説明

血圧情報測定装置用カフの製造方法

【課題】測定時において上腕圧迫用空気袋の圧迫作用面に皺が発生し難い血圧計用カフの製造方法を提供する。
【解決手段】略環状の湾曲した周面301を有する治具300の当該周面301に上腕圧迫用空気袋31の内周面が沿うように治具300に対して上腕圧迫用空気袋31を巻き付けて宛がい、治具300に宛がわれた上腕圧迫用空気袋31の外周面に樹脂プレート32の内周面が沿うように上腕圧迫用空気袋31に対して樹脂プレート32を巻き付けてこれらを接着し、上腕圧迫用空気袋31に宛がわれた樹脂プレート32の外周面に第1袋体37の内周面が沿うように樹脂プレート32に対して第1袋体37を巻き付けてこれらを接着し、樹脂プレート32に接着された第1袋体37の内部にカーラを収容することにより、血圧計用カフを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧情報測定装置用カフの製造方法に関し、特に、装置本体に設けられた中空部に上腕を挿入することで血圧情報が測定可能に構成された血圧情報測定装置に具備される血圧情報測定装置用カフの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧情報を測定することは、被験者の健康状態を知る上で非常に重要なことである。近年においては、たとえば脳卒中や心不全、心筋梗塞等の心血管系疾患のリスク解析に資する代表的な指標としてその有用性が広く認められている最高血圧、最低血圧等を測定することに限られず、脈波を測定すること等によって心臓負荷や動脈硬化度等を捉える試み等もなされている。
【0003】
血圧情報測定装置は、これら血圧情報を測定するための装置であり、循環器系疾患の早期発見や予防、治療等の分野においてさらなる活用が期待されている。なお、血圧情報には、最高血圧、最低血圧、平均血圧、脈波、脈拍、動脈硬化度を示す各種指標等、循環器系の種々の情報が広く含まれる。
【0004】
一般に、血圧情報の測定には、血圧情報測定装置用カフ(以下、単にカフとも称する)が利用される。ここで、カフとは、内腔を有する流体袋を含む帯状または環状の構造物であって生体の一部に装着が可能なものを意味し、気体や液体等の流体を上記内腔に注入することによって流体袋を膨張させて動脈を圧迫することで血圧情報の測定に利用されるもののことを指す。
【0005】
近年、血圧情報としての最高血圧および最低血圧が測定可能に構成された血圧計として、上腕に対するカフの巻き付けを自動的に行なう自動カフ巻付機構を具備したものが普及している。このような自動カフ巻付機構を具備した血圧計が開示された文献としては、たとえば特開平10−314123号公報(特許文献1)や、特開2005−237432号公報(特許文献2)、特開2005−230175号公報(特許文献3)、特開2005−305028号公報(特許文献4)等がある。
【0006】
これら特許文献1ないし4に開示の血圧計にあっては、装置本体に設けられた中空部を取り囲むようにカフが配置され、カフが上腕に巻き付けられる前の状態(すなわち、自動カフ巻付機構によるカフの巻き付けがなされていない状態)において上記中空部の形状が上腕の外形よりも大きい略円柱状に構成され、自動カフ巻付機構が作動することによってカフが上腕の形状にあわせて縮径することにより、カフが上腕にフィットするように構成されている。
【0007】
上記構成が採用された血圧計においては、上腕に対するカフの巻き付け強さが測定毎に一定に保たれるようになるため、安定した測定精度が実現できるメリットが得られるのみならず、煩雑なカフの巻き付け作業が不要になるため、利便性が向上するメリットも得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−314123号公報
【特許文献2】特開2005−237432号公報
【特許文献3】特開2005−230175号公報
【特許文献4】特開2005−305028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通常、カフに内包される流体袋としては、樹脂等からなる比較的軟質のシート状部材を用いて袋状に形成された空気袋が利用される。この空気袋は、上述したように比較的軟質の部材にて構成されているため、カフを生体に巻き付けた状態においてその表面に皺が発生し易いという性質がある。
【0010】
空気袋に皺が発生した場合には、発生した皺に皮膚が巻き込まれることで鬱血を生じさせてしまうといった問題や、空気袋の加減圧時に皺が消滅または減少すること等によって急激な内圧変動が起こることで血圧情報の測定精度に悪影響を与えるといった問題が生じる。また、空気袋に深い皺が発生した場合には、被装着部位を均等に圧迫できないといった問題や、当該皺が空気袋の内部における空気の流動を阻害してそもそも動脈を十分に圧迫できないといった問題も生じる。加えて、カフが装着される被装着部位には個体差があるため、当該被装着部位の形状差(主として周囲長の差や曲率の差等)に起因して皺の発生頻度も異なることになり、皺の発生は、測定精度にばらつきを生じさせてしまう原因ともなる。
【0011】
上述した自動カフ巻付機構を具備した血圧計に具備されるカフにおいても例外ではなく、カフに内包される空気袋の被装着部位に対する圧迫作用面(すなわち、中空部を取り囲むように環状に配置された空気袋の内周面)に生じ得る皺の発生を可能な限り抑制することが重要である。
【0012】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、測定時において生体圧迫用流体袋の圧迫作用面に皺が発生し難い血圧情報測定装置用カフの製造方法を提供することにより、被験者に苦痛を与えることなく高精度に血圧情報の測定が行なえる血圧情報測定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、従来の血圧情報測定装置用カフの製造時において、当該カフを構成する各種部材(生体圧迫用流体袋やこれを生体に巻き付け固定する湾曲弾性板、これらの間に配置される各種シート状の部材等)が概ねフラットな状態で積層配置された後にこれらが略環状の形態を有するように湾曲させられて血圧情報測定装置に組付けられていたことに、上記皺の発生の問題の一因があることを付きとめ、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、従来の製造方法に従ってカフを製造した場合には、上記各種部材が積層配置されてこれが湾曲させられた状態において既に生体圧迫用流体袋の圧迫作用面を構成する内側シート部材に周方向に沿って少なからず余剰部分が発生し、これにともなって圧迫作用面が当初より比較的大きくうねった状態となり、これが生体圧迫用流体袋の膨張時において深い皺を発生させる原因となっていた。そのため、当該製造方法を改善することにより、生体圧迫用流体袋に生じる皺の発生を大幅に抑制することが可能になる。
【0015】
本発明に基づく血圧情報測定装置用カフの製造方法は、生体の一部が挿入可能な中空部に沿って当該中空部を囲むように配置された帯状の形態を有する生体圧迫用流体袋と、上記生体圧迫用流体袋の外周面に接着固定されたシート状の形状維持部材と、上記形状維持部材の外周面に接着固定された帯状の形態を有する袋体と、上記袋体の内部に収容された略環状の形態を有する湾曲弾性板とを備えた血圧情報測定装置用カフを製造するための方法であって、以下の工程を備える。
(a)略環状の湾曲した周面を有する治具の当該周面に上記生体圧迫用流体袋の内周面が沿うように、上記治具に対して上記生体圧迫用流体袋を巻き付けて宛がう工程。
(b)上記治具に宛がわれた上記生体圧迫用流体袋の外周面に上記形状維持部材の内周面が沿うように、上記生体圧迫用流体袋に対して上記形状維持部材を巻き付けて宛がうとともに、上記生体圧迫用流体袋の外周面と上記形状維持部材の内周面とを接着する工程。
(c)上記生体圧迫用流体袋に宛がわれた上記形状維持部材の外周面に上記袋体の内周面が沿うように、上記形状維持部材に対して上記袋体を巻き付けて宛がうとともに、上記形状維持部材の外周面と上記袋体の内周面とを接着する工程。
(d)上記形状維持部材に接着された上記袋体の内部に上記湾曲弾性板を収容する工程。
【0016】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置用カフの製造方法にあっては、上記治具が、円筒状の部材または円柱状の部材にて構成されていることが好ましい。
【0017】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置用カフの製造方法は、上記袋体が、上記湾曲弾性板が収容された第1収容室と、上記第1収容室に収容された上記湾曲弾性板を圧迫することで上記生体圧迫用流体袋を生体に対して巻き付け固定する巻き付け用流体袋が収容された第2収容室とを含んでいる場合に、さらに以下の工程を備えていることが好ましい。
(e)上記袋体を上記形状維持部材に宛がって接着する工程(上記(c)工程)に先立って、上記第2収容室に上記巻き付け用流体袋を収容する工程。
【0018】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置用カフの製造方法にあっては、上記治具の周長が、製造される血圧情報測定装置用カフを用いて測定精度が保証される適用周長の範囲内の大きさであることが好ましい。さらに、その場合には、上記治具の周長が、製造される血圧情報測定装置用カフを用いて測定精度が保証される最大適用周長と最小適用周長の中間の大きさであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定時において生体圧迫用流体袋の圧迫作用面に皺が発生し難い血圧情報測定装置用カフの製造方法を提供することが可能になるため、被験者に苦痛を与えることなく高精度に血圧情報の測定が行なえる血圧情報測定装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従って製造された血圧計用カフを具備した血圧計を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す血圧計を異なる方向から見た場合の概略斜視図である。
【図3】図1および図2に示す血圧計の上腕挿入部の概略縦断面図である。
【図4】図1および図2に示す血圧計の上腕挿入部の概略横断面図である。
【図5】図1および図2に示す血圧計の機能ブロックの構成を示す図である。
【図6】図1および図2に示す血圧計の装着手順を示す図であり、上腕挿入部の中空部に腕を挿し込む様子を示す図である。
【図7】図1および図2に示す血圧計を使用した場合の測定姿勢を示す図である。
【図8】図1および図2に示す血圧計の動作フローを示す図である。
【図9】図1および図2に示す血圧計の上腕挿入部のカフの巻き付け動作前の状態を示す概略縦断面図である。
【図10】図1および図2に示す血圧計の上腕挿入部のカフの巻き付け動作後の状態を示す概略縦断面図である。
【図11】本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従って製造された血圧計用カフの主要部の展開状態における分解斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従った製造フローを示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従った製造過程を示す模式図である。
【図14】本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従った製造過程を示す模式図である。
【図15】本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従った製造過程を示す模式図である。
【図16】本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従った製造過程を示す模式図である。
【図17】本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従った製造過程を示す模式図である。
【図18】本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従った製造過程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、本発明が適用されることで製造された血圧情報測定装置用カフとして、自動カフ巻付機構を具備した上腕式血圧計のカフを例示して説明を行なう。
【0022】
図1および図2は、本実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従って製造されたカフを具備してなる血圧計を示す概略斜視図であり、図1は、当該血圧計を前方右斜め上方から見た場合の図、図2は、前方左斜め上方から見た場合の図である。なお、図1は、血圧計の非使用状態を示しており、図2は、上腕の挿入が可能な位置に上腕挿入部が回動された後の状態を示している。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従って製造されたカフを具備してなる血圧計の外観構造について説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、血圧計1は、装置本体2を備えている。装置本体2は、テーブル等の載置面200(図6および図7参照)に載置される被載置面11を含む本体部10と、上腕が挿入される略円柱状の中空部20aを含む上腕挿入部20とを有している。
【0024】
本体部10は、箱状の外殻を有しており、その下面によって上述した被載置面11が構成されており、その上面の所定位置に表示部42および操作部43が設けられている。本体部10の内部には、後述する制御部40や各種エア系コンポーネント50,60等(図5参照)が主として収容されている。また、表示部42および操作部43に隣接する本体部10の上面の所定位置には、被験者が測定姿勢(図7参照)を採った際に肘を載置するための肘置き12が設けられている。この肘置き12は、たとえば本体部10の上面に凹部を設けること等によって形成されている。
【0025】
上腕挿入部20は、非伸縮性のシェル21および高伸縮性の内布24からなる略円筒状の外殻を有しており、その内周面を規定する内布24の表面によって上述した中空部20aが構成されており、その外周面を規定するシェル21の所定位置に把手部22aが設けられている。この把手部22aは、当該把手部22aを被験者が把持することで上腕挿入部20を容易に回動させることができるように設けられた部位であり、当該把手部22aの近傍には、非使用状態において本体部10にロックされた上腕挿入部20の開錠を可能にする開錠ボタン22bが設けられている。また、上腕挿入部20の内部には、後述するカフが主として収容されている。
【0026】
上腕挿入部20は、たとえばヒンジ等からなる回動連結機構を介して本体部10に回動可能に連結されている。より具体的には、本体部10の前端部寄りの位置と上腕挿入部20の下端部寄りの位置とがヒンジを介して回動可能に連結されることにより、上腕挿入部20が、図2中に示す矢印A方向に沿って回動するように構成されている。これにより、上腕挿入部20は、非使用状態において本体部10上に位置することでコンパクトに収納されることになり、また使用状態において前方に向かって(すなわち被験者側に向かって)傾倒し、中空部20aへの上腕の挿入が可能になる。
【0027】
図3および図4は、図1および図2に示す血圧計の上腕挿入部の断面図であり、図3は、中空部の軸線と直交する平面に沿って上腕挿入部を切断した場合の概略縦断面図、図4は、図3中に示すIV−IV線に沿って上腕挿入部を切断した場合の概略横断面図である。次に、これら図3および図4を参照して、図1および図2に示す血圧計の上腕挿入部の内部構造について説明する。
【0028】
図3および図4に示すように、上腕挿入部20は、上述したシェル21および内布24に加えて、上腕圧迫ユニット30および巻き付けユニット34にて構成されたカフを備えている。上腕圧迫ユニット30は、生体圧迫用流体袋としての上腕圧迫用空気袋31と、形状維持部材としての樹脂プレート32と、滑り板33とを含んでおり、巻き付けユニット34は、湾曲弾性板としてのカーラ35と、巻き付け用流体袋としての巻き付け用空気袋39と、袋体としての第1および第2収容袋37,38とを含んでいる。
【0029】
上腕圧迫用空気袋31、カーラ35および巻き付け用空気袋39は、いずれもシェル21および内布24によって構成される上腕挿入部20の外殻の内部に収容配置されており、径方向に積層されている。これにより、上腕圧迫用空気袋31、カーラ35および巻き付け用空気袋39は、いずれも中空部20aを囲むように配置されている。
【0030】
上腕圧迫用空気袋31は、シェル21および内布24によって構成される空間のうちの最内層に配置されており、内布24に隣接して設けられている。上腕圧迫用空気袋31は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなり、帯状の形態を有している。
【0031】
具体的には、上腕圧迫用空気袋31は、内布24側に位置する内側シート部材31aと、シェル21側に位置する外側シート部材31bとを有しており、内部に膨縮空間31cを含んでいる。上腕圧迫用空気袋31は、内側シート部材31aと外側シート部材31bとが重ね合わされてその周縁が溶着されることによって袋状に形成されている。なお、上腕圧迫用空気袋31の内部に位置する膨縮空間31cは、後述する上腕圧迫用エア系コンポーネント50(図5参照)に接続管を介して接続されている。
【0032】
上腕圧迫用空気袋31を構成する樹脂シートとしては、伸縮性に富んでおり溶着後において膨縮空間31cからの漏気がない材質のものであればどのようなものでも利用が可能である。このような観点から、樹脂シートとしては、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂や、軟質塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂等からなるものが好適に利用できる。
【0033】
カーラ35は、シェル21および内布24によって構成される空間のうち、上腕圧迫用空気袋31の外側に位置する空間に配置されており、径方向に弾性変形することで拡縮可能に構成された略円筒状の部材からなる。より詳細には、カーラ35は、環状の形態を有する可撓性の部材にて構成されており、その周方向における一端部が他端部に重ね合わされている。カーラ35は、上腕圧迫用空気袋31を上腕側に向けて付勢するためのものであり、十分な弾性力を発現するように、好適にはポリプロピレン(PP)樹脂等からなる部材にて構成される。
【0034】
巻き付け用空気袋39は、シェル21および内布24によって構成される空間のうちの最外層に配置されており、シェル21に隣接して設けられている。巻き付け用空気袋39は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなり、帯状の形態を有している。
【0035】
具体的には、巻き付け用空気袋39は、内布24側に位置する内側シート部材39aと、シェル21側に位置する外側シート部材39bとを有しており、内部に膨縮空間39cを含んでいる。巻き付け用空気袋39は、内側シート部材39aと外側シート部材39bとが重ね合わされてその周縁が溶着されることによって袋状に形成されている。なお、巻き付け用空気袋39の内部に位置する膨縮空間39cは、後述する巻き付け用エア系コンポーネント60(図5参照)に接続管を介して接続されている。
【0036】
巻き付け用空気袋39を構成する樹脂シートとしては、伸縮性に富んでおり溶着後において膨縮空間39cからの漏気がない材質のものであればどのようなものでも利用が可能である。このような観点から、樹脂シートとしては、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂や、軟質塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂等からなるものが好適に利用できる。
【0037】
上述した上腕圧迫用空気袋31の外周面は、湾曲状の樹脂プレート32によって覆われている。当該樹脂プレート32は、比較的剛性の小さい上腕圧迫用空気袋31の形状を湾曲状に維持するためのものであり、上腕圧迫用空気袋31に固定されている。また、上腕圧迫用空気袋31の一方の径方向端部は、滑り板33によって覆われている。当該滑り板33は、測定時において上腕圧迫用空気袋31の他方の径方向端部が当該一方の径方向端部にスムーズに乗り上げるようにするための部材であり、比較的硬質な部材にて構成されている。
【0038】
また、カーラ35は、第1収容袋37に収容されており、巻き付け用空気袋39は、第2収容袋38に収容されている。これら第1収容袋37および第2収容袋38は、カーラ35の滑りを向上させるための低摩擦部材に相当し、その材質としては、たとえば布地等が利用される。第1収容袋37と第2収容袋38とは、径方向に沿って積層されており、第1収容袋37が内側に第2収容袋38が外側に配置されている。なお、第1収容袋37と第2収容袋38とは、図中に示す符号Eの位置においてのみ固定されている。
【0039】
第1収容袋37は、内布24側に位置する内側布部材37aと、シェル21側に位置する外側布部材37bとを有しており、内部にカーラ35が収容される第1収容室を含んでいる。第2収容袋38は、内布24側に位置する内側布部材38aと、シェル21側に位置する外側布部材38bとを有しており、内部に巻き付け用空気袋39が収容される第2収容室を含んでいる。
【0040】
これにより、樹脂プレート32とカーラ35との間には、樹脂プレート32の外周面を覆うように第1収容袋37の内側布部材37aが介装されることになり、カーラ35と巻き付け用空気袋39との間には、カーラ35の外周面を覆うように第1収容袋37の外側布部材37bが、また巻き付け用空気袋39の内周面を覆うように第2収容袋38の内側布部材38aが介装されることになる。なお、第2収容袋38の外側布部材38bは、シェル21と巻き付け用空気袋39との間に介装されている。
【0041】
このように構成することにより、樹脂プレート32と第1収容袋37とが摺動可能に接触するとともに、第1収容袋37とカーラ35とが摺動可能に接触することになり、樹脂プレート32とカーラ35とが直接接触するように配置された場合に生じる摩擦抵抗の低減が図られる。また、このように構成することにより、第1収容袋37と第2収容袋38とが摺動可能に接触することになり、カーラ35と巻き付け用空気袋39とが直接接触するように配置された場合に生じる摩擦抵抗の低減が図られる。
【0042】
以上により、上腕圧迫用空気袋31を含む上腕圧迫ユニット30が、カーラ35の内周面に沿って周方向にスムーズに移動することが可能になり、また、カーラ35が、巻き付け用空気袋39の内周面に沿って周方向にスムーズに移動することが可能になる。したがって、巻き付け用空気袋39が膨張した場合にカーラ35が縮径することになり、このカーラ35の縮径に伴って上腕圧迫用空気袋31が当該カーラ35の内周面に沿って移動することが許容されることになり、上腕圧迫用空気袋31が縮径することになる。
【0043】
なお、図3に示すように、カーラ35が縮径していない状態(すなわち非巻き付け状態)において、上腕圧迫ユニット30の周方向における一方端Bおよび他方端Cは、互いに離間して配置されており、これら一方端Bおよび他方端Cの間には、隙間Dが設けられている。上腕圧迫ユニット30の周方向における一方端Bにおいては、第1収容袋37の内側布部材37aが折り返されることで上腕圧迫用空気袋31の端部が覆われており、これにより当該一方端Bが湾曲状に構成されている。また、上腕圧迫ユニット30の周方向における他方端Cにおいては、上腕圧迫用空気袋31の端部が滑り板33によって覆われており、これにより当該他方端Cが尖鋭状に構成されている。
【0044】
このように構成することにより、カーラ35が縮径する際に、上記一方端Bが上記他方端Cに容易に乗り上げるようにすることができる。したがって、上腕圧迫ユニット30のスムーズな縮径動作が実現されることになり、上腕圧迫用空気袋31がカーラ35の内周面に沿ってスムーズに移動できることになる。
【0045】
図5は、図1および図2に示す血圧計の機能ブロックの構成を示す図である。次に、この図5を参照して、図1および図2に示す血圧計の機能ブロックの構成について説明する。
【0046】
図5に示すように、血圧計1は、上述した上腕圧迫用空気袋31、巻き付け用空気袋39、表示部42および操作部43に加え、制御部40と、メモリ部41と、電源部44と、上腕圧迫用エア系コンポーネント50と、巻き付け用エア系コンポーネント60とを主として備えている。
【0047】
上腕圧迫用エア系コンポーネント50は、加圧ポンプ51と、排気弁52と、圧力センサ53とを含んでおり、これら加圧ポンプ51、排気弁52および圧力センサ53が、上述した上腕圧迫用空気袋31に接続管を介して接続されている。このうちの加圧ポンプ51および排気弁52は、上腕圧迫用空気袋31を加減圧するための加減圧機構に相当し、圧力センサ53は、上腕圧迫用空気袋31の内圧を検知する圧力検知部に相当する。なお、血圧計1には、上腕圧迫用エア系コンポーネント50の付属回路として、加圧ポンプ駆動回路54、排気弁駆動回路55および発振回路56が別途設けられている。
【0048】
巻き付け用エア系コンポーネント60は、加圧ポンプ61と、排気弁62と、圧力センサ63とを含んでおり、これら加圧ポンプ61、排気弁62および圧力センサ63が、上述した巻き付け用空気袋39に接続管を介して接続されている。このうちの加圧ポンプ61および排気弁62は、巻き付け用空気袋39を加減圧するための加減圧機構に相当する。なお、血圧計1には、巻き付け用エア系コンポーネント60の付属回路として、加圧ポンプ駆動回路64、排気弁駆動回路65および発振回路66が別途設けられている。
【0049】
制御部40は、たとえばCPU(Central Processing Unit)にて構成され、血圧計1の全体を制御するための手段である。メモリ部41は、たとえばROM(Read-Only Memory)やRAM(Random-Access Memory)にて構成され、血圧値測定のための処理手順を制御部40等に実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果等を記憶したりするための手段である。
【0050】
表示部42は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)にて構成され、測定結果等を表示するための手段である。操作部43は、被験者等による操作を受付けてこの外部からの命令を制御部40や電源部44に入力するための手段である。電源部44は、制御部40に電力を供給するための手段である。
【0051】
制御部40は、加圧ポンプ51,61および排気弁52,62を駆動するための制御信号を加圧ポンプ駆動回路54,64および排気弁駆動回路55,65にそれぞれ入力したり、測定結果としての血圧値をメモリ部41や表示部42に入力したりする。また、制御部40は、圧力センサ53によって検出された圧力値に基づいて被験者の血圧値を取得する血圧情報取得部(不図示)を含んでおり、この血圧情報取得部によって取得された血圧値が、測定結果として上述したメモリ部41や表示部42に入力される。また、制御部40は、圧力センサ63によって検出された圧力値に基づいて巻き付け用空気袋39の加圧状態を判別する。
【0052】
なお、血圧計1は、測定結果としての血圧値を外部の機器(たとえばPC(Personal Computer)やプリンタ等)に出力する出力部を別途有していてもよい。出力部としては、たとえばシリアル通信回線や各種の記録媒体への書き込み装置等が利用可能である。
【0053】
加圧ポンプ駆動回路54は、制御部40から入力された制御信号に基づいて加圧ポンプ51の動作を制御する。加圧ポンプ51は、上腕圧迫用空気袋31の膨縮空間31cに空気を供給することにより上腕圧迫用空気袋31の内部の圧力(以下、「カフ圧」とも称する)を加圧するためのものであり、その動作が上述した加圧ポンプ駆動回路54によって制御される。
【0054】
排気弁駆動回路55は、制御部40から入力された制御信号に基づいて排気弁52の開閉動作を制御する。排気弁52は、上腕圧迫用空気袋31の内部の圧力を維持したり、上腕圧迫用空気袋31の膨縮空間31cを外部に開放してカフ圧を減圧したりするためのものであり、その動作が上述した排気弁駆動回路55によって制御される。
【0055】
圧力センサ53は、静電容量型のセンサであり、上腕圧迫用空気袋31の内部の圧力に応じてその静電容量が変化する。発振回路56は、圧力センサ53の静電容量に応じた発振周波数の信号を生成し、生成した信号を制御部40に入力する。
【0056】
加圧ポンプ駆動回路64は、制御部40から入力された制御信号に基づいて加圧ポンプ61の動作を制御する。加圧ポンプ61は、巻き付け用空気袋39の膨縮空間39cに空気を供給することにより巻き付け用空気袋39の内部の圧力を加圧するためのものであり、その動作が上述した加圧ポンプ駆動回路64によって制御される。
【0057】
排気弁駆動回路65は、制御部40から入力された制御信号に基づいて排気弁62の開閉動作を制御する。排気弁62は、巻き付け用空気袋39の内部の圧力を維持したり、巻き付け用空気袋39の膨縮空間39cを外部に開放して内圧を減圧したりするためのものであり、その動作が上述した排気弁駆動回路65によって制御される。
【0058】
圧力センサ63は、静電容量型のセンサであり、巻き付け用空気袋39の内部の圧力に応じてその静電容量が変化する。発振回路66は、圧力センサ63の静電容量に応じた発振周波数の信号を生成し、生成した信号を制御部40に入力する。
【0059】
図6は、図1および図2に示す血圧計におけるカフの装着手順を示す模式図であり、上腕挿入部の中空部に腕を挿し込む様子を示す図である。また、図7は、図1および図2に示す血圧計を使用した場合の測定姿勢を示す模式図である。なお、これら図6および図7においては、被測定部位として左腕の上腕を採用した場合を示している。次に、これら図6および図7を参照して、図1および図2に示す血圧計を使用する場合のカフの装着手順および測定姿勢について説明する。
【0060】
図6に示すように、血圧計1を使用して血圧値を測定する場合には、水平な載置面200を有するテーブル等の上に血圧計1の本体部10を載置し、被験者100はたとえば椅子に着席する。そして、右手で上腕挿入部20に設けられた把手部22aを把持し、開錠ボタン22bを押下して上腕挿入部20を図中矢印A1方向に移動させ、さらに右手で上腕挿入部20の傾角を調整しつつ、左腕の前腕110を上腕挿入部20の中空部20aに挿し込む。
【0061】
被験者100は、左腕をさらに中空部20aの奥に向かって挿し込むことにより、左腕の上腕120が中空部20a内に配置されるようにする。そして、被験者100は、中空部20aに挿し込んだ左腕の肘を軽く曲げ、肘を本体部10の上面に設けられた肘置き12に載せることにより、図7に示す測定姿勢を採る。なお、このとき、上腕挿入部20は左腕の動きに追従して図中矢印A2方向に回動し、最終的に左腕の上腕120の傾角に応じた角度位置にて留まることになる。
【0062】
図8は、図1および図2に示す血圧計の動作フローを示す図である。次に、この図8を参照して、図1および図2に示す血圧計の動作フローについて説明する。なお、このフローチャートに従うプログラムは、メモリ部41に予め記憶されており、制御部40がメモリ部41からこのプログラムを読み出して実行することにより、その処理が実行されるものである。
【0063】
血圧値を測定する際には、被験者100は、上記図7に示す測定姿勢を採り、この状態において本体部10に設けられた操作部43を操作して血圧計1の電源をオンにする。これにより、電源部44から制御部40に対して電力が供給されて制御部40が駆動する。図8に示すように、制御部40は、その駆動後において、まず血圧計1の初期化を行なう(ステップS101)。
【0064】
次に、制御部40は、被験者100の測定開始の指示を待ち、被験者100が測定開始の指示を操作部43を操作することによって与えた場合に、排気弁62を閉塞させるとともに加圧ポンプ61を駆動して巻き付け用空気袋39の加圧を開始し(ステップS102)、巻き付け用空気袋39の内圧が所定値になるまでこれを上昇させ、所定値に達した時点で加圧ポンプ61の駆動を停止して巻き付け用空気袋39の加圧を停止する(ステップS103)。ここで、上記所定値は、巻き付け用空気袋39が十分に膨張して上腕圧迫用空気袋31が上腕120に宛がわれた状態なる圧力値に設定されていることが好ましく、当該所定値に達したか否かは、制御部40に発振回路66から入力される信号に基づいて制御部40が判断すればよい。
【0065】
次に、制御部40は、排気弁52を閉塞させるとともに加圧ポンプ51を駆動して上腕圧迫用空気袋31の加圧を開始してカフ圧を徐々に上昇させる(ステップS104)。この上腕圧迫用空気袋31を加圧する過程において、制御部40は、公知の手順で最高血圧および最低血圧を算出する。具体的には、制御部40は、上腕圧迫用空気袋31のカフ圧を上昇させる過程において発振回路56から得られる発振周波数よりカフ圧を取得し、取得したカフ圧に重畳した脈波情報を抽出する。そして、制御部40は、抽出された脈波情報に基づいて上記血圧値を算出する。
【0066】
ステップS104において血圧値が算出されると、制御部40は、加圧ポンプ51の駆動を停止して上腕圧迫用空気袋31の加圧を停止する(ステップS105)。その後、制御部40は、測定結果としての血圧値を表示部42に表示するとともに、当該血圧値をメモリ部41に格納し(ステップS106)、つづいて、排気弁52を開放することで上腕圧迫用空気袋31内の空気を完全に排気するとともに、排気弁62を開放することで巻き付け用空気袋39内の空気を完全に排気する(ステップS107)。
【0067】
その後、制御部40は、被験者100の電源オフの指令を待ってその動作を終了する。なお、以上において説明した測定方式は、上腕圧迫用空気袋31の加圧時にカフ圧を微速加圧してその際に脈波を検出することで血圧値を測定するいわゆる加圧測定方式に基づいたものであるが、上腕圧迫用空気袋31の減圧時にカフ圧を微速減圧してその際に脈波を検出することで血圧値を測定するいわゆる減圧測定方式を採用することも当然に可能である。
【0068】
図9は、図1および図2に示す血圧計の上腕挿入部のカフの巻き付け動作前の状態を示す概略縦断面図であり、図10は、カフの巻き付け動作後の状態を示す概略縦断面図である。なお、図9および図10に示す上腕120は、左腕の上腕を表わしており、図9および図10に示す断面は、当該上腕120を中枢側から抹消側に向けて見た場合の縦断面である。次に、この図9および図10を参照して、巻き付けユニットによる上腕圧迫ユニットの上腕に対する巻き付け動作について説明する。
【0069】
図9に示すように、上述した図7に示す測定姿勢を被験者100が採った場合には、被験者100の上腕120が上腕挿入部20の中空部20a内に配置されることになる。上腕120の内部には、上腕骨121および上腕大動脈122が位置しており、中空部20aに挿入された腕が左腕の上腕である場合には、上腕大動脈122は、上腕挿入部20の右側部側に位置することになる。
【0070】
この状態において、カフの巻き付け動作が開始され、巻き付け用空気袋39の膨縮空間39cの加圧が開始されて巻き付け用空気袋39が膨張し始めると、上腕挿入部20の上部側に位置する上腕圧迫ユニット30の上記一方端Bおよび上記他方端Cは、カーラ35の縮径動作に伴って、それぞれこれら端部同士が近付く方向(すなわち、図中に示す矢印B1方向およびC1方向)に移動を開始し、これによって上腕圧迫ユニット30が縮径を開始する。
【0071】
被験者の上腕120が比較的太く、上腕120の周囲長が比較的長い場合には、カフの巻き付け動作が進行することによって、上腕圧迫ユニット30の上記一方端Bと上記他方端Cとが重なることなくこれらの間に隙間Dが生じた状態のまま、上腕120の全周囲において上腕表面に内布24が接触することになり、上腕圧迫用空気袋31が上腕120の概ね全周囲にわたって巻き付けられた状態となってカフの巻き付け動作が終了する。
【0072】
一方、図10に示すように、被験者の上腕120が比較的細く、上腕120の周囲長が比較的短い場合には、カフの巻き付け動作が進行することによって、上腕圧迫ユニット30の上記一方端Bと上記他方端Cとが接触して上記一方端Bが上記他方端Cに乗り上げることで重なり、その後、上腕120の全周囲において上腕表面に内布24が接触することになり、上腕圧迫用空気袋31が上腕120の全周囲にわたって巻き付けられた状態となってカフの巻き付け動作が終了する。
【0073】
以上の巻き付け動作を経ることにより、上腕圧迫用空気袋31を含む上腕圧迫ユニット30が被験者の上腕120に巻き付け固定されることになり、当該状態において上腕圧迫用空気袋31を加圧することで当該上腕圧迫用空気袋31の圧迫作用面(すなわち、上腕圧迫用空気袋31の内周面)によって被験者の上腕120が効率的に圧迫されるようになる。
【0074】
図11は、本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従って製造された血圧計用カフの主要部の展開状態における分解斜視図である。次に、この図11を参照して、本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法について具体的に説明するに先立って、当該血圧計用カフのより詳細な組付け構造について説明する。
【0075】
図11に示すように、本実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従って製造されたカフは、上腕圧迫用空気袋31と、樹脂プレート32と、滑り板33と、袋体サブアセンブリ36と、カーラ35とが組み立てられることで製造される。袋体サブアセンブリ36は、第1収容袋37と、第2収容袋38と、巻き付け用空気袋39とが予め組付けられてなるものである。
【0076】
第2収容袋38は、長尺略矩形状の内側布部材38aおよび外側布部材38b(図3および図4等参照)を重ね合わせてその周縁の4辺を縫合または/および溶着等することで袋状の形状に形成されており、その内部に予め巻き付け用空気袋39が収容されてなるものである。
【0077】
一方、第1収容袋37は、短尺略矩形状の内側布部材37aおよび外側布部材37b(図3および図4等参照)を重ね合わせてその周縁のうちの2辺(長手方向に平行な2辺)を縫合または/および溶着等することで長手方向の両端部37B,37Cが開口した袋状の形状に形成されており、その内部を挿通するようにカーラ35がたとえば一端部37B側から図中矢印F1方向に沿って挿入されて他端部37Cから図中矢印F2方向に沿って引き出されるものである。ただし、カーラ35の袋体サブアセンブリ36への組付けは、カフの製造時における組付け性の観点から、上腕圧迫用空気袋31および樹脂プレート32の袋体サブアセンブリ36への組付け後に行なわれることが好ましい。
【0078】
第1収容袋37と第2収容袋38とは、予めこれらが重ね合わされて図中に示す符号Eの位置(長手方向の略中央部の位置)においてのみ縫合/またはおよび溶着等することで固定されている。したがって、第1収容袋37の上記両端部37B,37Cが位置する部分(組付け後において上腕圧迫ユニット30の周方向の一方端Bおよび他方端Cとなる部分)やその近傍においては、第1収容袋37と第2収容袋38とは固定されていない。
【0079】
樹脂プレート32は、平面視した場合にその外形が概ね第1収容袋37に合致する大きさのシート状の部材からなり、第1収容袋37の内周面にたとえば両面テープ等の接着部材によって接着固定される。また、上腕圧迫用空気袋31は、平面視した場合にその外形が概ね樹脂プレート32に合致する大きさとされ、樹脂プレート32の内周面にたとえば両面テープ等の接着部材によって接着固定される。
【0080】
また、滑り板33は、第1収容袋37の他端部37Cが位置する側において、上腕圧迫用空気袋31の端部を覆うように当該上腕圧迫用空気袋31の内周面と第1収容袋37の内周面とに跨るように接着固定される。
【0081】
なお、上記において説明した組付け構造は、理解を容易とするために、実際の組付け手順について説明するに先立って、各部材間の組付け関係を各部材の展開状態に基づいて説明したものに過ぎず、実際の組付け手順については、以下において詳説する。
【0082】
図12は、本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従った製造フローを示す図であり、図13ないし図18は、当該血圧計用カフの製造方法に従った製造過程を示す模式図である。以下においては、これら図12ないし図18を参照して、本発明の実施の形態における血圧計用カフの製造方法の具体的な組付け手順について詳説する。
【0083】
本実施の形態における血圧計用カフの製造方法にあっては、まず、図12に示すように、袋体サブアセンブリ36を製作する(ステップS1)。袋体サブアセンブリ36は、上述したように、第1収容袋37、第2収容袋38および巻き付け用空気袋39をそれぞれ製作し、これらを予め組付けることで製作される。
【0084】
次に、図12に示すように、予め製作された上腕圧迫用空気袋31を治具300(図13および図14等参照)に巻き付けて仮固定する(ステップS2)。より詳細には、図13に示すように、環状の湾曲した周面301を有する円筒状の治具300を準備し、当該治具300の周面301に上腕圧迫用空気袋31の内周面が沿うように、治具300に対して上腕圧迫用空気袋31を巻き付けて宛がい、その後、図14に示すように、仮止めテープ310を用いて治具300に巻き付けた上腕圧迫用空気袋31を仮止めする。
【0085】
次に、図12に示すように、樹脂プレート32を上腕圧迫用空気袋31に接着する(ステップS3)。より詳細には、図15に示すように、治具300に宛がわれた上腕圧迫用空気袋31の外周面に両面テープ等の接着部材71を貼り付け、当該接着部材71が貼り付けられた上腕圧迫用空気袋31の外周面に樹脂プレート32の内周面が沿うように、上腕圧迫用空気袋31に対して樹脂プレート32を巻き付けて宛がう。これにより、図16に示すように、樹脂プレート32が上腕圧迫用空気袋31に接着固定されることになる。
【0086】
次に、図12に示すように、袋体サブアセンブリ36を樹脂プレート32に接着する(ステップS4)。より詳細には、図17に示すように、上腕圧迫用空気袋31に宛がわれた樹脂プレート32の外周面に両面テープ等の接着部材72を貼り付け、当該接着部材72が貼り付けられた樹脂プレート32の外周面に袋体サブアセンブリ36の第1収容袋37の内周面が沿うように、樹脂プレート32に対して第1収容袋37を巻き付けて宛がう。これにより、図18に示すように、第1収容袋37が樹脂プレート32に接着固定されることになる。
【0087】
次に、図12に示すように、上腕圧迫用空気袋31に施していた仮止めテープ310を取り除くことで治具300を取り外し(ステップS5)、その後、カーラ35を袋体サブアセンブリ36の第1収容袋37に挿入する(ステップS6)。以上により、カフの組立てが完了する。なお、滑り板33の取付けは、樹脂プレート32に対する第1収容袋37の接着固定後であれば、どのタイミングで行なってもよい。
【0088】
以上において説明した本実施の形態における血圧計用カフの製造方法に従ってカフを製造することにより、上腕圧迫用空気袋31、上腕圧迫用空気袋31に固定される樹脂プレート32、樹脂プレート32に固定される袋体サブアセンブリ36の第1収容袋37のいずれもが、それぞれ環状に湾曲した状態で固定されることになる。そのため、これらが相互に固定された状態であってかつ環状に湾曲した状態においては、上腕圧迫用空気袋31の圧迫作用面を構成する内側シート部材31aに余剰部分が発生しないことになる。
【0089】
したがって、当該製造方法に従って製造されたカフが、血圧計1の装置本体2の上腕挿入部20に組付けられることにより、上腕圧迫用空気袋31の圧迫作用面にうねりがほぼ生じていない状態が実現されることになる。そのため、上腕圧迫用空気袋31の膨張時において発生する皺の程度や皺が発生する頻度が減少することになり、上腕圧迫用空気袋31に生じる皺の発生を大幅に抑制することが可能になる。
【0090】
このように、本実施の形態における血圧計用カフの製造方法を採用することにより、測定時において上腕圧迫用空気袋31の圧迫作用面に皺が発生し難い血圧計用カフの製造方法を提供することが可能になるため、被験者に苦痛を与えることなく高精度に血圧値の測定が行なえる血圧計を実現することができる。
【0091】
ここで、上述した治具300としては、円筒状のものの他にも、円柱状のものや周方向の一部に切れ目を有する略円筒状のものなど、各種の形状のものが使用可能である。すなわち、治具300としては、環状の湾曲した周面を有するものであればどのようなものでもその使用が可能である。
【0092】
また、上述した治具300の周長としては、血圧計1を用いた場合にその測定精度が保証される上腕の適用周長の範囲内の大きさであることが好ましい。たとえば、上腕の適用周長が17cm〜42cmである場合には、治具300の周長も17cm〜42cmの範囲内のものを使用することが好ましく、したがって、治具300の外径としては、φ5.4cm〜13.4cm程度のものを使用することが好ましい。
【0093】
さらに、上述した治具300の周長としては、血圧計1を用いた場合にその測定精度が保証される上腕の最大適用周長と最小適用周長の中間の大きさであれば尚よい。すなわち、上記の場合には、治具300の周長として29.5cmのものを使用することが好ましく、したがって、治具300の外径としては、φ9.4cm程度のものを使用することが好ましい。
【0094】
このような大きさの治具300を使用してカフを製造することにより、カーラ35が縮径して上腕圧迫用空気袋31が上腕に押し付けられた状態において上腕圧迫用空気袋31の圧迫作用面に皺がほとんど発生していない状況とすることができるため、その後の上腕圧迫用空気袋31の膨張時において発生する皺の程度や皺が発生する頻度を飛躍的に減少させることが可能になる。
【0095】
上述した本発明の一実施の形態においては、被載置面を含む本体部と中空部を含む上腕挿入部とが回動可能に連結された構成の装置本体を備えてなる血圧計に具備されるカフに本発明に係る製造方法を適用した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこれら本体部と上腕挿入部とに装置本体が分離されている必要はなく、被載置面および中空部を含む単一の筐体からなる装置本体を備えてなる血圧計に具備されるカフに本発明に係る製造方法を適用することも当然に可能である。
【0096】
また、上述した本発明の一実施の形態においては、湾曲弾性板であるカーラの外側に巻き付け用流体袋としての巻き付け用空気袋を配置することでカーラを縮径させることが可能になるように構成された自動カフ巻付機構を備えてなる血圧計に具備されるカフに本発明に係る製造方法を適用した場合を例示して説明を行なったが、他の機構を用いてカーラを縮径させることが可能になるように構成された自動カフ巻付機構を備えてなる血圧計に具備されるカフに本発明に係る製造方法を適用することも当然に可能である。
【0097】
さらには、上述した本発明の一実施の形態においては、最高血圧、最低血圧等の血圧値が測定可能な上腕式血圧計に具備されるカフに本発明に係る製造方法を適用した場合を例示して説明を行なったが、この他にも、手首式血圧計や足式血圧計に具備されるカフに本発明に係る製造方法を適用することも可能である。また、最高血圧、最低血圧等の血圧値が測定可能な血圧計に限らず、さらにこの他にも、脈波や脈拍、AI(Augmentation Index)値に代表される動脈硬化度を示す指標、平均血圧値、酸素飽和度等を測定可能にする血圧情報測定装置に具備されるカフに本発明に係る製造方法を適用することも当然に可能である。
【0098】
このように、今回開示した上記一実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0099】
1 血圧計、2 装置本体、10 本体部、11 被載置面、12 肘置き、20 上腕挿入部、20a 中空部、21 シェル、22a 把手部、22b 開錠ボタン、24 内布、30 上腕圧迫ユニット、31 上腕圧迫用空気袋、31a 内側シート部材、31b 外側シート部材、31c 膨縮空間、32 樹脂プレート、33 滑り板、34 巻き付けユニット、35 カーラ、36 袋体サブアセンブリ、37 第1収容袋、37a 内側布部材、37b 外側布部材、38 第2収容袋、38a 内側布部材、38b 外側布部材、39 巻き付け用空気袋、39a 内側シート部材、39b 外側シート部材、39c 膨縮空間、40 制御部、41 メモリ部、42 表示部、43 操作部、44 電源部、50 上腕圧迫用エア系コンポーネント、51 加圧ポンプ、52 排気弁、53 圧力センサ、54 加圧ポンプ駆動回路、55 排気弁駆動回路、56 発振回路、60 巻き付け用エア系コンポーネント、61 加圧ポンプ、62 排気弁、63 圧力センサ、64 加圧ポンプ駆動回路、65 排気弁駆動回路、66 発振回路、71,72 接着部材、100 被験者、110 前腕、120 上腕、121 上腕骨、122 上腕大動脈、200 載置面、300 治具、301 周面、310 仮止めテープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の一部が挿入可能な中空部に沿って当該中空部を囲むように配置された帯状の形態を有する生体圧迫用流体袋と、前記生体圧迫用流体袋の外周面に接着固定されたシート状の形状維持部材と、前記形状維持部材の外周面に接着固定された帯状の形態を有する袋体と、前記袋体の内部に収容された略環状の形態を有する湾曲弾性板とを備えた血圧情報測定装置用カフの製造方法であって、
略環状の湾曲した周面を有する治具の当該周面に前記生体圧迫用流体袋の内周面が沿うように、前記治具に対して前記生体圧迫用流体袋を巻き付けて宛がう工程と、
前記治具に宛がわれた前記生体圧迫用流体袋の外周面に前記形状維持部材の内周面が沿うように、前記生体圧迫用流体袋に対して前記形状維持部材を巻き付けて宛がうとともに、前記生体圧迫用流体袋の外周面と前記形状維持部材の内周面とを接着する工程と、
前記生体圧迫用流体袋に宛がわれた前記形状維持部材の外周面に前記袋体の内周面が沿うように、前記形状維持部材に対して前記袋体を巻き付けて宛がうとともに、前記形状維持部材の外周面と前記袋体の内周面とを接着する工程と、
前記形状維持部材に接着された前記袋体の内部に前記湾曲弾性板を収容する工程とを備えた、血圧情報測定装置用カフの製造方法。
【請求項2】
前記治具が、円筒状の部材または円柱状の部材からなる、請求項1に記載の血圧情報測定装置用カフの製造方法。
【請求項3】
前記袋体は、前記湾曲弾性板が収容された第1収容室と、前記第1収容室に収容された前記湾曲弾性板を圧迫することで前記生体圧迫用流体袋を生体に対して巻き付け固定する巻き付け用流体袋が収容された第2収容室とを含み、
前記袋体を前記形状維持部材に宛がって接着する工程に先立って、前記第2収容室に前記巻き付け用流体袋を収容する工程をさらに備えた、請求項1または2に記載の血圧情報測定装置用カフの製造方法。
【請求項4】
前記治具の周長が、当該血圧情報測定装置用カフを用いて測定精度が保証される適用周長の範囲内の大きさである、請求項1から3のいずれかに記載の血圧情報測定装置用カフの製造方法。
【請求項5】
前記治具の周長が、当該血圧情報測定装置用カフを用いて測定精度が保証される最大適用周長と最小適用周長の中間の大きさである、請求項4に記載の血圧情報測定装置用カフの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−200342(P2012−200342A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66098(P2011−66098)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】