説明

血液浄化装置

【課題】濃度検出手段による液体の濃度検出の精度向上を図ることができ、当該濃度検出手段の信頼性を向上させ得る血液浄化装置を提供する。
【解決手段】患者の血液を体外循環させつつ浄化するダイアライザ2と、血液浄化に伴って流れる液体の濃度を検出する排液濃度センサ5とを具備した血液浄化装置において、排液濃度センサ5は、排液に対して光を照射し得る発光手段11と、排液を透過した発光手段11からの透過光を受け得る受光手段12と、受光手段12による受光強度を検出し得る検出手段13とを具備し、検出手段13により検出された受光強度に基づき液体の濃度を検出し得るとともに、受光手段12による受光強度が所定値となるように発光手段11による光の照射量を調整して排液濃度センサ5を校正し得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液を体外循環させつつ浄化する血液浄化器と、血液浄化に伴って流れる液体の濃度を検出する濃度検出手段とを具備した血液浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の血液を体外循環させつつ浄化する血液処理として血液透析治療がある。かかる血液透析治療においては、透析液を流通させ得る血液浄化器としてのダイアライザを具備するとともに、患者の血液を体外循環させる血液回路を当該ダイアライザに接続させ、ダイアライザの半透膜を介して血液と透析液とを接触させ、血液中の老廃物或いは余剰水分を除去(余剰水分の除去は「除水」と称される)し得るようになっている。ダイアライザにて浄化された血液は、穿刺針を介して患者の体内に戻される一方、老廃物や余剰水分は、透析液と共に透析液排出ラインを介して外部に排出されるよう構成されている。
【0003】
ところで、血液中から除去される老廃物には、尿素、尿酸及びクレアチニン等が含まれており、特に血液中の尿素の濃度変化が透析効率を示す指標として有効であることが分かっており、透析効率を適正とすべく尿素濃度の変化を監視することが提案されている。この尿素濃度の変化は、通常、定期的に実施される血液検査により監視することができるが、その場合、透析治療中においてリアルタイムに尿素濃度の変化を監視することができない。
【0004】
そこで、従来、透析液排出ラインに排液濃度センサを具備させ、尿素濃度の変化(「Kt/V」なる指標)をリアルタイムに検出し得るものが提案されるに至っている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来の排液濃度センサは、ダイアライザからの排液に対して光を照射し得るLED(発光手段)と、排液を透過したLEDからの透過光を受け得る受光素子(受光手段)と、受光素子による受光強度を検出し得る検出手段とを具備し、検出手段により検出された受光強度に基づき排液の濃度を検出し得るよう構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002−516722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、排液濃度センサの発光手段の個体差や経時劣化、血液浄化器を流れる透析液の組成の違い、或いは測定部の汚損の程度等によって、治療毎に測定条件が異なってしまう虞があり、濃度検出における精度の信頼性が低下してしまういう問題があった。かかる不具合は、血液浄化装置において発光手段及び受光手段を具備した他の濃度検出手段(血液浄化に伴って流れる液体(透析液の他、血液等も含む)の濃度を検出する濃度検出手段)においても同様に生じ得るものであり、それらの精度向上が要求されるに至っている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、濃度検出手段による液体の濃度検出の精度向上を図ることができ、当該濃度検出手段の信頼性を向上させ得る血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、患者の血液を体外循環させつつ浄化する血液浄化器と、血液浄化に伴って流れる液体の濃度を検出する濃度検出手段とを具備した血液浄化装置において、前記濃度検出手段は、前記液体に対して光を照射し得る発光手段と、前記液体を透過した前記発光手段からの透過光を受け得る受光手段と、前記受光手段による受光強度を検出し得る検出手段とを具備し、前記検出手段により検出された受光強度に基づき液体の濃度を検出し得るとともに、前記受光手段による受光強度が所定値となるように前記発光手段による光の照射量を調整して前記濃度検出手段を校正し得ることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記濃度検出手段は、
前記発光手段による発光量を制御し得る発光制御手段と、前記検出手段で検出された受光強度が所定値と略同一であるか否かを判定する判定手段と、該判定手段による判定に基づいて、受光強度が所定値となるように前記発光制御手段による発光量の制御を行わせる調整手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記発光手段はLEDから成るとともに前記受光手段は受光強度に応じた電圧を生じさせ得る受光素子から成り、当該受光手段により生じた電圧が所定値となるように前記発光手段の発光電流を調整して前記濃度検出手段を校正することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記濃度検出手段は、前記血液浄化器から排出された排液の濃度を検出して血液浄化効率を監視し得る排液濃度センサから成ることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記濃度検出手段は、血液浄化器から排出された排液の濃度から漏血を検出し得る漏血検出器から成ることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記濃度検出手段は、患者の血液を体外循環させるための血液回路に配設され、当該血液回路を流れる血液の濃度を検出し得る血液濃度センサから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、検出手段により検出された受光強度に基づき液体の濃度を検出し得るとともに、受光手段による受光強度が所定値となるように発光手段による光の照射量を調整して濃度検出手段を校正し得るので、濃度検出手段による液体の濃度検出の精度向上を図ることができ、当該濃度検出手段の信頼性を向上させることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、濃度検出手段は、発光手段による発光量を制御し得る発光制御手段と、検出手段で検出された受光強度が所定値と略同一であるか否かを判定する判定手段と、該判定手段による判定に基づいて、受光強度が所定値となるように発光制御手段による発光量の制御を行わせる調整手段とを具備したので、濃度検出手段の校正を自動的に行わせることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、発光手段はLEDから成るとともに受光手段は受光強度に応じた電圧を生じさせ得る受光素子から成り、当該受光手段により生じた電圧が所定値となるように発光手段の発光電流を調整して濃度検出手段を校正するので、LEDの技術的優位性を有した濃度検出手段とすることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、濃度検出手段は、血液浄化器から排出された排液の濃度を検出して血液浄化効率を監視し得る排液濃度センサから成るので、血液浄化に伴う排液の濃度検出における精度向上を図ることができるとともに、血液浄化効率をリアルタイム且つ高精度に監視することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、濃度検出手段は、血液浄化器から排出された排液の濃度から漏血を検出し得る漏血検出器から成るので、血液浄化に伴う排液の漏血検出における精度向上を図ることができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、濃度検出手段は、患者の血液を体外循環させるための血液回路に配設され、当該血液回路を流れる血液の濃度を検出し得る血液濃度センサから成るので、血液浄化に伴う血液濃度検出における精度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
【図2】同血液浄化装置における濃度検出手段を示す模式図
【図3】同濃度検出手段を示すブロック図
【図4】同濃度検出手段における制御内容を示すフローチャート
【図5】同濃度検出手段における発光手段の個体差による受光電圧のばらつきを示すグラフ
【図6】同濃度検出手段における透析液の相違による受光電圧のばらつきを示すグラフ
【図7】同濃度検出手段における発光手段の経時劣化による受光電圧の変化を示すグラフ
【図8】同濃度検出手段における発光手段の個体差を吸収するための調整を示すためのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させつつ浄化するためのもので、血液透析治療で使用される血液透析装置に適用されたものである。かかる血液透析装置は、図1に示すように、血液浄化器としてのダイアライザ2と、該ダイアライザ2に接続された血液回路1と、濃度検出手段としての排液濃度センサ5と、ダイアライザ2に透析液を供給しつつ除水する透析装置本体6とから主に構成されている。
【0022】
血液回路1は、同図に示すように、可撓性チューブから成る動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bから主に構成されており、これら動脈側血液回路1aと静脈側血液回路1bの間にダイアライザ2が接続されている。動脈側血液回路1aには、その先端に動脈側穿刺針aが接続されているとともに、途中にしごき型の血液ポンプ3、除泡用のドリップチャンバ4aが配設されている。一方、静脈側血液回路1bには、その先端に静脈側穿刺針bが接続されているとともに、途中に除泡用のドリップチャンバ4bが接続されている。
【0023】
そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ3を駆動させると、患者の血液は、ドリップチャンバ4aで除泡がなされつつ動脈側血液回路1aを通ってダイアライザ2に至り、該ダイアライザ2によって血液浄化及び除水が施され、ドリップチャンバ4bで除泡がなされつつ静脈側血液回路1bを通って患者の体内に戻る。即ち、患者の血液を血液回路1にて体外循環させつつダイアライザ2にて浄化するのである。
【0024】
ダイアライザ2は、その筐体部に、血液導入ポート2a、血液導出ポート2b、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dが形成されており、このうち血液導入ポート2aには動脈側血液回路1aの基端が、血液導出ポート2bには静脈側血液回路1bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dは、透析装置本体6から延設された透析液導入ライン7及び透析液排出ライン8とそれぞれ接続されている。
【0025】
ダイアライザ2内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の老廃物や余剰水分等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0026】
一方、透析装置本体6は、複式ポンプPと、透析液排出ライン8において複式ポンプPを迂回して接続されたバイパスライン9と、該バイパスライン9に接続された除水ポンプ10とから主に構成されている。複式ポンプPは、透析液導入ライン7及び透析液排出ライン8に跨って配設され、当該透析液導入ライン7からダイアライザ2に対して透析液を導入させるとともに、当該ダイアライザ2に導入された透析液を血液中の老廃物と共に透析液排出ライン8から排出させるためのものである。
【0027】
そして、透析液導入ライン7の一端がダイアライザ2(透析液導入ポート2c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ライン8の一端は、ダイアライザ2(透析液導出ポート2d)に接続されるとともに、他端が排液手段(不図示)と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ライン7を通ってダイアライザ2に至った後、透析液排出ライン8及びバイパスライン9を通って排液手段に送られるようになっている。
【0028】
除水ポンプ10は、ダイアライザ2中を流れる患者の血液から水分(余剰水分)を除去するためのものである。即ち、かかる除水ポンプ10を駆動させると、透析液導入ライン7から導入される透析液量よりも透析液排出ライン8から排出される液体の容量が多くなり、その多い容量分だけ血液中から水分が除去されるのである。尚、かかる除水ポンプ10以外の手段(例えば所謂バランシングチャンバ等を利用するもの)にて患者の血液から水分を除去するようにしてもよい。
【0029】
排液濃度センサ5(濃度検出手段)は、透析装置本体6内における透析液排出ライン8に配設され、血液浄化に伴って流れる液体(本実施形態においては、血液浄化器としてのダイアライザ2から排出された排液)の濃度を検出して血液浄化効率を監視し得るものであり、図3に示すように、発光手段11と、受光手段12と、検出手段13と、発光制御手段14と、判定手段15と、調整手段16とから主に構成されている。
【0030】
発光手段11は、液体(本実施形態においてはダイアライザ2から排出された排液)に対して光を照射し得るLEDから成る光源であり、図2に示すように、透析液排出ライン8を挟んで受光手段12と対向して配設されている。受光手段12は、液体(ダイアライザ2から排出された排液)を透過した発光手段11からの透過光を受け得るものであり、本実施形態においては、受光強度に応じた電圧を生じさせ得る受光素子から成る。
【0031】
これにより、透析液排出ライン8に透析液が流れた状態において発光手段11から光を照射させれば、その照射された光が透析液排出ライン8にて流れる排液を透過することとなるので、排液の濃度に応じて光の吸収が図られた後、受光手段12にて受光することとなる。而して、受光手段12による受光強度(即ち、受光強度に応じて生じた電圧)を検出すれば、排液の濃度の変化を検出することができるのである。
【0032】
検出手段13は、受光手段12と電気的に接続されて当該受光手段12による受光強度を検出し得るもので、本実施形態においては受光手段12による受光強度に応じて生じた電圧を検出し得るものである。発光制御手段14は、発光手段11による発光量を制御し得るものであり、例えば当該発光手段11に供給する電流を調整し得るデジタルアンプ等にて構成される。
【0033】
判定手段15は、検出手段13と電気的に接続されて当該検出手段13で検出された受光強度(受光手段12による受光強度に応じて生じた電圧)が所定値(予め定められた設定値)と略同一であるか否かを判定するためのものである。調整手段16は、判定手段15及び発光調整手段14とそれぞれ電気的に接続され、当該判定手段15による判定に基づいて、受光強度(受光手段12による受光強度に応じて生じた電圧)が所定値となるように発光制御手段14による発光量の制御を行わせるものである。
【0034】
上記構成により、検出手段13により検出された受光強度(受光手段12による受光強度に応じて生じた電圧)に基づき透析液排出ライン8を流れる排液の濃度を検出することができる。更に、本実施形態によれば、受光手段12による受光強度(受光手段12による受光強度に応じて生じた電圧)が所定値となるように発光手段11による光の照射量を調整することにより、排液濃度センサ5(濃度検出手段)が校正されるようになっている。
【0035】
次に、上記排液濃度センサ5(濃度検出手段)の校正方法について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
血液浄化治療前(透析治療前であって血液回路1にて血液を体外循環させる前)において、複式ポンプPを駆動させてダイアライザ2に透析液を供給するとともに、透析液排出ライン8にて透析液を流通させる。この状態において、発光手段11による発光を行わせ(S1)、判定手段15にて、検出手段13で検出された受光強度(受光手段12による受光強度に応じて生じた電圧)が所定値(予め定められた設定値)と略同一であるか否かを判定する(S2)。
【0036】
S2において、検出手段13で検出された受光強度(受光手段12による受光強度に応じて生じた電圧)が所定値(予め定められた設定値)と略同一でないと判断されると、発光制御手段14による発光手段11の発光量の調整を行わせる(S3)。このとき、例えば受光手段12による受光強度が所定値より小さいと判断されると、発光手段12の発光量を設定値だけ上げるよう発光制御手段14による制御がなされ、その上げた発光量による発光に基づいてS2が繰り返し行われることとなるとともに、受光手段12による受光強度が所定値より大きいと判断されると、発光手段12の発光量を設定値だけ下げるよう発光制御手段14による制御がなされ、その下げた発光量による発光に基づいてS2が繰り返し行われることとなる。
【0037】
そして、S2にて、検出手段13で検出された受光強度(受光手段12による受光強度に応じて生じた電圧)が所定値(予め定められた設定値)と略同一であると判断されると、発光手段11による発光量が確定され、その発光量にて発光手段11による発光がなされることとなる(S4)。以上により、排液濃度センサ5(濃度検出手段)の校正が終了する。
【0038】
上記校正の後、血液回路1にて患者の血液を体外循環させて透析治療を行わせれば、検出手段13により検出された受光強度(受光手段12による受光強度に応じて生じた電圧)に基づき透析液排出ライン8を流れる排液の濃度(濃度変化)を検出することができ、その濃度変化に基づいて、例えばKt/V等の指標を演算するようにすれば、血液浄化治療中においてリアルタイムに血液浄化効率を監視することができる。
【0039】
ここで、Kt/Vとは、血液透析治療開始時と終了時の尿素窒素濃度と、該血液透析治療中における総除水量と、該血液透析治療の治療時間とを、所定の演算式に代入して算出することにより得られる指標であり、例えば、Kt/V=−ln(Ce/Cs)(但し、Ceは、血液透析治療終了時における尿素窒素濃度、Csは、血液透析治療開始時における尿素窒素濃度をそれぞれ示している。)なる演算式にて求めることができる。然るに、通常、Kt/Vの値が1.2以上であれば透析効率が適正であったと判断できる。本実施形態においては、上記演算式において尿素窒素濃度の変化をリアルタイムにて求めることができる故、血液浄化治療中(血液透析治療中)においてリアルタイムに血液浄化効率を監視することができるのである。
【0040】
上記実施形態によれば、検出手段13により検出された受光強度に基づき液体の濃度を検出し得るとともに、受光手段12による受光強度が所定値となるように発光手段11による光の照射量を調整して排液濃度センサ5(濃度検出手段)を校正し得るので、排液濃度センサ5による液体(排液)の濃度検出の精度向上を図ることができ、当該排液濃度センサ5(濃度検出手段)の信頼性を向上させることができる。
【0041】
即ち、図5に示すように、発光手段11は、LED(1)〜(3)の如く同じ電流を流しても発光強度がそれぞれ相違する(所謂、個体差がある)とともに、図6に示すように、ダイアライザ2(血液浄化器)を流れる透析液の組成の違いにより、同じ発光強度で発光手段11から光を照射させたとしても受光手段12による受光強度(受光により生じる電圧)はそれぞれ相違し、或いは図7に示すように、経時劣化により一つの発光手段11でも経時的に発光強度が低下して、濃度検出時の条件が異なってしまうのに対し、本実施形態によれば、受光手段12による受光強度が所定値となるように発光手段11による光の照射量を調整して排液濃度センサ5(濃度検出手段)を校正し得るので、個体差等の条件の相違を吸収し、排液濃度センサ5(濃度検出手段)による排液の濃度検出の精度向上を図ることができ、信頼性を向上させることができるのである。尚、本実施形態によれば、上記条件に加え、発光手段11、受光手段12及び透析液排出ライン8(液体の流路)等の汚損による条件の相違をも吸収することができる。
【0042】
然るに、本実施形態によれば、受光手段12による受光強度が所定値となるように発光手段11による光の照射量を調整して排液濃度センサ5(濃度検出手段)を校正するので、図8に示すように、例えば所定値(受光電圧)を電圧α(V)とした場合、発光手段11として適用されるLED(1)についてはa(mA)、LED(2)についてはb(mA)、LED(3)についてはc(mA)の電流が供給されることとなる。尚、受光手段12による受光強度における所定値を電圧βと設定することができ、特に、α及びβは、4.5〜5.0(V)の範囲で設定するのが好ましい。
【0043】
更に、本実施形態によれば、排液濃度センサ5(濃度検出手段)は、発光手段11による発光量を制御し得る発光制御手段14と、検出手段13で検出された受光強度が所定値と略同一であるか否かを判定する判定手段15と、該判定手段15による判定に基づいて、受光強度が所定値となるように発光制御手段14による発光量の制御を行わせる調整手段16とを具備したので、排液濃度センサ5(濃度検出手段)の校正を自動的に行わせることができる。
【0044】
また更に、発光手段11はLEDから成るとともに受光手段12は受光強度に応じた電圧を生じさせ得る受光素子から成り、当該受光手段12により生じた電圧が所定値となるように発光手段11の発光電流を調整して排液濃度センサ5(濃度検出手段)を校正するので、LEDの技術的優位性(高寿命であり且つ長時間の発光に際しても高温となり難い等)を有した排液濃度センサ5(濃度検出手段)とすることができる。
【0045】
また、本実施形態においては、濃度検出手段は、ダイアライザ2(血液浄化器)から排出された排液の濃度を検出して血液浄化効率を監視し得る排液濃度センサ5から成るので、血液浄化に伴う排液の濃度検出における精度向上を図ることができるとともに、血液浄化効率をリアルタイム且つ高精度に監視することができる。尚、本実施形態においては、排液濃度センサ5にて検出された排液の濃度からKt/Vなる指標を算出して血液浄化効率(透析効率)を求めているが、他の指標を算出して血液浄化効率(透析効率)を求めるようにしてもよい。
【0046】
尚、適用される濃度検出手段は、排液濃度センサ5に限定されず、透析装置本体6内の透析液排出ライン8に配設されてダイアライザ2(血液浄化器)から排出された排液の濃度から漏血を検出し得る漏血検出器から成るもの、或いは患者の血液を体外循環させるための血液回路1に配設され、当該血液回路1を流れる血液の濃度を検出し得る血液濃度センサ(例えば、血液におけるヘマトクリット値を測定するためのヘマトクリットセンサ)から成るもの等であってもよい。
【0047】
濃度検出手段が、ダイアライザ2(血液浄化器)から排出された排液の濃度から漏血を検出し得る漏血検出器から成るものとした場合、血液浄化に伴う排液の漏血検出における精度向上を図ることができるとともに、濃度検出手段が、患者の血液を体外循環させるための血液回路1に配設され、当該血液回路1を流れる血液の濃度を検出し得る血液濃度センサから成るものとした場合、血液浄化に伴う血液濃度検出における精度向上を図ることができる。
【0048】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば排液濃度センサ、漏血検出器または血液濃度センサの他、血液浄化装置における液体の濃度を検出し得るたの濃度検出手段に適用するようにしてもよい。また、検出手段13により検出された受光強度に基づき液体の濃度を検出し得るとともに、受光手段12による受光強度が所定値となるように発光手段11による光の照射量を調整して濃度検出手段を校正し得るものであれば、発光制御手段14を手動操作可能なものとし、判定手段15、調整手段16がないものとしてもよい。即ち、受光手段12による受光強度が所定値となるように発光手段11による光の照射量を調整する際、手動操作にて行うものであってもよいのである。
【0049】
更に、本実施形態においては、発光手段としてLEDを用いているが、光源として機能し得る他の手段(例えば、UVランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、有機EL等)に代えてもよい。尚、本実施形態においては血液透析装置に適用されているが、体外循環させつつ血液浄化を行う他の治療(血液濾過療法や血液濾過透析療法など)で使用される血液浄化装置に適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
検出手段により検出された受光強度に基づき液体の濃度を検出し得るとともに、受光手段による受光強度が所定値となるように発光手段による光の照射量を調整して濃度検出手段を校正し得る血液浄化装置であれば、他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 血液回路
1a 動脈側血液回路
1b 静脈側血液回路
2 ダイアライザ(血液浄化器)
3 血液ポンプ
4a、4b…ドリップチャンバ
5 排液濃度センサ(濃度検出手段)
6 透析装置本体
7 透析液導入ライン
8 透析液排出ライン
9 バイパスライン
10 除水ポンプ
11 発光手段
12 受光手段
13 検出手段
14 発光制御手段
15 判定手段
16 調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を体外循環させつつ浄化する血液浄化器と、血液浄化に伴って流れる液体の濃度を検出する濃度検出手段とを具備した血液浄化装置において、
前記濃度検出手段は、
前記液体に対して光を照射し得る発光手段と、
前記液体を透過した前記発光手段からの透過光を受け得る受光手段と、
前記受光手段による受光強度を検出し得る検出手段と、
を具備し、前記検出手段により検出された受光強度に基づき液体の濃度を検出し得るとともに、前記受光手段による受光強度が所定値となるように前記発光手段による光の照射量を調整して前記濃度検出手段を校正し得ることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記濃度検出手段は、
前記発光手段による発光量を制御し得る発光制御手段と、
前記検出手段で検出された受光強度が所定値と略同一であるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段による判定に基づいて、受光強度が所定値となるように前記発光制御手段による発光量の制御を行わせる調整手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記発光手段はLEDから成るとともに前記受光手段は受光強度に応じた電圧を生じさせ得る受光素子から成り、当該受光手段により生じた電圧が所定値となるように前記発光手段の発光電流を調整して前記濃度検出手段を校正することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記濃度検出手段は、前記血液浄化器から排出された排液の濃度を検出して血液浄化効率を監視し得る排液濃度センサから成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記濃度検出手段は、血液浄化器から排出された排液の濃度から漏血を検出し得る漏血検出器から成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記濃度検出手段は、患者の血液を体外循環させるための血液回路に配設され、当該血液回路を流れる血液の濃度を検出し得る血液濃度センサから成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−120822(P2011−120822A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282878(P2009−282878)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】