血小板の凝集阻害剤トリアゾロ[4,5−D]ピリミジン共結晶
本発明は式(I)の化合物の新規共結晶型(ここで共結晶形成分子は、グリコール酸、サリチル酸、デカン酸(カプリン酸)、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、グルタル酸、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、コハク酸、マロン酸又はマルトール(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)から選択される)や、それらの調製方法、そのような共結晶を含む医薬組成物、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症を予防するために使用する薬剤の製造における化合物Aの共結晶の使用、及び治療上有効量の式(I)の化合物の共結晶を投与することによる、ヒト又は動物におけるそのような疾患の治療方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規共結晶、より具体的には、式(I)
【0002】
【化1】
【0003】
の化合物の新規共結晶型に関する。
【発明の概要】
【0004】
式(I)の化合物は通常、{1S−[1α,2α,3β(1S*,2R*),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1,2−ジオールと呼ばれるが、これ以降は便宜上、化合物Aとする。
【0005】
より具体的には本発明は、いくつかの化合物Aの共結晶、それらの調製方法、化合物Aの共結晶を含む医薬組成物、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症を予防するために使用する薬剤の製造における化合物Aの共結晶の使用、及び治療上有効量の化合物Aの共結晶を投与することによる、ヒト又は動物におけるそのような疾患の治療方法に関する。
【0006】
血小板の付着及び凝集は動脈血栓症を引き起こす事象である。血小板が内皮下表面に付着する過程は損傷を受けた血管壁の修復に重要な役割を果たしていると考えられるが、これを開始する血小板の凝集は、生きている血管床での急性血栓性閉塞を促進し、心筋梗塞及び不安定狭心症のような死亡率の高い事象を引き起こす可能性がある。これらの状態を予防する又は軽減するために用いられる血栓崩壊及び血管形成術のような介入の成功もまた、血小板による閉塞又は再閉塞によって損なわれる。
【0007】
アデノシン5’−二リン酸(ADP)が血栓症の重要な介在因子として作用していることが分かってきた。ADP誘導性の血小板凝集は、血小板膜に局在するP2T受容体サブタイプによって仲介される。P2T受容体(P2YADP又はP2TACとしても知られる)は主に血小板の凝集/活性化の仲介に関与する、まだクローニングされていないG−タンパク質結合受容体である。この受容体の薬理学的特徴は例えば、Humphries et al., Br. J. Pharmacology (1994), 113, 1057-1063及びFagura et al., Br. J. Pharmacology (1998) 124, 157-164の参考文献に記載されている。この受容体の拮抗薬がその他の抗血栓薬の作用を有意に上昇させることが分かっている(J. Med. Chem. (1999) 42, 213を参照のこと)。
【0008】
国際特許出願公開WO99/05143では、一連のトリアゾロ[4,5−d]ピリミジン化合物が、P2T(P2YADP又はP2TAC)の拮抗薬としての活性をもつことが開示されている。化合物Aは、国際特許出願公開WO99/05143の一般的な範囲に包含されるが、そこで具体的には開示されていない。
【0009】
化合物Aは、P2T(P2YADP又はP2TAC)拮抗薬として高い効果を示し、そして驚くほど高い代謝安定性及び生物学的利用率を有する。化合物Aは国際特許出願公開WO00/34283で具体的に示されており、多数の異なる実質的な結晶型が存在すると考えられる。これらの結晶型をこれ以降、国際特許出願公開WO01/92262に開示されているように、多形I、多形II、多形III、及び多形IVとする。
【0010】
化合物の別の形態、すなわち共結晶形態は、製品(例えば錠剤)の製造及び加工の促進に有用となる可能性があり、また、溶解度、分解、吸収、生物学的利用率及び/又は吸湿性のような特性を遊離型よりも望ましく変化させる可能性がある。
【0011】
化合物Aが複数の特定の共結晶形成分子と共に共結晶を形成できることを発見した。さらに、これらの共結晶には、例えば多形、溶媒和物、水和物などの、1つ以上の結晶学的に異なる形態が存在する可能性がある。
【0012】
従って本発明は、式(I)の化合物である{1S−[1α,2α,3β(1S*,2R*),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1,2−ジオールと共結晶形成分子との共結晶を提供する、
【0013】
【化2】
【0014】
式中共結晶形成分子は、グリコール酸、サリチル酸、デカン(カプリン)酸、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、グルタル酸、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、コハク酸、マロン酸又はマルトール(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)から選択される。
【0015】
疑義を避けるため、用語共結晶(若しくはコクリスタル)は、API(活性医薬品成分)分子又は分子と、ゲスト(若しくは共結晶形成)分子又は分子が存在する、多成分系を指す。共結晶では、API分子とゲスト(又は共結晶形成)分子の両方が、それらが高純度で独立して存在する場合、室温では固体である(共結晶を溶媒和物又は水和物と区別するため)。API分子とゲスト分子との間で陽子交換が多く又は完全に生じている塩は、この特定の定義からは除外される。共結晶では、APIと共結晶形成分子は水素結合及び生じ得るその他の非共有相互作用により相互作用する。共結晶それ自体は、水和物を含む溶媒和物を形成し得ることに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
全ての図において、化合物Aは、{1S−[1α,2α,3β(1S*,2R*),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1,2−ジオールである。
【図1】図1は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、化合物A多形IIが物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図2】図2は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。
【図3】図3は、化合物Aとグルタル酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、グルタル酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図4】図4は、化合物Aとグルタル酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、グルタル酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図5】図5は、化合物Aとグリコール酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、化合物A多形II及びグリコール酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図6】図6は、化合物Aとサリチル酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す図である。この材料の回折図が、化合物A多形IIが物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図7】図7は、化合物Aとサリチル酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。
【図8】図8は、化合物Aとサリチル酸との共結晶C型のXRPDパターンを示す。
【図9】図9は、化合物Aとマロン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。
【図10】図10は、化合物Aとマルトール酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、化合物A多形IIが物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図11】図11は、化合物Aとコハク酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、コハク酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図12】図12は、化合物Aとコハク酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、コハク酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図13】図13は、化合物Aとバニリン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料が共結晶と物理的な不純物として化合物A多形IIを含んでいることに注目。
【図14】図14は、化合物A多形IIの赤外線スペクトルを示す。
【図15】図15は、化合物Aとマロン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料が共結晶と物理的な不純物として化合物A多形IIを含んでいることに注目。
【図16】図16は、化合物Aとマロン酸との共結晶の赤外線スペクトルを示す。
【図17】図17は、化合物Aとコハク酸との共結晶C型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、コハク酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図18】図18は、化合物Aとコハク酸との共結晶の赤外線スペクトルを示す。この試料中には遊離コハク酸が僅かに含まれている。
【図19】図19は、化合物Aとデカン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。
【図20】図20は、化合物Aとデカン酸との共結晶の赤外線スペクトルを示す。
【図21】図21は、化合物Aとサリチル酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。この材料が共結晶と物理的な不純物としてサリチル酸を含んでいることに注目。
【図22】図22は、化合物Aとサリチル酸との共結晶B型の赤外線スペクトルを示す。
【図23】図23は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶C型のXRPDパターンを示す。
【図24】図24は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶C型の赤外線スペクトルを示す。
【図25】図25は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶D型のXRPDパターンXRPDを示す。
【0017】
本発明の特定の実施形態では、式(I)の化合物と共結晶形成分子との前記共結晶は、マロン酸共結晶A型、コハク酸共結晶A型、コハク酸共結晶B型、コハク酸共結晶C型、コハク酸共結晶D型、デカン酸共結晶A型、サリチル酸共結晶A型、サリチル酸共結晶B型、サリチル酸共結晶C型、ゲンチシン酸共結晶A型、ゲンチシン酸共結晶B型、ゲンチシン酸共結晶C型、ゲンチシン酸共結晶D型、グルタル酸共結晶A型、バニリン酸共結晶A型、マルトール共結晶A型又はグリコール酸共結晶A型から選択される結晶形態である。これら特定の共結晶形態は全て、本明細書で記載する本発明の実施形態のいずれからも排除されてもよいことに注意されたい。
【0018】
本発明のさらなる側面では、式(I)の化合物の前記共結晶は、添付の図のいずれかに示したXRPDパターンを実質的に有する結晶形態である。
本発明により、化合物Aの共結晶が提供され、ここで前記共結晶は、粉末X線回折のパターンが表1−Aに示すように、約2θ(又はd−間隔)に特異的なピークをもつことによって特徴付けられる。
【0019】
【表1−1】
【0020】
【表1−2】
【0021】
本発明の別の側面では化合物Aの共結晶を提供するが、前記共結晶は、粉末X線回折のパターンが表2−Aに示すように、2θ(又はd−間隔)に特異的なピーク(表1−Aのピークに加えて)をもつことで特徴付けられる。
【0022】
【表2−1】
【0023】
【表2−2】
【0024】
表1−A及び2−Aでは、d−間隔の値が5Åを下回る場合には小数第2位までを引用し(許容誤差は通常±0.05Å)、5Åを超える値は小数第2位で四捨五入してもよく(許容誤差は通常±0.5Å)、かつ、2θの値は±0.2°である。
【0025】
別の側面では、結晶型の式(I)の化合物の共結晶を提供するが、各前記共結晶は、表1−Bに示したピークをもつ粉末X線回折パターンで特徴付けられる。
【0026】
【表3】
【0027】
別の側面では、結晶型の式(I)の化合物の共結晶を提供するが、各前記共結晶は粉末X線回折パターンが、表1−Bに示したピークに加えて、以下の表2−Bに示すピークをもつことで特徴付けられる。
【0028】
【表4】
【0029】
本発明の特定の共結晶は、化合物Aとマロン酸(A型)及びゲンチシン酸(D型)共結晶形成分子との共結晶であり、本明細書の実施例4に示すようにこれは遊離型化合物A多形II(国際特許出願公開WO01/92262を参照のこと)よりも優れた溶解プロファイルをもち、かつ、化合物Aのより迅速な吸収及び/又は代替処方の選択を可能にし得る。
【0030】
本発明の特定の態様では、異なる化学量論の、例えば1:1、1:2など、又は1:1、1:2など(APIである化合物A:共結晶形成分子、又は共結晶形成分子:APIである化合物A)の高純度な本発明の共結晶が可能である。
【0031】
本発明の共結晶は、非晶形又は多様な結晶型として存在し得る。
本発明の共結晶が本明細書で、(実質的に)結晶の共結晶を指す場合、これは例えば、結晶化度が約80%を超える、具体的には約90%を超える、より具体的には約95%を超えるような、結晶化度が約60%を超える共結晶であり、結晶化度%は共結晶試料全体の質量に対する結晶部分の重量%を指す。
【0032】
本発明のさらに特定の態様では、本明細書で開示した任意の結晶型の式(I)の化合物の共結晶は実質的に結晶型、例えば本明細書で定義したように、共結晶の80%、90%又は、より具体的には95%が結晶化している共結晶である。
【0033】
本発明のさらに特定の態様では、本明細書で定義した任意の結晶型の式(I)の化合物の共結晶は、その他の形態の式(I)の化合物を実質的に含まない、及び/又は、過剰の共結晶形成分子を実質的に含まない、例えば、過剰の共結晶形成及び/又はAPIである化合物A分子を10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、又は、より具体的には、1重量%未満しか含まない形態である。
【0034】
本明細書で定義した化合物Aと共結晶形成分子との共結晶の調製では、API:共結晶形成分子のモル比/化学量を様々に変化させてもよく、例えばAPI:共結晶形成の全体のモル比が1:1.1であることは共結晶が、APIである化合物Aと共結晶形成分子と、0.1モル多い共結晶形成分子が含まれた混合物であることを反映している。任意のモル比/化学量の化合物A:共結晶形成を含む本明細書で定義した共結晶が、本発明の範囲に含まれる。
【0035】
遊離型共結晶形成分子及び/又は遊離型API化合物分子を含む、本明細書で定義した化合物Aと共結晶形成との共結晶を含む混合物が本発明の範囲に含まれる。例えば、50重量%〜90重量%が化合物Aと共結晶形成の共結晶であり、残りが遊離型の共結晶形成分子及び/又は遊離型の化合物Aである混合物が含まれる。
【0036】
従って、一側面において本発明は、
a)式(I)の化合物と、グリコール酸、サリチル酸、デカン酸(カプリン酸)、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、グルタル酸、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、コハク酸、マロン酸又はマルトール(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)から選択される共結晶形成分子との共結晶、及び
b)前記共結晶形成分子
の混合物を含む固体に関する。
【0037】
前記固体は例えば、(a)80〜90重量%の、本明細書で定義した式(I)の化合物の前記共結晶、及び(b)10〜20重量%の前記共結晶形成分子を含んでいてもよい。
さらなる側面において本発明は、本明細書で定義した式(I)の化合物の固体に関し、前記固体は、
a)式(I)の化合物と、グリコール酸、サリチル酸、デカン酸(カプリン酸)、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、グルタル酸、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、コハク酸、マロン酸又はマルトール(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)から選択される共結晶形成分子との共結晶、具体的には結晶型の共結晶、及び
b)式(I)の化合物の多形I及び/又は多形II及び/又は多形III及び/又は多形IVの混合物を含む。
【0038】
さらなる側面では、(a)本明細書で定義した式(I)の化合物の共結晶と(b)式(I)の化合物の多形I及び/又は多形II及び/又は多形III及び/又は多形IVの混合物は、80%〜90%共結晶と10%〜20%の式(I)の化合物の多形I及び/又は多形II及び/又は多形III及び/又は多形IVの混合物を含む(重量%)。
【0039】
本発明のさらなる側面では、本明細書で言及した任意の過程又は実施例によって得ることができる共結晶を提供する。
本明細書で定義した化合物Aの共結晶は、P2T(P2YADP又はP2TAC)受容体の拮抗薬として作用する化合物Aを、(生体内で)遊離させると考えられている。従って、本明細書で定義した化合物Aの共結晶は、少なくとも1つのその他の薬学的に活性な薬剤との同時投与、連続投与又は個別投与による併用治療を含む治療に有用である。具体的には、本明細書で定義した化合物Aの共結晶の、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症の治療又は予防における使用を示す。動脈での血栓性合併症は、不安定狭心症;血栓性脳卒中若しくは閉塞性脳卒中などのアテローム性動脈硬化の主な血栓性合併症;一過性の虚血性発作;末梢血管疾患;血栓崩壊を伴う若しくは伴わない心筋梗塞;冠動脈血管形成術(PTCA)、動脈内膜切除、ステント留置、冠動脈及びその他の血管移植手術含む血管形成術のような介入によるアテローム硬化型疾患での動脈合併症;事故若しくは手術による外傷の後に行う救済手術、皮膚及び筋肉皮弁を含む再建手術などの手術又は機械的損傷による血栓性合併症;播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒素症症候群などの血栓/血小板要素の広汎な減少を伴う状態;敗血症性血栓性合併症;成人呼吸窮迫症候群;抗リン脂質抗体症候群;ヘパリン誘導性血小板減少症及び子癇前症/子癇;又は深部静脈血栓症、静脈閉塞性疾患のような静脈血栓症;血小板血症、鎌状赤血球病を含む骨髄増殖性疾患などの血液学的状態を含んでもよく;又は心肺バイパス及び体外式膜型人工肺(微小血栓閉塞症の予防)などの機械的な原因による生体内での血小板の活性化、血液製剤(例えば血小板濃縮物)における保存料の使用若しくは腎臓透析及び血漿交換でのシャント留置などの機械的な原因による生体外での血小板の活性化の予防では、脈管炎、動脈炎、糸球体腎炎、炎症性腸疾患及び器官移植拒絶、偏頭痛やレイノー現象のような状態、粥状硬化斑形成/進行などの血小板が血管壁の基礎炎症疾患の過程に影響を及ぼしている状態、狭窄/再狭窄並びに、血小板及び血小板由来因子が原因となる免疫学的な疾患過程である喘息などのその他の炎症を伴う状態のような血管損傷/炎症に続発する血栓症を含んでいてもよい。その他の指標には、CNS障害の治療、並びに腫瘍の成長及び蔓延の予防が含まれる。
【0040】
本発明のさらなる側面では、処置によるヒト又は動物の体の治療法で使用する、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を提供する。
本発明のさらなる特徴により、薬物として使用する本明細書で定義した化合物Aの共結晶を提供する。特に本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、ヒトのような温血動物中で、P2T(P2YADP又はP2TAC)受容体に拮抗する薬物として使用する。より具体的には、本明細書で定義した化合物Aの共結晶は、ヒトのような温血動物であって、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症の治療又は予防用薬物として使用される。
【0041】
本発明では、さらにP2T(P2YADP又はP2TAC)受容体の拮抗薬として使用する薬物の製造において使用する、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を提供する。具体的には、さらに冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症を治療又は予防するために使用する薬物の製造において使用する、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を提供する。
【0042】
本発明はまた、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、そのような障害に罹患している又は起こしやすい患者に、治療上有効量の本明細書で定義した化合物Aの共結晶を投与する工程を含む。
【0043】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、溶液、懸濁液、HFAエアロゾル及び乾燥粉末の剤形で局所的に、例えば肺及び/又は気道に;又は錠剤、丸薬、カプセル、シロップ、粉末若しくは顆粒の形態で全身に、例えば経口で、又は無菌的な非経口溶液又は懸濁液の剤形で非経口で、皮下投与で、又は座剤として直腸投与で、又は経皮的に投与してもよい。
【0044】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、そのままで又は本明細書で定義した化合物Aの共結晶と薬学上許容可能な希釈剤、アジュバント及び/又は担体との組み合わせを含む医薬組成物として投与してもよい。そのため、本発明のさらなる特徴として、本明細書で定義した化合物Aの共結晶と薬学上許容可能な希釈剤、アジュバント及び/又は担体とを共に含む医薬組成物を提供する。特に好ましい組成物は、アレルギー性の副作用などの、副作用を起こす可能性のある材料を含まないものである。
【0045】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶の乾燥粉末製剤及び加圧したHFAエアロゾルを経口又は鼻孔吸入により投与してもよい。吸入用には、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を細かく破砕することが望ましい。本明細書で定義した化合物Aの共結晶をまた、乾燥粉末吸入器を用いて投与してもよい。吸入器は単回用又は複数回投与用であってもよく、かつ、呼気で動作する乾燥粉末吸入器であってもよい。
【0046】
1つには、細かく破砕した本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、担体基剤、例えば単糖、二糖若しくは多糖類、糖アルコール又は別の多価アルコールと混合することが挙げられる。好適な担体としては、糖類及びデンプンが挙げられる。あるいは細かく破砕した本明細書で定義した化合物Aの共結晶を別の基剤でコーティングしてもよい。粉末混合物を、それぞれが所望の用量の本明細書で定義した化合物Aの共結晶を含む、硬ゼラチンカプセルとして分配してもよい。
【0047】
別の方法としては、細かく破砕した粉末を、吸入処置を行っている間に壊れる球体中に入れる処理が挙げられる。この球形に成形した粉末を複数回投与用吸入器、例えばTurbuhaler(登録商標)として知られ、投薬装置が所望の用量を計量してその後患者に吸入する吸入器の薬剤貯蔵部に充填してもよい。このシステムでは、担体基剤を含む又は含まない本明細書で定義した化合物Aの共結晶が患者に送達される。
【0048】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶を含む医薬組成物を、便利なように、経口投与用の錠剤、丸薬、カプセル、シロップ、粉末若しくは顆粒;無菌的な非経口用若しくは皮下投与用の溶液、非経口投与用の懸濁液又は直腸投与用の座剤としてもよい。
【0049】
経口投与用には、本明細書で定義した化合物Aの共結晶をアジュバントすなわち担体、例えば乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン(馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン若しくはアミロペクチンなど)、セルロース誘導体、結合剤(ゼラチン若しくはポリビニルピロリドン)、及び滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ろう、パラフィンなど)などと混合し、その後錠剤として圧縮してもよい。コーティングした錠剤が必要な場合には、上述したように調製した核を、例えばアラビアゴム、ゼラチン、タルク、二酸化チタンなどを含む濃厚糖溶液でコーティングしてもよい。あるいは、容易に揮発する有機溶媒又は水性溶媒のいずれかに溶解した好適な重合体を用いて、錠剤をコーティングしてもよい。
【0050】
軟ゼラチンカプセルを調製するためには、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、例えば植物油又はポリエチレングリコールと混合してもよい。硬ゼラチンカプセルには、上述した錠剤用の賦形剤、例えば乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、セルロース誘導体又はゼラチンのいずれかを用いて化合物の顆粒を含めてもよい。薬剤の液体又は半固形製剤もまた、硬ゼラチンカプセル中に充填してもよい。
【0051】
経口投与用の液体製剤はシロップ又は懸濁液の剤形であってよく、例えば本明細書で定義した化合物Aの共結晶を含み、残りが糖及びエタノール、水、グリセロールとプロピレングリコールの混合物である溶液であってもよい。そのような液体製剤は必要なら、着色料、香料、サッカリン及び増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース又は当業者に知られているその他賦形剤を含んでいてもよい。
【0052】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶は、国際特許出願公開WO00/34283で開示されているように、P2T(P2YADP又はP2TAC)受容体の拮抗薬として作用する化合物Aを遊離させると考えられている。化合物A及び本明細書に記載したその共結晶の薬理学的特性は、例えば国際特許出願公開WO00/34283に記載されている1つ以上の方法により評価することができる。国際特許出願公開WO00/34283では例えば、ヒトの洗浄血小板でのP2T(P2YADP又はP2TAC)受容体に対する作用薬/拮抗薬の活性試験の準備方法が記載されている。この方法では、拮抗薬の効果を対照のADP反応に対する%阻害として評価してIC50を得る。国際特許出願公開WO00/34283では、そこで例示された化合物のpIC50値は5.0を超えると報告されている。
【実施例】
【0053】
本発明を本明細書では、以下の非限定的な実施例、データ及び図を用いて説明する。特にことわりがない限りこれらの非限定的な実施例、データ及び図では、
(i)収率は説明するためだけに示すものであり、かつ、必ずしも達成可能な最大収率ではない;
(ii)種結晶として使用する生成物は、公知の又は開示されている過程によって得ることができる。
【0054】
用いることができる標準的な分析技術には、XRPD、水素結合の評価に役立つFTIR、固体NMR、液体NMR、DSC及びTGAが含まれる。
粉末X線回折
当該分野においては、得られる粉末X線回折のパターンが測定条件(装置、試料調製又は使用した機械など)に依存して1つ以上の測定誤差を含む可能性があることが知られている。具体的には、粉末X線回折パターンの強度が測定条件及び試料の調製に依存して変動し得ることが一般的に知られている。例えば、ピークの相対強度は試験を行った時の試料の方向並びに用いた機械の型及び設定によって変動するため、本明細書に含めたXRPD波形の強度は説明のためのものであり、絶対的な比較のために用いることを目的とするものではないことを、粉末X線回折を行う当業者は理解するだろう。
【0055】
当業者はまた、反射の位置が、回折装置に置かれた試料の実際の高さ及び回折装置のゼロ校正に影響を受けることを理解するだろう。試料表面の平面性もまた、僅かに影響を及ぼす場合がある。従って、本明細書で提示する回折パターンのデータは絶対的なものとして解釈されるものではないことを当業者は理解するだろう(さらなる情報については、Jenkins, R & Snyder, R.L. ‘Introduction to X-Ray Powder Diffractometry’ John Wiley & Sons, 1996を参照のこと)。
【0056】
上でも述べたように、通常、粉末X線回折図形の回折角度の測定誤差は、2θについては0.5°以下(又は、より良くは、2θについて0.2°以下)であり、粉末X線回折のパターンについて検討する場合や、上述した文章及び本明細書の表で言及したピーク位置について解釈する場合には、そのような角度の測定誤差も考慮するべきである。d−間隔の値が5Åを下回る場合には小数第2位までを引用し(許容誤差は通常±0.05Å)、5Åを超える値は小数第2位で四捨五入してもよく(許容誤差は通常±0.5Å)、かつ、2θの値は±0.2°である。
【0057】
実施例1:化合物Aの共結晶の形成
入手の容易な材料である以下の共結晶形成分子を、化合物Aとの実験に用いた(化合物Aは本明細書で記載したPCT出願に記載されている方法で調製することができ、その関連する内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0058】
【化3−1】
【0059】
【化3−2】
【0060】
粉末X線回折(XRPD)分析は、Inel社のXRG−3000回折計に、2θの範囲が120°であるCPS(Curved Position Sensitive)検出器を設置して行った。Cu−Kα線(X線の波長は1.5418Å)を用い、2θの分解能を0.03°として即時データを回収した。管電圧及び管電流をそれぞれ40kV及び30mAに設定した。単色スリットを5mm位置に160μm間隔で設置した。2θが2.5−40°の範囲のパターンを表示する。解析用に、試料を壁厚の薄いガラス製の毛細管に充填して準備した。各キャピラリーをゴニオメーターのヘッドにマウントし、データを取得している間はキャピラリーが回転し続けているかどうかを監視した。試料の解析を5分間行った。装置の校正は、ケイ素の標準物質を用いて行った。
【0061】
実施例1−A:化合物Aとデカン酸の共結晶A型
デカン酸(10.3mg)のメタノール(500μL)溶液を、ろ過した2mlの化合物Aのアセトン溶液(15mg/mL)に撹拌しながら添加した。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0062】
得られた共結晶材料は、実施例2−Cで列挙したピークと一致する回折図形を示した(図19を参照のこと)。
実施例1−B:化合物Aとゲンチシン酸の共結晶A及びB型
ゲンチシン酸(8.7mg)のアセトン溶液を(500μL)、ろ過した2mlの化合物Aのアセトン溶液(15mg/mL)に撹拌しながら添加した。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0063】
得られた材料をA型とし、回折図形を図1に示す。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明かである。
ゲンチシン酸(7.2mg)のメタノール溶液(300μL)を、ろ過した3mLの化合物Aのジクロロメタン溶液(8mg/mL)に、撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0064】
得られた共結晶材料をB型とし、回折図形を図2に示す。
実施例1−C:化合物Aとグルタル酸の共結晶A及びB型
80.6mgの化合物Aを、70mLのアセトニトリル存在下で19.8mgのグルタル酸と共に2分間粉砕した。
【0065】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図3に示す。この材料の回折図形から、グルタル酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
30mgの化合物Aを、ろ過した2mLのグルタル酸のジエチルエーテル溶液(30mg/mL)に撹拌しながら加え、8日間振とうした。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0066】
得られた共結晶材料をB型とし、回折図形を図4に示す。この材料の回折図形から、グルタル酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
実施例1−D:化合物Aとグリコール酸との共結晶A型
86.4mgの化合物Aを13mgのグリコール酸と共に、70mLのアセトニトリル存在下で2分間破砕した。
【0067】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図5に示す。この材料の回折図形から、化合物A多形II及びグリコール酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明かである。
【0068】
実施例1−E:化合物Aとサリチル酸との共結晶A、B及びC型
103mgの化合物Aを26mgのサリチル酸と共に、70μLのアセトニトリル存在下で2分間破砕した。試料を粉砕乾燥し、試料を新しい試験管に移してアセトニトリルをさらに50μL加えた。
【0069】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図6に示す。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかなである。
サリチル酸(8mg)のアセトン溶液(500mL)を、ろ過した2mLの化合物Aアセトン(15mg/mL)溶液に、撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0070】
得られた共結晶材料をB型とした。図7に示した回折図形は実施例2−Dで挙げたピークと一致した。
サリチル酸(6.5mg)のメタノール(300μL)溶液を、ろ過した3mLの化合物Aのジクロロメタン溶液に(8mg/mL)、撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0071】
得られた共結晶材料をC型とし、回折図形を図8に示す。
実施例1−F:化合物Aとマロン酸との共結晶A型
72mgの化合物Aを15mgのグルタル酸と共に、70mLのアセトニトリル存在下で2分間破砕した。
【0072】
得られた共結晶材料は、図9の回折図形を示し、実施例2−Aに列挙したピークと一致した(図15を参照のこと)が、物質の不純物としてのいずれの化合物A多形IIの確証はない。
【0073】
別の方法では、マロン酸(6mg)のアセトン(500μL)溶液を、ろ過した2mL化合物Aのアセトン(15mg/mL)溶液に撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0074】
得られた共結晶材料は、実施例2−Aに挙げたものと一致するピークをもつ回折図形を示した(図15を参照のこと)。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかなことである。
【0075】
さらに別の方法では、マロン酸(4.8mg)のメタノール(300μL)溶液を、ろ過した3mLの化合物Aのジクロロメタン(8mg/mL)溶液に撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0076】
得られた共結晶材料は、実施例2−Aに挙げたものと一致するピークをもつ回折図形を示した(図15を参照のこと)。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
【0077】
実施例1−G:化合物Aとマルトール酸との共結晶A型
マルトール酸(7.3mg)のメタノール(500μL)溶液を、ろ過した2mLの化合物Aのアセトン溶液(15mg/mL)に撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0078】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図10に示す。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
実施例1−H:化合物Aとコハク酸との共結晶A及びB型
13.6mgのコハク酸を、ろ過した1.5mLの化合物A(301mg)の酢酸エチル(15mL)溶液に加えた。得られた溶液を蒸発させて固体を得た(蒸発は乾燥する前に終了させた)。
【0079】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図11に示す。この材料の回折図形から、コハク酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
72mgの化合物Aを16mgのコハク酸と共に、70μLのアセトニトリル存在下で2分間破砕した。その後試料を新しい試験管に移し、アセトニトリルをさらに70μL加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0080】
得られた共結晶材料をB型とし、回折図形を図12に示す。この材料の回折図形から、コハク酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
実施例1−I:化合物Aとバニリン酸との共結晶A型
バニリン酸(9.9mg)のメタノール(500μL)溶液を、ろ過した2mLの化合物Aのアセトン溶液に(15mg/mL)撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0081】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図13に示す。この材料は、共結晶と物質の不純物としての化合物A多形IIを含んでいる。
実施例2:化合物Aの共結晶形成のさらなる評価
化合物Aの共結晶を用いて、以下の実験を行った。
【0082】
以下の条件で、粉末X線回折(XRPD)のパターンを回収した。
θ−θPhilips X’Pert PROを用いて、粉末X線回折を記録した(X線の波長は1.5418Å、線源はCu、電圧45kV、フィラメント放出40mA)。X’celerator検出器(有効長2.13°2θ)を用い、2θ 2〜40°の範囲をステップ幅0.033°、スキャン時間200秒で試料をスキャンした。
【0083】
実施例2−Dの例では、θ−2θPhilips X’Pert PROを用いて粉末X線回折を記録した(X線波長1.5406Å、線源Cu、電圧45kV、フィラメント放出40mA)。X’celerator検出器(有効長2.13°2θ)を用い、2θ 2〜40°の範囲をステップ幅0.033°、スキャン時間200秒で試料をスキャンした。
【0084】
実施例2−Eの例では、θ−θPANalytical CUBIXを用いて粉末X線回折を記録した(X線波長1.5418Å、線源Cu、電圧45kV、フィラメント放出40mA)。X’celerator検出器(有効長2.55°2θ)を用い、2θ 2〜40°の範囲をステップ幅0.02°、スキャン時間100秒で試料をスキャンした。
【0085】
Nicolet6700赤外線分光計にゴールデンゲートATRアタッチメントを搭載し、赤外線スペクトルを回収した。トルク圧は20cNm、分解能を2cm−1として32回スキャンしてデータを回収した。
【0086】
当然のことながら、赤外線ピークの相対強度は、実施した試料取得法によって変化し得る。
例えば、化合物Aの調製とXRPDのパターンは、国際特許出願公開PCT/SE01/01239(国際特許出願公開WO01/92262)に既に開示されている。
【0087】
基準となる化合物A多形IIの赤外線スペクトルは、3373、3289、3248、3177、2962、2924、2907、2871、1624、1604、1583及び1517cm−1に特徴的なピークを示す(図14を参照のこと)。
【0088】
実施例2−A:化合物Aとマロン酸との共結晶A型
50mgの化合物A多形IIを1:1モル等量のマロン酸(11mg)と共に、およそ30μlのアセトニトリル存在下で、2〜3分間破砕した。得られた固体をXRPD及び赤外線分光法により解析した。
【0089】
この試料のXRPDは共結晶による強い反射を14.43、9.19、7.22、6.13及び4.88に、より具体的には14.43、9.19、7.22、6.13、4.88、4.21、4.13及び3.46Åに有し、図9と一致する回折パターンを示した。
【0090】
図15は、化合物Aとマロン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示している。この材料は、共結晶と物質の不純物としての化合物A多形IIを含んでいる。
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図16)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶に特異的なピークには、3268(a)、3196(a)、1730(m)、1596(a)cm−1が含まれ、より好ましくは1401、1375、1337、1322、1254、1232、1212、1204、1173、1161、1144、1114、1099、1080、1061、1043、1010cm−1もまた含まれる(ここで(m)及び(a)はシフトしていないピークであり、mはマロン酸を、aは化合物Aのピークを表す)。
【0091】
実施例2−B:化合物Aとコハク酸との共結晶C型
コハク酸の飽和溶液を、メタノールをコハク酸で飽和し、その後ろ過することにより生成した。化合物Aを1mLのこの飽和溶液に加えて、薄い懸濁液を形成させた。懸濁液を、溶解した場合には化合物Aをさらに加えながら、周囲温度で7日間撹拌した。7日後に撹拌を終了した。外観が異なる2種類の固形材料を同定した。赤外線分光法により、1種類の材料が主にコハク酸であることを同定した。他方の材料をXRPD及び赤外線分光法で解析した。
【0092】
試料のXRPDは回折パターンを示し、共結晶による強い反射が12.75、11.43、10.10、6.29、4.22Åに、より好ましくは、12.75、11.43、10.10、9.57、7.67、7.26、6.97、6.29、4.68及び4.22Åに見られた。
【0093】
図17は化合物Aとコハク酸との共結晶A型のXRPDパターンを示している。この材料の回折図形からコハク酸が物質の不純物かつ共結晶として存在することが明らかである。
【0094】
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図18;この試料中には遊離コハク酸が僅かに含まれている)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶A型に特異的なピークには、3263(a)、3191(a)、3091、1722(s)、1700(s)、1591(a)、1520(a)cm−1が含まれ、より具体的には、1436、1404、1324、1297、1200、1162、1143、1112、1061、1043cm−1もまた含まれる(ここで(s)及び(a)はシフトしていないピークであり、それぞれ、sはコハク酸のピークをaは化合物Aのピークを表す)。
【0095】
実施例2−C:化合物Aとデカン酸との共結晶A型
50mgの化合物A多形IIを1:1モル等量のデカン酸(16mg)と共に、およそ15μlのアセトニトリル存在下で2〜3分間破砕した。固体はペースト状になり、その後硬化した。得られた固体をXRPDと赤外線分光法で解析した。
【0096】
試料のXRPDは回折パターンを示し、共結晶による強い反射は14.27、9.53、8.65、5.38、4.31Å、より具体的には14.27、10.81、10.15、9.53、8.65、8.26、6.16、5.95、5.38、5.07及び4.31Åに見られた。
【0097】
図19は化合物Aとデカン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示している。
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図20)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶A型に特異的なピークには、3465、3381(a)、3262(a)、3190(a)、2919、2851、2530、1702(d)、1588(d)、1520(d)cm−1が含まれ、より好ましくは、1455、1429、1384、1324、1275、1212、1200、1127、1103、1064cm−1もまた含まれる(ここで(d)及び(a)はシフトしていないピークであり、それぞれ、dはデカン酸のピークをaは化合物Aのピークを表す)。
【0098】
実施例2−D:化合物Aとサリチル酸との共結晶B型
サリチル酸の飽和溶液を、メタノールをサリチル酸で飽和させ、その後ろ過することにより生成した。化合物Aを1mLのこの飽和溶液に加え、薄い懸濁液を形成させた。懸濁液を、溶解した場合には化合物Aをさらに加えながら、周囲温度で7日間撹拌した。7日後に撹拌を終了した。得られた材料をXRPD及び赤外線分光法により解析した。
【0099】
試料のXRPDは、共結晶による強い反射が14.55、11.00、4.71及び4.33Åに、より好ましくは21.09、17.46、14.55、11.00、6.31、4.71及び4.33Åに見られることを示した。
【0100】
図21は化合物Aとサリチル酸との共結晶B型のXRPDパターンを示している。この材料は、共結晶と物質の不純物としてのサリチル酸を含んでいる。
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図22)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶B型に特異的なピークには、1633(s)、1590、1522(a)cm−1が含まれる(ここで(s)及び(a)はシフトしていないピークであり、それぞれ、sはサリチル酸のピークをaは化合物Aのピークを表す)。
【0101】
実施例2−E:化合物Aとゲンチシン酸との共結晶C型
ゲンチシン酸の飽和溶液を、メタノールをゲンチシン酸で飽和し、その後ろ過することにより生成した。化合物Aを、1mLのこの飽和溶液に加えて薄い懸濁液を形成させた。この懸濁液はその後溶解した。溶液を蒸発させるために放置した(試験管の蓋を僅かに開けておいた)。11日後、形成された固体をXRPDと赤外線分光法により解析した。
【0102】
試料のXRPDは、共結晶による強い反射が25.52、18.24、15.77、8.70、7.49及び4.23Åに、より好ましくは、25.52、18.24、15.77、12.96、8.70、7.49、6.51、5.06、4.56、4.36及び4.23Åに見られることを示した。図23は化合物Aとゲンチシン酸との共結晶C型のXRPDパターンを示している。
【0103】
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図24)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶C型に特異的なピークには、3255(g)、2969、1521(a)cm−1が含まれる(ここで(g)及び(a)はシフトしていないピークであり、それぞれ、gはゲンチシン酸のピークをaは化合物Aのピークを表す)。
【0104】
実施例3:大規模実験
API=化合物A(式(I)の化合物)
θ−θPANalytical CUBIXを用いて粉末X線回折を記録した(X線波長1.5418Å、線源Cu、電圧45kV、フィラメント放出40mA)。X’celerator検出器(有効長2.55°2θ)を用い、2θ 2〜40°の範囲をステップ幅0.02°、スキャン時間100秒で試料をスキャンした。
【0105】
液体NMRを以下のように行った。
共結晶の試料(1〜20mg)を0.75mlまでのヘキサ重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解した。マロン酸試料の場合には、およそ20μlのトリフルオロ酢酸(TFA)を試料に加えた。試料を5mmのNMR用の試料管に移した。プロトン(1H)NMRのスペクトルを、Bruker Avance 500 MHz分光計を用い、300Kで記録した。共結晶試料に含まれるAPIの同一性を、APIの標準物質のスペクトルと比較することによって確認した。化学量の測定には、API(通常、7.3ppmの芳香族の共鳴)及び共結晶形成分子の両方から共鳴の正確な積分を得て、プロトンの数を基準として正規化し、比率を解析した。
【0106】
実施例3−A:化合物Aとマロン酸との共結晶A型
APIの量:22.95g
共結晶形成分子の量:11.1g
モル分率:0.29(API)/0.71(共結晶形成分子)
溶媒:アセトン
溶媒量:50mL
相対体積:1.67mL/g(固体)
開始時温度:25℃
終了時温度:0℃
洗浄液:ヘプタン
洗浄液量:15mL
相対体積wl:0.5mL/g(固体)
固体を、好適な、電動攪拌機を備えた温度が制御できる反応器に入れた。溶媒を加え、温度を25℃に設定した。溶解が起こった後、冷却速度を制御せずに温度を15℃まで下げ、一晩放置した。この間に共結晶が形成した。この後スラリーを0℃まで冷却し、6.5時間放置した。その後、固体を真空下でろ過し、ヘプタンで洗浄し、40℃で真空乾燥した。
【0107】
液体核磁気共鳴による試料の解析から、試料中にマロン酸が0.5モル多く含まれていたことが示された。マロン酸共結晶の試料2.0gを4mLのアセトンに加えて2時間懸濁した。次にこの懸濁液に1660mgのAPIと348mgのマロン酸の物質混合物を加えて、撹拌しながら2〜3日間放置した。試料をその後真空ろ過し、周囲温度で一晩真空乾燥した。得られた乾燥試料を粗く破砕した。液体NMRから、API:共結晶形成分子全体のモル比が1:1.1であり、過剰のマロン酸が0.1モルまで減少したことが分かった。
【0108】
XRPDは、マロン酸共結晶のA型と一致した。
固体NMRから、マロン酸共結晶の構造には、結晶学的に独立した化合物Aの分子が1種類だけ含まれていることが分かった。
【0109】
これらのデータから、共結晶中のAPI:共結晶形成分子の化学量が1:1であることが分かった。
調製したマロン酸の共結晶は、110℃までの熱に安定であった。
【0110】
実施例3−B:化合物Aとデカン酸との共結晶A型
APIの量:12.35g
共結晶形成分子の量:7.6g
モル分率:0.33(API)/0.66(共結晶形成分子)
溶媒1:アセトン
溶媒1の量:40mL(+10mL)
相対体積s1:2mL/g(固体)(2.5mL/g(固体))
溶媒2:シクロヘキサン
溶媒2の量:60mL
相対体積s2:3mL/g(固体)
開始時温度:20℃
終了時温度:20℃
洗浄液:アセトン/シクロヘキサン、1:1(体積)混合物
洗浄液量:25mL
相対体積wl:1.25mL/g(固体)
固体を、好適な、電動攪拌機を備えた温度が制御できる反応器に入れた。溶媒を加え、温度を20℃に設定した。恒温装置の不調により、開始時温度が27℃まで上昇し、固体の溶解が起こった。温度を10℃まで下げたところ、結晶化が生じた。この温度ではスラリーは変化せず、その後温度を30℃まで上げた。出発材料の挙動とは対照的に、この温度では固体は完全には溶解せず、スラリーは、流動性になった。その後温度を20℃まで下げた。スラリーの流動性は22℃で既に止まっていた。3相対体積のシクロヘキサン(貧溶媒)及び1/2相対体積のアセトンを加え、粘性はあるが撹拌可能なスラリーを得た。このスラリーを20℃で一晩放置した。その後スラリーをろ過し、アセトンとシクロヘキサンの1:1混合物で洗浄し、20℃で真空乾燥した。
【0111】
液体NMRから、API:共結晶形成分子のモル比が0.3であることが分かった。
XRPDは、化合物A多形IIIを過剰に含む、デカン酸の共結晶A型と一致した(国際特許出願公開WO01/92262を参照のこと)。
【0112】
実施例3Aで行ったように、当業者は、過剰な不純物を減らし、また、化学量論を改善するために、相図を操作することが可能である。例えば、Phase Solubility Diagrams of Cocrystals Are Explained by Solubility Product and Solution Complexation, Sarah J. Nehm, Barbara Rodriguez-Spong, and Nair Rodriguez-Hornedo Crystal Growth & Design, 2006, 6, 592-600を参照のこと。
【0113】
実施例3−C:化合物Aとコハク酸の共結晶
APIの量:8.17g
共結晶形成分子の量:1.91g
モル分率:0.49(API)/0.51(共結晶形成分子)
溶媒1:2−プロパノール
溶媒1の量:100mL
相対体積s1:9.9mL/g(固体)
溶媒2:シクロヘキサン
溶媒量2:75mL
相対体積s2:7.4mL/g(固体)
開始時温度:55℃
開始時温度:15℃
洗浄液:2−プロパノール/シクロヘキサン、1:0.75(体積)混合物
洗浄液量:20mL
相対体積wl:2mL/g(固体)
固体を、好適な、電動攪拌機を備えた温度が制御できる反応器に入れた。溶媒を加え、温度を55℃に設定した。
【0114】
温度を15℃まで下げ、10時間維持した。その後スラリーをろ過し、2−プロパノールとシクロヘキサンの混合物で洗浄し、40℃で真空乾燥した。
液体NMRから、API:共結晶形成分子全体のモル比が0.6であることが分かった。
【0115】
XRPDから、この材料があまり結晶化していないことが分かった。
マロン酸の共結晶の例で行ったように、当業者は、相図を操作することにより化学量論を改善することが可能である。
【0116】
実施例3−D:化合物Aとゲンチシン酸の共結晶D型
APIの量:14.74g
共結晶形成分子の量:5.38g
モル分率:0.45(API)/0.55(共結晶形成分子)
溶媒:アセトン
溶媒量:50mL
相対体積:2.5mL/g(固体)
開始時温度:25℃
終了時温度:0℃
洗浄液:シクロヘキサン
洗浄液量:20mL
相対体積wl:1mL/g(固体)
固体を、好適な、電動攪拌機を備えた温度が制御できる反応器に入れた。溶媒を加え、温度を25℃に設定した。温度を6時間かけて10℃まで下げ、溶液をその温度で一晩放置し、結晶化させた。温度を0℃まで下げ、その温度に達したところで固体を単離した。その後スラリーをろ過し、シクロヘキサンで洗浄し、その後40℃、真空下で乾燥させた。このバッチのXRPD及び溶液NMRから、結晶化が僅かであり、API:共結晶形成分子のモル比が1:1.1であることがそれぞれ分かった。
【0117】
結晶化度を向上させるために、まずゲンチシン酸の試料(2.2mg)を粗く破砕し、次に5mLのトルエン中で2〜3日かけてスラリーにした。この間にスラリーは固化した。これを単離し、周囲温度で真空乾燥した。乾燥材料をゆっくりと破砕した。XRPDが既知の形と一致したため、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶D型であることが示された(図25を参照のこと)。液体NMRにより、API:共結晶形成分子のモル比が1:1.1であることを確認した。
【0118】
図25は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶D型のXRPDパターンを示している。
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
調製したゲンチシン酸の共結晶は、137℃までの熱に安定であった。
実施例4:溶解実験
共結晶試料9mgを25mlの(i)ミセル構成要素を含まない、絶食状態の小腸液(Fassif)及び(ii)疑似胃酸(SGF)の両方に溶解させてミクロ溶解解析を行った。
【0122】
この実験から、化合物Aの多形IIと比較して、化合物Aとマロン酸との共結晶A型及び化合物Aとゲンチシン酸との共結晶D型の溶解度が2〜3倍上昇したことが分かった。
【技術分野】
【0001】
本発明は新規共結晶、より具体的には、式(I)
【0002】
【化1】
【0003】
の化合物の新規共結晶型に関する。
【発明の概要】
【0004】
式(I)の化合物は通常、{1S−[1α,2α,3β(1S*,2R*),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1,2−ジオールと呼ばれるが、これ以降は便宜上、化合物Aとする。
【0005】
より具体的には本発明は、いくつかの化合物Aの共結晶、それらの調製方法、化合物Aの共結晶を含む医薬組成物、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症を予防するために使用する薬剤の製造における化合物Aの共結晶の使用、及び治療上有効量の化合物Aの共結晶を投与することによる、ヒト又は動物におけるそのような疾患の治療方法に関する。
【0006】
血小板の付着及び凝集は動脈血栓症を引き起こす事象である。血小板が内皮下表面に付着する過程は損傷を受けた血管壁の修復に重要な役割を果たしていると考えられるが、これを開始する血小板の凝集は、生きている血管床での急性血栓性閉塞を促進し、心筋梗塞及び不安定狭心症のような死亡率の高い事象を引き起こす可能性がある。これらの状態を予防する又は軽減するために用いられる血栓崩壊及び血管形成術のような介入の成功もまた、血小板による閉塞又は再閉塞によって損なわれる。
【0007】
アデノシン5’−二リン酸(ADP)が血栓症の重要な介在因子として作用していることが分かってきた。ADP誘導性の血小板凝集は、血小板膜に局在するP2T受容体サブタイプによって仲介される。P2T受容体(P2YADP又はP2TACとしても知られる)は主に血小板の凝集/活性化の仲介に関与する、まだクローニングされていないG−タンパク質結合受容体である。この受容体の薬理学的特徴は例えば、Humphries et al., Br. J. Pharmacology (1994), 113, 1057-1063及びFagura et al., Br. J. Pharmacology (1998) 124, 157-164の参考文献に記載されている。この受容体の拮抗薬がその他の抗血栓薬の作用を有意に上昇させることが分かっている(J. Med. Chem. (1999) 42, 213を参照のこと)。
【0008】
国際特許出願公開WO99/05143では、一連のトリアゾロ[4,5−d]ピリミジン化合物が、P2T(P2YADP又はP2TAC)の拮抗薬としての活性をもつことが開示されている。化合物Aは、国際特許出願公開WO99/05143の一般的な範囲に包含されるが、そこで具体的には開示されていない。
【0009】
化合物Aは、P2T(P2YADP又はP2TAC)拮抗薬として高い効果を示し、そして驚くほど高い代謝安定性及び生物学的利用率を有する。化合物Aは国際特許出願公開WO00/34283で具体的に示されており、多数の異なる実質的な結晶型が存在すると考えられる。これらの結晶型をこれ以降、国際特許出願公開WO01/92262に開示されているように、多形I、多形II、多形III、及び多形IVとする。
【0010】
化合物の別の形態、すなわち共結晶形態は、製品(例えば錠剤)の製造及び加工の促進に有用となる可能性があり、また、溶解度、分解、吸収、生物学的利用率及び/又は吸湿性のような特性を遊離型よりも望ましく変化させる可能性がある。
【0011】
化合物Aが複数の特定の共結晶形成分子と共に共結晶を形成できることを発見した。さらに、これらの共結晶には、例えば多形、溶媒和物、水和物などの、1つ以上の結晶学的に異なる形態が存在する可能性がある。
【0012】
従って本発明は、式(I)の化合物である{1S−[1α,2α,3β(1S*,2R*),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1,2−ジオールと共結晶形成分子との共結晶を提供する、
【0013】
【化2】
【0014】
式中共結晶形成分子は、グリコール酸、サリチル酸、デカン(カプリン)酸、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、グルタル酸、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、コハク酸、マロン酸又はマルトール(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)から選択される。
【0015】
疑義を避けるため、用語共結晶(若しくはコクリスタル)は、API(活性医薬品成分)分子又は分子と、ゲスト(若しくは共結晶形成)分子又は分子が存在する、多成分系を指す。共結晶では、API分子とゲスト(又は共結晶形成)分子の両方が、それらが高純度で独立して存在する場合、室温では固体である(共結晶を溶媒和物又は水和物と区別するため)。API分子とゲスト分子との間で陽子交換が多く又は完全に生じている塩は、この特定の定義からは除外される。共結晶では、APIと共結晶形成分子は水素結合及び生じ得るその他の非共有相互作用により相互作用する。共結晶それ自体は、水和物を含む溶媒和物を形成し得ることに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
全ての図において、化合物Aは、{1S−[1α,2α,3β(1S*,2R*),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1,2−ジオールである。
【図1】図1は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、化合物A多形IIが物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図2】図2は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。
【図3】図3は、化合物Aとグルタル酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、グルタル酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図4】図4は、化合物Aとグルタル酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、グルタル酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図5】図5は、化合物Aとグリコール酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、化合物A多形II及びグリコール酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図6】図6は、化合物Aとサリチル酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す図である。この材料の回折図が、化合物A多形IIが物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図7】図7は、化合物Aとサリチル酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。
【図8】図8は、化合物Aとサリチル酸との共結晶C型のXRPDパターンを示す。
【図9】図9は、化合物Aとマロン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。
【図10】図10は、化合物Aとマルトール酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、化合物A多形IIが物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図11】図11は、化合物Aとコハク酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、コハク酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図12】図12は、化合物Aとコハク酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、コハク酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図13】図13は、化合物Aとバニリン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料が共結晶と物理的な不純物として化合物A多形IIを含んでいることに注目。
【図14】図14は、化合物A多形IIの赤外線スペクトルを示す。
【図15】図15は、化合物Aとマロン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。この材料が共結晶と物理的な不純物として化合物A多形IIを含んでいることに注目。
【図16】図16は、化合物Aとマロン酸との共結晶の赤外線スペクトルを示す。
【図17】図17は、化合物Aとコハク酸との共結晶C型のXRPDパターンを示す。この材料の回折図が、コハク酸が物理的な不純物及び共結晶として存在していることを明らかにしていることに注目。
【図18】図18は、化合物Aとコハク酸との共結晶の赤外線スペクトルを示す。この試料中には遊離コハク酸が僅かに含まれている。
【図19】図19は、化合物Aとデカン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示す。
【図20】図20は、化合物Aとデカン酸との共結晶の赤外線スペクトルを示す。
【図21】図21は、化合物Aとサリチル酸との共結晶B型のXRPDパターンを示す。この材料が共結晶と物理的な不純物としてサリチル酸を含んでいることに注目。
【図22】図22は、化合物Aとサリチル酸との共結晶B型の赤外線スペクトルを示す。
【図23】図23は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶C型のXRPDパターンを示す。
【図24】図24は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶C型の赤外線スペクトルを示す。
【図25】図25は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶D型のXRPDパターンXRPDを示す。
【0017】
本発明の特定の実施形態では、式(I)の化合物と共結晶形成分子との前記共結晶は、マロン酸共結晶A型、コハク酸共結晶A型、コハク酸共結晶B型、コハク酸共結晶C型、コハク酸共結晶D型、デカン酸共結晶A型、サリチル酸共結晶A型、サリチル酸共結晶B型、サリチル酸共結晶C型、ゲンチシン酸共結晶A型、ゲンチシン酸共結晶B型、ゲンチシン酸共結晶C型、ゲンチシン酸共結晶D型、グルタル酸共結晶A型、バニリン酸共結晶A型、マルトール共結晶A型又はグリコール酸共結晶A型から選択される結晶形態である。これら特定の共結晶形態は全て、本明細書で記載する本発明の実施形態のいずれからも排除されてもよいことに注意されたい。
【0018】
本発明のさらなる側面では、式(I)の化合物の前記共結晶は、添付の図のいずれかに示したXRPDパターンを実質的に有する結晶形態である。
本発明により、化合物Aの共結晶が提供され、ここで前記共結晶は、粉末X線回折のパターンが表1−Aに示すように、約2θ(又はd−間隔)に特異的なピークをもつことによって特徴付けられる。
【0019】
【表1−1】
【0020】
【表1−2】
【0021】
本発明の別の側面では化合物Aの共結晶を提供するが、前記共結晶は、粉末X線回折のパターンが表2−Aに示すように、2θ(又はd−間隔)に特異的なピーク(表1−Aのピークに加えて)をもつことで特徴付けられる。
【0022】
【表2−1】
【0023】
【表2−2】
【0024】
表1−A及び2−Aでは、d−間隔の値が5Åを下回る場合には小数第2位までを引用し(許容誤差は通常±0.05Å)、5Åを超える値は小数第2位で四捨五入してもよく(許容誤差は通常±0.5Å)、かつ、2θの値は±0.2°である。
【0025】
別の側面では、結晶型の式(I)の化合物の共結晶を提供するが、各前記共結晶は、表1−Bに示したピークをもつ粉末X線回折パターンで特徴付けられる。
【0026】
【表3】
【0027】
別の側面では、結晶型の式(I)の化合物の共結晶を提供するが、各前記共結晶は粉末X線回折パターンが、表1−Bに示したピークに加えて、以下の表2−Bに示すピークをもつことで特徴付けられる。
【0028】
【表4】
【0029】
本発明の特定の共結晶は、化合物Aとマロン酸(A型)及びゲンチシン酸(D型)共結晶形成分子との共結晶であり、本明細書の実施例4に示すようにこれは遊離型化合物A多形II(国際特許出願公開WO01/92262を参照のこと)よりも優れた溶解プロファイルをもち、かつ、化合物Aのより迅速な吸収及び/又は代替処方の選択を可能にし得る。
【0030】
本発明の特定の態様では、異なる化学量論の、例えば1:1、1:2など、又は1:1、1:2など(APIである化合物A:共結晶形成分子、又は共結晶形成分子:APIである化合物A)の高純度な本発明の共結晶が可能である。
【0031】
本発明の共結晶は、非晶形又は多様な結晶型として存在し得る。
本発明の共結晶が本明細書で、(実質的に)結晶の共結晶を指す場合、これは例えば、結晶化度が約80%を超える、具体的には約90%を超える、より具体的には約95%を超えるような、結晶化度が約60%を超える共結晶であり、結晶化度%は共結晶試料全体の質量に対する結晶部分の重量%を指す。
【0032】
本発明のさらに特定の態様では、本明細書で開示した任意の結晶型の式(I)の化合物の共結晶は実質的に結晶型、例えば本明細書で定義したように、共結晶の80%、90%又は、より具体的には95%が結晶化している共結晶である。
【0033】
本発明のさらに特定の態様では、本明細書で定義した任意の結晶型の式(I)の化合物の共結晶は、その他の形態の式(I)の化合物を実質的に含まない、及び/又は、過剰の共結晶形成分子を実質的に含まない、例えば、過剰の共結晶形成及び/又はAPIである化合物A分子を10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、又は、より具体的には、1重量%未満しか含まない形態である。
【0034】
本明細書で定義した化合物Aと共結晶形成分子との共結晶の調製では、API:共結晶形成分子のモル比/化学量を様々に変化させてもよく、例えばAPI:共結晶形成の全体のモル比が1:1.1であることは共結晶が、APIである化合物Aと共結晶形成分子と、0.1モル多い共結晶形成分子が含まれた混合物であることを反映している。任意のモル比/化学量の化合物A:共結晶形成を含む本明細書で定義した共結晶が、本発明の範囲に含まれる。
【0035】
遊離型共結晶形成分子及び/又は遊離型API化合物分子を含む、本明細書で定義した化合物Aと共結晶形成との共結晶を含む混合物が本発明の範囲に含まれる。例えば、50重量%〜90重量%が化合物Aと共結晶形成の共結晶であり、残りが遊離型の共結晶形成分子及び/又は遊離型の化合物Aである混合物が含まれる。
【0036】
従って、一側面において本発明は、
a)式(I)の化合物と、グリコール酸、サリチル酸、デカン酸(カプリン酸)、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、グルタル酸、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、コハク酸、マロン酸又はマルトール(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)から選択される共結晶形成分子との共結晶、及び
b)前記共結晶形成分子
の混合物を含む固体に関する。
【0037】
前記固体は例えば、(a)80〜90重量%の、本明細書で定義した式(I)の化合物の前記共結晶、及び(b)10〜20重量%の前記共結晶形成分子を含んでいてもよい。
さらなる側面において本発明は、本明細書で定義した式(I)の化合物の固体に関し、前記固体は、
a)式(I)の化合物と、グリコール酸、サリチル酸、デカン酸(カプリン酸)、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、グルタル酸、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、コハク酸、マロン酸又はマルトール(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)から選択される共結晶形成分子との共結晶、具体的には結晶型の共結晶、及び
b)式(I)の化合物の多形I及び/又は多形II及び/又は多形III及び/又は多形IVの混合物を含む。
【0038】
さらなる側面では、(a)本明細書で定義した式(I)の化合物の共結晶と(b)式(I)の化合物の多形I及び/又は多形II及び/又は多形III及び/又は多形IVの混合物は、80%〜90%共結晶と10%〜20%の式(I)の化合物の多形I及び/又は多形II及び/又は多形III及び/又は多形IVの混合物を含む(重量%)。
【0039】
本発明のさらなる側面では、本明細書で言及した任意の過程又は実施例によって得ることができる共結晶を提供する。
本明細書で定義した化合物Aの共結晶は、P2T(P2YADP又はP2TAC)受容体の拮抗薬として作用する化合物Aを、(生体内で)遊離させると考えられている。従って、本明細書で定義した化合物Aの共結晶は、少なくとも1つのその他の薬学的に活性な薬剤との同時投与、連続投与又は個別投与による併用治療を含む治療に有用である。具体的には、本明細書で定義した化合物Aの共結晶の、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症の治療又は予防における使用を示す。動脈での血栓性合併症は、不安定狭心症;血栓性脳卒中若しくは閉塞性脳卒中などのアテローム性動脈硬化の主な血栓性合併症;一過性の虚血性発作;末梢血管疾患;血栓崩壊を伴う若しくは伴わない心筋梗塞;冠動脈血管形成術(PTCA)、動脈内膜切除、ステント留置、冠動脈及びその他の血管移植手術含む血管形成術のような介入によるアテローム硬化型疾患での動脈合併症;事故若しくは手術による外傷の後に行う救済手術、皮膚及び筋肉皮弁を含む再建手術などの手術又は機械的損傷による血栓性合併症;播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒素症症候群などの血栓/血小板要素の広汎な減少を伴う状態;敗血症性血栓性合併症;成人呼吸窮迫症候群;抗リン脂質抗体症候群;ヘパリン誘導性血小板減少症及び子癇前症/子癇;又は深部静脈血栓症、静脈閉塞性疾患のような静脈血栓症;血小板血症、鎌状赤血球病を含む骨髄増殖性疾患などの血液学的状態を含んでもよく;又は心肺バイパス及び体外式膜型人工肺(微小血栓閉塞症の予防)などの機械的な原因による生体内での血小板の活性化、血液製剤(例えば血小板濃縮物)における保存料の使用若しくは腎臓透析及び血漿交換でのシャント留置などの機械的な原因による生体外での血小板の活性化の予防では、脈管炎、動脈炎、糸球体腎炎、炎症性腸疾患及び器官移植拒絶、偏頭痛やレイノー現象のような状態、粥状硬化斑形成/進行などの血小板が血管壁の基礎炎症疾患の過程に影響を及ぼしている状態、狭窄/再狭窄並びに、血小板及び血小板由来因子が原因となる免疫学的な疾患過程である喘息などのその他の炎症を伴う状態のような血管損傷/炎症に続発する血栓症を含んでいてもよい。その他の指標には、CNS障害の治療、並びに腫瘍の成長及び蔓延の予防が含まれる。
【0040】
本発明のさらなる側面では、処置によるヒト又は動物の体の治療法で使用する、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を提供する。
本発明のさらなる特徴により、薬物として使用する本明細書で定義した化合物Aの共結晶を提供する。特に本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、ヒトのような温血動物中で、P2T(P2YADP又はP2TAC)受容体に拮抗する薬物として使用する。より具体的には、本明細書で定義した化合物Aの共結晶は、ヒトのような温血動物であって、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症の治療又は予防用薬物として使用される。
【0041】
本発明では、さらにP2T(P2YADP又はP2TAC)受容体の拮抗薬として使用する薬物の製造において使用する、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を提供する。具体的には、さらに冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症を治療又は予防するために使用する薬物の製造において使用する、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を提供する。
【0042】
本発明はまた、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者における動脈の血栓性合併症を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、そのような障害に罹患している又は起こしやすい患者に、治療上有効量の本明細書で定義した化合物Aの共結晶を投与する工程を含む。
【0043】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、溶液、懸濁液、HFAエアロゾル及び乾燥粉末の剤形で局所的に、例えば肺及び/又は気道に;又は錠剤、丸薬、カプセル、シロップ、粉末若しくは顆粒の形態で全身に、例えば経口で、又は無菌的な非経口溶液又は懸濁液の剤形で非経口で、皮下投与で、又は座剤として直腸投与で、又は経皮的に投与してもよい。
【0044】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、そのままで又は本明細書で定義した化合物Aの共結晶と薬学上許容可能な希釈剤、アジュバント及び/又は担体との組み合わせを含む医薬組成物として投与してもよい。そのため、本発明のさらなる特徴として、本明細書で定義した化合物Aの共結晶と薬学上許容可能な希釈剤、アジュバント及び/又は担体とを共に含む医薬組成物を提供する。特に好ましい組成物は、アレルギー性の副作用などの、副作用を起こす可能性のある材料を含まないものである。
【0045】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶の乾燥粉末製剤及び加圧したHFAエアロゾルを経口又は鼻孔吸入により投与してもよい。吸入用には、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を細かく破砕することが望ましい。本明細書で定義した化合物Aの共結晶をまた、乾燥粉末吸入器を用いて投与してもよい。吸入器は単回用又は複数回投与用であってもよく、かつ、呼気で動作する乾燥粉末吸入器であってもよい。
【0046】
1つには、細かく破砕した本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、担体基剤、例えば単糖、二糖若しくは多糖類、糖アルコール又は別の多価アルコールと混合することが挙げられる。好適な担体としては、糖類及びデンプンが挙げられる。あるいは細かく破砕した本明細書で定義した化合物Aの共結晶を別の基剤でコーティングしてもよい。粉末混合物を、それぞれが所望の用量の本明細書で定義した化合物Aの共結晶を含む、硬ゼラチンカプセルとして分配してもよい。
【0047】
別の方法としては、細かく破砕した粉末を、吸入処置を行っている間に壊れる球体中に入れる処理が挙げられる。この球形に成形した粉末を複数回投与用吸入器、例えばTurbuhaler(登録商標)として知られ、投薬装置が所望の用量を計量してその後患者に吸入する吸入器の薬剤貯蔵部に充填してもよい。このシステムでは、担体基剤を含む又は含まない本明細書で定義した化合物Aの共結晶が患者に送達される。
【0048】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶を含む医薬組成物を、便利なように、経口投与用の錠剤、丸薬、カプセル、シロップ、粉末若しくは顆粒;無菌的な非経口用若しくは皮下投与用の溶液、非経口投与用の懸濁液又は直腸投与用の座剤としてもよい。
【0049】
経口投与用には、本明細書で定義した化合物Aの共結晶をアジュバントすなわち担体、例えば乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン(馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン若しくはアミロペクチンなど)、セルロース誘導体、結合剤(ゼラチン若しくはポリビニルピロリドン)、及び滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ろう、パラフィンなど)などと混合し、その後錠剤として圧縮してもよい。コーティングした錠剤が必要な場合には、上述したように調製した核を、例えばアラビアゴム、ゼラチン、タルク、二酸化チタンなどを含む濃厚糖溶液でコーティングしてもよい。あるいは、容易に揮発する有機溶媒又は水性溶媒のいずれかに溶解した好適な重合体を用いて、錠剤をコーティングしてもよい。
【0050】
軟ゼラチンカプセルを調製するためには、本明細書で定義した化合物Aの共結晶を、例えば植物油又はポリエチレングリコールと混合してもよい。硬ゼラチンカプセルには、上述した錠剤用の賦形剤、例えば乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、セルロース誘導体又はゼラチンのいずれかを用いて化合物の顆粒を含めてもよい。薬剤の液体又は半固形製剤もまた、硬ゼラチンカプセル中に充填してもよい。
【0051】
経口投与用の液体製剤はシロップ又は懸濁液の剤形であってよく、例えば本明細書で定義した化合物Aの共結晶を含み、残りが糖及びエタノール、水、グリセロールとプロピレングリコールの混合物である溶液であってもよい。そのような液体製剤は必要なら、着色料、香料、サッカリン及び増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース又は当業者に知られているその他賦形剤を含んでいてもよい。
【0052】
本明細書で定義した化合物Aの共結晶は、国際特許出願公開WO00/34283で開示されているように、P2T(P2YADP又はP2TAC)受容体の拮抗薬として作用する化合物Aを遊離させると考えられている。化合物A及び本明細書に記載したその共結晶の薬理学的特性は、例えば国際特許出願公開WO00/34283に記載されている1つ以上の方法により評価することができる。国際特許出願公開WO00/34283では例えば、ヒトの洗浄血小板でのP2T(P2YADP又はP2TAC)受容体に対する作用薬/拮抗薬の活性試験の準備方法が記載されている。この方法では、拮抗薬の効果を対照のADP反応に対する%阻害として評価してIC50を得る。国際特許出願公開WO00/34283では、そこで例示された化合物のpIC50値は5.0を超えると報告されている。
【実施例】
【0053】
本発明を本明細書では、以下の非限定的な実施例、データ及び図を用いて説明する。特にことわりがない限りこれらの非限定的な実施例、データ及び図では、
(i)収率は説明するためだけに示すものであり、かつ、必ずしも達成可能な最大収率ではない;
(ii)種結晶として使用する生成物は、公知の又は開示されている過程によって得ることができる。
【0054】
用いることができる標準的な分析技術には、XRPD、水素結合の評価に役立つFTIR、固体NMR、液体NMR、DSC及びTGAが含まれる。
粉末X線回折
当該分野においては、得られる粉末X線回折のパターンが測定条件(装置、試料調製又は使用した機械など)に依存して1つ以上の測定誤差を含む可能性があることが知られている。具体的には、粉末X線回折パターンの強度が測定条件及び試料の調製に依存して変動し得ることが一般的に知られている。例えば、ピークの相対強度は試験を行った時の試料の方向並びに用いた機械の型及び設定によって変動するため、本明細書に含めたXRPD波形の強度は説明のためのものであり、絶対的な比較のために用いることを目的とするものではないことを、粉末X線回折を行う当業者は理解するだろう。
【0055】
当業者はまた、反射の位置が、回折装置に置かれた試料の実際の高さ及び回折装置のゼロ校正に影響を受けることを理解するだろう。試料表面の平面性もまた、僅かに影響を及ぼす場合がある。従って、本明細書で提示する回折パターンのデータは絶対的なものとして解釈されるものではないことを当業者は理解するだろう(さらなる情報については、Jenkins, R & Snyder, R.L. ‘Introduction to X-Ray Powder Diffractometry’ John Wiley & Sons, 1996を参照のこと)。
【0056】
上でも述べたように、通常、粉末X線回折図形の回折角度の測定誤差は、2θについては0.5°以下(又は、より良くは、2θについて0.2°以下)であり、粉末X線回折のパターンについて検討する場合や、上述した文章及び本明細書の表で言及したピーク位置について解釈する場合には、そのような角度の測定誤差も考慮するべきである。d−間隔の値が5Åを下回る場合には小数第2位までを引用し(許容誤差は通常±0.05Å)、5Åを超える値は小数第2位で四捨五入してもよく(許容誤差は通常±0.5Å)、かつ、2θの値は±0.2°である。
【0057】
実施例1:化合物Aの共結晶の形成
入手の容易な材料である以下の共結晶形成分子を、化合物Aとの実験に用いた(化合物Aは本明細書で記載したPCT出願に記載されている方法で調製することができ、その関連する内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0058】
【化3−1】
【0059】
【化3−2】
【0060】
粉末X線回折(XRPD)分析は、Inel社のXRG−3000回折計に、2θの範囲が120°であるCPS(Curved Position Sensitive)検出器を設置して行った。Cu−Kα線(X線の波長は1.5418Å)を用い、2θの分解能を0.03°として即時データを回収した。管電圧及び管電流をそれぞれ40kV及び30mAに設定した。単色スリットを5mm位置に160μm間隔で設置した。2θが2.5−40°の範囲のパターンを表示する。解析用に、試料を壁厚の薄いガラス製の毛細管に充填して準備した。各キャピラリーをゴニオメーターのヘッドにマウントし、データを取得している間はキャピラリーが回転し続けているかどうかを監視した。試料の解析を5分間行った。装置の校正は、ケイ素の標準物質を用いて行った。
【0061】
実施例1−A:化合物Aとデカン酸の共結晶A型
デカン酸(10.3mg)のメタノール(500μL)溶液を、ろ過した2mlの化合物Aのアセトン溶液(15mg/mL)に撹拌しながら添加した。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0062】
得られた共結晶材料は、実施例2−Cで列挙したピークと一致する回折図形を示した(図19を参照のこと)。
実施例1−B:化合物Aとゲンチシン酸の共結晶A及びB型
ゲンチシン酸(8.7mg)のアセトン溶液を(500μL)、ろ過した2mlの化合物Aのアセトン溶液(15mg/mL)に撹拌しながら添加した。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0063】
得られた材料をA型とし、回折図形を図1に示す。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明かである。
ゲンチシン酸(7.2mg)のメタノール溶液(300μL)を、ろ過した3mLの化合物Aのジクロロメタン溶液(8mg/mL)に、撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0064】
得られた共結晶材料をB型とし、回折図形を図2に示す。
実施例1−C:化合物Aとグルタル酸の共結晶A及びB型
80.6mgの化合物Aを、70mLのアセトニトリル存在下で19.8mgのグルタル酸と共に2分間粉砕した。
【0065】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図3に示す。この材料の回折図形から、グルタル酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
30mgの化合物Aを、ろ過した2mLのグルタル酸のジエチルエーテル溶液(30mg/mL)に撹拌しながら加え、8日間振とうした。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0066】
得られた共結晶材料をB型とし、回折図形を図4に示す。この材料の回折図形から、グルタル酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
実施例1−D:化合物Aとグリコール酸との共結晶A型
86.4mgの化合物Aを13mgのグリコール酸と共に、70mLのアセトニトリル存在下で2分間破砕した。
【0067】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図5に示す。この材料の回折図形から、化合物A多形II及びグリコール酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明かである。
【0068】
実施例1−E:化合物Aとサリチル酸との共結晶A、B及びC型
103mgの化合物Aを26mgのサリチル酸と共に、70μLのアセトニトリル存在下で2分間破砕した。試料を粉砕乾燥し、試料を新しい試験管に移してアセトニトリルをさらに50μL加えた。
【0069】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図6に示す。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかなである。
サリチル酸(8mg)のアセトン溶液(500mL)を、ろ過した2mLの化合物Aアセトン(15mg/mL)溶液に、撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0070】
得られた共結晶材料をB型とした。図7に示した回折図形は実施例2−Dで挙げたピークと一致した。
サリチル酸(6.5mg)のメタノール(300μL)溶液を、ろ過した3mLの化合物Aのジクロロメタン溶液に(8mg/mL)、撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0071】
得られた共結晶材料をC型とし、回折図形を図8に示す。
実施例1−F:化合物Aとマロン酸との共結晶A型
72mgの化合物Aを15mgのグルタル酸と共に、70mLのアセトニトリル存在下で2分間破砕した。
【0072】
得られた共結晶材料は、図9の回折図形を示し、実施例2−Aに列挙したピークと一致した(図15を参照のこと)が、物質の不純物としてのいずれの化合物A多形IIの確証はない。
【0073】
別の方法では、マロン酸(6mg)のアセトン(500μL)溶液を、ろ過した2mL化合物Aのアセトン(15mg/mL)溶液に撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0074】
得られた共結晶材料は、実施例2−Aに挙げたものと一致するピークをもつ回折図形を示した(図15を参照のこと)。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかなことである。
【0075】
さらに別の方法では、マロン酸(4.8mg)のメタノール(300μL)溶液を、ろ過した3mLの化合物Aのジクロロメタン(8mg/mL)溶液に撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0076】
得られた共結晶材料は、実施例2−Aに挙げたものと一致するピークをもつ回折図形を示した(図15を参照のこと)。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
【0077】
実施例1−G:化合物Aとマルトール酸との共結晶A型
マルトール酸(7.3mg)のメタノール(500μL)溶液を、ろ過した2mLの化合物Aのアセトン溶液(15mg/mL)に撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0078】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図10に示す。この材料の回折図形から、化合物A多形IIが物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
実施例1−H:化合物Aとコハク酸との共結晶A及びB型
13.6mgのコハク酸を、ろ過した1.5mLの化合物A(301mg)の酢酸エチル(15mL)溶液に加えた。得られた溶液を蒸発させて固体を得た(蒸発は乾燥する前に終了させた)。
【0079】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図11に示す。この材料の回折図形から、コハク酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
72mgの化合物Aを16mgのコハク酸と共に、70μLのアセトニトリル存在下で2分間破砕した。その後試料を新しい試験管に移し、アセトニトリルをさらに70μL加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0080】
得られた共結晶材料をB型とし、回折図形を図12に示す。この材料の回折図形から、コハク酸が物質の不純物かつ共結晶として存在していることが明らかである。
実施例1−I:化合物Aとバニリン酸との共結晶A型
バニリン酸(9.9mg)のメタノール(500μL)溶液を、ろ過した2mLの化合物Aのアセトン溶液に(15mg/mL)撹拌しながら加えた。試験管に蓋をし、パラフィルムで覆った。
【0081】
得られた共結晶材料をA型とし、回折図形を図13に示す。この材料は、共結晶と物質の不純物としての化合物A多形IIを含んでいる。
実施例2:化合物Aの共結晶形成のさらなる評価
化合物Aの共結晶を用いて、以下の実験を行った。
【0082】
以下の条件で、粉末X線回折(XRPD)のパターンを回収した。
θ−θPhilips X’Pert PROを用いて、粉末X線回折を記録した(X線の波長は1.5418Å、線源はCu、電圧45kV、フィラメント放出40mA)。X’celerator検出器(有効長2.13°2θ)を用い、2θ 2〜40°の範囲をステップ幅0.033°、スキャン時間200秒で試料をスキャンした。
【0083】
実施例2−Dの例では、θ−2θPhilips X’Pert PROを用いて粉末X線回折を記録した(X線波長1.5406Å、線源Cu、電圧45kV、フィラメント放出40mA)。X’celerator検出器(有効長2.13°2θ)を用い、2θ 2〜40°の範囲をステップ幅0.033°、スキャン時間200秒で試料をスキャンした。
【0084】
実施例2−Eの例では、θ−θPANalytical CUBIXを用いて粉末X線回折を記録した(X線波長1.5418Å、線源Cu、電圧45kV、フィラメント放出40mA)。X’celerator検出器(有効長2.55°2θ)を用い、2θ 2〜40°の範囲をステップ幅0.02°、スキャン時間100秒で試料をスキャンした。
【0085】
Nicolet6700赤外線分光計にゴールデンゲートATRアタッチメントを搭載し、赤外線スペクトルを回収した。トルク圧は20cNm、分解能を2cm−1として32回スキャンしてデータを回収した。
【0086】
当然のことながら、赤外線ピークの相対強度は、実施した試料取得法によって変化し得る。
例えば、化合物Aの調製とXRPDのパターンは、国際特許出願公開PCT/SE01/01239(国際特許出願公開WO01/92262)に既に開示されている。
【0087】
基準となる化合物A多形IIの赤外線スペクトルは、3373、3289、3248、3177、2962、2924、2907、2871、1624、1604、1583及び1517cm−1に特徴的なピークを示す(図14を参照のこと)。
【0088】
実施例2−A:化合物Aとマロン酸との共結晶A型
50mgの化合物A多形IIを1:1モル等量のマロン酸(11mg)と共に、およそ30μlのアセトニトリル存在下で、2〜3分間破砕した。得られた固体をXRPD及び赤外線分光法により解析した。
【0089】
この試料のXRPDは共結晶による強い反射を14.43、9.19、7.22、6.13及び4.88に、より具体的には14.43、9.19、7.22、6.13、4.88、4.21、4.13及び3.46Åに有し、図9と一致する回折パターンを示した。
【0090】
図15は、化合物Aとマロン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示している。この材料は、共結晶と物質の不純物としての化合物A多形IIを含んでいる。
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図16)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶に特異的なピークには、3268(a)、3196(a)、1730(m)、1596(a)cm−1が含まれ、より好ましくは1401、1375、1337、1322、1254、1232、1212、1204、1173、1161、1144、1114、1099、1080、1061、1043、1010cm−1もまた含まれる(ここで(m)及び(a)はシフトしていないピークであり、mはマロン酸を、aは化合物Aのピークを表す)。
【0091】
実施例2−B:化合物Aとコハク酸との共結晶C型
コハク酸の飽和溶液を、メタノールをコハク酸で飽和し、その後ろ過することにより生成した。化合物Aを1mLのこの飽和溶液に加えて、薄い懸濁液を形成させた。懸濁液を、溶解した場合には化合物Aをさらに加えながら、周囲温度で7日間撹拌した。7日後に撹拌を終了した。外観が異なる2種類の固形材料を同定した。赤外線分光法により、1種類の材料が主にコハク酸であることを同定した。他方の材料をXRPD及び赤外線分光法で解析した。
【0092】
試料のXRPDは回折パターンを示し、共結晶による強い反射が12.75、11.43、10.10、6.29、4.22Åに、より好ましくは、12.75、11.43、10.10、9.57、7.67、7.26、6.97、6.29、4.68及び4.22Åに見られた。
【0093】
図17は化合物Aとコハク酸との共結晶A型のXRPDパターンを示している。この材料の回折図形からコハク酸が物質の不純物かつ共結晶として存在することが明らかである。
【0094】
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図18;この試料中には遊離コハク酸が僅かに含まれている)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶A型に特異的なピークには、3263(a)、3191(a)、3091、1722(s)、1700(s)、1591(a)、1520(a)cm−1が含まれ、より具体的には、1436、1404、1324、1297、1200、1162、1143、1112、1061、1043cm−1もまた含まれる(ここで(s)及び(a)はシフトしていないピークであり、それぞれ、sはコハク酸のピークをaは化合物Aのピークを表す)。
【0095】
実施例2−C:化合物Aとデカン酸との共結晶A型
50mgの化合物A多形IIを1:1モル等量のデカン酸(16mg)と共に、およそ15μlのアセトニトリル存在下で2〜3分間破砕した。固体はペースト状になり、その後硬化した。得られた固体をXRPDと赤外線分光法で解析した。
【0096】
試料のXRPDは回折パターンを示し、共結晶による強い反射は14.27、9.53、8.65、5.38、4.31Å、より具体的には14.27、10.81、10.15、9.53、8.65、8.26、6.16、5.95、5.38、5.07及び4.31Åに見られた。
【0097】
図19は化合物Aとデカン酸との共結晶A型のXRPDパターンを示している。
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図20)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶A型に特異的なピークには、3465、3381(a)、3262(a)、3190(a)、2919、2851、2530、1702(d)、1588(d)、1520(d)cm−1が含まれ、より好ましくは、1455、1429、1384、1324、1275、1212、1200、1127、1103、1064cm−1もまた含まれる(ここで(d)及び(a)はシフトしていないピークであり、それぞれ、dはデカン酸のピークをaは化合物Aのピークを表す)。
【0098】
実施例2−D:化合物Aとサリチル酸との共結晶B型
サリチル酸の飽和溶液を、メタノールをサリチル酸で飽和させ、その後ろ過することにより生成した。化合物Aを1mLのこの飽和溶液に加え、薄い懸濁液を形成させた。懸濁液を、溶解した場合には化合物Aをさらに加えながら、周囲温度で7日間撹拌した。7日後に撹拌を終了した。得られた材料をXRPD及び赤外線分光法により解析した。
【0099】
試料のXRPDは、共結晶による強い反射が14.55、11.00、4.71及び4.33Åに、より好ましくは21.09、17.46、14.55、11.00、6.31、4.71及び4.33Åに見られることを示した。
【0100】
図21は化合物Aとサリチル酸との共結晶B型のXRPDパターンを示している。この材料は、共結晶と物質の不純物としてのサリチル酸を含んでいる。
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図22)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶B型に特異的なピークには、1633(s)、1590、1522(a)cm−1が含まれる(ここで(s)及び(a)はシフトしていないピークであり、それぞれ、sはサリチル酸のピークをaは化合物Aのピークを表す)。
【0101】
実施例2−E:化合物Aとゲンチシン酸との共結晶C型
ゲンチシン酸の飽和溶液を、メタノールをゲンチシン酸で飽和し、その後ろ過することにより生成した。化合物Aを、1mLのこの飽和溶液に加えて薄い懸濁液を形成させた。この懸濁液はその後溶解した。溶液を蒸発させるために放置した(試験管の蓋を僅かに開けておいた)。11日後、形成された固体をXRPDと赤外線分光法により解析した。
【0102】
試料のXRPDは、共結晶による強い反射が25.52、18.24、15.77、8.70、7.49及び4.23Åに、より好ましくは、25.52、18.24、15.77、12.96、8.70、7.49、6.51、5.06、4.56、4.36及び4.23Åに見られることを示した。図23は化合物Aとゲンチシン酸との共結晶C型のXRPDパターンを示している。
【0103】
赤外線分光法によるデータは、化合物Aと共結晶形成分子の両方による吸収帯が存在するが、シフトしたことを示している(図24)。ピーク位置の、特に水素結合の領域でのシフトは、この形態が単なる物理的な混合物ではないことを示し、共結晶の形成を強く示唆するものである。ここで注目すべきは、全てのピークがシフトするのではなく、共結晶形成の結果生じた相互作用の変化によって影響を受けたピークのみがシフトすることである。共結晶C型に特異的なピークには、3255(g)、2969、1521(a)cm−1が含まれる(ここで(g)及び(a)はシフトしていないピークであり、それぞれ、gはゲンチシン酸のピークをaは化合物Aのピークを表す)。
【0104】
実施例3:大規模実験
API=化合物A(式(I)の化合物)
θ−θPANalytical CUBIXを用いて粉末X線回折を記録した(X線波長1.5418Å、線源Cu、電圧45kV、フィラメント放出40mA)。X’celerator検出器(有効長2.55°2θ)を用い、2θ 2〜40°の範囲をステップ幅0.02°、スキャン時間100秒で試料をスキャンした。
【0105】
液体NMRを以下のように行った。
共結晶の試料(1〜20mg)を0.75mlまでのヘキサ重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解した。マロン酸試料の場合には、およそ20μlのトリフルオロ酢酸(TFA)を試料に加えた。試料を5mmのNMR用の試料管に移した。プロトン(1H)NMRのスペクトルを、Bruker Avance 500 MHz分光計を用い、300Kで記録した。共結晶試料に含まれるAPIの同一性を、APIの標準物質のスペクトルと比較することによって確認した。化学量の測定には、API(通常、7.3ppmの芳香族の共鳴)及び共結晶形成分子の両方から共鳴の正確な積分を得て、プロトンの数を基準として正規化し、比率を解析した。
【0106】
実施例3−A:化合物Aとマロン酸との共結晶A型
APIの量:22.95g
共結晶形成分子の量:11.1g
モル分率:0.29(API)/0.71(共結晶形成分子)
溶媒:アセトン
溶媒量:50mL
相対体積:1.67mL/g(固体)
開始時温度:25℃
終了時温度:0℃
洗浄液:ヘプタン
洗浄液量:15mL
相対体積wl:0.5mL/g(固体)
固体を、好適な、電動攪拌機を備えた温度が制御できる反応器に入れた。溶媒を加え、温度を25℃に設定した。溶解が起こった後、冷却速度を制御せずに温度を15℃まで下げ、一晩放置した。この間に共結晶が形成した。この後スラリーを0℃まで冷却し、6.5時間放置した。その後、固体を真空下でろ過し、ヘプタンで洗浄し、40℃で真空乾燥した。
【0107】
液体核磁気共鳴による試料の解析から、試料中にマロン酸が0.5モル多く含まれていたことが示された。マロン酸共結晶の試料2.0gを4mLのアセトンに加えて2時間懸濁した。次にこの懸濁液に1660mgのAPIと348mgのマロン酸の物質混合物を加えて、撹拌しながら2〜3日間放置した。試料をその後真空ろ過し、周囲温度で一晩真空乾燥した。得られた乾燥試料を粗く破砕した。液体NMRから、API:共結晶形成分子全体のモル比が1:1.1であり、過剰のマロン酸が0.1モルまで減少したことが分かった。
【0108】
XRPDは、マロン酸共結晶のA型と一致した。
固体NMRから、マロン酸共結晶の構造には、結晶学的に独立した化合物Aの分子が1種類だけ含まれていることが分かった。
【0109】
これらのデータから、共結晶中のAPI:共結晶形成分子の化学量が1:1であることが分かった。
調製したマロン酸の共結晶は、110℃までの熱に安定であった。
【0110】
実施例3−B:化合物Aとデカン酸との共結晶A型
APIの量:12.35g
共結晶形成分子の量:7.6g
モル分率:0.33(API)/0.66(共結晶形成分子)
溶媒1:アセトン
溶媒1の量:40mL(+10mL)
相対体積s1:2mL/g(固体)(2.5mL/g(固体))
溶媒2:シクロヘキサン
溶媒2の量:60mL
相対体積s2:3mL/g(固体)
開始時温度:20℃
終了時温度:20℃
洗浄液:アセトン/シクロヘキサン、1:1(体積)混合物
洗浄液量:25mL
相対体積wl:1.25mL/g(固体)
固体を、好適な、電動攪拌機を備えた温度が制御できる反応器に入れた。溶媒を加え、温度を20℃に設定した。恒温装置の不調により、開始時温度が27℃まで上昇し、固体の溶解が起こった。温度を10℃まで下げたところ、結晶化が生じた。この温度ではスラリーは変化せず、その後温度を30℃まで上げた。出発材料の挙動とは対照的に、この温度では固体は完全には溶解せず、スラリーは、流動性になった。その後温度を20℃まで下げた。スラリーの流動性は22℃で既に止まっていた。3相対体積のシクロヘキサン(貧溶媒)及び1/2相対体積のアセトンを加え、粘性はあるが撹拌可能なスラリーを得た。このスラリーを20℃で一晩放置した。その後スラリーをろ過し、アセトンとシクロヘキサンの1:1混合物で洗浄し、20℃で真空乾燥した。
【0111】
液体NMRから、API:共結晶形成分子のモル比が0.3であることが分かった。
XRPDは、化合物A多形IIIを過剰に含む、デカン酸の共結晶A型と一致した(国際特許出願公開WO01/92262を参照のこと)。
【0112】
実施例3Aで行ったように、当業者は、過剰な不純物を減らし、また、化学量論を改善するために、相図を操作することが可能である。例えば、Phase Solubility Diagrams of Cocrystals Are Explained by Solubility Product and Solution Complexation, Sarah J. Nehm, Barbara Rodriguez-Spong, and Nair Rodriguez-Hornedo Crystal Growth & Design, 2006, 6, 592-600を参照のこと。
【0113】
実施例3−C:化合物Aとコハク酸の共結晶
APIの量:8.17g
共結晶形成分子の量:1.91g
モル分率:0.49(API)/0.51(共結晶形成分子)
溶媒1:2−プロパノール
溶媒1の量:100mL
相対体積s1:9.9mL/g(固体)
溶媒2:シクロヘキサン
溶媒量2:75mL
相対体積s2:7.4mL/g(固体)
開始時温度:55℃
開始時温度:15℃
洗浄液:2−プロパノール/シクロヘキサン、1:0.75(体積)混合物
洗浄液量:20mL
相対体積wl:2mL/g(固体)
固体を、好適な、電動攪拌機を備えた温度が制御できる反応器に入れた。溶媒を加え、温度を55℃に設定した。
【0114】
温度を15℃まで下げ、10時間維持した。その後スラリーをろ過し、2−プロパノールとシクロヘキサンの混合物で洗浄し、40℃で真空乾燥した。
液体NMRから、API:共結晶形成分子全体のモル比が0.6であることが分かった。
【0115】
XRPDから、この材料があまり結晶化していないことが分かった。
マロン酸の共結晶の例で行ったように、当業者は、相図を操作することにより化学量論を改善することが可能である。
【0116】
実施例3−D:化合物Aとゲンチシン酸の共結晶D型
APIの量:14.74g
共結晶形成分子の量:5.38g
モル分率:0.45(API)/0.55(共結晶形成分子)
溶媒:アセトン
溶媒量:50mL
相対体積:2.5mL/g(固体)
開始時温度:25℃
終了時温度:0℃
洗浄液:シクロヘキサン
洗浄液量:20mL
相対体積wl:1mL/g(固体)
固体を、好適な、電動攪拌機を備えた温度が制御できる反応器に入れた。溶媒を加え、温度を25℃に設定した。温度を6時間かけて10℃まで下げ、溶液をその温度で一晩放置し、結晶化させた。温度を0℃まで下げ、その温度に達したところで固体を単離した。その後スラリーをろ過し、シクロヘキサンで洗浄し、その後40℃、真空下で乾燥させた。このバッチのXRPD及び溶液NMRから、結晶化が僅かであり、API:共結晶形成分子のモル比が1:1.1であることがそれぞれ分かった。
【0117】
結晶化度を向上させるために、まずゲンチシン酸の試料(2.2mg)を粗く破砕し、次に5mLのトルエン中で2〜3日かけてスラリーにした。この間にスラリーは固化した。これを単離し、周囲温度で真空乾燥した。乾燥材料をゆっくりと破砕した。XRPDが既知の形と一致したため、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶D型であることが示された(図25を参照のこと)。液体NMRにより、API:共結晶形成分子のモル比が1:1.1であることを確認した。
【0118】
図25は、化合物Aとゲンチシン酸との共結晶D型のXRPDパターンを示している。
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
調製したゲンチシン酸の共結晶は、137℃までの熱に安定であった。
実施例4:溶解実験
共結晶試料9mgを25mlの(i)ミセル構成要素を含まない、絶食状態の小腸液(Fassif)及び(ii)疑似胃酸(SGF)の両方に溶解させてミクロ溶解解析を行った。
【0122】
この実験から、化合物Aの多形IIと比較して、化合物Aとマロン酸との共結晶A型及び化合物Aとゲンチシン酸との共結晶D型の溶解度が2〜3倍上昇したことが分かった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物、{1S−[1α,2α,3β(1S*,2R*),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1、2−ジオールと共結晶形成分子の共結晶であって、
該共結晶形成分子がグリコール酸、サリチル酸、デカン酸(カプリン酸)、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、グルタル酸、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、コハク酸、マロン酸又はマルトール(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)から選択される、前記共結晶。
【請求項2】
マロン酸共結晶A型、コハク酸共結晶A型、コハク酸共結晶B型、コハク酸共結晶C型、コハク酸共結晶D型、デカン酸共結晶A型、サリチル酸共結晶A型、サリチル酸共結晶B型、サリチル酸共結晶C型、ゲンチシン酸共結晶A型、ゲンチシン酸共結晶B型、ゲンチシン酸共結晶C型、ゲンチシン酸共結晶D型、グルタル酸共結晶A型、バニリン酸共結晶A型、マルトール共結晶A型又はグリコール酸共結晶A型から選択される結晶型である、請求項1に記載の式(I)の化合物の共結晶。
【請求項3】
該結晶型のそれぞれが以下の表に挙げたピークを示す粉末X線回折パターンをもつことを特徴とする、請求項2に記載の式(I)の化合物の共結晶。
【表1】
【請求項4】
該結晶型のそれぞれが、請求項3で示したピークに加えて以下の表に挙げたピークを示す粉末X線回折パターンをもつことを特徴とする、請求項3に記載の式(I)の化合物の共結晶。
【表2】
【請求項5】
該共結晶形成分子がマロン酸又はゲンチシン酸である、請求項2に記載の式(I)の結晶型の化合物の共結晶。
【請求項6】
該共結晶がマロン酸との共結晶(A型)又はゲンチシン酸との共結晶(D型)である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の式(I)の結晶型の化合物の共結晶。
【請求項7】
請求項1で定義した式(I)の化合物の共結晶の調製方法であって、遊離型の式(I)の化合物の溶液と適切な共結晶形成カウンター分子とを、メタノールなどの好適な溶媒中で混合する工程を含む、前記調製方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶と薬学上許容可能な希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
治療用の請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶。
【請求項10】
冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者において動脈の血栓性合併症を予防するために使用する、請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶。
【請求項11】
冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者において動脈の血栓性合併症を予防するために使用する薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶。
【請求項12】
治療上有効量の請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶を投与することによる、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者において動脈の血栓性合併症を治療する方法。
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物、{1S−[1α,2α,3β(1S*,2R*),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1、2−ジオールと共結晶形成分子の共結晶であって、
該共結晶形成分子がグリコール酸、サリチル酸、デカン酸(カプリン酸)、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、グルタル酸、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、コハク酸、マロン酸又はマルトール(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)から選択される、前記共結晶。
【請求項2】
マロン酸共結晶A型、コハク酸共結晶A型、コハク酸共結晶B型、コハク酸共結晶C型、コハク酸共結晶D型、デカン酸共結晶A型、サリチル酸共結晶A型、サリチル酸共結晶B型、サリチル酸共結晶C型、ゲンチシン酸共結晶A型、ゲンチシン酸共結晶B型、ゲンチシン酸共結晶C型、ゲンチシン酸共結晶D型、グルタル酸共結晶A型、バニリン酸共結晶A型、マルトール共結晶A型又はグリコール酸共結晶A型から選択される結晶型である、請求項1に記載の式(I)の化合物の共結晶。
【請求項3】
該結晶型のそれぞれが以下の表に挙げたピークを示す粉末X線回折パターンをもつことを特徴とする、請求項2に記載の式(I)の化合物の共結晶。
【表1】
【請求項4】
該結晶型のそれぞれが、請求項3で示したピークに加えて以下の表に挙げたピークを示す粉末X線回折パターンをもつことを特徴とする、請求項3に記載の式(I)の化合物の共結晶。
【表2】
【請求項5】
該共結晶形成分子がマロン酸又はゲンチシン酸である、請求項2に記載の式(I)の結晶型の化合物の共結晶。
【請求項6】
該共結晶がマロン酸との共結晶(A型)又はゲンチシン酸との共結晶(D型)である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の式(I)の結晶型の化合物の共結晶。
【請求項7】
請求項1で定義した式(I)の化合物の共結晶の調製方法であって、遊離型の式(I)の化合物の溶液と適切な共結晶形成カウンター分子とを、メタノールなどの好適な溶媒中で混合する工程を含む、前記調製方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶と薬学上許容可能な希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
治療用の請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶。
【請求項10】
冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者において動脈の血栓性合併症を予防するために使用する、請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶。
【請求項11】
冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者において動脈の血栓性合併症を予防するために使用する薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶。
【請求項12】
治療上有効量の請求項1〜6のいずれか1項で定義した式(I)の化合物の共結晶を投与することによる、冠動脈、脳血管又は末梢血管疾患に罹患している患者において動脈の血栓性合併症を治療する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2013−512886(P2013−512886A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541573(P2012−541573)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002222
【国際公開番号】WO2011/067571
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002222
【国際公開番号】WO2011/067571
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】
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