説明

血球計算法による治療のための手段および方法

機能化された先端部が、脳および他の体部分内への細胞の血球計算法による運搬のためにカテーテル内に組み込まれる。脳内で使用するために、先端部は、近位端および遠位端を有する神経外科用プローブの一部を形成する。機能化された先端部に加え、プローブは、少なくとも1つの細胞スラリー運搬内腔と、移植された細胞の生存度および生理学的作用ならびに細胞環境の特定の特性を監視するのに必要とされる光学能力をもたらすように先端部において終端する、プローブに沿って構成された複数の光ファイバとを有する。本発明のいくつかの特定の実施形態を、説明し、同様に臨床用の一例として神経外科ベースの細胞移植の文脈においてそれを使用するための方法も説明する。患者の脳に運搬された細胞数の調節のためのフィードバックおよび制御システムの文脈で使用される、本発明に開示したタイプの血球計算法先端部を有する神経カテーテルの使用の詳細についても提示する。本発明は、さらに、脳内への細胞の運搬中の細胞生存度の血球計算法による決定を対象とし、他の標的組織または体部分を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2006年11月1日および2006年12月7日にそれぞれ出願された米国特許仮出願第60/855,956号および同第60/873,314号の優先権を主張するものであり、いずれの出願もその全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
[連邦政府による資金提供に関する記載]
本発明は、米国エネルギー省とU.T. Battelle, LLC社間の契約書第DE−AC05−00OR22725のもと、米国政府の支援によって行われた。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病(PD)は、現在治療法が存在しない深刻な病気である。さらに、パーキンソン病の罹患者のほとんどが経験する進行性の神経変性を抑える手段も存在していない。約150万人のアメリカ人が、PDに苦しめられている。年齢が、PDの発症者における重要なパラメータと考えられ、50歳以上が最も多く罹患しているグループである。これは治療法が分かっていない進行性の病気であるため、脳内の損傷したドーパミン回路の復元および再生を目的とした治療候補として細胞移植を含む治療選択肢を改良することに依然として高い関心がよせられている。神経幹/前駆細胞の移植(NPC)分野で直面しなければならない非常に重要な問題としては、対象の細胞の運搬および存命に関するものがあげられる。パーキンソン病の治療の実行可能な選択肢となる細胞置換治療に関しては、これらの問題から派生するいくつかの障害を克服しなければならない。たとえば、中枢神経系(CNS)内に移植された細胞の5〜10%しか移植後に存命せず、機能復元に寄与するために本来移植された細胞の僅かな部分しか残らないと推定されている。最も基本的なレベルで考慮し、以下にさらに論じるように、現在の既存の手段および方法によって脳内に運搬される細胞が、運搬時または運搬直後に脳内で生きていることさえもはっきりとは知られていない。
【0004】
臨床的観点から、この分野における最も差し迫った必要性は、宿主の中枢神経系内で存命する細胞の割合が低いため、移植後の細胞の存命を向上させることである。移植された細胞の大部分は、細胞源または細胞起源に関係なく、移植後24時間以内に死亡し、ごく少数は運搬時に死んでいることがある。この神経細胞の死亡を起こす引き金としては、提供者の組織の低酸素および低血糖、運搬プロセス中の機械的外傷、フレーラジカル、成長因子の喪失、および宿主の脳組織における興奮性アミノ酸の過剰な細胞外濃度があげられる。根本的な問題の一部として、成長因子の注入が、通常、同じカテーテルを介して行われていないことがある。より一般的には、カテーテルの機能的性質、脳内のその配置、および注入のパラメータのすべてが、細胞スラリーなどの作用物質の分配の制御に極めて重要な役割を果たす。さらに、移植組織の量を増やすことが、パーキンソンモデルにおいては、細胞が存命してドーパミンを産生する神経細胞に分化する比率を必ずしも増加させるとは限らないことを研究者が示している。霊長類研究は、少量の組織をより広い領域に分配する、すなわち(そのような手順が称されるような)「マイクロ移植術」により、高密度に充填されたドーパミン作動性神経細胞を有するかなりの領域が得られることを示している。極めて局地的な範囲に大量の細胞スラリーが注入された被験体に比べ、これらの神経細胞からの成長は広範囲のものである(Sladekら、1998年)。これらの結果およびその他の結果から、以下の2つの重要な必要性が満たされなければならないことが実証された:(1)宿主の脳内に高度に制御された量の組織(すなわち固定数の細胞)を運搬することが、必須であり、(2)臨床的に有用な技術を開発する方向に進んで行くには、運搬地点における細胞生存度の知識が極めて重要である。
【0005】
従来技術は、運搬プロセス中、これら両方の必要性に対して満足のいく結果を同時に達成するという課題に関してはほとんど言及していない。たとえば、特許文献1において、Goldmanらは、神経栄養因子をコードする核酸を運搬する手段および方法を開示したが、その方法および手段は、運搬時の細胞生存度の短期的(acute)評価および運搬後の細胞の機能性の長期的(chronic)評価を行うために、臨床ユーザが細胞の生体内監視を実施することを可能にしていない。同様に、特許文献2において、Hammerらは、細胞の保管および運搬のための方法および手段を教示しているが、運搬中の細胞の数および生存度を監視するための技術は開示していない。非特許文献1において、Gayらは、神経カテーテル手段を介して患者の脳内の標的場所に感知計測を導入するためのマルチプローブ手段を提案しているが、このシステムは、運搬プロセス中の細胞の血球計算法による監視および評価用には設計されていない。
【0006】
従来技術の1つの欠点は、一般には、細胞生存度を運搬プロセス中に確認するための方法または手段を開示していないことである。従来技術の第2の欠点は、一般には、カテーテルを横断し脳内に入る細胞の数を運搬プロセス中に血球計算法によって計数するための方法または手段を開示していないことである。従来技術の別の欠点は、細胞運搬プロセス中に生体内で生存度確認およびNPC血球計算法の機能を行うための光学手段を予見していないことである。さらに従来技術の別の欠点は、生体内で生存度確認およびNPC血球計算法を細胞運搬プロセス中に行う目的で、光学手段を神経カテーテル挿入装置に組み込むことを予見していないことである。
【0007】
これらの欠点を克服するための基礎を築くため、細胞および他の治療薬の脳内への運搬時に使用するために神経カテーテル内に光ファイバを組み込むための手段および方法が発明された。本発明は、光ファイバが、細胞運搬プロセス中の生存度確認およびNPC血球計算法のための技術において完全に機能するように、光ファイバを神経カテーテルの特殊化された遠位先端部に結合させるための方法および手段を教示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,037,493号明細書
【特許文献2】米国特許第6,758,828号明細書
【特許文献3】米国特許第6,599,274号明細書
【特許文献4】米国特許第6,626,902号明細書
【特許文献5】米国特許出願第60/846,011号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】The Virginia Journal of Science、55巻、28頁、(2004年)の要約書“Development of a Combination Cell Delivery/Biosensor Catheter for the Monitoring of Dopamine from Differentiated Neuronal Cells”
【非特許文献2】Observations of and applications for self-imaging in optical fibers」Applied Optics、33巻 No.10、第1801〜1805頁(1994年4月1日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、医療用インプラント分野のものである。より具体的には、本発明は、患者の脳などの患者の体内に外科的に配置される短期用および留置用の両方の神経カテーテル(カテーテルとして広く知られている)の分野に関する。最も具体的には、本発明は、患者の脳などの患者の体内の標的場所に診断薬および治療薬を実質内運搬するのに使用することができるのと同時に、神経変性病などの病気の影響を軽減する目的の治療を最適化するのに必要とされる生理学(脳生理学)の測定を行うために使用することもできる種類の神経カテーテルに関する。
【0011】
たとえば神経カテーテルを介したNPCのCNS内への血球計算法によって監視された運搬を可能にするための手段および方法を教示する。神経カテーテルは、一般的には、たとえばそのすべての全体が参照によって本明細書に組み込まれる、特許文献3および特許文献4においてKucharczyk等が開示した装置では、遠位端および近位端および複数の軸方向の内腔を有することができる。その軸方向の構成にかかわらず、神経カテーテルは、遠位先端部を有し、この遠位先端部は、複数の光ファイバを遠位先端部上の少なくとも1つのポート穴の周りに配置することを可能にするように構成される。少なくとも1つのポート穴は、たとえば脳内などの標的場所に細胞スラリー(たとえばNPC細胞スラリー)を輸送するための放出地点として使用される。光ファイバは、少なくとも1つのポート穴を通って運搬されている生細胞の数を監視および計数する目的で、ポート穴の領域に光を送出し、ポート穴の領域から光を収集するために使用される。光ファイバの構成はまた、必要に応じて細胞運搬プロセスの前、その間および/またはその後において、ドーパミン、アセチルコリンなどの種を含む、細胞代謝物のレベルを測定および記録するためにも使用することができる。運搬および分化プロセスの臨床的結果を最適化するのに必要とされる成長因子、栄養素、血管新生因子、および他の作用物質もまた、移植細胞の神経ニッチ微小環境を維持し、育てるために神経カテーテルを通して運搬することができる。これが行われる理由は、細胞の分化段階、細胞の配置の実質内部位、および細胞の調製に使用される技術を含む、数多くの要因がCNS内におけるインプラントの生存度に影響を与えると考えられるためである。本明細書で開示した神経カテーテルの特殊化された遠位先端部により、神経カテーテルは、初めて、たとえばヒトの脳内のNPCの分配を定量化するのに重要な役割を果たすことになる。さらに、細胞の脳内移植のために現在使用されている他のカテーテル方式の技術は、炎症組織反応、大量出血、壊死、および変性を引き起こすと考えられる。インプラント部位におけるそのような非特定の外傷性変化は、細胞の存命を妨げることがあり、あるいは血管、膠細胞、および神経細胞グラフト要素の構造的な再構築を破壊することさえある。これらはすべて、細胞数を確認し、かつインプラントの存命の可能性を最大限にしながら運搬時間および組織損傷を最小限に抑えるために、神経カテーテルの遠位先端部に血球計算法能力を組み込むための付加的理由となる。したがって、神経カテーテルで使用するための遠位先端部手段および方法が、本発明の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、内腔、遠位端および近位端を有するカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端に取り外し可能に結合された遠位のカテーテル先端部本体と、カテーテル先端部本体内の少なくとも1つのポート穴と、光ファイバの配置のための、カテーテル先端部本体内に軸方向に位置合わせされた複数の位置合わせ溝と、先端部本体とカテーテル本体を結合させるための係合機構と、内腔から少なくとも1つのポート穴に材料を通過させるための少なくとも1つの構造チャンバと、少なくとも1つのポート穴近傍に光を送出し、少なくとも1つのポート穴近傍の光を収集するために位置合わせ溝内に配設された複数の光ファイバと、少なくとも1つのポート穴近傍の光ファイバに、およびそれらの光ファイバから光を導くための少なくとも1つのミラー端部を備えた複数の光ファイバスタブとを有するカテーテルである。本発明のさらなる詳細およびその実施のための方法および手段を、添付の図において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】上部遠位側からの神経カテーテル先端部の全体像を示す図である。
【図2】真上から見た神経カテーテル先端部の詳細図である。
【図3】下部近位側からの神経カテーテル先端部の全体像を示す図である。
【図4A】遠位側からの神経カテーテル先端部の内部構造を示す図である。
【図4B】近位側からの神経カテーテル先端部の内部構造を示す図である。
【図5A】上部から見た神経カテーテル先端部の内部構造を示す図である。
【図5B】近位端から見た神経カテーテル先端部の内部構造を示す図である。
【図5C】側部から見た神経カテーテル先端部の内部構造を示す図である。
【図5D】遠位端から見た神経カテーテル先端部の内部構造を示す図である。
【図6】光学信号の平面反射をもたらす2つの外側スタブを備えた3つのファイバスタブを有する実施形態を示す図である。
【図7】光学信号の平面反射をもたらす2つのファイバスタブおよびMRコントラスト増強のためのマイクロコイルを有する実施形態を示す図である。
【図8】細胞スラリー出口地点近傍の間質性の空間中の光学信号を集束させるように回転する反射性ファイバスタブを有する図7の実施形態を示す図である。また、MR可視性およびX線不透過性を向上させるための材料の帯を示している。
【図9】光学信号の焦点を絞るための凹面を有する2つの反射性ファイバスタブおよび複数のポート穴を備えた実施形態を示す図である。
【図10】主題の先端部を有する神経カテーテルの使用方法を示す図である。
【図11】本発明の血球計算法の方法および手段を用いた、細胞生存度の自己蛍光方式の測定を示す図である。
【図12】本発明の血球計算法の方法および手段を用いた、細胞生存度の生体染色ルミネセンス測定を示す図である。
【図13】本発明の多光子血球計算法の方法および手段による細胞生存度の組み合わせた撮画法(modality)による測定を示す図である。
【図14】本発明の光学血球計算法の手段および方法のいずれかまたはすべてを使用するためのファイバ分割手段を示す図である。
【図15】運搬された細胞の生存度および量を決定するための光ファイバを組み込んだモジュラ先端部の設計を示す図である。
【図16】レーザ照射および光路を示すプロトタイプのカテーテル先端部の拡大図である。
【図17】GFP細胞の1.2×10細胞/mL懸濁液からの希釈されたアリコートのグラフである。この原液の希釈液は、プロトタイプのカテーテルと同じ光学構成によって、固定された光学細胞内に置かれる。レーザ励起は、458nmである。
【図18】InvitrogenからのCellTracker(商標)Orangeを用いて染色されたRT2A細胞の5.1×10細胞/mL懸濁液からの希釈されたアリコートのグラフである。レーザ励起は、488nmである。
【図19】細胞監視装置の先端部が、脳ファントムゲル内に挿入された図であり、ビデオ顕微鏡の対物レンズは、上部から実験構成を見下ろしている。
【図20】空気中および0.6%アガロースゲル脳興奮材料中に運搬された細胞のグラフである。細胞の密度は、1ミリリットルあたり1.243×10細胞である。流量は、1分あたり100マイクロリットルである。神経細胞運搬カテーテルのこの試験では、477nmの励起波長が使用された。バックグラウンドレーザおよびPBS蛍光信号は、差し引かれている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
神経カテーテルが、短期的または長期的運搬状態で使用されるとき、遠位先端部内の(1つまたは複数のセンサの役目を果たす)光ファイバからの読み取りは、治療方法の最適化において中心的な役割を果たすことができる様々な有用な生理学的データを提供することができる。たとえば、ドーパミンレベルの記録は、細胞の機能性を定量的に示すことができ、したがって、細胞が分化プロセスにおいてある一定の段階の成熟期に到達したか、到達していないかが示される。次いで、これらのデータは、成長因子の運搬、前記因子の運搬のタイミング、および前記因子の運搬の中断に対する必要性に関する臨床的治療戦略(clinical-strategy)の決定のための基礎を形成する。これは、細胞生存度を評価する手段としての1つまたは複数のセンサの一次的使用に追加され、その後のデータはこのとき、運搬部位における微小血管の血液供給を増大させ、したがって、細胞をさらに酸化させ、存命を向上させるのを助けるための血管形成因子の運搬に関する臨床的治療戦略の決定のための基礎を提供する。同様に、神経ニッチの維持の他の臨床的態様すべてにおける臨床的治療戦略の決定を同じ方法で行うこともでき、このように、手順の臨床的結果を最適化するための定量的基礎がもたらされる。これらの臨床的治療戦略の決定は、細胞運搬プロセス全体を制御するフィードバックループを実現するのに使用されるアルゴリズム上で作動する自動データ処理システムのコンテキスト内で行われてよい。このフィードバックループは、データ処理、生化学的反応率などに関してリアルタイムで、または適切な遅延を有して実施されてよい。一般に、本発明の手段および方法を組み込んだいずれの神経カテーテルまたはカテーテル挿入システムも、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献5においてH.FillmoreおよびG.T.Gilliesによって記載された用途の装置および方法に類似した手段および方法と併用して、またはその手段および方法において使用することができる。
【0015】
図1は、本発明の1つの実施形態を示している。先端部の本体1は、光送出ファイバ2、蛍光および散乱測定ファイバ3、および減衰測定ファイバ4を有する。先端部の本体1はまた、近位端に45°の切断部を有する2つのファイバスタブ6も有する。スタブ6の切断端部は、ミラー表面(mirror surface)を形成するために研磨され、金属で被覆される。ファイバ2、3、4およびファイバスタブ6は、ファイバ位置合わせ溝7内に置かれ、図に示すように、側部のポート穴5の周りに構成される。送出ファイバ2からの光は、ポート穴5をわたって横方向に反射される。自己幹細胞などの蛍光細胞のスラリーが、ポート穴5を通って輸送されるとき、前記細胞の蛍光および散乱に関連した光学信号が、ファイバ3によって収集され、細胞による光の減衰に関連した信号が、ファイバ4によって収集される。ファイバは、光を神経カテーテルに沿って運び、最後にはそれを分析のための測定手段に送出する。代替的におよび/または付加的に、前記光ファイバおよびファイバスタブは、前記細胞スラリー(自己細胞スラリー)が中に運搬されている間質性の空間中のドーパミンおよび他の流出物のレベルを監視する光学センサとして使用されてもよい。
【0016】
図2は、図1に見られるのと同じ要素のすべてを示すが、上部から考察した図である。
【0017】
図3は、図1および2に見られるのと同じ要素のすべてを示すが、下部近位側から考察した図である。
【0018】
図4は、図4Aでは遠位側における、図4Bでは近位側における内部構造チャンバ8を示している。先端部および神経カテーテルの結合点9もまた、図4Bに示す。内部構造チャンバは、たとえば自己幹細胞を含有する細胞スラリーの流れを受け入れ、それをポート穴5に運ぶ。先端部本体とカテーテル本体を連結するために、管状機械スリーブまたはブッシュなどの係合機構の連結装置が使用される。
【0019】
図5Aは、上方から見た好ましい実施形態を示している。図5Bは、近位端から見た好ましい実施形態を示している。図5Cは、側部から見た好ましい実施形態を示している。図5Dは、遠位端から見た好ましい実施形態を示している。
【0020】
図6は、2つの外側スタブ上に平面の45°切断部を有する3つのファイバスタブ6を有する実施形態を示している。送出ファイバ2からの光学信号10は、ほぼ同じ光線サイズを維持しながら、ポート穴5をわたって横方向に反射される。蛍光細胞(たとえば自己幹細胞)のスラリーが、ポート穴5を通って輸送されるとき、前記細胞の蛍光および散乱に関連した光学信号が、ファイバ3によって収集され、細胞による光の減衰に関連した信号が、ファイバ4によって収集される。ファイバは、光を神経カテーテルに沿って運び、最後にはそれを分析のための測定手段に送出する。代替的におよび/または付加的に、前記光ファイバおよびファイバスタブは、自己細胞スラリーまたは多重細胞スラリーなどの前記スラリーが、中に運搬されている間質性の空間中のドーパミンおよび他の流出物のレベルを監視する光学センサとして使用されてよい。
【0021】
図7は、光学信号の平面反射をもたらす2つのファイバスタブ6およびMRコントラスト増強用のマイクロコイルも有する実施形態を示している。リード13、シールド14、および連結点15を備えた電気マイクロコイル12が、神経カテーテル先端部1の本体上に装着される。マイクロコイルは、神経カテーテル先端部に隣接する組織のMRコントラストを増強し、したがって、MR画像の品質を向上させるために使用される。送出ファイバ2からの光学信号10は、信号光線を変えることなく、ポート穴5をわたって横方向に反射される。
【0022】
図8は、細胞スラリー出口地点近傍の間質性の空間中の光学信号を集束するように回転する反射性ファイバスタブ6を備えた図7の実施形態を示す。また、MRの可視性およびX線不透過性を向上させるための材料の帯も示す。材料の帯16および17は、神経カテーテル先端部のMRの可視性およびX線不透過性それぞれを向上させるために使用される。したがって、これらの材料の帯の存在は、磁気共鳴映像法、コンピュータ断層撮影法、蛍光透視法などを含む様々な画像診断法に使用される場合に先端部を見えやすくするのに役立つ。
【0023】
図9は、光学信号11の焦点を絞るために凹面を有する2つの反射性ファイバスタブ6を備えた実施形態を示している。絞られた焦点は、細胞が光線の狭い焦点を通り抜けるとき、光学信号の減衰の増加を実現する。また、垂直なポート穴5に加えて、複数のポート穴18も示している。前記ポート穴18は、類似のファイバ位置合わせ溝およびファイバおよびそれらに関連したファイバスタブを有することができ、かつ/またはそれらの周りに構成されるそのような付加的手段を持たない標準的なポート穴でもよい。前記追加のポート穴18は、遠位先端部の前(後)を含む、神経カテーテル先端部1の構造に関して好都合などのような場所にも配置することができる。
【0024】
図10は、本発明の主題であるタイプの先端部を有する神経カテーテルの使用方法の1つの好ましい実施形態を示している。患者19が、介入手術場所およびMR画像手段20内に横たわっている。神経カテーテル21、および神経カテーテル固定装置22が、自己細胞スラリーなどの細胞スラリーを患者19の脳内に運搬するために使用されている。本発明の主題である神経カテーテル先端部1は、神経カテーテル手段21の端部に配置される。先端部1から光学信号を運ぶ光ファイバ26が、複数の光増殖管、フォトダイオード、電荷結合素子(CCD)、または他の光検出器システムでよい光変換器手段27に連結される。変換器手段27からの電気信号が、運搬されている細胞(たとえば自己幹細胞)の数に関する血球計算法情報を導き出す測定手段28に結合される。測定手段28からの血球計算法情報は、細胞スラリー(たとえば自己細胞スラリー)を運搬管23を通して神経カテーテル手段21に供給する運搬シリンジ24の駆動機構25を調節するために、注入制御システム29によって使用される。このようにして、この治療を行う臨床医は、患者19に運搬されている細胞スラリー(たとえば自己幹細胞スラリー)の速度および量を調節することができる。同様に、この測定および運搬手段はまた、細胞(たとえば自己幹細胞)のための神経ニッチが適切に準備されていることを確実にするために、1回または複数回の治療セッション中、間質性の空間のドーパミンおよび他の流出物の量を監視するのに使用することもできる。
【0025】
別の態様では、本発明は、細胞生存度および計数率の生体内血球計算法のための方法を提供する。本方法は、上記で説明したカテーテルを患者に挿入するステップを含む。患者は、任意の哺乳動物でよい。哺乳動物は、ヤギ、ウマ、ブタ、もしくはウシなどの家畜、イヌもしくはネコなどの愛がん動物、ネズミ、ラット、もしくはモルモットなどの実験動物、またはサル、オラウータン、大ザル、チンパンジー、もしくはヒトなどの霊長類でよい。好ましい実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0026】
本明細書で使用する用語「生体内」は、細胞生存度および計数率の血球計算法が、本発明のカテーテルによって細胞が患者に運搬されているときに行われることを意味する。
【0027】
カテーテルは、患者の体内のどのような場所に挿入されてもよい。通常、カテーテルは、NPCなどの細胞の運搬を必要とする組織または罹患領域に挿入される。そのような領域の例としては、脳、心臓、肝臓、筋肉、すい臓などがあげられる。
【0028】
細胞生存度および計数率の生体内血球計算法のための方法における次のステップは、細胞スラリーをカテーテルのポート穴を通って運搬することを含む。本明細書で使用する用語「細胞スラリー」は、細胞の懸濁液を示す。通常、細胞は、一般的に患者への投与に適した生理的許容可能な緩衝液である培地中に懸濁される。そのような溶液の例としては、リン酸緩衝生理食塩水および塩化ナトリウム生理食塩水があげられる。
【0029】
細胞スラリーの濃度は、通常、1ミリメートルあたり約1×10〜約1×10細胞の範囲であり、5×10、1×10、2×10などの任意の介在濃度である。好ましい実施形態では、信号強度を最適化するために、運搬プロトコル中、1ミリメートルあたり約1×10以上の細胞を含有する高密度培地に細胞を懸濁することができる。培地密度を増大させ、および/または細胞をより長い期間より一様に懸濁された状態に保つのを助けるために、添加剤を追加することができる。添加剤の例としては、それだけに限定されないが、セルロース、ficoll−pague、ソルビトール、マニトール、スクロースなどがあげられる。
【0030】
細胞は、一般に、1分あたり約0.1マイクロリットル〜1分あたり約100マイクロリットルの範囲の速度、および1分あたり0.3マイクロリットル、1分あたり0.5マイクロリットル、1分あたり1マイクロリットル、1分あたり10マイクロリットル、1分あたり70マイクロリットルなどの任意の介在速度で運搬される。
【0031】
細胞スラリー内の細胞は、患者の病気または状態を治療するのに有用などのような細胞でもよい。そのような細胞は、通常、治療されている状態に依存する。当業者は、病気または状態に基づいて投与するための適切な細胞タイプを容易に決定することができる。たとえば、パーキンソン病を患う患者には、NPCを投与することができる。同様に、肝臓病を有する患者には、たとえば肝細胞を投与することができる。同じように、心疾患を患う患者には、たとえば心筋細胞を投与することができる。
【0032】
スラリー内の細胞は、自己蛍光性でよい。本明細書で使用する用語「自己蛍光性」は、細胞が、適切な波長の光で励起されるときに自発的な蛍光を示すことを意味する。あるいは、細胞は、蛍光性生体染色で形質転換されてよい。細胞を蛍光性生体染色で形質転換する方法は、当業者に知られている。たとえば、細胞は、蛍光性生体染色をコード化する核酸配列を導入することができる。本発明の方法に使用することができる不可欠な蛍光性生体染色の例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)があげられる。蛍光性生体染色の他の例としては、ローダミン、FITCなどがあげられる。自己蛍光および生体染色の方法は、多光子構成を介して別個にまたは一緒に使用することができる。
【0033】
細胞生存度および計数率の生体内血球計算法のための方法における次のステップには、細胞をある光の波長で励起して自己蛍光させる、あるいは生体染色の蛍光を生じさせることが含まれる。細胞を自己蛍光させる、または生体染色の蛍光を生じさせるように励起するのに適した波長は、最適な信号読み取りに関する分野の当業者によって容易に決定することができる。本方法の実施のための励起光源としては、レーザ、レーザダイオード、および発光ダイオード(LED)をあげることができる。光学信号が生成された後、独立的な測定(たとえば自己蛍光信号単独など)または複数の信号生成法を含む多光子測定を支援して、前記信号を複数の検出器に向けるために、光ファイバ分流器を使用することができる。前記光ファイバは、円形または四角形の断面のものでよく、後者の場合、四角形の断面により、前記ファイバ内の光学信号の均質化が可能になる。
【0034】
細胞生存度および計数率の生体内血球計算法のための方法における次のステップには、細胞の自己蛍光または生体染色蛍光を測定することが含まれる。蛍光の測定に適したどのような測定器も使用することができる。細胞の自己蛍光または生体染色蛍光の測定は、細胞生存度および計数率の測定となる。たとえば、このとき、本手法の1つの実施形態で行われ得るように、信号を分析し、散乱光、培地蛍光、および細胞蛍光を見分けるために、分光計を使用することができる。測定および分析プロセスの実施には、1つまたは複数のデータ分析プログラムおよび1つまたは複数のデータ処理システム(たとえばデジタルコンピュータ)を使用することができる。
【0035】
測定からのその後のデータは、臨床的戦略の決定のための基礎を提供することができる。たとえば、運搬された細胞の生存度を向上させる目的で、成長因子を投与することもできる。あるいは、たとえば、運搬部位における微小血管血液供給を増大し、したがって、細胞の酸化および存命の向上を助けるために、血管形成因子を投与することができる。同様に、神経ニッチの維持の他の重要な態様すべてにおける臨床的治療戦略の決定を同じような方法で行うこともでき、このように、手順の臨床的結果を最適化するための定量的基礎がもたらされる。これらの臨床的治療戦略の決定は、細胞運搬プロセス全体を制御するフィードバックループを実現するのに使用されるアルゴリズム上で作動する自動データ処理システムのコンテキスト内で行われてよい。前記フィードバックループは、データ処理、生化学的反応率などに関してリアルタイムで、または適切な遅延を有して実施されてよい。一般に、本発明の手段および方法を組み込んだいずれの神経カテーテルまたはカテーテル挿入システムも、特許文献5に記載された用途の装置および方法に類似した手段および方法と併用して、またはその手段および方法において使用することができる。
【0036】
たとえば、本発明のカテーテル、たとえば神経カテーテルが、短期的または長期的運搬状態で使用されるとき、遠位先端部内の(1つまたは複数のセンサの役目を果たす)前記光ファイバからの読み取りは、治療方法の最適化において中心的な役割を果たすことができる様々な有用な生理学的データを提供することができる。たとえば、ドーパミンレベルの記録は、細胞の機能性を定量的に示すことができ、したがって、細胞が分化工程においてある一定の段階の成熟期に到達したか、到達していないかが示される。次いで、これらのデータは、成長因子の運搬、前記因子の運搬のタイミング、および前記因子の運搬の中断に対する必要性に関する臨床的治療戦略の決定のための基礎を形成する。
【0037】
図11は、カテーテル壁31を示しており、その中のポート穴32によって、自己蛍光細胞34を含有する細胞スラリーの放出が可能になる。励起光33は、細胞34がポート穴32の領域を通ってまたはその近傍を通るとき、細胞34に入射する。励起光33は、細胞34を特有の波長で成長させ、したがって光学的放射35を生じさせ、この光学的放射35は、検出システム36によって観察される。細胞を含有する培地は、細胞の完全な懸濁を保証するのに十分な高さの密度のものでよい。培地は、スラリーが中に注入される標的組織との生体適合性を有するものでなければならない。本発明の方法によれば、細胞34は、生存能力がある場合は1つの特有の自己蛍光ルミネセンスを有し、自滅している場合は異なるものを有することができる。
【0038】
図12は、カテーテル壁31を示しており、その中のポート穴32によって、生体染色細胞38を含有する細胞スラリーの放出が可能になる。インタロゲーション光37は、細胞38がポート穴32の領域を通ってまたはその近傍を通るとき、細胞38に入射する。インタロゲーション光37は、細胞38と相互作用し、その結果、インタロゲーションに関連したルミネセンス39が検出システム36によって観察される。自己蛍光検出の場合と同様に、培地密度、生体適合性、および自滅信号に関してもまた、同じ考慮が適用されることになる。
【0039】
図13は、励起およびインタロゲーション光線40、41、および42がカテーテル1の壁内に配置されたポート穴32の領域に入射する多モード方法を示している。この領域内には、細胞クラスタ43、44、および45も配置されており、これらの細胞クラスタ43、44、および45は、蛍光、吸収、および散乱からの様々な場合に生じるそれら特有のルミネセンス信号46、47、および49と関連している。これらの信号は、検出システム36によって観察される。細胞生存度の血球計算法に多モード光学方法を用いることにより、同じ変数(たとえば生存細胞の数)の独立した複数の測定を得ることが可能になり、したがって結果の確認、測定の不確実性の点検、系統誤差の評価などが可能になる。一般には、本発明の実施形態のどのようなものにも使用することができる任意の励起およびインタロゲーション光線を作り出すために、複数の様々なタイプの光源を使用することができる。これらには、レーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、せん光ランプ、白熱灯、固体素子エミッタ、ならびにその他のそのような装置、システム、および手段が含まれる。前記光源はまた、連続波またはパルス式でもよい。パルス源、たとえば短パルスQ−スイッチレーザからのパルスレーザ光を使用するとき、前記パルスは、たとえば蛍光減衰測定または位相角測定によって行われ得るように散乱および培地蛍光に対して区別することができるような方法で、蛍光検出プロセスに使用することができる。また、本発明の方法および手段によれば、本発明は、自己幹細胞、NPC、および部分的または全体的に神経細胞に分化されたものを用いて実行することができる。
【0040】
図14は、前記細胞によって発せられた光学信号49を示しており、その光は収集光ファイバ50内に集められる。ファイバ光線スプリッタ装置51もまた概略的に示している。スプリッタ51は、たとえば複数の個々の光学信号52、53、および54を、分光計55、光電子増倍管56、およびフォトダイオード57などの独立した光検出手段内に向けることができる。これらの検出器手段のいずれにも、帯域フィルタおよびレーザ光除去フィルタを組み込むことができる。本発明の実施形態のいずれにも使用される光ファイバは、円形、矩形、または四角形の断面、あるいは一部の他の形状断面構造を有するものでよい。送出光線の均質化および自己結像の物理的過程を介した視野の受信は、矩形の光学機器によって達成することができる。光ファイバにおける自己結像は、非特許文献2においてAllisonおよびGilliesによって論じられている。また、一般には、本発明の方法によれば、分光計が検出手段として使用される場合、散乱レーザ光、培地蛍光、および細胞蛍光を見分けるような方法で信号を分析することができる。カテーテルを通して患者の標的組織内に運搬されている生存細胞の数を調節することを意図した制御システムにおいて測定結果を評価し、その結果を使用するために、1つまたは複数のデータアルゴリズムが、少なくとも1つのデジタルコンピュータ上で使用され得る。
【0041】
内腔構成、センサの構成および数、ならびに構造および使用法の他の詳細を有する多くの他の実施形態は、本発明の基本となる新規かつ洞察力のある概念の手段、システム、および技術の非独創的なバリエーションを構成することを当業者は理解することができる。
【0042】
現在において本発明の好ましい実施形態と考えられるものを示し説明してきたが、本趣旨から逸脱することなく、様々な変更および改変を本発明において加え得ることは、当業者に明確であろう。
【0043】
(実施例)
(実施例1)本発明のカテーテルの実施例
【0044】
細胞監視装置のポートを出る生存細胞の数を血球計算法によって決定するための光ファイバを組み込むモジュラ先端部の互換部が設計された。カテーテル先端部は、一般的な真鍮であるが臨床用プロトタイプのものから機械加工され、この先端部は、ステンレス鋼、チタンなどの生体適合性材料または一部のMRに安全な材料から製造することができる。CMD先端部は、カテーテルチューブの端部に取り付けることができ、光ファイバを装着するための一連の溝ならびにカテーテル出口ポートを含有する。ファイバ装着溝により、5つの光ファイバを互いに平行になるように自己整合させることが可能になる。2つのファイバは、45°の角度で研磨され、それらが反射鏡として機能するようにクロムでコーティングされる。反射鏡ファイバは、手動による回転の軸方向の位置合わせを必要とする。これらのファイバは、蛍光励起のための紫外線の光線が、カテーテルのポート穴をわたって送出されるように互いに作用する。中央のファイバは、細胞内の励起した蛍光を検出する役目を果たし、第2の検出ファイバは、細胞スラリー内の励起光線の減衰を測定する役目を果たす。システムは、検出された全蛍光エネルギーを使用して細胞の存在および溶液内の細胞の密度を決定する。図15は、先端部設計の概略図を示している。
【0045】
カテーテル先端部は、3.2mmの外径を有する。ポート穴は、直径0.38mmであり、励起および収集ファイバを装着するためのカテーテル先端軸に平行な3つのスロットと、光線が出口ポート穴をわたるのを可能にするための横断スロットとを含む。2つの外側スロットは、反射鏡ファイバが励起ファイバおよび外側の収集ファイバと軸方向に自己整合するのを可能にするために先端部の端部まで続いている。反射鏡ファイバは、45°にファイバを研磨し、電子光線蒸着システムを使用してファイバ上に1.0μm層のクロムを蒸着させることによって作製された。ファイバは、0.25mm離間して置かれ、紫外線硬化エポキシで取り付けられた。先端部の全長は、12.5mmである。プロトタイプ先端部の拡大図を図16に示す。
【0046】
光ファイバは、CeramOptec Industries(マサチューセッツ州、イーストロングメドウ)社から購入された。カテーテル実験に使用されたファイバは、200μm石英コアから構成されていた。ファイバは、フッ素を添加したシリカの10μm被覆、および245μmの全直径に対して12.5μm厚さのポリイミド外装を有していた。これらの実験におけるファイバの開口数(NA)は、0.37であり、許容入射半角(half-angle of acceptance)または21.7°の照射を有していた。
【0047】
蛍光は、Omnichrome(カリフォルニア州、チノ)社製アルゴンイオンレーザを使用して励起された。レーザ光は、0.25のNAを有する10×顕微鏡対物レンズを使用してファイバ内に結合された。アルゴンイオンレーザは、454、457、465、472、476、488、496、502、および514nmを含む9つの波長にわたって調製可能である。波長は、信号を最適化し、レーザ信号と蛍光励起信号の分離をもたらすように選択された。これらの実験の電力出力は、最大のレーザ電力出力および電力出力設定に基づいて約10mWであると推定される。しかし、結合損により出力は大幅に減少したと推定する。蛍光信号の出力スペクトルを測定するために、ファイバ光入力を受け入れるOcean Optics(フロリダ州、ダニディン)社製USB2000分光計が使用された。
【0048】
(実施例2)蛍光測定
【0049】
ペトリ皿実験が、図15および16の構成内に装着されたファイバを用いて実施された。0.25mLアリコートの細胞懸濁液が、この装置の視野部に置かれ、蛍光測定が行われた。これらの実験には、GFP形質転換3RT1細胞およびCellTracker(商標) Orange (Invitrogen Corporation、カリフォルニア州、カールバッド)で染色された非形質転換RT2Aラットグリオーマ細胞(rat gliomal cell)が使用された。この作業には、1ミリメートルあたり1.2×10の密度のGFP細胞および1ミリメートルあたり5.1×10のRT2A細胞の原液が使用された。細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)に懸濁された。これらの実験の結果により、細胞蛍光は、ファイバ光構成を用いて検出することができ、検出された全蛍光度は、細胞密度によって変化することが立証される。結果においていくらかの変動が認められたが、この変動は、培地中の細胞の急速な沈下に起因するものである。GFP細胞には458nmの、染色されたRT2A細胞には488nmのレーザ励起が使用された。図17および図18それぞれに結果を示す。PBS対照サンプル用のバックグラウンド信号は、細胞懸濁液の結果から差し引かれた。
【0050】
細胞監視装置の流動試験が、空気中で、および生体外注入研究用の脳ファントム材料としてしばしば使用される0.6%アガロースゲルを用いて実施された。試験装置を通る流れは、Bioanalytical Sciences(インディアナ州、ウェストラファイエット)社製の型式MD 1000シリンジポンプおよびHamilton(ネバダ州、レノ)社製の型式81303 1.0mLシリンジによって駆動された。これらの実験の流量は、1分あたり100マイクロリットルであった。3mmの可撓性の延長チューブにより、シリンジをファイバ光測定式細胞監視装置に連結させた。細胞スラリーがポートから出現したときの細胞スラリーの流れを観察するために、ビデオ顕微鏡が出口ポートの上方に配置された。図19に全体的な実験構成を示す。
【符号の説明】
【0051】
1 先端部
2 光送出ファイバ
3 蛍光および散乱測定ファイバ
4 減衰測定ファイバ
5 側部ポート
6 スタブ
7 ファイバ位置合わせ溝
8 内部構造チャンバ
9 結合点
10、11、52、53、54 光学信号
12 マイクロコイル
13 リード
14 シールド
15 連結点
16、17 材料の帯
18、32 ポート穴
19 患者
20 MR画像手段
21 神経カテーテル
22 神経カテーテル固定装置
23 運搬管
24 運搬シリンジ
25 駆動機構
26 光ファイバ
27 光変換器手段
28 測定手段
29 注入制御システム
31 カテーテル壁
33 励起光
34 自己蛍光細胞
35 光学的放射
36 検出システム
37 インタロゲーション光
38 細胞
39 ルミネセンス
40、41、42 励起およびインタロゲーション光線
43、44、45 細胞クラスタ
46、47、49 特有のルミネセンス信号
50 収集光ファイバ
51 スプリッタ
55 分光計
56 光電子増倍管
57 フォトダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内腔、遠位端および近位端を有しているカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に取り外し可能に結合されている遠位カテーテル先端部本体と、
前記遠位カテーテル先端部本体内に形成された少なくとも1つのポート穴と、
光ファイバを配置するために、前記カテーテル先端部本体内において軸方向に位置合わせされた複数の位置合わせ溝と、
前記遠位カテーテル先端部本体と前記カテーテル本体を結合させるための係合機構と、
前記内腔から少なくとも1つの前記ポート穴に材料を通過させるための少なくとも1つの内部構造チャンバと、
少なくとも1つの前記ポート穴近傍で光を送出し、少なくとも1つの前記ポート穴近傍で光を収集するために前記位置合わせ溝内に配設された複数の光ファイバと、
少なくとも1つの前記ポート穴近傍における前記光ファイバに、および前記光ファイバから光を導くために少なくとも1つのミラー端部を有している複数の光ファイバスタブとを備えていることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記光ファイバが、細胞が少なくとも1つの前記ポート穴を通過するとき、蛍光強度、蛍光励起、および蛍光散乱の変化を測定することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
蛍光励起および蛍光散乱が、異なる波長で測定されることを特徴とする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記係合機構が、管状機械スリーブ又はブッシュとされる少なくとも1つの連結装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記遠位カテーテル先端部本体に取り外し可能に配設された少なくとも1つのマイクロコイルを備えていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
磁気共鳴コントラスト増強剤を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
X線不透過性材料を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
複数の内部構造チャンバを備えていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記光ファイバスタブが、光学光線を制御するためにミラー表面を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記光ファイバスタブが、凹状のミラー表面を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記光ファイバスタブが、光学信号の焦点を変更するために回転することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
複数のポート穴を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項13】
カテーテルの遠位先端部に形成された1つ以上のポート穴近傍に光を送出し、
細胞、他の材料、又は種が前記遠位先端部の前記ポート穴の領域を通じて輸送されることによって、発せられた蛍光信号を収集し、
前記細胞、前記他の材料、又は前記種が前記遠位先端部の前記ポート穴の前記領域を通じて輸送されることによって、散乱された散乱光を収集し、
前記細胞、前記他の材料、又は前記種が前記遠位先端部の前記ポート穴の前記領域を通じて輸送されることによって、減衰された減衰光を収集し、
光ファイバ内の前記散乱光および前記減衰光を、前記光学信号を電気信号に変換した後に前記電気信号を血球計算法による細胞計数に変換する測定手段に導き、及び
前記血球計算法による細胞計数に従って輸送手段を調節し、これにより前記細胞、前記他の材料、又は前記種を含有するスラリーを前記カテーテルの前記遠位先端部内に導くことを特徴とする、カテーテルの遠位先端部の光ファイバを利用する測定制御システム。
【請求項14】
前記光ファイバが、患者の脳内で神経細胞および他の細胞のために神経ニッチを構成する間質性の空間内におけるドーパミン、他の神経伝達物質、作用物質、又は化学物質のレベルを感知することを特徴とする請求項13に記載の測定制御システム。
【請求項15】
治療を実施する臨床医によって手動で動作されるか、又はコンピュータベース若しくは他の自動データ処理装置、システム、若しくは手段によって自動的に動作されることを特徴とする請求項13に記載の測定制御システム。
【請求項16】
血球計算法によって細胞生存度および細胞計数率をそのままの状態で測定するための方法であって、
請求項1に記載のカテーテルを患者に挿入するステップと、
自身の内部の細胞が自己蛍光性を有しているか、又は蛍光性を有した生体染色を含んでいる細胞スラリーを、前記カテーテルのポート穴を通じて運搬するステップと、
前記細胞が自己蛍光するか、又は前記生体染色を蛍光させるために、所定の光の波長によって前記細胞を励起するステップと、
前記細胞の自己蛍光又は前記生体染色の蛍光を測定するステップであって、前記細胞の自己蛍光または前記生体染色の蛍光を測定することが、前記細胞生存度および前記細胞計数率を測定することである前記ステップと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項17】
細胞自然死を遂げている前記細胞スラリー中の細胞数を決定するステップを備えていることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カテーテルが、分光計、光電子増倍管、フォトダイオード、及び他の類する装置、システム、若しくは手段によって、光学信号のための複数のチャネルそれぞれを生成し、その後に前記光学信号を読み出すために、ファイバ光線スプリッタを備えていることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
励起及びインタロゲーションするための光が、1つ以上のレーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、及び他の類する装置、システム、若しくは手段によって生成されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞の自己蛍光が測定されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記生体染色の蛍光が測定されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
自己蛍光および前記生体染色の蛍光が測定されることを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図5d】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図19】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図20】
image rotate


【公表番号】特表2010−508118(P2010−508118A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535311(P2009−535311)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/023047
【国際公開番号】WO2008/057370
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509125992)ユーティー−バッテル・エルエルシー (6)
【出願人】(509125637)ヴァージニア・コモンウェルス・ユニヴァーシティ・インテレクチュアル・プロパティ・ファンデーション (1)
【出願人】(507208990)ユニバーシティ・オブ・ヴァージニア・パテント・ファウンデーション (3)
【Fターム(参考)】