説明

血小板機能を測定し、血小板関連疾患および心血管疾患を診断するための方法および手段

本発明は、血小板機能を診断する方法であって、
(a) 被験体から血小板含有サンプルを採取するステップ、および
(b) 好ましくは該サンプルを血漿凝固および/またはフィブリン形成を阻害し得る条件下で保持するステップ、
(c) 該血小板に由来する血小板機能マーカーまたはかかるマーカーの変異体を溶液化するステップ、
を含んでなり、ここで少なくともステップb)とc)は血液採取デバイス中で実施され、および/またはさらに該溶液中の該血小板機能マーカーのレベルが測定される、上記の方法を提供する。好ましくは、血小板機能マーカーは、in vitroで血小板を活性化させることにより、またはタンパク質分解によって溶液化される。血小板機能の好適なマーカーとしては、CD40L、sCD40L、P-セレクチン、可溶性P-セレクチン、GP-IV、可溶性GP-IV、GP-V、可溶性GP-V、GP-VI、可溶性GP-VI、CD63、血小板因子4(PF-4)、β-トロンボグロブリン(β-TG)、またはこれらの変異体が挙げられる。本発明の方法は、血小板機能低下または血小板機能亢進、心血管疾患、および血小板機能低下または血小板機能亢進に関連する任意の疾患の診断または測定を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板機能不全、特に血小板機能低下または血小板機能亢進の診断または測定、ならびに血小板関連疾患および心血管疾患の診断に関する。さらに特に、本発明は、かかる診断に関連するサンプル調製のための方法および手段に関する。
【背景技術】
【0002】
生理学的条件下で、血液は、血流が遮断されることなく、また周辺組織に血液が漏れることなく閉鎖血管系の中で循環する。例えば外傷によって血管壁の完全性が損なわれる場合、血液は周辺組織中へ流入しまたは傷口の外へ流出する可能性がある。止血と呼ばれる過程では、血液の喪失は、通常は血漿の可溶性成分と共に損傷部位を閉鎖して出血を止める血餅を形成する血小板によって制限される。
【0003】
止血機序は注意深く制御しなければならない。なぜならあらゆる凝固系の疾患は、止血中に、損傷の場合には過度の出血(止血が不十分な場合)、または別の健康な血管中の血餅の形成(止血が過度に活性化されている場合)のいずれかを生じさせるからである。血小板は、血餅形成の開始および局在化において重要な役割を果たし、このため数多くの病態が血小板機能不全に伴う。例えば、血小板機能低下は出血リスクの増加を伴い、他方、血小板機能亢進は、微小血栓塞栓症、脳卒中または急性冠症候群のリスクを増加させる。さらに、特定の病態では、血小板が刺激され、血小板刺激の程度はそれ自体が診断的意義を有し得る(例えば、心血管系の合併症のリスクの指標)。
【0004】
従って、簡単で信頼し得る血小板活性化および血小板機能不全の診断のための方法および手段が望ましい。
【0005】
血小板機能を測定するための公知の方法としては、光学的凝集測定法とインピーダンス凝集測定法(例えば、非特許文献1参照)が挙げられる。
【0006】
光学的凝集測定法では、多血小板クエン酸血漿または洗浄した血小板の懸濁液のサンプルを、光透過率光度計に挿入して攪拌する。血小板活性化因子を添加した後、光透過率のレベルを長時間モニタリングする。活性化されると、血小板は大きな凝集体を形成し始める。この凝集体は、サンプル中の粒子の数を減少させ、光透過率の増加をもたらす。凝集体が早く形成されるほど、血小板の凝集能(すなわち血餅を形成する能力)が高い。
【0007】
インピーダンス凝集測定法も、活性化された血小板に由来する凝集体の形成に基づく。サンプルの光学密度を測定する代わりに、サンプルの電気インピーダンスを測定する。光学的凝集測定法とは異なり、インピーダンス凝集測定法には全血を使用することができる。
【0008】
特許文献1(Accumetrics Inc.)は、血小板の凝集測定解析を実施するためのデバイスを開示している。
【0009】
細い毛細管を通って引き込まれる血液が、コラーゲンとエピネフリン(CEPI)またはコラーゲンとADP(CADP)でコーティングされた膜を閉塞するのに要する時間を測定する血小板機能分析装置(例えば、PFA-100、Dade Behring)も知られている。これは封鎖時間(CT)と呼ばれ、秒単位で測定される。この試験は、このように血小板の接着と凝集の組み合わせ測定である。
【0010】
これらの試験は全て、相当量の個別操作を必要とし、ハイスループット解析を不可能とする。一部の方法が、血液分析用の特別な実験室を備えた設備の良いクリニックに分析を制限する場合、この方法を実施するために特別な訓練を受けた人材と特別な分析装置が必要とされる。分析に用いられるサンプルは安定しておらず、サンプル採取後3〜4時間未満以内に分析しなければならない。従って、長距離の輸送は不可能ではないとしても困難である。
【0011】
特定のバイオマーカー(血小板因子4(PF-4)、β-トロンボグロブリン(β-TG)、P-セレクチン、糖タンパク質V(GP-V)、および糖タンパク質IV(GP-IV)など)の測定は、それ自体公知である。例えば、sCD40L(可溶性CD40リガンド)は、血液中に見られる18kDaの可溶性タンパク質である。sCD40Lは、タンパク質分解により、膜貫通タンパク質のTNFスーパーファミリーに属する33kDaのII型膜貫通タンパク質であるCD40L(CD40リガンド、CD154としても公知)から放出される。
【0012】
血液中で検出可能なsCD40Lの95%が血小板由来であるということが示唆されている(非特許文献2)。予備臨床研究は、急性冠症候群および増大する心血管系の合併症に罹患している患者が、より予後の良好な患者と比べて高レベルの血中sCD40Lを示すことを示唆している。
【0013】
しかし、最近の研究は、sCD40Lの測定における事前分析の問題について明らかにしている。
【0014】
Ahnらは、sCD40Lの測定レベルが、サンプル材料(血清、血漿、または多血小板血漿)、さらにサンプル処理条件および温度ならびに遠心分離条件に強く依存する(非特許文献3)と述べている。この研究から、血清サンプルの氷上保存または乏血小板血漿の使用が、ex vivoでのsCD40Lの放出を最小限に抑え、in vivoにおいてsCD40Lをより良好に示すと結論付けることができる。
【0015】
Masonらは、血小板由来(血漿)または全(血清)のCD40Lと比べて、CD40Lが表面発現するだけで、安定型心血管系疾患に罹患した患者および不安定型心血管疾患に羅患した患者における信頼し得る血小板機能マーカーとなることが判明したと述べている(非特許文献4)。
【0016】
Otterdalらは、刺激後にCD40Lの表面露出が増加しているように見えるが、血小板活性化後にCD40Lの表面発現の増加があるか否かは依然として不明であると記載している。Otterdalの知見には明確な結論はなく、知見の一部は凝集のアーチファクトと関連付けることができる(例えば、非特許文献5を参照)。
【0017】
Weberらは、sCD40L測定には血清サンプルではなく血漿サンプルが適しており、事前分析の条件は、sCD40L濃度の評価において重要な意味を持つという結論に達した(非特許文献6)。
【0018】
手短に言えば、事前分析の研究は、sCD40Lの測定が、日常の臨床診療において達成することが不可能ではないとしても困難な一定レベルの標準化を必要とするため、sCD40Lが臨床の日常的な測定に適したマーカーであるか否かについて疑問を抱かせた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】WO 99/14595
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Gawaz, M.著の特別な教科書:"Blood platelets: physiology, pathophysiology, membrane receptors, antiplatelet priniciples, and therapy for atherothrombotic diseases." - Stuttgart; New York: Thieme, 2001. 44-48頁
【非特許文献2】Andre, P.ら(2002):CD40L stabilizes artery thrombi by a B3 integrin- dependent mechanism. Nature Medicine, vol. 8, 247-52
【非特許文献3】Ahn, E.R.ら(2004):Differences of soluble CD40L in sera and plasma: Implications on CD40L assay as marker of thrombotic risk. Thromb Res, vol. 114, pp. 143-48
【非特許文献4】Mason, P.J.ら (2005). Plasma, serum, and platelet expression of CD40 ligand in adults with cardiovascular disease. Am J Cardiol, vol. 96, pp. 1365-69
【非特許文献5】Discussion in Otterdal, K., Pedersen, T.M., Solum, N.O. (2004) Release of soluble CD40 ligand after platelet activation - Studies on the solubilization phase. Thrombosis Research, vol. 114, pp. 167-177
【非特許文献6】Weber, M., Rabenau, B., Stanisch, M.ら(2006). Influence of Sample Type and Storage Conditions on Soluble CD40 Ligand Assessment. Clin Chem, vol. 52(5), pp. 888-91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、血小板機能の診断を改善する必要性がある。特に、個別操作の量を低減し、ハイスループット解析を可能にする必要性がある。好ましくは、診断は簡単で信頼し得るものであり、分析に用いるサンプルは安定性が高められているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の目的は、血小板機能を診断する方法であって、以下のステップ:
a) 被験体から血小板含有サンプル、好ましくは全血サンプルを採取するステップ、
b) 好ましくは凝固および/またはフィブリン形成を阻害し得る条件下で該サンプルを保持するステップ、および
c) 血小板に由来する血小板機能マーカーを、好ましくは該サンプル中で該血小板を活性化させることにより溶液化するステップ
を含んでなり、ここで少なくともステップb)とc)は血液採取デバイス中で実施され、および/またはさらに血小板機能マーカーのレベルは該溶液中で測定され、および/またはステップc)はステップa)の直後に実施される、
上記方法によって解決される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の過程における知見の1つは、血小板機能不全またはin vivoでの血小板刺激のレベルを、サンプル中で血小板を活性化させてこのように可溶化された血小板機能マーカー(例えばsCD40L)のレベルを測定することによって診断し得るということである。このように、本発明の方法は、in vivoでの血小板刺激の程度をin vitroで評価することを可能とし、この方法は、in vivoでの血小板刺激の程度の診断に用いることもできる。本発明の非限定的実施形態では、血小板の表面に曝露されているCD40Lはいずれも、例えば、サンプル中で血小板が活性化される際に血小板表面からsCD40Lとして溶液に脱落することによって可溶化する。In vitroで活性化される際に血小板から(特に血小板膜から)放出され得るマーカーは、血小板機能の信頼し得るマーカーであり、また血小板機能の評価に役立つことが見出されている。さらにこの放出を、例えばサンプルの遠心分離により、またはサンプルを血小板活性化阻害剤と接触させることによって停止させて、血小板機能マーカーのレベルを測定するまで保存または輸送し得る安定したサンプルを得ることができる。
【0024】
本発明に関連して、以前は、(例えばsCD40Lの)測定はいずれも、サンプルを採取する方法およびその後のサンプル処理(例えば、マーカーを測定する前のインキュベーションの時間または温度)に強く影響を受けていたということが分かっている。本発明に関して、in vitroにおける血小板のあらゆる無制御活性化を回避した場合(例えば、CTADカクテル(クエン酸塩、テオフィリン、アデノシン、ジピラミドール)中でサンプルを採取し、このサンプルを氷上で保持することにより)、健康な被験体から得られたサンプル中で測定されたsCD40Lのレベルと急性冠症候群に罹患している患者から得られたサンプル中で測定されたsCD40Lのレベルとの間に顕著な差異が見られないことがさらに判明した。しかしながら、予想外に、血小板表面上に存在するマーカーを溶液化することが、in vivoでの血小板機能または血小板刺激の優れた指標であり、また血小板機能または血小板刺激に関連する疾患の優れた指標であることが見出された。
【0025】
各裁判管轄において、本発明による方法が人間又は動物の身体に実施される診断方法に関することにより特許性または産業上利用可能性から除外される実施形態にも関連すると考えられる場合、このように包含される実施形態は、本発明の保護範囲から除外される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】sCD40L濃度を、希釈全血(生理食塩水と1:1)中で、アゴニストであるコラーゲン(1μg/ml)またはADP(5μM)の添加により凝集が開始した後幾つかの時点で測定した。インピーダンス(オーム)凝集測定を用いて凝集の進行を追跡した。Ag.はアゴニスト;Subj. #1は被験体番号1;subj. #2は被験体番号2;Aggr.は凝集である。時間は、アゴニスト添加後の時間である。棒グラフの棒は、sCD40Lのレベルを示す。黒色の曲線は、インピーダンス凝集測定によって測定された凝集曲線を示す。
【図2】sCD40L濃度を、希釈全血(生理食塩水と1:1)中で、アゴニストであるコラーゲン(1μg/ml)またはADP(5μM)の添加により凝集が開始した後幾つかの時点で測定した。パネルBとDは、2種類の公知の血小板活性化阻害剤(アスピリンとメチル-S-アデノシンモノホスフェート(Me-S-AMP))を用いたプレインキュベーション後の結果を示す。インピーダンス(オーム)凝集測定を用いて凝集の進行を追跡した。Ag.はアゴニスト;Aggr.は凝集である。時間はアゴニスト添加後の時間である。棒グラフの棒は、sCD40Lのレベルを示す。黒色の曲線は、インピーダンス凝集測定によって測定された凝集曲線を示す。
【図3】シクロオキシゲナーゼ1(COXl)阻害剤(アスピリン)とトロンボキサンA2(TXA2)受容体遮断薬(テルボグレル)がsCD40L放出および血小板凝集に及ぼす影響。健康な献血者(前週に血小板阻害剤を摂取していない)から血液サンプルを採取した。全サンプルをそのまま分析し(n=14)、さらにアスピリン(n=14)またはテルボグレル(n=8)のいずれか、COX-1およびTXA2受容体の遮断薬の組み合わせと共にインキュベーション(20分、室温)した後に分析した。NaClで希釈(1:1)した後、コラーゲン(1μg/ml)の添加によって凝集を開始させ、インピーダンス凝集測定によりこの凝集をモニターした。6分後、遠心分離によって凝集を停止させ、血漿上清中でsCD40Lを分析した。n = 研究対象の被験体の数。*)p(有意水準)= 0,001(ウィルコクソン符号順位(Wilcoxon-Signed Rank))、**)p = 0,005。
【図4】TRAP(2μM)によって2分後および60分後に放出されたsCD40L(GFPC)。急性冠症候群(ACS)、不安定狭心症(UA)、非STセグメント上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、STセグメント上昇型心筋梗塞(STEMI)に罹患している患者(n=6)から得られたクエン酸塩抗凝固血液サンプル。全患者は、採取の30分以上前にアスピリン(500mgの静脈注射)およびヘパリン(5000Uのボーラス静脈注射)の投与を受けた。ベースライン:サンプル採取後の、in vitroでの活性化を行わない測定。
【図5】図5は、標準血小板活性化前の、アゴニストとして2μM TRAP(A)、10μM ADP(B)、および1μg/mlコラーゲン(C)を用いた室温で10分間のインキュベーションの影響を示す。健康な提供者からクエン酸塩-およびヘパリン-抗凝固血液を採取した。活性化の最中のsCD40Lの放出は、インキュベーション時間によって最も影響を受け、アゴニストまたは抗凝血剤の選択によってはそれほど影響を受けない。従って、血液採取をするちょうどその時に標準血小板活性化を開始することが好ましい。hは時間;Citr.はクエン酸塩;Hep.はヘパリン。
【図6】in vitroで活性化された後の、可溶性GP-V(sGP-V)としてのGP-Vの放出。Subj.#1は被験体番号1、subj.#2は被験体番号2。
【図7】抗凝血剤と阻害剤との組み合わせとして、チロフィバンを用いてヘパリン(Hep.)およびクエン酸塩(citr.)の存在下で測定したsCD40L。
【図8】本発明による採取デバイスの第1の実施形態の概略図。
【図9.1】本発明による採取デバイスの第2の実施形態の概略図。
【図9.2】本発明による採取デバイスの第2の実施形態の概略図。
【図10.1】本発明による採取デバイスの第3の実施形態の概略図。
【図10.2】本発明による採取デバイスの第3の実施形態の概略図。
【図10.3】本発明による採取デバイスの第3の実施形態の概略図。
【図11.1】本発明による採取デバイスの第4の実施形態の概略図。
【図11.2】本発明による採取デバイスの第4の実施形態の概略図。
【図11.3】本発明による採取デバイスの第4の実施形態の概略図。
【図12.1】本発明による採取デバイスの第5の実施形態の概略図。
【図12.2】本発明による採取デバイスの第5の実施形態の概略図。
【図13】本発明による採取デバイスの第6の実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
血小板サンプルは、血小板を含む任意の種類のサンプルであってよい。好ましくは、この血小板サンプルは、全血(例えば、静脈血または毛細管血)のサンプルである。このサンプルは、さらに処理された血液サンプルに由来するものであってもよく、例えば多血小板血漿であってよい。好ましくは、サンプル中の血小板は、かかるさらなる処理の間、顕著に活性化されることはない。かかるさらなる処理の間、顕著な凝固が生じ得ないことが好ましい。この文脈における「顕著に」および「顕著な」という用語は、当業者に理解され、かかる活性化または凝固がいずれも、目的の診断(本明細書の他の箇所で説明される)に対してサンプルを不適切にさせるような種類または程度であるべきではないことを意味する。
【0028】
サンプルの量は、適切と考えられる任意の範囲内であってよく、また血小板機能マーカーの信頼し得る測定を可能とする量であることが好ましい。例えばサンプルの量は、1μl〜500ml、10μl〜100ml、100μl〜50ml、0.5ml〜20ml、および/または1ml〜15mlの範囲内であってよい。正確なサイズは、目的またはデバイスによって決まる。例えば、ポイントオブケアデバイスを用いる測定の場合、1μl〜5ml、または2μl〜2ml、2μl〜500μlの範囲が考えられる。毛細管血を使用することによって、少量のサンプルを簡単に採取することができる。
【0029】
血小板含有サンプルを採取する方法は、当業者に公知である。このサンプルは、適切と考えられる任意の手段によって(例えば、血液サンプルを静脈または動脈から引き込むことによって)採取することができる。毛細管血も使用し得る。サンプルは、針またはランセットを用いて引き込むことができる。好ましくは、静脈血サンプルを引き込む場合、最初の2mlの血液は捨てなければならない。好ましくは、静脈閉塞による血小板の刺激を回避するため、静脈閉塞は用いないか、用いたとしても少しでなければならない。従って、好ましくは、止血帯の使用は最小限(好ましくは1分未満)に抑えなければならない。
【0030】
本発明の方法は、血小板由来の血小板機能マーカーを溶液化するステップを含んでなる。このマーカーは血小板表面に由来することが好ましい。このステップは、当業者が適切と考える任意の手段によって実施することが可能であり、例えば、血小板表面上に露出されたマーカーの断片を切断し得るプロテアーゼを添加することにより、またはサンプル中の血小板を活性化させることによって行うことができる。
【0031】
好適な実施形態において、血小板機能マーカーを溶液化するステップは、血小板含有サンプル取得の直後に実施される。このように、本発明の目的は、(a)被験体から血小板含有サンプルを採取するステップ、および(b)好ましくは、凝固および/またはフィブリン形成を阻害し得る条件下でサンプルを保持するステップ、ならびに(c)好ましくはサンプル中で血小板を活性化させることにより、血小板由来の血小板機能マーカーを速やかに溶液化するステップを含んでなる、血小板機能を診断する方法によっても解決される。血小板機能マーカーを速やかに溶液化することは、例えば様々なサンプル採取法または処理法による血小板の任意の無制御活性化の影響が、さらに最小限に抑えられるという利点を有する。
【0032】
この文脈における「速やかに」という用語は、当業者に容易に理解される。好ましくは、「速やかに」という用語は、あらゆる過度の遅延を回避すべきであり、特にもはや診断を信頼し得ないようなin vitroでの血小板の無制御活性化を生じさせる任意の遅延を回避すべきであることを意味する。しかし、分析対象の全サンプル中で、標準化された方法で遅延が起こる場合、ある程度の遅延は許容し得る。当業者は、例えば健康な被験体から採取されたサンプルを分析することにより、また異なるサンプル間の任意の偏差が依然として許容可能と考えられるか否かを決定することによって、特定の遅延が許容し得るか否かを決定することができる。実施例6は、サンプルを室温で保持した後の処理の遅れの影響を示す。サンプル採取とマーカー溶液化の間の時間は、同等のベースラインレベルを得るために標準化されることが好ましいのは明らかである。しかし、処理の遅れの影響は、サンプルを氷上に保持することによって最小限に抑えることもできる。さらに特に、「速やかに」という用語は、サンプル採取後30、10、5、4、3、2、もしくは1分またはそれ未満以内にマーカーを溶液化するステップの開始に関する。最も具体的には、「速やかに」という用語は、サンプル採取後50、40、30、20、10、または5秒またはそれ未満以内にマーカーを溶液化するステップの開始に関する。マーカーを溶液化するステップを速やかに開始することは、例えば、血小板機能マーカーを溶液化し得る手段または薬剤(例えば、血小板活性化因子またはプロテアーゼ)が血液採取デバイスまたは血液採取管中に既に存在している場合、好都合に達成され得る。この場合、該手段または薬剤は、被験体から採取されたサンプルに速やかに作用し得る。フィブリン形成および/または凝固を阻害し得る条件下で血小板含有サンプルを保持し得る手段または薬剤も、例えば、血小板含有サンプルを採取するために使用される血液採取管または血液採取デバイス中に既に存在することが好ましい。従って、本発明の方法の好適な実施形態において、フィブリン形成および/または凝固を阻害し得る条件下で血小板含有サンプルを保持するステップと、血小板由来の血小板機能マーカーを溶液化するステップとは、同時に、すなわち一度に実施される。
【0033】
本明細書の他の箇所で述べたように、本発明は、特定のマーカー、特に生化学マーカー(例えば、CD40L、p-セレクチン、GP-IV、GP-V、CD63(血小板顆粒糖タンパク質(granulophysin))、またはGP-VI(p62))を利用する。これらのマーカーは、in vivoでで血小板が刺激されると、血小板表面に露出される。このように表面に露出されたマーカーの断片は、例えばタンパク質分解によって溶液化し得る。この断片は、当業者に公知の任意の手段により溶液中で測定することができる。このように切断された断片のレベルを溶液中で測定することによって、血小板上の各マーカーの表面露出の程度を断定することができる。切断された断片は、好適な手段(例えば抗体)によって測定可能なサイズであることが好ましい。従って、この断片のサイズおよび/または配列は、測定対象の各マーカーに特異的でなければならない。特定の配列に応じて、1つの断片のサイズは、4、6、8、10、12、15、18、21、25、または30アミノ酸以上であることが好ましい。例えば、抗体に認識される好適なエピトープは、10アミノ酸より大きい。小さな断片(例えば、長さ4アミノ酸または6アミノ酸)は、例えば質量分析を用いて測定することができる。小さな断片(例えば長さ4または6アミノ酸)の量を測定するときでも、かかる断片の特定の配列が上記のマーカーに特異的である(すなわち、サンプル中に、異なるタンパク質またはペプチドに由来する同一サイズおよび同一配列の他の断片が存在しない)場合、あるいはこのような異なるタンパク質またはペプチドの濃度が、ごくわずかでありまたは診断対象の障害、機能不全もしくは疾患とは無関係である場合には、表面に露出されたマーカーの量を断定することが可能となり得る。
【0034】
好適なプロテアーゼは、当業者が好適であると考える任意の種類のものであってよい。好ましくはプロテアーゼは部位特異的であり、すなわちプロテアーゼは、既知の部位でマーカーを切断する。しかしこのプロテアーゼは、断片の信頼し得る測定が可能である限り、多少は非特異的であってもよい。好適なプロテアーゼの一例は、血小板表面からCD40Lを天然に切断するプロテアーゼであり得る(例えば、Otterdal, K., Pedersen, T.M., およびSolum, N. O. (2004) Release of soluble CD40 ligand after platelet activation - Studies on the solubilization phase. Thrombosis Research, vol. 114, pp. 167-177参照)。好適なプロテアーゼの例は、PhillipsらによるUS 6,861,504(2005年3月1日認可)中で、CD40を標的とするプロテアーゼ阻害剤に関連して記載されている。他のマーカーに関しても、当業者であれば、例えば所与の配列についてソフトウェアにリストされているプロテアーゼを用いて、好適なプロテアーゼを容易に決定することができる。このようなソフトウェア、例えば「PeptideCutter」は、ウェブサイトwww.expasy.orgなどを介して当業者に利用可能である。多数のプロテアーゼが市販されており、当業者に公知の方法によって、これらが目的の表面に露出されたマーカーをそれぞれ切断するのに適しているか否か簡単に試験することができる。
【0035】
部位特異的プロテアーゼが知られており、例えばフリン(Furin)(New England Bio labs, Beverly, MA, USAから入手可能)は、好ましくは配列Arg-X-X-Argを切断するが、Arg-X-X(Lys/Arg)-Arg部位を優先的に切断する。
【0036】
プロテアーゼの酵素的作用は好適な手段によって停止させることができる。例えば、フリンは、EGTA、α1-抗トリプシンおよびポリアルギニン化合物で阻害される。
【0037】
好適な部位特異的プロテアーゼは、当業者に公知のアッセイによってさらに同定することができる(例えば、Grueninger-Leitch, F., Berndt, P., Langen, H., Nelbock, P.ら(2000) Identification of β-secretase-like activity using a mass spectrometry-based assay system. Nature Biotechnology, vol. 18, pp. 66-70参照)。引用された方法は、粗細胞ホモジネートから部位特異的プロテアーゼを検出するためのハイスループットアッセイ系である。タンパク質基質をセラミックビーズに結合させ、細胞ホモジネートと共にインキュベートする;その後ペプチドを洗浄し、ビーズから遊離させ、質量分析によって分析し、目的の部位でタンパク質を切断するプロテアーゼの精製を可能とする。
【0038】
血小板を「活性化させる」という用語は、当業者に公知である。例えば、当技術分野で公知の凝集測定法では、サンプルと血小板の活性化因子とを接触させることによって血小板を活性化させる。特に、血小板活性化は、血小板表面上に存在するCD40LからのsCD40Lの脱落を生じさせる任意の方法、さらに特に10、8、7、5、3または2分未満以内に検出可能量の、好ましくは血小板表面上に存在するCD40Lの全量の30%以上、50%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上の脱落を生じさせる任意の方法に関連するものとして理解することができる。タンパク質分解されてsCD40Lを遊離する表面に露出されたCD40Lの画分が高いほど、および/または脱落が起こるのが早いほど、より高い活性化レベルが達成される。あるいはまたはさらに、血小板活性化は、20、10、8、7、5、3または2分未満以内に血小板活性化に特有の形態変化(すなわち、アクチン重合および/または偽足の形成)を生じさせる任意の方法として理解することができる。形態変化が顕著であるほど、および/または形態変化を示すサンプル中の血小板の画分が高いほど、および/または形態変化が起こるのが早いほど、より高い活性化レベルが達成される。再び、あるいはまたはさらに、血小板活性化は、20、10、8、7、5または3分未満以内に、血小板に由来する濃厚顆粒および/または他の顆粒および/またはリソソームの脱顆粒を生じさせる任意の方法として理解することができる。脱顆粒が顕著であるほど、および/または脱顆粒を示すサンプル中の血小板の画分が高いほど、および/または脱顆粒が生じるのが早いほど、高い活性化レベルが達成される。
【0039】
好ましくは、活性化は外因的に行われる。すなわち活性化は、血液サンプル中に既に天然に存在する活性化因子(このような天然の活性化因子として、サンプル中の天然の濃度のコラーゲン、フィブリノーゲン、Ca2+、フォン・ヴィレブランド因子(vWF),トロンビン、セロトニンが挙げられる)によっては行われない。例えば、外因的活性化を行うために血小板活性化因子をサンプルに加えることができる。当然、このように外因的に加えられた活性化因子は、既にサンプル中に存在する活性化因子と同じ化学構造を有し得る(例えば、ADPなどの活性化因子も、天然の活性化因子としてサンプル中に存在し得る)。しかし、この方法が十分に制御可能または標準化可能であると考えられる場合、天然に存在する活性化因子による活性化を考慮に入れることができる。
【0040】
血小板を活性化するステップは、適切であると考えられる任意の手段によって、例えば、機械的に(例えばサンプルを攪拌することまたはサンプルをフリースに通過させることにより)、電気的に(例えばサンプルに電圧を印加することにより)、熱的に(例えばサンプルに熱を加えることにより)、または化学的に(例えば血小板活性化因子により)実施することができる。これらの方法は組み合わせてもよい。例えば、フリースの繊維を血小板活性化因子でコーティングすることができる。血小板を活性化させる手段、特に血小板活性化因子は、本明細書の他の箇所に記載のとおり、これらが血小板活性化を誘導する能力によって見出すことができる。血小板活性化は、当技術分野で公知の方法に従って極めて簡単に測定することができる。本明細書の他の箇所を参照のこと。例えば、血小板活性化因子は、血液サンプルを血小板活性化因子の候補と接触させて、活性化(例えば形態変化)が起こるまでの時間を測定することにより、または血小板表面からのsCD40Lの脱落の程度を測定することによって見出すことができる。このような試験において、上記の候補が、候補と接触させていない対照サンプル中の活性化と比較して活性化までの時間を低減させた場合、この候補は血小板活性化因子として同定される。同様に、上記の候補が血小板表面から脱落するsCD40Lの量を増加させる場合、またはかかる候補がこのような脱落に要する時間を低減させる場合、この候補は血小板活性化因子として同定される。
【0041】
上記の血小板活性化因子は、血漿凝固系の活性化因子(「凝固活性化因子」)ではないことが好ましい。このような凝固活性化因子は血液凝固を増強するために血液サンプルに添加されることがある。内因性血小板活性化剤をサンプルから放出させることにより、かかる凝固活性化因子は間接的に血小板の活性化をもたらす。
【0042】
好適な血小板活性化因子の例は公知であり、例えばコラーゲン、ADP、エピネフリン、アラキドン酸、リストセチン、FIIa(トロンビン)、TRAP(トロンビン受容体活性化ペプチド;ペプチド配列はSFLLRN)、トロンボキサンA2、PAF(血小板活性化因子)、GPRP(ペプチドgly-pro-arg-pro)、セロトニン、ドーパミン、コラーゲン関連ペプチド、U-46619、および上記の分子の任意の合成アナログ等が挙げられる。活性化因子の選択は、患者の罹患が疑われる疾患に応じて行うこともできる。例えば、ベルナール・スーリエ症候群が疑われる場合、リストセチンが好ましい活性化因子であり得る。
【0043】
活性化は、例えば血小板活性化因子をサンプルに対して所定の濃度で(例えば、1〜100μΜ、好ましくは5〜20μΜのADP、または0.5〜20μg/ml、好ましくは1〜5μg/mlのコラーゲン)添加することにより、標準化可能なおよび/または制御された方法で行うことが好ましい。
【0044】
活性化因子は、血液サンプルを添加する容器中に、または、好ましくは血液サンプルを採るための血液採取デバイス中に予め含めてよい。この場合、活性化因子は、サンプルを添加した際に速やかに血液サンプルと接触させることができる。
【0045】
1つの実施形態において、本発明は、血小板刺激能(PSC)の診断に関する。この場合、血小板機能マーカーは、本明細書中で説明される任意の方法により(好ましくはサンプル中で血小板を活性化させることによって)溶液化され、そしてこの活性化および/または血小板機能マーカーを溶液化するステップは、特定時間後に(例えば遠心分離することによって)停止される。この時間は、血小板機能マーカーの放出レベルの定常状態に達するのに要する時間よりも短いことが好ましい。この方法の目的は、特に活性化される際に、いかに迅速に血小板機能マーカーが放出されるかのパラメーターを得ることである。溶液中で血小板機能マーカーの濃度を測定するために、血小板含有サンプルから血小板を除去することができる。結果として得られたサンプルは、好ましくは、血小板機能マーカーを含む上清を得るために遠心分離される。この上清は、血小板および可能性のある他の血液細胞を含有するペレットから分離することができる。これにより、血小板からサンプル中に血小板活性化マーカーがさらに漏出することが回避されるだろう。しかしながら、遠心分離の力とさらなる操作に依存して、上清が分離されていない場合でも、安定した血漿サンプルを得るために上記のペレットを十分に安定化させ得る。その後、血小板機能マーカーのレベルを上清中で測定することができる。さらにこの上清は、可溶化された血小板機能マーカーの濃度を測定する前に、当業者に公知の好適な条件下で(例えば、-20℃で)保存することができる。このことは、例えば、血小板機能マーカーを測定するために必要とされる実験装置を通常、直接利用することができない一般開業医には特に有利である。
【0046】
血小板機能マーカーを溶液化するステップ(例えば、血小板の活性化)は、適切と考えられる任意の手段によって停止させることが可能であり、例えば血小板を血漿から分離することにより(例えば遠心分離および/またはろ過により)、または糖タンパク質/IIb/IIIa阻害剤(例えばチロフィバン、エプチフィバチドまたはアブシキマブ)、プロテイナーゼ阻害剤(例えば上記のPhillipsらによるUS 6,861,504に開示)、EDTA、サイトカラシンD、ホルムアルデヒド、CD40Lに対する阻害(「ブロッキング」)抗体(例えば、American Type Culture Collection (ATCC)から入手可能なブロッキング抗体G28-5、ATCC No. HB-9110、上記のOtterdal, K.ら参照)、または任意の他の血小板活性化阻害剤(例えば、メチル-S-アデノシンモノホスフェート(Me-S-AMP)、アスピリン、またはテルボグレル)を添加することによって停止させることができる。
【0047】
別の実施形態において、本発明は、包括的機能的血小板能(GFPC)の診断に関する。この場合、血小板機能マーカーは、本明細書中で説明される任意の方法に従って(好ましくはサンプル中で血小板を活性化させることにより)溶液化され、この血小板機能マーカーを溶液化するステップは、血小板表面から血小板機能マーカーのほぼ全量を放出するのに十分な時間後に(例えば遠心分離することにより)停止される。この方法の目的は、in vivoにおける血小板刺激の全てのレベルのパラメーターを得ることである。好適な時間は、例えば、血小板機能マーカーの放出レベルが定常状態またはほぼ定常状態に到達するまでに必要とされる時間であってよい。さらなる遠心分離または処理は、血小板刺激能(PSC)について記載したとおりに実施することができる。
【0048】
サンプル中の血小板は、血小板の活性化前および/または最中に生じるフィブリン形成および/または凝固を伴うことなく活性化される。フィブリンはフィブリノーゲンから形成されることが好ましい。例えば、血液サンプルが未処理で室温において放置される場合、フィブリノーゲンはフィブリンに変換される。フィブリン網はその後の血小板機能マーカーの可溶化を妨げる可能性があるため、過剰なフィブリン形成は回避されるべきである。
【0049】
凝固は、1つ以上のフィブリン血餅および/または1つ以上の血液血餅を生じさせる過程である。フィブリン形成または凝固の過程において、血小板は、(1)この凝固過程の中間産物によって活性化される可能性があり、および/または(2)血小板は血液血餅またはフィブリン網の内側に捕らえられる可能性がある。第1の場合、この凝固過程は血小板機能マーカーのさらなる放出を生じさせ(例えばsCD40Lの脱落)、このためより高レベルの血小板機能マーカーおよび/または該血小板機能マーカーのより早い放出をもたらす可能性がある。第2の場合、全ての血小板が均一に活性化されるとは限らず(例えば、血小板活性化因子への曝露が不十分であることに起因して)、このためより低レベルの血小板機能マーカーおよび/または血小板機能マーカーのより遅い放出をもたらす可能性がある。上記のいずれの場合も、過剰な凝固は、測定結果を歪める可能性がある。従って、過剰なフィブリン形成または凝固は回避することが好ましい。当業者は、依然として許容可能なフィブリン形成および/もしくは凝固のレベルの決定、ならびに/または過剰なフィブリン形成および/もしくは凝固レベルの決定について熟知している。一般的に、結果の診断値を損なわないフィブリン形成および/または凝固の程度は、依然として許容することができる。他方、偽陽性または偽陰性診断をもたらすフィブリン形成および/または凝固の程度は過剰である可能性があり、回避するのが好ましい。
【0050】
フィブリン形成および/または凝固は、血小板機能マーカーが測定されるまで、あるいは測定が完了するまで回避されることが好ましい。しかし、例えば遠心分離によって、血小板機能マーカーを測定する前に血小板の活性化が停止される場合、ペレット中の凝固またはフィブリン形成は、上清中への血小板機能マーカーのさらなる過剰な漏出を引き起こさないため、許容し得る。その後、診断値を損なうことなく血小板機能マーカーを上清中で測定することができる。
【0051】
従って、サンプルは、フィブリン形成および/または凝固を阻害し得る条件下で保持されることが好ましい。このような条件として、サンプルを希釈すること(関連するフィブリン網が形成され得ないように)またはサンプルを氷上で保持すること、(この場合、血小板を活性化させもしくはプロテアーゼを添加したらすぐにサンプルを室温まで温めることが好ましい)あるいはサンプルを抗凝血剤と接触させることを挙げることができる。当業者は、ある薬剤が抗凝血剤として作用し得るか否かを決定することについて熟知している。フィブリン形成および/または凝固を阻害し得る薬剤はいずれも、抗凝血剤として理解することができる。フィブリン形成または凝固の阻害は、当技術分野で公知の方法に従って極めて容易に測定し得る。本明細書の他の箇所を参照されたい。例えば、抗凝血剤および/またはフィブリン形成阻害剤は、血液サンプルを抗凝血剤の候補と接触させ、フィブリン形成または凝固が起こるまで(例えば、血液血餅が形成されるまでまたは所与の割合のフィブリノーゲンがフィブリンに加工されるまで)の時間を測定することによって見出すことができる。このような試験において、候補が、この候補と接触させていない対照サンプル中のフィブリン形成および/または凝固と比較して、フィブリン形成および/または凝固が起こるまでの時間を増加させた場合、該候補は抗凝血剤として同定される。
【0052】
好適な抗凝血剤とフィブリン形成阻害剤の例は、当業者に公知である。例えば、これらの薬剤として、カルシウムイオンと結合し得る薬剤(例えばクエン酸塩またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA))が挙げられる。このような薬剤は、様々な親和性でカルシウムイオンと結合し得る。例えば、クエン酸塩は、比較的低い親和性でカルシウムイオンと結合するが、他方、EDTAは比較的高い親和性でカルシウムイオンと結合する。高い親和性は、優れた凝固阻害を示すという利点を有するが、このような測定にカルシウムが必要とされる場合、例えば血小板機能マーカーの測定中にカルシウムの添加を必要とし得る。低い親和性は、阻害の低下をもたらす可能性があるが、さらなる後処理プロセスの間、良好に許容され得る。
【0053】
抗凝血剤の他の例として、間接または直接トロンビン阻害剤、例えばヘパリン(未分画ヘパリンならびに低分子量ヘパリン(例えばフラキシパリン)を含む)、ヘパリノイド(例えばダナプロイドナトリウム)、ヒルジン(これらの合成誘導体、例えばレピルジンまたはデシルジンを含む)、ヒルジン類似体(例えばビバリルジン、アルガトロバン、メラガトラン)、D-フェニルアラニル-L-プロピル-L-アルギニンクロロメチルケトン(PPACK)、またはベンジルスルホニル-D-Arg-Pro-4-アミジノベンジルアミド(BAPA)が挙げられる。
【0054】
好適な抗凝血剤は、カルシウムイオンと結合することによっては作用しない薬剤である。このことは、サンプルのさらなる処理中にカルシウムイオンが必要とされる場合には好都合であり得る。
【0055】
本発明は、特定のマーカーを利用する。好適なマーカーのレベルは、症状、障害、機能不全、疾患、、リスクまたは合併症の存在または欠如を示すことができ、これにより診断を可能とする。さらに具体的には、本発明は生化学マーカーに関する。「生化学マーカー」という用語は、当業者に公知である。特に、生化学マーカーは、特定の症状、障害、機能不全、疾患、リスクまたは合併症の存在または欠如において特異的に発現される(すなわち、アップレギュレートまたはダウンレギュレートされる)遺伝子発現産物(例えばタンパク質またはペプチド)である。
【0056】
血小板機能のマーカーは、当業者に公知である。本発明の意味において、in vivoで刺激されていない血小板と比べて、in vivoで刺激された血小板の表面から特異的に放出されるおよび/または該血小板表面上に特異的に発現される任意の薬剤、特に任意のタンパク質またはペプチドは、好適な血小板機能マーカーとして理解される。特にこのマーカーは、血小板の顆粒小胞中に存在し、in vivoでの刺激後に血小板表面上でさらに強く発現するマーカーである。
【0057】
これらの顆粒小胞は、血小板の細胞小器官であり、in vivoでの刺激後にいわゆる「基本的血小板反応」の一部として血小板膜と融合する。
【0058】
当業者は、このようなマーカーを同定し得る。例えば、in vivoで刺激された血小板のサンプルは、in vivoで刺激されていない血小板のサンプルと比較することができる(ある程度のin vivo刺激は、例えば、高脂肪高タンパク質の食事によって誘導され得る;in vivoでの刺激は、本明細書の他の箇所に記載される特定の心血管疾患の過程においても生じる)。その後、例えばCD40Lの表面発現のレベルに応じたFACSによって血小板を分類し(例えば上記のMasonらを参照)、次いで分類された血小板を、他の分子の表面発現について、例えば抗体ライブラリを用いて分析することができる。CD40Lと共発現する任意のタンパク質またはペプチド(すなわち、刺激を受けるとsCD40Lと同様に特異的に発現する任意のマーカー)は、好適なマーカーであると考えることができる。当業者であれば、顆粒小胞中、または特に顆粒小胞の膜に含まれる基本的に任意の薬剤も、本発明による好適なマーカーの優れた候補であることを理解するだろう。
【0059】
好適なマーカーの例としては、限定するものではないが、CD40L、sCD40L、P-セレクチン(CD62)、糖タンパク質IV(GP-IV)、糖タンパク質V(GP-V)、糖タンパク質VI(GP-VI、p62としても公知)、CD63(顆粒糖タンパク質:granulophysin)、β-トロンボグロブリン(β-TG)血小板因子4(PF-4)、GP-Ib、GP-IXが挙げられる。このマーカーは、例えばin vitroで活性化させることによりおよび/またはプロテアーゼの作用により血小板表面から脱落させ得る膜結合マーカーであることが好ましい。このようなマーカーとしては、限定するものではないが、CD40L、P-セレクチン(CD62)、GP-IV、GP-V、GP-VIが挙げられる。血小板の活性化により生理学的に脱落される断片はそれぞれ、sCD40L(可溶性CD40L)、可溶性P-セレクチン、可溶性GP-IV、可溶性GP-V、可溶性GP-VIと呼ばれる。対照的に、β-TGとPF-4は、顆粒小胞に含まれる可溶性分子であって、血小板が刺激されまたは活性化されるとそこから放出される。CD63(顆粒糖タンパク質:granulophysin)は、リソソーム小胞中に含まれ、血小板が刺激されまたは活性化されるとそこから放出される。手短に言えば、好適なマーカーの例としては、CD40L、sCD40L、P-セレクチン、可溶性P-セレクチン、GP-IV、可溶性GP-IV、GP-V、可溶性GP-V、GP-VI、可溶性GP-VI、CD63、血小板因子4(PF-4)、β-トロンボグロブリン(β-TG)、GP-Ib、GP-IX、またはこれらの任意の変異体が挙げられる。
【0060】
本発明に関連する「変異体」という用語は、上記のタンパク質またはペプチドと実質的に類似のタンパク質またはペプチドに関する。「実質的に類似の」という用語は、当業者に十分に理解されるだろう。特に変異体は、ヒト集団中の最も優勢なアイソフォームのアミノ酸配列と比べて、アミノ酸交換を示すアイソフォームまたはアレルであり得る。このような実質的に類似のタンパク質またはペプチドは、タンパク質またはペプチドの最も優勢なアイソフォームに対して、80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列類似性を有することが好ましい。診断手段または各完全長タンパク質またはペプチドに対するリガンドによって依然として認識される断片または分解産物(例えばタンパク質分解断片または分解産物)もまた、実質的に類似である。本発明に関連して、タンパク質分解により血小板機能マーカーを溶液化することに関して与えられる好適な断片の記載および定義も明示的に参照される。要約書を参照されたい。「変異体」という用語は、スプライス変異体に関することも意図する。
【0061】
「変異体」という用語は、糖化ペプチドなどの翻訳後修飾されたタンパク質またはペプチドにも関する。「変異体」は、例えば標識(特に放射性標識もしくは蛍光標識)の共有結合的付着または非共有結合的付着によってサンプル採取後に改変されたタンパク質またはペプチドでもある。
【0062】
特定の変異体およびこれらの測定法の例は、公知である。例えば、sCD40Lには様々な変異体がある(例えばPietravalle, F.ら (1996). Human Native Soluble CD40L is a Biologically Active Trimer, Processed Inside Microsomes. J Biol Chem, vol. 271, pp. 5965-7を参照されたい)。
【0063】
本発明の他の実施形態は、異なる血小板機能マーカーを組み合わせて、同時にまたは異時に測定することを包含する。
【0064】
本発明は診断の分野において特に用いられ、結果的に診断方法にも関する。本発明による診断として、関連の疾患、障害、合併症またはリスクの決定、モニタリング、確認、細分類および予測が挙げられる。決定は、疾患、障害、合併症またはリスクを認識することに関する。モニタリングは、疾患の進行、または疾患もしくは合併症の進行について行われた特定の治療の影響を分析するために、既に診断された疾患、障害、または合併症の経過を追うことに関する。確認は、他の指標またはマーカーを用いて既に実施された診断の強化または実証に関する。細分類は、様々なサブクラスに応じた診断をさらに定義すること(例えば、疾患の軽症・重症に応じて定義すること)に関する。予測は、疾患、障害もしくは合併症またはリスクを、他の症状またはマーカーが明らかになる前に、またはこれらが大きく変化する前に予知することに関する。
【0065】
本発明によれば、「診断する」という用語は、本発明に関連して目的とする特定の機能、機能不全、刺激の程度または他の任意の関連パラメーター(例えば血小板刺激能または包括的機能的血小板能)を決定することに関するものとしても理解されるものとする。
【0066】
診断は、マーカーの測定結果がサンプル中に存在する血小板の数と関連付けられる場合(例えばsCD40の濃度がサンプル中に存在する血小板の数で割られる場合)、高めることができる。
【0067】
通常、最終診断は、例えば患者の病歴をも考慮に入れた医師によって行われる。従って、本発明は診断パラメーターを提供し得る。結果的に、本発明は、診断パラメーターを取得または生成する方法にも関する。
【0068】
当業者は、例えば自動計数器(Coulter計数器、Sysmex社製など)により、または顕微鏡を使用して手動で血液細胞を計数することによって、サンプル中に存在する血小板の数を測定する方法を熟知している。
【0069】
本発明は、例えば、血小板の機能および機能不全を診断することに関連している。本発明は、任意の種類の、血小板がin vivoで刺激される機能不全を診断することにも関連している。
【0070】
血小板機能の診断は、例えば、献血(特に血小板献血)の品質管理、および血小板製剤(任意の血小板パック、濃縮物または製品を含む)において重要である。本発明は、例えば、このような献血または製剤中の血小板が、完全に機能的であり、例えば被験体中の出血リスクを低減するための血小板置換に使用し得るか否か決定することを可能とする。かかる被験体は、例えば、血小板減少症(不十分な数の血小板)に羅患している患者であり得る。これらの患者は、定期的にまたは出血のリスクを伴う手術の前に血小板輸血を受けることが多い。
【0071】
本発明により測定された可溶化血小板機能マーカーの異常レベル、特に減少レベルは、上記の献血および/または血小板製剤が、血小板置換には十分な品質ではない(例えば、この製剤が出血のリスクを十分に低下させることができない)ことを示し得る。
【0072】
本発明により測定された可溶化血小板機能マーカーの異常レベル、特に上昇レベルは、輸血関連の急性肺障害(TRALI)のリスクの増加を示す。
【0073】
血小板機能の診断は、血小板機能阻害剤を用いる治療、例えば、アセチルサリチル酸、血小板ADP受容体阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤およびGpIIb/IIIa阻害剤(例えば、アブシキマブ、ラニフィバン(lanifiban)、ロキシフィバン、チロフィバン)からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤を用いる治療の制御との関連においても重要である。このような薬剤の例として、チエノピリジン(例えばチクロピジンおよびクロピドグレル)が挙げられる。血小板機能阻害剤を用いた治療は、心血管機能不全に罹患している患者において行われることが多い。例えば、冠状動脈性心臓疾患(本明細書の他の箇所に記載されている冠状動脈性心臓疾患の全ての亜型を含む、特に急性冠症候群、さらに特に心筋梗塞)の場合、ステント移植後、バルーン拡張後、または人工心臓弁移植後に、血小板機能阻害剤を用いた治療が行われる。
【0074】
血小板機能不全は、血小板機能低下ならびに血小板機能亢進を含み得る。
【0075】
血小板機能低下の例としては、血小板機能不全に関連する出血性素因、血小板表面糖タンパク質の遺伝性欠乏、密顆粒貯蔵プール疾患、および超低出生体重の早期新生児にみられる血小板機能低下(このような新生児は、脳室内出血傾向を示す)が挙げられる。血小板機能低下または血小板機能亢進および血小板機能低下または血小板機能亢進に関連する疾患の他の例は、例えば、Hayward CPMらならびにMichelson ADおよびFurman ML中で言及されており、これらの内容はいずれも(特に血小板機能低下または血小板機能亢進および関連の疾患の例はいずれも)参照により本明細書に組み込まれる(Hayward CPら, Congenital platelet disorders:overview of their mechanisms, diagnostic evaluation and treatment. Haemophilia 2006, 12 (suppl. 3): 128-36); Michelson AD and Furman ML, Laboratory markers of platelet activation and their clinical significance. Curr Opin Hematol 1999, 6: 342-8.)。
【0076】
血小板機能不全の診断は、血小板機能不全の存在に関する被験体のスクリーニングに関連して行うことができる。このような血小板機能不全の診断は、血小板機能不全の結果として出血増加または出血過剰のリスクがある被験体の同定を可能とするだろう。特にこのような診断は、計画された手術の前に行うことができる。このような方法は、例えば血小板輸血を投与することによって、手術前に機能不全を好適に治療することができる被験体の同定を可能とするだろう。従って本発明は、計画された手術の前の血小板輸血の投与について決定する方法にも関する。この文脈における「出血リスクの増加」は、当業者に理解され、好ましくは、平均的な被験体または患者と比べて増加している出血リスクに関する。
【0077】
本発明は、血小板膜表面上のCD40Lの増加レベルまたは減少レベルを測定し得る任意の疾患の診断も可能とする。この文脈における「増加レベルまたは減少レベル」という用語は、上記の疾患に罹患していない平均的な同等の被験体(例えば、同じ年齢および性別)と比べて増加または減少しているレベル(すなわち、濃度または量)に関する。より具体的には、「増加レベルまたは減少レベル」という用語は、同一個人中で、疾患に罹患する前のレベルと該疾患に羅患中のレベルとを比較して増加または減少するレベルに関する。このような疾患は、例えば本発明の方法の1つに従ってsCD40Lのレベルを測定することにより、好ましくは臨床研究に関連して、当業者によって同定され得る。より具体的には、このような疾患および臨床研究の優れた候補は、sCD40Lの増加レベルまたは減少レベルに関して上記の文献中で既に論じられている疾患である。
【0078】
sCD40Lの増加レベルまたは減少レベルに関して上記の文献中で既に論じられている疾患の例としては、以下の疾患が挙げられる:心血管リスク因子(例えば病的肥満、原発性高血圧症、糖尿病、内皮機能、家族性高コレステロール血症、閉塞型睡眠時無呼吸症候群);心血管疾患(例えば、早発型頚動脈閉塞性疾患、経皮冠動脈インターベンション後の再狭窄の予測、冠状動脈および脳血管の疾患、進行症候性末梢動脈疾患、高血圧性心疾患、急性および慢性心不全、肺動脈高血圧症、川崎疾患);薬理学的耐性/薬の効果(例えばアスピリン疾患);炎症および免疫学的疾患(例えば、全身性自己免疫疾患、紅斑性狼瘡、全身性硬化症、炎症性腸疾患、混合性結合組織疾患);血小板機能不全または活性化に関連する他の疾患(例えば子癇前症、重症急性膵炎、嚢胞性線維症、肺癌)。
【0079】
既に言及したとおり、本発明は、in vivoで血小板が刺激される疾患の診断も可能とする。このような疾患は、例えば凝集測定によって、当業者によって同定され得る。in vivoで血小板が刺激される疾患はまた、当業者に公知でもある。その例としては、血栓性素因、心血管疾患(特に炎症および/またはプラーク形成および/またはプラーク破裂および/または血栓形成を伴う心血管疾患)および/または高い血栓塞栓性リスクによって特徴付けられる任意の他の疾患が挙げられる。
【0080】
プラーク形成および/またはプラーク破裂を伴う心血管疾患、および/または心血管系における血栓形成は、広く知られている。プラークまたは血栓は、血管の狭窄または閉塞を引き起こし、このため血流および酸素供給を低下させる可能性がある。しばしば、破裂したプラークまたは血流にのって運ばれる血栓によって、これらが血管(例えば冠状動脈または肺動脈)を閉塞するまで、臨床的に関連する疾患が引き起こされる。
【0081】
心血管系(心臓動脈および冠状動脈)において、プラークまたは血栓形成を伴う疾患としては、安定狭心症(SAP)および急性冠症候群(ACS)が挙げられる。狭心症は、心筋虚血(すなわち、例えば運動している場合など、特に酸素需要量の増加条件下における不十分な酸素供給)によって特徴付けられる。ACS患者は、不安定狭心症(UAP)を示す可能性があり、またはこれらの個人は既に心筋梗塞(MI)に罹患している。心筋梗塞は、小さなまたは大きな壊死領域(すなわち酸素供給の不足による組織破壊)によって特徴付けられる。心電図の外観に従って、MIは、ST-上昇型MIまたは非ST上昇型MIとなり得る。MIの発症に続いて、左心室機能不全(LVD)が起こる可能性がある。LVD患者は、死亡率が約15%のうっ血性心不全(CHF)を発症する。
【0082】
しかし、プラークまたは血栓形成を伴う疾患は、末梢血管においても起こる可能性があり、例えば壊疽、細小血管症、または肺塞栓症を生じる。
【0083】
本発明に関連して、「心血管疾患」は特に、冠状動脈性心臓疾患、SAP、ACS、UAP、MI、ST上昇型MI、非ST上昇型MI、LVD、CHF、または心血管死に関する。より具体的には、「心血管疾患」は、ACS、UAP、MI、ST上昇型MI、非ST上昇型MI、LVD、またはCHFに関する。
【0084】
心血管疾患は、ニューヨーク心臓病協会(New York Heart Association)(NYHA)による機能分類システムに分類されている症状を引き起こす可能性がある。クラスIの患者は、明らかな心血管疾患の症状は示さない。身体的活動は制限されず、また通常の身体的活動は、過度の疲労、動悸または呼吸困難(息切れ)をもたらさない。クラスIIの患者は、身体的活動がわずかに制限される。これらの患者は、安静時には苦痛がないが、通常の身体的活動は、疲労、動悸または呼吸困難をもたらす。クラスIIIの患者は、身体的活動の著しい制限を示す。これらの患者は、安静時には快適であるが、通常の活動未満で疲労、動悸または呼吸困難を生じる。クラスIVの患者は、あらゆる身体的活動を、不快症状を伴わずに行うことができない。これらの患者は、安静時でも心不全の症状を示す。何か身体的活動を行うと、不快症状が増加する。
【0085】
別の機能分類は、以下の、カナダ心臓血管学会(Canadian Cardiovascular Society)(CCS)の分類システムによる、狭心症の類別である。
【0086】
クラスI:通常の身体的活動(例えば歩行、階段を上ること)は、狭心症を起こさない。狭心症は、仕事または娯楽における激しく、急速な、または長時間の運動で起こる。
【0087】
クラスII:通常の活動が軽度に制限される。狭心症は、歩行しているときまたは階段を急速に上っているとき、上り坂を歩行しているとき、食事の後に歩行しまたは階段を上っているとき、または寒さの中で、または風の中で、または感情的ストレス下で、または起床後数時間の間にも起こる。2ブロック以上水平に歩行しているとき、また普通の速度且つ正常状態で2続き以上の普通の階段を上っているときにも起こる。
【0088】
クラスIII:通常の身体的活動が著しく制限される。狭心症は、水平に1〜2ブロック歩いているとき、また1続きの階段を正常状態で普通の速度で上っているときに起こる。
【0089】
クラスIV:不快症状を伴わずに身体的活動を続けることができない。狭心症の症状は、休息中に生じ得る。
【0090】
従って、心血管疾患に罹患している患者は、臨床症状を示さない患者と、症状(例えば呼吸困難)を示す患者とに分けられる。
【0091】
心血管疾患の別の特徴は、駆出率としても知られる「左室駆出率」(LVEF)であり得る。健康な心臓を有する人々は、通常、LVEFが損なわれておらず、LVEFは一般に約50%以上と言われている。収縮性心疾患に罹患している人の大半は、一般に40%またはそれ未満のLVEFを有する。
【0092】
本発明における心血管疾患は、症状、特にNYHAクラスII〜IVの症状、さらに特にNYHAクラスIII〜IVの症状を引き起こし得る。心血管疾患は、CCS分類による症状、特にCCSクラスII〜IV、さらに特にCCSクラスIII〜IVの症状も引き起こし得る。
【0093】
本発明における心血管疾患は、40%またはそれ未満のLVEFを伴う可能性がある。
【0094】
本発明における心血管疾患は、「代償性」または「非代償性」のいずれであってもよい。「代償性」とは、身体の標準的な酸素需要が依然として満たされていることを意味し、他方「非代償性」は、身体の標準的な酸素需要がもはや満たされていないことを意味する。
【0095】
本発明の別の用途は、HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)、血栓性血小板減少性紫斑病、HELLP症候群(溶血、肝酵素の上昇、低血小板数)、および血栓性微小血管症からなる群から選択される疾患に罹患している被験体のリスクの診断に関する。HITは、1型HIT(それほど重症ではない形態)と2型HIT(致死率が約25%のより重症の形態)の2つのグループに分けることができる。特に本発明は、2型HITに罹患するリスクの診断も可能とする。リスクの診断において、本発明は、現在は関連の疾患に罹患していない被験体におけるリスクの診断も可能とする。
【0096】
本発明のさらに別の用途は、特に抗トロンビン、タンパク質C、タンパク質S、または活性化タンパク質C耐性(APC耐性、例えば第V因子ライデン)などの凝固阻害剤が欠乏している患者における血栓性素因およびプロトロンビン多型(例えばG20210A)の診断ならびに凝固性亢進の診断に関する。
【0097】
本発明は、血小板機能、血小板機能不全、もしくは血小板が刺激される疾患のモニタリング、または本明細書中に説明される任意の他の診断もしくは使用にも関する。
【0098】
「モニタリング」という用語は当業者に公知であり、本明細書の他の箇所で定義されている。より具体的には、モニタリングは、患者のリスクを一定の間隔(例えば、約2時間、10時間、1日、2日、3日、4日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、または1年の間隔)で診断することによって行われる。この文脈における「約」という用語は当業者に理解される。このため、実際の間隔は、例えば適切な予約の設定等の実際の状況に応じて、目的とする一定の間隔から外れていてもよい。例えばこの間隔は、100%まで、好ましくは50%まで、さらに好ましくは25%まで、さらに好ましくは10%まで外れていてもよい。
【0099】
本発明において「被験体」という用語は、健康な個人、見かけ上は健康な個人、または患者に関する。「患者」という用語は、特に本明細書の他の箇所に記載されている疾患または障害に罹患している個人に関する。より具体的には、この患者は、本明細書の他の箇所に記載されている血小板機能不全もしくは心血管疾患に罹患しているか、またはその治療を受けている。
【0100】
本発明による診断は、診断手段の使用によって行われることが好ましい。診断手段は、目的の物質(特にペプチド、ポリペプチド、または目的のタンパク質、さらに特に血小板機能マーカー)のレベル、量または濃度の測定を可能とする任意の手段である。
【0101】
各ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のレベルの測定に使用し得る方法および診断手段は、当業者に公知である。これらの方法としては、マイクロプレートELISAベースの方法、完全に自動化されたまたはロボットによる免疫アッセイ(例えばElecsysTMまたはCobasTM分析装置上で利用可能)、CBA(酵素的コバルト結合アッセイ、例えばRoche-HitachiTM分析装置上で利用可能)、およびラテックス凝集アッセイ(例えばRoche-HitachiTM分析装置上で利用可能)が挙げられる。上記の測定のための方法および手段には、Cardiac ReaderTM(Roche Diagnosticsから入手可能)などのポイントオブケアデバイスも含まれる。
【0102】
ポイントオブケアデバイスは、一般的に、患者の臨床で測定することを可能とするデバイスとして理解される。1つの例は、例えばNT-proBNP(「Cardiac proBNP」としてRoche Diagnosticsから入手可能)用の試験紙と組み合わせたCardiac ReaderTM(Roche Diagnosticsから入手可能)である。かかる試験は、目的のペプチド(例えばBNP型ペプチド)に対する2種類の(好ましくはモノクローナル)抗体を利用し得る。これらの抗体は、例えばElecsysTMまたはCobasTMアッセイにおいて使用される抗体と同一であってよい。例えば、第1の抗体はビオチンで標識されるが、第2の抗体は金粒子で標識される。この試験は、少量(例えば150μl)の血液サンプルを試験紙上(例えば試験紙のサンプルウェル中)に添加することによって開始することができる。サンプル中の赤血球は、例えばサンプルが好適なフリース(例えばグラスファイバーフリース)を通って流れる場合、試験紙への添加の前または後に残りの血漿から分離することができる。上記の分離手段(例えばフリース)は、試験紙の一部であることが好ましい。抗体(好ましくは試験紙上に既に存在する抗体)は、残りの血漿中に溶解している。これらの抗体は、目的のペプチドまたはポリペプチドに結合して、3成分からなるサンドイッチ複合体を形成することができる。これらの(結合している、または結合していない)抗体は、試験紙を通って検出ゾーンへと流れる。この検出ゾーンは、結合複合体を検出するための手段を含む。例えば、検出ゾーンはストレプトアビジンを含み得る。これは上記の複合体を固定化し、固定化された複合体を、金標識抗体によって紫の線として可視化する。好ましくは、残りの遊離の金標識抗体はその後さらに試験紙を移動し、ここで該抗体は検出対象のBNP型ペプチドのエピトープを含有する合成ペプチドまたはポリペプチドを含むゾーン中で捕捉され、別の紫の線として可視化される。このような第2の線の存在は、サンプルの流れが正常に機能し、且つ抗体が無傷であることを示すため、対照として役立ち得る。上記の試験紙は、この試験紙を用いて目的のペプチドまたはポリペプチドのいずれが検出され得るかを示す標識を含んでいてよい。この試験紙はまた、検出ゾーン中で検出可能な標識の量を光学的に測定するためのデバイスによって読み取り可能なバーコードまたは他のコードを含んでいてもよい。このようなバーコードは、この試験紙を用いて目的のペプチドまたはポリペプチドのいずれが検出され得るかを示す情報を含むことができる。このバーコードはまた、試験紙についてロット特異的な情報を含み得る。
【0103】
Cardiac Reader自体、試験紙の検出ゾーンを光学的に記録するカメラ(例えば電荷結合素子、CCD)を含む。シグナルラインおよびコントロールラインは、パターン認識アルゴリズムによって特定することができる。シグナルラインにおける標識の強さは、通常は目的のペプチドまたはポリペプチドの量に比例する。光学的シグナルは、コードチップ中に保存し得るロット特異的な検量線によって濃度に変換することができる。検量コードと試験ロットの一致は、試験紙上のバーコードによって確認し得る。
【0104】
さらに、当業者はペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のレベルの様々な測定方法を熟知している。「レベル」という用語は、患者または患者から採取したサンプルにおけるペプチドもしくはポリペプチドの量もしくは濃度に関する。
【0105】
本発明による「測定する」という用語は、好ましくは半定量的もしくは定量的に、目的の核酸、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質、または他の物質の量または濃度を測定することに関する。測定は、直接的または間接的に行うことができる。間接的測定は、細胞応答、結合したリガンド、標識、または酵素的反応産物の測定を含む。
【0106】
本発明において、「量」は「濃度」にも関する。既知のサイズのサンプル中の目的物質の全量からこの物質の濃度を計算し得ること、およびその逆も可能であることは明らかである。
【0107】
測定は、当技術分野で公知の任意の方法に従って行うことができる。好適な方法は以下に記載されている。
【0108】
好適な実施形態において、目的のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のレベルを測定する方法は、(a)上記のペプチドまたはポリペプチドに対して細胞応答し得る細胞を、当該ペプチドまたはポリペプチドと十分な時間接触させるステップ、(b)上記の細胞応答を測定するステップを含んでなる。
【0109】
別の好適な実施形態において、目的のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のレベルを測定する方法は、(a)ペプチドまたはポリペプチドを好適な基質と十分な時間接触させるステップ、(b)生成物の量を測定するステップを含んでなる。
【0110】
別の好適な実施形態において、目的のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のレベルを測定する方法は、(a)ペプチドまたはポリペプチドを特異的に結合するリガンドと接触させるステップ、(b)(場合により)結合していないリガンドを除去するステップ、(c)結合しているリガンドの量を測定するステップを含んでなる。
【0111】
好ましくは、上記のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質はサンプル(特に体液または組織サンプル)中に含まれ、このサンプル中のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の量が測定される。
【0112】
ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、任意のサンプル中で、本発明に従って測定することができる。
【0113】
必要であれば、このサンプルは、上記のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を測定する前にさらに処理し得る。特に、核酸、ペプチドまたはポリペプチドは、ろ過、遠心分離、または抽出方法(例えばクロロホルム/フェノール抽出)などの当技術分野で公知の方法に従ってサンプルから精製することができる。
【0114】
細胞応答を測定するためには、サンプルまたは処理したサンプルを細胞培養物に添加し、細胞内応答または細胞外応答を測定する。細胞応答は、レポーター遺伝子の発現または物質(例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質または小分子)の分泌を含み得る。
【0115】
他の好適な測定方法は、目的のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に特異的に結合するリガンドの量の測定を包含し得る。本発明による結合は、共有結合と非共有結合の両方を含む。
【0116】
本発明によるリガンドは、目的のペプチドもしくはポリペプチド、またはタンパク質に結合する任意のペプチド、ポリペプチド、核酸、または他の物質であってよい。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、ヒトまたは動物の細胞から採取または精製された場合、改変し得る(例えばグリコシル化)ことがよく知られている。本発明において好適なリガンドは、このような部位を介しても上記のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に結合することができる。
【0117】
好ましくは、上記のリガンドは、測定対象のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に特異的に結合するはずである。本発明において「特異的結合」とは、このリガンドが、研究対象のサンプル中に存在する別のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または物質とは実質的に結合(「交差反応」)しないことを意味する。好ましくは、特異的に結合するタンパク質またはアイソフォームは、任意の他の関連ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質と比較して3倍以上高い、より好ましくは10倍以上高い、さらにより好ましくは、50倍以上高い親和性で結合する。この文脈において、かかる他の関連ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質は、他の構造的に関連したまたは相同なペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質であり得る。
【0118】
非特異的結合は、特に研究対象のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、例えばウェスタンブロット法でのそのサイズに従って、またはサンプル中に比較的多量に存在することによって、依然として明確に識別でき且つ測定できる場合には許容し得る。
【0119】
リガンドの結合は、当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができる。この方法は、半定量的または定量的であることが好ましい。好適な方法を以下に記載する。
【0120】
第1に、リガンドの結合は、例えばNMRまたは表面プラズモン共鳴によって直接測定することができる。
【0121】
第2に、リガンドが目的のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の酵素的活性の基質としても機能する場合、酵素反応生成物を測定することができる(例えば、ウェスタンブロット法で切断された基質の量を測定することによってプロテアーゼの量を測定することができる)。
【0122】
酵素反応生成物の測定については、基質の量が飽和していることが好ましい。この基質は、反応前に検出可能な標識で標識化することもできる。サンプルは、基質と十分な時間接触させることが好ましい。十分な時間とは、検出可能な、好ましくは測定可能な量の生成物が生成されるのに必要な時間を指す。生成物の量を測定する代わりに、所与の(例えば検出可能な)量の生成物が出現するのに必要な時間を測定することができる。
【0123】
第3に、上記のリガンドを、このリガンドの検出および測定を可能とする標識と共有結合または非共有結合させることができる。
【0124】
標識化は、直接法または間接法によって行うことができる。直接標識化は、標識を直接(共有結合的にまたは非共有結合的に)リガンドに結合させるステップを含む。間接標識化は、第2のリガンドを第1のリガンドに(共有結合的にまたは非共有結合的に)結合させるステップを含む。この第2のリガンドは、第1のリガンドに特異的に結合するものでなければならない。上記の第2のリガンドは好適な標識と結合させることができ、および/または該第2のリガンドに結合する第3のリガンドの標的(受容体)とし得る。第2、第3またはさらに高次のリガンドの使用は、シグナルを増大させるために用いられることが多い。好適な第2のリガンドおよびさらに高次のリガンドとしては、抗体、二次抗体、および周知のストレプトアビジン-ビオチン系(Vector Laboratories社)を挙げることができる。
【0125】
上記のリガンドまたは基質は、1つ以上の当技術分野で公知のタグを用いて「タグ化」することもできる。その後、このようなタグをさらに高次のリガンドの標的とすることができる。好適なタグとしては、ビオチン、ジゴキシゲニン、His-Tag、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、myc-tag、インフルエンザAウイルス血球凝集素(HA)、マルトース結合タンパク質等が挙げられる。ペプチドまたはポリペプチドの場合、タグは、N末端および/またはC末端に付加されることが好ましい。
【0126】
好適な標識は、適切な検出法で検出可能な任意の標識である。典型的な標識としては、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素活性標識、放射性標識、磁性標識(例えば、常磁性標識および超常磁性標識を含む「磁性ビーズ」)、および蛍光標識が挙げられる。
【0127】
酵素活性標識としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼおよびこれらの誘導体が挙げられる。検出に適した基質としては、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3'-5,5'-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリドおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸、Roche Diagnosticsから既製のストック溶液として入手可能)、CDP-StarTM(Amersham Biosciences)、ECFTM(Amersham Biosciences)が挙げられる。適切な酵素と基質の組み合わせは、当技術分野で公知の方法によって(例えば感光フィルムまたは好適なカメラシステムを使用して)測定し得る着色反応生成物、蛍光または化学発光を生じさせることができる。酵素的反応の測定については、上記の基準が同様に適用される。
【0128】
典型的な蛍光標識としては、蛍光タンパク質(例えばGFP、YFP、RFPおよびこれらの誘導体)、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセイン、Alexa色素(例えばAlexa568)、および量子ドットが挙げられる。他の蛍光標識は、例えばMolcular Probes(Oregon)から入手可能である。
【0129】
典型的な放射性標識としては、35S、125I、32P、33P等が挙げられる。放射性標識は、公知で且つ適切な任意の方法、例えば、感光フィルムまたは蛍光イメージャーによって検出することができる。
【0130】
本発明における好適な測定方法としては、沈降(特に免疫沈降)、電気化学発光(電気生成化学発光)、RIA(放射免疫アッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、サンドイッチ酵素免疫試験、電気化学発光サンドイッチ免疫アッセイ(ECLIA)、解離増強ランタノイド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)、シンチレーション近接アッセイ(SPA)、比濁法、ネフェロメトリー、ラテックス増強比濁法もしくはネフェロメトリー、固相免疫試験、および質量分析(例えばSELDI-TOF、MALDI-TOF、またはキャピラリー電気泳動-質量分析(CE-MS))も挙げられる。当技術分野で公知の他の方法(例えばゲル電気泳動、2次元ゲル電気泳動、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、ウェスタンブロッテイング)は、単独で、または上記の標識化もしくは他の検出法と組み合わせて用いることができる。
【0131】
好適なリガンドとしては、抗体、核酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、およびアプタマー、例えば核酸アプタマーまたはペプチドアプタマー(例えばスピーゲルマーまたはアンチカリン)が挙げられる。このようなリガンドを取得する方法は当技術分野で周知である。例えば、好適な抗体またはアプタマーの同定および製造は、販売供給業者からも提供される。当業者は、このような高い親和性または特異性を有するリガンドの誘導体を開発する方法を熟知している。例えば、上記の核酸、ペプチドまたはポリペプチドにランダム変異を導入することができる。その後これらの誘導体は、当技術分野で公知のスクリーニング法(例えばファージディスプレイ)により、結合について試験される。
【0132】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方、ならびにこれらのフラグメント(例えば抗原またはハプテンに結合し得るFv、FabおよびF(ab)2フラグメント)を包含する。
【0133】
好適な抗体は、例えば、R&D systems, Bender MedSystemsおよびRoche Diagnosticsから入手可能である。例えば、P-セレクチンの場合:Bender MedSystemsから入手可能であり(ビオチン標識抗体またはFITC標識抗体など)、またQED Bioscience Inc.から入手可能である(「クローンAK-6」)。CD40Lの場合:Antigenix America Inc.(FITC標識抗体など)、BD Biosciences Pharmingen、Bender MedSystems等から入手可能である。手短に言えば、好適なポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、標識抗体または非標識抗体は、広く入手可能であり、商業的供給源から取得することができる。例えば、ウェブサイトwww.biocompare.comは、入手可能な抗体の概要を提供する。
【0134】
他の抗体は、周知の方法に従って当業者が容易に作製することができる。
【0135】
別の好適な実施形態において、好ましくは核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質からなる群から選択される、さらに好ましくは核酸、抗体、またはアプタマーからなる群から選択されるリガンドが、アレイ上に存在する。
【0136】
上記のアレイは、目的のペプチド、ポリペプチド、タンパク質または核酸に対するものであってよい付加的なリガンドを1つ以上含む。上記の付加的なリガンドは、本発明に関して特段目的ではないペプチド、ポリペプチドまたは核酸に対するものであってもよい。3種以上、好ましくは5種以上、さらに好ましくは8種以上の本発明に関する目的のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に対するリガンドがアレイ上に含まれることが好ましい。
【0137】
本発明によれば、「アレイ」という用語は、その上に2つ以上の化合物が一次元、二次元または三次元的配置で付着または結合されている固相またはゲル様担体を指す。このようなアレイ(「遺伝子チップ」、「タンパク質チップ」、抗体アレイ等を含む)は当業者に一般的に公知であり、典型的にはガラス顕微鏡用スライド(ポリカチオン-、ニトロセルロース-またはビオチンコーティングスライドなどの特別にコーティングされたガラススライド)、カバースリップ、および、例えばニトロセルロースベースまたはナイロンベースの膜などの膜上に作製される。
【0138】
上記のアレイは、1つの結合されたリガンドまたは1つ以上のリガンドをそれぞれ発現している2つ以上の細胞を含み得る。
【0139】
本発明におけるアッセイとして、「懸濁アレイ」を使用することも考えられる(Nolan JP, Sklar LA. (2002). Suspension array technology: evolution of the flat- array paradigm. Trends Biotechnol. 20(l):9-12)。このような懸濁アレイにおいて、担体、例えばマイクロビーズまたはミクロスフェアは、懸濁液中に存在する。このアレイは、場合により標識化されている、様々なリガンドを保持する様々なマイクロビーズまたはミクロスフェアで構成される。
【0140】
本発明はさらに、他のリガンドに加えて1つ以上のリガンドを担体材料に結合させる、上記に定義されるアレイの製造方法に関する。
【0141】
このようなアレイの製造方法、例えば固相化学および光不安定性保護基に基づく製造方法は、一般に公知である(US 5,744,305)。このようなアレイは、物質または物質ライブラリと接触させて、相互作用(例えば結合または立体構造の変化について)試験することもできる。従って、上記のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含むアレイは、これらのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に特異的に結合するリガンドを同定するために用いることができる。
【0142】
本発明による方法は、血小板機能、血小板機能不全、または血小板が刺激される機能不全を診断するステップ、または血小板機能マーカーの測定レベルを特定の診断に関連する参照レベルと比較することによる、本明細書中で説明される他の任意の診断もしくは使用も含み得る。
【0143】
「参照レベル」および「参照濃度」という用語は当業者に公知である。これらの用語は、本出願全体を通して互換的に用いることができる。特に参照レベルは特定の診断に関連し、または異なる種類の診断(例えば疾患ありまたは疾患なし)を識別することができる。参照レベルもまた、所望の感度または診断の特異性に従って選択し得ることが理解されるだろう。高感度とは、特定の疾患に罹患している患者が高い割合で同定されること、および/または特定の疾患に罹患している患者であって、診断対象の疾患に罹患していないと診断される患者が少ないことを意味する。高い特異性とは、特定の疾患に罹患していると同定される患者が、高い割合で、実際に診断対象の疾患に罹患していることを意味する。特定の疾患に対する所望の感度が高いほど、その診断特異性は低く、その逆もまた同様である。従って、参照レベルは、所望の感度および特異性に従って当業者が選択することができる。好適な参照レベルを決定するための手段は当業者に公知である。例えば参照レベルは、臨床研究による受信者動作特性曲線(ROC)から決定することができる。
【0144】
さらに、選択される参照レベルは、測定方法にも依存する(例えば、特定の活性化因子および血小板機能マーカーのレベルを測定した後の時間に依存する)ことが理解されるだろう。
【0145】
この考察に関連して、参照レベルは単一値であるだけでなく、様々な値をも包含し得ることが明らかである。
【0146】
より具体的には、参照レベルは、例えば本明細書中の実施例による研究において測定されたレベルから導出することもできる。
【0147】
特定の参照レベルに関するガイダンスも、本明細書中の実施例から決定し得る。
【0148】
例えば、シクロオキシゲナーゼ-1阻害剤(アスピリン)またはトロンボキサンA2(TXA2)受容体遮断薬(例えばテルボグレル)が患者に有効か否かの決定に関して、in vitroでの活性化の6分後に測定したsCD40Lの0.5〜0.6ng/mlのレベルから、血小板凝集能が有効に低下した患者と、そうでない患者とを識別することができると考えられる。この場合、アスピリンまたはテルボグレルを用いた治療後に患者が0.6ng/mlより高いsCD40Lレベルを示すときには、かかる薬剤がこの患者には有効ではないことが示唆され得る。
【0149】
別の例として、包括的機能的血小板能(GFPC)の試験において、または血小板刺激能(PSC)の試験において、本発明に従って測定したsCD40Lのレベルが、急性冠症候群(不安定狭心症、非ST型上昇心筋梗塞、またはST型上昇心筋梗塞)に罹患している患者において増加することが見られる。
【0150】
別の例において、本発明に従って測定した可溶性GP-Vのレベルは、アスピリン(アセチルサリチル酸)の投与を受けた被験体中で2〜4倍以上低下し、かかる被験体がアスピリン治療に対して良好に応答することを示唆している。このように参照値は、単一の被験体における治療前および治療後の値を比較することによって得ることもできる。
【0151】
より多数の被験体のサンプルを分析すると、適切な参照値を得ることができる。例えば、好ましくは10、20、50、100、500または1000人以上の比較可能な被験体から決定された平均レベル±2標準偏差を下回るまたは上回るレベルは、かかる被験体が関連の疾患に罹患していることを示唆し得る。
【0152】
本発明による方法は、当業者が適切であると考える任意の手段によって実施することができる。従って、本発明は、本発明による方法におけるかかるデバイスおよびかかるデバイスの使用にも関する。特に、本発明による方法の2つ以上のステップを実施し得る統合デバイスが考えられる。例えば、血液サンプルを分析するためのデバイスは、WO 99/14595(Accumetrics Inc.)に記載されており、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。かかるデバイスは、サンプル容器(例えば採血管)からサンプル(例えば血液サンプル)を受けることが可能であり、サンプル処理を行うために、別のチャンバーにサンプルを通過させることができる。このデバイスは、正確な量のサンプルが追加のチャンバーに入るよう制御するための手段を有する。かかるデバイスは、少なくとも(1)血液採取デバイスまたは採血管からサンプルを取得するステップ、(2)本発明による任意の薬剤を、サンプル(例えば血小板活性化因子またはプロテアーゼ)と接触させるステップ、(3)(場合により)ステップ(2)の反応を停止させるステップ、およびステップ(4)(場合により)血小板機能マーカーのレベルを測定するステップ、を実施するように適合させることができる。ステップ(4)について、上記のデバイスは、例えば当業者に公知のマーカーのレベルを測定する手段を含むように適合させることができる。このような手段の例は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のレベルの測定に関連して、本明細書中にも開示されている。上記のデバイスは、被験体からの血液サンプルの採取にも適しており、またはそのために設計されている。例えばこのデバイスは、サンプルを血液採取デバイスまたは採血管から取得する代わりに、患者から得られた血液サンプルをリザーバに直接移動させる手段を含み得る。この場合、上記のデバイスは、以下にさらに説明する血液採取デバイスであると考えることができる。
【0153】
本発明はまた、(a)場合により抗凝血剤、(b)血小板活性化因子、(c)場合により血小板活性化阻害剤、および(d)場合により線維素溶解の阻害剤を含む血液採取デバイスにも関する。
【0154】
「血液採取デバイス」という用語は、当業者に公知である。このようなデバイスは、被験体からの血液サンプルの採取に適したデバイスであることが好ましい。好ましくは、この血液採取デバイスは、血液サンプルを被験体から採取するために設計される。好ましくは、この血液採取デバイスは、血液サンプルをその中へ移動させることができるリザーバ部を含む。好ましくは、このデバイスは、例えば針および場合により接続管を用いて、被験体から得られた血液サンプルをリザーバ中へ直接移動させることを可能とし、またはそのように設計される。好ましくは、この血液採取デバイスは、血液サンプルを吸入するための吸入部と、該サンプルを受けるためのリザーバ部とを備えた容器を含む。好ましくは、このデバイスは、血液サンプルを回収するとすぐに、該血液サンプル中の血小板と血小板活性化因子との接触を可能とする。好ましくは、このデバイスはまた、血液サンプルを回収するとすぐに、該血液サンプルと抗凝血剤および/または線維素溶解の阻害剤(このような薬剤のいずれかがデバイス中に含まれている場合)との接触も可能とする。このデバイスは、血液成分を分離するための分離部材(例えば、機械的分離エレメントまたはゲル)を含んでいてもよい。
【0155】
このデバイスは、どの量の血液が該デバイスに添加されたかを(例えば、好ましくは添加されたサンプルの量を視覚的に測定することを可能とする指示線を有する透明な採血管により)測定することも可能とし得る。
【0156】
好ましくは、上記の血液採取デバイスは、添加すべき血液の量を指示する手段(例えば、添加すべき量を指定する指示線またはラベル)を含む。このデバイスは、添加される血液の量の視覚的制御を可能とするために透明であることが好ましい。しかしこのデバイスは、添加される血液サンプルの量を該サンプルと接触させるべき薬剤(例えば血小板活性化因子、プロテアーゼ、または凝固阻害剤)の量と適合させるために適切であると考えられる他の任意の手段も含み得る。
【0157】
上記の血液採取デバイスは、色分けすることも可能であり、または内容物および/または上記の管の設計用途を示すラベルを含むこともできる。かかる用途は、例えば、血小板機能および/または機能不全の診断もしくは心血管疾患の診断、または本明細書中で言及される他の任意の診断用途であってよい。このような情報は、例えば、上記のデバイスまたは複数の該デバイスを含むキットまたはパッケージに入っている、デバイスに添付されている添付文書中においても提供される。
【0158】
上記の血液採取デバイスは、真空の系または部分的に真空の系であってよい。真空のまたは部分的に真空の血液採取デバイス、特に採血管は、(例えばBD(Becton, Dickinson and Company)から)市販されている。この血液採取デバイスは、吸引により血液サンプルを引き込むことも可能とする。このようなデバイス、特に採血管は、(例えばSarstedt AG, Germanyから)市販されている。好適な実施形態において、このようなデバイスは、管内部で移動可能で、吸引力(注射器と同様)を生じさせることができるプランジャーを含む。好ましくは、サンプルの吸引後、プランジャーロッドを取り除くことができる。このような真空のまたは部分的に真空の系または吸引によるサンプルの引き込みを可能とする系は、被験体から得られた血液サンプルまたは血小板サンプルをリザーバ中へ直接移動させるために特に適している。
【0159】
血液採取デバイスは、適切であると考えられる任意の種類の材料から製造し得る。例えば、プラスチックまたはガラスを使用することができる。このデバイス(特に採血管)を製造するために用いられる一部の好適な材料として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、およびセルロース誘導体が挙げられる。ポリテトラフルオロエチレンおよび他のフッ素化ポリマーなどのさらに高価なプラスチックも使用することができる。上記の材料に加えて、本発明において使用される採取デバイスのための他の好適な材料の例としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、エポキシ、アクリル、ポリアクリル酸塩、ポリスルホン、ポリメタクリル酸、PEEK、ポリイミドならびにフッ素ポリマー(例えば、PTFE TeflonTM、FEP TeflonTM、TefzelTM、ポリ(ビニリジンフルオリド)、PVDFおよびペルフルオロアルコキシ樹脂)が挙げられる。石英ガラスを含むガラス製品もまた、上記の採取デバイスを製造するために用いられる。1つの例となるガラス製品は、PYREXTM(Corning Glass, Corning, New Yorkから入手可能)である。セラミックの採取デバイスを、本発明の実施形態に従って使用することができる。紙および強化紙の容器などのセルロース誘導体製品も、本発明による採取デバイスを形成するために使用することができる。
【0160】
サンプルと接触させる薬剤(例えば血小板活性化因子、プロテアーゼ、抗凝血剤、線維素溶解阻害剤、および/または血小板阻害剤)は、限定するものではないが、溶液、懸濁液または他の液体、ペレット、錠剤、カプセル、噴霧乾燥物質、凍結乾燥物質、粉末、粒子、ゲル、結晶または凍結乾燥物質などの任意の好適な形態であってよい。一部の血小板活性化因子、抗凝血剤、線維素溶解阻害剤、および血小板阻害剤の半減期は短い可能性があるため、関連成分は、その有効期間を最適化するような形で血液採取デバイス中に導入されることが好ましい。凍結乾燥は、優れた安定性を提供し、またその後の滅菌も可能とする(いずれも自動化および標準化の観点から重要である)点において有用であると考えられる。
【0161】
上記の薬剤(例えば血小板活性化因子、プロテアーゼ、抗凝血剤、線維素溶解阻害剤、および/または血小板阻害剤)は、上記のデバイス中のどこに位置していてもよい。例えば、血液サンプルと接触し得る表面上に位置していてよい。上記の薬剤は、患者とデバイスとの接続(例えば接続管)中に位置していてもよい。上記の薬剤はまた、かかるデバイスを閉じるためのストッパーおよびシールの上、またはかかるデバイス内に配置されている機械的挿入物もしくは他の挿入物の上に位置していてもよい。この薬剤は、上記の採取デバイスの少なくとも1つの内壁沿いのいずれかまたはリザーバ部内のいずれかに位置していることが好ましい。さらに一部の薬剤は、光感受性を示し得る。従って、この薬剤を光から保護することが望ましい。このような薬剤のために、不透明な管(例えば琥珀色の管)を使用することが好都合だろう。別法として、上記の薬剤を露光から保護するカプセルに入れて(例えば粉末形態で)、該カプセルを管の中に配置することも、この問題への対処となるだろう。薬剤をカプセル化することによっても、この薬剤と容器内の他の成分との他の望ましくない相互作用を防ぐことができる。サンプル採取の際に溶解するカプセルの材料は、当技術分野で周知である。
【0162】
血小板活性化因子、抗凝血剤、線維素溶解阻害剤、および/または血小板阻害剤は、任意の数の方法で上記の血液採取デバイスに施用することができる。例えば、この薬剤は、血液採取デバイスの内壁の表面上に噴霧乾燥され、緩く分配されまたは凍結乾燥され得る。別法として、上記の薬剤は、例えばゲルまたは液体形態の場合、例えば血液採取デバイスのリザーバ部中に配置することができる。血液採取デバイスに血小板活性化因子、抗凝血剤、線維素溶解阻害剤、および/または血小板阻害剤を供給するための付加的な方法も可能である。典型的には、所望の量の薬剤を容器中に分配するため、固形の薬剤を再構成し、その後適切な量の液体を容器中に分配する。この液体は、噴霧乾燥され、容器の底へ配置され、またはその後に凍結乾燥される。
【0163】
血小板を活性化させるために上記のデバイス中に含まれる活性化因子の量は、本明細書の他の箇所で定義されるとおり、サンプル中の血小板を確実に活性化させ得る量であることが好ましい。血小板活性化因子の量は、10、8、7、5、3または2分未満以内に、サンプル中の血小板表面上に存在するCD40LからのsCD40Lの脱落、より具体的には血小板表面上に存在するCD40Lの全量の30%以上、50%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上の脱落を生じさせるのに十分な量であることが好ましい。活性化因子の量は、10、8、7、5、3または2分未満以内に血小板活性化に特有の形態変化を生じさせるのに十分な量であることが好ましい。
【0164】
活性化因子の量は、血液サンプル中のコラーゲンの、0.05μg/ml以上、さらに好ましくはO.lμg/ml、0.2μg/ml、0.5μg/mlまたは1μg/mlの血小板活性化能を有するのに十分な量であることが好ましい。活性化因子の量は、血液サンプル中(好ましくは新たに採取された全血サンプル中)のコラーゲンの、0.05〜50μg/ml、0.2〜30μg/ml、0.5〜10μg/ml、0.8〜5μg/ml、または1μg/mlの血小板活性化能に相当することがさらに好ましい。
【0165】
あるいはまたはさらに、活性化因子の量は、血液サンプル中のADPの、0.01μM以上、さらに好ましくは0.1μM、0.2μM、0.5μM、1μM、2μM、3μMまたは5μMの血小板活性化能を有するのに十分な量であることが好ましい。活性化因子の量は、血液サンプル中(好ましくは新たに採取された全血サンプル中)のADPの、0.01μM〜100μM、0.1〜50μM、0.2〜30μM、0.5〜20μM、2〜15μM、3〜10μMまたは5μMの血小板活性化能に相当することがさらに好ましい。
【0166】
あるいはまたはさらに、活性化因子の量は、血液サンプル中のトロンビンの、0.01 U/ml以上、さらに好ましくは、0.05 U/ml、0.1 U/ml、0.2 U/ml、0.5 U/mlまたは1 U/mlの血小板活性化能を有するのに十分な量であることが好ましい。活性化因子の量は、血液サンプル中(好ましくは新たに採取された全血サンプル中)のトロンビンの、0.01〜10 U/ml、0.05〜10 U/ml、0.1〜10 U/ml、0.2〜8 U/ml、0.5〜5 U/ml、または1 U/mlの血小板活性化能に相当することがさらに好ましい。
【0167】
典型的な血液採取デバイスは、内部チャンバーを規定する容器を含み得る。この容器は、側壁、閉じられた下端と、開いた上端を有する中空管であってよい。場合により、容器チャンバー内に分離部材を備えてもよい。このような分離部材は、例えば遠心分離によるサンプル成分の分離を助けるために役立ち得る。この容器は、適切な量の血液を採取するための寸法とされる。滅菌製品が要求される場合、容器を閉じるために開口端を覆うための閉塞手段が好ましく、またこのような手段が必要とされるだろう。従来の管では、通常はねじ蓋で十分である。真空採取管については、所要の保存期間中真空を含むため、ぴったり閉まる弾性の栓が一般に用いられる。好ましくは、上記の閉塞手段は、効果的に容器を閉じて生物学的サンプルを内部チャンバー中に保持し得るシールを形成する。この閉塞は、限定するものではないが、ゴム閉塞、HEMOGUARD閉塞、金属シール、金属帯のゴムシールならびに様々なポリマーおよびデザインのシールを含む様々な形態からなるものであってよい。この閉塞手段は保護シールドで覆うことができる。上記の容器は、血小板活性化因子、ならびに場合により抗凝血剤、線維素溶解阻害剤、および/または血小板阻害剤も含み得る。容器はガラス、プラスチックまたは他の好適な材料で作製することができる。容器は透明であることが好ましい。上記の容器用の好適な透明の熱可塑性プラスチック材料の非限定的な例は、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートである。プラスチック材料は、酸素不透過性材料であってよく、または酸素不透過性層または酸素半透過性層を含み得る。別法として、この容器は、水および空気透過性プラスチック材料で作製することができる。血小板活性化因子、および場合により抗凝血剤、線維素溶解阻害剤、および/または血小板阻害剤は、任意の適切な手段を用いて容器に供給し得る。1つの態様において、関連の薬剤(血小板活性化因子、場合により抗凝血剤、場合により線維素溶解阻害剤、および/または場合により血小板阻害剤)は、液体溶液の形態で容器中に配置される。その後、この溶液は、当技術分野で公知の方法(例えばフリーズドライ法など)によって凍結乾燥させることができる。例えば、上記の溶液を凍結させ、次いで、凍結後に溶液を徐々に温めながら同時に真空を適用することにより、採取管の中にフリーズドライ粉末が残る。結果として得られる薬剤が容器中でペレット化されるように、凍結乾燥前に、上記の薬剤溶液に賦形剤(例えばPVPまたはトレハロース)などの添加剤も加えることができる。安定化液を添加した後、真空乾燥を用いることもできる。別の態様において、上記の安定化剤は、液体または固体エアロゾルに形成され、容器の内側の1つ以上の表面上にスプレーされる。
【0168】
上記の管が真空または部分的に真空の系である場合、内部チャンバー中の圧力を、所定量の生物学的サンプルをチャンバー内に引き込むように選択することができる。好ましくは、閉塞手段は、大気圧と、大気未満の圧力(負圧)との内圧差を維持し得る弾性材料で作製される。上記の閉塞手段は、当技術分野で知られているとおり、容器中にサンプルを導入するために針または他のカニューレで穴を開けることができるものである。この閉塞手段は、再閉鎖し得ることが好ましい。閉塞手段に好適な材料として、例えば、シリコーン、ゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン-プロピレンコポリマーおよびポリクロロプレンが挙げられる。
【0169】
容器の好適な例は、単壁多層管である。好適な容器のさらに特定の例はCohenによる米国特許第5,860,937号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0170】
本発明による血液採取デバイスは、(a)血液採取デバイス中での使用に好適な、好ましくはサンプルを受けるためのリザーバ部を有する容器を提供するステップ、(b)血小板活性化因子を、上記の容器、好ましくは上記のリザーバ部に添加するステップ、(c)場合により抗凝血剤および/または線維素溶解阻害剤および/または血小板阻害剤を、上記の容器、好ましくは該容器のリザーバ部に添加するステップ、(d)場合によりステップ(b)または(c)に従って添加された上記の薬剤のいずれかを凍結乾燥させるステップ、(e)デバイスを組み立てるステップ、(f)場合により上記の容器を真空するステップを含んでなるように製造することができる。ステップ(b)または(c)の薬剤は、例えば、溶液形態で、またはペレット、錠剤、粒子、結晶またはカプセルとして容器中に分配し得る。容器に薬剤を添加した後、所望であればこの容器に分離部材を加えることができる。好適な凍結乾燥法/真空法の例は、以下のとおりである:容器を、温度約-40℃、圧力約760mmHgで、約6〜8時間凍結させ;この容器を、温度を-40℃〜約25℃に勾配させながら、圧力約0.05mmHgで約8〜10時間乾燥させ;その後、この容器を、温度25℃、圧力約120mmHgで約0.1時間真空する。上記の滅菌技術では、コバルト60放射を用いることが好ましい。
【0171】
上述のとおり、上記の容器は、ゲル、機械的分離部材または他の分離部材(例えば濾紙または同様のもの)も含み得る。このような場合、上記の関連の薬剤は、上記の分離媒体の外表面上で噴霧乾燥および/または凍結乾燥させることができる。この容器は、血漿の調製も可能とする。このようなデバイスは、血小板活性化因子および他の関連の薬剤に加えて、全血から血漿を分離するエレメントを含む。上記の全血から血漿を分離するためのエレメントは、ゲル製剤または機械的媒体などの分離部材であってよい。このゲルは、チキソトロピックポリマーゲル製剤であることが望ましい。このゲルは、ホモポリマーまたはコポリマーであってよく、シリコーンベースのゲル(例えばポリシロキサンなど)、または有機炭化水素ベースのゲル(例えば、ポリアクリル酸、ポリエステル、ポリオレフィン、酸化シスポリブタジエン、ポリブテン、エポキシ化大豆油の混合物、および塩素化炭化水素、二酸コポリマーおよびプロパンジオールコポリマー、水素化シクロペンタジエンおよびマレイン酸ジアルキルを含むαオレフィンコポリマーなど)を含み得る。このゲルは、密度分離媒体としての機能を果たすことにより、管中の血液サンプルの細胞から血漿を単離することが望ましい。このようにして、遠心分離後に血液から血漿が分離される。ゲル分離材の場合、上記の関連の薬剤とゲルとの物理的/化学的分離を提供すること(例えばカプセルの使用)が望ましいだろう。例えば、上記の薬剤の一部がゲルの中に組み込まれ、またはゲルと反応する場合、この薬剤の有効性が低下する可能性がある。同様の理由で、機械的分離エレメントを使用する場合、このエレメントは安定化剤に対して実質的に不活性であることが望ましく、これはこのような分離器の利点を反映している。分離エレメントを用いずに遠心分離することと比べて、血漿管中に分離エレメントを設けることは、上清中への血小板機能マーカーのさらなる過剰な漏出を伴わずにサンプルを維持することを可能とするため、有利であり得る。
【0172】
血液採取デバイスは市販されている。特に、凝固阻害剤を含む血液採取デバイスも市販されている。このような凝固阻害剤を含む血液採取デバイスの一例は、Smithらの米国特許第5,667,963号およびWO 03/097237 A2に開示されており、これらの文献は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0173】
本発明による血液採取デバイスの例としては、閉鎖系血液採取デバイス(例えば採取バッグ)、注射器(特に充填済注射器)、および採血管が挙げられる。
【0174】
血液採取デバイスの一例は、採血管である。「採血管」という用語は、当業者に公知である。典型的には、採血管は、血液サンプルを吸入するための吸入部と、サンプルを受けるためのリザーバ部とを含む。好ましくは、この吸入部は、採血管を針または接続管に接続するための接続手段、より具体的には、特定のアダプター(例えばLuer-LockまたはMultiflyTM(Sarstedt AG, Germany))を用いた接続手段を含む。この接続は、例えば、針で穴を開けた後に上記の吸入部を密閉し得るゴム挿入物を用いて密閉することができる。このように、サンプルの導入を可能とするが、サンプルが添加された後に管の密閉を可能とする針または接続管を挿入することができる。上記の吸入部はねじ蓋を含んでいてもよく、または、この吸入部は採取管のリザーバ部の上にねじ込まれるねじ蓋の中に含めることができる。
【0175】
典型的には、採血管は、0.1〜25ml、特に0.5ml〜20ml、さらに特に0.8〜15ml、さらに特に1〜10mlの血液サンプル用のサンプリングリザーバを含む。典型的には、採血管は、(a)長さ2〜20cm、特に4〜18cm、さらに特に5〜15cmおよび(b)内径5〜20mm、特に6〜18mm、さらに特に7〜16mmに相当するサイズを有する。
【0176】
上記の採血管を、血液採取デバイスに関して既に言及した任意の特性、特にカラーコード、閉鎖物、添加すべきサンプルの量を指示する手段、材料、添加すべき薬剤、該薬剤を添加する形態または手段、サンプルを吸引する手段等に関する特性に従って適合させ得るのは明らかである。
【0177】
充填されていない中性の管は、例えばSarstedt MonovetteTMカタログ番号01.1728.001、04.1926.001、および05.1727.001(Sarstedt AG, Germany)として入手可能である。
【0178】
凝固阻害剤を含む管は、例えばSarstedt MonovetteTMカタログ番号01.1604、03.1628、04.1936、および04.1906(全てリチウムヘパリンを含む)および04.1909(CTADを含む)として入手可能である。
【0179】
他の市販の採血管としては、BD(Becton, Dickinson and Company)からVACUT AINERTMとして入手可能な管が挙げられる。
【0180】
1つの実施形態において、血小板活性化阻害剤もまた、血液採取デバイス中に提供し、あるいは血小板の活性化後に該デバイス中のサンプルに加えることができる。例えば、上記の阻害剤は、注射器などを用いて手動で上記のデバイスに添加し得る。このようにして、特に所定の時間後に血小板の活性化を停止させることができる。
【0181】
さらに特定の実施形態において、本発明のデバイスは、血小板含有サンプルの添加後および血小板機能マーカーまたはその変異体を溶液化した後に血小板含有サンプル中への上記の血小板活性化阻害剤の放出を可能とする様式で、該阻害剤を含む。より具体的には、上記の血小板活性化阻害剤は、放出可能な様式で、または特定時間後の放出に備えた様式で提供することができる。例えば、上記の阻害剤は、サンプルとの特定の接触時間後の放出を可能とする分離手段によって、(例えば該分離手段を手動で除去または破壊することによって)サンプルから分離することができる。上記の分離手段はまた、サンプル(例えば水溶液)と所定の時間接触すると溶解し得る。好ましくは、上記の所定の時間は、本明細書中で言及される、活性化のために好適な時間のいずれかに相当する。上記の分離手段は、例えば上記の阻害剤を分離またはカプセル化する固体材料、ゲル、または膜であってよい。
【0182】
上記の阻害剤は、血小板活性化因子と比べてゆっくりと作用する薬剤として提供することもできる。このようにして、該阻害剤は、所定の時間後にのみ該活性化因子を抑制するだろう。このような阻害剤の例はチロフィバンである(実施例8参照)。
【0183】
別の実施形態において、タンパク質分解阻害剤も血液採取デバイス中に提供し、または、このタンパク質分解阻害剤を、タンパク質分解によって血小板機能マーカーを可溶化した後に該デバイス中のサンプルに添加することができる。例えば、上記の阻害剤は、本発明のデバイスに手動で(例えば注射器を用いて)添加し得る。このようにして、特に所定の時間後にタンパク質分解を停止させることができる。
【0184】
さらに特定の実施形態において、本発明のデバイスは、血小板含有サンプルの添加後および血小板機能マーカーまたはその変異体を溶液化した後に血小板含有サンプル中への上記の阻害剤の放出を可能とする様式でタンパク質分解阻害剤を含む。より具体的には、上記のタンパク質分解阻害剤は、放出可能な様式で、または特定時間後の放出に備えた様式で提供することができる。例えば、上記の阻害剤は、サンプルとの特定の接触時間後の放出を可能とする分離手段によって(例えば上記の分離手段を手動で除去または破壊することにより)サンプルから分離することができる。上記の分離手段は、サンプル(例えば水溶液)と所定の時間接触すると溶解もし得る。上記の所定の時間は、本明細書中で言及される、血小板機能マーカーを可溶化するのに好適な時間に対応することが好ましい。上記の分離手段は、例えば上記の阻害剤を分離またはカプセル化する固体材料、ゲル、または膜であってよい。
【0185】
本発明は、液体サンプル用容器または1つ以上の容器を含む液体採取デバイスであって、上記の容器はサンプル(好ましくは血液サンプル)を受けるためのリザーバ部を有し、該容器は1種以上の物質を含有する1つ以上の個別チャンバーをさらに有し、該個別チャンバーは、該サンプルを受けた後、時間遅延を伴って該個別チャンバーから該容器のリザーバ部内のサンプル中へ該1種以上の物質を放出させるために開き得る分離手段によって閉じられている、上記の液体サンプル用容器または液体採取デバイスにも関する。
【0186】
上記の分離手段を有する上記の個別チャンバーは、サンプルがリザーバ部中に特定の時間存在した後、上記のリザーバ部内のサンプル中へ1種以上の物質を放出することを可能とする。この特定時間後に上記の分離手段が開き、これにより該個別チャンバーの内容物をサンプル中へ放出することが可能となる。上記の所定の時間は、サンプルと、該リザーバ部中に提供される試薬との反応が起こるのに好適な時間に対応することが好ましい。
【0187】
1つの好適な実施形態において、本発明による、液体サンプルを受ける容器のリザーバ部(サンプリングリザーバ)は、1種以上の物質を含む。上記のリザーバ部内に含まれるこの物質(1つまたは複数)は、好ましくは、該容器が該サンプルを受けた場合または該容器が該液体サンプルを受けた後に閉じられた場合に、上記の液体サンプルと接触する。上記の物質は、例えば、薄層として容器の内壁または容器内のピストン上にスプレーし得る。上記の容器のリザーバ部に含まれる1種以上の物質は(限定するものではないが)、血小板活性化因子、抗凝血剤、標識、緩衝液、栄養物、抗体、アプタマー、吸着面、触媒、酵素、阻害剤および薬剤からなる群から選択されることが好ましい。
【0188】
血小板活性化因子、標識および抗凝血剤の例は、本発明による方法に関して既に上述されている。緩衝液は、例えば、pH、塩濃度、浸透圧または細胞溶解を維持するために使用される物質である。好適な緩衝液の例としては、限定するものではないが、PBS、NaCl、HEPES、コハク酸塩およびクエン酸塩が挙げられる。容器内の栄養物は、細胞安定化に使用してもよい。好適な栄養物の例としては、限定するものではないが、グルコース、アデノシン、デキストロースまたは乳酸塩が挙げられる。容器内の抗体およびアプタマーは、例えば、特異的タンパク質、分子またはマーカーの認識または結合の機能を有する。好適な抗体およびアプタマーの例としては、限定するものではないが、CD40Lに対する抗体またはアプタマー、sCD40L、P-セレクチン(CD62)、糖タンパク質IV(GP-IV)、糖タンパク質V(GP-V)、糖タンパク質VI(GP-VI、p62としても公知)、CD63(顆粒糖タンパク質)、β-トロンボグロブリン(β-TG)、血小板因子4(PF-4)が挙げられる。吸着面は、例えば、分子の結合、不活性化または中和のための面である。好適な吸着面の例としては、限定するものではないが、イオン交換樹脂、吸着面でコーティングした磁性ビーズ/磁性流体、銅、グラファイト、またはポリマー材料が挙げられる。触媒は、分子の化学反応または誘導体化を促進するために容器内で使用することができる。好適な触媒の1つの例は(限定するものではないが)、白金である。リザーバ部内の酵素は、例えば、色、発光、pH、酸素または過酸化物による定量化のための二次反応を安定化させ、阻害しまたは生成することを目的とした基質または生体分子の改変に使用される物質である。リザーバ部内の阻害剤は、好ましくは、不要な反応を停止させるため、また分析物を安定化させるために用いられる。好適な阻害剤の例は、本発明の方法に関して既に上述されており、例えば、限定するものではないが、メタロプロテイナーゼ阻害剤、セリン-トレオニンプロテアーゼ阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。上記の容器のリザーバ部内の薬は、例えば、血小板を安定化させるための薬であり、限定するものではないが、テオフィリン、アデノシン、ジピラミドールおよびアセチルサリチル酸が挙げられる。
【0189】
上記の個別チャンバー内の1種以上の物質は、好ましくは1つ以上の試薬または溶媒である。好ましくは、上記の容器の個別チャンバー中に含まれる1種以上の物質は(限定するものではないが)、血小板活性化因子、抗凝血剤、標識、緩衝液、栄養物、抗体、アプタマー、吸着面、触媒、酵素、阻害剤および薬剤からなる群から選択される。
【0190】
血小板活性化因子、標識および抗凝血剤の例は、本発明による方法に関して既に上述されている。緩衝液は、例えば、pH、塩濃度、浸透圧または細胞溶解を維持するために使用される物質である。好適な緩衝液の例としては、限定するものではないが、PBS、NaCl、HEPES、コハク酸塩およびクエン酸塩が挙げられる。個別チャンバー内の栄養物は、細胞安定化に使用してもよい。好適な栄養物の例としては、限定するものではないが、グルコース、アデノシン、デキストロースまたは乳酸塩が挙げられる。個別チャンバー内の抗体およびアプタマーは、例えば、特異的タンパク質、分子またはマーカーの認識または結合の機能を有する。好適な抗体およびアプタマーの例としては、限定するものではないが、CD40Lに対する抗体またはアプタマー、sCD40L、P-セレクチン(CD62)、糖タンパク質IV(GP-IV)、糖タンパク質V(GP-V)、糖タンパク質VI(GP-VI、p62としても公知)、CD63(顆粒糖タンパク質)、β-トロンボグロブリン(β-TG)、血小板因子4(PF-4)が挙げられる。吸着面は、例えば、分子の結合、不活性化または中和のための面である。好適な吸着面の例としては、限定するものではないが、イオン交換樹脂、吸着面でコーティングした磁性ビーズ/磁性流体、銅、グラファイト、またはポリマー材料が挙げられる。触媒は、分子の化学反応または誘導体化を促進するために個別チャンバー内で使用することができる。好適な触媒の1つの例は(限定するものではないが)、白金である。個別チャンバー内の酵素は、例えば、色、発光、pH、酸素または過酸化物による定量化のための二次反応を安定化させ、阻害しまたは生成することを目的とした基質または生体分子の改変に使用される物質である。個別チャンバー内の阻害剤は、好ましくは、不要な反応を停止させるため、また分析物を安定化させるために用いられる。好適な阻害剤の例は、本発明の方法に関して既に上述されており、例えば、限定するものではないが、メタロプロテイナーゼ阻害剤、セリン-トレオニンプロテアーゼ阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。上記の容器の個別チャンバー内の薬は、例えば、血小板を安定化させるための薬であり、限定するものではないが、テオフィリン、アデノシン、ジピラミドールおよびアセチルサリチル酸が挙げられる。
【0191】
本発明の特に好適な実施形態において、上記の容器の個別チャンバー中に含有される1種以上の物質は(限定するものではないが)、緩衝液または緩衝塩、キレート剤(例えばEGTA、EDTA、BAPTA、EGTA-AM、EDTA-AM、BAPTA-AM等)、抗酸化剤(αトコフェロール、アスコルビン酸等)、血小板機能阻害剤(例えば、アデノシン、テオフィリン、フォルスコリン、ジピリダモール、アスピリン、テルボグレル、BM567プロスタグランジンE、プロスタグランジン12またはその類似体(例えばイロプロスト、ベラプロスト)等)、糖タンパク質Hb-IIIa受容体遮断薬(チロフィバン、アブシキマブ、エプチフィバチド、ラミフィバン等)、ADP受容体遮断薬(Me-S-AMP、アデノシン-3'-ホフェート-5'-ホスフェート等)、アクチン重合阻害剤(サイトカラシンD等)、プロテアーゼ阻害剤(例えばアプロチニン、GM6001(ガラルジン)などのメタロプロテイナーゼ阻害剤等)、キナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤(スタウロスポリン、メチル-2,5-ジヒドロキシシナメート、ビシンドイルマレイミドI等)、完全なまたは部分的な血液細胞溶解を引き起こす試薬(例えば塩化アンモニウム等)、変性剤(例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等)、リザーバ部中での血小板と活性化剤との接触中に放出されるマーカーに対する特異的抗体からなる群から選択される。
【0192】
本発明による液体採取デバイス(例えば血液採取デバイス)および1つ以上の個別の個別チャンバーを備えた容器は、該デバイス内で、サンプルが特定の時間容器中に存在した後に、該容器を開ける必要なく、場合によっては使用者による任意の手動操作の必要性すらなくこのサンプルが反応(例えばサンプルの安定化または二次分析物もしくは誘導体の生成)を受けることを可能とするという利点を有する。本発明は、上記の容器内で、特定時間後に、後でサンプルを分析するときにはもはや不可能な反応を行うことを可能とする。可能性のある反応は、例えば、特定の成分を前分画するための反応、赤血球成分の存在下で抗原抗体複合体を産生する反応、吸収処理を開始するための反応、妨害因子を中和するための反応、または分析物を表面もしくはマトリクスに結合させるための反応である。
【0193】
上記の分離手段は、手動でもしくは自動で、機械的もしくは化学的に開放し、除去し、または破壊することが可能であって、開放され、除去され、または破壊される前には個別チャンバーの内容物を容器中のサンプルから安全に分離する、当業者に公知の任意の手段であってよい。典型的には、この分離手段は、個別チャンバーの開口部を閉鎖する膜、固体材料またはゲルであってよい。
【0194】
第1の実施形態において、本発明による個別チャンバーを備えた容器およびかかる容器を備えた液体(例えば血液)採取デバイスは、
a) 抗凝血剤、
b) 血小板活性化因子および/またはプロテアーゼ、
c) 場合により血小板活性化阻害剤および/またはタンパク質分解阻害剤、ならびに
d) 場合により線維素溶解の阻害剤
を含む。
【0195】
サンプルを上記の容器中に充填する前に、1つ以上の抗凝血剤、血小板活性化因子、およびプロテアーゼを容器内(最も好ましくは該容器のリザーバ部中)に提供しておくことが好ましい。血液サンプルが採取されて該容器のリザーバ部に受けられると、このサンプルは、リザーバ部中の抗凝血剤、および/または血小板活性化因子、および/またはプロテアーゼと混合される。
【0196】
好ましくは、上記の個別チャンバーは、血小板機能阻害剤、および/またはタンパク質分解阻害剤を含む。特定時間後に上記の分離手段を開放すると、サンプル中で血小板機能マーカー、またはその変異体を溶液化した後に、時間遅延を伴ってこれらの阻害剤を該サンプル中に放出することが可能となる。
【0197】
本発明の1つの実施形態において、上記の分離手段は、リザーバ部内でサンプルと接触すると溶解する材料で作製される。サンプルと接触すると溶解する材料は、当業者に周知である。好ましくは、上記の分離手段は、液体サンプルと接触すると溶解する材料で出来た小さなカプセルの形に設計される。このカプセルは、好ましくは、液体サンプルを受ける該容器のリザーバ部内に位置する。上記のカプセルは、各カプセルの内側の小さな個別チャンバー内に1種以上の物質を含み、この物質は、上記のサンプルが該容器のリザーバ部中に特定の時間存在した後、個別チャンバーを取り囲む材料が溶解するとサンプル中に放出される。
【0198】
別の実施形態において、上記の容器は、容器中にサンプルを引き込むために容器内で軸方向に変位可能な、一端に取り付けられたピストンを備えたプランジャーを含み、プランジャーの軸方向の変位は、分離手段の破壊または変形を生じさせ、これにより(好ましくは規定された時間遅延を伴って)個別チャンバーを開放し、時間遅延を伴って、リザーバ部内のサンプル中に1種以上の物質を放出する。容器内のプランジャーは、サンプルを注射器内に引き込むために使用される注射器のプランジャーに相当する。
【0199】
第1の実施形態において、上記のピストン自体が分離手段によって閉鎖された個別チャンバーを(例えばピストン内に)含む。この個別チャンバーは、例えば、バネ手段(分離手段に作用し、一定の張力に達したときに上記の分離手段を破壊する)の張力を高める容器内でのプランジャーの軸方向の変位によって容器の内側に開くことができる。個別チャンバーを開くことの別の可能性は、例えば、サンプルおよび/または1種以上の物質によって上記の分離手段(増加した圧力が特定の値に到達すると破壊される)に加えられる圧力の増加を生じさせ、これにより時間遅延を伴って1種以上の物質をリザーバ部内のサンプル中に放出させる、容器内でのプランジャーの軸方向の変位である。
【0200】
第2の実施形態において、上記のピストンは、液体サンプルを容器中に引き込んだ後に該容器内でプランジャーが特定の位置に到達すると、例えば部分的に破壊され、またはこれを通して通路が開かれる、個別チャンバーを閉鎖する分離手段として使用される。この通路は、上記のピストンにカニューレで穴を開けるによって開くことが可能であり、その後この通路を通じて、上記の物質を個別チャンバーからリザーバ部内のサンプル中へ輸送することができる。
【0201】
別法として、上記の容器は、真空採取管(ゴムで密閉された真空を含む管であって、このゴムに針で穴が開けられると、サンプルをリザーバ部の中へ引き込む)と同様に機能することができる。真空採取管内の個別チャンバーを閉鎖している上記の分離手段は、例えば、容器中に押し込まれると分離手段を変位または破壊する押しエレメント(例えば穴開け針)を用いて破壊することができる。この押しエレメントの動作は、手動または自動で行うことができる。
【0202】
別の実施形態において、上記の個別チャンバーを備える本発明の液体採取デバイスは、該容器のリザーバ部内にサンプルが入った後に1つ以上の容器を受けて保持する保持エレメントであって、該容器がこの保持エレメント中に配置されると上記の分離手段を自動的に破壊し、これにより、時間遅延を伴って、上記の個別チャンバーからリザーバ部内のサンプル中へと1種以上の物質を放出する、上記の保持エレメントをさらに含む。保持エレメントは、例えば、複数の容器を受けて保持するためのラックである。
【0203】
本発明はまた、液体サンプル用容器、または1つ以上の容器を含む液体採取デバイス(例えば血液採取デバイス)であって、該容器はサンプル(好ましくは血液サンプル)を受けるためのリザーバ部を有し、この容器が、サンプル中に徐々に放出される1種以上の物質(例えば、膜小胞中に含まれているコーティングされた徐放製剤、pH、H2Oまたはサンプル中に含まれる酵素(例えばエステラーゼ)による不活性化合物の活性化)をさらに含む、上記の液体サンプル用容器または1つ以上の容器を含む液体採取デバイスにも関する。上記の物質は、リザーバ部中の容器内壁上に薄層としてスプレーし、自由に動くビーズまたは該容器の壁またはピストンに付着している半粘性液体の液滴から放出させることができる。好ましくは、この物質は、場合により血小板活性化阻害剤および/またはタンパク質分解阻害剤であり、また場合により線維素溶解阻害剤である1種以上の阻害剤を含むことが好ましい。
【0204】
本発明は、(a)血液採取デバイスおよび/または本明細書中で説明される他の任意のデバイス、(b)血小板活性化因子、(c)場合により抗凝血剤、(d)場合により血小板活性化阻害剤、および(e)場合により線維素溶解阻害剤を含むキットの使用にも関する。
【0205】
上記のキットは、本明細書中の他の箇所に定義される血小板機能マーカーを測定するための手段または薬剤も含み得る。このような手段または薬剤は、当業者に公知の任意の好適な手段または薬剤であってよい。かかる手段または薬剤ならびにこれらの使用法の例は、本明細書中に記載されている。例えば、好適な薬剤は、血小板機能マーカー(例えばsCD40LまたはP-セレクチン)に特異的に結合し得る任意の種類のリガンドまたは抗体であってよい。このキットは、各生体マーカーのレベルの測定に関して適切であると考えられる他の任意の成分(例えば好適な緩衝液、フィルター等)も含み得る。
【0206】
場合により、本発明の血液採取デバイス、採血管、またはキットは、血小板機能、血小板機能不全、血小板が刺激される機能不全の診断、または本明細書中に説明される任意の他の診断または使用に関する任意の測定の結果を説明するための使用説明書を付加的に含み得る。特に、かかる使用説明書は、どの測定レベルが、血小板機能のどの程度に対応し、またはどの種類の診断(例えば機能不全有りまたは無し)に対応するのかに関する情報を含むことができる。さらに、かかる使用説明書は、血小板サンプルを採取し、および/または血小板を活性化させ、および/または各血小板機能マーカーのレベルを測定するためのキットの構成要素の正しい使用に関する指示を提供し得る。特に、この使用説明書は、血小板活性化が止まるまでに必要とされる時間に関する指示を提供することができる。
【0207】
本発明は、血小板機能、血小板機能不全、もしくは血小板が刺激される機能不全を診断するための上記の血液採取デバイス、採血管、もしくはキットの使用、または本明細書中に説明される任意の他の診断もしくは使用にも関する。
【0208】
本発明はまた、本明細書または実施例において言及される任意の組成物ならびにかかる組成物を含む任意のサンプルにも関する。本発明は、このような組成物またはサンプルの任意の好適な実施形態(例えば本明細書または実施例のいずれかにおいて言及される特定の濃度または組み合わせ)にも関する。
【実施例】
【0209】
実施例1
前10日間に抗血小板薬を全く摂取していない2人の健康な被験体からクエン酸塩-抗凝固血液を採取した。全血を9g/lで希釈(1:1)し、4チャンネルインピーダンス凝集測定(Chrono-Log 560CAおよび590、Havertown, PA, U.S.A.)により、製造者の使用説明書に従って分析した。凝集測定用の試薬は、Chono-Logから入手した。血小板凝集は、コラーゲンまたはアデノシンジホスフェート(ADP)の添加により開始させ、それぞれ最終濃度1μg/mlまたは5μMを得た。3つのチャンネルにおいて、糖タンパク質Ilb/IIIa阻害剤チロフィバンを添加して直ぐに遠心分離(室温において、13.000rpmで20分)することにより、0.5、1、および3分後にそれぞれ凝集を停止させた。最後のチャンネルにおいて、凝集は、インピーダンス(オーム)の増加として続いた。6分後、このチャンネル中で上記のように凝集を停止させた。もう1つの希釈血液サンプルは直ぐに凝集を停止させた(ベースライン、0分サンプル)。遠心分離後、Elecsys2010自動分析装置(Roche Diagnostics GmbH, Germany)用アッセイを用いて、サンプル上清中でsCD40Lを測定した。結果は表1に示す。
【表1】

【0210】
実施例2
全血凝集中のsCD40L可溶化の増大。図1参照。前10日間に抗血小板薬を全く摂取していない1人の健康な被験体からクエン酸塩-抗凝固血液を採取した(図1)。全血を9g/lのNaCl2で希釈(1:1)し、4チャンネルインピーダンス凝集測定(Chrono-Log 560CAおよび590、Havertown, PA, U.S.A.)により、製造者の使用説明書に従って分析した。凝集測定用の試薬は、Chono-Logから入手した。血小板凝集は、コラーゲン(グラフA、B)またはアデノシンジホスフェート(ADP、グラフC、D)の添加により開始させ、それぞれ最終濃度1μg/mlまたは5μMを得た。3つのチャンネルにおいて、糖タンパク質Ilb/IIIa阻害剤チロフィバンを添加して直ぐに遠心分離(室温において、13.000rpmで20分)することにより、0.5、1、および3分後にそれぞれ凝集を停止させた。最後のチャンネルにおいて、凝集は、各グラフ中の線として示されるインピーダンス(オーム)の増加として続いた。6分後、このチャンネル中で上記のように凝集を停止させた。もう1つの希釈血液サンプルは直ぐに凝集を停止させた(ベースライン、0分サンプル)。遠心分離後、Elecsys2010自動分析装置(Roche Diagnostics GmbH, Germany)用アッセイを用いて、サンプル上清中でsCD40Lを測定した。sCD40L濃度は、凝集を停止させた時点に配置される棒により各グラフ中に示される。
【0211】
実施例3
全血凝集中の、血小板アゴニストであるコラーゲン(図2、グラフA、C)およびアデノシンジホスフェート(ADP)(図2、グラフB、D)に応答したsCD40L可溶化の増大。凝集およびsCD40Lの可溶化は、2種類の公知の血小板活性化および凝集の阻害剤(すなわち、0.1mMの、図2のアスピリン(グラフC)および0.1mMのMe-S-AMP(メチル-S-アデノシンモノホスフェート(Sigma-Aldrich Inc.)、図2、グラフD)と共にプレインキュベーション(室温で20分)した後、一致して顕著に低下する。
【0212】
前10日間に抗血小板薬を全く摂取していない1人の健康な被験体からクエン酸塩-抗凝固血液を採取した。全血を9g/lのNaClで希釈(1:1)し、4チャンネルインピーダンス凝集測定(Chrono-Log 560CAおよび590、Havertown, PA, U.S.A.)により、製造者の使用説明書に従って分析した。凝集測定用の試薬は、Chono-Logから入手した。血小板凝集は、コラーゲン(図2、グラフA、C)またはアデノシンジホスフェート(ADP)、(図2、グラフB、D)の添加により開始させ、それぞれ最終濃度1μg/mlまたは5μMを得た。3つのチャンネルにおいて、糖タンパク質Ilb/IIIa阻害剤チロフィバンを添加して直ぐに遠心分離(室温において、13.000rpmで20分)することにより、0.5、1、および3分後にそれぞれ凝集を停止させた。最後のチャンネルにおいて、凝集は、各グラフ中の線として示されるインピーダンス(オーム)の増加として続いた。6分後、このチャンネル中で上記のように凝集を停止させた。もう1つの希釈血液サンプルは直ぐに凝集を停止させた(ベースライン、0分サンプル)。遠心分離後、Elecsys2010自動分析装置(Roche Diagnostics GmbH, Germany)用アッセイを用いて、サンプル上清中でsCD40Lを測定した。sCD40L濃度は、凝集を停止させた時点に配置される棒により各グラフ中に示される。
【0213】
実施例4
全血凝集(図3、左グラフ)および凝集中のsCD40L可溶化(図3、右グラフ)は、2種類の公知の小板凝集阻害剤(すなわち、シクロオキシゲナーゼ1阻害剤であるアスピリンまたはトロンボキサンA2受容体遮断薬であるテルボグレル)と共にインキュベーションした後、顕著に阻害される。凝集(6分のインピーダンス)および6分の凝集後のsCD40L濃度をボックスプロットで示す。
【0214】
前10日間に抗血小板薬を全く摂取していない14人の健康な献血者からクエン酸塩-抗凝固血液を採取した。複数の全血サンプルのアリコートを9g/lのNaCl、アスピリン(0.1 mM)と共に、または一部のサンプルにおいてはテルボグレル(0.01 mM)と共にインキュベートした(室温で20分)。その後、複数のアリコートを9g/lのNaClで希釈(1:1)し、4チャンネルインピーダンス凝集測定(Chrono-Log 560CAおよび590、Havertown, PA, U.S.A.)により、製造者の使用説明書に従って分析した。凝集測定用の試薬は、Chono-Logから入手した。血小板凝集は、コラーゲンの添加により開始させ、最終濃度1μg/mlを得た。その後、インピーダンス(オーム)の増加として凝集をモニターした。6分後、糖タンパク質Ilb/IIIa阻害剤チロフィバンを添加して直ぐに遠心分離(室温において、13.000rpmで20分)することにより、凝集を停止させた。遠心分離後、Elecsys2010自動分析装置(Roche Diagnostics GmbH, Germany)用アッセイを用いて、サンプル上清中でsCD40Lを測定した。ウィルコクソン符号順位検定(Wilcoxon-signed rank test)を用いて統計的分析を行った。
【0215】
実施例5
急性冠症候群(ACS)に罹患している患者(n=6)から採取された血液サンプル中の、トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP, Sigma-Aldrich Inc.)によって誘導された血小板活性化後のsCD40L濃度。不安定狭心症(UA)、非STセグメント上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、およびSTセグメント上昇型心筋梗塞(STEMI)を示している患者から、クエン酸塩-抗凝固血液サンプルを採取した。全患者は、採取の30分以上前にアスピリン(500mgの静脈注射)およびヘパリン(5000Uのボーラス静脈注射)の投与を受けた。複数のサンプルのアリコートを、2μMのTRAPと共に、それぞれ室温で2分間および60分間インキュベートし、その後直ぐに遠心分離した(室温において、13.000rpmで20分間)。ベースライン値は、血液採取直後に血液サンプルを遠心分離することによって得た。遠心分離後、Elecsys2010自動分析装置(Roche Diagnostics GmbH, Germany)用アッセイを用いて、サンプル血漿中でsCD40Lを測定した。結果を図4に示す。
【0216】
実施例6
血小板活性化の遅延がトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、(図5、A)、10μMのADP(図5、B)、または1μg/mlのコラーゲン(図5、C)を用いて達成されたsCD40L可溶化に及ぼす影響。血小板活性化によるsCD40Lの可溶化は、サンプル処理の遅れによって最も影響を受け、アゴニストまたは抗凝血剤の選択によってはほとんど影響を受けなかった。
【0217】
前10日間に抗血小板薬を全く摂取していない1人の健康な献血者からクエン酸塩-およびヘパリン-抗凝固血液を採取した。サンプルは、直ぐにさらに処理し(0時間)、または室温で0.5、1、3、または6時間放置した。次いで、サンプルを2μMのTRAPと共に10分間インキュベートし、その後遠心分離した(室温において、13.000rpmで20分)。遠心分離後、Elecsys2010自動分析装置(Roche Diagnostics GmbH, Germany)用アッセイを用いて、サンプル上清中でsCD40Lを測定した。結果を図5に示す。
【0218】
実施例7
血小板アゴニストであるコラーゲンに応答した全血凝集中の糖タンパク質V(sGpV)の可溶化の増大の説明。図6参照。凝集およびsCD40Lの可溶化は、公知の血小板凝集阻害剤であるアスピリン(0.1mM、グラフC、D)と共にプレインキュベーション(室温で20分)した後、一致して顕著に低下した。
【0219】
前10日間に抗血小板薬を全く摂取していない2人の健康な被験体(それぞれA、CおよびB、D)からクエン酸塩-抗凝固血液を採取した。全血を9g/lのNaClで希釈(1:1)し、4チャンネルインピーダンス凝集測定(Chrono-Log 560CAおよび590、Havertown, PA, U.S.A.)により、製造者の使用説明書に従って分析した。凝集測定用の試薬は、Chono-Logから入手した。血小板凝集は、コラーゲンの添加により開始させ、最終濃度1μg/mlを得た。3つのチャンネルにおいて、糖タンパク質Ilb/IIIa阻害剤チロフィバンを添加して直ぐに遠心分離(室温において、13.000rpmで20分)することにより、0.5、1、および3分後にそれぞれ凝集を停止させた。最後のチャンネルにおいて、凝集は、図6の各グラフ中の線として示されるインピーダンス(オーム)の増加として続いた。6分後、このチャンネル中で上記のように凝集を停止させた。遠心分離後、Elecsys2010自動分析装置(Roche Diagnostics GmbH, Germany)用アッセイを用いて、サンプル上清中でsCD40Lを測定した。sCD40L濃度は、凝集を停止させた時点に配置される棒によって図6の各グラフ中に示される。
【0220】
実施例8
糖タンパク質(Gp)Ilb/IIIa受容体遮断薬であるチロフィバンによるsCD40L可溶化の濃度依存性阻害。図7参照。
【0221】
前10日間に抗血小板薬を全く摂取していない1人の健康な被験体からクエン酸塩抗凝固血液(図7、右グラフ)およびヘパリン抗凝固血液(図7、左グラフ)を採取した。複数のサンプルのアリコートを、チロフィバンの減少濃度(500、250、125、75、37.5、0μg/ml)の存在下で、トロンビン受容体活性化ペプチド(2μM、TRAP)と共にインキュベートし(15分、室温)、その後遠心分離した(室温において、13.000rpmで20分)。遠心分離後、Elecsys2010自動分析装置(Roche Diagnostics GmbH, Germany)用アッセイを用いて、サンプル上清中でsCD40L濃度を測定した。
【0222】
図8〜13の説明
図8は、本発明による採取デバイスの第1の実施形態を示す。
【0223】
この採取デバイスは、液体サンプル(特に血液サンプル)の吸入用の吸入部2と、サンプルを受けるリザーバ部3とを備えた容器1を含む常用の採取注射器の様式に設計されている。容器1は、液体サンプルを、吸入部2を通して容器1のリザーバ部3の中へと矢印14の方向に引き込むために、容器1のリザーバ部3内で矢印12の方向へ軸方向に変位可能なピストン11を備えたプランジャー4を含む。プランジャー4は、手動または自動で矢印12の方向に動かすことができる。
【0224】
上記の採取デバイスは、リザーバ部3内に第1の物質5を含有し、この第1の物質5は、サンプルがリザーバ部3の中に引き込まれると、直接サンプルと接触する。図8による採取デバイスにおいて、第1の物質5は、容器1の内壁に薄層10としてスプレーされ、またはピストン11上の半粘性液体である液滴13に付着される。上記の第1の物質5は、抗凝血剤、血小板活性化因子および/またはプロテアーゼを含む。
【0225】
さらに上記の採取デバイスは、リザーバ部3内に第2の物質6を含有し、この第2の物質6は、時間遅延を伴ってサンプル中に放出される。第2の物質6は、小カプセル7の中にカプセル化されている。各カプセル7は、第2の物質6を含有し分離手段15として使用される個別チャンバー9を囲む材料8を含む。材料8は、液体サンプル(例えば血液サンプル)と接触すると溶解し、これにより、時間遅延を伴って個別チャンバー9から液体サンプル中へと第2の物質6を放出する。第2の物質6は、1種以上の阻害剤を含む。第2の物質6は、場合により血小板活性化阻害剤および/またはタンパク質分解阻害剤ならびに場合により線維素溶解阻害剤を含む。
【0226】
図9.1および9.2は、本発明による採取デバイスの第2の実施形態を示す。
【0227】
図9.1および9.2による採取デバイスは、図8による採取デバイスと本質的に類似している。第1の物質(図示せず)は、容器1のリザーバ部3内に含有され得る。しかし、図9.1および9.2による採取デバイスは、第2の物質6を含有する第2のリザーバ16を形成する個別チャンバー9を含み、この第2の物質6は、時間遅延を伴ってリザーバ部3の中のサンプル中へ放出される。第2のリザーバ16の壁17は、分離手段15として使用される。上記の第2のリザーバ16は、容器1のリザーバ部3とは離れた側でピストン11に取り付けられている。その結果、第2の物質6を含有する上記の個別チャンバー9は、矢印12の方向に動くプランジャー4を用いて動かされるピストン11の一部を形成する。第2のリザーバ16は、比較的丈夫な壁17(例えばポリプロピレン製)と細いチャンネル18とを有し、この細いチャンネル18を通じて、第2の物質6(例えば、緩衝血小板阻害剤、安定化剤、抗体、アプタマー等を含有する停止液)は、第2のリザーバ16を圧縮(例えば手動圧縮)したときに、時間遅延を伴ってリザーバ部3の中へと放出され得る。ゴム環19は容器1の内壁上に固定され、全サンプル量がリザーバ部3の中に引き込まれたとき、また第2のリザーバ16の圧縮が達成されたときに、操作者へのシグナルまたは自動操作デバイスの力センサーに対して力のフィードバック(ピストン11の操作中に克服すべき抵抗)を与える。液体サンプルを容器1の中に吸入する前の、第2の物質6を含有する第2のリザーバ16を図9.1に示す。図9.2には第2のリザーバ16の圧縮の達成を見ることができる。第2の物質6はリザーバ部3の中に放出され、ここでサンプル(図示せず)と混合される。
【0228】
図10.1、10.2および10.3は、本発明による採取デバイスの第3の実施形態を示す。
【0229】
図10.1〜10.3による採取デバイスは、図9.1および9.2に示される採取デバイスと本質的に類似する。リザーバ部3、第2のリザーバ16およびピストン11を備えた採取デバイスは、手動または自動で操作され、第2のリザーバ16がゴム環19によって止められるまでサンプル20をリザーバ部3の中へと引き込む。サンプル20をリザーバ部3の中へ引き込んだ後(図10.2に示すとおり)、容器1は、容器1を受けて保持するための保持エレメント21の中へと導入される。保持エレメント21は、図10.3に概略的に示されるように、プランジャー4を自動的に操作し、これによりピストン11を操作することによって特定の所定時間後に第2のリザーバ16の圧縮を達成する、追加の技術的装置である。第2のリザーバ16の圧縮は、リザーバ部3の中への第2の物質6の放出をもたらし、ここで第2の物質6はサンプル20と混合される。
【0230】
別法として、上記の技術的装置(保持エレメント21)が、所定の時間後に主サンプル20と接触させるべき物質(例えば、緩衝血小板阻害剤、安定化剤、抗体、アプタマー等を含有する停止液)を、容器1を上端で密閉するゴムストッパー22に穴を開ける針(図示せず)を用いて自動的に注入することが考えられる。
【0231】
図11.1、11.2および11.3は、本発明による採取デバイスの第4の実施形態の概略図を示す。
【0232】
この採取デバイスは、液体サンプル20(特に血液サンプル)の吸入用の吸入部2と、サンプルを受けるリザーバ部3とを備えた容器1を含む真空採血管(BD Vacutainer(登録商標)と同様)の様式に設計されている。図11.2に示すように、液体サンプル20は、真空によって、吸入部2のゴムストッパー27を通して容器1のリザーバ部3の中へと引き込むことができる。
【0233】
上記の採取デバイスは、リザーバ部3内に第1の物質5を含有し、この第1の物質5は、サンプル20がリザーバ部3の中へと引き込まれると、直接サンプル20と接触する。図11.1による採取デバイスにおいて、第1の物質5は、例えば容器1の内壁上に薄層としてスプレーすることができる。第1の物質5は、例えば、抗凝血剤、血小板活性化因子および/またはプロテアーゼを含む。
【0234】
さらに、この採取デバイスは、個別チャンバー9内に第2の物質6を含み、第2の物質6は、時間遅延を伴ってサンプル20の中に放出される。第2の物質6は、分離手段15によってリザーバ部3から隔てられる。図11.3に示すように、分離手段の材料は、液体サンプル20(例えば血液サンプル)と接触すると溶解し、これにより時間遅延を伴って個別チャンバー9から液体サンプル20の中へと第2の物質6を放出する。第2の物質6は、例えば、1種以上の阻害剤を含有する。第2の物質6は、場合により血小板活性化阻害剤および/またはタンパク質分解阻害剤ならびに場合により線維素溶解阻害剤を含み得る。
【0235】
図12.1および12.2は、本発明による採取デバイスの第5の実施形態の概略図を示す。
【0236】
図12.1および12.2による採取デバイスは、図11.1〜11.3による採取デバイスと本質的に類似している。しかし、図12.1および12.2による採取デバイスは、第2の物質6をリザーバ部3から隔て、サンプル20と接触しても溶解しない分離手段15を含む(図12.1参照)。第2の物質6は、押しエレメント23(例えば穴開け針)を用いて分離手段15(例えば膜)を破壊しまたは変位させる(図12.2参照)ことにより、時間遅延を伴って個別チャンバー9からリザーバ部3内のサンプル20の中へと放出される。この押しエレメント23は、分離手段15を開くために、手動または自動で矢印24の方向に動かすことができる。
【0237】
図13は、本発明による採取デバイスの第6の実施形態の概略図を示す。
【0238】
図13による採取デバイスは、図11.1〜12.2による採取デバイスと本質的に類似している。サンプル20をリザーバ部3の中へと引き込んだ後(図11.2に示すとおり)、容器1は、この容器1を受けて保持するための保持エレメント21の中へと導入される。この保持エレメント21は、特定の所定時間後の押しエレメント23の動作26を、図13に概略的に示されるように押しエレメント23を自動的に操作することによって達成する、追加の技術的装置である。押しエレメント23の自動的な押しは、分離手段15の破壊または変位をもたらし、これにより個別チャンバー9からリザーバ部3の中へ第2の物質6を放出させ、ここで第2の物質6はサンプル20と混合される。この混合は、容器1を回転方向25に回転させる保持エレメント21を用いて自動的にも達成される。
【符号の説明】
【0239】
1 容器
2 吸入部
3 リザーバ部
4 プランジャー
5 リザーバ部の中の第1の物質
6 第2の物質
7 カプセル
8 材料
9 個別チャンバー
10 薄層
11 ピストン
12 矢印
13 液滴
14 矢印
15 分離手段
16 第2のリザーバ
17 第2のリザーバの壁
18 チャンネル
19 ゴム環
20 サンプル
21 保持エレメント
22 ゴムストッパー
23 押しエレメント
24 矢印
25 回転方向
26 押しエレメントの動作
27 ゴムストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板機能を診断する方法であって、
a) 被験体から全血サンプルを採取し、さらにフィブリン形成を阻害し且つその血小板に由来する血小板機能マーカーまたはかかるマーカーの変異体を溶液化し得る条件下で該サンプルを保持するステップと、
b) 該溶液中で、可溶化された血小板機能マーカーの濃度を測定するステップ、
を含んでなる、上記方法。
【請求項2】
ステップ(a)において、サンプルを血小板活性化因子またはプロテアーゼと接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)において、サンプルを抗凝血剤と接触させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
追加の:
c) 好ましくは所定の時間後に反応を停止させるステップ
を含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記マーカーが、in vivoにおける血小板刺激の異なる程度に相関して特異的に発現し、ここで該特異的に発現したマーカーは、in vitroでの活性化後に該血小板から放出され得る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
血小板機能マーカーが、CD40L、sCD40L、P-セレクチン、可溶性P-セレクチン、GP-IV、可溶性GP-IV、GP-V、可溶性GP-V、GP-VI、可溶性GP-VI、CD63、血小板因子4(PF-4)、β-トロンボグロブリン(β-TG)、またはこれらの任意の変異体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、in vivoでの血小板刺激の程度を診断するために使用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、血小板機能低下または血小板機能亢進を診断するために使用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
血小板機能マーカーの測定レベルを、血小板機能低下または血小板機能亢進を示す参照レベルと比較するステップを含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、血小板表面上に存在するsCD40Lのレベルを測定することにより診断可能な疾患を診断するために使用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患が、心血管疾患、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、HELLP症候群、および血栓性微小血管症からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)が、線維素溶解を阻害し得る条件下でサンプルを保持するステップも含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
サンプルが、該サンプルと線維素溶解阻害剤とを接触させることにより線維素溶解を阻害し得る条件下で保持される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
サンプルを受けるためのリザーバ部を備える容器を含むことを特徴とする液体採取デバイスであって、該容器は1種以上の物質を含有する1つ以上の個別チャンバーを有し、該個別チャンバーが、サンプルを受けた後に開いて、時間遅延を伴って該個別チャンバーから該リザーバ部内のサンプル中へ該1種以上の物質を放出し得る分離手段によって閉じられている、上記デバイス。
【請求項15】
以下:
a) 抗凝血剤、
b) 血小板活性化因子および/またはプロテアーゼ、
c) 場合により血小板活性化阻害剤および/またはタンパク質分解阻害剤、ならびに
d) 場合により線維素溶解阻害剤
を含む、血液採取デバイス。
【請求項16】
血液サンプルを吸入するための吸入部と、サンプルを受けるためのリザーバ部とを備える容器を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
血小板を活性化させるためにデバイス中に含まれる血小板活性化因子の量が、該リザーバ部が設計された血液量中で、血小板表面上に存在するCD40Lの全量から10分未満以内に30%以上のsCD40Lを脱落させるのに十分な量である、請求項15または16に記載のデバイス。
【請求項18】
血小板を活性化させるためにデバイス中に含まれる血小板活性化因子の量が、血液サンプル中で、少なくとも0.1μg/mlのコラーゲンまたは0.1μMのADPの血小板活性化能を有するのに十分な量である、請求項15〜17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
血小板含有サンプルの添加後であって、且つ血小板機能マーカーまたはその変異体を溶液化した後、該血小板含有サンプル中への血小板機能阻害剤および/またはタンパク質分解阻害剤の放出を可能とする様式において、該血小板機能阻害剤および/またはタンパク質分解阻害剤を含む、請求項15〜18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
サンプルを受けるためのリザーバ部を備える容器を含み、該容器は1種以上の物質を含有する1つ以上の個別チャンバーを有し、該個別チャンバーは、該個別チャンバーから該リザーバ部内のサンプル中へ1種以上の物質を放出するために開き得る分離手段によって閉じられている、請求項15〜19のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
分離手段が、容器のリザーバ部内のサンプルと接触すると溶解する材料で作製されている、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
容器が、該容器中にサンプルを引き込むために該容器内で軸方向に変位可能な、ピストンに接続されたプランジャーを含み、該プランジャーの軸方向の変位が分離手段の開放または破壊をもたらし、これにより個別チャンバーから該容器のリザーバ部内のサンプル中へ1種以上の物質が放出される、請求項20に記載のデバイス。
【請求項23】
ピストンが個別チャンバーを含む、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
容器内でのプランジャーの軸方向の変位が、分離手段に作用するバネ手段の張力を増加させ、該バネ手段が一定の張力に達したときに該分離手段を破壊する、請求項22または23に記載のデバイス。
【請求項25】
プランジャーの軸方向の変位が、サンプルおよび/または容器および/または1種以上の物質によって分離手段に加えられる圧力の増加をもたらし、該分離手段は、増加した圧力が一定の値に達したときに破壊または変形され、これにより1種以上の物質を容器のリザーバ部内の該サンプル中に放出する、請求項22または23に記載のデバイス。
【請求項26】
サンプルが容器のリザーバ部内に入った後に1つ以上の容器を受けて保持するための保持エレメントをさらに含み、ここで該容器を該保持エレメント中に置くと分離手段が自動的に開き、これにより時間遅延を伴って個別チャンバーから該容器のリザーバ部内のサンプル中へ1種以上の物質が放出される、請求項20に記載のデバイス。
【請求項27】
以下:
a) 被験体から血液サンプルを採取するためのデバイスにおける使用に好適な容器であって、好ましくはサンプルを受けるためのリザーバ部を有する該容器を提供するステップ、
b) 血小板活性化因子を該容器、好ましくはリザーバ部に加えるステップ、
c) 場合により該容器、好ましくは該容器のリザーバ部に抗凝血剤を加えるステップ、
d) デバイスを組み立てるステップ、
を含んでなる、請求項15〜26のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項28】
請求項15〜26のいずれか1項に記載のデバイスと、血小板機能マーカーのレベルの測定手段とを含むアッセイデバイス。
【請求項29】
以下:
e) 血液採取デバイス、
f) 血小板活性化因子および/またはプロテアーゼ、
g) 場合により抗凝血剤、
h) 場合により血小板活性化阻害剤および/またはタンパク質分解阻害剤、ならびに
i) 場合により線維素溶解阻害剤、
を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項30】
以下:
j) 1種以上の抗凝血剤と、
k) 1種以上の血小板活性化因子
を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9.1】
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【図9.2】
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【図10.1】
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【図10.2】
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【図10.3】
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【図11.1】
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【図11.2】
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【図11.3】
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【図12.1】
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【図12.2】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−501072(P2010−501072A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524185(P2009−524185)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058391
【国際公開番号】WO2008/020013
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】