酸素運搬体であり、前記回路内および生体の血管内から前記人工酸素運搬体を除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記微粒子製剤が、人工酸素運搬体であり、そのヘムと、血中の余剰な活性酸素、一酸化窒素、一酸化炭素、血中に混入したシアン化物イオン、アジ化物イオンが反応した後、酸素運搬機能を失った該人工酸素運搬体を前記血液から分離除去する請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−325833(P2006−325833A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152284(P2005−152284)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000218719)
【Fターム(参考)】