説明

血圧または肺動脈圧を大きく低下させない一酸化窒素ドナーの治療的投薬量の使用

【課題】平滑筋の収縮もしくは増殖に関連する病的状態またはシステイン含有タンパク質と関連する疾患、または、一酸化窒素(NO)ドナーおよび上昇した血圧を必要とする患者、または、心血管系の症候群の予防または処置を提供すること。
【解決手段】平滑筋の収縮もしくは増殖を含む病理学的状態またはシステイン含有タンパク質に関連する疾患を有するか、あるいはこれらの危険性がある患者に、治療有効量のNOドナーが投与され、このNOドナーは、平均動脈血圧または肺動脈圧を10%より多く急性的に低下させるのには不十分である。平均動脈血圧を急性的に低下させずにNOドナーの投薬量を増加させる関連方法は、患者の動脈にNOドナーを投与する工程を包含する。別の方法において、心臓血管症候群を有するかまたはその危険性のある患者に、有意な程度まで血圧に急性的に影響を与えない、治療有効量のチオールが投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
1つの発明は、平滑筋の収縮もしくは増殖に関連する病的状態またはシステイン含有タンパク質と関連する疾患の予防または処置に関する。異なる発明は、一酸化窒素ドナーおよび上昇した血圧を必要とする患者の予防または処置に関する。なお別の発明は、心血管系の症候群の予防または処置に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
一酸化窒素(NO)ドナーは、例えば、血管形成の後に続く再狭窄を予防するため(非特許文献1)、血小板を阻害して、凝固および血栓形成を予防するため(非特許文献2)およびアンギナを処置するため(非特許文献3)の治療的有用性について有用であることが公知である。NOドナーは、癌、微生物およびウイルスの殺傷、気道および腸平滑筋の弛緩(例えば、喘息および食道痙攣を処置するため)において、勃起機能の促進において、ならびに心不全および尿失禁の処置において、さらなる治療的有用性を有すると考えられている。使用され、必要であると考えられる投薬量は、少なくとも、平滑筋を弛緩させること(すなわち、有効性の基礎としてみられている結果)によって、全身性血圧および肺動脈圧を低下させる効果を有する。多くの心血管系の症候群(例えば、心筋梗塞および心不全)において、標準的な治療は、最大限の有害ではない血圧低下を包含する。なぜなら、この血圧低下は、心臓に対するストレスを低下させるからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Groves,P.ら、Cardiovascular Research 26,615−619(1992)
【非特許文献2】Groves,P.ら、Circulation 87,590−597(1993)
【非特許文献3】Knightら、Circulation 95,125−132(1997)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本明細書中で規定されるNOドナーが、平滑筋を収縮させる用量未満の用量で収縮をブロックし得、従って、平滑筋の病的収縮を改善(および平滑筋の病的収縮に対して予防)し得、かつ血管緊張(vascular tone)に影響を与えない用量でレセプターを脱感作し得ることを、本明細書中で見いだした。
本明細書中における本発明の1つの実施形態(第1の実施形態という)は、再狭窄、血小板塞栓症または他の血栓塞栓性事象(例えば、肺塞栓症、または心内膜炎に二次的な塞栓性発作)の急性血栓性合併症を有する患者を除く、平滑筋の収縮または増殖に関連する病的状態(例えば、血管系の疾患)を有する患者またはそのような危険性のある患者の予防または処置のための方法に関する。この方法は、10%を超えて、例えば、5%を超えて(すなわち、他の場合では非治療的と考えられる量)平均動脈圧または肺動脈圧を急激に低下させるには不十分な治療有効量で、この患者に10%を超えて平均動脈圧または肺動脈圧を急激に低下させ得るNOドナーを投与する工程を包含する。再狭窄の急性血栓性合併症を除外するのは、Langford,E.J.ら、Lancet 344:1458−1460(1994)が、ステント中に投入する設定においてNOドナーの低用量投与を記載しており、Kaposzta,Z.ら、Circulation 103,2371−2375(2001)が、NOドナーの低用量投与が血小板塞栓症を軽減することを示し、そしてS−ニトロソグルタチオンが、血圧を急激に低下させない用量で他の血栓塞栓性事象を阻害し、血圧に対するよりも、血小板に対してより強力な効果を示すことが以前に示されたからである。しかし、血圧を急激に低下させることもなく、これらの血管における緊張に直接的に影響を及ぼすこともなく、血管の障害を処置するための(例えば、血管痙攣の処置または長期の抗増殖効果もしくは抗アテローム発生効果、または全身性高血圧症または肺高血圧症の長期の改善)本明細書中に規定されるNOドナーの使用は、以前に開示されていない。
【0005】
本明細書中における本発明の別の実施形態(第2の実施形態という)は、システイン残基もしくはNOドナーによって改変されて、その機能が変化したタンパク質を含む他のシステインを有するレセプターと関連した疾患を有する患者、またはその危険性のある患者の予防もしくは処置のための方法に関する。この方法は、10%を超えて(例えば、5%を超えて)平均動脈圧もしくは肺動脈圧を急激に低下させるには不十分な治療有効量において、この患者に10%を超えて平均動脈圧もしくは肺動脈圧を急激に低下させ得るNOドナーを投与する工程を包含する。用語「〜と関連する疾患」は、本明細書中で、レセプターまたは他のタンパク質の過剰活性化または過小活性化がその疾患に関連する疾患を意味するために使用される。
【0006】
用語「10%を超えて、例えば、5%を超えて平均動脈圧もしくは肺動脈圧を急激に低下させる」は、本明細書中で薬物半減期にわたって、薬物の単回用量によって、10%を超えて、例えば、5%を超えて平均動脈圧もしくは肺動脈圧を低下させることを意味するために使用される。
【0007】
肺動脈圧は、Swan−Ganzカテーテルを使用する標準的な方法に従って、肺動脈で測定される。
【0008】
第1および第2の実施形態は、予防または処置に関する。この処置は、悪化させる刺激に応答する再発症を予防または遅延するために、疾患の不活性状態における症状を有さない患者に関し得る。例えば、不安定狭心症および喘息の場合、患者は、不活性状態にあり得るが、症状は、悪化させる刺激に応答して迅速に発症する。従って、処置は、症状がすでに緩和または軽減されているが、悪化させる刺激に対する感受性が持続している疾患の処置であり得る。
【0009】
本明細書中の異なる発明である、記載される第3の実施形態は、NOドナーおよび血圧の増加を必要とする患者を処置することに関し、これは、治療的有効量のNOドナーを、この患者の動脈に直接投与することを含む(他の投与経路とは対照的に)。
【0010】
本明細書中のさらに別の発明である、記載される第4の実施形態は、心臓血管症候群を有するかその危険性のある患者の予防または処置のための方法に関し、この方法は、治療有効量のチオールを投与する工程を包含し、この治療有効量のチオールは、平均動脈圧または肺動脈圧を、10%より多く(例えば、5%より多く)急激に低下させるのに不十分である。
【0011】
いくつかの場合における急激に低下しない血圧の結果の有用性は、Bing,R.J.,ら、Biochem.Biophys.Res.Com.275,350−353(2000)によって支持される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
再狭窄の急性血栓性合併症もしくは血小板塞栓症または他の血栓塞栓性事象以外の、平滑筋の収縮もしくは増殖を含む脈管構造の疾患または平滑筋の収縮もしくは増殖を含む他の病理学的状態を有するか、あるいはその危険性のある患者の、予防または処置のための方法であって、該方法は、平均動脈血圧または肺動脈圧を10%より多く急性的に低下させるのに不十分な治療有効量で、平均動脈血圧または肺動脈圧を10%より多く急性的に低下させ得るNOドナーを該患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記疾患または状態が、急性冠状動脈痙攣、アンギナおよび肺高血圧症からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記疾患または状態が、喘息またはCOPDであり、そして前記NOドナーについての用量が、FEV1を10%以上上昇させるのには不十分である、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記疾患または状態が、直腸痙攣であり、そして前記NOドナーについての用量が、消化管平滑筋の緊張を10%より多く低下させるのには不十分である、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記疾患または状態が、食道痙攣であり、そして前記NOドナーについての用量が、食道平滑筋の緊張を10%より多く低下させるのには不十分である、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記疾患または状態が、幽門狭窄であり、そして前記NOドナーについての用量が、幽門を10%より多く拡張させるのには不十分である、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記疾患または状態が発作である、項目1〜6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記疾患または状態が全身的高血圧症である、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記投与が、平滑筋の収縮または増殖を含む病理学的状態の危険性のある患者に予防的に与えられる、項目1〜8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
システイン残基を有するレセプターまたは他のシステイン含有タンパク質に関連する疾患を有するかまたはその危険性がある患者の、予防または処置のための方法であって、該システイン残基を有するレセプターまたは他のシステイン含有タンパク質は、その機能を阻害するようにNOドナーによって改変され、該方法は、平均動脈血圧または肺動脈圧を10%より多く急性的に低下させるのに不十分な治療有効量で、平均動脈血圧または肺動脈圧を10%より多く急性的に低下させ得るNOドナーを該患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目11)
前記レセプターがセロトニンレセプターである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記疾患が鬱病である、項目10または11に記載の方法。
(項目13)
前記疾患がストレスおよび/または不安である、項目10〜12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記疾患がアテローム硬化症である、項目10〜13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記レセプターが、アドレナリン作用性レセプターである、項目10〜14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記疾患が、全身的高血圧症または肺高血圧症である、項目10〜15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記疾患が、環状動脈疾患である、項目10〜16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記レセプターが、赤血球細胞膜レセプターである、項目10〜17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記NOドナーが、赤血球中のS−ニトロシレート膜レセプターに対して一定量で投与される、項目10〜18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記NOドナーの投与が、赤血球が血管収縮を引き起こすことを予防するためであり、かつ心臓発作、発作、肺高血圧症および全身的高血圧症の、関連する危険性を低減する、項目10〜19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記NOドナーが、虚血障害、鎌状赤血球症またはサラセミアに対して予防するか、あるいはこれらを処置するためのものである、項目10〜20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
NOドナーを必要とする患者および血圧上昇を処置するための方法であって、該方法は、治療有効量のNOドナーを、該患者の動脈に直接投与する工程を包含する、方法。
(項目23)
心臓血管症候群を有するかまたは心臓血管症候群の危険性のある患者の予防または処置のための方法であって、該方法は、平均動脈血圧または肺動脈圧を10%より多く急性的に低下させるのには不十分な、治療有効量のチオールを投与する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、マウス動脈についてのインビトロ試験に関する、張力(力) 対 時間の追跡と、この追跡に沿って示される添加された化合物の濃度であり、血圧を有意に下げずかつ血管の緊張を直接増加しない濃度のNOドナーにおける、アゴニストに対する収縮応答のブロックの実施例Iの結果を示す。
【図2】図2は、コントロール、および血管緊張に対する直接の影響は有さないが、収縮をブロックする量のNOドナーに供した後の、インビトロ動脈環バイオアッセイにおける、フェニレフリン(10−6M)により生じる収縮効果の増加の棒グラフを示し、実施例IIの結果を示す。
【図3】図3は、コントロール、およびNOドナーで予め処置した後の、インビボの単離−灌流ウサギ杯試験における、時間 対 肺動脈圧における変化のグラフを示し、これは、肺圧に対する効果を有しも(すなわち、肺圧を低下させない)、肺血管緊張を減少させもしない濃度のNOドナーにおける、セロトニンの収縮効果のブロックを示し(Ppaは、NOドナーでの予備処置において低下することが示されていないため)、実施例IIIの結果を示す。
【図4】図4Aは、S−ニトロソチオール(S−ニトロソヘモグロビン)の静脈内注射についての、時間 対 相対平均動脈圧および相対心拍数のグラフであり、実施例IVの結果を示す。時間t=0は、注射を開始した時間である。図4Bは、S−ニトロソチオール(S−ニトロソヘモグロビン)の静脈内注射についての、時間 対 相対平均動脈圧および相対心拍数のグラフであり、実施例IVの結果を示す。アスタリスクは、ベースラインと比較して、p<0.05であることを意味する。時間t=0は、注射を開始した時間である。
【図5】図5は、コントロール、S−ニトロソシステインでの処置およびS−ニトロソシステインエチルエステルでの処置、続くS−ニトロソチオールの洗浄についての棒グラフを示し、ウサギ動脈環バイオアッセイにおける%収縮を示し、そして実施例Vの結果を示す。
【図6】図6Aは、虚血の誘導を伴わない、および虚血の誘導を伴う、イヌの冠状血流へ注射に対するS−ニトロソシステインに以前に曝露された赤血球細胞の効果を示し、そして実施例IVの結果を示す。図6Bは、虚血の誘導を伴わない、および虚血の誘導を伴う、全身血圧に対する、S−ニトロソシステインまたはS−ニトロソアルブミンのイヌへの注射の効果を示し、そして実施例VIの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
本発明者らは、ここで、本明細書中の本発明の第1の実施形態の方法、すなわち、病理学的状態(平滑筋の収縮または増殖を含む)を有する患者またはそのような危険性のある患者(再狭窄もしくは血小板塞栓症の急性血栓性合併症または他の血栓塞栓性現象を有する患者を除く)の予防または処置のための方法について議論し、この方法は、平均動脈圧または肺動脈圧を10%より多く(例えば、5%より多く)急激に低下させるには不十分な治療的有効量で、平均動脈圧または肺動脈圧を10%より多く急激に低下させ得るNOドナーを投与する工程を包含する。
この処置は、平滑筋の収縮または増殖を含む病理学的状態を有する患者に関する。
【0014】
この予防は、平滑筋の収縮または増殖を含む病理学的状態の危険性のある患者に関する。
【0015】
平滑筋の収縮または増殖を含む病理学的状態は、例えば、急性冠状痙攣(例えば、アンギナ、心筋梗塞および全ての虚血症状から)、肺高血圧症(例えば、心不全、一次肺高血圧症および慢性閉塞性肺疾患(すなわち、COPD)による)、全身性高血圧症、喘息、直腸痙攣、食道痙攣、幽門狭窄症、および発作である。この中で、冠状痙攣、肺高血圧症、全身性高血圧症および心不全が、血管平滑筋の疾患である。喘息は、気道平滑筋に関する。直腸痙攣および食道痙攣ならびに幽門狭窄症は、胃腸平滑筋に関する。全てのこれらの病理学的状態は、心不全を除く平滑筋の収縮に関する。肺高血圧症、幽門狭窄症および喘息は、平滑筋の増殖に関する。全身性高血圧症に関して、本発明は、平均動脈圧の急激な低下を引き起こさず、長期にわたる(例えば、2週間にわたる)減少を引き起こし(鬱病の処置と類似);これは、高血圧の大部分の場合において重要な効果であり、ここで、危険性が長年にわたって蓄積し、そして急性の効果は関連していない。
【0016】
本発明者らは、ここで、次に、投与されるNOドナーについて記載する。NOドナーは、酸化窒素または関連する酸化還元種を提供し、そしてより一般には、酸化窒素とともに同定される活性(例えば、血管緊張低下、またはレセプタータンパク質(例えば、rasタンパク質、アドレナリン作用性レセプター)、NFκBの刺激もしくは阻害)である酸化窒素生体活性を提供する。NOドナーは、S−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、C−ニトロソ化合物およびN−ニトロソ化合物、およびそれらのニトロソ誘導体、および金属NO複合体を含むが、本明細書で有用であり、本明細書中に参考とて援用される「Methods in Nitric Oxide Research」 Feelisch、M.およびStamler、J.S.編、John Wiley&Sons、New York、1996、71〜115頁に記載されているその他のNO生体活性生成化合物を排除しない。本明細書で有用である、ニトロソが三級炭素に結合しているC−ニトロソ化合物であるNOドナーとしては、米国特許出願第09/695,934号に記載される化合物が挙げられる。本明細書で有用なS−ニトロソチオールを含むS−ニトロソ化合物の例としては、例えば、S−ニトロソグルタチオン、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン、S−ニトロソ−システインおよびそのエチルエステル、S−ニトロソシステイニルグリシン、S−ニトロソ−γ−メチル−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−γ−チオ−L−ロイシン、S−ニトロソ−δ−チオ−L−ロイシン、およびS−ニトロソアルブミンが挙げられる。本明細書で有用なその他のNOドナーの例は、ニトロプルシッドナトリウム(ニプライド)、亜硝酸エチル、ニトログリセリン、モルシドミンであるS1N1、フロキサミン、N−ヒドロキシ(N−ニトロソアミン)およびNOまたは疎水性NOドナーで飽和されたパーフルオロカーボンである。本明細書におけるNOドナーは、投与される用量が十分高い場合、血圧または肺動脈圧を急速に低下させるものである。本明細書における発見は、これらの同一のNOドナーが、収縮をなおブロックし得、そしてそれ故、平滑筋の病理学的収縮を改善(そしてそれに対して予防)し、そして血圧または肺動脈圧を急速に低下しない、より低い用量でレセプターを脱感作し得るということである。平均動脈圧または肺動脈圧を10%より多く低下し得るNOドナーという用語は、本明細書では、その投与が、用量が十分に高い場合、平均動脈圧または肺動脈圧を10%より多く低下するNOドナーを意味し、そして、本明細書では、その投与が、用量にかかわらず、平均の動脈圧の10%より多い急速低下を引き起こさないNOドナーを区別するために用いられる。用量にかかわらず、平均動脈圧の10%より多い急速低下を引き起こさないNOドナーは、Bing、R.J.ら、Biochem.Biophys.Res.Com.275、350〜353(2000)中に記載され、そしてその中で、2−ヒドロキシ安息香酸3−ニトロオキシメチルフェニルエステルと、そしてまたB−NODと称されており;B−NODが、ある用量で、平均動脈圧または肺動脈圧の10%より多い低下を急速に引き起すか否かにかかわらず、本明細書におけるNOドナーからB−NODを排除することが意図される。
【0017】
上記に示したように、NOドナーの投与は、平均動脈圧または肺動脈圧の10%より多い低下を急速に引き起すに不十分である、例えば、5%より多い(そしてそれ故、先には有効でないとみなされる)治療的に有効である量である。さらに、用量は、標準的な医療アプローチ(例えば、肺気量測定法)により測定したとき、喘息の処置または予防のためにFEV1を10%以上上昇させるには不十分であり(そしてそれ故、先には有効でないとみなされる)、標準的な医療アプローチ(例えば、マノメトリー)により測定したとき、直腸痙攣の処置または予防で10%より多く胃腸管筋肉緊張を低減するには不十分であり、標準的な医療アプローチ(例えば、マノメトリー)により測定したとき、食道痙攣の処置または予防で10%より多く食道平滑筋緊張を低減するには不十分であり、および標準的な医療アプローチ(例えば、マノメトリー)により測定したとき、幽門狭窄の処置または予防で10%より多く幽門を拡張するには不十分である。
【0018】
治療的に有効な量は、処置される状態の症状を改善する量であるか、または予防の場合、本発明の投与なくして生じる強度より少なく生じる症状が生じること、または引き起こすことを防ぐ量である。急性心臓痙攣には、改善される症状(単数または複数)は、胸痛、低酸素血症および心筋梗塞または梗塞のサイズが低減されることを含む。肺高血圧には、改善される症状(単数または複数)は、心不全、息切れまたは咳を含む。全身性高血圧には、改善される症状(単数または複数)、兆候は、頭痛を含むが必ずしも存在している必要はない。喘息には、改善されるべき症状(単数または複数)は、息切れ、咳および喘鳴を含む。直腸痙攣には、改善される症状は、痛みを含む。食道痙攣には、改善される症状は、痛みを含む。幽門狭窄には、改善される症状(単数または複数)は、痛みおよび不十分な食物摂取を含む。発作には、改善される症状は、認識、感覚、および運動症状を含む。すべてのこれら場合に、予防は、リスクにあるこれらへの投与を含み、症状が起こることを防ぐか、または症状(単数または複数)を、投与されずに生じる症状より低い症状を引き起こし、そして処置は、たとえ無症候であるとしても疾患または状態を有するこれらへの投与を含む。
【0019】
一般に、第1の実施形態のために治療的に有効な量を投与することは、100ピコモル濃度〜100マイクロモル濃度の血液中のNO濃度を達成する量(投与される薬物、および処置されるか、またはそのリスクにある疾患に依存する)(これは、平均の動脈圧の10%より多い低下を急速に引き起す量より低く、例えば、5%より多くであり、例えば、少なくとも50%の平滑筋弛緩を引き起こす量より少なく、すなわち、マイクロモル量であるか、または肺動脈圧を10%より多く低下する濃度より少ない濃度、例えば5%より多くを達成する量での投与を含む。薬物の量は、NOドナーおよび疾患状態に依存して変動し得る。
【0020】
NOドナーについて第1の実施形態のための投与の経路は、例えば、静脈内、噴霧、エアロゾル、局所、舌下、および皮下を含むが、動脈内ではない。例えば、亜硝酸エチルは、ガスとして、または注射で投与され得る。
【0021】
本発明者らは、ここで、本明細書における本発明の第2の実施形態の方法について記載し、それは、システイン残基を有するレセプターまたはその他のシステイン含有タンパク質と関連する疾患をもつか、またはそのリスクにある患者の予防または処置のための方法であり、これは、NOドナーにより改変され、その機能を阻害するか、または刺激し、平均の動脈圧または肺動脈圧を10%より多く急速に低下し得るNOドナーを、上記患者に、平均の動脈圧または肺動脈圧を10%より多く急速に低減するに不十分である、例えば、5%より多く、治療的に有効な量で投与する工程を包含する。
【0022】
システイン残基を有するレセプターは、セロトニンレセプター、アドレナリン作動性レセプター、NMDAレセプター、リヤノジンレセプター、ムスカリニンレセプター、およびキニンレセプターを含む。第2の実施形態の1つの亜属では、システイン残基を有するレセプターはまた、膜レイプターを含む。第2の実施形態の異なる亜属では、システイン残基を有するレセプターはまた、膜レセプターを含まない。
【0023】
NOドナーによって改変され、その機能を阻害するその-他のシステイン含有タンパク質は、NFκB、AP1、ras、Naチャネル、Ca2+チャネル、Kチャネル、およびプリオンタンパク質を含む(Stamler、J.S.、Cell、2001を参照のこと)。
【0024】
本明細書中の第2の実施形態で処置可能なセロトニンレセプターと関連する疾患は、例えば、うつ病、ストレス、不安およびアテローム硬化を含む。
【0025】
アドレナリン作動性レセプターと関連する疾患は、例えば、全身的高血圧、肺高血圧および冠状動脈疾患を含む。
【0026】
NMDAレセプターと関連する疾患は、例えば、アテローム硬化、神経変性、アルツハイマー病、痴呆、パーキンソン病、ストレスおよび不安を含む。
【0027】
本発明者らは、ここで、膜レセプターについて記載する。第2の実施形態の1つの亜属では、NOドナーは、赤血球細胞中にある、例えば、AEIタンパク質のような膜レセプターを改変するために投与され;これは、赤血球細胞による血管収縮の発生を防ぎ、そして心臓発作、発作、肺高血圧および全身性項血圧の関連リスクを低減し、そしてそれ故、赤血球細胞と関連する心臓血管毒性を和らげる。この亜属の方法は、NOドナーを、平均の動脈圧および肺動脈圧を10%より多く急速に低減するには不十分、例えば、5%より多くである量であるが、赤血球細胞の血管収縮効果を防ぎ、そして、虚血障害、鎌状赤血球症、およびサラセミアに対して予防または処置するために赤血球細胞に負荷する治療量で注入する工程を包含する。
【0028】
本発明者らは、ここで、レセプターではないシステイン含有タンパク質について記載する。
【0029】
NFκB、Ca2+チャネルおよびKチャネルと関連する疾患は、発作および心不全を含む。
【0030】
レセプターではないその他のシステイン含有タンパク質と関連する疾患は、プリオン関連疾患、例えば、クロイツフェルト‐ヤーコプ病、クールー病およびウシ海綿状脳症、ならびに悪性過温症を含む。
【0031】
本発明者らは、ここで、第2の実施形態の方法について、一般に記載する。
【0032】
この処置は、疾患を有するものへの投与を含む。
【0033】
予防は、疾患のリスクにあるものへの投与を含む。
【0034】
投与されるNOドナーは、第1の実施形態の場合におけるのと同じである。
【0035】
ここで、本発明者らは、第2の実施形態において投与されるNOドナーの量に転じる。上記で示されたように、これは、平均動脈圧または肺動脈圧を10%より多く、例えば、5%より多く急性的に低下させるのに不十分であり、かつ血管径を10%未満で変化させる、治療有効量のNOドナーである。
【0036】
第2の実施形態についての治療有効量は、処置されている疾患の症状を改善させる量であるか、または予防の場合においては、症状が発生するのを予防するか、または本発明の投与なしで生じる症状の強さより低い強さで生じる症状の発生を引き起こす量である。抑うつを処置または予防について、この量は、抑うつの症状(例えば、病的な気分、睡眠障害および悲嘆、喜びまたは楽しみを経験することができないこと)の存在または発生を改善するのに、有効な量である。ストレスの処置または予防について、この量は、恐れおよび不安の存在または発生を改善するのに有効な量である。不安の処置または予防について、量は、情動不安、異常な疲労感、集中困難、神経過敏、筋肉の緊張および睡眠障害の症状の存在または発生を改善するのに有効な量である。アテローム硬化症の処置または予防について、この量は、血管痙攣、虚血、心筋梗塞、アテローム性硬化症病変の進行および心不全の症状の存在または発生を改善するのに有効な量である。高血圧の処置または予防について、この量は、症状(例えば、頭痛)を改善するために血圧を制御し、そして発作または他の合併症を予防するのに有効な量である。肺高血圧の処置または予防において、この量は、上記のような症状の存在または発生を改善するのに有効な量である。心不全の処置または予防において、この量は、息切れ、疲労、運動不耐性、および脚のむくみの症状の存在または発生を改善するのに有効な量である。ぜん息またはCOPDの処置または予防において、この量は、上記のような症状の存在を改善するのに有効な量である。神経変性の処置または予防において、この量は、認識障害、運動障害、知覚障害および前庭障害の症状の存在または発生を改善するのに有効な量である。アルツハイマー病の処置または予防において、量は、記憶喪失または標準的な教科書に列挙されるような他の障害の症状の存在または発生を改善するのに有効な量である。痴呆の処置または予防において、この量は、認識症状または標準的な教科書に定義されるような他の関連障害の症状の存在または発生を改善するのに有効な量である。プリオン関連疾患の処置または予防において、この量は、認識症状または精神学的障害の症状の存在または発生を改善するのに有効な量である。冠状動脈疾患の処置または予防において、この量は、疼痛または心筋梗塞の症状の存在もしくは発生を改善するか、またはその大きさを減少させるのに有効な量である。関与する赤血球細胞の処置または予防において、この量は、赤血球細胞の血管収縮効果を防止するのに有効な量である。
【0037】
本明細書中で使用される用量は、レセプターを脱感作させ、そして感受性低下が、症状の発生および強さを媒介するかまたは増強させる疾患に関与する他のタンパク質を変化させるのに十分であるので、利益が得られる。例えば、アテローム硬化症の予防または処置について、第2の実施形態の投与は、血管痙攣、虚血梗塞および心筋梗塞に対する感受性を無効にする。レセプターおよび他の疾患関連タンパク質が関与する他の疾患を脱感作するのに機能的な投薬量は、脈管緊張に何ら影響しない投薬量を含むので、利益が得られる。本明細書での目標は、脈管緊張にも血圧にも影響することなく、感受性低下を緩和することである。第2の実施形態に使用される投薬量は、脈管緊張に影響することなく、感受性低下を緩和させる投薬量である。
【0038】
一般的に、第2の実施形態についての治療有効量を投与することは、100ピコモル〜100マイクロモル(投与される薬物および処置される疾患または危険性のある疾患に依存する)のNOドナーの血中濃度を提供するための投与を含み、これは、平均動脈圧または肺動脈圧を10%よりも多く、例えば、5%よりも多く急性的に低下させる量より低く、例えば、NO生体活性のマイクロモル量、または等価量より低い。
【0039】
本明細書中での第2の実施形態についての投与経路としては、例えば、静脈内、経口、皮下、噴霧、が挙げられるが、動脈内ではない。
【0040】
ここで、本発明者らは、本明細書での第3の実施形態に転じる。すなわち、NOドナーおよび血圧増加の必要ある患者を処置するための本明細書での方法は、患者の動脈に治療有効量のNOドナーを直接投与する工程を包含する。
【0041】
この方法のための患者としては、例えば、敗血症または平均動脈圧が90mmHgより低いか、もしくは収縮期血圧が90mmHgより低い、任意の原因の起立性低血圧または低血圧の障害に罹患する患者が挙げられる。
【0042】
NOドナーは、上記のドナーであり、例えば、S−ニトロソヘモグロビンおよびS−ニトロソグルタチオンが挙げられる。
【0043】
治療有効量は、処置されている障害の症状を軽減し、そして平均動脈圧を少なくとも約10%、例えば、90mmHgから100mmHgまで上昇させる量である。この量は、投与される薬物に依存するが、一般的に、ナノモル〜マイクロモルの薬物血中濃度を提供する。
【0044】
この方法は、平均動脈圧を急性的に低下させることなく、第1および第2の実施形態について記載された投薬量と比較して、増加した投薬量を可能にすることにおける、上記の第1および第2の実施形態に関する。
【0045】
ここで、本発明者らは、本明細書での第4の実施形態に転じる。すなわち、心臓血管症候群に罹患するか、またはその危険性を有する患者の予防または処置のための本明細書での方法は、平均動脈圧または肺動脈圧を10%より多く、例えば、5%より多く急性的に低下させるのに不十分な、治療有効量のチオールを投与する工程を包含する。
【0046】
用語「心臓血管症候群」は、心臓疾患、発作、一過性虚血発作、虚血性冠動脈症候群、末梢血管疾患、跛行、インポテンス、および腸間膜虚血または他の器官の虚血を意味するように本明細書で使用される。
【0047】
処置は、心臓血管症候群に罹患する患者に関する。
【0048】
予防は、心臓血管症候群の危険性にある患者に関する。
【0049】
第4の実施形態において有用なチオールは、血液に加えられた場合、血液中のS−ニトロソチオール形成を促進する、すなわち、内因性S−ニトロソチオールの循環レベルの増加を引き起こすチオールである。用語「循環」は、血液中の循環を意味するように使用される。チオールを血液に加えて循環する内因性S−ニトロソチオールのレベルを上昇させることは、Lipton,Nature,2001に記載される。
【0050】
第4の実施形態における使用にとって適切なチオールとしては、例えば、グルタチオンおよびN−アセチルシステインが挙げられる。
【0051】
第4の実施形態について治療的に有効な量は、S−ニトロソチオールの循環レベルの増加を引き起こし、それによって処置されている患者の病理学的状態の症状を改善する量、あるいは予防として症状の発生または誘発を防ぐ量であり、この量は、本発明の投与なしで生じる症状の強度よりも、より低い強度の症状を生じさせる。アンギナの処置について、例えば、治療有効量は、アンギナを改善する量である。S−ニトロソチオールの循環レベルの増加は、Feelisch,M.およびStamler,J.S.,「Methods in Nitric Oxide Research」、John Wiley & Sons,New York,1996に記載されるように測定され得る。
【0052】
一般に、第4の実施形態について治療的に有効な量を投与する工程は、1ナノモル濃度〜10ミリモル濃度(投与される薬物および処置される疾患、または投与の危険性に依存する)の投与されたチオールの血中濃度を提供するための投与を包含し、これは、平均動脈圧および肺動脈圧を10%より多く(例えば、5%より多く)急性に低下させる量より少ない量である。
【0053】
第2の実施形態についての投与経路としては、例えば、経口投与および静脈内投与が挙げられる。
【0054】
従って、本明細書中の第4の実施形態において、チオール(例えば、グルタチオンまたはN−アセチルシステイン)は、患者に、例えば、経口投与または静脈内投与で、血圧または肺動脈圧を急性に変更しない濃度にて与えられ、内因性S−ニトロソチオールの循環レベルを上昇させる。Lipton(Nature,2001)は、血液に添加されたチオールがS−ニトロソチオール形成を促進することを示している。本明細書中の第4実施形態は、平均動脈圧または肺動脈圧に有意な程度で急性に影響しないチオールの量を投与することにおいてLiptonとは異なる。
【0055】
以下の実用的な実施例は、本発明についての科学的な基準を示すか、または本明細書中の本発明発に従う処置もしくは予防に関する。
【実施例】
【0056】
(実施例I)
血管輪バイオアッセイを、Stamler,J.S.,PNAS 89,8087〜8091(1992)に記載されるように、マウス大動脈輪に対して実行した。このアッセイは、力変換器に取り付けたマウス大動脈輪を配置する溶液チャンバを伴い、この溶液を、21% O/5% CO/バランスNで泡立てる。この力変換器は、収縮影響および弛緩影響に応じてペンを移動させて、図表上においてX軸における時間に対するY軸における力(張力)の追跡を得る。
【0057】
後記のような種々の薬剤をこの大動脈輪に適用して、収縮影響および弛緩影響を得る。X軸における時間に対するY軸における力(張力)の追跡を得、上向きは収縮を示し、下向きは弛緩を示す。
【0058】
実験条件および結果(追跡)を、図1に示す。図1に示すように、1g濃度範囲が存在する。これは、1gの張力が適用されることを意味する。10分間を示すX軸の距離を、図1左に示す。図1において、「PE」とは、収縮剤であるフェニレフリンの適用を意味する。特定の時間におけるフェニレフリンの濃度を示す。「ACh」とは、アセチルコリンの適用(これは、内因性酸化窒素に応じて弛緩影響を引き起こす)を意味する。特定の時間におけるフェニレフリンの濃度を示す。「GSNO」とは、NOドナーであるS−ニトロソグルタチオンの適用を意味する。特定の時間におけるS−ニトロソグルタチオンの濃度を示す。
【0059】
図1に示すように、フェニレフリンを適用する。0時点にて10−8モル濃度で始めて10−5.5モル濃度まで増加させる。これにより、収縮影響が引き起こされる。図1にさらに示されるように、その後、アセチルコリンを適用する。10−9モル濃度から10−6.5モル濃度まで増加させる。アセチルコリンは、内因性NOの産生を引き起こす結果として、弛緩応答を引き起こす。図1にさらに示されるように、その後、フラッシングを3回行い、その後、もう1回行う。このフラッシングは、(本明細書中で以後の実施例IIIに記載されるクレープス−ヘンゼライト溶液を用いて)行う。このフラッシングは、アセチルコリンを除去する。図1にさらに示されるように、その後、フェニレフリンを適用する。10−7モル濃度で始めて10−5.5モル濃度まで増加させる。これにより、以前のアセチルコリン適用にも関わらず、収縮応答が引き起こされる。図1にさらに示されるように、その後、S−ニトロソグルタチオンを適用する。1ナノモル濃度から始めて、10マイクロモル濃度まで増加させる。これにより、弛緩(収縮減弱)影響が引き起こされる。図1にさらに示されるように、その後、フラッシングを、(クレープス−ヘンゼライト溶液を用いて)3回行う。その後、同じフラッシング剤を用いてフラッシングをさらに1回行う。このフラッシングは、S−ニトロソグルタチオンを除去する。図1にさらに示されるように、その後、フェニレフリンを10−7モル濃度で適用し、10−5モル濃度まで増加させる。これによっては、収縮応答は引き起こされない。
【0060】
この実験は、内因性NOとは異なり、NOドナーの適用がアドレナリン作用性レセプターを改変し、かつアドレナリン作用性アゴニスト(フェニレフリン)が作動するのを防ぐこと、およびNOドナーによる事前処置によって、その後のアドレナリン作用性アゴニストに対する応答がブロックされることを、示す。
【0061】
(実施例II)
血管輪バイオアッセイを、以下のように実行した:大動脈輪(3mm)をニュージーランド白色ウサギから採取し、クレープス−ヘンゼライト溶液を満たした25ml組織浴中に取り付け、21% O/5% CO/バランスNで泡立てた。等尺性張力を測定した。この研究におけるすべての輪は、同様のベースライン張力レベル(約2g)にて吊るした。この組織浴を、介入の間に新しい緩衝液を用いて徹底的にリンスした。
【0062】
3回実行した。コントロールと示されるある実行において、添加物は何も添加しなかった。第2の実行において、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)を添加して濃度1μMを得た(この濃度は、休止緊張に対して何の影響も有さないが、以下に示すように収縮を防ぐ)。第3の実行において、SIN1を添加して、濃度1μMを得た。これらのNOドナーは、使用した濃度において弛緩影響を引き起こさなかった。
【0063】
実施例Iに記載したように溶液を用いてフラッシングした後、各場合においてフェニレフリンを添加して、濃度1μM〜10μMを得た。
【0064】
これらの結果を図2に示す。図2において、緊張の増加%を、Y軸にて示し、添加剤または添加剤が存在しないこと(コントロール)を、X軸において示す。
【0065】
図2に示すように、コントロールの場合について100%を超える緊張の増加が存在し、GSNOおよびSIN1の場合において30%未満の緊張の増加が存在した。このことは、血管の休止緊張に対して何の影響も有さないレベルで使用したこれらのNOドナーが、アドレナリン作用性アゴニスト(フェニレフリン)に対する収縮応答をブロックしたことを示す。従って、ベースライン緊張に影響を与えない濃度のこれらのNOドナーは、その付与される収縮力を弱めたが、血管を弛緩させなかった。
【0066】
(実施例III)
本実施例の実験を、Nozik−Grayck,E.ら、American Journal of Physiology 273,C296〜C304(1997)に記載されるように、ウサギの単離した緩衝液灌流した肺(IPL)において実施した。この緩衝液は、塩化ナトリウム(82.8mM)、塩化カリウム(4.7mM)、一塩基性リン酸カリウム(2.4mM)、重炭酸ナトリウム(25mM)、硫酸マグネシウム(1.2mM)、塩化カルシウム(2.7mM)、およびデキストロース(11.1mM)を含む、pH7.4のクレープス−ヘンゼライト(KH)溶液であった。2.5kg〜3.5kgの重量であるニュージーランド白色ウサギ(May’s Farm,NC)を、5,000Uヘパリンナトリウムを用いて抗凝固処理し、耳の静脈により25mg/kgペントバルビタールナトリウムを用いて麻酔した。左胸壁において切開を行い、心臓を露出させた。この動物から左心室を介して放血し、そして肋骨骨格を切開することによって、胸郭に入った。ステンレス鋼カニューレを気管、主要肺動脈および左心房に配置して、気管(気道)および肺動脈の圧力を測定した。大動脈も肺動脈で結んで、全身循環への灌流液の損失を防いだ。肺を80mlの空気で膨張させ、そして動物レスピレータ(Harvard Apparatus Company,Inc.,S Natick,MA)を用いて30呼吸/分の速度で21% Oおよび5% CO(バランスN)を通気した。一回換気量を調整して、ピーク気道圧8トル〜10トルを維持した。陽圧の呼気圧が2トル〜3トルであった。灌流回路は、力変換器(Model FT100,Grass Instrument Company,Quincy,MA)から自由に吊るされたレザバと、37℃に設定した水加熱器とを含んだ。灌流液を、ローラーポンプ(Sams,Inc.,Ann Arbor,MI)によって循環させ、肺動脈に入る前に気泡トラップを通した。一回換気量を調整して、ピーク気道圧8トル〜10トルを維持した。陽圧の呼気圧が2トル〜3トルであった。灌流回路は、力変換器(Model FT100,Grass Instrument Company,Quincy,MA)から自由に吊るされたレザバと、37℃に設定した水加熱器とを含んだ。灌流液を、ローラーポンプ(Sams,Inc.,Ann Arbor,MI)によって循環させ、肺動脈に入る前に気泡トラップを通した。灌流液を左心房に戻し、その後、肺の最下部に設定したレザバに戻して、左心房圧0を得た。灌流をゆっくり始め、100ml/分まで徐々に増加させた。血液を含まない肺を500ml緩衝液でリンスした後、再循環系を確立した。この回路中の全容量は、約250mlであった。平均肺動脈圧(Ppa)を、圧力変換器(P231D、Gould Statham Instruments,Inc.,Hato Ray,PR)を使用して測定した。
【0067】
3回実行した。ある場合(コントロール)において、添加物をこの再循環系には注入しなかった。第2の場合において、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)(50μM)をこの再循環系に注入して、ナノモル濃度〜マイクロモル濃度のGSNOを得た。第3の場合において、SIN1(100μM)をこの再循環系に注入して、ナノモル濃度〜マイクロモル濃度のSIN1を得た。GSNO(50μM)およびSIN1(100μM)を注入しても、Ppaに変化は引き起こされなかった。
【0068】
60分後、セロトニン作用性アゴニストであるセロトニンを、この3つの場合各々において再循環系中に注入して、1マイクロモル濃度を得た。
【0069】
それらの結果を図3に示す。図3において、黒丸は、GSNOを用いた実行を示し、黒三角は、SIN1を用いた実行を示し、白四角は、コントロールを示す。Y軸は、ベースラインからのPpa変化を示す(ベースラインとは、NOドナーを添加する前である)。図3に示すように、両方のNOドナーは、肺血管収縮症候群および肺虚血症候群に関係付けられているアゴニスト(セロトニン)による収縮を防いだ。
【0070】
さらに、圧力変換器を使用して測定した気管圧(気道圧)は、これらのNOドナーによって変化されなかった。
【0071】
(実施例IV)
ラット(n=4)に、大腿静脈を介して、200nmol/kgのS−ニトロソチオール(S−ニトロソヘモグロビン)を注入した。平均動脈圧(MAP)および心拍数(HR)を測定した。結果を図4Aに示す。図4Aに示すように、静脈内注入は、休止血圧に対しても心拍数に対しても、何の影響も有さなかった。より高用量のS−ニトロソチオールは、血圧が低下することを引き起こした。
【0072】
別の場合において、ラット(n=4)に、大腿動脈を介して、200nmol/kgのS−ニトロソチオール(S−ニトロソヘモグロビン)を注入した。平均動脈圧(MAP)および心拍数(HR)を測定した。結果を図4Bに示す。図4Bに示すように、動脈内注入は、平均動脈圧および心拍数を増加させた。
【0073】
図4Aおよび図4Bにおいて、連続線は、平均動脈圧(MAP)を示し、破線から構成される線は、心拍数(HR)を示す。
【0074】
(実施例V)
赤血球(RBC)を、S−ニトロソシステインまたはS−ニトロソシステインエチルエステル(1:10の比のNO対ヘモグロビン)で5分間処理して、赤血球に、S−ニトロソシステインまたはS−ニトロソシステインエチルエステルを負荷して、AEIタンパク質を含む膜レセプター(Pawloski,Nature,2001)をニトロシル化し、その後、遊離S−ニトロソチオールを洗浄した。このニトロソチオール負荷赤血球およびコントロール赤血球を、(実施例IIの第1段落に記載される)ウサギ動脈輪バイオアッセイにおいてインキュベートした。結果を図5に示す。図5に示すように、コントロール赤血球は、血管の収縮を生じる。収縮の量は、10−6Mフェニレフリンにより生じる量を超える。図5(S−ニトロソシステイン処理した赤血球がCysNO−RBCで示され、S−ニトロソシステインエチルエステル処理した赤血球がCysNOEE−RBCで示されている)に示すように、この収縮は、レセプターのS−ニトロシル化により減弱される。このS−ニトロソチオール処理は、血管の弛緩を生じない。同様の結果が、これらのニトロソチオールをこのバイオアッセイにおいて赤血球と同時インキュベートした場合に、観察される。
【0075】
(実施例VI)
以前にS−ニトロソシステイン(1:1,000〜1:10のNO対ヘモグロビン比)に曝露して膜レセプターをニトロシル化した赤血球は、イヌにおける冠状血管流に対して何の影響も有さなかった(図6Aの「ベースライン」棒グラフを参照のこと)が、イヌにおいて虚血を誘導した場合に、冠状血流を改善した(図6Aの「虚血」棒グラフを参照のこと)。この膜レセプターをニトロシル化した赤血球は、血圧に対して何の影響も有さない。
【0076】
別の場合において、S−ニトロソシステイン(3nmol/kg)またはS−ニトロソアルブミン(10nmol/kg)を、イヌに全身注入する。応答を図6Bに示す。図6Bに示すように、S−ニトロソシステインの注入は、イヌを虚血性にした場合にさえ、全身血圧に対して何の影響も有さない。S−ニトロソアルブミン注入に対する応答は、全く異ならない。NOドナーの注入は、赤血球における膜レセプターとの反応を生じる。図6Aに示すように、赤血球における膜レセプターとの反応は、虚血性動物において冠状血流を増加させ得るが、健常(正常酸素状態(normotoxic))動物においては冠状血流を増加させ得ない。
【0077】
(実施例VII)
急性血管痙攣性アンギナの再発性のエピソードを訴える70歳の男性を、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)で、経口で1〜1,000μgにて、1日4回処置する。血圧は変化せず、そして急性の症状は消散する。さらに、血管痙攣性腰痛の頻度が、引き続く3週間にわたって低下する。
【0078】
(実施例VIII)
一次肺高血圧症クラスIIを罹患する27歳の白人女性は、短い呼吸の病訴を示す。彼女に、1ccの生理食塩水中10mMのGSNOを、1日3回噴霧して与える。短い呼吸の症状は消散するが、肺動脈圧および全身圧力は、急激な投与により変化しない。治療の4ヵ月後、肺動脈圧は5mm水銀低下し、そしてこの患者の症状は改善された。この患者は引き続いて、経口のGSNOを、1日3回の10μgにて受け、そして用量は、血圧のいずれの有意な変化をも防ぐように、実験的に変化される。
【0079】
(実施例IX)
制御が不十分な喘息を罹患する25歳の白人女性は、増悪を示す。彼女を、10ccに噴霧されるS−ニトロソシステインエチルエステル1〜1,000μgの吸入で処置し、これは、気道の緊張を有意には改善しない。しかし、喘息の急性のエピソードは、引き続く3日間にわたって制御下に置かれ、そしてこの患者は、引き続いて、経口でGSNO 10μg Q 6時間を続ける。喘息の増悪の頻度は低下する。
【0080】
(実施例X)
再発性の直腸の痙攣を罹患する60歳の白人男性に、経口で、エタノール(1cc)中0.125%の亜硝酸エチルを1日3回与える。血圧は変化しないが、直腸の疼痛の症状は消散する。次いで、彼は、この治療を続け、直腸の疼痛の発生数を減少させる。
【0081】
(実施例XI)
食道の痙攣を罹患する65歳のアルコール症者に、エタノール中0.125%の亜硝酸エチル2ccを1日3回与える。食道の疼痛の症状は消散し、そして症状は、同じ維持量では再発しない。
【0082】
(実施例XII)
幽門狭窄症を罹患する乳児に、エタノール中0.125%の亜硝酸エチル2ccを1日3回与える。腸管の疼痛の症状は消散する。
【0083】
(実施例XIII)
65歳の男性は、錯乱および頭痛によって明らかにされる、一過性脳虚血発作を示す。頚動脈のドップラーは、右頚動脈の98%の新たな閉塞を示す。心収縮期の血圧は、180mm水銀である。彼は、S−ニトロソシステイニルグリシン10μgの静脈内注入を受け、頭痛が消散する。全身の血圧は、175mm水銀のままである。頭痛および錯乱の症状は消散する。次いで、この患者は、1日3回の1〜10μgの経口S−ニトロソグルタチオンで維持され、一過性脳虚血性の症状の再発はない。
【0084】
(実施例XIV)
50歳の黒人女性は、うつ病の症状を示す。彼女は、1kgあたり10μgの経口のモルシドミン(SIN−1)を開始し、血圧が変化しないように用量を調節する。引き続く3週間にわたって、うつ病の症状は消散し、そしてこの患者は、再発なしで、この用量を維持する。
【0085】
(実施例XV)
高血圧症、糖尿病、および高コレステロール血症(hypercholestolemia)の危険因子、ならびにアテローム性動脈硬化症の強い家族病歴を有する、40歳の白人男性は、跛行および脚部の潰瘍を訴える。彼は、1時間あたり0.3μm/kgの(SIN−1)の注入(合計1mg)を開始し、血圧は変化しない。休息痛の症状は消散する。次いで、彼は、1日3回の経口のS−ニトロソグルタチオン1〜10μgを開始し、運動の持続時間の改善を伴い、休息痛の再発を伴わない。
【0086】
(実施例XVI)
複雑な医療レジメン(アンギオテンシン変換酵素阻害薬、αブロッカー、およびβブロッカーを含む)において、200/90mm水銀の制御されない高血圧症を罹患する、60歳の白人男性は、200/110の血圧を有する。彼は、経口の1日4回の1〜10マイクログラムのGSNOおよび1日3回の0.025%亜硝酸エチル(1cc)を開始する。血圧は変化しない。しかし、引き続く2週間にわたって、血圧は170/100に低下し、彼の疾患のより良好な管理に一致する。彼は、さらなる増悪なしで、これらの用量を維持する。
【0087】
(実施例XVII)
過剰ホモシスチン血症(hyperhomocystenemia)および早期冠状動脈疾患の強い家族病歴を有する56歳は、心臓焼灼を受け、これは、重篤な3つの血管疾患を示す。彼は、彼の休止時の100mm水銀の心収縮期血圧が変化しないように滴定された、経口のGSNOを開始する。彼は、引き続く3年間にわたって、冠状動脈疾患の症状なしに経過がよい。
【0088】
(実施例XVIII)
68歳の女性は、不安およびストレスを訴え、そして血圧または頭痛の変化回避するように滴定された、ニトログリセリン(1/2〜1インチのパッチで1日3回)を開始し、そして症状は、4日間で軽減する。
【0089】
(実施例XIX)
うっ血性心不全を罹患する70歳の白人男性は、低血圧症およびアンギナを発症する。S−ニトロソグルタチオン(200nmol/kg)を、上腕動脈を介して3分間注入する。アンギナが消散する。心収縮期の血圧は、85mmHgから100mmHgに上昇する。
【0090】
(実施例XX)
癌または腎不全の処置に起因して枯渇した赤血球計数を上昇させるためにエリスロポエチンを受けている、65歳の白人男性は、(増加した赤血球の濃度によって引き起こされる)腰痛を発症する。S−ニトロソシステインエチルエステル(1〜10nmol/kg/分)の注入を与え、血圧の変化なしに腰痛を軽減する。
【0091】
(実施例XXI)
腎不全によって枯渇した赤血球計数を上昇させるためにエリスロポエチンを受けている、65歳の白人男性は、(増加した赤血球の濃度によって引き起こされる)腰痛を発症する。N−アセチルシステイン(50ng/kg)の注入を与え、血圧の変化なしに、彼の腰痛を軽減する。次いで、この患者は、N−アセチルシステイン、600ng、経口、1日3回を開始し、そしてアンギナの頻度が低下し、そして血圧が、3週間にわたって低下する。
【0092】
(バリエーション)
多くのバリエーションが、当業者に明らかである。従って、本発明は、特許請求の範囲によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システイン残基を有するレセプターまたは他のシステイン含有タンパク質に関連する疾患を有するかまたはその危険性がある患者の、予防または処置のための組成物であって、該システイン残基を有するレセプターまたは他のシステイン含有タンパク質は、その機能を阻害するようにNOドナーによって改変され、該組成物は、平均動脈血圧または肺動脈圧を10%より多く急性的に低下させるのに不十分な治療有効量で、平均動脈血圧または肺動脈圧を10%より多く急性的に低下させ得るNOドナーを含有する、組成物
【請求項2】
前記レセプターがセロトニンレセプターである、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記疾患が鬱病である、請求項2に記載の組成物
【請求項4】
前記疾患がストレスおよび/または不安である、請求項2に記載の組成物
【請求項5】
前記疾患がアテローム硬化症である、請求項2に記載の組成物
【請求項6】
前記レセプターが、アドレナリン作用性レセプターである、請求項1に記載の組成物
【請求項7】
前記疾患が、全身的高血圧症または肺高血圧症である、請求項6に記載の組成物
【請求項8】
前記疾患が、冠状動脈疾患である、請求項6に記載の組成物
【請求項9】
前記レセプターが、赤血球細胞膜レセプターである、請求項1に記載の組成物
【請求項10】
前記NOドナーが、赤血球中のS−ニトロシレート膜レセプターに対して一定量で含有される、請求項9に記載の組成物
【請求項11】
前記NOドナーが、赤血球が血管収縮を引き起こすことを予防するためであり、かつ心臓発作、発作、肺高血圧症および全身的高血圧症の、関連する危険性を低減する、請求項10に記載の組成物
【請求項12】
前記NOドナーが、虚血障害、鎌状赤血球症またはサラセミアに対して予防するか、あるいはこれらを処置するためのものである、請求項9に記載の組成物
【請求項13】
NOドナーを必要とする患者および血圧上昇を処置するための組成物であって、該組成物は、治療有効量のNOドナーを含有し、そして該患者の動脈に直接投与するように処方される、組成物
【請求項14】
心臓血管症候群を有するかまたは心臓血管症候群の危険性のある患者の予防または処置のための組成物であって、該組成物は、平均動脈血圧または肺動脈圧を10%より多く急性的に低下させるのには不十分な、治療有効量のチオールを含有する、組成物

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−167223(P2009−167223A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113076(P2009−113076)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【分割の表示】特願2003−543600(P2003−543600)の分割
【原出願日】平成14年8月26日(2002.8.26)
【出願人】(507189666)デューク ユニバーシティ (25)
【Fターム(参考)】