説明

血液の凝固を加速させる無機固形物

本発明は、無機材料の施用により血液の凝固を加速させる方法である。APTT臨床試験における貧血小板血漿またはACT臨床試験における全血の凝固を活性化させるために使用できる任意の固形物は、生体内(in vivo)での凝固加速剤として有効であることが見出された。生体内(in−vivo)での凝血のために使用できる典型的な材料としては、珪藻土、ガラス粉末またはガラス繊維、沈降シリカまたは煙霧シリカおよびカルシウム交換パームチットが挙げられる。このような材料は、水性スラリー、乾燥粉末または脱水型の形態で使用でき、適当な有機または無機の結合剤と結合され、および/またはさまざまな形態で含有されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝血剤/医療機器、および、動物およびヒトにおいて出血を制御する方法に関する。より詳細には、本発明は、血液の凝固を顕著に加速させるうえでの数々の異なる無機材料の有効性に関する。
【背景技術】
【0002】
血液は、液相中に分散した赤血球、白血球、小体および血小板を含む液体組織である。この液相は血漿であり、血漿は、酸、脂質、可溶化した電解質およびタンパク質を含んでいる。タンパク質はこの液相中に懸濁しており、濾過、遠心分離、電気泳動法および免疫化学的手法など、さまざまな方法のいずれかにより、液相から分離することができる。この液相中に懸濁した1つの特有のタンパク質が、フィブリノゲンである。出血が起こると、フィブリノゲンは水およびトロンビン(酵素)と反応してフィブリンを形成する。フィブリンは、血液中に溶解せず、重合して凝血塊を形成する。
【0003】
多種多様な状況において、ヒトを含む動物は創傷を負う可能性がある。多くの場合、そのような創傷には出血が伴う。場合によっては、創傷および出血は小規模で、止血の際には外部からの援助がそれほどなくても正常な凝血が機能する。不幸にも、他の状況においては相当な出血が起こることがある。このような場面では、特別な設備および材料、ならびに、適切な援助を施すよう訓練された人員が、通常は必要である。そのような援助が容易に受けられなければ、過剰な失血が起こりかねない。出血が激しいと、設備および訓練された人員を速やかに用意できるだけでは、時機を逸せずに流血を止めるには未だ不十分なことがある。そのうえ、戦場における場合など、適切な医療援助を速やかに受けられない非常に離れた地域または場面において重傷を負う場合もある。このような場合、重傷ではなくても、負傷者または負傷した動物に診察を受けさせるまでの十分な長さの時間にわたって止血することは重要である。加えて、負傷者が自らの正常な活動を再開することができるように、小規模の創傷であってもその凝血を加速させることが望ましいと考えられる。
【0004】
上記の問題に対処することを目指し、従来の援助が受けられないか、またはそうした援助が最適に有効とは言えない場面において過剰な出血を制御するための材料が開発されてきている。このような材料はいくらか功を奏することは示されているものの、外傷用としては十分に有効ではなく、高価であることが多い。さらに、このような材料は全ての場面において有効であるわけではなく、創傷に施用することも創傷から除去することも難しい場合がある。それに加え、またはそうではなくてもその代わりに、いくつかの材料、特に有機物由来のものは、望ましくない副作用を生じさせる可能性がある。
【0005】
血液中の凝血塊の形成を促進するための組成物もまた開発されている。そのような組成物としては、ゼオライトと結合剤(バインダー)とを含有するものが挙げられる。活性化ゼオライトの使用は、Hurseyらにより米国特許第4,822,349号明細書中で開示された(特許文献1)。凝血の際にこのような活性化ゼオライトを使用すると発熱することが認められ、Hurseyらは、焼灼効果を達成すると共に血液の凝固を高めるうえでこの熱は重要であると述べた。米国特許出願公開第2005/0074505A1号公報には、カルシウムイオンで非常に高度に交換されているゼオライトの使用が記載されている(特許文献2)。現在、出血時の止血治療として、クレイ(粘土)に結合されたCa交換ゼオライトAが、活性化された形態でZ−Medicaにより販売されている。いくつかのある場合には、このカルシウム交換ゼオライトAは、使用時に望ましくない発熱効果を呈すると報告されている。
【0006】
ある特定の状態の治療において、また、ある種の外科手術の間、患者の血液の凝固を防止するために抗凝血薬が慣例的に投与されるが、そのうち最も一般的なものがヘパリンである。ヘパリンは、心臓切開手術などの外科手術中の体外循環期にわたって高濃度で投与することができる。こうした処置中は、このような高濃度のヘパリンおよびその他の凝固パラメーターを監視するために、活性化凝固時間(Activated Clotting Time、ACT)、および、その他の評価項目(エンドポイント)ベースの凝固分析が頻繁に用いられる。
【0007】
凝血塊の形成は、複雑な段階である。凝固を理解するうえで、いくつかの原理が有用である。通常、凝血タンパク質は、不活性な前駆体として正常に循環している。凝固には、次の段階の反応の触媒として順に作用することから「凝固カスケード」と呼ばれることの多い、一連の活性化反応が含まれる。この反応(単数または複数)過程の間は、これらのタンパク質およびフィブリン塊そのものは、高度に不安定で水に溶解する。この不安定な状態は、凝固の一番最後の局面まで続くことになる。加えて、そのような凝血タンパク質がないか、またはその量が限られていれば(または抗凝血薬、すなわちヘパリンが存在する場合には)、凝血は遅くなるか、または長引くことになる。しかしながら、最終的にフィブリン(凝血塊の土台)は形成されることになる。この形成は、凝固タンパク質の1つであるフィブリノゲンの開裂に伴って起こる。最後に、第XIII因子(安定化因子)がトロンビンにより活性化され、高度に難溶性で構造の安定した架橋フィブリンが生じる。
【0008】
1966年、カリフォルニア州出身の医師、Paul Hattersley博士は、接触活性化用に微粒子を利用する新鮮な全血の凝血テストの設計および使用法を概説した。これは、臨床的に重要な時間枠において、迅速なテスト終結を容易にするためのものであった。Hattersleyが記載したテストには、活性化剤(珪藻土、Celite(登録商標))12mgを予め充填しておいた試験管中に、1ml以上の血液を入れることが含まれていた。この試験管は、患者の血液試料を入れる前に予め体温(37℃)に温められていた。血液が最初に試験管に入った時点でタイマーを始動させた。試験管が満たされてから、2〜3回上下逆さにして混合させた。次に、この試験管を37℃の水浴中に入れた。1分時点で、その後は5秒毎に試験管を水浴から取り出して上下に動かし、血液が試験管の長さ全体に広がるようにした。凝血塊の明らかな兆候が最初に見られた時点でタイマーを止めた。全血の凝血能力を測定するACT試験には、長年にわたり器具類の改良などの改変が成されてきた。このテストには、珪藻土、カオリン、ガラスビーズおよびコロイド状シリカなど、さまざまな活性化剤が使用される。血漿の凝血能をテストするためには、APTT(activated partial thromboplastin time procedure;活性化部分トロンボプラスチン時間法)として公知の同様のテストが用いられる。ACTテストが最初に開発されたのは40年より前のことであるが、実験室内で血液の凝固をテストするために用いられる種類の活性化剤がヒトおよび動物の創傷から出る血液を凝血させるうえで極めて有効であることは、本発明において初めて見出されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,822,349号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0074505A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多くの無機材料は血液の凝固を加速させるであろうということが見出された。とりわけ、APTT臨床試験における貧血小板血漿(platelet−poor plasma)またはACT臨床試験における全血の凝固を活性化させるために使用できる固形物は、生体内(in vivo)での凝固加速剤としても役立つであろうということが見出された。加えて、さまざまな他の材料も凝血を加速できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
生体内(in−vivo)での凝血のために使用できる典型的な材料としては、珪藻土、ガラス粉末またはガラス繊維、沈降シリカまたは煙霧シリカ、カオリンおよびモンモリロナイト粘土、Ca交換パームチットが挙げられる。このような材料は、水性スラリー、乾燥粉末または脱水型の形態で使用でき、適当な有機または無機の結合剤(バインダー)と結合させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
珪藻土は、天然に存在する軟らかいチョーク様の堆積岩であり、白色からオフホワイト色の微細な粉末に容易に崩れる。この粉末は軽石の粉末同様のざらざらした触感を有しており、多孔度が高いため非常に軽い。珪藻土はシリカで主に構成され、硬い殻をもつ藻類の一種である珪藻の化石から成る。
【0013】
生体活性ガラスとは、表面反応性のガラスセラミックス群のことであり、最初の生体活性ガラスであるBioglass(登録商標)が挙げられる。これらのガラスには生体適合性があることから、こうしたガラスは、病気に罹患しまたは損傷した骨を修復したり置き換えたりするための、ヒトの体内におけるインプラント材料としての使用のために広範に調査されることとなった。
【0014】
使用した装置は、Morton Grove、イリノイ州のHaemoscope Corp.製のTEG(登録商標)分析器であった。この装置は、最初のフィブリン形成までの時間、最初のフィブリン凝血塊が最大強度に至るまでの反応速度、ならびに、フィブリン凝血塊の最終的な強度および安定性、ひいてはフィブリン凝血塊が止血の機能を果たす能力、すなわち、不適切な血栓形成を許容することなく出血を機械的に妨げる能力を測定する。
【0015】
活性化していない試料(unactivated samples)については、
i.赤い蓋付きの試験管から360μLをピペットで取りカップに入れ、TEGテストを開始する。
【0016】
活性化した試料(activated samples)については、
i.まず、テストする試料を実験室から入手する。この試料は、実験開始に先立ち、計量し、ボトルに詰め、(必要に応じて)オーブンで活性化させてから蓋をしなければならない。無機固形物試料は、テストに必要な量の2倍をボトルに詰める。例えば、5mgの無機固形物Aと血液とをチャネル2でテストする場合には、チャネル2用のボトル中に量り入れる量は10mgとなる。試料10mg用には20mgを量りとる、など。理由については以下の注を参照されたい。
ii.1回の活性化実験について、一度に3種の無機固形物試料をテストした。添加剤を含まない、活性化していない血液試料は、第1のチャネル中で実験する。チャネル2、3および4は無機固形物と接触させた血液試料である。
iii.テストの準備が整ったらすぐに、1つのピペットを720μLに、他のピペットを360μLに設定する。採血するために赤い蓋付きの試験管(化学薬品無添加で無地の、ポリプロピレンで覆われた管)3本を用意し、また、無機固形物試料を中に注ぐための追加の赤い蓋付きの試験管を3本用意する。
iv.志願者から採血して、TEG分析器に戻す。血液試料の組織因子の混入を最低限にするために、採取した1本目の管を捨てる。ドナーの採血から4〜5分が経過する前に、血液試料を無機固形物材料と接触させてから、TEG機械中で実験を行う。
v.ボトル1を開け、赤い蓋付きの試験管中に無機固形物を注ぐ。
vi.試験管中の無機固形物に血液720μLを速やかに加える。
vii.5回上下逆さにする。
viii.血液と無機固形物との混合物360μLをピペットで取り、カップ中に入れる。
ix.TEGテストを開始する。
【0017】
注:血液と無機固形物とを最初に混合する際の、血液と無機固形物の割合は2倍になっているが、その理由は、いくらかの量の血液がバイアル側面に失われるため、また、中には血液を吸収する試料があるためである。2倍の量を用いることにより、カップ中にピペットで注ぐための血液が少なくとも360μLあることが確実になる。本発明者らが調べている無機固形物対血液の比率は、通常、5mg/360μL、10mg/360μL、および30mg/360μLである。
【実施例】
【0018】
以下の表中で報告するR(分)は、TEG分析器により報告されたとおりの、実験開始から最初の凝血塊形成までの時間である。TEG(登録商標)分析器には、4°45’の弧を描いて、設定したスピードで絶えず前後に振動する試料カップが付いている。各回転は10秒続く。全血試料360μLをカップ中に入れ、ねじれワイヤーに取り付けられている固定ピンを血液中に浸漬させる。最初のフィブリンが形成されると、フィブリンによりカップとピンとが繋がれ始め、それによりピンは、凝血塊を含む相中で振動するようになる。ピンの動きの加速は、凝血塊の発達速度の関数である。回転するカップのトルクは、フィブリン−血小板結合によりカップとピンとが一緒に繋ぎ合わされた後でのみ、浸漬されたピンに伝わる。強度の高い凝血塊であればカップの動きに伴い相中のピンを直接動かす、というように、このフィブリン−血小板結合の強度はピンの動きの大きさに影響する。したがって、出力(アウトプット)の大きさは、形成される凝血塊の強度と直接関係がある。凝血塊が収縮または溶解するにつれ、この結合は壊れ、カップの動きの伝達は減る。ピンの回転運動は機械−電気トランスデューサーにより電気信号に変換され、この信号はコンピューターによりモニターできる。
【0019】
結果として得られる止血プロファイルは、最初のフィブリン糸が形成されるのに要する時間、凝血塊形成の速度、凝血塊の強度(せん断弾性(ずり弾性)の単位dyn/cmで)および凝血塊の溶解性の尺度である。以下のデータが志願者ドナーから収集された。各事例には、既知量の材料を加えた後のデータと共に、何も加えられていない(純粋な)血液のデータが含まれている。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
試験した材料は以下のものを含む:
1.以下の混合物を調合することにより、ケイ酸カルシウム組成物を含むメソ多孔質の生体活性ガラスを調製した:
混合物A テトラエチルオルトシリケート15g、硝酸カルシウム四水和物5.0g、エタノール20.1g、脱イオン水7.5gおよび1M HCl 2.5g。
混合物B Pluronic P123トリブロックコポリマー(BASF)20.02gをエタノール80.12g中で溶解させることにより、トリブロックコポリマー溶液を作製した。
混合物C 45mlの混合物Bを混合物Aに加え、磁気撹拌により2分間撹拌した。次に、この混合物を蓋のない磁器製のるつぼに入れて60℃で16時間加熱してから、炉に入れて1分当たり3℃のペースで550℃に加熱し、550℃で4時間維持した後、100℃に冷却した。次に、この材料を炉から取り出して室温に冷却した。
2.Diafil460(World Minerals Inc.は、サンタバーバラ、カリフォルニア州、米国に本拠を置く) 表面積が大きい(およそ30m/g)珪藻土
3.テトラエチルオルトシリケート46.8ml、硝酸カルシウム四水和物21.43g、脱イオン水45mlおよび2M硝酸7.6mlを250mlのポリテトラフルオロエチレン製のボトルに加えることにより、Ca−シリケートのゾル−ゲルガラスを合成した。この混合物を短時間手で振ってから密封し、対流式オーブンに入れて50時間60℃に加熱した後、1分当たり0.1℃のペースで25℃まで冷却した。ボトルから蓋を外してから、ボトルをオーブンに戻して1分当たり0.1℃のペースで60℃から180℃に加熱し、その後180℃で12時間維持してから、1分当たり2.5℃のペースで25℃まで冷却した。次に、この乾燥ゲルを磁器皿中に置き、炉中に入れて1分当たり0.9℃のペースで105℃に、次いで1分当たり0.2℃のペースで160℃に、次いで1分当たり0.5℃のペースで500℃に、次いで1分当たり0.1℃のペースで700℃に加熱した。炉を700℃で1時間維持してから、1分当たり10℃のペースで25℃に再度冷却した。加熱した材料をデシケーター中に入れて保管した。
4.Celite209(World Minerals Inc.は、サンタバーバラ、カリフォルニア州、米国に本拠を置く) 表面積が中程度(10〜20m/g)の珪藻土
5.Celite270(World Minerals Inc.は、サンタバーバラ、カリフォルニア州、米国に本拠を置く) 表面積が小さい(4〜6m/g)珪藻土
6.リン酸一カルシウム一水和物64gを1分当たり10℃のペースで500℃に加熱することにより、ポリリン酸カルシウムガラスを調製し、500℃で15時間維持した。次に、この材料を1分当たり10℃のペースで500℃から1100℃に加熱し、1100℃で1時間維持した。次に、溶融したポリリン酸ガラスを脱イオン水1リットル中に直接注いだ。その結果得られたガラスフリットを110℃で1時間乾燥させてから、コランダムの振動ミルに入れて粉砕し、微細な粉末とした。
7.Siltex18(シリカ97%の繊維ガラス布) SILTEXは高性能の繊維織物のシリーズで、高純度、高強度の非晶質シリカ繊維から成り、この繊維を、過酷な温度条件が存在する場合に使用するように設計された丈夫で柔軟な織物に織り上げたものである。
8.焼成Zr−Siガラス(耐アルカリ(AR)ガラス繊維) St.Gobain Group、Courbevoie、フランス
9.Hi−Sil250(沈降シリカ(シリカゲル)) PPG Industries、ピッツバーグ、ペンシルベニア州
10.ケイ砂(シリカおよそ99%)
【0024】
3種の珪藻土試料(Diafil460、Celite209、Celite270)およびHi−Sil250では、非常に有意な凝血の加速が観察された。より高用量のSiltex、ならびに、ARガラス繊維(焼成Zr−Siガラス)、ケイ砂、ケイ酸カルシウムゾルゲルガラス(メタ多孔質でないCaO−SiO)およびポリリン酸カルシウムガラスでは、有意な加速が見られた。
【0025】
他の適切な止血剤または吸収剤を添加してもよい。このようなものとしては、キトサンおよびその誘導体、フィブリノゲンおよびその誘導体(本明細書で「フィブリン(またはフィブリノゲン)」として表現するもの、例えば、フィブリノゲンの開裂産物であるフィブリン)、または、さまざまな超吸収性ポリマー、さまざまなセルロース、他にもカルシウムイオン、銀イオンおよびナトリウムイオンなどの陽イオンもしくは陰イオン、その他イオン交換樹脂、ならびに、その他のイオン特性または荷電特性を有していてもいなくてもよい超吸収性ポリマーなどの合成または天然の吸収体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
加えて、無機固形物は、血管収縮および止血を促進する血管作用剤または他の作用剤がさらに添加されたものであってもよい。そのような作用剤としては、カテコールアミンまたは血管作用性ペプチドを挙げ得る。このような物質は、血液が吸収されると添加剤が活性化し始め、組織中に浸出してその効果を発揮するので、乾燥形態の場合に特に有益と考えられる。加えて、感染症を防止し痛みを和らげることにより治癒を高めるために、感染症を防止する抗生物質および他の作用剤(任意の殺菌性または細菌発育阻止性の作用剤または化合物)ならびに麻酔薬/鎮痛薬を添加してもよい。さらに、蛍光性の作用剤または成分を添加して、出血の確定的な制御が得られた後に、ミネラル(鉱物性物質)の滞留を確実に最小限にするために、ある種のミネラル(鉱物性物質)を外科的に除去する際に役立てることもできよう。
【0027】
本発明の製剤は、当業者に周知のさまざまな手段のいずれかにより出血部位に投与してよい。例としては、内部的に(例えば、液体または錠剤の形態の摂取により)、創傷に直接(例えば、粉末状または顆粒状の形態の材料を出血部位の中もしくは上に直接振りかけることにより)、この材料をしみ込ませた包帯(絆創膏)などの材料を創傷の中もしくは上に配置することにより、この材料を創傷の中もしくは上にスプレーすることにより、または、他の様式によりこの材料で創傷を覆うことにより、といった手段が挙げられるが、これらに限定されない。包帯(絆創膏)は、圧力をかけると曲がることで創傷部位の形状に適合する種類のものであってもよい。特定の種類の創傷に詰めるには、モルタルまたは他の半固形−半液体の形態に似た、部分的に水和した形態などを使用してよい。腹腔内の出血の場合は、本発明者らは、トロカール(外套針)を用いて腹膜を穿刺してから、多様な適当な剤形の無機固形物を投与することを想定している。
【0028】
したがって、製剤は、多様な形状、大きさならびに柔軟度および/または剛性度の包帯(絆創膏);ゲル;液体;ペースト;スラリー;顆粒;粉末および他の形態など、さまざまな形態をしていてよい。粘土鉱物は、リポソームまたは他の賦形剤などの特殊な担体中に組み込むことができ、局所的に、消化管(胃腸管)に、腔内またはさらには血管内のいずれかにそれらを送達するうえで助けとなる。加えて、このような形態を組み合わせたもの、例えば、創傷上に直接配置される柔軟なスポンジ様材料またはゲル材料を併せ持ち、取り扱いやすく操作しやすい保護用のやや硬い材料の裏打ちを外側に備え、その外層が施用後の創傷に機械的保護をもたらす包帯(絆創膏)を使用してもよい。内側および外側の材料は両方とも粘土鉱物を含有してよい。鉱物粘土が出血部位と十分に接触して止血を促進する限りは、任意の投与手段を用いてよい。
【0029】
多種多様な状況における出血を制御するために、粘土鉱物を含む組成物を利用することができ、そのような出血の制御の非限定的な例として、以下のものが挙げられる:(a)液体、スラリー、ゲル、スプレー、泡、ヒドロゲル、粉末、顆粒、または、これらの調製品での包帯(絆創膏)による被覆の使用による、創傷からの外出血(急性および慢性)の制御;(b)摂取可能な液体、スラリー、ゲル、泡、顆粒または粉末の使用による、消化管出血の制御;(c)エアロゾル化した粉末、スプレー、泡、パッチ、または被覆されたタンポンの使用による、鼻出血の制御;(d)液体、スラリー、スプレー、粉末、泡、ゲル、顆粒、またはそのようなもので被覆された包帯(絆創膏)の使用による、体内の固体臓器または骨の損傷の制御;および(e)あらゆる種類の創傷の治癒(そのような創傷に由来する痛みの制御を含む)を促進するための、止血、体液吸収およびタンパク質分解酵素の阻害の促進。
【0030】
本発明の多くの用途は、出血している創傷の全表面に適合する包帯(絆創膏)の表面を得るという公知の課題に基づくものである。顆粒、粉末、ゲル、泡、スラリー、ペーストおよび液体を使用すると、どれだけ対象表面が不規則であっても、本発明の調製品が全表面を覆うことが可能になる。例えば、鼠径部の外傷は、単純に直接圧迫することにより、または普通の平らな包帯(絆創膏)を使用することにより制御するのは非常に困難である。しかしながら、例えば、粉末、顆粒調製品、ゲル、泡、または、創傷中に垂らし、吹きかけまたは押し出すことのできる粘性の非常に高い液体調製品の形態の無機材料を使用し、次いで圧迫を加えることにより、治療を実施できる。本発明の調製品の1つの利点は、不規則な形状の創傷に施用して、創傷跡、すなわち弾丸、ナイフの刃などといった傷害をもたらす物質の通過経路を密封することが可能な点である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝血促進剤を血液と接触させる工程を含む、凝血を促進する方法であって、前記凝血促進剤が、珪藻土、ガラス粉末またはガラス繊維、沈降シリカまたは煙霧シリカおよびカルシウム交換パームチットから成る群から選択される無機材料を含む、前記方法。
【請求項2】
前記無機材料がイオン交換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオンがカルシウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記無機材料が、メソ多孔質でないガラス粉末またはガラス繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記無機材料がポリリン酸カルシウムガラスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記無機材料がシリカゲルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記凝血促進剤が、織物繊維製品、不織繊維製品、パフ、スポンジおよびその混合物から成る群から選択される多孔質の担体内に含有される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
凝固する前記血液が、動物またはヒトにおける創傷から流れる血液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記無機材料が、前記無機材料がない場合に比べて約2〜12倍速い速度で凝血を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記凝血促進剤が、抗生物質、抗真菌(抗カビ)剤、抗菌(抗微生物)剤、抗炎症剤、鎮痛薬、細菌発育阻止剤、銀イオンを含有する化合物、キトサン、フィブリン(またはフィブリノゲン)、トロンビン、超吸収性ポリマー、カルシウム、ポリエチレングリコール、デキストラン、血管作用性カテコールアミン、血管作用性ペプチド、静電剤、麻酔剤または蛍光剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513291(P2010−513291A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541453(P2009−541453)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/084804
【国際公開番号】WO2008/140572
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】