血液浄化装置及びその気泡除去方法
【課題】ドリップチャンバの濾過網に付着した気泡を自動的に除去することができ、プライミングから治療に移行させる際の自動化を容易に図ることができる血液浄化装置及びその気泡除去方法を提供する。
【解決手段】プライミング終了時、制御手段16は、電磁弁V6を閉塞しつつ血液ポンプ4を駆動してプライミング液供給ラインLcから血液回路内にプライミング液を供給し、血液ポンプ4と電磁弁V1との間でプライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、電磁弁V6を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、ドリップチャンバ5の濾過網に付着した気泡をオーバーフローライン6から排出可能とされたものである。
【解決手段】プライミング終了時、制御手段16は、電磁弁V6を閉塞しつつ血液ポンプ4を駆動してプライミング液供給ラインLcから血液回路内にプライミング液を供給し、血液ポンプ4と電磁弁V1との間でプライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、電磁弁V6を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、ドリップチャンバ5の濾過網に付着した気泡をオーバーフローライン6から排出可能とされたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアライザを使用した透析治療など、患者の血液を体外循環させつつ浄化するための血液浄化装置及びその気泡除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療時においては、採取した患者の血液を体外循環させて再び体内に戻すための血液回路が用いられており、かかる血液回路は、例えば中空糸膜を具備したダイアライザ(血液浄化手段)と接続し得る動脈側血液回路及び静脈側血液回路から主に構成されている。これら動脈側血液回路及び静脈側血液回路の各先端には、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針が取り付けられ、それぞれが患者に穿刺されて透析治療における血液の体外循環が行われることとなる。
【0003】
このうち、動脈側血液回路には、しごき型の血液ポンプが配設されており、当該血液ポンプを駆動させることにより患者の体内から血液をダイアライザ側に送り込む一方、動脈側血液回路及び静脈側血液回路には、動脈側ドリップチャンバ及び静脈側ドリップチャンバが接続されており、除泡した後に患者の体内に血液が戻されるようになっている。
【0004】
また、動脈側血液回路における血液ポンプより上流側(即ち、動脈側穿刺針側)には、プライミングや返血時等に生理食塩液を供給するためのプライミング液供給ライン(生理食塩液ライン)がT字管等を介して接続されており、透析治療前に、血液回路や該血液回路に接続されたドリップチャンバ等構成要素に生理食塩液を流し充填させてプライミングを行うとともに、透析治療後に血液回路などに残留した残留血液と生理食塩液とを置換して、当該残留血液を患者に戻すことにより返血を行うよう構成されている。尚、プライミング液供給ラインを具備した透析装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−93449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、プライミング終了時、血液回路に接続されたドリップチャンバの濾過網等のドリップチャンバ内に気泡が付着していることが多く、これを除去するには作業者が手で軽くドリップチャンバを殴打して衝撃を加える必要があった。特に、静脈側血液回路に接続されたドリップチャンバの濾過網における外側(ドリップチャンバの吐出口を臨んだ面側)に気泡が付着した場合は、その気泡が治療時に静脈側穿刺針を介して患者の体内に導かれる虞があるため、入念に気泡を除去する必要があった。従って、作業者による気泡除去のための作業が必要とされるとともに、プライミングから治療に移行させる際の自動化を図ることが困難になってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドリップチャンバに付着した気泡を自動的に除去することができ、プライミングから治療に移行させる際の自動化を容易に図ることができる血液浄化装置及びその気泡除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化するとともに、血液を浄化するための血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成された血液浄化手段と、前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、該血液浄化手段の透析液流路入口及び出口に接続された透析液導入ライン及び透析液排出ラインと、前記動脈側血液回路と連結され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインと、前記血液浄化手段の両端にそれぞれ形成され、前記動脈側血液回路と接続されて血液流路に血液を導入する血液導入口、及び前記静脈側血液回路と接続されて血液回路から血液を導出する血液導出口と、前記血液浄化手段の側面にそれぞれ形成され、前記透析液導入ラインと接続されて透析液流路に透析液を導入する透析液導入口、及び前記透析液排出ラインと接続されて透析液流路から透析液を導出する透析液導出口と、前記静脈側血液回路に接続されるとともに濾過網が形成されたドリップチャンバと、該ドリップチャンバの空気層側から延設され、当該ドリップチャンバをオーバーフローした液体を外部に排出させ得るオーバーフローラインと、該オーバーフローラインを任意に閉塞又は開放可能な弁手段とを具備し、治療前のプライミング時、前記動脈側血液回路先端と静脈側血液回路先端とを接続して連通可能とされた血液浄化装置において、前記血液ポンプ及び弁手段を制御可能な制御手段を具備するとともに、プライミング終了時、当該制御手段は、前記弁手段を閉塞しつつ前記血液ポンプを駆動して前記プライミング液供給ラインから前記血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、前記弁手段を開放させるとともに、前記蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、前記ドリップチャンバに付着した気泡を前記オーバーフローラインから排出可能とされたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記動脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な動脈側クランプ手段と、前記静脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な静脈側クランプ手段とを具備し、前記制御手段は、当該動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を制御可能とされるとともに、前記蓄圧工程において当該制御手段は、前記動脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを正転駆動させ、前記血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、前記動脈側クランプ手段に加え前記静脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程とを行わせるとともに、前記解放工程で前記動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の血液浄化装置において、前記ドリップチャンバから延設されて当該ドリップチャンバ内における液圧を検知し得る液圧検知手段を具備するとともに、前記制御手段は、当該液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として前記第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記制御手段は、前記蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化するとともに、血液を浄化するための血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成された血液浄化手段と、前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、該血液浄化手段の透析液流路入口及び出口に接続された透析液導入ライン及び透析液排出ラインと、前記動脈側血液回路と連結され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインと、前記血液浄化手段の両端にそれぞれ形成され、前記動脈側血液回路と接続されて血液流路に血液を導入する血液導入口、及び前記静脈側血液回路と接続されて血液回路から血液を導出する血液導出口と、前記血液浄化手段の側面にそれぞれ形成され、前記透析液導入ラインと接続されて透析液流路に透析液を導入する透析液導入口、及び前記透析液排出ラインと接続されて透析液流路から透析液を導出する透析液導出口と、前記静脈側血液回路に接続されるとともに濾過網が形成されたドリップチャンバと、該ドリップチャンバの空気層側から延設され、当該ドリップチャンバをオーバーフローした液体を外部に排出させ得るオーバーフローラインと、該オーバーフローラインを任意に閉塞又は開放可能な弁手段とを具備し、治療前のプライミング時、前記動脈側血液回路先端と静脈側血液回路先端とを接続して連通可能とされた血液浄化装置の気泡除去方法において、プライミング終了時、前記弁手段を閉塞しつつ前記血液ポンプを駆動して前記プライミング液供給ラインから前記血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、前記弁手段を開放させるとともに、前記蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、前記ドリップチャンバに付着した気泡を前記オーバーフローラインから排出可能とされたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の血液浄化装置の気泡除去方法において、前記動脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な動脈側クランプ手段と、前記静脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な静脈側クランプ手段とを具備するとともに、前記蓄圧工程において、前記動脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを正転駆動させ、前記血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、前記動脈側クランプ手段に加え前記静脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程とを行わせるとともに、前記解放工程で前記動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の血液浄化装置の気泡除去方法において、前記ドリップチャンバから延設されて当該ドリップチャンバ内における液圧を検知し得る液圧検知手段を具備するとともに、当該液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として前記第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項5〜7の何れか1つに記載の血液浄化装置の気泡除去方法において、前記蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、5の発明によれば、プライミング終了時、弁手段を閉塞しつつ血液ポンプを駆動してプライミング液供給ラインから血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、弁手段を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、ドリップチャンバに付着した気泡をオーバーフローラインから排出可能とされたので、ドリップチャンバ(特に濾過網)に付着した気泡を自動的に除去することができ、プライミングから治療に移行させる際の自動化を容易に図ることができる。
【0017】
請求項2、6の発明によれば、蓄圧工程において、動脈側クランプ手段を閉塞させつつ血液ポンプを正転駆動させ、血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、動脈側クランプ手段に加え静脈側クランプ手段を閉塞させつつ血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程とを行わせるとともに、解放工程で動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させるので、より高い蓄圧を可能とすることができ、ドリップチャンバに付着した気泡をより確実に除去することができる。
【0018】
請求項3、7の発明によれば、液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させるので、第1蓄圧工程において血液回路内でプライミング液を流動させる際、液圧が過大となってしまうのを確実に回避することができる。
【0019】
請求項4、8の発明によれば、蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせるので、更に確実にドリップチャンバ(特に濾過網)に付着した気泡を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る透析装置(血液浄化装置)を示す模式図
【図2】同透析装置によるプライミング(液溜まり生成工程(血液ポンプ正転駆動))が行われている状態を示す模式図
【図3】同透析装置によるプライミング(液溜まり生成工程(血液ポンプ逆転駆動))が行われている状態を示す模式図
【図4】同透析装置によるプライミング(最初のオーバーフロー工程)が行われている状態を示す模式図
【図5】同透析装置によるプライミング(循環工程)が行われている状態を示す模式図
【図6】同透析装置によるプライミング(オーバーフロー工程)が行われている状態を示す模式図
【図7】同透析装置によるプライミング(透析液充填工程)が行われている状態を示す模式図
【図8】同透析装置における制御手段によるプライミング時の制御内容を示すフローチャート
【図9】同透析装置によるプライミング終了時の気泡除去(第1蓄圧工程)が行われている状態を示す模式図
【図10】同透析装置によるプライミング終了時の気泡除去(第2蓄圧工程)が行われている状態を示す模式図
【図11】同透析装置によるプライミング終了時の気泡除去(解放工程)が行われている状態を示す模式図
【図12】同透析装置における制御手段によるプライミング終了時の気泡除去の制御内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、透析治療を行うための透析装置から成り、図1に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の間に介装されて血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化手段)と、動脈側血液回路1に配設されたしごき型の血液ポンプ4と、静脈側血液回路2に接続されたドリップチャンバ5と、プライミング液としての生理食塩液を収容した収容手段7と、該収容手段7と動脈側血液回路1とを連結したプライミング液供給ラインLcと、該プライミング液供給ラインLcの途中に接続されたプライミング液用ドリップチャンバ8とから主に構成されている。
【0022】
動脈側血液回路1には、その先端にコネクタcを介して動脈側穿刺針aが接続されるとともに、途中にしごき型の血液ポンプ4が配設されている一方、静脈側血液回路2には、その先端にコネクタdを介して静脈側穿刺針bが接続されるとともに、途中にドリップチャンバ5が接続されている。そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ4を駆動させると、患者の血液は、動脈側血液回路1を通ってダイアライザ3に至った後、該ダイアライザ3によって血液浄化が施され、ドリップチャンバ5で除泡がなされつつ静脈側血液回路2を通って患者の体内に戻る。即ち、患者の血液を血液回路の動脈側血液回路1の先端から静脈側血液回路2の先端まで体外循環させつつダイアライザ3にて浄化するのである。
【0023】
ドリップチャンバ5には、上部(空気層側)から延びて先端が大気解放とされたオーバーフローライン6が延設されており、当該ドリップチャンバ5をオーバーフローした液体(生理食塩液等のプライミング液)を外部に排出させ得るよう構成されている。このオーバーフローライン6には、弁手段としての電磁弁V6が配設されており、当該オーバーフローライン6を任意に閉塞又は開放可能とされている。
【0024】
更に、ドリップチャンバ5の内部には、その吐出口側を覆った濾過網5aが形成されており、透析治療時において、血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)にて血液を体外循環させる際、当該濾過網5aにて異物等を捕捉し得るようになっている。かかる濾過網5aは、樹脂で一体形成されたもの或いはメッシュで形成されたもの等何れの形態であってもよい。
【0025】
更に、ドリップチャンバ5の上部から延設されて当該ドリップチャンバ5内における液圧(静脈圧)を検知し得る液圧検知手段17が形成されている。この液圧検知手段17は、透析治療中における静脈圧をリアルタイムで検知して異常を検知し得るものであり、制御手段16と電気的に接続され、検知信号を当該制御手段16に送信し得るよう構成されている。
【0026】
ダイアライザ3は、その筐体部に、血液導入口3a(血液導入ポート)、血液導出口3b(血液導出ポート)、透析液導入口3c(透析液流路入口:透析液導入ポート)及び透析液導出口3d(透析液流路出口:透析液導出ポート)が形成されており、このうち血液導入口3aには動脈側血液回路1が、血液導出口3bには静脈側血液回路2がそれぞれ接続されている。また、透析液導入口3c及び透析液導出口3dは、透析装置本体から延設された透析液導入ラインLa及び透析液排出ラインLbとそれぞれ接続されている。
【0027】
ダイアライザ3内には、複数の中空糸(不図示)が収容されており、この中空糸が血液を浄化するための血液浄化膜を構成している。而して、ダイアライザ3内には、血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路(血液導入口3aと血液導出口3bとの間の流路)及び透析液が流れる透析液流路(透析液導入口3cと透析液導出口3dとの間の流路)が形成されている。そして、血液浄化膜を構成する中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微小な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0028】
複式ポンプ(不図示)は、透析装置本体内で透析液導入ラインLa及び透析液排出ラインLbに跨って配設されているとともに、当該透析装置本体には、ダイアライザ3中を流れる患者の血液から水分を除去するための除水ポンプ(不図示)が配設されている。更に、透析液導入ラインLaの一端がダイアライザ3(透析液導入口3c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ラインLbの一端は、ダイアライザ3(透析液導出口3d)に接続されるとともに、他端が図示しない排液手段と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ラインLaを通ってダイアライザ3に至った後、透析液排出ラインLbを通って排液手段に送られるようになっている。
【0029】
透析液導入ラインLaの途中(複式ポンプとダイアライザ3との間)には、その流路を閉塞及び開放し得る電磁弁V4が接続されているとともに、透析液排出ラインLbの途中(複式ポンプとダイアライザ3との間)には、その流路を閉塞及び開放し得る電磁弁V5が接続されている。また、動脈側血液回路1の先端側(コネクタc近傍)及び静脈側血液回路2の先端側(コネクタd近傍)には、その流路を閉塞及び開放し得る電磁弁V1(動脈側クランプ手段)及び電磁弁V2(静脈側クランプ手段)が接続されているとともに、プライミング液供給ラインLcの途中には、その流路を閉塞及び開放し得る電磁弁V3が接続されている。
【0030】
更に、動脈側血液回路1の先端側には、その部位を流れる液体中の気泡を検知し得る動脈側気泡検知手段9が配設されるとともに、静脈側血液回路2の先端側には、その部位を流れる液体中の気泡を検知し得る静脈側気泡検知手段10が配設されている。尚、図中符号11、12は、動脈側血液回路1の先端側及び静脈側血液回路2の先端側にそれぞれ配設された血液判別器を、符号13、14、15は、動脈側血液回路1の先端側、静脈側血液回路2の先端側、及びプライミング液供給ラインLcの途中にそれぞれ配設されたチューブ検出器を示している。
【0031】
これら電磁弁V1〜V6は、上述のように開閉動作により、配設された各々の部位における流路を閉塞及び開放し得るものであり、その開閉動作がマイコン等の制御手段16にて制御されるよう構成されている。特に、本実施形態における制御手段16は、静脈側気泡検知手段10による検知信号を受信し且つ血液ポンプ4及び弁手段としての電磁弁V6を含む各電磁弁V1〜V5を制御可能なものとされ、これら構成要素と電気的に接続されている。
【0032】
収容手段7(所謂「生理食塩液バッグ」と称されるもの)は、可撓性の透明な容器から成り、生理食塩液(プライミング液)を所定容量収容し得るもので、例えば透析装置本体に突設されたポール(不図示)の先端に取り付けられている。プライミング液供給ラインLcは、動脈側血液回路1における動脈側穿刺針aと動脈側ドリップチャンバ5の間の部位(連結部P)に接続され、収容手段7内の生理食塩液(プライミング液)を血液回路内に供給し得るものである。このプライミング液供給ラインLcの途中には、プライミング液用ドリップチャンバ8が接続されており、生理食塩液(プライミング液)の供給(滴下)を目視し得るようになっている。
【0033】
然るに、治療前のプライミング(生理食塩液等のプライミング液を血液の流路或いは透析液の流路で流して洗浄し、当該プライミング液を血液の流路或いは透析液の流路に予め満たしておく作業)時、動脈側血液回路1先端と静脈側血液回路2先端とを接続して連通(具体的には、コネクタcとコネクタdとを接続して互いの流路を連通)可能とされている。
【0034】
本実施形態に係る透析装置(血液浄化装置)は、治療前のプライミング時においては、制御手段16は、上述のように、静脈側気泡検知手段10による検知信号(気泡検知信号)を受信し且つ血液ポンプ4及び弁手段としての電磁弁V6を含む電磁弁V1〜V5を制御可能とされるとともに、プライミング液用ドリップチャンバ8内に生理食塩液(プライミング液)による液溜まりを生成する液溜まり生成工程と、血液ポンプ4を停止させるとともに電磁弁V6(弁手段)を開放させることにより、プライミング液供給ラインLcから静脈側血液回路2を介してドリップチャンバ5まで生理食塩液(プライミング液)を自重にて供給してオーバーフローライン6から排出させるオーバーフロー工程と、血液ポンプ4を逆転駆動させるとともに電磁弁V6(弁手段)を閉塞させ、プライミング液供給ラインLcから静脈側血液回路2及びダイアライザ3(血液浄化手段)を介して動脈側血液回路1まで生理食塩液(プライミング液)を供給させる循環工程と、をダイアライザ3(血液浄化手段)の血液導入口3aが上方を向いた状態にて順次行わせ、循環工程において静脈側気泡検知手段10が気泡検知することによりオーバーフロー工程に移行させるものである。また、本実施形態に係る制御手段16は、静脈側気泡検知手段10による気泡検知がなくなるまでオーバーフロー工程と循環工程とを繰り返し行わせるものとされる。
【0035】
以下、本実施形態に係る透析装置で行われるプライミング工程について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
プライミング時、図2に示すように、ダイアライザ3の血液導入口3aが上方を向いた状態(図示しない固定手段により固定)とし、且つ、コネクタcとコネクタdとを接続して互いの流路を連通させた後、液溜まり生成工程(S1〜S4)を行わせる。S1は、図2に示すように、血液ポンプ4を正転駆動させて、プライミング液供給ラインLcを介して収容手段7内の生理食塩液(プライミング液)を動脈側血液回路1の連結部Pまで導くための工程である。
【0036】
そして、血液ポンプ4が所定数(例えば5回転)正転駆動されたか否かが判定され(S2)、所定回転数に達すると当該血液ポンプ4を逆転駆動させる(図3参照)。かかる血液ポンプ4を逆転駆動させた後、所定数(例えば2回転)逆転駆動されたか否かが判定され(S4)、所定回転数に達すると血液ポンプ4が停止され、一連の液溜まり生成工程が終了する。これにより、プライミング液用ドリップチャンバ8内に生理食塩液による液溜まりが生成されることとなる。尚、S1において血液ポンプ4を正転駆動させる際、及びS3において血液ポンプ4を逆転駆動させる際には、図2に示すように、電磁弁V2、V3は開状態とされるとともに、電磁弁V1、V4〜V6は閉状態とされる。
【0037】
その後、図4で示すように、血液ポンプ4の停止状態を維持しつつ弁手段としての電磁弁V6及び電磁弁V1を開放させることにより、プライミング液供給ラインLcから静脈側血液回路2を介してドリップチャンバ5まで生理食塩液(プライミング液)を自重にて供給してオーバーフローライン6から排出させる(オーバーフロー工程S5)。即ち、収容手段7内の生理食塩液(プライミング液)は、その落差により生じる自重(落差圧)で、プライミング液供給ラインLc、動脈側血液回路1の連結部Pから先端までの間、及び静脈側血液回路2の先端からドリップチャンバ5まで至り、その上部から延設されたオーバーフローライン6から排出されることとなる。
【0038】
そして、当該オーバーフロー工程S5が開始されてから所定時間(例えば30秒)経過したか否かが判定され(S6)、当該所定時間経過すると、S7に進み循環工程が行われる。かかる循環工程は、図5に示すように、血液ポンプ4を逆転駆動(例えば、100(mL/min)程度の駆動速度が好ましい)させるとともに弁手段としての電磁弁V6及び電磁弁V3を閉塞させ、プライミング液供給ラインLcから静脈側血液回路2及びダイアライザ3を介して動脈側血液回路1まで生理食塩液(プライミング液)を供給させる工程である。これにより、ダイアライザ3内の血液側流路を下方から上方に向けて生理食塩液が流れることとなり、気泡がスムーズに上方へ移動して抜かれることとなる。
【0039】
上記の如き循環工程S7の後、静脈側気泡検知手段10が気泡検知したか否かが判定され(S8)、気泡検知するとS5まで戻り、再びオーバーフロー工程S5に移行することとなる。このときのオーバーフロー工程S5は、図6に示すように、ドリップチャンバ5内に生理食塩液が収容されているものの、他の動作は図3で示すものと同様である。そして、再びオーバーフロー工程S5及び循環工程S7が行われた後、再度S8にて気泡検知があるか否かが判定される。こうして、静脈側気泡検知手段10による気泡検知がなくなるまでオーバーフロー工程S5と循環工程S8とが繰り返し行われることとなる。
【0040】
S8にて静脈側気泡検知手段10が気泡検知しなくなったとき、S9に進んで透析液充填工程(所謂ガスパージと称される工程)が行われる。この透析液充填工程S9は、図7に示すように、電磁弁V4、V5を開放しつつ複式ポンプを駆動させ、ダイアライザ3内の透析液流路内に透析液を流して満たす工程である。このとき、電磁弁V3、V6は閉状態とされるとともに、電磁弁V1、V2、V4、V5は開状態とされている。
【0041】
尚、透析液充填工程(ガスパージ)に移行する前(ガスパージ中或いは終了後も可能である)に、電磁弁V3、V6を開放させた状態で血液ポンプ4を正転駆動させ、プライミング液をオーバーフローさせつつ排出するのが好ましく、その場合、ダイアライザ3内の更なる洗浄を行うことができる。透析液充填工程(ガスパージ)においては、血液ポンプ4を駆動させていてもよい。更には、透析液充填工程中に、電磁弁V3を開放させるとともに血液ポンプ4を駆動させ、さらに透析液配管の除水ポンプを駆動させることで、プライミング液をダイアライザ3における血液流路(中空糸)の血液側から透析液側に送ることにより、当該中空糸膜の洗浄(中空糸のポアの洗浄)を行うこともできる。
【0042】
本実施形態によれば、液溜まり生成工程、オーバーフロー工程及び循環工程、透析液充填工程を経ることにより、治療の際に血液や透析液等が流通する部位の洗浄・プライミングを行うことができ、気泡を確実に外部へ排出させることができる。更に、本実施形態においては、全てのプライミング工程に亘り、ダイアライザ3の血液導入口3aが上方を向いた状態にて行われるので、当該ダイアライザ3の上下反転作業を不要とし、プライミング工程を容易に自動化させることができるとともに、ダイアライザ3における素早く且つ確実な気泡抜きを行わせることができる。
【0043】
また更に、本実施形態によれば、循環工程において静脈側気泡検知手段10が気泡検知することによりオーバーフロー工程に移行させるので、プライミング作業を簡易として容易に自動化させることができるとともに、ダイアライザ3(血液浄化手段)の気泡抜きを確実かつスムーズに行わせることができる。特に、プライミング時、ダイアライザ3の血液流路に対して上方から下方へ生理食塩液(プライミング液)を供給することがないため、その後のエアロック等を確実に回避させることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、静脈側気泡検知手段10による気泡検知がなくなるまでオーバーフロー工程と循環工程とを繰り返し行わせるので、プライミング時、血液回路内の気泡をより確実に外部に排出させることができる。更に、最初のオーバーフロー工程前、プライミング液用ドリップチャンバ8内に生理食塩液(プライミング液)による液溜まりを生成する液溜まり生成工程を行わせるので、プライミング時においてプライミング液用ドリップチャンバ8の液溜まりを生成させることができる。
【0045】
尚、本実施形態によれば、制御手段16による一連の制御にてプライミング作業を行わせることができるので、プライミングの自動化を容易に図ることができ、作業員による作業を著しく低減させることができる。また、制御手段16による制御内容を変更することにより本実施形態の如き動作を可能とするため、既存の血液回路をほぼそのまま流用して本発明に係る血液浄化装置(透析装置)とすることができる。
【0046】
以上によりプライミングが終了した時点で、本実施形態においては以下の如き気泡除去が行われる。
即ち、プライミング終了時、動脈側血液回路1先端と静脈側血液回路2先端との接続状態が維持されるとともに、制御手段16は、電磁弁V6(弁手段)を閉塞しつつ血液ポンプ4を駆動してプライミング液供給ラインLcから血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、電磁弁V6(弁手段)を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、ドリップチャンバ5の濾過網5a及び当該ドリップチャンバ5内の他の箇所に付着した気泡をオーバーフローライン6から排出可能とされている。
【0047】
より具体的には、制御手段16は、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)及び電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を制御可能とされており、蓄圧工程において当該制御手段16は、電磁弁V1を閉塞させつつ血液ポンプ4を正転駆動させ、血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程(図9参照)と、電磁弁V1に加え電磁弁V2を閉塞させつつ血液ポンプ4を逆転駆動させ、当該血液ポンプ4と電磁弁V1との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程(図10参照)とを行わせるとともに、解放工程(図11参照)で電磁弁V1及び電磁弁V2を解放させるよう構成されている。
【0048】
更に、制御手段16は、液圧検知手段17にて所定値(例えば、100〜200(mmHg)程度)の液圧が検知されたことを条件として第1蓄圧工程から第2蓄圧工程に移行させるよう構成されてるとともに、蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせるよう構成されている。尚、本実施形態においては、蓄圧工程と解放工程とが複数回繰り返し行わせるよう構成されているが、当該蓄圧工程と解放工程をそれぞれ1回のみ行わせるものとしてもよい。
【0049】
以下、本実施形態に係る透析装置で行われるプライミング終了時の気泡除去工程について、図12のフローチャートに基づいて説明する。
プライミングが終了すると、図9に示すように、動脈側血液回路1先端と静脈側血液回路2先端との接続状態が維持されるとともに、制御手段16によって、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)を閉塞させつつ血液ポンプ4を正転駆動させ、血液回路内でプライミング液を順方向(治療時の流動方向と同じ方向)に流動させる(第1蓄圧工程S1)。
【0050】
かかる第1蓄圧工程S1において、液圧検知手段17により所定値の液圧(プライミング液の液圧)が検知されたか否かを判定し(S2)、所定値の液圧が検知されたことを条件として第2蓄圧工程S3に進む。かかる第2蓄圧工程S3は、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)に加え電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を閉塞させつつ血液ポンプ4を逆転駆動させ、当該血液ポンプ4と電磁弁V1(動脈側クランプ手段)との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする工程である。
【0051】
かかる第2蓄圧工程S3によれば、比較的高い圧力にて蓄圧状態とすることができる部位(血液ポンプ4と電磁弁V1との間であって、通常、この部位にはゴムボタン等高圧に耐えられない構成要素が接続されない)を蓄圧させることができる。然るに、第2蓄圧工程S3において、血液ポンプ4が所定回転数駆動したか否か、或いは所定時間経過したか否かを判定し(S4)、所定回転数駆動又は所定時間経過したと判定されると、血液ポンプ4と電磁弁V1との間において所定の液圧が蓄積されたと判断され、解放工程S5に進む。尚、第2蓄圧工程S3においては、血液ポンプ4による液送量が約4(mL)程度となるようにして蓄圧を行うのが好ましい。
【0052】
かかる解放工程S5は、電磁弁V6(弁手段)を開放させるとともに、蓄圧工程(第2蓄圧工程S3)にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放するための工程で、具体的には、制御手段16により、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)及び電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を略同時に解放させる工程である。これにより、蓄圧されたプライミング液が一気に解放(大気開放)され、その水圧にてドリップチャンバ5及びその濾過網5aに衝撃を付与することにより、当該濾過網5a及びドリップチャンバ5内のその他の部位に付着した気泡をプライミング液と共にオーバーフローライン6から外部に排出することができる。
【0053】
解放工程S5が終了した後、蓄圧工程(S1、S3)及び解放工程S5が所定回数(予め設定した回数)行われたか否かが判定され(S6)、所定回数行われた場合は一連の気泡除去を終了する一方、所定回数に達していない場合はS1に戻り、再び一連の気泡除去を開始する。本実施形態においては、蓄圧工程(S1、S3)及び解放工程S5が複数回行われるよう設定されており、これにより、当該蓄圧工程(S1、S3)及び解放工程S5が1回のみ行われるものに比べ、更に確実にドリップチャンバ5の濾過網5a等に付着した気泡を除去することができる。
【0054】
本実施形態においては、プライミング終了時、電磁弁V6(弁手段)を閉塞しつつ血液ポンプ4を駆動してプライミング液供給ラインLcから血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位(本実施形態においては動脈側血液回路1における血液ポンプ4と電磁弁V1との間)で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程(第1蓄圧工程S1及び第2蓄圧工程S3)と、電磁弁V6(弁手段)を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程S5とを行わせ、ドリップチャンバ5の濾過網5aに付着した気泡をオーバーフローライン6から排出可能とされたので、ドリップチャンバ5(特に濾過網5a)に付着した気泡を自動的に除去することができ、プライミングから治療(脱血工程を含む透析治療)に移行させる際の自動化を容易に図ることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、蓄圧工程において、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)を閉塞させつつ血液ポンプ4を正転駆動させ、血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程S1と、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)に加え電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を閉塞させつつ血液ポンプ4を逆転駆動させ、当該血液ポンプ4と電磁弁V1(動脈側クランプ手段)との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程S3とを行わせるとともに、解放工程S5で電磁弁V1(動脈側クランプ手段)及び電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を解放させるので、より高い蓄圧を可能とすることができ、ドリップチャンバ5の濾過網5a(特に、濾過網5aの外側(ドリップチャンバ5の吐出口を臨んだ面側))に付着した気泡をより確実に除去することができる。
【0056】
更に、本実施形態によれば、液圧検知手段17にて所定値の液圧が検知されたことを条件として第1蓄圧工程S1から第2蓄圧工程S3に移行させるので、第1蓄圧工程S1において血液回路内でプライミング液を流動させる際、液圧が過大となってしまうのを確実に回避することができる。尚、通常の血液回路においては、静脈側血液回路2に接続されたドリップチャンバ5には静脈圧を検知し得る液圧検知手段17が配設されているため、これを流用させることができる。
【0057】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、治療前のプライミング時、動脈側血液回路1先端と静脈側血液回路2先端とを接続して連通可能とされたものであれば、プライミング工程を他の形態の工程としてもよい。また、蓄圧工程(第2蓄圧工程S3)は、電磁弁V6(弁手段)を閉塞しつつ血液ポンプ4を駆動してプライミング液供給ラインLcから血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする工程であれば足り、本実施形態の如く蓄圧部位を「動脈側血液回路1における血液ポンプ4と電磁弁V1との間」と設定するものの他、他の部位にて蓄圧させるものであってもよい。
【0058】
更に、本実施形態においては、液圧検知手段17にて所定値の液圧が検知されたことを条件として第1蓄圧工程S1から第2蓄圧工程S3に移行させているが、血液ポンプ4を所定回転数或いは所定時間、正転駆動させたことを条件として第1蓄圧工程S1から第2蓄圧工程S3に移行させるようにしてもよい。また更に、本実施形態においては、収容手段7からプライミング液としての生理食塩液を供給しているが、当該生理食塩液とは異なる他のプライミング液を供給するよう構成してもよい。尚、本実施形態においては、透析治療時に用いられる透析装置に適用しているが、患者の血液を体外循環させつつ浄化し得る他の装置(例えば血液濾過透析法、血液濾過法、AFBFで使用される血液浄化装置、血漿吸着装置など)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
プライミング終了時、弁手段を閉塞しつつ血液ポンプを駆動してプライミング液供給ラインから血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、弁手段を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、ドリップチャンバに付着した気泡をオーバーフローラインから排出可能とされた血液浄化装置及びその気泡除去方法であれば、他の形態及び用途のものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 動脈側血液回路
2 静脈側血液回路
3 ダイアライザ(血液浄化手段)
4 血液ポンプ
5 ドリップチャンバ
5a 濾過網
6 オーバーフローライン
7 収容手段
8 プライミング液用ドリップチャンバ
9 動脈側気泡検知手段
10 静脈側気泡検知手段
11、12 血液判別器
13、14、15 チューブ検出器
16 制御手段
17 液圧検知手段
La 透析液導入ライン
Lb 透析液排出ライン
Lc プライミング液供給ライン
V1 電磁弁(動脈側クランプ手段)
V2 電磁弁(静脈側クランプ手段)
V3〜V5 電磁弁
V6 電磁弁(弁手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアライザを使用した透析治療など、患者の血液を体外循環させつつ浄化するための血液浄化装置及びその気泡除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療時においては、採取した患者の血液を体外循環させて再び体内に戻すための血液回路が用いられており、かかる血液回路は、例えば中空糸膜を具備したダイアライザ(血液浄化手段)と接続し得る動脈側血液回路及び静脈側血液回路から主に構成されている。これら動脈側血液回路及び静脈側血液回路の各先端には、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針が取り付けられ、それぞれが患者に穿刺されて透析治療における血液の体外循環が行われることとなる。
【0003】
このうち、動脈側血液回路には、しごき型の血液ポンプが配設されており、当該血液ポンプを駆動させることにより患者の体内から血液をダイアライザ側に送り込む一方、動脈側血液回路及び静脈側血液回路には、動脈側ドリップチャンバ及び静脈側ドリップチャンバが接続されており、除泡した後に患者の体内に血液が戻されるようになっている。
【0004】
また、動脈側血液回路における血液ポンプより上流側(即ち、動脈側穿刺針側)には、プライミングや返血時等に生理食塩液を供給するためのプライミング液供給ライン(生理食塩液ライン)がT字管等を介して接続されており、透析治療前に、血液回路や該血液回路に接続されたドリップチャンバ等構成要素に生理食塩液を流し充填させてプライミングを行うとともに、透析治療後に血液回路などに残留した残留血液と生理食塩液とを置換して、当該残留血液を患者に戻すことにより返血を行うよう構成されている。尚、プライミング液供給ラインを具備した透析装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−93449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、プライミング終了時、血液回路に接続されたドリップチャンバの濾過網等のドリップチャンバ内に気泡が付着していることが多く、これを除去するには作業者が手で軽くドリップチャンバを殴打して衝撃を加える必要があった。特に、静脈側血液回路に接続されたドリップチャンバの濾過網における外側(ドリップチャンバの吐出口を臨んだ面側)に気泡が付着した場合は、その気泡が治療時に静脈側穿刺針を介して患者の体内に導かれる虞があるため、入念に気泡を除去する必要があった。従って、作業者による気泡除去のための作業が必要とされるとともに、プライミングから治療に移行させる際の自動化を図ることが困難になってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドリップチャンバに付着した気泡を自動的に除去することができ、プライミングから治療に移行させる際の自動化を容易に図ることができる血液浄化装置及びその気泡除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化するとともに、血液を浄化するための血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成された血液浄化手段と、前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、該血液浄化手段の透析液流路入口及び出口に接続された透析液導入ライン及び透析液排出ラインと、前記動脈側血液回路と連結され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインと、前記血液浄化手段の両端にそれぞれ形成され、前記動脈側血液回路と接続されて血液流路に血液を導入する血液導入口、及び前記静脈側血液回路と接続されて血液回路から血液を導出する血液導出口と、前記血液浄化手段の側面にそれぞれ形成され、前記透析液導入ラインと接続されて透析液流路に透析液を導入する透析液導入口、及び前記透析液排出ラインと接続されて透析液流路から透析液を導出する透析液導出口と、前記静脈側血液回路に接続されるとともに濾過網が形成されたドリップチャンバと、該ドリップチャンバの空気層側から延設され、当該ドリップチャンバをオーバーフローした液体を外部に排出させ得るオーバーフローラインと、該オーバーフローラインを任意に閉塞又は開放可能な弁手段とを具備し、治療前のプライミング時、前記動脈側血液回路先端と静脈側血液回路先端とを接続して連通可能とされた血液浄化装置において、前記血液ポンプ及び弁手段を制御可能な制御手段を具備するとともに、プライミング終了時、当該制御手段は、前記弁手段を閉塞しつつ前記血液ポンプを駆動して前記プライミング液供給ラインから前記血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、前記弁手段を開放させるとともに、前記蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、前記ドリップチャンバに付着した気泡を前記オーバーフローラインから排出可能とされたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記動脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な動脈側クランプ手段と、前記静脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な静脈側クランプ手段とを具備し、前記制御手段は、当該動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を制御可能とされるとともに、前記蓄圧工程において当該制御手段は、前記動脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを正転駆動させ、前記血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、前記動脈側クランプ手段に加え前記静脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程とを行わせるとともに、前記解放工程で前記動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の血液浄化装置において、前記ドリップチャンバから延設されて当該ドリップチャンバ内における液圧を検知し得る液圧検知手段を具備するとともに、前記制御手段は、当該液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として前記第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記制御手段は、前記蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化するとともに、血液を浄化するための血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成された血液浄化手段と、前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、該血液浄化手段の透析液流路入口及び出口に接続された透析液導入ライン及び透析液排出ラインと、前記動脈側血液回路と連結され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインと、前記血液浄化手段の両端にそれぞれ形成され、前記動脈側血液回路と接続されて血液流路に血液を導入する血液導入口、及び前記静脈側血液回路と接続されて血液回路から血液を導出する血液導出口と、前記血液浄化手段の側面にそれぞれ形成され、前記透析液導入ラインと接続されて透析液流路に透析液を導入する透析液導入口、及び前記透析液排出ラインと接続されて透析液流路から透析液を導出する透析液導出口と、前記静脈側血液回路に接続されるとともに濾過網が形成されたドリップチャンバと、該ドリップチャンバの空気層側から延設され、当該ドリップチャンバをオーバーフローした液体を外部に排出させ得るオーバーフローラインと、該オーバーフローラインを任意に閉塞又は開放可能な弁手段とを具備し、治療前のプライミング時、前記動脈側血液回路先端と静脈側血液回路先端とを接続して連通可能とされた血液浄化装置の気泡除去方法において、プライミング終了時、前記弁手段を閉塞しつつ前記血液ポンプを駆動して前記プライミング液供給ラインから前記血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、前記弁手段を開放させるとともに、前記蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、前記ドリップチャンバに付着した気泡を前記オーバーフローラインから排出可能とされたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の血液浄化装置の気泡除去方法において、前記動脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な動脈側クランプ手段と、前記静脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な静脈側クランプ手段とを具備するとともに、前記蓄圧工程において、前記動脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを正転駆動させ、前記血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、前記動脈側クランプ手段に加え前記静脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程とを行わせるとともに、前記解放工程で前記動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の血液浄化装置の気泡除去方法において、前記ドリップチャンバから延設されて当該ドリップチャンバ内における液圧を検知し得る液圧検知手段を具備するとともに、当該液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として前記第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項5〜7の何れか1つに記載の血液浄化装置の気泡除去方法において、前記蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、5の発明によれば、プライミング終了時、弁手段を閉塞しつつ血液ポンプを駆動してプライミング液供給ラインから血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、弁手段を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、ドリップチャンバに付着した気泡をオーバーフローラインから排出可能とされたので、ドリップチャンバ(特に濾過網)に付着した気泡を自動的に除去することができ、プライミングから治療に移行させる際の自動化を容易に図ることができる。
【0017】
請求項2、6の発明によれば、蓄圧工程において、動脈側クランプ手段を閉塞させつつ血液ポンプを正転駆動させ、血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、動脈側クランプ手段に加え静脈側クランプ手段を閉塞させつつ血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程とを行わせるとともに、解放工程で動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させるので、より高い蓄圧を可能とすることができ、ドリップチャンバに付着した気泡をより確実に除去することができる。
【0018】
請求項3、7の発明によれば、液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させるので、第1蓄圧工程において血液回路内でプライミング液を流動させる際、液圧が過大となってしまうのを確実に回避することができる。
【0019】
請求項4、8の発明によれば、蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせるので、更に確実にドリップチャンバ(特に濾過網)に付着した気泡を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る透析装置(血液浄化装置)を示す模式図
【図2】同透析装置によるプライミング(液溜まり生成工程(血液ポンプ正転駆動))が行われている状態を示す模式図
【図3】同透析装置によるプライミング(液溜まり生成工程(血液ポンプ逆転駆動))が行われている状態を示す模式図
【図4】同透析装置によるプライミング(最初のオーバーフロー工程)が行われている状態を示す模式図
【図5】同透析装置によるプライミング(循環工程)が行われている状態を示す模式図
【図6】同透析装置によるプライミング(オーバーフロー工程)が行われている状態を示す模式図
【図7】同透析装置によるプライミング(透析液充填工程)が行われている状態を示す模式図
【図8】同透析装置における制御手段によるプライミング時の制御内容を示すフローチャート
【図9】同透析装置によるプライミング終了時の気泡除去(第1蓄圧工程)が行われている状態を示す模式図
【図10】同透析装置によるプライミング終了時の気泡除去(第2蓄圧工程)が行われている状態を示す模式図
【図11】同透析装置によるプライミング終了時の気泡除去(解放工程)が行われている状態を示す模式図
【図12】同透析装置における制御手段によるプライミング終了時の気泡除去の制御内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、透析治療を行うための透析装置から成り、図1に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の間に介装されて血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化手段)と、動脈側血液回路1に配設されたしごき型の血液ポンプ4と、静脈側血液回路2に接続されたドリップチャンバ5と、プライミング液としての生理食塩液を収容した収容手段7と、該収容手段7と動脈側血液回路1とを連結したプライミング液供給ラインLcと、該プライミング液供給ラインLcの途中に接続されたプライミング液用ドリップチャンバ8とから主に構成されている。
【0022】
動脈側血液回路1には、その先端にコネクタcを介して動脈側穿刺針aが接続されるとともに、途中にしごき型の血液ポンプ4が配設されている一方、静脈側血液回路2には、その先端にコネクタdを介して静脈側穿刺針bが接続されるとともに、途中にドリップチャンバ5が接続されている。そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ4を駆動させると、患者の血液は、動脈側血液回路1を通ってダイアライザ3に至った後、該ダイアライザ3によって血液浄化が施され、ドリップチャンバ5で除泡がなされつつ静脈側血液回路2を通って患者の体内に戻る。即ち、患者の血液を血液回路の動脈側血液回路1の先端から静脈側血液回路2の先端まで体外循環させつつダイアライザ3にて浄化するのである。
【0023】
ドリップチャンバ5には、上部(空気層側)から延びて先端が大気解放とされたオーバーフローライン6が延設されており、当該ドリップチャンバ5をオーバーフローした液体(生理食塩液等のプライミング液)を外部に排出させ得るよう構成されている。このオーバーフローライン6には、弁手段としての電磁弁V6が配設されており、当該オーバーフローライン6を任意に閉塞又は開放可能とされている。
【0024】
更に、ドリップチャンバ5の内部には、その吐出口側を覆った濾過網5aが形成されており、透析治療時において、血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)にて血液を体外循環させる際、当該濾過網5aにて異物等を捕捉し得るようになっている。かかる濾過網5aは、樹脂で一体形成されたもの或いはメッシュで形成されたもの等何れの形態であってもよい。
【0025】
更に、ドリップチャンバ5の上部から延設されて当該ドリップチャンバ5内における液圧(静脈圧)を検知し得る液圧検知手段17が形成されている。この液圧検知手段17は、透析治療中における静脈圧をリアルタイムで検知して異常を検知し得るものであり、制御手段16と電気的に接続され、検知信号を当該制御手段16に送信し得るよう構成されている。
【0026】
ダイアライザ3は、その筐体部に、血液導入口3a(血液導入ポート)、血液導出口3b(血液導出ポート)、透析液導入口3c(透析液流路入口:透析液導入ポート)及び透析液導出口3d(透析液流路出口:透析液導出ポート)が形成されており、このうち血液導入口3aには動脈側血液回路1が、血液導出口3bには静脈側血液回路2がそれぞれ接続されている。また、透析液導入口3c及び透析液導出口3dは、透析装置本体から延設された透析液導入ラインLa及び透析液排出ラインLbとそれぞれ接続されている。
【0027】
ダイアライザ3内には、複数の中空糸(不図示)が収容されており、この中空糸が血液を浄化するための血液浄化膜を構成している。而して、ダイアライザ3内には、血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路(血液導入口3aと血液導出口3bとの間の流路)及び透析液が流れる透析液流路(透析液導入口3cと透析液導出口3dとの間の流路)が形成されている。そして、血液浄化膜を構成する中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微小な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0028】
複式ポンプ(不図示)は、透析装置本体内で透析液導入ラインLa及び透析液排出ラインLbに跨って配設されているとともに、当該透析装置本体には、ダイアライザ3中を流れる患者の血液から水分を除去するための除水ポンプ(不図示)が配設されている。更に、透析液導入ラインLaの一端がダイアライザ3(透析液導入口3c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ラインLbの一端は、ダイアライザ3(透析液導出口3d)に接続されるとともに、他端が図示しない排液手段と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ラインLaを通ってダイアライザ3に至った後、透析液排出ラインLbを通って排液手段に送られるようになっている。
【0029】
透析液導入ラインLaの途中(複式ポンプとダイアライザ3との間)には、その流路を閉塞及び開放し得る電磁弁V4が接続されているとともに、透析液排出ラインLbの途中(複式ポンプとダイアライザ3との間)には、その流路を閉塞及び開放し得る電磁弁V5が接続されている。また、動脈側血液回路1の先端側(コネクタc近傍)及び静脈側血液回路2の先端側(コネクタd近傍)には、その流路を閉塞及び開放し得る電磁弁V1(動脈側クランプ手段)及び電磁弁V2(静脈側クランプ手段)が接続されているとともに、プライミング液供給ラインLcの途中には、その流路を閉塞及び開放し得る電磁弁V3が接続されている。
【0030】
更に、動脈側血液回路1の先端側には、その部位を流れる液体中の気泡を検知し得る動脈側気泡検知手段9が配設されるとともに、静脈側血液回路2の先端側には、その部位を流れる液体中の気泡を検知し得る静脈側気泡検知手段10が配設されている。尚、図中符号11、12は、動脈側血液回路1の先端側及び静脈側血液回路2の先端側にそれぞれ配設された血液判別器を、符号13、14、15は、動脈側血液回路1の先端側、静脈側血液回路2の先端側、及びプライミング液供給ラインLcの途中にそれぞれ配設されたチューブ検出器を示している。
【0031】
これら電磁弁V1〜V6は、上述のように開閉動作により、配設された各々の部位における流路を閉塞及び開放し得るものであり、その開閉動作がマイコン等の制御手段16にて制御されるよう構成されている。特に、本実施形態における制御手段16は、静脈側気泡検知手段10による検知信号を受信し且つ血液ポンプ4及び弁手段としての電磁弁V6を含む各電磁弁V1〜V5を制御可能なものとされ、これら構成要素と電気的に接続されている。
【0032】
収容手段7(所謂「生理食塩液バッグ」と称されるもの)は、可撓性の透明な容器から成り、生理食塩液(プライミング液)を所定容量収容し得るもので、例えば透析装置本体に突設されたポール(不図示)の先端に取り付けられている。プライミング液供給ラインLcは、動脈側血液回路1における動脈側穿刺針aと動脈側ドリップチャンバ5の間の部位(連結部P)に接続され、収容手段7内の生理食塩液(プライミング液)を血液回路内に供給し得るものである。このプライミング液供給ラインLcの途中には、プライミング液用ドリップチャンバ8が接続されており、生理食塩液(プライミング液)の供給(滴下)を目視し得るようになっている。
【0033】
然るに、治療前のプライミング(生理食塩液等のプライミング液を血液の流路或いは透析液の流路で流して洗浄し、当該プライミング液を血液の流路或いは透析液の流路に予め満たしておく作業)時、動脈側血液回路1先端と静脈側血液回路2先端とを接続して連通(具体的には、コネクタcとコネクタdとを接続して互いの流路を連通)可能とされている。
【0034】
本実施形態に係る透析装置(血液浄化装置)は、治療前のプライミング時においては、制御手段16は、上述のように、静脈側気泡検知手段10による検知信号(気泡検知信号)を受信し且つ血液ポンプ4及び弁手段としての電磁弁V6を含む電磁弁V1〜V5を制御可能とされるとともに、プライミング液用ドリップチャンバ8内に生理食塩液(プライミング液)による液溜まりを生成する液溜まり生成工程と、血液ポンプ4を停止させるとともに電磁弁V6(弁手段)を開放させることにより、プライミング液供給ラインLcから静脈側血液回路2を介してドリップチャンバ5まで生理食塩液(プライミング液)を自重にて供給してオーバーフローライン6から排出させるオーバーフロー工程と、血液ポンプ4を逆転駆動させるとともに電磁弁V6(弁手段)を閉塞させ、プライミング液供給ラインLcから静脈側血液回路2及びダイアライザ3(血液浄化手段)を介して動脈側血液回路1まで生理食塩液(プライミング液)を供給させる循環工程と、をダイアライザ3(血液浄化手段)の血液導入口3aが上方を向いた状態にて順次行わせ、循環工程において静脈側気泡検知手段10が気泡検知することによりオーバーフロー工程に移行させるものである。また、本実施形態に係る制御手段16は、静脈側気泡検知手段10による気泡検知がなくなるまでオーバーフロー工程と循環工程とを繰り返し行わせるものとされる。
【0035】
以下、本実施形態に係る透析装置で行われるプライミング工程について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
プライミング時、図2に示すように、ダイアライザ3の血液導入口3aが上方を向いた状態(図示しない固定手段により固定)とし、且つ、コネクタcとコネクタdとを接続して互いの流路を連通させた後、液溜まり生成工程(S1〜S4)を行わせる。S1は、図2に示すように、血液ポンプ4を正転駆動させて、プライミング液供給ラインLcを介して収容手段7内の生理食塩液(プライミング液)を動脈側血液回路1の連結部Pまで導くための工程である。
【0036】
そして、血液ポンプ4が所定数(例えば5回転)正転駆動されたか否かが判定され(S2)、所定回転数に達すると当該血液ポンプ4を逆転駆動させる(図3参照)。かかる血液ポンプ4を逆転駆動させた後、所定数(例えば2回転)逆転駆動されたか否かが判定され(S4)、所定回転数に達すると血液ポンプ4が停止され、一連の液溜まり生成工程が終了する。これにより、プライミング液用ドリップチャンバ8内に生理食塩液による液溜まりが生成されることとなる。尚、S1において血液ポンプ4を正転駆動させる際、及びS3において血液ポンプ4を逆転駆動させる際には、図2に示すように、電磁弁V2、V3は開状態とされるとともに、電磁弁V1、V4〜V6は閉状態とされる。
【0037】
その後、図4で示すように、血液ポンプ4の停止状態を維持しつつ弁手段としての電磁弁V6及び電磁弁V1を開放させることにより、プライミング液供給ラインLcから静脈側血液回路2を介してドリップチャンバ5まで生理食塩液(プライミング液)を自重にて供給してオーバーフローライン6から排出させる(オーバーフロー工程S5)。即ち、収容手段7内の生理食塩液(プライミング液)は、その落差により生じる自重(落差圧)で、プライミング液供給ラインLc、動脈側血液回路1の連結部Pから先端までの間、及び静脈側血液回路2の先端からドリップチャンバ5まで至り、その上部から延設されたオーバーフローライン6から排出されることとなる。
【0038】
そして、当該オーバーフロー工程S5が開始されてから所定時間(例えば30秒)経過したか否かが判定され(S6)、当該所定時間経過すると、S7に進み循環工程が行われる。かかる循環工程は、図5に示すように、血液ポンプ4を逆転駆動(例えば、100(mL/min)程度の駆動速度が好ましい)させるとともに弁手段としての電磁弁V6及び電磁弁V3を閉塞させ、プライミング液供給ラインLcから静脈側血液回路2及びダイアライザ3を介して動脈側血液回路1まで生理食塩液(プライミング液)を供給させる工程である。これにより、ダイアライザ3内の血液側流路を下方から上方に向けて生理食塩液が流れることとなり、気泡がスムーズに上方へ移動して抜かれることとなる。
【0039】
上記の如き循環工程S7の後、静脈側気泡検知手段10が気泡検知したか否かが判定され(S8)、気泡検知するとS5まで戻り、再びオーバーフロー工程S5に移行することとなる。このときのオーバーフロー工程S5は、図6に示すように、ドリップチャンバ5内に生理食塩液が収容されているものの、他の動作は図3で示すものと同様である。そして、再びオーバーフロー工程S5及び循環工程S7が行われた後、再度S8にて気泡検知があるか否かが判定される。こうして、静脈側気泡検知手段10による気泡検知がなくなるまでオーバーフロー工程S5と循環工程S8とが繰り返し行われることとなる。
【0040】
S8にて静脈側気泡検知手段10が気泡検知しなくなったとき、S9に進んで透析液充填工程(所謂ガスパージと称される工程)が行われる。この透析液充填工程S9は、図7に示すように、電磁弁V4、V5を開放しつつ複式ポンプを駆動させ、ダイアライザ3内の透析液流路内に透析液を流して満たす工程である。このとき、電磁弁V3、V6は閉状態とされるとともに、電磁弁V1、V2、V4、V5は開状態とされている。
【0041】
尚、透析液充填工程(ガスパージ)に移行する前(ガスパージ中或いは終了後も可能である)に、電磁弁V3、V6を開放させた状態で血液ポンプ4を正転駆動させ、プライミング液をオーバーフローさせつつ排出するのが好ましく、その場合、ダイアライザ3内の更なる洗浄を行うことができる。透析液充填工程(ガスパージ)においては、血液ポンプ4を駆動させていてもよい。更には、透析液充填工程中に、電磁弁V3を開放させるとともに血液ポンプ4を駆動させ、さらに透析液配管の除水ポンプを駆動させることで、プライミング液をダイアライザ3における血液流路(中空糸)の血液側から透析液側に送ることにより、当該中空糸膜の洗浄(中空糸のポアの洗浄)を行うこともできる。
【0042】
本実施形態によれば、液溜まり生成工程、オーバーフロー工程及び循環工程、透析液充填工程を経ることにより、治療の際に血液や透析液等が流通する部位の洗浄・プライミングを行うことができ、気泡を確実に外部へ排出させることができる。更に、本実施形態においては、全てのプライミング工程に亘り、ダイアライザ3の血液導入口3aが上方を向いた状態にて行われるので、当該ダイアライザ3の上下反転作業を不要とし、プライミング工程を容易に自動化させることができるとともに、ダイアライザ3における素早く且つ確実な気泡抜きを行わせることができる。
【0043】
また更に、本実施形態によれば、循環工程において静脈側気泡検知手段10が気泡検知することによりオーバーフロー工程に移行させるので、プライミング作業を簡易として容易に自動化させることができるとともに、ダイアライザ3(血液浄化手段)の気泡抜きを確実かつスムーズに行わせることができる。特に、プライミング時、ダイアライザ3の血液流路に対して上方から下方へ生理食塩液(プライミング液)を供給することがないため、その後のエアロック等を確実に回避させることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、静脈側気泡検知手段10による気泡検知がなくなるまでオーバーフロー工程と循環工程とを繰り返し行わせるので、プライミング時、血液回路内の気泡をより確実に外部に排出させることができる。更に、最初のオーバーフロー工程前、プライミング液用ドリップチャンバ8内に生理食塩液(プライミング液)による液溜まりを生成する液溜まり生成工程を行わせるので、プライミング時においてプライミング液用ドリップチャンバ8の液溜まりを生成させることができる。
【0045】
尚、本実施形態によれば、制御手段16による一連の制御にてプライミング作業を行わせることができるので、プライミングの自動化を容易に図ることができ、作業員による作業を著しく低減させることができる。また、制御手段16による制御内容を変更することにより本実施形態の如き動作を可能とするため、既存の血液回路をほぼそのまま流用して本発明に係る血液浄化装置(透析装置)とすることができる。
【0046】
以上によりプライミングが終了した時点で、本実施形態においては以下の如き気泡除去が行われる。
即ち、プライミング終了時、動脈側血液回路1先端と静脈側血液回路2先端との接続状態が維持されるとともに、制御手段16は、電磁弁V6(弁手段)を閉塞しつつ血液ポンプ4を駆動してプライミング液供給ラインLcから血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、電磁弁V6(弁手段)を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、ドリップチャンバ5の濾過網5a及び当該ドリップチャンバ5内の他の箇所に付着した気泡をオーバーフローライン6から排出可能とされている。
【0047】
より具体的には、制御手段16は、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)及び電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を制御可能とされており、蓄圧工程において当該制御手段16は、電磁弁V1を閉塞させつつ血液ポンプ4を正転駆動させ、血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程(図9参照)と、電磁弁V1に加え電磁弁V2を閉塞させつつ血液ポンプ4を逆転駆動させ、当該血液ポンプ4と電磁弁V1との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程(図10参照)とを行わせるとともに、解放工程(図11参照)で電磁弁V1及び電磁弁V2を解放させるよう構成されている。
【0048】
更に、制御手段16は、液圧検知手段17にて所定値(例えば、100〜200(mmHg)程度)の液圧が検知されたことを条件として第1蓄圧工程から第2蓄圧工程に移行させるよう構成されてるとともに、蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせるよう構成されている。尚、本実施形態においては、蓄圧工程と解放工程とが複数回繰り返し行わせるよう構成されているが、当該蓄圧工程と解放工程をそれぞれ1回のみ行わせるものとしてもよい。
【0049】
以下、本実施形態に係る透析装置で行われるプライミング終了時の気泡除去工程について、図12のフローチャートに基づいて説明する。
プライミングが終了すると、図9に示すように、動脈側血液回路1先端と静脈側血液回路2先端との接続状態が維持されるとともに、制御手段16によって、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)を閉塞させつつ血液ポンプ4を正転駆動させ、血液回路内でプライミング液を順方向(治療時の流動方向と同じ方向)に流動させる(第1蓄圧工程S1)。
【0050】
かかる第1蓄圧工程S1において、液圧検知手段17により所定値の液圧(プライミング液の液圧)が検知されたか否かを判定し(S2)、所定値の液圧が検知されたことを条件として第2蓄圧工程S3に進む。かかる第2蓄圧工程S3は、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)に加え電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を閉塞させつつ血液ポンプ4を逆転駆動させ、当該血液ポンプ4と電磁弁V1(動脈側クランプ手段)との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする工程である。
【0051】
かかる第2蓄圧工程S3によれば、比較的高い圧力にて蓄圧状態とすることができる部位(血液ポンプ4と電磁弁V1との間であって、通常、この部位にはゴムボタン等高圧に耐えられない構成要素が接続されない)を蓄圧させることができる。然るに、第2蓄圧工程S3において、血液ポンプ4が所定回転数駆動したか否か、或いは所定時間経過したか否かを判定し(S4)、所定回転数駆動又は所定時間経過したと判定されると、血液ポンプ4と電磁弁V1との間において所定の液圧が蓄積されたと判断され、解放工程S5に進む。尚、第2蓄圧工程S3においては、血液ポンプ4による液送量が約4(mL)程度となるようにして蓄圧を行うのが好ましい。
【0052】
かかる解放工程S5は、電磁弁V6(弁手段)を開放させるとともに、蓄圧工程(第2蓄圧工程S3)にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放するための工程で、具体的には、制御手段16により、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)及び電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を略同時に解放させる工程である。これにより、蓄圧されたプライミング液が一気に解放(大気開放)され、その水圧にてドリップチャンバ5及びその濾過網5aに衝撃を付与することにより、当該濾過網5a及びドリップチャンバ5内のその他の部位に付着した気泡をプライミング液と共にオーバーフローライン6から外部に排出することができる。
【0053】
解放工程S5が終了した後、蓄圧工程(S1、S3)及び解放工程S5が所定回数(予め設定した回数)行われたか否かが判定され(S6)、所定回数行われた場合は一連の気泡除去を終了する一方、所定回数に達していない場合はS1に戻り、再び一連の気泡除去を開始する。本実施形態においては、蓄圧工程(S1、S3)及び解放工程S5が複数回行われるよう設定されており、これにより、当該蓄圧工程(S1、S3)及び解放工程S5が1回のみ行われるものに比べ、更に確実にドリップチャンバ5の濾過網5a等に付着した気泡を除去することができる。
【0054】
本実施形態においては、プライミング終了時、電磁弁V6(弁手段)を閉塞しつつ血液ポンプ4を駆動してプライミング液供給ラインLcから血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位(本実施形態においては動脈側血液回路1における血液ポンプ4と電磁弁V1との間)で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程(第1蓄圧工程S1及び第2蓄圧工程S3)と、電磁弁V6(弁手段)を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程S5とを行わせ、ドリップチャンバ5の濾過網5aに付着した気泡をオーバーフローライン6から排出可能とされたので、ドリップチャンバ5(特に濾過網5a)に付着した気泡を自動的に除去することができ、プライミングから治療(脱血工程を含む透析治療)に移行させる際の自動化を容易に図ることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、蓄圧工程において、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)を閉塞させつつ血液ポンプ4を正転駆動させ、血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程S1と、電磁弁V1(動脈側クランプ手段)に加え電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を閉塞させつつ血液ポンプ4を逆転駆動させ、当該血液ポンプ4と電磁弁V1(動脈側クランプ手段)との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程S3とを行わせるとともに、解放工程S5で電磁弁V1(動脈側クランプ手段)及び電磁弁V2(静脈側クランプ手段)を解放させるので、より高い蓄圧を可能とすることができ、ドリップチャンバ5の濾過網5a(特に、濾過網5aの外側(ドリップチャンバ5の吐出口を臨んだ面側))に付着した気泡をより確実に除去することができる。
【0056】
更に、本実施形態によれば、液圧検知手段17にて所定値の液圧が検知されたことを条件として第1蓄圧工程S1から第2蓄圧工程S3に移行させるので、第1蓄圧工程S1において血液回路内でプライミング液を流動させる際、液圧が過大となってしまうのを確実に回避することができる。尚、通常の血液回路においては、静脈側血液回路2に接続されたドリップチャンバ5には静脈圧を検知し得る液圧検知手段17が配設されているため、これを流用させることができる。
【0057】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、治療前のプライミング時、動脈側血液回路1先端と静脈側血液回路2先端とを接続して連通可能とされたものであれば、プライミング工程を他の形態の工程としてもよい。また、蓄圧工程(第2蓄圧工程S3)は、電磁弁V6(弁手段)を閉塞しつつ血液ポンプ4を駆動してプライミング液供給ラインLcから血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする工程であれば足り、本実施形態の如く蓄圧部位を「動脈側血液回路1における血液ポンプ4と電磁弁V1との間」と設定するものの他、他の部位にて蓄圧させるものであってもよい。
【0058】
更に、本実施形態においては、液圧検知手段17にて所定値の液圧が検知されたことを条件として第1蓄圧工程S1から第2蓄圧工程S3に移行させているが、血液ポンプ4を所定回転数或いは所定時間、正転駆動させたことを条件として第1蓄圧工程S1から第2蓄圧工程S3に移行させるようにしてもよい。また更に、本実施形態においては、収容手段7からプライミング液としての生理食塩液を供給しているが、当該生理食塩液とは異なる他のプライミング液を供給するよう構成してもよい。尚、本実施形態においては、透析治療時に用いられる透析装置に適用しているが、患者の血液を体外循環させつつ浄化し得る他の装置(例えば血液濾過透析法、血液濾過法、AFBFで使用される血液浄化装置、血漿吸着装置など)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
プライミング終了時、弁手段を閉塞しつつ血液ポンプを駆動してプライミング液供給ラインから血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、弁手段を開放させるとともに、蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程とを行わせ、ドリップチャンバに付着した気泡をオーバーフローラインから排出可能とされた血液浄化装置及びその気泡除去方法であれば、他の形態及び用途のものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 動脈側血液回路
2 静脈側血液回路
3 ダイアライザ(血液浄化手段)
4 血液ポンプ
5 ドリップチャンバ
5a 濾過網
6 オーバーフローライン
7 収容手段
8 プライミング液用ドリップチャンバ
9 動脈側気泡検知手段
10 静脈側気泡検知手段
11、12 血液判別器
13、14、15 チューブ検出器
16 制御手段
17 液圧検知手段
La 透析液導入ライン
Lb 透析液排出ライン
Lc プライミング液供給ライン
V1 電磁弁(動脈側クランプ手段)
V2 電磁弁(静脈側クランプ手段)
V3〜V5 電磁弁
V6 電磁弁(弁手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、
該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化するとともに、血液を浄化するための血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成された血液浄化手段と、
前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、
該血液浄化手段の透析液流路入口及び出口に接続された透析液導入ライン及び透析液排出ラインと、
前記動脈側血液回路と連結され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインと、
前記血液浄化手段の両端にそれぞれ形成され、前記動脈側血液回路と接続されて血液流路に血液を導入する血液導入口、及び前記静脈側血液回路と接続されて血液回路から血液を導出する血液導出口と、
前記血液浄化手段の側面にそれぞれ形成され、前記透析液導入ラインと接続されて透析液流路に透析液を導入する透析液導入口、及び前記透析液排出ラインと接続されて透析液流路から透析液を導出する透析液導出口と、
前記静脈側血液回路に接続されるとともに濾過網が形成されたドリップチャンバと、
該ドリップチャンバの空気層側から延設され、当該ドリップチャンバをオーバーフローした液体を外部に排出させ得るオーバーフローラインと、
該オーバーフローラインを任意に閉塞又は開放可能な弁手段と、
を具備し、治療前のプライミング時、前記動脈側血液回路先端と静脈側血液回路先端とを接続して連通可能とされた血液浄化装置において、
前記血液ポンプ及び弁手段を制御可能な制御手段を具備するとともに、プライミング終了時、当該制御手段は、
前記弁手段を閉塞しつつ前記血液ポンプを駆動して前記プライミング液供給ラインから前記血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、
前記弁手段を開放させるとともに、前記蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程と、
を行わせ、前記ドリップチャンバに付着した気泡を前記オーバーフローラインから排出可能とされたものであることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記動脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な動脈側クランプ手段と、前記静脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な静脈側クランプ手段とを具備し、前記制御手段は、当該動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を制御可能とされるとともに、
前記蓄圧工程において当該制御手段は、
前記動脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを正転駆動させ、前記血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、
前記動脈側クランプ手段に加え前記静脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程と、
を行わせるとともに、前記解放工程で前記動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させることを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記ドリップチャンバから延設されて当該ドリップチャンバ内における液圧を検知し得る液圧検知手段を具備するとともに、前記制御手段は、当該液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として前記第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させることを特徴とする請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、
該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化するとともに、血液を浄化するための血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成された血液浄化手段と、
前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、
該血液浄化手段の透析液流路入口及び出口に接続された透析液導入ライン及び透析液排出ラインと、
前記動脈側血液回路と連結され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインと、
前記血液浄化手段の両端にそれぞれ形成され、前記動脈側血液回路と接続されて血液流路に血液を導入する血液導入口、及び前記静脈側血液回路と接続されて血液回路から血液を導出する血液導出口と、
前記血液浄化手段の側面にそれぞれ形成され、前記透析液導入ラインと接続されて透析液流路に透析液を導入する透析液導入口、及び前記透析液排出ラインと接続されて透析液流路から透析液を導出する透析液導出口と、
前記静脈側血液回路に接続されるとともに濾過網が形成されたドリップチャンバと、
該ドリップチャンバの空気層側から延設され、当該ドリップチャンバをオーバーフローした液体を外部に排出させ得るオーバーフローラインと、
該オーバーフローラインを任意に閉塞又は開放可能な弁手段と、
を具備し、治療前のプライミング時、前記動脈側血液回路先端と静脈側血液回路先端とを接続して連通可能とされた血液浄化装置の気泡除去方法において、
プライミング終了時、
前記弁手段を閉塞しつつ前記血液ポンプを駆動して前記プライミング液供給ラインから前記血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、
前記弁手段を開放させるとともに、前記蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程と、
を行わせ、前記ドリップチャンバに付着した気泡を前記オーバーフローラインから排出可能とされたことを特徴とする血液浄化装置の気泡除去方法。
【請求項6】
前記動脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な動脈側クランプ手段と、前記静脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な静脈側クランプ手段とを具備するとともに、
前記蓄圧工程において、
前記動脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを正転駆動させ、前記血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、
前記動脈側クランプ手段に加え前記静脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程と、
を行わせるとともに、前記解放工程で前記動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させることを特徴とする請求項5記載の血液浄化装置の気泡除去方法。
【請求項7】
前記ドリップチャンバから延設されて当該ドリップチャンバ内における液圧を検知し得る液圧検知手段を具備するとともに、当該液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として前記第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させることを特徴とする請求項6記載の血液浄化装置の気泡除去方法。
【請求項8】
前記蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせることを特徴とする請求項5〜7の何れか1つに記載の血液浄化装置の気泡除去方法。
【請求項1】
動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、
該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化するとともに、血液を浄化するための血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成された血液浄化手段と、
前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、
該血液浄化手段の透析液流路入口及び出口に接続された透析液導入ライン及び透析液排出ラインと、
前記動脈側血液回路と連結され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインと、
前記血液浄化手段の両端にそれぞれ形成され、前記動脈側血液回路と接続されて血液流路に血液を導入する血液導入口、及び前記静脈側血液回路と接続されて血液回路から血液を導出する血液導出口と、
前記血液浄化手段の側面にそれぞれ形成され、前記透析液導入ラインと接続されて透析液流路に透析液を導入する透析液導入口、及び前記透析液排出ラインと接続されて透析液流路から透析液を導出する透析液導出口と、
前記静脈側血液回路に接続されるとともに濾過網が形成されたドリップチャンバと、
該ドリップチャンバの空気層側から延設され、当該ドリップチャンバをオーバーフローした液体を外部に排出させ得るオーバーフローラインと、
該オーバーフローラインを任意に閉塞又は開放可能な弁手段と、
を具備し、治療前のプライミング時、前記動脈側血液回路先端と静脈側血液回路先端とを接続して連通可能とされた血液浄化装置において、
前記血液ポンプ及び弁手段を制御可能な制御手段を具備するとともに、プライミング終了時、当該制御手段は、
前記弁手段を閉塞しつつ前記血液ポンプを駆動して前記プライミング液供給ラインから前記血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、
前記弁手段を開放させるとともに、前記蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程と、
を行わせ、前記ドリップチャンバに付着した気泡を前記オーバーフローラインから排出可能とされたものであることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記動脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な動脈側クランプ手段と、前記静脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な静脈側クランプ手段とを具備し、前記制御手段は、当該動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を制御可能とされるとともに、
前記蓄圧工程において当該制御手段は、
前記動脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを正転駆動させ、前記血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、
前記動脈側クランプ手段に加え前記静脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程と、
を行わせるとともに、前記解放工程で前記動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させることを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記ドリップチャンバから延設されて当該ドリップチャンバ内における液圧を検知し得る液圧検知手段を具備するとともに、前記制御手段は、当該液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として前記第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させることを特徴とする請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、
該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化するとともに、血液を浄化するための血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成された血液浄化手段と、
前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、
該血液浄化手段の透析液流路入口及び出口に接続された透析液導入ライン及び透析液排出ラインと、
前記動脈側血液回路と連結され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインと、
前記血液浄化手段の両端にそれぞれ形成され、前記動脈側血液回路と接続されて血液流路に血液を導入する血液導入口、及び前記静脈側血液回路と接続されて血液回路から血液を導出する血液導出口と、
前記血液浄化手段の側面にそれぞれ形成され、前記透析液導入ラインと接続されて透析液流路に透析液を導入する透析液導入口、及び前記透析液排出ラインと接続されて透析液流路から透析液を導出する透析液導出口と、
前記静脈側血液回路に接続されるとともに濾過網が形成されたドリップチャンバと、
該ドリップチャンバの空気層側から延設され、当該ドリップチャンバをオーバーフローした液体を外部に排出させ得るオーバーフローラインと、
該オーバーフローラインを任意に閉塞又は開放可能な弁手段と、
を具備し、治療前のプライミング時、前記動脈側血液回路先端と静脈側血液回路先端とを接続して連通可能とされた血液浄化装置の気泡除去方法において、
プライミング終了時、
前記弁手段を閉塞しつつ前記血液ポンプを駆動して前記プライミング液供給ラインから前記血液回路内にプライミング液を供給し、当該血液回路の少なくとも何れかの部位で当該プライミング液を蓄圧させた状態とする蓄圧工程と、
前記弁手段を開放させるとともに、前記蓄圧工程にて蓄圧されたプライミング液の蓄圧状態を解放する解放工程と、
を行わせ、前記ドリップチャンバに付着した気泡を前記オーバーフローラインから排出可能とされたことを特徴とする血液浄化装置の気泡除去方法。
【請求項6】
前記動脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な動脈側クランプ手段と、前記静脈側血液回路の先端近傍の流路を閉塞又は解放可能な静脈側クランプ手段とを具備するとともに、
前記蓄圧工程において、
前記動脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを正転駆動させ、前記血液回路内でプライミング液を流動させる第1蓄圧工程と、
前記動脈側クランプ手段に加え前記静脈側クランプ手段を閉塞させつつ前記血液ポンプを逆転駆動させ、当該血液ポンプと動脈側クランプ手段との間のプライミング液を蓄圧させた状態とする第2蓄圧工程と、
を行わせるとともに、前記解放工程で前記動脈側クランプ手段及び静脈側クランプ手段を解放させることを特徴とする請求項5記載の血液浄化装置の気泡除去方法。
【請求項7】
前記ドリップチャンバから延設されて当該ドリップチャンバ内における液圧を検知し得る液圧検知手段を具備するとともに、当該液圧検知手段にて所定値の液圧が検知されたことを条件として前記第1蓄圧工程から前記第2蓄圧工程に移行させることを特徴とする請求項6記載の血液浄化装置の気泡除去方法。
【請求項8】
前記蓄圧工程と解放工程とを所定回数繰り返し行わせることを特徴とする請求項5〜7の何れか1つに記載の血液浄化装置の気泡除去方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−253130(P2010−253130A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108581(P2009−108581)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
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