説明

血圧降下剤

【課題】 安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル又はソゴウコウを含有するアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤、血圧降下剤並びに医薬、健康補助食品を提供する。
【解決手段】 安息香酸ベンジル及び/又はケイヒ酸ベンジルを含有することを特徴とするアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤又は血圧降下剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧降下剤に関する。
【背景技術】
【0002】
レニン−アンジオテンシン系は、全身血圧、体内水分量、体内電解質バランスなどの恒常性調節機能に関与している。アンジオテンシンIIは、強力な昇圧作用を有するペプチドである。その前駆体であるアンジオテンシンIは、10個のアミノ酸より成るペプチドで肝臓で生成されるレニン基質に腎傍糸球体より分泌されるレニンが作用して生成される。これにアンジオテンシンI変換酵素(ACE)が働き、末端にあるヒスチジンとロイシンが外され、アンジオテンシンIIに変換される。
アンジオテンシンIIは強力な血管収縮作用とアルドステロン分泌作用を有する昇圧物質であるが、アンジオテンシンIも単なる前駆物質ではなくカテコールアミンの遊離を促進するなどの生理活性を有することが明らかになっている。
また、レニン−アンジオテンシン系と高血圧症の関係については、強い血管収縮作用を有するアンジオテンシンIIが細胞膜上のアンジオテンシンII受容体を介してその作用を示す。アンジオテンシンII受容体には、いくつかのサブタイプが存在しており、そのうちアンジオテンシンII1型(AT1)受容体は、血管収縮作用を有し、アンジオテンシンII 2型(AT2)受容体は、血管拡張作用を有している。具体的には、アンジオテンシンIIは、アンジオテンシンII1型受容体に結合することによって、血管収縮作用を起こす。従って、AT1受容体を拮抗または、AT2受容体を作動させることにより、血圧降下作用が期待できる。
【0003】
ACE阻害作用もしくはアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を有する薬剤などは従来、経口剤として臨床応用されているが、対症治療剤であるため、長期間にわたる反復投与が要求される。このことから、患者の煩わしさを軽減するため、毎朝食後に1回投与する投与方式などがとられているが、服用後の血中活性体濃度の時間推移は一般の経口投与剤に共通するように、服用後3〜4時間で極大値を示し、その後低下するパターンを示す。高血圧症患者においては、夜間から就寝時および明け方の血圧上昇を抑制することが重要であり、午後あるいは夜間にも有効濃度を期待するためには、やや高めの投与量を処方することになるが、この種の薬剤においては投与量の調節が重要であって、高い投与量においては一時的にしても必要以上に高い血中濃度を経験することになり、そのことは目眩やふらつきなどの不快感を時として患者に与える恐れがある。さらに、服用の継続の必要性、他の経口投与用薬物との多剤同時服用など、この種の薬剤の経口投与には患者の負担を無視できないものがあり、また、服用の中断などによる病状の変化が起きる可能性もある。しかし、上述したような問題点を克服するような、長期間服用しても安全で尚且つ確実な治療を行うのに充分満足できるような天然物由来の医薬品や健康補助食品は、現在までのところ全く開発されていないのが現状である。
ソゴウコウ(蘇合香)並びに安息香酸エステル、ケイヒ酸エステルは香料原料、あるいは喉薬として用いられている(非特許文献1:林 良興、「熱帯樹林の成分と利用(5)」、熱帯林業、1998年、第42巻、p54−60)。しかしながら、ソゴウコウ並びに安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジルの血圧降下作用は知られていない。
【0004】
【非特許文献1】林 良興、「熱帯樹林の成分と利用(5)」、熱帯林業、1998年、第42巻、p54−60
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル又はソゴウコウを含有するアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤、血圧降下剤並びに医薬、健康補助食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意研究を重ね、435種類の植物抽出物について探索を続けた結果、ソゴウコウに、上記課題に対して、有効な作用があることを見出し、さらにソゴウコウに含まれる活性成分として安息香酸ベンジルおよびケイヒ酸ベンジルを同定し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、以下の内容を要旨とするものである。
(1) 安息香酸ベンジル及び/又はケイヒ酸ベンジルを含有することを特徴とするアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤又は血圧降下剤。
(2) ソゴウコウ又はソゴウコウの抽出物を含有することを特徴とするアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤又は血圧降下剤。
(3) 安息香酸ベンジル及び/又はケイヒ酸ベンジルがソゴウコウ由来である(1)に記載のアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤又は血圧降下剤。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載されたアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤又は血圧降下剤を含有することを特徴とする医薬。
(5) ソゴウコウ又はソゴウコウの抽出物を含有し、血圧降下作用を有することを特徴とし、高血圧症改善のために用いられるものである旨の表示を付した健康補助食品。
(6) 安息香酸ベンジル及び/又はケイヒ酸ベンジルを含有し、血圧降下作用を有することを特徴とし、高血圧症改善のために用いられるものである旨の表示を付した健康補助食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル又はソゴウコウを含有する安定性と安全性に優れ、価格面においても有利なアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤及び血圧降下剤を提供することができる。さらに、医薬、健康補助食品とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル又はソゴウコウを含有するアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤、血圧降下剤並びにこれらを利用した医薬、健康補助食品について説明する。
本発明の安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジルはソゴウコウから抽出、精製して得ることができる。また、市販の試薬を用いても良い。
本発明のソゴウコウは、マンサク科のLiquidambar orientalis、Liquidambar styraciflua又はLiquidambar formosanaの樹脂である。採取方法としては剥皮して煮沸溶出、圧搾して樹脂を分離したり、タッピングなどで生木を傷つけ流出する樹脂を集める(非特許文献1参照)。さらにその樹脂の水あるいはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および粗抽出物を分配抽出や、カラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出物画分など、全てを使用することができる。これらは単独で用いても良く、また2種以上混合して用いても良い。
【0010】
例えば、ソゴウコウ乾燥物1Kgに99.5%エタノール抽出液3Lを加え、室温で一晩浸漬することにより得た抽出液を、そのままアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤及び血圧降下剤として使用しても良いし、各種クロマトグラフィーを組み合わせて、その抽出液から精製したものを使用しても良い。
【0011】
安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジルもしくはソゴウコウ又はその抽出物は、卓越したアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を有しており、高血圧症の予防、改善を目的とした医薬又は健康補助食品として使用可能である。安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジルもしくはソゴウコウ又はその抽出物を、アンジオテンシンII1型受容体拮抗用及び血圧降下用医薬又は健康補助食品として製造することができる。このような組成物としては、本発明の効果を損なわず、悪影響を及ぼさない任意の種々の成分をその助剤、媒体または担体として使用し、これに本発明の安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル、ソゴウコウ又はソゴウコウ抽出物を含有させることによって組成物を構成することができる。
【0012】
本発明の安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル、ソゴウコウ又はソゴウコウ抽出物を、アンジオテンシンII1型受容体拮抗剤、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤及び血圧降下剤として使用する場合には、その適用量は、摂取者の年齢、体重、症状、適用経路、適用スケジュール、製剤形態などにより、適宜決定することができるが、例えば、経口投与の場合、乾燥重量として、通常成人換算で、一般に1日当たり0.1〜500mg/kg体重程度、好ましくは、1日当たり1〜150mg/kg体重程度とされ、1日に数回に分けて投与してもよい。また、適当な基剤、担体、媒体や賦形剤とともに本発明の安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル、ソゴウコウ又はソゴウコウ抽出物を配合することによって、アンジオテンシンII1型受容体拮抗剤、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤及び血圧降下剤とすることができる。
【0013】
本発明の安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル、ソゴウコウ又はソゴウコウ抽出物は、アンジオテンシンII1型受容体拮抗用、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤及び血圧降下用の経口組成物として医薬又は健康補助食品に使用することができる。
医薬用としての本発明の安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル、ソゴウコウ又はソゴウコウ抽出物の適用方法は、経口投与又は非経口投与のいずれも採用することができる。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬製剤の形態として投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などが挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0014】
健康補助食品としては、本発明の安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル、ソゴウコウ又はソゴウコウ抽出物をそのまま、又は種々の栄養成分を加えて、又は飲食品中に含有せしめて、高血圧の治療及び予防に有用な保健用食品又は食品素材として使用することができる。例えば、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、経口用に適した形態、例えば顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用してもよい。本発明の安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル、ソゴウコウ又はソゴウコウ抽出物の配合量は、当該健康補助食品または食品用素材の種類や状態等により適宜設定することができる。
【実施例1】
【0015】
次に、本発明を実施例によって更に詳しく説明する。以下の製造例、実施例、処方例は本発明の好ましい例を示すものであり、これに限定されるものではない。また、各例中の「%」は質量基準である。
【0016】
1)ソゴウコウの粗抽出
ソゴウコウ乾燥物500gに99.5%エタノール5Lを加え、電熱式水浴機で加熱還流により、抽出物500gを得た。
【0017】
2)安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジルの精製・分取
1)で得られたソゴウコウエタノール抽出物について、ベンゼン、アセトン、メタノールなどの溶媒でシリカゲルカラムを用いて分画した。フローチャートを図1に示す。
【0018】
実施例1で得られた抽出物の構造解析
fr.1−1−1−1−1
分子式C1412
質量分析測定値 MS(m/s) ,212(M
質量分析によりfr.1−1−1−1−1は、C1412であることが判明した。
以下に、fr.1−1−1−1−1のH NMRスペクトルデータを表1に示す。この結果により、本発明の化合物が安息香酸ベンジルと決定した。
【0019】
【表1】

【0020】
【化1】

(分子式)
【0021】
fr.1−1−1−2−2−1
分子式C1614
質量分析測定値 MS(m/s) ,238(M
質量分析によりfr.1−1−1−2−2−1は、C1614であることが判明した。
以下に、fr.1−1−1−2−2−1のH NMRスペクトルデータを表2に示す。この結果により、本発明の化合物がケイヒ酸ベンジルと決定した。
【0022】
【表2】

【0023】

【化2】

(分子式)
【実施例2】
【0024】
細胞内カルシウムイオン濃度測定試験
実施例1で得られた安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル、ソゴウコウエタノール抽出物のアンジオテンシンII1型受容体への作用を評価するために、アンジオテンシンII1型受容体発現遺伝子を導入したヒト胎児腎細胞(mAT1a(HA)/293―T)を用いて、細胞内カルシウムイオン濃度を測定した。
【0025】
具体的には、10%FCS/DMEM(1%Hygromycin B添加)培地で培養した上記細胞を遠心後、上清を捨て、HEPES/Hanksバッファー(0.1%BSA添加)10mlと1mM Fura―2AM蛍光プローブ40μlを加え、37℃で1時間静置した。その後、遠心して、上清を捨て、細胞を再びHEPES/Hanksバッファー(0.1%BSA添加)に懸濁させた。
この懸濁液を0.5mlキュベットにとり、蛍光度計にセットし、ソゴウコウ抽出物(20mg/ml MeOH)を5μl添加した。その後、アンジオテンシンII/HEPES/Hanksバッファー(0.1%BSA添加)を5μl添加した。この時、340nmと380nmで励起し、500nmの蛍光を測定した。
【0026】
蛍光強度比(340/380)と、細胞内のカルシウム濃度は比例関係にある。予め、何も添加しないときの蛍光強度比(340/380)(Aとする)を測定し、次いでアンジオテンシンIIのみ添加後の蛍光強度比(340/380)(Bとする)を測定して対照とした。試料を添加する前の蛍光強度比(340/380)(Aとする)、試料のみ添加したときの蛍光強度比(340/380)(Cとする)、次いでアンジオテンシンII添加後の蛍光強度比(340/380)(Dとする)を測定し、試料のアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を評価した。
【0027】
試料添加前のベースライン(A)は測定ごとに変動する。結果を表3に示す。表3( )中の左側の数値は、B−Aに対するC−Aの割合を表した数値であり、変化率(%)と呼ぶ。右側の数値は、B−Aに対するD−Aの割合を表した数値であり、応答率(%)と呼ぶ。変化率(%)と応答率(%)は次式により求めた。
【0028】

変化率(%)= [(C−A)/(B−A)]×100
応答率(%)= [(D−A)/(B−A)]×100
【0029】
変化率(%)は試料の添加により生じた蛍光強度比(340/380)の変動であり、9〜35%の値を示している。応答率が50%以下であれば、細胞内へのカルシウムイオンの流入が阻害されており、アンジオテンシンII1型受容体拮抗作用が生じていると考えられるが、ソゴウコウエタノール抽出物(試料濃度67μg/ml)、安息香酸ベンジル(試料濃度200μg/ml)、ケイヒ酸ベンジル(試料濃度200μg/ml)の応答率はいずれも24%以下で、変化率の数値とほぼ同等であり、顕著なアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を示している。本発明品は血圧降下剤として市販されているロサルタン(試料濃度4.6μg/ml)とほぼ同等のアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を示すことが確認できた。これらの結果から、安息香酸ベンジル、ケイヒ酸ベンジル、ソゴウコウエタノール抽出物に、優れた血圧降下作用が期待できる。
【0030】
【表3】



【実施例3】
【0031】
アンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害試験
実施例1で得られた安息香酸ベンジル、ソゴウコウエタノール抽出物のアンジオテンシンI変換酵素(ACE)に対する阻害効果を検証した。具体的には、ACE10ngと各試料(ソゴウコウエタノール抽出物、安息香酸ベンジル)の混合液中に基質であるHippuryl−Histidyl―Leucineを添加し、20分間反応させた。この時の励起波長340nmと蛍光波長425nmの蛍光強度を測定し、以下の式により阻害率を算出した。結果を表4に示す。なお、ポジティブコントロールであるcaptoprilのIC50値は、2nM であった。
【0032】
阻害率(%)=100−〔[(サンプル−ブランク)/(コントロール−ブランク)]×100〕
サンプル :試料+ACEを添加したときの蛍光強度
コントロール:ACEのみ添加したときの蛍光強度
ブランク :ACEの代わりに1N塩酸のみ添加したときの蛍光強度
【0033】
【表4】

【0034】
ソゴウコウエタノール抽出物にはACE阻害作用が認められた。ソゴウコウエタノール抽出物はACE阻害作用によっても血圧降下作用が期待できる。一方、安息香酸ベンジルに関しては、顕著なACE阻害作用は認められなかった。
【実施例4】
【0035】
安息香酸ベンジル腹腔内投与動物試験
実施例1で得られた安息香酸ベンジルの血圧降下作用を腹腔内投与による動物試験で検証した。6週齢のstd:ddyマウスをコントロール群とサンプル投与群の3群に分けた(1群5匹)。安息香酸ベンジル0.4〜2mg/kgを腹腔内投与30分後に1回目の収縮期血圧を測定した。その直後にアンジオテンシンII100μg/kg腹腔内投与して、5分後に2回目の収縮期血圧を測定した。結果を図2に示す。安息香酸ベンジルを腹腔内投与しないA群においては、アンジオテンシンIIを腹腔内投与することにより有意に血圧が上昇した。一方、安息香酸ベンジルを2mg/kg、0.4mg/kg腹腔内投与したB群、C群においては、有意な血圧上昇は認められなかった。また、アンジオテンシンII腹腔内投与後のB群、C群の血圧はA群と比べて有意に低かった。この結果より、安息香酸ベンジルの優れた血圧降下作用が確認された。
【実施例5】
【0036】
安息香酸ベンジル経口投与動物試験
実施例1で得られた安息香酸ベンジルの血圧降下作用を経口投与による動物試験で検証した。6週齢のstd:ddyマウスをコントロール群とサンプル投与群の2群に分けた(1群5匹)。安息香酸ベンジル0.5mg/kgを経口投与30分後に1回目の収縮期血圧を測定した。その直後にアンジオテンシンII100μg/kg腹腔内投与して、5分後に2回目の収縮期血圧を測定した。結果を図3に示す。
安息香酸ベンジルの経口投与の有無にかかわらず、アンジオテンシンII腹腔内投与により血圧が有意に上昇した。しかしながら、アンジオテンシンII腹腔内投与後の血圧はコントロール群と比べて、安息香酸ベンジルを0.5mg/kg経口投与した安息香酸ベンジル投与群において有意に低かった。
これらの結果より、安息香酸ベンジルの優れた血圧降下作用が確認された。
【実施例6】
【0037】
ソゴウコウエタノール抽出物経口投与動物試験
実施例1で得られたソゴウコウエタノール抽出物の血圧降下作用を経口投与による動物試験で検証した。6週齢のstd:ddyマウスをコントロール群とサンプル投与群の2群に分けた(1群5匹)。ソゴウコウエタノール抽出物250mg/kgを経口投与30分後に1回目の収縮期血圧を測定した。その直後にアンジオテンシンII100μg/kg腹腔内投与して、5分後に2回目の収縮期血圧を測定した。結果を図4に示す。
ソゴウコウエタノール抽出物を経口投与しないコントロール群においては、アンジオテンシンIIを腹腔内投与することにより有意に血圧が上昇した。一方、ソゴウコウエタノール抽出物を250mg/kg経口投与したソゴウコウ投与群においては、有意な血圧上昇は認められなかった。また、アンジオテンシンII腹腔内投与後のソゴウコウ投与群の血圧はコントロール群と比べて有意に低かった。
これらの結果より、ソゴウコウエタノール抽出物の優れた血圧降下作用が確認された。
【実施例7】
【0038】

処方例1: 高血圧の予防、治療用の組成物(錠剤)
上記の実施例1で得られた安息香酸ベンジルを用いて、常法により下記の配合組成の高血圧の予防、治療用の錠剤を製造した。
(組 成) (質量%)
安息香酸ベンジル 2.0
乳 糖 77.0
コーンスターチ 20.0
グアーガム 1.0
【実施例8】
【0039】
処方例2:ジュース
上記の実施例1で得られたソゴウコウ抽出物を用いて、常法により下記の配合組成のジュースを製造した。
(組 成) (質量%)
冷凍濃縮温州みかん果汁 5.0
果糖ブドウ糖液糖 11.0
クエン酸 0.2
L−アスコルビン酸 0.02
香 料 0.2
色 素 0.1
ソゴウコウ抽出物 0.2
水 83.28
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ソゴウコウエタノール抽出物分画フローチャート
【図2】安息香酸ベンジル腹腔内投与による収縮期血圧に対する影響を示すグラフ
【図3】安息香酸ベンジル経口投与による収縮期血圧に対する影響を示すグラフ
【図4】ソゴウコウ経口投与による収縮期血圧に対する影響を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安息香酸ベンジル及び/又はケイヒ酸ベンジルを含有することを特徴とするアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤又は血圧降下剤。
【請求項2】
ソゴウコウ又はソゴウコウの抽出物を含有することを特徴とするアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤又は血圧降下剤。
【請求項3】
安息香酸ベンジル及び/又はケイヒ酸ベンジルがソゴウコウ由来である請求項1に記載のアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤又は血圧降下剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されたアンジオテンシンII1型受容体拮抗剤又は血圧降下剤を含有することを特徴とする医薬。
【請求項5】
ソゴウコウ又はソゴウコウの抽出物を含有し、血圧降下作用を有することを特徴とし、高血圧症改善のために用いられるものである旨の表示を付した健康補助食品。
【請求項6】
安息香酸ベンジル及び/又はケイヒ酸ベンジルを含有し、血圧降下作用を有することを特徴とし、高血圧症改善のために用いられるものである旨の表示を付した健康補助食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−31289(P2007−31289A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212545(P2005−212545)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】