説明

血液情報取得装置

【課題】より安価で測定の再現性に優れた結果を得ることができる血液情報取得装置を提供することを目的とする。
【解決手段】一端側を指が挿入される開口端とし他端側を当接端とした携帯型筒状部と、ヘモグロビンの吸収波長を有する光を発する半導体素子からなり、前記携帯型筒状部に内設された光源とを有する。また、受光面を前記光源側に向けた状態で前記携帯型筒状部に内設された受光部と、携帯型筒状部における開口端側に設けた遮光部とを備えている。上記受光部においては、予め取得しておいた比較対象となる指の透過光強度データとの比較値を算出するための前記指の透過光強度データを取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液情報取得装置に関し、特には血液中の色素タンパク質を精度良好に検出するための血液情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中の色素タンパク質の濃度を測定するための血液検査計としては、血色素計やオキシメータがある。血色素は、色素タンパク質のうちの一つであるヘモグロビン(以下、記号Hbで表記する)の血液中における濃度として測定され、下記に示す測定方法がある。
【0003】
Sahliの血色素計を用いた場合には、採取した血液に少量の塩酸(HCl)を加えて約15分間30℃〜60℃まで加熱して溶血を起こし、血色素を塩酸ヘマチン(ヘミン)に変える。これに蒸留水を加えて希釈し、所定の有色液と比色することにより、Hbの濃度を測定する。Hadanの血色素計を用いた場合には、着色標準ガラスを用意しておき、顕微鏡にて塩酸を加えた採取血液に蒸留水を1滴ずつ加えながら比色することにより、Hbの濃度を測定する。Philipsenの血色素計を用いた場合には、数滴の採取血液に粉末資料を加えて還元溶血し、比色することによりHbの濃度を測定する。また、上記の他にも、光電比色計を適用した血色素計を用いる場合もある。この血色素計は、光電池を用いて光量を電気量に変換することにより呈色液、すなわち採取血液におけるHbの濃度を精密に測定する装置である。
【0004】
また、オキシメータは、血液中におけるHbの酸素飽和度を測定するための装置であり、赤色発光素子からなる光源と、この光源と対向して設けられた受光部と、この受光部で受光した光強度を表示する表示部とで構成されている。そして、光源と受光部との間に指を差し入れた状態で光源から赤色光を照射し、指を透過して受光部で受光された赤色光の光強度をHbの酸素飽和度として測定する。上記オキシメータは、肺のガス交換機能を直接的にモニターする重要な役割を持ち、もし、測定者の酸素飽和度が健常者の酸素飽和度よりも所定量以上低い場合には、酸素を呼吸器に直接供給する等の処置が施される。また、測定された酸素飽和度によって、供給する酸素の圧力(流量)が決定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記血液検査計のうち、Sahliの血色素計、Hadanの血色素計及びPhilipsenの血色素計は、いずれも測定に時間がかかり、かつ測定者の比色の主観が判断の要素に加わるため客観的な測定ができない。また、光電比色計を適用した血色素計では、客観的な定量を行うことができるものの装置が高価である。
【0006】
さらに、Hbに酸素が結合してなるオキシヘモグロビン(以下、記号HbO2で表記する)の吸収極大は575nm、540nm及び415nmの青緑色帯域の波長の光である。ところが、上記オキシメータでは赤色発光素子から発せられる赤色帯域の光が測定光として用いられており、上記HbO2に対する測定光の吸収効率が悪い。このため、検体となる指の差し込み方によって、測定数値が大幅に変動し、信頼性の高い測定結果を得ることができない。
【0007】
そこで本発明は、より安価で測定の再現性に優れた結果を得ることができる血液情報取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の血液情報取得装置は、一端側を指が挿入される開口端とし他端側を当接端とした携帯型筒状部と、ヘモグロビンの吸収波長を有する光を発する半導体素子からなり、この携帯型筒状部に内設された光源と、受光面を前記光源側に向けた状態で前記携帯型筒状部に内設された受光部と、この携帯型筒状部における開口端側に設けた遮光部とを備えている。上記受光部においては、予め取得しておいた比較対象となる指の透過光強度データとの比較値を算出するための前記指の透過光強度データを取得する。
【0009】
上記血液情報取得装置の光源からは紫外から緑色の帯域における所定波長の測定光が発せられるため、上記所定波長として色素タンパク質の大部分を占めるHbの吸収極大波長(555nm、430nm)やHbO2の吸収極大波長(575nm、540nm、415nm)が設定される。この結果、HbやHbO2に対して吸収効率が良好な測定光が照射されることになり、測定対象物における測定光の吸収効率が高くなり、精度の高い定量が行われる。また、光源を構成する半導体素子にレーザダイオードを用いた場合には、検体を透過できる程度の強度を有する測定光が得られる。さらに、複数の半導体素子からなる光源を設けた場合には、2種類の色素タンパク質、例えばHbとHbO2との定量が行われる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明の血液情報取得装置によれば、光源と受光部とが内設される筒状部において、検体(指)の挿入側である開口端側に遮光部を設けた構成であり、精度の高い血液情報を取得することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の血液情報取得装置として血液検査計の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1実施形態)図1は、請求項1及び請求項2記載の本発明を適用した血液検査計の一実施形態を示す図である。この図に示す血液検査計1は、暗箱11、暗箱11内に設けられた光源12及び受光部13、受光部13に接続された表示部14を具備している。
【0013】
光源12及び受光部13が内設された暗箱11は、一端が開口し他端が閉じられた筒状に形成されている。そして、例えば測定者(検査検体)の指Aを開口端側から当該暗箱11の内部に挿入した場合に、指Aの先端が他端側に当接する程度の長さを有している。また、暗箱11の開口端の内壁には、指Aが挿入された状態の暗箱11内に、開口端側から光が浸入することを防止するための暗幕11aが設けられている。
【0014】
また、光源12は、暗箱11の円筒形中心軸に向かって測定光hを発する状態で、暗箱11の内側壁に設けられている。この光源12は、紫外から緑色の帯域における所定波長の光を発する半導体素子aからなるものであり、そのなかでも特には測定目的とする色素タンパク質の吸収極大を示す波長の光を測定光hとして発する半導体素子を用いる。具体的な一例としては、HbO2の吸収極大を示す波長、すなわち575nm、540nm、415nmのうちの一つの波長を有する光を発する半導体素子、またはHbの吸収極大を示す波長、すなわち555nm、430nmのうちの一つの波長を有する光を発する半導体素子を適用する。そして、このような半導体素子として、発光ダイオードやレーザダイオードを好適に用いることができる。
【0015】
また、上記受光部13は、暗箱11の内側壁において、暗箱11の円筒形中心軸を挟んで上記光源12と対向する位置に設けられている。光源12と受光部13との間隔は、検査検体の指Aがこれらの間に挿入可能な程度に設定される。この受光部13は、光電管や光電池等のように受光した光を電気信号に光電変換するものからなり、受光面bを光源12側に向けた状態で配置される。
【0016】
また、上記表示部14は、暗箱11の外壁に設けられており、例えば増幅回路を備えた指示計器からなる。この表示部14には、受光部13で光電変換された電気信号の強度が表示される。
【0017】
上記構成の血液検査計を用いた血液検査は、以下のように行う。先ず、暗箱11の開口端から当該暗箱11内に検査検体の指Aを挿入する。この際、指Aが確実に光源12と受光部13との間に挿入されるように、暗箱11内の他端に指Aを当接させる。次に、光源12から測定光hを照射する。この際、光源12から照射された測定光hによって検査検体の指Aや被検査物である色素タンパク質(すなわちHbやHbO2)に破損が生じないように、測定光hの出力を調整する。
【0018】
以上のようにして指Aに測定光hを照射すると、測定光hのうち検体で吸収されることなく透過した光が受光部13で受光され、その強度(すなわち透過光の強度)が表示部14に表示される。この際、測定光hは、HbやHbO2の吸収極大を示す波長を有しているため、検査検体の血液中におけるHbやHbO2の濃度が高い程、検体を透過して受光部13で受光される光強度が弱くなる。
【0019】
そして、健康な人を標準検体とし、予めこの標準検体に関して上記と同様に光強度のデータを採取しておき、その値と上記検査検体に関して測定した値との比較値を、検査検体におけるHbやHbO2の検査値として算出する。例えば、標準検体で測定された透過光の光強度から検査検体の吸光度を求めてその値を100とした場合に、検査検体で測定された透過光の光強度から求めた吸光度の割合を、当該検査検体の検査値として算出する。
【0020】
上記構成の血液検査計では、Hbの吸収極大波長(555nm、430nm)を有する光またはHbO2の吸収極大波長(575nm、540nm、415nm)を有する光が測定光hとして光源12から発せられる。このため、測定対象物となるHbまたはHbO2による測定光hの吸収効率が高くなり、精度の高い定量が行われる。また、光源12は、半導体素子aからなるものであるため構成が単純で小型化が容易である。しかも、この半導体素子aにレーザダイオードを用いることで、検体を透過できる程度の強度を有する測定光hを用いて血液検査を行うことが可能になる。
【0021】
(第2実施形態)図2は、請求項3記載の発明を適用した血液検査計の一実施形態を示す図である。この図に示す血液検査計2と、上記図1を用いて説明した第1実施形態の血液検査計との異なるところは、光源22及び受光部23の構成にある。
【0022】
すなわち、この図に示す血液検査計2の光源22は、複数の半導体素子a1,a2からなるものである。各半導体素子a1,a2は、測定目的とする複数の色素タンパク質の吸収極大を示す波長の光を測定光h1,h2として発するものである。具体的な一例としては、HbO2の吸収極大を示す波長、すなわち575nm、540nm、415nmのうちの一つの波長を有する光を発する半導体素子a1、及びHbの吸収極大を示す波長、すなわち555nm、430nmのうちの一つの波長を有する光を発する半導体素子a2である。そして、このような半導体素子として、発光ダイオードやレーザダイオードを好適に用いることができる。
【0023】
そして、受光部23は、各半導体素子a1,a2に対向する複数の受光面b,bを有しており、各半導体素子a1,a2から照射された測定光h1,h2がそれぞれ個別に受光されるように構成されている。また、表示部24は、例えば各受光面b,bで受光された透過光の強度をそれぞれ個別に表示できるように構成されている。
【0024】
上記構成の血液検査計によれば、吸収極大が異なる2種類の色素タンパク質、例えばHbとHbO2との定量を同時に行うことができる。このため、例えば、HbとHbO2とを合わせた合計のヘモグロビン量を求めることができる。
【0025】
尚、上記合計のヘモグロビン量を求める際にも、健康な人を標準検体とし、予めこの標準検体に関して光強度のデータを採取しておき、その値と上記検査検体に関して測定した値との比較値を、検査検体における合計のヘモグロビン量として算出することする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の血液検査計の構成図である。
【図2】第2実施形態の血液検査計の構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1,2…血液検査計、11…暗箱、12,22…光源、13,23…受光部、14,24…表示部、a,a1,a2…半導体素子、b…受光面、h,h1,h2…測定光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側を指が挿入される開口端とし他端側を当接端とした携帯型筒状部と、
ヘモグロビンの吸収波長を有する光を発する半導体素子からなり、前記携帯型筒状部に内設された光源と、
受光面を前記光源側に向けた状態で前記携帯型筒状部に内設された受光部と、
前記携帯型筒状部における開口端側に設けた遮光部とを備え、
前記受光部において、予め取得しておいた比較対象となる指の透過光強度データとの比較値を算出するための前記指の透過光強度データを取得する
ことを特徴とする血液情報取得装置。
【請求項2】
請求項1記載の血液情報取得装置において
前記受光部は、前記携帯型筒状部の当接端に当接させた前記指の透過光強度データを取得する
ことを特徴とする血液情報取得装置。
【請求項3】
請求項1記載の血液情報取得装置において
前記遮光部は、前記開口端より挿入される指の腹側部分と接する
ことを特徴とする血液情報取得装置。
【請求項4】
請求項1記載の血液情報取得装置において
前記受光部で受光した光強度を表示する表示部を前記携帯型筒状部の外部に設ける
ことを特徴とする血液情報取得装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−90126(P2009−90126A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305937(P2008−305937)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【分割の表示】特願平10−91079の分割
【原出願日】平成10年4月3日(1998.4.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】