説明

血小板第4因子変異体1(PF4V1)に対する中和抗体およびそのフラグメント

本発明は、血小板第4因子変異体1(PF4v1)に対する中和抗体およびそのフラグメントならびに血管新生の誘導を必要とする病変または病的血管新生に関連する疾患を処置するためのそれらの使用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板因子変異体1(PF4v1)に対する中和抗体およびそのフラグメントならびに血管新生の誘導を必要とする病変または病的血管新生に関連する疾患を処置するための、ならびに生体試料中のPF4v1を検出するためのそれらの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新たな血管の形成である血管新生は、例えば胚発生、創傷治癒などのような生理的条件、および癌のような病的条件の両方において起こる複雑な生物学的プロセスである(Bikfalvi and Bicknel, 2002)。血管新生は、血管新生刺激因子および抗血管新生因子のネットバランスによって調節される。血管新生を促進する既知の因子は、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリー、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)およびアンギオポエチンである。血管新生を阻害する因子は多くの癌研究プロジェクトの焦点となっており、何故なら、腫瘍は増殖するために脈管を新生する必要があり、拡散性分子がその工程を調節するとされているためである(総説については例えばAuguste et al., 2005を参照されたい)。抗血管新生分子には、アバスチンのような抗体、小さな化学分子、および内因性因子、とりわけ血小板第4因子(PF4)がある。
【0003】
CXCケモカインファミリーは、主として様々な免疫炎症反応における特異的白血球の活性化および化学誘引性に関わっている炎症促進性サイトカインで構成されている。CXCケモカインファミリーは、血管新生および抗血管新生ケモカインを含むため、特異である。血小板第4因子(PF4またはCXCL4)が、血管新生の調節物質として記載された最初のケモカインであった(Maione TE et al., 1990)。PF4は、国際特許出願第WO85/04397号に記載されたように、かつてオンコスタチンとして知られていた。
【0004】
同時に、PF4v1またはCXCL4L1と呼ばれる非アレレPF4変異体の遺伝子もまた同定された。成熟蛋白は、PF4およびPF4v1の各々のC末端にある3個のアミノ酸(P58L、K66E、およびL67H)だけが相違する(Eisman R et al., 1990)。PF4v1は、PF4よりも有効な、血管新生の強力なインヒビターであると特性解明された。したがって、国際特許出願第WO2006/029487号は、血管新生の防止および/または低減のための、そしてより詳細には血管新生障害もしくは血管新生障害を含む疾患または病的血管新生、例えば癌の予防または治療のための、PF4v1、フラグメント、ならびにPF4v1およびPF4v1フラグメントの修飾型に関するものである。
【0005】
抗血管新生化合物を求める探索に的を絞った数多くの研究とは対照的に、血管新生を誘導するためのアプローチは殆ど発展してこなかった。故に、血管新生を誘導する方法について当分野において今なお必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明者等は、PF4v1を特異的に認識しその抗血管新生活性を遮断する新規な中和抗体を開発した。
【0007】
本発明者等は、PF4およびPF4v1の間の3個の異なるアミノ酸の中でヒスチジン67のみが、PF4v1のより有効な血管新生阻害を司っていることを初めて証明した。本発明者等はさらに、PF4v1の67位のヒスチジン残基を特異的に認識する抗体だけがPF4に対するPF4v1の機能増大を廃絶するということを示した。
【0008】
したがって本発明の第一の局面は、血小板因子変異体1(PF4v1)に対する中和抗体またはそのフラグメント[ここで、該抗体または該フラグメントは成熟PF4v1蛋白の67位のヒスチジン残基を認識する]に関するものである。
【0009】
典型的には、この成熟PF4v1蛋白は、配列番号1のアミノ酸配列に開示するとおりである。
【0010】
本発明の別の局面は、本発明の抗体および/またはそのフラグメントによって生体試料中のPF4v1を検出する方法に関するものである。
【0011】
本発明のさらに別の局面は、血管新生の誘導を必要とする病変または病的血管新生に関連する疾患を処置するための、本発明の抗体またはそのフラグメントに関するものである。
【0012】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用する「PF4v1」という語は、CXCL4L1、PF4var1、PF4ALTおよびSCYB4V1を包含する(但しこれらに限定されない)全ての同義語の包含を意図している。「PF4v1」という語は、PF4蛋白のヒト天然変異体の天然および組換え型の両者を指す。したがってこの用語は、天然に存在するPF4v1ならびにその変異体および修飾型を包含する。「成熟PF4v1蛋白」という語は、より長いプロペプチドのプロセシングによって得られる、70個のアミノ酸を有する成熟PF4v1蛋白を指す。天然の成熟PF4v1アミノ酸配列の例を配列番号1に開示する(受理番号NP_002611の下にGenPeptデータベースに提供されている蛋白から誘導される成熟蛋白)。PF4v1をコードしている天然ヌクレオチド配列の例は、受理番号NM_002620の下にGenPeptデータベースに提供されている。さらに、「PF4v1」という語はPF4蛋白の霊長類天然変異体をも包含することに留意せねばならない。例えば、霊長類PF4v1蛋白は、GenBank受理番号XM_001102971.1(アカゲザル)およびXP_001156146.1(チンパンジー)の下に提供されている。
【0013】
「コード配列」またはRNA、ポリペプチド、蛋白、もしくは酵素といった発現生成物を「コードしている」配列は、発現時にそのRNA、ポリペプチド、蛋白、または酵素の産生をもたらすヌクレオチド配列であり、即ち、そのヌクレオチド配列は、そのポリペプチド、蛋白または酵素のアミノ酸配列をコードしている。蛋白のコード配列は、開始コドン(通常ATG)および停止コドンを含み得る。
【0014】
本明細書で使用する、特定蛋白(例えば、PF4v1)に対する言及は、天然アミノ酸配列を有するポリペプチド、ならびにそれらの起源や製造様式に関わりなく、変異体および修飾型を包含できる。天然アミノ酸配列を有する蛋白は、自然界から取得したもの(例えば天然に存在するPF4v1)と同じアミノ酸配列を有する蛋白である。このような天然配列蛋白は自然界から単離でき、または、標準的な組換えおよび/または合成法を用いて製造できる。天然配列蛋白は、天然に存在する末端切除または可溶性型、天然に存在する変異体型(例えば選択的スプライス型)、天然に存在するアレレ変異体および翻訳後修飾を含む型を特に包含する。天然配列蛋白は、翻訳後修飾、例えばグリコシル化、もしくはリン酸化、または幾つかのアミノ酸残基のその他の修飾の後の蛋白を包含する。
【0015】
「機能保存的変異体」は、蛋白または酵素中の所定のアミノ酸残基が、そのポリペプチドの全体的コンホメーションおよび機能が変わることなく変化した変異体であって、或るアミノ酸の、類似の性質(例えば、極性、水素結合能、酸性、塩基性、疎水性、芳香性など)を持つアミノ酸による置換を包含するがそれに限定される訳ではない。蛋白において保存的であるとして表示されたアミノ酸以外のアミノ酸は異なることができ、その結果、類似の機能を持つ任意の二つの蛋白間の蛋白またはアミノ酸配列類似性のパーセントは変化でき、例えばクラスター法によるアラインメントスキーム(ここで、類似性はMEGALIGNアルゴリズムに基づく)に従って測定すると、それは例えば70%〜90%であり得る。「機能保存的変異体」はさらに、BLASTまたはFASTAアルゴリズムにより測定して少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、そしてさらに好ましくは少なくとも95%のアミノ酸一致を有する、そしてそれを比較する天然または親蛋白と同じまたは実質的に類似の性質または機能を有するポリペプチドを包含する。PF4v1の機能保存的変異体は、67位にヒスチジン残基を含み天然に存在するPF4v1と実質的に同じ抗血管新生活性を示すPF4v1の全ての変異体を包含する。PF4v1の抗血管新生活性は、下記のようにFGF−2で刺激された牛大動脈内皮(BAE)細胞の増殖を阻害する能力によって評価できる。
【0016】
「His67」という語は、成熟PF4v1蛋白配列の67位、例えば配列番号1に開示するアミノ酸配列の67位に天然に見出されるアミノ酸残基を指す。当業者は、該アミノ酸が成熟PF4v1のフラグメントに存在でき、よって与えられた蛋白の67位には見出されないが、にもかかわらず周囲のアミノ酸によって該アミノ酸であると容易に認識できるということが理解できるであろう。
【0017】
二つのアミノ酸配列は、より短い配列の全長に関して、80%を上回る、好ましくは85%を上回る、好ましくは90%を上回るアミノ酸が同一である時に、または約90%を上回る、好ましくは95%を上回るアミノ酸が類似(機能的に同一)である時に、「実質的に相同的」または「実質的に類似」である。好ましくは、類似のまたは相同的な配列は、例えばGCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7, Madison, Wisconsin)パイルアッププログラム、またはBLAST、FASTAなどのような任意の配列比較アルゴリズムを使用するアラインメントによって確定する。
【0018】
本発明によれば、「抗体」または「免疫グロブリン」は同じ意義を有し、本発明において同じように使用される。天然の抗体において、2本の重鎖はジスルフィド結合によって相互に連結し、各々の重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結している。軽鎖には二つのタイプ、ラムダ(l)およびカッパ(k)がある。抗体分子の機能活性を決定する主要な5つの重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEがある。各々の鎖は明確な配列ドメインを含んでいる。軽鎖は2個のドメイン、可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は4個のドメイン、即ち可変ドメイン(VH)および3個の定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3。まとめてCHと称する)を含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)両方の可変領域は、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖の関連性、分泌、経胎盤移動性、補体結合、およびFcレセプター(FcR)との結合といった重要な生物学的性質を付与する。Fvフラグメントは免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1本の軽鎖および1本の重鎖の可変部分で構成される。抗体の特異性は、抗体結合部位および抗原決定基の間の構造上の相補性に存する。抗体結合部位は、主として超可変または相補性決定領域(CDR)に由来する残基で構成されている。時には、非超可変またはフレームワーク領域(FR)に由来する残基が全体的ドメイン構造、したがって結合部位に影響することがある。相補性決定領域またはCDRとは、共に天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性および特異性を規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は各々3個のCDRを有し、それぞれL−CDR1、L−CDR2、L−CDR3およびH−CDR1、H−CDR2、H−CDR3と称する。したがって抗原結合部位には、重鎖および軽鎖V領域の各々に由来するCDRを含む、6個のCDRが含まれる。フレームワーク領域(FR)とは、CDRの間に介在するアミノ酸配列を指す。
【0019】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」または「mAb」という語は、特異抗原に対する、そしてB細胞の単一クローンまたはハイブリドーマにより産生される、単一のアミノ酸組成を有する抗体分子を指す。
【0020】
抗体に言及する場合の「成熟PF4v1蛋白の67位のヒスチジン残基を認識する」という表現は、PF4v1を認識する該抗体が、成熟PF4v1蛋白の67位のヒスチジン残基が別のアミノ酸残基に置き換えられているPF4v1の変異体を認識しないことを意味する。典型的には、下記の実施例に記載するように、該抗体の特異性は、成熟PF4v1の67位のヒスチジン残基が別の残基に置き換えられているPF4v1変異体を使用するドットブロットによって検証できる。
【0021】
本明細書で使用する「中和抗体」または「中和する抗体」という語は、その抗体が特異的に結合するエピトープを含むポリペプチドの少なくとも1つの活性を遮断または低下させる抗体を指す。或る態様では、中和抗体はインビトロおよび/またはインビボで活性を低下させる。典型的には、中和抗体はPF4v1の抗血管新生活性を遮断する(それは、下記のように牛大動脈内皮(BAE)細胞のFGF−2刺激増殖アッセイによって評価できる)。
【0022】
「キメラ抗体」という語は、非ヒト動物に由来する抗体のVHドメインおよびVLドメイン、ヒト抗体のCHドメインおよびCLドメインを含むモノクローナル抗体を指す。非ヒト動物として、マウス、ラット、ハムスター、ウサギなどのような任意の動物を使用できる。
【0023】
「ヒト化抗体」という語は、フレームワークまたは「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンのそれと比較して異なる特異性のドナー免疫グロブリン由来のCDRを含むよう修飾された抗体を指す。好ましい態様では、マウスCDRをヒト抗体のフレームワーク領域中に移植して「ヒト化抗体」を製造する。
【0024】
「Fab」という語は、約50000の分子量および抗原結合活性を有し、IgGをプロテアーゼ パパインで処理して得られるフラグメントのうち、H鎖のN末端側のほぼ半分およびL鎖全体がジスルフィド結合によって結合している抗体フラグメントを意味する。
【0025】
「F(ab’)2」という語は、約100000の分子量および抗原結合活性を有し、IgGをプロテアーゼ ペプシンで処理して得られるフラグメントのうち、ヒンジ領域のジスルフィド結合によって結合している、Fabより僅かに大きな抗体フラグメントを指す。
【0026】
一本鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、共有結合で連結したVH::VLヘテロ二量体であり、通常、ペプチドをコードしているリンカーにより連結したVHおよびVLをコードしている遺伝子を含む遺伝子融合物から発現される。本発明のヒトscFvフラグメントは、好ましくは遺伝子組換え技術を用いて適当なコンホメーションに維持したCDRを含む。
【0027】
「ハイブリドーマ」という語は、非ヒト哺乳動物を抗原で免疫することにより調製されたB細胞を、マウスなどから誘導されたミエローマ細胞との細胞融合に付すことによって得られる、抗原特異性を持つ所望のモノクローナル抗体を産生する細胞を意味する。
【0028】
ポリペプチド(即ち本発明の抗体フラグメント)またはヌクレオチド配列に言及する場合の「精製された」および「単離された」とは、示された分子が同タイプの他の生体高分子の実質的な不在下に存在することを意味する。本明細書で使用する「精製された」という語は、好ましくは、少なくとも75%(重量)、より好ましくは少なくとも85%(重量)、より好ましくは少なくとも95%(重量)、そして最も好ましくは少なくとも98%(重量)の同タイプの生体高分子が存在することを意味する。特定のポリペプチドをコードしている「単離された」核酸分子とは、当該ポリペプチドをコードしていない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子を指す。しかしながらその分子は、該組成物の基本性質に有害な影響を及ぼさない幾つかのさらなる塩基または部分を含むことがある。
【0029】
本明細書で使用する「対象」という語は、哺乳動物、例えば齧歯類、ネコ、イヌ、および霊長類を意味する。好ましくは本発明に係る対象はヒトである。
【0030】
本発明の抗体
本発明は、PF4v1に対する単離された中和抗体またはそのフラグメントを提供する。特に本発明等は、PF4v1、より詳細には、配列番号1に開示する成熟PF4v1のアミノ酸配列の67位にヒスチジン残基を含むエピトープに対する特異性を有するモノクローナル抗体を開発した。
【0031】
実に本発明者等は、このヒスチジン残基のみが、PF4に比較して増大したPF4v1の抗血管新生活性を誘導することを明確にした。
【0032】
したがって本発明は、血小板因子変異体1(PF4v1)に対する抗体[ここで該抗体は、成熟PF4v1蛋白の67位のヒスチジン残基を認識する]に関するものである。
【0033】
本発明は、血小板因子変異体1(PF4v1)に対する抗体[ここで該抗体は、配列番号1のアミノ酸配列の67位のヒスチジン残基を認識する]に関するものである。
【0034】
1つの態様では、該抗体はモノクローナル抗体である。
【0035】
或る態様では、本発明のモノクローナル抗体はマウス抗体である。
【0036】
別の態様では、本発明のモノクローナル抗体はキメラ抗体、好ましくはキメラマウス/ヒト抗体である。
【0037】
さらに別の態様では、本発明のモノクローナル抗体はヒト化抗体である。特に該ヒト化抗体において、可変ドメインはヒトアクセプターフレームワーク領域、場合によりヒト定常ドメイン(存在する場合は)、および非ヒトドナーCDR、例えば上の定義によるマウスCDRを含む。
【0038】
本発明はさらに、Fab、F(ab’)2、Fab’およびscFvを包含するがこれらに限定されない、該中和モノクローナル抗体のフラグメントを提供する。
【0039】
本発明の抗体およびそのフラグメントは、単離された(例えば精製された)形態で使用できるか、またはベクター、例えば膜もしくは脂質ベシクル(例えばリポソーム)に入れることができる。
【0040】
核酸、ベクターおよび組換え宿主細胞
本発明のさらなる局面は、本発明の抗体またはそのフラグメントをコードしている核酸配列に関するものである。
【0041】
典型的には、該核酸はDNAまたはRNA分子であって、任意の適当なベクター、例えばプラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクター内に入れることができる。
【0042】
「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」という語は、それらによってDNAまたはRNA配列(例えば外来遺伝子)が宿主細胞中に導入され、その結果、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば転写および翻訳)を促進することのできる媒体を意味する。
【0043】
よって本発明のさらなる局面は、本発明の核酸を含むベクターに関するものである。
【0044】
このようなベクターは、対象に投与された時に該ポリペプチドの発現を惹起または指令する調節要素、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどを含み得る。動物細胞のための発現ベクターに使用されるプロモーターおよびエンハンサーの例にはSV40の初期プロモーターおよびエンハンサー(Mizukami T. et al., 1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー(Kuwana Y et al., 1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason JO et al., 1985)およびエンハンサー(Gillies SD et al., 1983)などがある。
【0045】
ヒト抗体C領域をコードしている遺伝子を挿入し発現させることができる限り、動物細胞のための任意の発現ベクターを使用できる。好適なベクターの例には、pAGE107(Miyaji H et al., 1990)、pAGE103(Mizukami T et al., 1987)、pHSG274(Brady G et al., 1984)、pKCR(O’Hare K et al., 1981)、pSG1βd2−4−(Miyaji H et al., 1990)などがある。
【0046】
他のプラスミド例には、複製起点を含む複製プラスミド、または組み込みプラスミド、例えばpUC、pcDNA、pBRなどがある。
【0047】
他のウイルスベクターの例には、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびAAVベクターがある。このような組換えウイルスは、当分野で公知の技術、例えばパッケージング細胞のトランスフェクションまたはヘルパープラスミドもしくはウイルスによる一過性トランスフェクションによって製造できる。ウイルスパッケージング細胞の典型例には、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などがある。このような複製欠損組換えウイルスを製造する詳細なプロトコルは、例えばWO95/14785、WO96/22378、US5882877、US6013516、US4861719、US5278056およびWO94/19478に見出すことができる。
【0048】
本発明のさらなる局面は、本発明の核酸および/またはベクターによってトランスフェクトされ、感染し、または形質転換された細胞に関するものである。
【0049】
「形質転換」という語は、宿主細胞への「外来」(即ち外因性または細胞外)遺伝子、DNAまたはRNAの導入を意味し、その結果その宿主細胞は、導入された遺伝子または配列を発現して、所望物質、典型的には導入された遺伝子または配列によりコードされている蛋白または酵素を産生する。導入されたDNAまたはRNAを受け取り発現する宿主細胞は「形質転換」されている。
【0050】
本発明の核酸を使用して、本発明の組換えポリペプチドを適当な発現系で産生することができる。「発現系」という語は、例えば、ベクターに担持され宿主細胞に導入された外来DNAにコードされている蛋白の発現にとって好適な条件下での宿主細胞および適合性ベクターを意味する。
【0051】
一般的な発現系には、大腸菌(E. coli)宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞およびベクターがある。他の宿主細胞例には、原核細胞(例えば細菌)および真核細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が包含されるがこれらに限定される訳ではない。具体的な例には、大腸菌、クルイベロミセス(Kluyveromyces)またはサッカロミセス(Saccharomyces)酵母、哺乳動物セルライン(例えば、ベロ細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)、ならびに一次または樹立された哺乳動物細胞培養(例えば、リンパ芽球、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞など)がある。例はさらにマウスSP2/0−Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(以後「DHFR遺伝子」と称する)が欠損しているCHO細胞(Urlaub G et al., 1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662。以後「YB2/0細胞」と称する)などを包含する。キメラまたはヒト化抗体のADCC活性はYB2/0細胞で発現される時に増強するため、この細胞が好ましい。
【0052】
本発明はさらに、本発明の抗体を発現する組換え宿主細胞を生成する方法に関するものであり、その方法は、(i)上記の組換え核酸またはベクターをインビトロまたはエクスビボでコンピテントな宿主細胞中に導入し、(ii)得られた組換え宿主細胞をインビトロまたはエクスビボで培養し、そして(iii)場合により、該抗体を発現しそして/または分泌する細胞を選択する、ことから成る工程を含む。このような組換え宿主細胞を本発明の抗体の生産に利用できる。
【0053】
本発明の抗体を生産する方法
本発明の抗体およびそのフラグメントは、単独での、または組み合わせた、当分野で公知の任意の技術、例えば任意の化学的、生物学的、遺伝学的または酵素的技術(これらに限定されない)によって生産することができる。
【0054】
本発明の抗体は、齧歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)、ブタ、ウシ、ウマまたは霊長類などを包含する(但しこれらに限定されない)幾つかの種から誘導できる。
【0055】
「ポリクローナル抗体」を作製する方法は当分野で周知である。例えばポリクローナル抗体は、PF4v1またはHis67を含むそのフラグメント(これは例えば遺伝子工学によって、または、当業者に周知の標準法に従いペプチド合成によって作製できる)に対して免疫した動物の血清から取得できる。典型的には、このような抗体は、PF4v1またはHis67を含むそのフラグメントを、免疫前血清を得るため最初に採血したニュージーランドホワイトウサギに皮下投与することにより産生させることができる。この抗原は、6箇所の異なる部位に、1部位あたり総容量100μlを注射できる。注射された各材料は、該蛋白またはSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動後のポリペプチドを含有する粉砕アクリルアミドゲルを伴うまたは伴わないアジュバントを含有し得る。次に、最初の注射の2週間後にウサギを採血し、6週間間隔で3回同じ抗原で定期的ブースティングを行う。次いで各ブースティングの10日後に血清試料を採取する。次に、抗体を捕捉するための対応抗原を用いるアフィニティクロマトグラフィーにより、血清からポリクローナル抗体を回収する。ポリクローナル抗体を産生させるためのこの、そしてその他の方法がHarlow et al., 1988に開示されている。
【0056】
モノクローナル抗体を製造する実験室方法は当分野で周知である(例えばHarlow et al., 1988を参照されたい)。モノクローナル抗体は、マウス、ラット、霊長類などといった哺乳動物を、PF4V1またはHis67を含むそのフラグメントで免疫することにより作製できる。免疫した哺乳動物由来の抗体産生細胞を単離し、ミエローマまたはヘテロミエローマ細胞と融合させ、ハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)を作製する。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを所望のモノクローナル抗体の供給源として利用する。このハイブリドーマ培養の標準法は(Kohler and Milstein, 1975)に記載されている。
【0057】
或いは、免疫グロブリン遺伝子を単離し、特異反応抗体についてスクリーニングするためのライブラリーを作製できる。組換えファージおよびその他の発現ライブラリーを包含するこのような多くの技術は当業者に公知である。
【0058】
本発明の抗体を作製する方法はさらに、アミノ酸ヒスチジン67が他のアミノ酸に置換されている突然変異体PF4v1とも結合する抗体を排除することにより、成熟PF4v1蛋白の67位にあるヒスチジン残基を認識する能力について抗体を選択する工程を含む。
【0059】
所望配列のアミノ酸配列がわかると、当業者は、ポリペプチド生成のための標準技術により、該抗体またはそのフラグメントを容易に作製することができる。例えばそれらは、好ましくは市販のペプチド合成装置(例えばApplied Biosystems, Foster City, Californiaにより製造されたもの)を使用し、製造者の指示に従い、周知の固相法を用いて合成できる。或いは本発明の抗体は、当分野で自体周知の組換えDNA技術によって合成できる。例えば、これらのフラグメントは、所望(ポリ)ペプチドをコードしているDNA配列を発現ベクター中に組み込み、こうしたベクターを、所望ポリペプチドを発現するであろう適当な真核または原核生物宿主内に導入した後にDNA発現生成物として取得でき、その後ここからそれらを周知の技術を用いて単離することができる。
【0060】
特に、本発明はさらに、本発明の抗体またはそのフラグメントを製造する方法に関するものであり、その方法は、(i)形質転換された本発明の宿主細胞を、該抗体またはそのフラグメントの発現をさせるのに適した条件下に培養し;そして、(ii)発現された抗体またはそのフラグメントを回収する、ということから成る工程で構成されている。
【0061】
典型的には、本発明方法はさらに、該抗体が成熟PF4v1蛋白の67位のヒスチジン残基を認識することを検証する工程を含み得る。これは例えば、後の実施例に記載するように、成熟PF4v1の67位のヒスチジン残基が他の残基に置換されているPF4v1変異体を使用してドットブロットによって実行できる。典型的には、本発明方法はさらに、該抗体が中和抗体である、即ちそれがPF4v1の抗血管新生活性を遮断することを検証する工程を含み得る。これは例えば、後の実施例に記載するように、FGF−2刺激牛大動脈内皮細胞(BAE)を用いる増殖アッセイによって実施できる。
【0062】
本発明の抗体は、常套的免疫グロブリン精製方法、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィーにより、培養培地から適切に分離される。
【0063】
特別な態様では、本発明のヒトキメラ抗体は、前記のようなVLおよびVHドメインをコードしている核酸配列を取得し、それらをヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードしている遺伝子を有する動物細胞のための発現ベクター中に挿入することによりヒトキメラ抗体発現ベクターを構築し、そして、その発現ベクターを動物細胞中に導入することによりそのコード配列を発現する、ことによって作製できる。
【0064】
ヒトキメラ抗体のCHドメインとしては、ヒト免疫グロブリンに属する任意の領域であってよいが、IgGクラスのものが適当であり、また、IgGクラスに属するサブクラスのうち任意のもの、例えばIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4もまた使用できる。さらに、ヒトキメラ抗体のCLとしては、Igに属する任意の領域であってよく、κクラスまたはλクラスのものが使用できる。
【0065】
キメラ抗体を作製する方法は常套的組換えDNAを含み、遺伝子トランスフェクション技術が当分野で周知である(Morrison SL. et al., (1984) ならびに特許文書US5202238;およびUS5204244)。
【0066】
本発明のヒト化抗体は、前記のようにCDRドメインをコードしている核酸配列を取得し、それらを、(i)ヒト抗体の重鎖定常領域と同じ重鎖定常領域および(ii)ヒト抗体の軽鎖定常領域と同じ軽鎖定常領域、をコードしている遺伝子を有する動物細胞のための発現ベクター中に挿入することにより、ヒト化抗体発現ベクターを構築し、そして、その発現ベクターを動物細胞中に導入することにより当該遺伝子を発現させる、ことによって作製できる。
【0067】
ヒト化抗体発現ベクターは、抗体の重鎖をコードしている遺伝子および抗体の軽鎖をコードしている遺伝子が別個のベクター上に存在する型、または、両遺伝子が同じベクター上に存在する型(タンデム型)のいずれであってもよい。ヒト化抗体発現ベクター構築の容易性、動物細胞への導入の容易性、ならびに動物細胞における抗体HおよびL鎖の発現レベルのバランスの点で、タンデム型のヒト化抗体発現ベクターが好ましい(Shitara K et al., 1994)。タンデム型ヒト化抗体発現ベクターの例にはpKANTEX93(WO97/10354)、pEE18などがある。
【0068】
常套的組換えDNAおよび遺伝子トランスフェクション技術に基づくヒト化抗体の作製方法は当分野で周知である(例えばRiechmann L. et al., 1988;Neuberger MS. et al., 1985を参照されたい)。抗体は、例えば、CDRグラフティング(EP239400;PCT公報WO91/09967;米国特許第5225539号;5530101号;および5585089号)、ベニアリングまたはリサーフェシング(EP592106;EP519596;Padlan EA (1991);Studnicka GM et al., (1994);Roguska MA. et al., (1994))、およびチェーンシャッフリング(米国特許第5565332号)といったような当分野で公知の様々な技術を用いてヒト化することができる。このような抗体を作製するための一般的組換えDNA技術もまた公知である(欧州特許出願EP125023および国際特許出願WO96/02576を参照されたい)。
【0069】
本発明のFabは、PF4v1と特異的に反応する抗体をプロテアーゼ パパインで処理することで得られる。さらに、Fabは、該抗体のFabをコードしているDNAを原核生物発現系のための、または真核生物発現系のためのベクター中に挿入し、そのベクターを原核生物または真核生物(必要に応じて)中に導入してFabを発現させることによって作製できる。
【0070】
本発明のF(ab’)2は、PF4v1と特異的に反応する抗体をプロテアーゼ ペプシンで処理することで得られる。また、F(ab’)2は、後に記載するFab’をチオエーテル結合またはジスルフィド結合を介して結合することによって作製できる。
【0071】
本発明のFab’は、PF4v1と特異的に反応するF(ab’)2を還元剤ジチオトレイトールで処理することで得られる。また、Fab’は、該抗体のFab’フラグメントをコードしているDNAを、原核生物のための発現ベクターまたは真核生物のための発現ベクター中に挿入し、そのベクターを原核生物または真核生物(必要に応じて)中に導入してその発現を遂行させることによって作製できる。
【0072】
本発明のscFvは、前記のようなVHおよびVLドメインをコードしているcDNAを取得し、scFvをコードしているDNAを構築し、そのDNAを原核生物のための発現ベクターまたは真核生物のための発現ベクター中に挿入し、しかる後その発現ベクターを原核生物または真核生物(必要に応じて)中に導入してscFvを発現させることによって作製できる。ヒト化scFvフラグメントを作り出すためには、CDR移植と呼ばれる周知の技術を利用でき、これは、ドナーscFvフラグメントから相補性決定領域(CDR)を選択し、それを、既知の三次元構造を有するヒトscFvフラグメントフレームワークに移植することを含む(例えばWO98/45322;WO87/02671;US5859205;US5585089;US4816567;EP0173494を参照されたい)。
【0073】
本発明の抗体の修飾
本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列修飾を企図する。例えば、抗体の結合親和性および/またはその他の生物学的性質を改善することが望ましいかも知れない。非ヒト動物から誘導された抗体のVHおよびVL中のCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに単純に移植することによってヒト化抗体を作製した場合、その抗原結合活性は、非ヒト動物から誘導された元の抗体に比較して低下するということが知られている。非ヒト抗体のVHおよびVLの幾つかのアミノ酸残基は、CDRのみならずFRにおいても、抗原結合活性と直接的または間接的に関連していると考えられる。したがって、これらのアミノ酸残基をヒト抗体のVHおよびVLのFRに由来する異なるアミノ酸残基に置換すると、結合活性が低下するであろう。ヒトCDRで移植された抗体におけるこの問題を解決するためには、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中でも、抗体との結合に直接関連するアミノ酸残基、またはCDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、または、抗体の三次元構造を維持し抗原との結合に直接関連しているアミノ酸残基を同定する試みがなされねばならない。低下した抗原結合活性は、その同定されたアミノ酸を、非ヒト動物から誘導された元の抗体のアミノ酸残基に置き換えることにより、増大し得る。
【0074】
本発明の抗体の構造およびそれらをコードしているDNA配列に修飾および変更を施し、それでも尚、所望の特性を持つ抗体をコードしている機能的分子を取得することができる。
【0075】
そのアミノ酸変化は、表1に従いDNA配列中のコドンを変化させることによって達成できる。
【0076】
【表1】

【0077】
アミノ酸配列に変化を施すに際し、アミノ酸のハイドロパシックインデックスを考慮することができる。蛋白に相互作用的生物学的機能を付与する場合の、ハイドロパシックアミノ酸インデックスの重要性は、当技術分野で一般的に理解されている。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特性が、得られる蛋白の二次構造に寄与し、今度はそれが、例えば酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原などのような、他の分子と蛋白との相互作用を規定するということが認められている。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷特性に基づきハイドロパシックインデックスが割り当てられている。これらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)である。
【0078】
本発明のさらなる局面は、本発明の抗体の機能保存的変異体をも包含する。
【0079】
例えば、蛋白構造において或るアミノ酸を、認識し得る活性の喪失を伴わずに他のアミノ酸に置換することができる。蛋白の相互作用能力および性質はその蛋白の生物学的機能活性を規定することから、蛋白配列、および無論そのDNAコード配列において或るアミノ酸置換を施し、にもかかわらず同様の性質を持つ蛋白を取得することができる。したがって、本発明の抗体配列、または該ポリペプチドをコードしている対応DNA配列に、認識し得るそれらの生物活性の喪失を伴うことなく、様々な変化を施し得ると予想される。
【0080】
或るアミノ酸を、類似のハイドロパシックインデックスまたはスコアを有する他のアミノ酸によって置換して、依然同様の生物活性を持つ蛋白を得ることができる、即ち、依然生物機能等価蛋白を取得できることが、当技術分野で知られている。
【0081】
したがって上に概説したように、アミノ酸置換は一般に、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、大きさなどのような、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性に基づいている。前述の特性のうち幾つかを考慮に入れた置換例が当業者によく知られており、それらには、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシン、が含まれる。
【0082】
本発明の抗体の、別の型のアミノ酸修飾は、抗体の元のグルコシル化パターンを変化させるのに有用であるかも知れない。
【0083】
「変化させる」とは、抗体中に見出される1以上の炭水化物部分を除去する、そして/または抗体中に存在しない1以上のグルコシル化部位を付加することを意味する。
【0084】
抗体のグリコシル化は典型的にはN−結合である。「N−結合した」とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン[ここでXはプロリン以外の任意のアミノ酸である]は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、これらのトリペプチド配列のいずれかがポリペプチド中に存在することが、潜在的グリコシル化部位を創成する。抗体へのグリコシル化部位の付加は、常套的には、アミノ酸配列を、上記トリペプチド配列の1以上を含むように変化させることによって達成される(N−結合グリコシル化部位について)。
【0085】
もう一つの型の共有結合的修飾は、抗体への化学的または酵素的なグリコシドのカップリングを含む。これらの方法は、N−またはO−結合グリコシル化のためのグリコシル化能を持つ宿主細胞において抗体を産生させる必要がないという点で有利である。利用されるカップリング様式に応じて、糖(群)を、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシ基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えばシステインの遊離スルフヒドリル基、(d)遊離ヒドロキシ基、例えばセリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシ基、(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基、に結合させることができる。例えばこのような方法はWO87/05330に記載されている。
【0086】
抗体上に存在する炭水化物部分の除去を化学的または酵素的に行うことができる。化学的脱グリコシル化は、トリフルオロメタンスルホン酸化合物または等価化合物への抗体の暴露を必要とする。この処置は、結合している糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除く殆どまたは全ての糖の開裂をもたらす一方で、該抗体を無傷のまま残す。化学的脱グリコシル化は、Edge, AS et al., 1981に記載されている。抗体上の炭水化物部分の酵素的開裂は、Thotakura NR et al., 1987に記載されるように、様々なエンド−およびエキソ−グリコシダーゼを使用して達成できる。
【0087】
抗体の共有結合的修飾のもう一つの型は、種々の非蛋白ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレン類のうち1つと抗体とを、米国特許第4640835;4496689;4301144;4670417;4791192または4179337号に開示される方法で結合させることを含む。
【0088】
検出方法および使用
低濃度でヘパリン−セファロースカラムから溶出することに基づき、PF4v1はPF4よりも低い親和性でヘパリンと結合するということが確定された。このような親和性の相違によって初めて天然PF4v1蛋白の精製が可能となった(Struyf et al., 2004)。しかしながら、このような精製方法は、幾つかのクロマトグラフィー工程(即ち、ヘパリン−セファロースアフィニティクロマトグラフィーおよび逆相高速液体クロマトグラフィー)およびさらには質量分析の工程(Struyf et al., 2007)をも含むことから、極めて複雑で時間がかかる。
【0089】
したがって本発明の抗体は、PF4v1の検出および/または精製に有用である。
【0090】
したがって本発明のさらなる局面は、生体試料におけるPF4v1の検出のための、本発明に係る抗体またはそのフラグメントの使用に関するものである。好ましい態様では、本発明の抗体を、検出可能な分子または物質、例えば蛍光分子、放射性分子または当分野で公知のその他任意の標識で標識できる。標識は一般にシグナルを提供する(直接的または間接的に)ことが当分野で知られている。
【0091】
抗体に関して本明細書で使用する「標識された」という語は、検出可能物質、例えば放射性物質またはフルオロフォア(例えばフルオレセインイソチオシアナート(FITC)またはフィコエリスリン(PE)またはインドシアニン(Cy5))を抗体に結合させる(即ち物理的に結合させる)ことによる抗体の直接的標識化、および、検出可能物質との反応性による抗体の間接的標識化を包含することを意図している。
【0092】
本発明の抗体は、当分野で公知の任意の方法により放射性分子で標識できる。例えば放射性分子は、I123、I124、In111、Re186およびRe188といったシンチグラフィー研究用の放射性原子を包含するがこれらに限定される訳ではない。本発明の抗体はさらに、核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても知られる)用のスピン標識、例えばヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−III、フッ素−19、炭素13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄で標識することもできる。
【0093】
「生体試料」とは、対象から取得される種々の試料型を包含し、診断または監視アッセイに使用できる。生体試料は、血液および生物起源のその他の液体試料、固体組織試料、例えばバイオプシー標本またはそこから誘導される組織培養もしくは細胞、ならびにそれらの子孫を包含するが、これらに限定されない。故に生体試料は、臨床試料、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、体液、および組織試料を包含する。
【0094】
本明細書で使用する「検出」という語は、対照を参考にした、またはしていない、定性的および/または定量的検出(レベル測定)を包含する。
【0095】
或る局面では、本発明は、本発明の抗体またはそのフラグメントを使用して生体試料中のPF4v1を検出する方法である。特にこの方法は、該生体試料を本発明の抗体またはそのフラグメントと接触させる工程を含み得る。
【0096】
治療方法および使用
本発明の抗体またはそのフラグメントは、血管新生の誘導を必要とする任意の病変の処置に有用となり得る。本発明の抗体は、単独で、または任意の適当な物質と組み合わせて使用できる。
【0097】
したがって本発明の或る局面は、それを必要とする対象に本発明の抗体またはそのフラグメントの治療有効量を投与することを含む、血管新生の誘導を必要とする病変の処置方法に関するものである。
【0098】
血管新生の誘導を必要とする病変は、典型的には、アテローム性動脈硬化症、例えば冠動脈性心疾患および末梢動脈疾患;創傷治癒障害;虚血;高血圧および糖尿病がある。
【0099】
本発明は、アテローム性動脈硬化症、例えば冠動脈性心疾患および末梢動脈疾患;創傷治癒障害;虚血;高血圧および糖尿病より成る群から選ばれる血管新生の誘導を必要とする病変の処置のための、上記のような抗体またはそのフラグメントに関するものである。
【0100】
本発明は、アテローム性動脈硬化症、例えば冠動脈性心疾患および末梢動脈疾患;創傷治癒障害;虚血;高血圧および糖尿病より成る群から選ばれる血管新生の誘導を必要とする病変の処置における使用のための、上記のような抗体またはそのフラグメントに関するものである。
【0101】
本発明の抗体またはそのフラグメントはさらに、PF4v1の異常発現が観察される、またはPF4v1が病態生理学的役割を演じる、血小板減少症、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、血小板増加症、骨髄異形成症候群といった血液疾患の処置に有用である。例えばPF4v1は、骨髄異形成疾患に罹患している患者においてアップレギュレーションされることが示されており(Pellagatti et al., 2006)、またPF4ノックアウトマウスは巨核球生成阻害に起因する血小板血症を呈する(Eslin et al., 2006)。
【0102】
本発明はさらに、それを必要とする対象に本発明の抗体またはそのフラグメントの治療有効量を投与することを含む、血小板減少症、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、血小板増加症および骨髄異形成症候群といった血液疾患を処置する方法に関するものである。
【0103】
本発明はさらに、血小板減少症、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、血小板増加症および骨髄異形成症候群といった血液疾患を処置するための、上記のような抗体またはそのフラグメントに関するものである。
【0104】
本発明はさらに、血小板減少症、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、血小板増加症および骨髄異形成症候群といった血液疾患の処置における使用のための、上記のような抗体またはそのフラグメントに関するものである。
【0105】
多くの病変におけるPF4v1の過剰発現は、細胞毒性物質と組み合わされた本発明の抗体またはそのフラグメントが病的細胞を特異的に標的とすることを可能にする。実際、多くの疾患、例えば癌;加齢黄斑変性症(AMD)およびその他の過剰増殖性眼疾患;ならびに慢性炎症性疾患、例えば慢性炎症性の多発関節炎、結合組織疾患およびループスでは、病変組織における分泌PF4v1濃度の局所的増大がある。したがって、該病変組織が細胞毒性物質と組み合わされた本発明の抗体またはそのフラグメントの標的となった場合には、病変組織の、非特異的ではあるが局所的な破壊が起こる。PF4v1とプロテオグリカンの親和性はPF−4ほど高くないが、グリカンとの結合は尚かなり存在する。このことは、PF−4v1が0.5M NaClでヘパリンセファロースカラムから溶出するという事実によって証明される。これは、その生物活性にとって重要なヘパラン硫酸保持配列を示すPDGF−BBと同様である。
【0106】
本発明は、それを必要とする対象に、細胞毒性物質と組み合わされた本発明の抗体またはそのフラグメントの有効量を投与する工程を含む、癌;加齢黄斑変性症(AMD)およびその他の過剰増殖性眼疾患;ならびに慢性炎症性疾患、例えば慢性炎症性の多発関節炎、結合組織疾患およびループスより成る群から選ばれる病的血管新生に関連する疾患を処置する方法を提供する。
【0107】
癌;加齢黄斑変性症(AMD)およびその他の過剰増殖性眼疾患ならびに慢性炎症性疾患より成る群から選ばれる病的血管新生に関連する疾患の処置のための、細胞毒性物質と組み合わせた本発明の抗体またはそのフラグメントもまた提供される。
【0108】
癌;加齢黄斑変性症(AMD)およびその他の過剰増殖性眼疾患ならびに慢性炎症性疾患より成る群から選ばれる病的血管新生に関連する疾患の処置における使用のための、細胞毒性物質と組み合わせた本発明の抗体またはそのフラグメントもまた提供される。
【0109】
典型的には、細胞毒性物質と組み合わされた該抗体またはそのフラグメントは、サイトカイン、細胞毒性薬物とコンジュゲートさせ、または細胞毒性ラジオアイソトープで標識することができる。
【0110】
本発明の抗体またはそのフラグメントと組み合わせることができるサイトカインの例は、IL12およびTNFαである。
【0111】
細胞毒性薬物の例には、白金塩、タキサン類、ビンカ誘導体および類似体、ゲムシタビン、メソトレキサート、ドキソルビシン、細胞毒素、例えば緑膿菌外毒素、g蛋白、およびg蛋白共役レセプターインヒビターがある。
【0112】
一般的な細胞毒性ラジオアイソトープは、例えば131I、90Y、77Lu、67Cu、186Re、188Re、212Biおよび213Biである。
【0113】
本発明の文脈において、本明細書で使用する「処置する」または「処置」という語は、このような用語を適用する病変または係る病変の1以上の症状を回復させ、軽減し、その進行を阻害することを意味する。
【0114】
本発明によれば、「患者」または「それを必要とする患者」という語は、血管新生の誘導を必要とする病変に罹患している、または罹患し易い哺乳動物、好ましくはヒトを意図する。
【0115】
本発明の抗体の「治療有効量」とは、任意の医学的処置に適用可能な合理的リスク・ベネフィット比で血管新生の誘導を必要とする該病理を処置するための抗体の充分量を意味する。しかしながら、本発明の抗体および組成物の総日用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医が決定することになるということが理解されるであろう。任意の特定患者に対する具体的な治療有効量のレベルは、処置される疾患およびその疾患の重篤度;使用される個々の抗体の活性;使用される具体的組成物、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食習慣;投与時間、投与経路、および使用される具体的抗体の排泄速度;処置の期間;使用される具体的ポリペプチドと組み合わせてまたは同時に使用される薬物などのような医学分野において周知の様々な因子に依存する。例えば、所望の治療効果の達成に必要な用量より低いレベルで化合物の投与を開始し、所望効果が達成されるまで徐々に用量を増加させるということは、当業者にはよく知られている。
【0116】
医薬組成物
本発明の抗体またはそのフラグメントは、薬学的に許容される賦形剤、および場合により持続放出マトリックス、例えば生分解性ポリマーと合して治療用組成物を形成させることができる。
【0117】
「薬学的に」または「薬学的に許容される」とは、必要に応じて哺乳動物、特にヒトに投与された場合に、有害な、アレルギー性のまたはその他の望ましくない反応を引き起こさない分子実体および組成物を指す。薬学的に許容される担体または賦形剤とは、非毒性の固体、半固体もしくは液体の増量剤、希釈剤、カプセル化材料または任意の型の製剤化補助物質を指す。
【0118】
医薬組成物の形態、投与経路、用量およびレジメンは、当然、処置しようとする状態、疾病の重篤度、患者の年齢、体重、および性別などに依存する。
【0119】
本発明の医薬組成物は、局所、経口、非経口、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下または眼内投与などのために製剤化できる。
【0120】
好ましくはこの医薬組成物は、注射可能な製剤のための薬学的に許容されるビヒクルを含有する。これらは特に、等張の無菌生理食塩水(リン酸一ナトリウムもしくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムなどまたはこのような塩の混合物)、または乾燥、とりわけ凍結乾燥組成物(場合によるが、これは滅菌水または生理食塩水の添加時に注射用溶液を構成させる)であってよい。
【0121】
投与のために使用される用量は様々なパラメータの関数として適合させることができ、特に、使用される投与様式、関連する病変、或いは所望の処置期間の関数として適合させ得る。
【0122】
医薬組成物を製造するため、有効量の抗体を薬学的に許容される担体または水性媒質に溶解または分散させることができる。
【0123】
注射用途に好適な医薬品形態は、無菌水溶液または分散液;ゴマ油、落花生油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および無菌注射溶液または分散液の即時調製のための無菌粉末を包含する。全ての場合において、その形態は無菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度まで液状でなければならない。それは製造および保存状態下で安定でなければならず、微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用を受けないよう保存されねばならない。
【0124】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースを適宜混合した水で調製できる。分散液もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物ならびに油中で調製できる。通常の保存および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有する。
【0125】
本発明の抗体は、中性または塩の形態で組成物へと調合することができる。薬学的に許容される塩は酸付加塩(蛋白の遊離アミノ基と共に形成される)を包含し、それらは例えば塩酸またはリン酸のような無機酸、または酢酸、蓚酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸によって形成される。遊離カルボキシ基によって形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から誘導することもできる。
【0126】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適当な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であってもよい。被覆剤、例えばレシチンの使用により、分散液の場合は必要な粒子径の維持により、そして界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持できる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含有させるのが好ましいであろう。吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することにより、注射用組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0127】
無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙した様々な他の成分と共に適当な溶媒中に配合し、その後濾過滅菌することによって製造する。一般に分散液は、滅菌された様々な活性成分を、基本的な分散媒および上に列挙したものに由来する必要な他の成分を含有する無菌ビヒクル中に配合することによって製造する。無菌注射溶液を製造するための無菌粉末の場合、好ましい製造方法は、活性成分+任意のさらなる所望成分の粉末を、前もって無菌濾過されたそれらの溶液から生成させる、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0128】
直接注射のための、さらに、または高度に濃縮された溶液の製造もまた企図され、この場合、極めて迅速な浸透、高濃度の活性物質のデリバリーをもたらすために、溶媒としてDMSOの使用が想定される。
【0129】
調合されると、溶液は、投与剤型に適合する方法で且つ治療上有効であるような量で投与されるであろう。この製剤は様々な剤型、例えば上記の注射溶液の型で容易に投与されるが、薬物放出カプセル剤などもまた使用できる。
【0130】
水溶液での非経口投与のためには、例えば、必要ならばその溶液を適宜緩衝化し、液体希釈剤は最初に充分な生理食塩水またはグルコースにより等張化すべきである。これら特別な水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に好適である。これに関連して、使用できる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者の知るところとなるであろう。例えば、1用量を等張NaCl溶液1mlに溶解し、そして皮下注入液1000mlに加えるか、または提案された注入部位に注射することができる(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。用量の幾らかの変動は、処置される対象の状態に応じて必然的に起こるであろう。いずれにせよ、投与の責任者が個々の対象について適切な用量を決定する。
【0131】
本発明の抗体は、1用量あたり約0.0001〜1.0ミリグラム、または約0.001〜0.1ミリグラム、または約0.1〜1.0、または約10ミリグラムさえも含むよう治療用混合物内に調合できる。複数回投与もまた実施できる。
【0132】
非経口投与、例えば静脈内または筋肉内注射用に調合される化合物に加えて、その他の薬学的に許容される形態には例えば、錠剤またはその他の経口投与用固体;徐放性カプセル剤;および現在使用されているその他任意の形態がある。
【0133】
或る態様では、宿主細胞内への抗体導入のためにリポソームおよび/またはナノ粒子の使用が企図される。リポソームおよび/またはナノ粒子の形成および使用は当業者に公知である。
【0134】
ナノカプセルは一般に化合物を安定且つ再生可能な方法で捕捉できる。ポリマーの細胞内オーバーロードによる副作用を回避するため、インビボで分解可能なポリマーを使用してこのような超微細粒子(0.1μm前後のサイズ)が一般に設計される。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリラートナノ粒子が本発明における使用のために企図され、そのような粒子は容易に製造できる。
【0135】
水性媒質に分散され自然に多層の同心円二層ベシクル(多層ベシクル(MLV)とも呼ばれる)を形成するリン脂質から、リポソームが形成される。MLVは一般に25nm〜4μmの直径を有する。MLVの超音波処理により、中心部に水溶液の入った直径200〜500Åの範囲の小さな単層ベシクル(SUV)が形成される。リポソームの物理的性質は、pH、イオン強度および二価カチオンの存在に依存する。
【0136】
キット
最後に、本発明は本発明の抗体を少なくとも1個含むキットをも提供する。本発明の抗体を含むキットは、生体試料におけるPF4v1発現の検出に用途を見いだせる。本発明のキットは、固体支持体、例えば組織培養プレートまたはビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合させた抗体を含むことができる。例えばELISAまたはウェスタンブロットでPF4v1をインビトロ検出および定量するための抗体を含むキットが提供され得る。検出に有用なこのような抗体は、蛍光または放射性標識といった標識と共に提供され得る。
【0137】
本発明を以下の図面および実施例によってさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、2つのケモカインPF4およびPF4v1の相違を示す。PF4およびPF4v1は3個のアミノ酸が異なっているだけである。しかしながらPF4v1(V1)は、内皮細胞の増殖をPF4より遙かに強力に阻害する。図1Aは、PF4v1およびPF4のアミノ酸配列の比較を示す。図1Bは、細胞増殖に及ぼすPF4v1およびPF4の効果の比較を示すグラフである。図1Cは、作製された種々のPF4v1/PF4突然変異体を示している。結果は、三重で実施した3つの独立した実験の平均値±s.e.m.である。
【図2】図2は、PF4v1に対するモノクローナル抗体であるMabV1の取得を示す。図2Aは、マウスの免疫に使用された融合PF4v1ペプチドを示す。図2B PF4v1に対するマウスモノクローナル抗体(MabV1、クローン9E11−2D5−2G1)をPF4およびPF4v1蛋白を使用するドットブロットにより試験する。両蛋白を認識するモノクローナル抗PF4(Mab PF4)を対照として使用する。図2Cはビアコア分析を示しており、抗体を固定化し、次いでPF4およびPF4v1(V1)を異なる濃度で注射する。
【図3】図3は、MabV1のエピトープ特性解明を示す。図1Aは、MabV1を用いるPF4v1/PF4突然変異体のドットブロットを示す。Mab PF4はPF4およびPF4v1を認識する対照抗体である。図3Bは、PF4v1、PF4、または突然変異体蛋白を使用するMabv1による特異的ELISAを示す。MabV1をELISAプレートに固定化し、ポリクローナル抗PF4抗体(全ての変異体を検出する)を検出に使用する。蛋白を同濃度(1ng/ml)で全て試験する。結果は、三重で実施した2つの独立した実験の平均値±s.e.m.であり、V1を100%(P<0.01)としてV1に対するV1−EおよびF4+Hについて表す。
【図4】図4はMabV1の阻害活性を示す。FGF−2刺激された牛大動脈内皮細胞(BAE)を用いる増殖アッセイにMabV1(1μg/ml)を添加する。PF4v1による増殖の阻害はMabv1により特異的に遮断される。結果は、三重で実施した3つの独立した実験の平均値±s.e.m.である。
【図5−1】遮断抗体MabV1によるBxPC3異種移植マウスの処置による腫瘍増殖の誘導。 マウス(Rag Gamma、n=32、2つの独立した実験)に3x10のBxPC3細胞をsc注射し、2群に分け、IgG対照抗体50μg(対照群、n=16)または遮断抗体MabV1 50μg(MabV1群、n=16)を投与した。処置は14日目に開始し、抗体を週に2回iv注射した。腫瘍の大きさを毎週測定し、腫瘍体積を式:(4/3)ab[式中、aおよびbは各々最大半径および最小半径である]を用いて算出した(A)。46日目に腫瘍を切除し、大きさを測定して腫瘍体積をより正確に決定した(B)が、それは、式:(4abc)/3[式中、a、bまたはcは測定された半径である]により算出した。点/柱、平均腫瘍サイズ(mm3);棒線、SEM(、p<0.05;**、p<0.01、マン・ホイットニー検定)。対照抗体(上)およびMabV1(下)で処置された代表的な移植された腫瘍(C)。遮断抗体を注射されたマウスは大きな嚢胞性腫瘍を有する。対照群では嚢胞腔が透明な漿液で満たされ、一方遮断抗体を注射された群では、その液体は血性であり、腔は漿液性の壁で満たされている(D)。抗CD31で染色した後メイヤーズヘマトキシリンで薄く対比染色することにより、凍結組織切片の血管を可視化した(E)。
【図5−2】遮断抗体MabV1によるBxPC3異種移植マウスの処置による腫瘍増殖の誘導。 マウス(Rag Gamma、n=32、2つの独立した実験)に3x10のBxPC3細胞をsc注射し、2群に分け、IgG対照抗体50μg(対照群、n=16)または遮断抗体MabV1 50μg(MabV1群、n=16)を投与した。処置は14日目に開始し、抗体を週に2回iv注射した。腫瘍の大きさを毎週測定し、腫瘍体積を式:(4/3)ab[式中、aおよびbは各々最大半径および最小半径である]を用いて算出した(A)。46日目に腫瘍を切除し、大きさを測定して腫瘍体積をより正確に決定した(B)が、それは、式:(4abc)/3[式中、a、bまたはcは測定された半径である]により算出した。点/柱、平均腫瘍サイズ(mm3);棒線、SEM(、p<0.05;**、p<0.01、マン・ホイットニー検定)。対照抗体(上)およびMabV1(下)で処置された代表的な移植された腫瘍(C)。遮断抗体を注射されたマウスは大きな嚢胞性腫瘍を有する。対照群では嚢胞腔が透明な漿液で満たされ、一方遮断抗体を注射された群では、その液体は血性であり、腔は漿液性の壁で満たされている(D)。抗CD31で染色した後メイヤーズヘマトキシリンで薄く対比染色することにより、凍結組織切片の血管を可視化した(E)。
【図6】腫瘍陰性マウスからの15日間にわたるMabV1−IRDye(登録商標)800CWのクリアランスプロファイル。 滅菌濾過した、IRDye(登録商標)800CWにコンジュゲートさせたMabV1(動物あたり25μg)を尾静脈に注射した。次いで指示された時点でオデッセイ・イメージング・システム(Licor)に画像を収集した。画像を、視覚的表現のために共通の最小および最大値を有する同じLUTまで標準化した(全身Aについては1〜400、臓器Bについては1〜1000)。
【図7】注射後の異なる時点におけるIRDyeまたはビオチンにコンジュゲートさせたMabV1の血漿中濃度。 IRDye(赤線)またはビオチン(青線)で標識したMabV1 25μgを注射したマウスの心臓から、注射後の異なる時点で(A 72時間までの短時間、B 4週間までの長時間)血液を直接採取した。血液を遠心分離し、MabV1の血漿中濃度を直接ELISA試験でアッセイした。
【図8】異なる臓器におけるMabV1の組織濃度の決定。 IRDye800CW標識したMabV1を注射したマウスから異なる時点で臓器を摘出し、画像化後直ちにそれをホモジナイズして、直接ELISAアッセイによりMabV1濃度を決定した。
【図9】IRdye800にコンジュゲートさせたMabV1の肺転移ターゲッティング。 標識したMabv1を、BXPC3腫瘍をiv注射したマウスに注射し、肺転移(緑色)をオデッセイ・インフラレッド・イメージャー(LiCor)で可視化する。
【0139】
発明を実施するための形態
実施例
実施例1:PF4v1に特異的なモノクローナル抗体(MabV1)の特性付け
材料および方法
細胞培養:抗生物質、1%グルタミン、および10%牛胎児血清または10%子牛血清を含有するDMEM(Invitrogen, Cergy Pontoise, France)中でBAE細胞を増殖させ、37℃、10%COに維持した。
【0140】
プラスミド:ヒトPF4/CXCL4およびPF4v1/CXCL4L1 cDNAのコード領域を、連続する二工程でpCDNA−PF4およびpCDNA−PF4v1からクローニングした。まず、かなり長いPF4およびPF4v1 cDNAフラグメントを、PF4およびPF4v1を結合するプライマーによって増幅させた(フォワードプライマーとして完全PF4sおよび完全PF4v1s;バックワードプライマーとして完全PF4asおよび完全PF4v1as、表2)。アンプリコン(306および315bp)をpSC−Aベクター(Stratagene)中にクローニングした。再構築されたプラスミドをDNA配列決定によって確認した。これらの構築物を鋳型として使用し、成熟PF4およびPF4v1蛋白のコード領域を増幅させた(フォワードプライマーとしてPF4sおよびPF4v1s;バックワードプライマーとしてPF4asおよびPF4v1as、表2)。精製されたPCR生成物をBamH1およびXho1制限酵素で消化し、プラスミドpGEX−6P−2(Amersham Biosciences)中に挿入し、pGEX−PF4およびpGEX−PF4v1発現ベクターを作製した。最後に、自動DNA配列決定分析によって、選択されたクローンのヌクレオチド配列を検査した。
【0141】
【表2】

【0142】
組換えpGEX−PF4v1変異体発現ベクターの構築:pGEX−PF4v1発現ベクターを、QuickChange II XLキット(Stratagene)を用いる位置指定突然変異生成法のDNA鋳型として使用した(表2)。最後に、pGEX−PF4v1突然変異体クローンのスクリーニングを前記のDNA配列決定分析により実施した。
【0143】
大腸菌(E.coli)における組換えPF4v1および変異体の産生:前記の様々なcDNAを含むpGEX−6P−2(GST融合発現ベクター、Amersham)組換えベクターで形質転換したE.coli BL21(DE3)を、100μg/mlアンピシリンを含むLB 100ml中で増殖させた。OD600nmが0.3〜0.5に到達した後、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)(Euromedex)0.5mmol/Lを振盪しつつ加えることにより、融合蛋白の発現を誘導した。培養を220rpm25℃で一夜増殖させた。IPTG誘導された被験培養および空ベクターpGEX−6P−2を含むIPTG誘導された対照培養を、4℃で5000r/分、15分間の遠心分離により集めた。PBS 1X(10mM NaHPO、1.8mM KHPO、140mM NaCl、2.7mM KCl、pH7.3、Lonza)、1mg/mlリゾチーム(Sigma)およびカクテルインヒビタープロテアーゼ(Roche)を含有する10容量の溶解緩衝液にペレットを再懸濁した。細胞を液体窒素を用いる凍結/融解により溶解し、続いて氷浴中で超音波処理(30秒間x6回の超音波工程)した。DNAの完全なフラグメント化のために、5g/mlのDNアーゼI(Sigma)を加え、氷上で15分間撹拌した。4℃で12000r/分、30分間の遠心分離により細胞残屑を除去し、上清を集めた。
【0144】
GST−PF4v1組換え蛋白精製のためのアフィニティクロマトグラフィー工程:可溶性GST−PF4v1またはGST−PF4(または他の変異体)組換え蛋白を含有する上清を、PBS IXでプレ平衡化したGSTrap HPアフィニティカラム(5ml;Amersham Biosciences)に、流速1ml/分、室温でロードした。結合した物質を、280nmのODにおける吸光度がベースラインに戻るまでPBSIXで洗浄した。ベースラインが安定したならば、10カラム容量の溶離緩衝液(PBSIX、20mM還元型グルタチオン、pH8.0)を流速1ml/分で使用して、結合したGST−PF4v1組換え蛋白の溶出を行った。GST−PF4v1組換え蛋白を含有する溶出画分をプールした。精製段階およびアフィニティクロマトグラフィーのプロファイルを、クマシーブルー染色した(Biorad)SDS−PAGEゲルおよびウェスタンブロット分析によって分析した。
【0145】
細胞生存性アッセイ:5x10細胞/ウェルのBAE細胞を平底96ウェルプレートで24時間平板培養した。一夜血清飢餓処理した後、細胞を、10ng/mlの組換えFGF2で、且つ様々な濃度の組換え蛋白の存在下または不在下で、48時間三重で処理した。製造者の指示に従い、細胞生存性を、CellTiter 96 AQueous One Solution細胞増殖アッセイ(Promega Corp.)を使用して490nmで測定した。
【0146】
SPR(表面プラズモン共鳴):BIAcore 3000バイオセンサー機器(BIAcore AB)によってリアルタイム結合実験を行い、レゾナンスユニット(RU)を単位として定量した(1000RU=結合蛋白1ng/mm2(フローセル表面))(Ferjoux et al., 2003)。抗体はカルボキシメチル化デキストランチップ(チップCM5、BIAcore AB)上に固定化した。抗体(10000RU)をフローセル2およびフローセル3に架橋し、一方フローセル1は、非特異的相互作用リファレンスとして活性化および非活性化した。可溶性リガンド(500〜1000nM)を流速30μl/分で注入し、表面に600秒(アソシエーション・フェイズ)、続いて300秒の送液で暴露させ、その間に解離が起こった。センサーグラムは特異的相互作用(異なる応答性)の典型であり、そこでは、フローセル1で起こった非特異結合が、フローセル2および3で起こった結合から推定された。結果を、秒で表した時間の関数としてレゾナンスユニット(RU)で表す。
【0147】
ELISA:市販のPF4−ELISAキット(R&D Systems)を使用してPF4、PF4v1および変異体を測定した。PBSをブランクとして使用した。蛋白定量の後、組換え蛋白を、最初のマウスモノクローナルPF4抗体をマウスモノクローナルPF4v1抗体(クローン9E11−2D5−2G1)に置き換える以外は市販のPF4−ELISAを用いて再度測定した。三重でアッセイを実施し、Softmax Pro4.0ソフトウェア(Molecular Devices)を用いて結果を解析した。
【0148】
ドットブロット分析:PF4v1のマウスモノクローナル抗体(MabV1、クローン9E11−2D5−2G1)を試験し、そのエピトープを、組換え蛋白PF4およびPF4v1を用いるドットブロット分析を行うことにより評価した。蛋白0.5μgを精密濾過ブロッティング装置を用いてニトロセルロース膜にスポットした。TBSTで5分間の洗浄を2回行った後、この膜を3%無脂肪牛乳TBSTと共に30分間インキュベートした。TBSTで5分間の洗浄を3回行った後、この膜を、1:1000希釈の特異抗体と共にインキュベートした。以下の抗体を使用した:抗PF4モノクローナル抗体(mAb;R&D Systems, Minneapolis, MN、クローン170106、7μg/mL)、抗PF4v1モノクローナル抗体(MabV1、クローン9E11−2D5−2G1)。HRP標識された二次抗体がECL系によって出現した。
【0149】
統計学的解析:実験を少なくとも3回実施した。対応のないt検定により統計学的解析を実施した。値は全て平均値±s.e.m.である。
【0150】
結果
PF4およびPF4v1の間にはC末端領域に3個のアミノ酸相違があるだけである(図1)。生物活性について試験した場合(牛大動脈内皮細胞による増殖アッセイ)、PF4v1は50倍の活性がある。本発明者等はPF4およびPF4v1について幾つかの突然変異体を作製し、それらを抗体反応性について試験した。
【0151】
次に本発明者等はPF4v1に特異的なモノクローナル抗体(MabV1)を作製した(図2)。PF4v1融合蛋白を用いてマウスを免疫した。次いでハイブリドーマ上清をドットブロットによってPF4またはPF4v1に対する反応性について試験した(MabV1、クローン9E11−2D5−2G1)。図3bで認められるように、クローン9E11−2D5−2G1由来のモノクローナル抗体のみがPF4v1と交差反応し、PF4とは交差反応しなかった。その一方で、抗PF4抗体はPF4およびPF4v1の両者と交差反応した。次いでバイアコア分析を実施した。抗体を固定化し、しかる後PF4およびPF4v1を異なる濃度で注射した。認められるようにPF4v1に対するモノクローナル抗体のみがPF4v1を認識し、PF4についてはそうでない。
【0152】
次に本発明者等は、モノクローナル抗体の反応性を特性解明した(図3)。PF4v1/PF4突然変異体蛋白のドットブロットをMabV1を用いて実施した。PF4およびPF4v1の両者を認識するMab PF4を対照に使用した。図3に認められるように、PF4v1中のヒスチジンが突然変異した場合、この抗体はもはや該分子を認識しない。逆に、PF4中のロイシンの代わりにヒスチジンが導入された場合、この抗体は、突然変異したPF4を再び認識する。
【0153】
次に本発明者等は、MabPF4v1の中和活性を検討した(図4)。FGF−2刺激された牛大動脈内皮細胞(BAE)を用いる増殖アッセイにMabV1(1μg/ml)を加えた。図4に見られるとおり、PF4v1による増殖阻害はMabV1によって特異的に遮断される。このことは、MabV1がPF4v1の機能を遮断することを示すものである。
【0154】
実施例2:腫瘍ターゲッティングについてのMabV1を使用するインビボ研究
【0155】
材料および方法
IRdyeによるMabV1の標識化。
CXCL4L1に対するモノクローナル抗体(MabV1)を製造者の指示に従ってIRDye 800CW(Protein Labeling Kit−High MW#928−38040、LI-COR(登録商標)、Lincoln, NE)で標識した。コンジュゲートをリン酸緩衝化生理食塩水に対して広範囲に透析して、過剰の未反応色素を除去した。標識されたMabV1は蛋白1モルあたり2分子の色素と結合し、その初期の活性を失わない。マウスにおける生体内分布、薬物動態学および忍容性の研究に、そしてさらにCXCL4L1を発現する腫瘍へのターゲッティングの研究に、IRdye−MabV1を使用した。
【0156】
ビオチンによるMabV1の標識化。
sulfo−NHS−LC−Biotinキット(PIERCE, Rockford, IL)を使用し製造者の指示に従ってMabV1抗体をビオチンで標識した。
【0157】
IRDyeにコンジュゲート化させたMabV1のクリアランス動態。
抗体のクリアランス速度および起こり得る非特異結合を決定するため、Rag Gammaマウス(n=50)に25μgのIRdye−MabV1を尾静脈へのIV注射で投与した。注射後の様々な時点で、バックグラウンドを上回る検出可能シグナルが無くなるまでMousePOD(登録商標)を備えたオデッセイ・イメージング・システム(LI-COR(登録商標))で動物を画像化した。画像化の後、心臓から血液を採取し、臓器を摘出してオデッセイ・イメージング・システムでスキャンし、ホモジナイズして間接ELISAアッセイによりMabV1濃度を決定した。
【0158】
間接ELISAアッセイ
被覆溶液で希釈した組換えCXCL4L1蛋白をマイクロプレート上に固定化する。数工程の洗浄および遮断の後、血漿試料および臓器溶解液をこのプレートに加える。ビオチンにコンジュゲートさせたMabV1を含有する試料については、ストレプトアビジン−HRPおよび基質溶液(TMB)の添加直後に、450nmに設定したマイクロプレートリーダーで結果が直接得られる。一方、MabV1を含有する試料では、ビオチニル化抗マウス抗体を使用するさらなる工程が必要である。
【0159】
マウスの処置。
Rag Gammaマウスに3.10のBxPC3細胞を皮下注射し、2群に分け、IgG対照抗体50μg(対照群、n=16)または遮断抗体MabV1 50μg(MabV1群、n=16)を投与した。14日目に処置を開始し、抗体を週に2回iv注射した。腫瘍の大きさを毎週測定し、腫瘍体積を式:(4/3)ab2[式中、aおよびbは各々最大半径および最小半径である]を用いて算出した。7週目にマウスを殺し、腫瘍を切除し、測定し、液体窒素中に保存した後免疫組織化学的研究に付した。
【0160】
インビボ腫瘍ターゲッティング。
皮下にBxPC3腫瘍を有するマウスの尾静脈にIRdye−MabV1抗体を注射した。注射の6日後、動物を安楽死させ、組織を摘出しオデッセイ・イメージング・システムで画像化した。画像化後、直ちに臓器を凍結し、10個に切り分け、各々40μmの切片を免疫組織化学的研究およびオデッセイ画像化に付した。
【0161】
結果
本発明者等は、本発明の抗体(MabV1)が、インビボでPF4v1の機能を遮断し、インビボで血管新生を誘導できることを示した(図5)。MabV1およびコンジュゲート化MabV1のクリアランスをインビボ解析した(図6〜8)。さらに本発明者等は、MabV1がインビボで腫瘍を標的とすることができることを示した。これは、細胞毒性物質と組み合わせた場合、本発明の抗体が病的血管新生に関連する疾患、例えば癌の処置に有用となり得るということを示すものである。
【0162】
【表3】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟PF4v1蛋白の67位のヒスチジン残基を認識する、血小板因子変異体1(PF4v1)に対する抗体。
【請求項2】
モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
マウス抗体である、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
成熟PF4v1蛋白の67位のヒスチジン残基を認識し、PF4v1の抗血管新生活性を遮断する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体のフラグメント。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体または請求項4に記載のそのフラグメントをコードしている配列を含む核酸。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸を含むベクター。
【請求項7】
請求項5に記載の核酸および/または請求項6に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項8】
(i)請求項7に記載の形質転換された宿主細胞を、抗体またはそのフラグメントを発現させるのに適した条件下で培養し、そして(ii)発現された抗体またはそのフラグメントを回収する、ことから成る工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体または請求項4に記載のそのフラグメントを生成する方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体、および/または請求項4に記載のそのフラグメント、または請求項5に記載の核酸、および/または請求項6に記載のベクター、および/または請求項7に記載の宿主細胞を、薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項10】
検出可能な分子または物質で標識されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体、または請求項4に記載のそのフラグメント。
【請求項11】
生体試料を、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体、または請求項4に記載のそのフラグメント、または請求項10に記載の標識された抗体もしくはそのフラグメントと接触させる工程を含む、生体試料中のPF4v1を検出する方法。
【請求項12】
アテローム性動脈硬化症、例えば冠動脈性心疾患および末梢動脈疾患;創傷治癒障害;虚血;高血圧および糖尿病より成る群から選ばれる血管新生の誘導を必要とする病変の処置のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体、または請求項4に記載のそのフラグメント。
【請求項13】
血小板減少症、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、血小板増加症および骨髄異形成症候群といった血液疾患を処置するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体、または請求項4に記載のそのフラグメント。
【請求項14】
抗体またはそのフラグメントを細胞毒性物質と組み合わせた、癌、加齢黄斑変性症(AMD)およびその他の過剰増殖性眼疾患ならびに慢性炎症性疾患より成る群から選ばれる病的血管新生に関連する疾患の処置のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体または請求項4に記載のそのフラグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−504946(P2012−504946A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530476(P2011−530476)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063005
【国際公開番号】WO2010/040766
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【Fターム(参考)】