説明

血液サンプルの凝固時間を測定するためのキット

【課題】患者からの血液サンプルの凝固時間を簡単に測定できるようにする。
【解決手段】患者からの血液サンプルの凝固時間を測定するためのキットが、(a)端部において血液サンプルを受容するように構成された使い捨て可能なセンサであって、前記センサが、(i)前記センサの前記端部から血液サンプルの試験部分を引き込むように形成された試験槽であって、前記試験槽の内部空間を画定する壁部を有する前記試験槽を具備し、(b)前記試験槽の前記壁部の外面に配設された1対の電極と、(c)前記試験槽内のサンプルの静電容量を第1の電容量として測定するための静電容量測定回路であって、前記使い捨て可能なセンサを受容して少なくとも1つの前記1対の電極と電気接触する前記容量測定回路と、(d)前記静電容量測定回路により測定された前記第1の静電容量に従って凝固時間を決定するための分析器と、を具備して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量または抵抗によって液体試料の粘性を決定するための装置と方法に関し、特に、高い訓練を受けた臨床検査室技術者または他の技術医療者による干渉を実質的に必要とすることなく、在宅試験環境の患者による血液試料の凝固分析のための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凝固時間は、患者からの血液サンプルの凝固に必要とされる時間量である。凝固時間の決定は、例えば、薬のワルファリンを服用しているそれらの患者のように、抗凝固療法を受けている患者にとって重要である。このような薬のための投薬処方は各個別患者について決定し、次に凝固時間に従って調整しなければならない。1人の患者の凝固時間を増加しない投薬処方は、他の患者に凝固時間の過度のまた危険な延長をもたらすかもしれない。投薬処方の決定は、血液内のタンパク質に強く結びついたまま留まる可能性のあるワルファリンのように、ある抗凝固薬の薬理学的特性によってさらに複雑になり、この結果体内の生物学的に利用可能な薬の量を調節することが難しくなる。かくして、各患者について凝固時間を慎重に監視しなければならない。
【0003】
残念ながら、現在のところ、凝固時間は臨床検査室装置で臨床検査室技術者によって測定することができる。検査室で凝固時間の測定のために使用される装置は、血液サンプルの光学的または機械的分析によって決定される凝固に関する時間間隔を必要とする。例えば、市場で調達可能な機械の診断アッセイはBoehringer Mannheim Corpから入手可能であり、またプラズマ試料の内部で磁石によって攪拌される金属ボールの挙動の自動分析に基づく。これらのボールは自動マシンビジョン技術によって検査され、ボールが磁力の影響を受けてもはや動かなくなる時を決定する。凝固は、サンプル内のこのような運動の欠如が観察される時に生じたと想定される。従来技術に開示された他の診断アッセイによれば、分析される血液サンプルは毛細管に配置される。サンプルが毛細管を通してもはや動かなくなる時、凝固が生じている。毛細管を通した運動の停止の決定は光学分析によって行われる。光学分析は、熟練した検査室技術者により毛細管内のサンプルの観察を通して手動により、あるいは光源と光検出器を用いて血液サンプルの光学的濃度の変化を決定することによって自動的に実行することが可能である。
【0004】
例えば、手動による凝固の視覚検出のための光装置が特許文献1に開示されている。同様の使い捨て可能な装置が特許文献2に開示されている。サンプルを通して光束を送り、また光検出器によってサンプルを通過する光量を検出することによって、光学的濃度の変化を測定するより自動化した装置が、特許文献3と特許文献4に開示されている。これらの装置のすべては、操作が複雑であるか、あるいは組み立てが複雑である不都合を有する。例えば、血液サンプルが毛細管を通して移動する時にその目視検査によって凝固時間を測定するためには、サンプルが移動を停止する時点を正確に決定するために大きな濃度が必要となる。このような濃度は熟練した検査室技術者にとって難しいことではないかもしれないが、在宅試験環境で凝固時間を測定することを望む一般患者に過度の負担を課することになる。かくして、視覚分析によって凝固時間を決定するための装置の少なくとも1つの使い捨て可能な別形態が特許文献2に開示されているが、このような装置は在宅試験市場には利用可能でない。
【0005】
光束が光源から血液サンプルを通して光検出器に伝送される光学分析用の代替形態は、在宅試験装置として製造するにはあまりにも複雑かつ高価である不都合を有する。また、このような装置は通常ベースで慎重な維持と較正も必要とすると思われ、これも在宅試験の間一般患者に過度の負担を課する。かくして、自動光学分析は在宅試験環境に適切でない。
【0006】
血液凝固の電気的定量のための装置も開示されている。例えば、1つのこのような装置によって、サンプルの電気インピーダンスの変化を測定することによって血液サンプルの凝固が決定された(非特許文献1および特許文献5)。同様の装置が特許文献6にも開示された。しかし、この装置はサンプルのインピーダンスを測定するために複雑、繊細および感度の高い検査室装置を必要とし、これは在宅試験に適切ではないと思われる。さらに、装置は20年以上前に最初に開示されたが、市場で調達可能な同等装置は検査室のためにあるいは在宅試験環境のために製造されてこず、これはこのような装置の設計、生産および操作に固有の技術的な困難を暗示するものである。かくして、電気インピーダンスの測定は在宅試験環境における凝固時間の決定に適切でない。
【0007】
凝固時間のある形態の電気的測定を利用する他の装置が開示されているが、再びこれらの装置のいずれも在宅試験環境に適切でない。例えば、特許文献7は、サンプルが振動発生機によって撹拌される時の電圧の変化を測定することによって液体サンプルの粘性の変化を決定する装置を開示している。明らかに、このような装置は環境の振動に対して感度が高く、したがって一般患者による操作には適切でないであろう。
【0008】
特許文献8は、血液の凝固時間を決定するための装置を開示している。一方の電極は、金属ブロックサーモスタットに保持された血液サンプルに間隔を空けて浸漬され次に引き上げられ、そして引き上げた電極と金属ブロックとの間の静電容量が測定される。血液が凝固するにつれ、引き上げた電極に粘性液体の繊維が付着し、静電容量が変化する。この装置は装置の慎重な取扱いと凝固の進行の手動モニタリングを必要とするので、一般患者による操作には確かに適切でないであろう。さらに、開示された装置は小さなポータブル装置内で自動化できないであろう。かくして、特許文献8に開示された装置は在宅試験環境には確かに適切でないであろう。
【0009】
他の実施例として、特許文献9は血液凝固を検出するための装置を開示している。この装置は血液サンプルを受容するための多孔性シートを含む。次に、凝固は光学的に、あるいは抵抗の測定によって電気的に検出される。しかし、多孔性シートは血液サンプル用のレセプタクルとしては多くの不都合を有する。例えば、多孔質媒体を通した輸送速度を制御するような問題を克服するためにおよび/またはフィブリン塊の粘着を促進するために、ゼラチン被覆、界面活性剤または親水性の重合体のような種々の物質がシートに加えられる(コラム5、ライン16−34)。さらに、血液(または任意の液体試料)は多孔性シートの内部で移動するので、シートの表面に触れる電極との液体の接触は、液体標本の電気特性の正確な測定を行うために十分に密接していない可能性がある。かくして、特許文献9に開示された装置は明らかに不十分である。
【0010】
さらにもう1つの実施例として、特許文献10と特許文献11の両方は、サンプルの電気抵抗と光学的濃度の両方を測定する装置を開示している。前述のように、光学的濃度の測定は在宅試験環境にとって過度に複雑な装置を必要とする。さらに、特許文献10が公開されて以来20年以上経過し、また特許文献11が公開されて以来4年が通過したが、その間、このような装置は在宅試験環境のために利用可能でなく、またこのような装置のために臨床試験も行われていない。かくして、これらの従来技術の電気装置は、一般患者による操作に適切であるとは証明されていないことが明らかである。
【0011】
一般患者による在宅試験環境の装置使用の成功例の1つの実施例を、全く異なった医学分野に見つけることができる。現在、糖尿病患者は、血糖レベルの決定のために小さな十分に携帯可能な電気装置を使用している。この装置の操作は非常に簡単である。血液の一滴が患者から採取され、また装置に挿入される小さなカードの上に配置される。短時間後に、サンプル内のブドウ糖の濃度が小さなスクリーン上に表示される。かくして、市場で調達可能なブドウ糖試験装置は一般患者にとって取扱いが簡単であり、また在宅試験環境の厳しさに耐えるために十分に頑丈であり、なお臨床的に相当の結果を生成するために十分に正確である。
【特許文献1】米国特許第3,951,606号
【特許文献2】PCT出願国際公開第96/00395号
【特許文献3】米国特許第5,039,617号
【特許文献4】米国特許第5,197,017号
【特許文献5】米国特許第3,699,437号
【特許文献6】米国特許第3,674,012号
【特許文献7】米国特許第5,491,408号
【特許文献8】DDR(以前の東ドイツ)特許第DD237454号
【特許文献9】米国特許第5,601,995号
【特許文献10】米国特許第3,840,806号
【特許文献11】PCT出願国際公開第94/16095号
【非特許文献1】A.Ur、Nature、226:269−270、1970年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
明らかに、一般患者が在宅環境で凝固時間を決定するための同等装置は著しく有用であり、また商業的に成功すると思われる。凝固時間の在宅試験は、クリニックでの1週間毎または隔週毎の測定によるよりも、むしろ毎日の評価を介した測定のより大きな臨床上の効用と、一般患者にとってより大きな便利さとを含み、いくつかの利点を提供する。これによって、患者は、測定凝固時間のすべての突然の変化に応答して医療を直ちに求めることができる。現在、患者はクリニックに通い、ヘルスケア専門家に血液サンプルを採取させ、次に結果を待たなければならない。このような複雑で、不便な、また時間を浪費させるプロセスは、患者の遵守の低下を潜在的にもたらす場合がある。これに反して、家で試験することは潜在的により便利かつより廉価であり、また患者の遵守を増す可能性がある。残念ながら、凝固時間の測定のためのこのような在宅試験装置は簡単には利用可能でない。かくして、現在、一般患者は家庭で凝固時間を測定することができず、あるいはあまり望ましくない臨床試験プロセスに頼らなければならない。
【0013】
したがって、在宅試験環境で一般患者が実行することができ、頑丈かつ正確であり、同時に操作が簡単であり、好ましくは静電容量の測定を介して他の型式の液体サンプルの粘性を決定するために潜在的に使用することができ、また一般患者による介入をかなり最小にするために実質的に自動化される、凝固時間の測定のための方法と装置を持つ必要性があり、またそのことが有用であろう。
【0014】
本発明の1つの目的は、任意の液体の粘性を決定するための、特にこのような粘性の変化を検出するための新奇な装置と方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、血液サンプルの凝固時間を決定するための新奇な装置と方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、毛管チャネルを通してサンプルが移動する距離が凝固時間に比例するように、血液サンプルが、毛管チャネルを通したサンプルの運動に基づき電気分析を受ける、このような装置を提供することである。
【0017】
本発明のなお他の目的は、電極の間の静電容量の量がサンプルが移動する距離に比例するように、2つの平坦な電極をチャネルの各側面に、あるいはチャネルの頂部およびその下に配置することにより、チャネルの静電容量を測定することによって電気分析が実行される、このような装置を提供することである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、電流の量がサンプルが移動する距離に比例するように、一方がチャネルのいずれかの側面にある2つの電極の間を通過する電流を測定することによって、追加してまたは代わりに電気分析が実行される、このような装置を提供することである。
【0019】
本発明のなお他の目的は、電極が、試験されるサンプルと接触していないこのような装置を提供することである。
【0020】
同様に本発明の他の目的は、在宅試験環境の一般患者による操作に適切なフォーマットの凝固時間を決定するための装置を提供することである。
【0021】
本発明の上記と他の目的は図面、説明および請求項から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明により、患者からの血液サンプルの凝固時間を測定するためのキットが提供され、このキットは、(a)端部において血液サンプルを受容するように構成された使い捨て可能なセンサであって、このセンサが、センサの端部から血液サンプルの試験部分を引き込むように形成された試験槽であって、試験槽の内部空間を画定する壁部を有する試験槽を含む、使い捨て可能なセンサと、(b)試験槽の壁部の外面に配設された1対の電極と、(c)試験槽内のサンプルの静電容量を第1の静電容量として測定するための静電容量測定回路であって、使い捨て可能なセンサを受容して1対の電極の少なくとも1つと電気接触する静電容量測定回路と、(d)静電容量測定回路により測定された第1の静電容量に従って凝固時間を決定するための分析器と、を備える。
【0023】
好ましくは、1対の電極は静電容量測定回路と一体形成される。あるいはまた好ましくは、1対の電極は試験槽と一体形成される。
【0024】
好ましくは、キットはさらに、(e)血液サンプルを得るために患者の皮膚を刺すためのニードルを備える。
【0025】
以下、用語「被験体」とは、本発明の方法とシステムが実行されるか、あるいは操作される人または下等哺乳動物を指す。以下、用語「患者」とは、本発明の装置と方法によって血液サンプルが分析のために抽出可能な任意の人を指す。以下、用語「自己試験」および「自己操作」は、同一の患者によるあるいは医療専門家ではない他の一般個人による患者からの血液サンプルの分析を指す。以下、用語「在宅試験環境」および「在宅環境」とは、クリニック、臨床または研究検査室、医療専門家のオフィスまたは病院以外の環境を指す。在宅試験環境の実施例は患者の家であろう。
【0026】
以下、用語「凝固時間」とは、血液サンプルが凝固するために必要な時間間隔と関係する任意のパラメータの測定を含む。これらのパラメータの実施例は、プロトロンビン時間と部分プロトロンビン時間を含むが、それらに限定されない。以下、用語「血液サンプル」は、全血、プラズマまたは血清のサンプルを含むことが可能であるが、それらに限定されない。
【0027】
以下、用語「電極」とは、電気を伝える能力があり、また静電容量の測定に適切な任意の導体を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、液体サンプルの粘性を決定するための、特に在宅試験環境における特に血液サンプルの凝固時間を測定するための方法と装置を指向する。本発明の装置は、血液サンプルが配置される使い捨て可能なカード、または他の使い捨て可能なセンサを受容するように意図された本体を含む。センサは装置の本体に挿入され、次に装置はサンプルの静電容量のような電気特性を測定する。次に、測定された静電容量は凝固時間を決定するために利用される。あるいは、サンプルを通過する電流の振幅のような電気特性が凝固時間を決定するために利用される。好ましくは、決定された凝固時間は次に例えばスクリーンに表示される。
【0029】
電気特性は、2つの電極を試験槽のいずれかの側面に配置することによって決定することができるであろう。好適な実施形態では、電極は液体サンプルに接触しないが、電極を槽の外壁に配置することによって、あるいは電極に電気絶縁材料を被覆することによって液体サンプルから絶縁される。凝固する前の血液サンプルのような液体サンプルが槽を移動する距離は、直接液体の粘性と関係するであろう。例えば、最大静電容量に到達するために必要な時間間隔を測定することができるであろう。あるいは、固定時間間隔が経過した後に静電容量を測定することができるであろう。またあるいは、最大電流の到達に必要な時間間隔を測定することができるか、あるいは固定時間間隔が経過した後に電流の量を測定することができるであろう。
【0030】
1つの好適な本発明の実施形態によれば、両方の電極が槽の長さにわたって、例えば外壁に沿って延在するか、さもなければ例えば追加の絶縁層によって液体サンプルから絶縁されるように、電極を配設できるであろう。あるいはまた好ましくは、両方の電極は槽の一部のみに沿って延在するようにかなり短いであろう。1つの電極は、重なり合うことなく、実質的に他方の電極よりも槽の入口により近く配置されるであろう。静電容量が測定可能になるか、あるいはあるレベルに到達するために必要な時間は、例えば液体の粘性または凝固時間を計算するために決定されるであろう。あるいは、回路を閉じるために必要な時間は、他の実施例のように液体の粘性または凝固時間を計算するために選択的に決定されるであろう。
【0031】
本発明の他の好適な実施形態によれば、装置は、制御サンプルの凝固を決定するための基準槽をさらに含む。
【0032】
本発明による凝固時間を決定するための方法と装置の原理と操作は、図面と添付の説明を参考にして、より良く理解することが可能であり、これらの図面は例示目的のみのために与えられ、また限定的な意図がないことが理解される。
【0033】
次の説明は3つのセクションに分割される。第1のセクションでは、血液サンプルのような液体サンプルの静電容量の測定を説明する。第2のセクションでは、液体サンプルの抵抗の測定を説明する。第3のセクションでは、リガンド/レセプタ対と本発明の装置との相互作用の検出を説明する。
【0034】
セクション1:静電容量の測定
次に図面を参照すると、図1は本発明による液体の粘性を決定するための模範的な方法のフローチャートを示している。ステップ1では、電力が電極に供給される。例えば、一定電圧を電極の間に印加することができる。電極は好ましくは平らであり、また液体が直接電極に接触しないように液体から絶縁される。供給される電力は交流電圧でなければならない。
【0035】
ステップ2では、液体サンプルは2つの電極を有する槽の入口に配置される。槽の下方面は、正方形、長方形、円および楕円を含むが、それらに限定されない任意の適切な形状であり得る。槽は、好ましくは単一の毛管チャネルのみを特徴づける。
【0036】
ステップ3では、液体は、受容器の作用を介して、例えば毛管作用によって、あるいは真空の印加によって、重力によって、あるいは機械的または浸透圧を介して槽を移動し、これによって、液体は電極の部分に直接接触しないが、液体によって覆われる電極の表面積を増加する。あるいは、槽内の液体体積が、測定される静電容量に直接相関するように、液体は槽内に広がる。真空は、受容器の実施例である吸引装置の存在によって印加することができる。毛管作用は、槽の毛管深さおよび/または槽の狭い溝形状のような毛管構造によって引き起こすことができるであろう。槽の毛管深さは、液体が毛管作用によって槽に入るのを保証するように選択される深さである。
【0037】
ステップ4では、液体の運動は、液体によって占められる体積が増加するにつれて変化する電気特性を引き起こす。例えば、測定静電容量は増加することがある。静電容量の測定のため、容量計を電極に電気接続すべきである。ステップ5では、電気特性の変化は液体サンプルの粘性を決定するために利用される。
【0038】
本発明の方法は、例えば、血液サンプルが凝固する時にその粘性を測定するために使用することができる。血液サンプルが患者から採取され、次に前述のように槽の入口に配置される。次に、凝固時間は、固定時間間隔が経過した後に静電容量を測定することによって、あるいは、例えば最大静電容量に到達するために必要な時間間隔を測定することによって、決定することができる。どちらの場合も、血液サンプルが凝固するために必要な時間の長さは、凝固が生じる前にサンプルが占める体積に直接関係するであろう。例えば、固定時間間隔が経過した後に静電容量が測定されたならば、凝固時間も増加するので、これによって凝固が生じる前に血液サンプルは槽のもっと下方に移動するのが許容されるので、静電容量の種々の測定量の大きさが増加するであろう。同様に、最大静電容量に到達するために必要な時間間隔が測定されるならば、凝固時間も増加するので、この時間間隔は増加するであろう。かくして、凝固時間が増加するにつれて、凝固が生じる前にサンプルが占める槽の体積もまた増加する。
【0039】
例えば2つの電極の間を通過する電流の量よりも、むしろ静電容量を測定するための利点は、静電容量の測定がサンプルそれ自体を変更しないことである。サンプルは実質的に決して電極の部分に直接接触しないので、サンプルの特性は電極および/または電極に供給される電圧によって変更されない。それに反して、サンプルを通過する電流を測定するために、電極の少なくとも一部分がサンプルに直接接触しなければならない。このような直接的な電気接触は、血液サンプル内の電気化学的な化学種を消費し、これによって次にサンプルを通過する電流の量が減少する。しかし、槽のさらに中への血液サンプルの運動は、サンプルが占める槽の体積を増加し、したがってサンプルを通過する電流の量を増やす。これらの2つの相反する傾向は、血液凝固の測定精度を減らす可能性がある。かくして、静電容量の測定は明らかにより正確である。
【0040】
本発明による液体サンプルの粘性を測定するための模範的な装置の説明は、血液サンプルの凝固時間を決定するための装置について述べているが、これは分かりやすさのためのみであり、限定的な意図がないことが理解される。以前に指摘したように、このような粘性は、液体サンプルがチャンバを移動する時にサンプルが占めるチャンバの体積と直接関係するので、実質的に任意の形態の液体サンプルの粘性を決定するためにも、本発明の方法と装置を使用することができる。
【0041】
図2A−2Dは、本発明により静電容量を測定することによって凝固時間を決定するための模範的な装置の概略ブロック図である。図2Aは模範的な装置の第1の実施形態を示している。凝固診断装置10は、挿入されたセンサ12と共に示されている。センサ12はサンプル領域14を特徴づけ、その上に血液サンプルが配置される(図示せず)。血液サンプルは、2つの電極18の間に形成された試験槽に例えば毛管作用によって引き込まれる。あるいはまた好ましくは、装置10は、サンプルを試験槽16内にポンプ供給するためのポンプ部、あるいは例えば試験槽16内にサンプルを吸引するための吸引装置を含むことができる。またサンプルは、機械的または浸透圧、あるいは真空の印加によって試験槽16に入ることができる。好ましくは、試験槽16は示したように単一の毛管チャネルである。
【0042】
サンプルは電極18に直接接触できないことが好ましい。電極18は好ましくは絶縁層(図示せず)で絶縁されるか、あるいはまた好ましくは試験槽16の壁部19の外側に配置され、この選択の両方は全体的に絶縁体21として説明される。
【0043】
本実施形態では、試験槽16と電極18の両方はセンサ12上に形成される。あるいはまた好ましくは、試験槽16と電極18はセンサレセプタクル20(図示せず)内に形成することができる。また、あるいはまた好ましくは、電極18はセンサレセプタクル20内に形成することができるが、試験槽16は図2Dに示したようにセンサ12上に形成することができる。センサ12は、装置10の容易な洗浄と維持のために好ましくは使い捨て可能であるので、試験槽16と電極18の両方がセンサ12上に形成される図2Aの、あるいは電極18がセンサレセプタクル20内に形成され、また試験槽16がセンサ12上に形成される図2Dの例示した装置が好ましい。これらの実施形態の任意について、電極18は絶縁体21によって、例えば絶縁層で絶縁されることによって、あるいは壁部19の外側に配置されることによって絶縁されるので、電極18は、サンプルが電極18に直接接触しないように位置決めされる。またいずれかの実施形態について、血液サンプルは、センサレセプタクル20と接触しているセンサ12の上に配置される。
【0044】
センサレセプタクル20は容量測定回路25と電気接触している。容量測定回路25のような容量測定回路の設計は電子回路設計の当業者に周知である。容量測定回路は、Thurlby Thandar Instruments(TTi 1705;Huntingdon,Cambridgeshire,UK),Fluke Technology(USA),Keithley Instruments(USA),およびAppa Technology(APPA 93 Multimeter;Taiwan)によって製造される機械のような多くの市場で調達可能なマルチメータ器械に、あるいはTES(TES−1500;Taiwan)によって製造されるメータのような専用の容量メータに組み込まれる。容量測定器29として示された静電容量を測定するための測定装置もまた示されている。図示したように、容量測定回路25は、センサ12上の第1の電極22と第2の電極24として示した両方の電極18に取り付けられる。適切かつ感度の高い容量測定のために、少なくとも1つの電極18が好ましくは各側面になければならないので、試験槽16の対向側面に平行して配設された電極18も示されている。
【0045】
電極18とセンサ12を製造するための方法と材料は当業者に周知である。材料は、例えば、金属箔またはフィルム、あるいは炭素または金属含浸フィルムあるいは金属スパッタフィルムの形態であり得る。センサ12は、任意の形態の適切な可塑性の、好ましくは半剛性または剛性のプラスチックから造られるカードであり得る。電極18は、当業者に周知の方法に従ってセンサ12の上に印刷されるスクリーンであり得る。電極18が絶縁体21によって絶縁されるように、槽16は当業者に周知の種々の微細加工技術(例えば米国特許第5,120,420号参照)に従ってセンサ12の上に形成することができる。
【0046】
例えば、センサ12はポリエステルまたはポリカーボネートから形成される可塑性のカードであり得る。次に、電極18を形成するためにシルバーペーストをセンサ12の上にスクリーン印刷することができる。次に組立体は乾燥される。両方の電極18が槽16内で露出しないように、絶縁ペーストをセンサ12の上に選択的にスクリーン印刷することができる。組立体は再び乾燥される。最後に、プラスチックフィルムまたはホイルから造られたスペーサとカバーは、毛細管チャネルであり得る槽16を形成するためにセンサ12に取り付けることができる。
【0047】
図示した実施形態では、血液サンプルはサンプル領域14の上に配置され、次に毛管作用によって試験槽16に引き込まれる。したがって、試験槽16の寸法はこのような毛管作用の発生を許容すべきである。このような寸法は当業者によって容易に選択することができるであろう。次に、センサ12の対向端部28、対向するサンプル領域14は、例えばセンサ12をセンサレセプタクル20に挿入することによって、センサレセプタクル20と接触させられる。
【0048】
あるいはまた、より好ましくは、最初に、センサ12の対向端部28がセンサレセプタクル20と接触する。次に、電圧、好ましくは交流電圧が容量測定回路25から電極18に印加される。最後に、患者によって、例えば患者の皮膚を刺して、血液サンプルの収集を可能にするニードル(図示せず)を使用することによって、血液サンプルはサンプル領域14に配置される。用語「ニードル」とは、患者の皮膚を刺すことができる任意の鋭利な点またはエッジを含む。本実施形態では、装置10は、在宅試験環境の患者からの血液サンプルの凝固時間を決定するためのキットであり得る。
【0049】
この特定の操作モードは、血液サンプルの適用によってタイミング機能を自動的に誘発できるので、より好適である。例えば、血液サンプルを加える前にセンサ12がセンサレセプタクル20と接触させられる時、測定される静電容量は低い。血液サンプルが加えられるや否や、測定静電容量は増加し、血液サンプルの存在の装置10による自動検出を可能にする。
【0050】
血液サンプルが試験槽16を通して流れるにつれ、液体は、一方が試験槽16のいずれかの側面にある電極18の間を流れ、第1の電極22と第2の電極24との間の静電容量の増加を引き起こす。
【0051】
静電容量を測定した後、メータ29は次に変換器30によって測定静電容量をデジタル信号に変換する。次に、デジタル信号は、信号の分析および信号からの凝固時間の計算の分析のためにプロセッサ32に送られる。プロセッサ32は信号からの凝固時間を計算するための指示部を含む。プロセッサ32は正確に時間を測定するためのクロック34も含む。マイクロプロセッサと他のコンピュータ装置に適切なこのようなクロックは、当業者に周知である。プロセッサ32が、例えば、指示を記憶するためのROM(読み取り専用メモリ)メモリを有する専用のマイクロプロセッサであり得る。血液サンプルの電気特性に従って診断試験を実行するための計算を実行する回路は、Glucometer Elite(登録商標)の商用名でBayerによって、また商用名Exactech(登録商標)でMedisenseによって流通されているような携帯型電気化学式血糖メータにすでに存在する。
【0052】
好ましくは、計算された凝固時間はスクリーン36に表示される。また好ましくは、凝固時間および任意の他の所望の情報は、例えばフラッシュメモリアレーであり得るデータ格納領域38に記憶される。
【0053】
凝固時間は種々の方法で計算することができる。例えば、血液サンプルは、凝固が生じるまで試験槽16を通して流れることが可能にされ、凝固の時点で血液サンプルの流れが止まるであろう。試験槽16を通した血流の停止は、静電容量の量が最大値に到達する時点を指摘することによって決定することができる。次に、凝固時間はこの時点に従って決定される。あるいはまた好ましくは、静電容量の量は、センサ12とセンサレセプタクル20とが接触した時から所定の時間間隔が経過した後、固定時点に測定することができる。
【0054】
図2Bに示した本発明の装置のさらに他の好適な実施形態によれば、試験槽16の長さの実質的に大部分、あるいは実質的に全体に沿って電極18のいずれも延在できないように、電極18を配設することができる。あるいは、好ましくは、試験槽16の壁部19の一部分のみに沿って延在するように、両方の電極18はかなり短く、前記一部分は試験槽16の長さの大部分よりも実質的に短い。第1の電極22は、サンプル領域14に接近した実質的に試験槽16の入口の近くに配置される。次に、第2の電極24は実質的にセンサ12の対向端部28により接近した試験槽16に沿ってさらに遠くに配置される。もちろん、第1の電極22と第2の電極24の位置は逆にすることもできる(図示せず)。いずれにしろ、第1の電極22と第2の電極24の間に重なり合いがあるように、第1の電極22と第2の電極24を配置すべきでない。図2Aについては、試験槽16の対向側面に平行して電極18が配設されていることも示されている。再び、選択的にまた好ましくは、両方の電極18は、試験槽16の壁部19の一方の側面に直列に、交互に配置することができる(図示せず)。
【0055】
この好適な実施形態では、静電容量を実質的に増加するために必要な時間は、静電容量の量を測定するよりも、むしろ凝固時間を計算するために決定される。静電容量を所定のレベルに増加するために必要な時間は、血液サンプルが第1の電極22と第2の電極24の両方に密接して近接するように、血液サンプルが、サンプル領域14により近い第1の電極22から第2の電極24に前進するために必要な時間間隔である。あるいはまた好ましくは、静電容量がプラトーに到達して増加をやめるまで時間が測定されるように、静電容量が増加する間の時間量も測定することができるであろう。静電容量の実際値は凝固時間の測定にとって重要ではなく、静電容量の単なる関連変化に過ぎないので、これらの実施形態は利点を有する。
【0056】
図2Cは、本発明の装置によって血液サンプルの凝固時間と制御サンプルの挙動とを比較できる第3の模範的な実施形態のブロック図である。本実施形態では、凝固診断装置40もまたセンサ42を特徴づける。センサ42もサンプル領域14を有する。血液はサンプル領域14に置かれ、次に2つの槽44、試験槽46と基準槽48の中に流れる。好ましくは、サンプルの実質的に等しい部分が各チャネル44の中に流れるように、血液サンプルは等しく分割される。試験槽46と基準槽48の両方の各々は、前述のように2つの電極18を特徴づける。好ましくは、両方の槽46と48は1つの基準電極または接地電極(中心電極)を共有し、これによって電気回路が単純化され、またセンサ上のスペースが節約される。図2Aの第1の実施形態について電極18の配設が示されているが、図2Bに示した第2の実施形態に従って電極18を配設することもできる。図2Aと図2Bの両方については、試験槽16または基準槽48の対向側面に平行して電極18が配設されていることも示されている。再び、両方の電極18は、試験槽46または基準槽48(図示せず)の1つの側面に配置することができる。電極18の表面は、絶縁体21によって、例えば1つまたは複数の壁部19の外側に配置されることによって、あるいは絶縁層(図示せず)で絶縁されることによって好ましくは絶縁され、また試験される液体に接触しない。さらに、試験槽46は、図2Aと図2Bについて説明したように機能的に槽16と等価である。
【0057】
基準槽48は、湿潤試薬用の液滴として、あるいは乾燥試薬用に乾燥して存在する血液サンプルの凝固挙動を変更するための少なくとも1つの因子を好ましくは特徴づける。例えば、基準槽48の血液サンプルの部分の凝固時間が増加されるように、基準槽48は所定量の抗凝固因子を含むことができる。あるいは、基準槽48の血液サンプルの部分の凝固時間が減少されるように、基準槽48は、凝固を誘発するための所定量の因子を含むことができる。より好ましくは、試験槽46は、このような湿潤または乾燥した試薬を含むこともできる。図2Aと図2Bの槽16はこのような試薬も含むことができる。いずれにしろ、試験槽46、基準槽48のための、あるいは両方のための試薬の選択は、実行される試験の形態に依存し、また当業者によって容易に選択することができるであろう。
【0058】
センサ42は、図2Aについて説明したように、凝固時間の測定を実行するためにレセプタクル50と接触させられる。レセプタクル50もまた静電容量測定装置52と電気接触し、また試験槽46と基準槽48とからの両方の組の電極18の間の静電容量を測定することができる。同様に、変換器54は、各容量測定値をデジタル信号に別々に変換できなければならない。試験槽46からの試験デジタル信号および基準信号48からの基準デジタル信号の両方は、凝固時間を計算するために次にプロセッサ56によって利用される。
【0059】
基準槽48の血液サンプルの凝固挙動の変化は、試験槽46を介して決定される血液サンプルの見かけの凝固時間を調整するために利用される。このような調整は、任意の個々の血液サンプルの特性の制御として機能する。血液サンプルの予想される挙動からのこれらの変化は、基準槽48と試験槽46の静電容量の量または血液の凝固時間の比較によって補償することができる。かくして、装置40によって示されるような本発明の第3の好適な実施形態は、血液サンプルの真の凝固時間、あるいは他の凝固特性をより正確に決定するために、血液サンプルの理論的な凝固時間からの偏差を補償することができる。
【0060】
図2Dは本発明のさらに他の好適な実施形態を示し、これは、電極18がセンサレセプタクル20内に形成され、他方試験槽16がセンサ12上に形成されることを除いて、実質的に図2Aに示した実施形態と同様である。
【0061】
以前に指摘したように、本発明の装置の両方の実施形態は、試験槽を通した、あるならば基準槽を通した血液サンプルの移動の決定に基づく。このような決定は、槽の対向側面または同一側に配設されているが、試験液体から絶縁されるか、あるいは槽外側に簡単に配置される電極の間の静電容量を測定することによって実行される。血液が槽を通して前進するにつれて、槽内(また電極の間)の液体体積は比例して増加し、また同様に、例えば、本出願に完全に記載されているように参考として組み込まれた米国特許第5,720,733号に示されているように、電極の間の静電容量の比例増加を引き起こす。
【0062】
これらの実施形態の任意について、例えば洗剤および/または親水性の重合体を含むバッファに浸けることによって、サンプルを分析する前に槽を前処理することができる。このような親水性の重合体の実施例は、種々の多糖類、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)およびタンパク質を含むが、それらに制限されない。
【0063】
図3は、センサのカバーの開口を特徴づける本発明の装置のさらに他の実施形態の概略ブロック図である。試験槽と基準槽の両方が存在する場合、これらの開口は好ましくはそれらの両方のカバーに配置されるか、さもなければ単に試験槽のカバーの中に配置される。
【0064】
1つの好適な設計によれば、センサ60はカバー62を有し、カバー62付きセンサ60は(左)に示され、またカバー62なしで(右)に示されている。図示したように、カバー62は好ましくは少なくとも1つの開口を特徴づける。より好ましくは、カバー62は複数の開口を特徴づける。カバー62がセンサ60の頂部にある時、第1の開口64はサンプルを差し込むための領域の上方に配置される。他の開口66および複数のより小さな開口68は、センサ60上に形成された試験/基準槽の長手方向に沿って分散される。
【0065】
開口64、66または68のような開口は、単独でまたは組み合わせて、サンプルの前進速度に及ぼすことが可能な制御の程度を改善する。さらに、試薬が槽内にある時、開口はこのような試薬が存在している場合にサンプルと試薬との混合の程度を改善する。その結果、測定の精密さが大幅に改良される。実際に、試験槽が覆われない程度を増すことは、サンプルの流体の前進を遅くし、これによって測定の精度と反復性が改善される。試験槽を通した流体の前進を遅くすることによって、より小さなおよび/またはより短い装置を製造することができ、次にこれは取扱い、保管および運搬をより容易にする。
【0066】
セクション2:抵抗の測定
液体サンプルの粘性、特に血液サンプルの凝固時間は、前述のように静電容量を介して測定することができるが、これらのサンプルの特性は抵抗を介して測定することもできる。前述の本発明の実施形態によって単一の装置に選択的に組み込むことができる本発明のこの代替実施形態について、以下により詳細に説明する。
【0067】
次に図面を参照すると、図4は本発明による抵抗測定を介して液体の粘性を決定するための模範的な方法のフローチャートを示している。ステップ1では、電力が電極に供給される。例えば、一定電圧を電極の間に印加することができる。第2のステップでは、液体サンプルは2つの電極を有する槽の入口に配置される。槽の下方面は、正方形、長方形、円および楕円を含むが、それらに限定されない任意の適切な形状であり得る。好ましくは、チャンバは単一の毛管チャネルを特徴づける。
【0068】
第3のステップでは、液体は、受容器の作用を介して、例えば毛管作用によって、あるいは真空の印加によって、重力によって、あるいは機械的または浸透圧を介して槽を移動し、これによって、液体によって覆われる電極の表面積を増加する。真空は、受容器の実施例である吸引装置の存在によって印加することができる。毛管作用は、槽の毛管深さ、および/または槽の狭い溝形状のような毛管構造によって引き起こすことができるであろう。槽の毛管深さは、液体が毛管作用によって槽に入るのを保証するように選択される深さである。
【0069】
ステップ4では、液体の運動は、覆われた電極の表面積が増加するにつれて変化する電気特性を引き起こす。例えば、測定電流は増加することができるか、あるいは抵抗は減少することができる。ステップ5では、電気特性の変化は液体サンプルの粘性を決定するために利用される。
【0070】
本発明の方法の実施形態は、例えば、血液サンプルが凝固する時にその粘性を測定するために使用することができる。血液サンプルが患者から採取され、次に前述のように槽の入口に配置される。次に、凝固時間は、固定時間間隔が経過した後に電流を測定することによって、あるいは、例えば最大電流に到達するために必要な時間間隔を測定することによって、決定することができる。どちらの場合も、血液サンプルが凝固するために必要な時間の長さは、凝固が生じる前にサンプルが覆う電極の表面積に直接関係するであろう。例えば、固定時間間隔が経過した後に電流が測定されたならば、凝固時間も増加するので、これによって凝固が生じる前に血液サンプルは槽のもっと下方に移動するのが許容されるので、電流の種々の測定量の大きさが増加するであろう。同様に、最大電流に到達するために必要な時間間隔が測定されるならば、凝固時間も増加するので、この時間間隔は増加するであろう。かくして、凝固時間が増加するにつれて、凝固が生じる前にサンプルが占める電極の表面積もまた増加する。
【0071】
本発明による液体サンプルの粘性を測定するための模範的な装置の説明は、血液サンプルの凝固時間を決定するための装置について述べているが、これは分かりやすさのためのみであり、限定的な意図がないとことが理解される。以前に指摘したように、このような粘性は、液体サンプルが槽を移動する時にサンプルが占める槽の体積と直接関係するので、実質的に任意の形態の液体サンプルの粘性を決定するためにも、本発明の方法と装置を使用することができる。
【0072】
図5A−5Cは本発明による抵抗によって凝固時間を決定するための模範的な装置の概略ブロック図であり、これはある観点で以前に説明した図2A−2Dと同様である。図2A−2Dの装置に同一のそれらの特徴は、図5A−5Cの同一の参照番号によって標識化される。
【0073】
図5Aは、抵抗の測定によって血液サンプルのような液体の粘性を決定するための模範的な装置の第1の実施形態を示している。複数の観点で図2Aの凝固装置10とは異なる凝固診断装置110が示されている。第1に、センサレセプタクル20と電気接触している電源は、好ましくは一定電圧発生器126である。一定電圧発生器126は両方の電極18に取り付けられている。図示したように、第1の電極22は正極であり、また第2の電極24は負極であるが、装置の機能に影響を与えることなく極性を逆にすることが可能である。
【0074】
第2に、好ましくは、センサ12の対向端部28はセンサレセプタクル20と最初に接触させられ、次に電圧が一定電圧発生器126から電極18に印加される。本実施形態では、装置110は、在宅試験環境の患者からの血液サンプルの凝固時間を決定するためのキットであり得る。
【0075】
この特定の操作モードは、血液サンプルの適用によってタイミング機能を自動的に誘発できるので、より好適である。例えば、血液サンプルを加える前にセンサ12がセンサレセプタクル20と接触させられる時、測定される電流は低い。血液サンプルが加えられるや否や、測定電流は増加し、血液サンプルの存在の装置110による自動検出を可能にする。
【0076】
血液サンプルが試験槽16を通して流れるにつれ、液体は、一方が試験槽16のいずれかの側面にある電極18の間を流れる。このような接触によって、電流は第1の電極22から第2の電極24に流れることができる。より多くの液体が試験槽16内に流れるにつれ、第1の電極22から第2の電極24に流れる電流の量が増加し、かくして電流の振幅を増加する。
【0077】
電流が第1の電極22から第2の電極24に流れるにつれ、電流の振幅が、図2Aの装置10からの第2の重要な差である模範的な電流測定装置129によって測定される。電流は固定電圧で測定されるので、容易に検出可能な電流を生じる程度に印加電圧が十分に高ければ、液体が第1の電極22と第2の電極24を流れる時の抵抗の変化も測定することができるであろう。実際に、在宅試験環境用のブドウ糖メータも電流を測定する。かくして、必要とされる電子機器はより適切に頑丈であるので、電流の測定は在宅試験環境用の装置において好適である。
【0078】
電流を測定した後、次に電流測定装置129は測定電流を電圧に変換する。次に、アナログ電圧は変換器30によってデジタル信号に変換され、次にデジタル信号は、信号の分析および信号からの凝固時間の計算の分析のためにプロセッサ32に送られる。再び、プロセッサ32は信号からの凝固時間を計算するための指示部を含む。再び、プロセッサ32は、正確に時間を測定するためのクロック34も含む。マイクロプロセッサと他のコンピュータ装置に適切なこのようなクロックは、当業者に周知である。プロセッサ32は、例えば、指示を記憶するためのROM(読み取り専用メモリ)メモリを有する専用のマイクロプロセッサであり得る。このような電流測定回路は、Glucometer Elite(登録商標)の商用名でBayerによって、また商用名Exactech(登録商標)でMedisenseによって流通されているような携帯型電気化学式血糖メータにすでに存在する。
【0079】
凝固時間は種々の方法で計算することができる。例えば、血液サンプルは、凝固が生じるまで試験槽16を通して流れることが可能にされ、凝固の時点で血液サンプルの流れが止まるであろう。試験槽16を通した血流の停止は、電流の振幅が最大値に到達する時点を指摘することによって決定することができる。次に、凝固時間はこの時点に従って決定される。あるいはまた好ましくは、電流の振幅は、センサ12とセンサレセプタクル20とが接触した時から所定の時間間隔が経過した後、固定時点に測定することができる。
【0080】
図5Bに示した抵抗の決定を介して液体の粘性を測定するための本発明の装置のさらに他の好適な実施形態によれば、試験槽16の長さの実質的に大部分、あるいは実質的に全体に沿って電極18のいずれも延在できないように、電極18を配設することができる。あるいは、好ましくは、試験槽16の壁部19の一部分のみに沿って延在するように、両方の電極18はかなり短く、前記一部分は、図2Bに示した装置と同様の装置では試験槽16の長さの大部分よりも実質的に短い。
【0081】
この好適な実施形態では、回路を閉じるために必要な時間は、電流の量を測定するよりも、むしろ凝固時間を計算するために決定される。回路を閉じるために必要な時間は、血液サンプルが、サンプル領域14により近い第1の電極22から第2の電極24に前進するために必要な時間間隔である。振幅の測定は重要でないので、本実施形態は単純化された電気的測定の利点を有し、他方、回路を閉じるために必要な時間間隔は、当業者に周知の任意のマイクロプロセッサまたはタイマ回路によって容易にまた本来的に決定される。
【0082】
図5Cは、本発明の装置によって血液サンプルの凝固時間と制御サンプルの挙動とを比較できる第3の模範的な実施形態のブロック図である。本実施形態では、凝固診断装置140は図2Cの凝固診断装置40と同様である。しかし、レセプタクル50は今や一定電圧発生器126と電気接触している。電流測定装置152は、試験槽46と基準槽48から両方の組の電極18から電流を受け取り、また測定電流を電圧に変換することができる。同様に、アナログ/デジタル変換器54は、各アナログ信号をデジタル信号に別々に変換できなければならない。試験槽46からの試験デジタル信号および基準信号48からの基準デジタル信号の両方は、凝固時間を計算するために次にプロセッサ56によって利用される。
【0083】
基準槽48の血液サンプルの凝固挙動の変化は、試験槽46を介して決定されるような血液サンプルの明白な凝固時間を調整するために利用される。このような調整は、任意の個々の血液サンプルの特性の制御として機能する。血液サンプルの予想される挙動からのこれらの変化は、基準槽48と試験槽46の電流の振幅または血液の凝固時間の比較によって補償することができる。かくして、装置140によって示されるような本発明の第3の好適な実施形態は、血液サンプルの真の凝固時間、あるいは他の凝固特性をより正確に決定するために、血液サンプルの理論的な凝固時間からの偏差を補償することができる。
【0084】
以前に指摘したように、本発明の装置の両方の実施形態は、試験槽を通した、あるならば基準槽を通した血液サンプルの移動の決定に基づく。このような決定は、本実施形態では、槽の対向側面または同一側面に配設された電極を通過する電流を測定することによって実行される。血液がチャンバを通して前進するにつれ、血液によって覆われた電極の表面は比例して増加する。一定電圧が電極に印加されるならば、電流は、装置の構成要素と血液サンプルそれ自体とを含むシステムの抵抗に比例する。このような比例は次式によって証明することができる。
V=iR
ここでVは電圧、Rは抵抗、またiは電流である。この式は次のように再配列することができる。
i=V/R
しかし、抵抗は次のように決定することができる。
R=ρL/A
ρは材料の抵抗率であり、Lは2つの電極の間の距離であり、またAは電極の面積である。したがって、ρとLが一定であるように、
i =VA/(ρL)
次に、電圧が一定に保持されるならば、電流(i)は血液サンプルによって覆われた電極の表面積(A)に比例し、したがって血液サンプルの凝固時間に比例する。
【実施例1】
【0085】
凝固時間装置の構造と試験
センサを含む装置は、図5Aに示したように本発明の装置の本実施形態の第1の実施例により構成された。センサは、約1.5mmの幅で約20mmの長さの毛管チャネルを2つの導電性のカーボントラック上方に形成することにより、平坦な可塑性のベースカードから構成された。チャネルの側面は、約200ミクロンの深さの両面接着テープから造られた。チャネルは、透明のポリエステルフィルムの部分によって覆われた。装置は、5マイクロリットルの血液サンプルの基準部分が毛管チャネルの全長に沿って移動するのを許容するように設計され、他方、同一のサンプルの第2の部分はサンプル起点に留まり、かくしてサンプル寸法による測定の制限が防止される。
【0086】
次に、電極は標準電圧発生装置に取り付けられ、次に、得られた電流は電流または電圧を測定するための標準装置によって測定された。これらの装置の両方は当業者に周知である。このセンサは実験的な試験の一実施例としてのみ意図され、また決して限定的な意図がなかったことを指摘する。
【0087】
以下に説明する特定の試験のために、血液サンプルの体積は5マイクロリットルであり、また1.5Vの電圧が電圧発生装置から印加された。
【0088】
血液サンプルの間の変化は、異なった量の凝固剤が加えられる一連の血液サンプルを生成することによってシミュレートされた。図6A−6Cは、血液サンプルへの凝固剤の添加による装置の電流測定に対する効果を示している。図6Aは、サンプルに加えられる凝固剤の割合が増加する時の電流の振幅(マイクロアンペア)の減少を示している。サンプルがセンサに配置された37秒後に、電流の振幅が測定された。図6Bは、サンプルに加えられる凝固剤の割合が増加する時の最大電流に到達するために必要な経過時間(秒で表示)の減少を示している。明らかに、37秒における電流および最大電流に必要な経過時間は、サンプルに加えられる凝固剤の量と関係がある。
【0089】
図6Cは、図6Aから補正された測定電流を示している。補正は次のように実行された。血液サンプルがセンサ(センサは装置の残部にすでに取り付けられていた)の上に配置されるや否や、時間ゼロ(I)の電流(I)が測定された。1秒が経過した後(I)、再び電流が測定された。1秒の時間間隔は、最小の時間間隔が経過した後、また凝固が始まる前に、電流を測定するように選択された。次に、I0とI1の平均が決定された(I)。最後に、図6A(I)の遷移曲線の各点について、次のように補正が実行された。
corrected=(I−I)/I
【0090】
このような方法は、基準槽を使用することなく測定電流を補正するための方法の実施例である。
【実施例2】
【0091】
乾燥試薬を有する凝固時間装置の構造と試験
本発明の模範的な装置もまた、図5Aに示したような本発明の装置の第1の実施形態により構成された。しかし、この場合、凝固試薬(Sigma Chemical Co)はセンサの1つの領域で乾燥された。この装置も実験的な試験の一実施例としてのみ意図され、また決して限定的な意図がなかったことを指摘する。
【0092】
図7Aは、抗凝固療法を受ける患者からの3つの異なった血液サンプルに関する長時間(秒)の電流の変化(マイクロアンペア)を示している。これらのサンプルは異なった凝固時間を有し、またプロトロンビン時間として測定された。プロトロンビン時間は、グラフに示したようにセンサによって、またACL1000機器を用いる比較基準方法の両方によって決定された。標準機器によって得られる凝固時間は、それぞれのサンプルの電流遷移曲線の各々に示した長方形の内部に示されている。
【0093】
ACL1000機器によるプロトロンビン時間の測定は、全血からのプラズマの分離を含んでいた。次に、プラズマは、組織因子とカルシウムイオンとを含む凝固試薬混合物と混合された。等価の凝固試薬混合物もまた本発明のセンサのサンプル領域の上に乾燥された。次に、凝固時間は、ACL1000機器によりサンプルの光学的濃度の変化を測定することによって決定された。
【0094】
本発明による装置によって決定される曲線については、明らかに、血液の凝固時に生じる最大測定電流に到達するために必要な時間は、ACL1000機器によって決定される異なった凝固時間を有する血液サンプルに関して異なっていた。
【0095】
図7Bは、本発明の装置内に挿入されたセンサに血液サンプルが加えられた10秒後に測定された電流と、標準基準方法によって決定される凝固時間との間の量的な関係を示している。明らかに、サンプルの適用の10秒後に測定された電流と基準方法によって決定されるような凝固時間との間には直接比例関係がある。
【実施例3】
【0096】
乾燥試薬を有する凝固時間装置の構造と試験
本発明の模範的な装置もまた、図5Aに示したような本発明の装置の第1の実施形態により構成された。しかし、以下にさらに詳述するように、ある修正が装置に対して行われた。特に、炭素電極は前処理を受け、また特定の調合の凝固試薬が本発明のセンサのサンプル領域の上に乾燥された。この装置も実験的な試験の一実施例としてのみ意図され、また決して限定的な意図がなかったことを指摘する。
【0097】
本発明によるこの模範的な装置の準備は次の通りであった。最初に炭素電極が切断され、次に10分間室温で、0.1モルのNaCO、10mg/mlのBSAおよび0.1%のTween−20を含むバッファ内に浸けることによって前処理された。次に、電極は蒸留水の中に浸すことによって4回洗浄された。次に、電極は加熱板の上方で75°Cで乾燥された。
【0098】
次に、凝固試薬は、凍結乾燥された組み換えヒトトロンボプラスチン試薬Innovin(登録商標)(Dade International、米国)から準備された。Innovin(登録商標)の活性成分は、凝固カスケードを開始する乾燥された組み換えヒト組織因子とカルシウムイオンとの混合物である。これらの活性成分は血液サンプルの凝固を促進する。
【0099】
10mlの小瓶のInnovin(登録商標)の成分は2.5mlの蒸留水によって再懸濁された。この成分に、200のmg/mlのMannitol(BDH、英国)および0.1%のBioterge AS 40(Stepan Europe、フランス)が補足された。
【0100】
次に、本発明のセンサは次のように修正スペーサアセンブリによって構成された。第1に、1個の210ミクロンの二重被覆のポリエステルフィルム(MS1182、Duramark、米国)を所望の形状にカットすることによって、スペーサが作られた。次に、正方形のペーパ(7mmx5mm)がKimwipes(登録商標)EX−L(Kimberly−Clark、米国)から切り取られ、またスペーサアセンブリを形成するため毛管チャネルの初めまでのサンプル領域の実質的に全体がペーパによって覆われるように、サンプル領域のスペーサに取り付けられた。
【0101】
次に、スペーサアセンブリが電極に取り付けられた。8マイクロリットルの試薬が、スペーサアセンブリのサンプル領域の裏地となるペーパに加えられ、また37℃でターボオーブン(Series 9000,Scientific)の中で一夜乾燥された。乾燥後に、1個の透明フィルム(9mmx48mm)がスペーサアセンブリの残りの空いた接着領域に取り付けられ、かくして血液サンプルが流れる毛管チャネルが生成される。
【0102】
この模範的な装置を用いる凝固時間の決定は、電流を測定するための装置にセンサを挿入することによって実行された。電源は、電極に1500mVの電気を供給するように設定された。次に、30マイクロリットルの血液サンプルがセンサのサンプル領域のペーパに加えられ、そこでサンプルは乾燥試薬と混合された。サンプル領域にペーパを加えることには、血液サンプルと乾燥試薬材料とのより良い混合を促進する利点があった。ペーパは、血液と乾燥試薬との混合を促進するために、好ましくは少なくとも部分的にサンプル領域を覆う実質的に多孔性の材料の実施例である。以前の実施形態については、血液サンプルは次に毛管チャネルを通してサンプル領域から流れた。
【0103】
血液サンプルが電極に接触すると直ちに、装置は経過時間の測定を始めた。実質的に同時に、電源から電極への電気供給は、血液サンプルが毛管チャネルを通して前方に流れるのをやめるまで、一時的に約90秒間停止された。その時点に、電気は約4秒間電極に再び供給され、また電流が記録された。
【0104】
以下の表1は、電極への電気供給が再確立された4秒後の測定電流を示している。国際規格化比率は、RISIとして計算される凝固時間の調整値であり、この場合、Rは、血液サンプルについて決定されたプロトロンビン時間と通常の検体に関するプロトロビン時間の平均との比率であり、またISIは、アッセイで使用されるトロンボプラスチン試薬の効能の基準である国際感度インデックスである。InnovinのISI(登録商標)の値は製造業者によって設けられた。
【0105】
【表1】

【0106】
これらの2つのサンプルから示されるように、明らかに、凝固が生じた後に測定した電流の量は凝固時間と直接関係する。この実施例の装置は、潜在的により大きな結果再現性の利点、ならびに可塑性基材の表面および電極材料の変化に関係なく正確な結果を供給する能力を有する。
【実施例4】
【0107】
センサストリップによる凝固時間の決定
本発明の模範的な装置もまた、図5Aに示したような本発明の装置の第1の実施形態により構成された。しかし、以下にさらに詳述するように、ある修正が装置に対して行われた。特に、図8に示したように毛管チャネルを形成するために、ナイロンメッシュをスペーサの上方に配置した。図3の開口を有するカバーを含むように、本実施形態を変更できることを指摘する。同様に、図3の開口を有するカバーは、図8に示したメッシュに置き換えることができる。装置は次のように準備された。
【0108】
1.最初にセンサストリップが準備された。凝固時間センサストリップは、図8に示した次の部分から構成された。Lexan(登録商標)ポリカーボネートベースカード154が、2つのプリントカーボン電極トラック156を特徴づけた。この実施例の目的のために、ベースカード154の寸法は約60mmx5mmであったが、もちろんこれらの寸法は変更することができる。スペーサ158は、アクリルの感圧性接着剤(Adhesives Research、type7810)で二重被覆された2ミルの厚さのポリエステルシートから型抜きされた。スペーサ158は、スペーサ158の開口スリットが電極156の間の空間上方でセンタリングされ、これによって両方の電極156の一部が露出されるように、ベースカード154に取り付けられた。スリットの幅は1mm、また長さは30mmであった。試薬/試料領域は3mmの幅と10mmの長さであった。次に、ナイロンメッシュ160(入手先Sefar、Ruschlikon、スイスのNybolt 95T)はスペーサ158の頂部に取り付けられ、かくして毛管チャネルを形成した。
【0109】
図8に示した装置を試験するために、10mLの小瓶のInnovin(登録商標)(Dade International,Inc,Miami,FL、米国によって供給されるPT試薬)を、3.0mLの20%w/vのマンニトール、0.35%w/vのPluronic F−68の中に溶かした。5μLの混合物が試薬領域(スペーサによって画定されるチャネルの広い部分)の上方で広げられ、またターボオーブン(American Scientific products Model Dk−62)内で50℃の温度で乾燥された。
【0110】
次に、すべての測定が室温(23−26℃)で実行された。クエン酸塩を加えた全血サンプルがクリニックから得られた。全試料のINR値は、基準方法として利用されたMLA−1000装置(Medical Laboratory Automation,Inc.,Pleasantville,NY、米国)によって決定された。
【0111】
次に、センサストリップによる凝固時間の電流測定による決定が、3.5ボルト、10,000Hzの矩形波ACを供給するように調整されたWavetekモデル130−s−396関数発生器に、センサの電極156を接続することによって実行された。回路を通して流れる電流が、データロギングThurlby Thandar機器(Huntington,Cambridgeshire,英国)モデル1705マルチメータによって測定された。回路の概略図は図9に示され、電極156は交流電圧源162にとマイクロアンペアメータ164とに接続されている。次に、マイクロアンペアメータ164は記録コンピュータ166に接続された。
【0112】
凝固時間測定を実行するために、0.5Hzのデータロギングがマイクロアンペアメータ164で開始するように、電圧源162とマイクロアンペアメータ164が作動された。その後すぐに、15μLの試料が試薬領域に加えられた。電流測定のロギングは200秒間継続した。その後、電流対時間遷移をプロットするために、データがシリアル接続を介して記録コンピュータ166に転送された。異なったINR値に関する遷移の実施例が図10Aと図10Bに示されている。試料の凝固時間は、電流の上昇が停止した時点に従って決定された。図11A−11Cは、本発明のセンサストリップによって得られる凝固時間値と基準方法によって決定されるINR値との間の相関関係を示している。
【0113】
プロトロンビン時間の値はMLA−1000装置によって決定されるINR値に対してプロットされた。本発明のセンサストリップによって、測定された凝固時間と基準INR値との間の線形的な相関関係が証明されたことが明らかである。
【0114】
セクション3:レセプタ/リガンドの相互作用の検出
本発明の装置の追加の好適な実施形態は、次のようにレセプタ/リガンド反応を測定することができるであろう。凝固因子は、凝固因子−受容体の組合せを形成するためにレセプタまたはリガンドに結合される。以下、用語「受容体」とはレセプタまたはリガンドを指す。受容体の実施例は、抗原、抗体、核酸プローブおよびレクチンを含むがそれらに限定されない。次に、凝固因子−受容体の複合体は、凝固因子の反応が受容体と対応するリガンドまたはレセプタそれぞれの間との認識反応によって調節されるように、血液サンプルに関して配置される。好ましくは、血液凝固時間の変化の計算は、受容体/凝固因子の組合せにさらされた血液サンプルの基準部分に必要な凝固時間と、前記組合せにさらされなかった第2の部分に必要な時間とを比較することによって決定される。
【0115】
例えば、受容体が抗原であり、また凝固因子が抗凝固剤であったならば、抗原を認識する抗体を血液サンプルが含んでいる場合に限り、実質的に抗凝固剤は血液サンプルから隠されるであろう。このような隠ぺいは血液の凝固に必要な時間を減少させるであろう。血液凝固時間が減少した程度は、血液サンプル内に存在する抗体の量を数量化するために利用することができる。装置のこの好適な実施形態は、固定時間間隔が経過した後に測定される時に、あるいは到達すべき最大測定電流に必要な経過時間を決定することによって、サンプルを通過する電流の量に従って血液の凝固をなお測定する。
【0116】
レセプタ−リガンド反応を検出するための同一の原理は、当業者に周知の他の粘性調節システムを介して実現することができる。このようなシステムは、デキストランおよびデキストラナーゼと、DNAおよびDNaseとを含む。
【0117】
上記の説明は、実施例としてのみ利用されるように意図されること、またその他の多くの実施形態が本発明の精神と範囲内で可能であることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明による模範的な方法のフローチャートである。
【図2A】本発明による凝固時間を決定するための模範的な装置の種々の実施形態の概略ブロック図である。
【図2B】本発明による凝固時間を決定するための模範的な装置の種々の実施形態の概略ブロック図である。
【図2C】本発明による凝固時間を決定するための模範的な装置の種々の実施形態の概略ブロック図である。
【図2D】本発明による凝固時間を決定するための模範的な装置の種々の実施形態の概略ブロック図である。
【図3】センサ槽のカバーの開口を特徴づける本発明の装置の他の実施形態の概略ブロック図である。
【図4】本発明による抵抗の測定を介して液体の粘性を決定するための模範的な方法のフローチャートである。
【図5A】本発明による抵抗によって凝固時間を決定するための模範的な装置の概略ブロック図である。
【図5B】本発明による抵抗によって凝固時間を決定するための模範的な装置の概略ブロック図である。
【図5C】本発明による抵抗によって凝固時間を決定するための模範的な装置の概略ブロック図である。
【図6A】血液サンプルへの凝固剤の添加による本発明の装置の電流測定に対する効果を示し、最大電流までの時間を示している。
【図6B】血液サンプルへの凝固剤の添加による本発明の装置の電流測定に対する効果を示し、固定時間間隔が経過した後の測定電流を示している。
【図6C】血液サンプルへの凝固剤の添加による本発明の装置の電流測定に対する効果を示し、補正された測定電流を示している。
【図7A】抗凝固療法を受けている患者からの3つの異なった血液サンプルに関する電流の変化である。
【図7B】抗凝固療法を受けている患者からの3つの異なった血液サンプルに関する電流の変化である。
【図8】センサ槽のカバーのメッシュを特徴づける本発明の装置のさらに他の実施形態である。
【図9】図8の装置を試験するための回路の概略ブロック図である。
【図10A】図8と図9の装置の異なったINR値の遷移の実施例である。
【図10B】図8と図9の装置の異なったINR値の遷移の実施例である。
【図11A】本発明のセンサストリップによって得られる凝固時間値と基準方法によって決定されるINR値との間の相関関係を示している。
【図11B】本発明のセンサストリップによって得られる凝固時間値と基準方法によって決定されるINR値との間の相関関係を示している。
【図11C】本発明のセンサストリップによって得られる凝固時間値と基準方法によって決定されるINR値との間の相関関係を示している。
【符号の説明】
【0119】
10 凝固診断装置
12 センサ
16 サンプル試験槽
18 電極
19 壁部
20 センサレセプタクル
25 容量測定回路
29 容量測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者からの血液サンプルの凝固時間を測定するためのキットであって、
(a)端部において血液サンプルを受容するように構成された使い捨て可能なセンサであって、前記センサが、
(i)前記センサの前記端部から血液サンプルの試験部分を引き込むように形成された試験槽であって、前記試験槽の内部空間を画定する壁部を有する前記試験槽を具備し、
(b)前記試験槽の前記壁部の外面に配設された1対の電極と、
(c)前記試験槽内のサンプルの静電容量を第1の電容量として測定するための静電容量測定回路であって、前記使い捨て可能なセンサを受容して少なくとも1つの前記1対の電極と電気接触する前記容量測定回路と、
(d)前記静電容量測定回路により測定された前記第1の静電容量に従って凝固時間を決定するための分析器と、
を具備するキット。
【請求項2】
前記1対の電極が前記容量測定回路と一体形成される、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記1対の電極が前記試験槽と一体形成される、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
(e)前記1対の電極と液体サンプルとの接触が防止されるように、前記1対の電極を絶縁するための絶縁体をさらに具備する、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記1対の電極が前記壁部の外側に配設されるように、前記絶縁体が前記試験槽の前記壁部を含む、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
(e)血液サンプルを得るために患者の皮膚を刺すためのニードルをさらに具備する、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
前記第1の静電容量が、所定の時間間隔が経過した後に前記測定器によって測定される、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
(e)前記第1の静電容量が所定のレベルに到達するために必要な時間間隔を測定するためのクロックをさらに具備する、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
前記第1の静電容量が増加を停止するように、前記所定のレベルがプラトーである、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記試験槽が、前記血液サンプルの前記試験部分と接触する少なくとも1つの凝固剤を特徴づけ、前記少なくとも1つの凝固剤が前記血液サンプルの前記試験部分の凝固特性を変更する、請求項1に記載のキット。
【請求項11】
前記血液サンプルの前記試験部分が前記血液サンプルの前記基準部分よりも遅く凝固するように、前記凝固剤が抗凝固剤である、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記血液サンプルの前記試験部分が前記血液サンプルの前記基準部分よりも速く凝固するように、前記凝固剤が親凝固因子である、請求項10に記載のキット。
【請求項13】
前記少なくとも1つの凝固剤が前記試験槽の上で乾燥される、請求項10に記載のキット。
【請求項14】
前記少なくとも1つの凝固剤が、前記試験槽の上に配置される液滴である、請求項10に記載のキット。
【請求項15】
前記使い捨て可能なセンサが、
(ii)前記センサの前記端部から血液サンプルの基準部分を引き込むための基準槽と、
(iii)前記基準槽に引き込まれた血液サンプルの前記基準部分と接触する少なくとも1つの凝固剤であって、血液サンプルの前記基準部分の凝固特性を変更する前記少なくとも1つの凝固剤と、
(iv)前記基準槽に配設された第2の1対の電極であって、血液サンプルの前記基準部分が前記基準槽内に引き込まれる時の第2の静電容量を前記第2の1対の電極の間で測定可能とするように、前記容量測定回路と電気接触する前記第2の1対の電極と、をさらに具備し、
前記第2の静電容量を基準静電容量とし、前記基準静電容量と前記測定静電容量とを比較することによって前記分析器が前記血液サンプルの凝固時間を決定するように、前記第2の静電容量が前記測定器によって測定される、請求項1に記載のキット。
【請求項16】
前記第1および前記第2の1対の電極が共通電極を共有する、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記血液サンプルの前記基準部分が前記血液サンプルの前記試験部分よりも遅く凝固するように、前記凝固剤が抗凝固剤である、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記血液サンプルの前記基準部分が前記血液サンプルの前記試験部分よりも速く凝固するように、前記凝固剤が親凝固因子である、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記少なくとも1つの凝固剤が前記使い捨て可能なセンサの上で乾燥される、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記少なくとも1つの凝固剤が、前記使い捨て可能なセンサの上に配置される液滴である、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
(e)前記1対の電極と液体サンプルとの接触が防止されるように、前記1対の電極を絶縁するための絶縁体をさらに具備する、請求項15に記載のキット。
【請求項22】
前記1対の電極が前記壁部の外側に配設されるように、前記絶縁体が前記試験槽の前記壁部を含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記1対の電極が前記試験槽の対向壁部に配設される、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記電極が一部の前記試験槽に沿って延在し、前記一部分が実質的に前記槽の全体よりも小さい、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記サンプルが前記第1の電極と前記第2の電極の両方の間の領域を実質的にすべて占める時にのみ容量が測定可能であり、前記血液サンプルの粘性が、前記第1の電極から前記第2の電極に前記サンプルが移動するために必要な時間間隔によって決定されるように、前記電極の第1の電極が前記電極の第2の電極よりも前記試験槽の一方の端部により近い側面にある、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記センサが、
(ii)前記試験槽を覆うためのカバーであって、少なくとも1つの開口を特徴づける前記カバーをさらに具備する、請求項1に記載のキット。
【請求項27】
前記少なくとも1つの開口がメッシュである、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記試験槽が単一の毛管チャネルを特徴づける、請求項27に記載のキット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公開番号】特開2007−304116(P2007−304116A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192918(P2007−192918)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【分割の表示】特願2000−537051(P2000−537051)の分割
【原出願日】平成11年3月18日(1999.3.18)
【出願人】(500437267)オージェニクス バイオセンサーズ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ORGENICS BIOSENSORS LTD.
【住所又は居所原語表記】North Industrial Zone 70650 Yavne Israel
【Fターム(参考)】