説明

血液処理装置

【課題】血液浄化要素を有する血液処理装置を提供する。
【解決手段】本発明は、半透膜(3)によって2つのチャンバに分割された血液浄化要素(1)を有する血液処理装置の分野に関する。このような装置は、人工腎臓治療における血液透析機械として使用される。本発明は、このような血液処理装置を患者の非生理的条件、特に限界カリウム濃度及び取り出し率を血液治療中により良く防止することができる程度まで改良する。本発明により提供されることによると、血液処理装置の分析ユニット(32)は、少なくとも1つのセンサ(31)に基づいて血液入口ライン内の血液中のこの物質の濃度、半透膜を通るこの物質の瞬間移送速度、及び治療中に取り出されるこの物質の総量を決定し、この濃度は、第1の許容値範囲と比較され、移送速度は、第2の許容値範囲と比較され、取り出される物質の量は、第3の値範囲と比較され、血液処理装置を制御する制御ユニット(34)は、血液処理装置がこれら3つの許容値範囲の全てを維持しながら血液治療を実行する程度までその装置に対して命令することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透膜によって2つのチャンバに分割され、第1のチャンバが透析液回路の一部であり、第2のチャンバが体外血液回路の一部である血液浄化要素を有する血液処理装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、人工腎臓治療における血液透析機械として使用される。血液透析治療を通じて、半透膜上の圧力勾配により透析患者から過剰の水分を取り出すことが可能である。他方では、健康な腎臓であれば除去されるであろう尿素及びクレアチンのような物質は、半透膜上の濃度勾配により患者から取り出される。血液中にある一定の濃度で常に存在する電解質のような他の物質の場合では、通常は、健康な腎臓を有する人の血液中の濃度に対応する濃度が透析液に使用される。
【0003】
透析患者は、通常は、治療間の患者の食物摂取においてかなりの量のカリウムを摂取する。カリウムの過剰摂取、特に透析中の不適切なカリウム除去による長期間にわたる蓄積は、高カリウム血症(細胞外液中の高カリウム濃度)を招くものである。
細胞外カリウム濃度は、細胞の静止膜電位に影響を及ぼす。従って、この濃度は、あらゆる刺激細胞(筋肉、心筋、神経)の電気的被刺激性の程度に影響を及ぼすものである。心臓の電気生理機能への影響は、特に重要である。異常な値は、生命に関わる不整脈に至る可能性がある。従って、体は、カリウム濃度を狭い限界以内に調節する。腎不全の病態生理的条件下では、透析治療は、危機的な状態を回避するような方法で行われるべきである。
【0004】
正常なカリウム濃度は、3.5〜4.5mmol/Lの範囲である。高カリウム血症は、レベルが5.5mmol/Lを超える場合の状態であり、その結果には、心室性不整脈、心室細動、又は心停止さえも含まれる。カリウムレベルが2.5mmol/Lよりも低い場合、これは、重症低カリウム血症と呼ばれる。この症状には、筋力低下、心房性及び心室性不整脈、混乱及び見当識障害状態がある。軽度の高カリウム血症(4.5〜5.5mmol/L)及び軽度の低カリウム血症(2.5〜3.5mmol/L)の移行範囲では、多くの場合にほとんど症状がない。
【0005】
カリウム濃度は、例えば、尿素濃度に比べて透析中に遥かに複雑な動態になりやすい。尿素は、細胞内及び細胞外でほぼ同じ濃度で存在するが、約3500mmol(50mmol/kg)の総カリウム濃度は、非常に不規則な分布を有し、約98%が細胞内にあり、僅か2%が細胞外にある。細胞内及び細胞外濃度のこの不均衡はまた、他の細胞外分子、特に、H+イオン、重炭酸塩、グルコース、及びインスリンの濃度の変化にも影響される。アドレナリン刺激及びアルドステロンレベルもまた、濃度比に影響を与える。更に、強いリバウンド効果が観察され、すなわち、透析終了後に血中カリウム濃度は、細胞内腔から細胞外腔への移送における時間遅延のために再びかなり上昇する。
【0006】
以前の治療以来摂取されたカリウムの量の約90%を断続的な透析により除去することは、必ずしも簡単ではない。比較的低い濃度勾配を使用することができるのみである。透析患者の最初のカリウム濃度は、通常は約3.6と7mmol/Lの間であるか又はより高い場合もある。透析液中のカリウム濃度は、0から4mmol/Lの間であり、多くの場合に約2mmol/Lの平均濃度が使用される。従って、血液と透析液の間で利用可能な勾配は、透析の開始時点では通常2〜4mmol/Lになるが、治療中に急速に減少する。従って、カリウムを完全に除去する可能性は制限される。より多くのカリウムが摂取されている場合、総除去では低くなり過ぎる危険性もある。従って、患者は、高カリウム血症の危険があり、これは、特に透析治療の直前に特に顕著になる場合がある。
【0007】
低カリウム濃度の使用又は全くカリウムのない透析液の使用さえも、危険がないわけではない。カリウム濃度は、透析中に非常に低レベルまで落ちる場合があり、すなわち、重症の低カリウム血症を引き起こす場合がある(体内の総カリウムレベルが依然として適切であるか又は高すぎる場合でさえも)。
カリウム除去の割合が非常に高い場合、不整脈を引き起こす場合がある(J.P.Knochel著「カリウム障害の臨床的発現」、D.W.Seldin及びG.Giebisch編「カリウム均衡の調節」、第1版、1989年、pp.207〜240;E.G.Lowrie及びN.L.Lew著「血液透析患者の死亡危険:一般測定変数の予測値及び施設間の死亡率の違いの評価」、「American Journal of Kidney Disease」、第15巻、pp.458〜482、1990年)。除去の割合が増加すると、細胞外に対する細胞内のカリウム濃度の比率が大きくなり、これは、次に細胞の過分極をもたらし、従って被刺激性が低下する。従って、不整脈の確率が増大する可能性があると考えられる。
【0008】
大量の重炭酸塩を特に透析の初期段階に患者に投与することにより、カリウムは、細胞外腔から細胞内腔へ移送され、これはまた、細胞外の濃度の低減に寄与し、従って低カリウム血症の危険性を増大させる(透析機械を通したカリウムの除去による寄与に加えて)。
透析治療と共にモデルシミュレーションを使用して血液のある一定の組成物の除去に関する結論を引き出すことを可能にし、その場合、その計算が血液サンプルによって補われるような提案が為されている(S.Stiller、H.Mann、及びF.Raab著「人工腎臓透析の個別化のためのマイクロプロセッサベースの一般的透析計算機」、Lindberg/Kaihara編「MEDINFO’80」、「North−Holland Publishing Company」、1980年、pp.534〜538)。
【0009】
米国特許第4,244,787号は、血液入口ライン内の物質の濃度を透析液出口ラインにあるセンサによって求めることができる装置を説明している。同時に、除去された物質の総量を求めることが可能である。
米国特許第4,508,622号は、透析治療中の電解質平衡を透析液放出ラインにあるセンサ及び透析液入口ラインにある同様のセンサによって求めることができ、透析治療へのフィードバックを可能にする血液透析機械を説明している。同様の機械は、ヨーロッパ特許EP0330892A2に開示されている。
本発明の目的は、半透膜によって2つのチャンバに分割され、第1のチャンバが透析液回路の一部であり、第2のチャンバが体外血液回路の一部であるような血液浄化要素を有する血液処理装置を改良することである。この改良は、血液治療中の患者の非生理的状態を防止するより良い手段を提供することから成るものである。
【発明の開示】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有する血液処理装置によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
本発明によると、血液処理装置の分析ユニットは、血液回路又は透析液回路内の少なくとも1つのセンサに基づいて、半透膜を透過することができて血液入口ライン内の血液中に存在する物質の濃度を決定し、これは、半透膜を透過することができる物質の濃度を決定して膜を通る物質の瞬間移送速度並びに治療中に除去されるこの物質の総量を決定し、濃度を第1の許容値範囲と比較し、除去された物質の量を第3の値範囲と比較するために行われ、血液処理装置を制御する制御ユニットは、血液処理装置が3つの許容値範囲の全てを維持しながら血液治療を実行するように、血液処理装置に対して命令を送信することができる。
このような装置は、その革新的設計により、カリウムのような重大な物質を血液治療中の期間内にモニタして生理学的に正当な限界内に制御することを可能にする。
【0011】
有利な実施形態では、上述の少なくとも1つのセンサは、透析液出口ラインに位置する。透析液入口ライン内の問題の物質の濃度が既知でない場合、別の同様のセンサがそこに設けられてもよい。
同様に、このようなセンサを血液回路に設けることも可能である。しかし、血液との接触に関連する問題のために、一般的に透析液回路内のセンサが好ましい。
本発明の改良では、第3の値範囲内の目標値が分析ユニットに記憶され、分析ユニットは、遅くとも計画した治療期間の終了時には目標値に到達するように制御ユニットに命令する。
【0012】
本発明は、血液透析治療又は血液濾過治療において等しく使用することができる。後者の場合、交換液入口ラインとしての透析液入口ラインは、血液回路内に直接開いており、血液治療機械の第1のチャンバは、濾過液出口ラインとしての透析液出口ラインのみに連結される。従って、特に、この機械を併用治療方法、すなわち、血液透析濾過法に使用することも可能である。しかし、簡単にするために、以下の説明は、血液透析に限定されると解釈することなしに透析液回路の構成要素のみに向けるものとする。
本発明の付加的な詳細及び利点は、図面に概略的に示す例示的な実施形態に基づいて以下により詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
唯一の図面に示す血液処理装置は、体外血液回路10及び透析液回路20を有する。血液回路10では、血液が患者(図示せず)から取り込まれ、血液入口ライン11を通って半透膜3により2つのチャンバ2及び4に分割された血液治療要素1の第2のチャンバ2へ送られる。第2のチャンバ2から血液は、血液返還ライン12を通って患者に戻る。血液は、血液ポンプ13により体外血液回路10内で循環する。
透析液回路20では、透析液は、透析液処理ユニット21から透析液入口ライン22を通って血液治療要素1の第1のチャンバ4へ進む。透析液は、第1のチャンバ4から透析液出口ライン23を通って出口24へ送られる。透析液は、ここで透析液ポンプ25を用いて循環される。
【0014】
透析液処理ユニット21は、濃縮ポンプ29及び30を通じて水又は透析液のいくつかの成分が既に混合された水(連結部26)及びカリウム濃縮液27又は2つのカリウム濃縮液27及び28を使用し、指定の混合比に従って、使用される透析液を調製する。当業者に公知であり本明細書で詳細を説明する必要のない実績のある成分に基づくことが可能である。本発明の範囲において、カリウム濃縮液の透析液処理ユニット21への添加を設定値に従って調節することができるということのみが本質的な点である。
【0015】
カリウム濃縮液に対する上限及び下限を有する透析液を準備するための特に有利な実施例は、第1の濃縮液27が低カリウム濃度を有し、第2の濃縮液28が高カリウム濃度を有するように2つの濃縮液27及び28を用いて作業する段階から成る。これらの濃縮液が他の物質、例えば、透析液の酸性成分及び他の電解質も含有する場合、それらは、便宜上両方の濃縮液中に等しい濃度で存在する。次に、濃縮液ポンプ29及び30により送り込まれる濃縮液流量の合計である一定速度の添加において、カリウム濃度は、透析液中のある一定の濃度範囲を決して超えることはない。
【0016】
カリウム検知センサ31が透析液出口ライン23に設けられ、ライン31’により分析ユニット32に連結されている。次に、分析ユニット32は、データライン33により制御ユニット34に連結されている。分析ユニット32及び制御ユニット34は、単一の統合ユニットとして設計することもできる。制御ユニット34は、血液治療を制御した方法で行うことができるように、血液処理装置のアクチュエータ及びセンサに連結される。本発明を説明するために、これらのアクチュエータ及びセンサは、特に、適切な制御ライン13’、25’、29’、及び30’により制御ラインに連結された透析液ポンプ25上の濃縮液ポンプ29及び30並びに血液ポンプ13を含む。
温度自動調節ユニット、モニタリングユニット、及び平衡化ユニットのようなこのような血液治療機械で従来的な他の構成要素の設計に関しては、当業者には様々な実施形態が公知であり、従って、本明細書で深く詳細を説明しない。
【0017】
ここで本発明によると、血液入口ライン11中のカリウムの濃度CBI、半透膜3を通るカリウムの移送速度ΔM/Δt、及び取り出される総量Mに対して3つの許容値範囲を分析ユニット32に記憶する。
第1の範囲に関して、最低限度は、好ましくは2.5〜3.5mmol/Lであり、最高限度は、4.5〜5.5mmol/Lである。高カリウム血症及び低カリウム血症の軽度のものとそれぞれの比較的重度のものとを2つの警報レベルの形に対抗させることができるように、より狭い第1の値範囲と前者を含む追加の第1の値範囲とを設定することも可能である。
【0018】
第2の許容値範囲に関しては、一般的に、カリウムは患者から取り出されることになるために便宜上0mmol/minの下限が設定される。しかし、患者が治療の開始時点で既に低カリウム血症であると疑われる場合、負の下限を選択することも可能である。
第3の許容値範囲の場合、まず取り出すカリウムの総量の目標値「Mend」を分析ユニット32に記憶する。この目標値は、インタフェース(詳細を図示せず)を通じて操作者により入力することができ、又は基準データに基づいて分析ユニット自体で設定してもよい。最も簡単な場合では、第3の許容値範囲は、単に下限0mol及び上限「Mend」、すなわち、目標値と同じと定められる。
【0019】
血液治療中、血液治療機械では以下の処理が行われる。
透析治療は、透析液の従来の組成と血液流量Qb及び透析液流量Qdに対する従来の値とで始められる。安定した測定値が確立される時点である数分の測定段階の後に、分析ユニット32は、センサ31から透析液出口ライン25のカリウムの濃度値Cdoを取得する。更に、透析液入口ライン22のカリウムの濃度Cdiは、制御ユニット34の所定の値により分析ユニット32には既知である。このために、第2の同様のセンサは、透析液入口ライン22に設けられてもよい。分析ユニット32は、この情報を用いて血液入口ライン11のカリウムの血中濃度Cbiを次の式によって求める(J.A.Sargent及びF.A.Gotch著「原理と生物物理学」、C.Jacobs他編「透析による腎臓機能の交換)」、「Kluwer Academic Publishers」、ドルドレヒト、1996年、pp.34ff)。
【0020】
【数1】

【0021】
ここで、Dは透析率、αは、カリウムの「Gibbs−Donnan」係数である。「Gibbs−Donnan」係数は、半透膜を通る移送特性としてカリウムのイオン性を考慮に入れ、第1近似ではα=1とすることができる。それ以外では、相応に求められた別の値が分析ユニット32に記憶される。
【0022】
透析率Dは、使用者により分析ユニットに予め入れられていてもよく、又は血液処理装置によりこの目的に対する公知の方法を用いて最初に測定されていてもよい。例えば、米国特許第5,100,554号に記載の技術をこの目的で使用することもできる。カリウムの透析率を直接求める必要はない。カリウムの透析率と不変の関係を有する何らかの他の物質の透析率を決定すれば十分であり、これは、本明細書においてその開示内容が明示的に引用されている、ドイツ特許出願第10317024.3号の主題である。
例えば米国特許第6,126,831号に説明した方法のような他の方法をCbiの決定に使用することもできる。
【0023】
簡単にするために、限外濾過液の流量Qf、すなわち、第2のチャンバ2から第1のチャンバ4へ半透膜3を通る正味の流量は、式(1)でゼロに等しいとする。当業者は、無視できない限外濾過の量Qfを考慮に入れた修正式を知っているであろう。これに関しては、この方式を血液濾過及び血液透析濾過法に適用した本出願人によるドイツ特許出願第10212247.4号を明示的に参照することができる。
【0024】
最初の短時間の測定段階の後に、分析ユニット32は、Cbiの最初の測定値を[ユニットに]記憶された第1の許容値範囲と比較する。この値が既に許容値範囲外である場合、分析ユニット32は、制御ユニット34を通じて警報信号を送出し、データライン36で制御ユニットに連結されている表示及び入力ユニット35を通じて重大な血中濃度に関して注意を促す。血液治療は、操作者が追加の段階を行うことができるように自動的に停止される。
【0025】
測定値が第1の許容範囲内である場合、分析ユニットは、許容値範囲の全てを残すことなく取り出されるカリウムの総量の目標値「Mend」を第3の許容値範囲内でできる限り迅速に達成することができるように、第1及び第2の許容範囲並びに任意的に第3の許容範囲の限界に基づいて追加の治療パラメータを指定する。そうするために、透析液の濃度は、第1の値範囲の下限に近いか、又は少なくとも瞬間的な濃度値と最小の差異で離れた値に設定される。透析液の流量Qd及び血液の流量Qbは、任意的に増加させることもできる。このようにして、透析率及び従って移送速度ΔM/Δtも増加する。分析ユニットは、ここで、実験的に進めることができ、又は、総治療時間T内に[物質を]完全に取り出させる治療パラメータを提案することが可能であるように、ドイツ特許出願第10212247.4号で見出されたような濃度と流量の透析率に関する公知の式に基づいて量「Mend」を取り出すために要する時間量を推定することができる。
【0026】
この初期段階の後に実際の血液治療が始まる。規則的な間隔でセンサ31は、分析ユニット32に測定値を中継し、分析ユニットは、上述のように血中濃度Cbi(t)を求め、次に、式(2)及び(3)を用いて移送速度ΔM(t)/Δt及び取り出すカリウムの総量M(t)を求める。
【0027】
【数2】

【0028】
分析ユニット32は、3つの値全てをそれぞれの許容値範囲と比較する。値が第1及び第2の範囲から離れることになる危険性がある場合、分析ユニット32は、値範囲から離れる傾向に対抗することが可能なように制御ユニット34に適切な命令を与える。例えば、Cbi(t)の値の減少が速すぎる場合、Cdi(t)の濃度を相応に増大させることができる。血液の流量Qb(t)又は透析液の流量Qd(t)を低減することもまた可能である。移送速度ΔM(t)/Δtが速すぎる場合も同じことが言える。
【0029】
目標値Mend=M(t)に到達すると、また、この目標値と第3の値範囲の上限が何らかの理由で互いに異なる場合には最後に第3の値範囲の上限に到達すると、制御ユニット34は、血液治療の終了までこれ以上カリウムを取り出すことがないように、カリウム濃度Cdi(t)を血中値Cbi(t)に対応する値に設定するように命令される。
最大移送速度にも関わらず目標量「Mend」に達することができずに治療時間Tが経過した場合、この情報は、使用者に対してそのように表示される。そうするためには、この情報は、治療時間T中に除去される物質の最大量が移送速度の上限に治療時間Tを乗じたものから得られるので、治療データの入力時に使用者に対して既に表示されていてもよい。
【0030】
一方計算された値の全ては、操作者に対して表示及び入力ユニット35を通じて表示される。個々の値と許容値範囲との関係及び値範囲からの値の危急の逸脱を分かりやすい方法で示すために、様々なグラフィック的な助けを利用することができる。カリウム濃度を最初に求めた直後に更新した表示を有することは特に有利であり、それは、この値により治療の忍容性と個々の値範囲の可能な個別化した調節とに関する結論を引き出すことを可能にするためである。分析ユニット32はまた、身長及び体重のような患者特定の他のデータとの記憶された関連性に基づいて個々の値範囲に関して助言を与えることができる。
本発明による血液治療ユニットの設計は、血液治療機械の半透膜を透過する物質の血中濃度及び移送速度が生理学的範囲を超えることを防止し、同時にある一定量の物質が取り出されるという意味での治療が、血中濃度及び移送速度に対する限界値の優先的順守により可能にされる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】血液処理装置の実施形態を例示的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透膜(3)により2つのチャンバに分割され、その第1のチャンバ(4)が透析液回路(20)の一部であり、その第2のチャンバ(2)が体外血液回路(10)の一部である血液浄化要素(1)を有する血液処理装置であって、
新しい透析液を、第1のチャンバ(4)に供給し、及び/又は血液回路(10)へ直接に供給するために透析液処理ユニット(21)から延びる透析液入口ライン(22)を有し、
第1のチャンバ(4)から使用済み透析液を除去するための透析液出口ライン(23)を有し、
血液を第2のチャンバ(2)へ供給するための血液入口ライン(11)を有し、
血液を第2のチャンバ(2)から返還するための血液返還ライン(12)を有し、
血液処理装置を制御するための制御ユニット(34)を有し、
制御ユニット(34)に連結された分析ユニット(32)を有し、
半透膜(3)を透過することができる物質の濃度を検知するために少なくとも1つの血液回路(10)又は透析液回路(20)上で分析ユニット(32)に連結された少なくとも1つのセンサ(31)を有し、
それによって、分析ユニット(32)は、前記少なくとも1つのセンサ(31)の測定値に基づいて、血液入口ライン(11)内の血液中のこの物質の濃度Cbi、半透膜(3)を通るこの物質の瞬間移送速度ΔM/Δt、及び治療中に膜(3)を通って取り出されるこの物質の総量Mを決定するように構成されており、
それによって、前記物質の血中濃度Cbiに対する第1の許容値範囲、移送速度ΔM/Δtに対する第2の許容値範囲、及び取り出される該物質の総量Mに対する第3の許容値範囲は、分析ユニット(32)に記憶され、
それによって、分析ユニット(32)は、血液処理装置が3つの許容値範囲の全てを維持しながら血液治療を実行する程度まで制御ユニット(34)に対して命令するように設計されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサ(31)は、濃度Cdoを決定するために透析液出口ライン(23)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の血液処理装置。
【請求項3】
第2のセンサが、前記物質の濃度Cdiを決定するために透析液入口ライン(22)に設けられ、かつ分析ユニット(32)にも連結されていることを特徴とする請求項2に記載の血液処理装置。
【請求項4】
透析液入口ライン(22)内の前記物質の濃度Cdiは、制御ユニット(34)及び/又は分析ユニット(32)により予め定められていることを特徴とする請求項2に記載の血液処理装置。
【請求項5】
前記物質は、カリウムであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項6】
前記第2の値範囲は、ゼロから最大値に亘ることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項7】
前記第3の値範囲内の目標値「Mend」は、取り出される前記物質の総量を得るために分析ユニット(32)に記憶されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項8】
分析ユニット(32)は、予定の治療時間の後に目標値「Mend」に到達したことを制御ユニット(34)に指示することを特徴とする請求項7に記載の血液処理装置。
【請求項9】
分析ユニット(32)は、目標値「Mend」に到達した時に前記膜を通る物質(3)のいかなる移送もそれ以上起こらないように、血液治療が透析液入口ライン(22)内の該物質の濃度Cdiで継続されることになるように制御ユニット(34)に命令することを特徴とする請求項7に記載の血液処理装置。
【請求項10】
制御ユニット(34)は、予め設定した処理パラメータを用いて血中濃度Cbiの最初の測定を命じるように構成されており、分析ユニット(32)は、Cbiの初期値を決定し、この値と、血液治療のための前記第1の許容値範囲と、前記第2の許容値範囲とを考慮して、透析液入口ライン(22)内の前記物質の濃度Cdiと、透析液流量Qdと、及び/又は血液流量Qbとに対する値を提案するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項11】
分析ユニット(32)は、前記第1の許容値範囲の下限に対応する値に基づいて濃度Cdiを決定することを特徴とする請求項10に記載の血液処理装置。
【請求項12】
分析ユニット(32)は、前記第2の許容値範囲の上限によって濃度Cdiを決定することを特徴とする請求項10に記載の血液処理装置。
【請求項13】
[前記物質の]取り出しの優先度に関する選択手段が、前記第1の許容値範囲の下限又は前記第2の許容値範囲の上限と一致させることにより入力装置(35)上に設けられていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の血液処理装置。

【図1】
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【公表番号】特表2007−503232(P2007−503232A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524255(P2006−524255)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008650
【国際公開番号】WO2005/021067
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(597075904)フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【Fターム(参考)】