説明

血管形成及び腫瘍成長を阻害するためのポリペプチド化合物

ある態様では、本発明は、ポリペプチド組成物(例えば、EphB4に結合する抗体及びその抗原結合部分)及びEphB4活性を阻害するための方法を提供する。他の態様では、本発明は、癌を治療するため又は血管形成関連疾患を治療するための方法及び組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2004年9月23日に出願された米国仮特許出願第60/612908号、2004年9月23日に出願された米国特許出願第10/949720号及び2004年3月12日に出願された米国特許出願第10/800350号について優先権を主張する。これらの参照した出願の教示全体をそれら全体における参照によってここに援用するものとする。
【0002】
本発明は、特定の方法でEphB4に結合し、かつ、それに作用する抗体及びその抗原結合部位を含め、EphB4仲介機能を阻害するポリペプチド剤を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
エフリン受容体B4又は肝細胞癌膜貫通型キナーゼ(HTK)とも呼ばれるEphB4は、膜貫通型受容体蛋白質−チロシンキナーゼのファミリーに属する。EphB4は、リガンド結合ドメイン(球状ドメインとも呼ばれる)と、システインリッチドメインと、一対のフィブロネクチンIII型反復配列(例えば、図5参照)とから構成される細胞外ドメインを有する。この細胞質ドメインは、2つの保存チロシン残基を含有する膜近傍領域、蛋白質チロシンキナーゼドメイン、不稔性αモチーフ(SAM)及びPDZドメイン結合モチーフからなる。EphB4は、膜結合リガンドのエフリンB2と相互作用する(Sakano,S.外,Oncogene,1996年8月15日;13(4):813−22;Brambilla R.外,EMBO J.1995年7月3日;14(13):3116−26)。EphB4は、Ephファミリーの他の種類と同様に、クラスターを形成した膜結合エフリンリガンドの結合によって活性化される(Davis S外,Science.1994年11月4日;266(5186):816−9)が、これは、該受容体を発現する細胞と該リガンドを発現する細胞との間の接触がEph受容体の活性化に必要であることを示している。リガンドの結合中に、EphB4受容体は二量体化し、そして膜近傍のチロシン残基を自己燐酸化させて完全な活性化を獲得する。EphB4発現細胞がエフリンB2発現細胞と遭遇したときに、EphB4−エフリンB2の相互作用と凝集が両細胞におけるシグナル伝達の引き金となると一般に考えられてきた。
【0004】
EphB4−エフリンB2シグナル伝達は、血管形成に関わっている(Wang外,Cell.1998年5月29日;93(5):741−53;Gerety外,Mol Cell.1999年9月;4(3):403−14)。既存の血管系の内皮からの新たな血管の発生である血管形成は、宿主内の充実性腫瘍の成長、プログレッション及び転移における重要なプロセスである。生理学的に正常の血管形成中に、血管内皮とその周囲の間質成分との自己分泌相互作用、傍分泌相互作用及び周囲分泌相互作用は、空間的及び時間的に厳重に調節される。さらに、前血管形成性及び血管形成性サイトカインと増殖因子とのレベル及び活性は、適度なバランスに保持される。対照的に、活性腫瘍成長に必要な病的血管形成は維持されかつ持続的であることから、これは正常の血管形成系の異常調節を示している。充実性及び造血系の腫瘍型は、特に、高レベルの異常血管形成と関連がある。
【0005】
腫瘍の発達は、侵襲性の強い成長能力を有する自発的クローンの発生に至る連続的でかつ相互に関連のある段階からなると一般に考えられている。これらの段階は、持続的成長及び無制限の自己再生を包含する。腫瘍における細胞集団は、一般に、成長シグナルの自己十分性、成長抑制シグナルに対する感受性の減少及びアポトーシス抵抗性によって特徴付けられる。異常増殖を開始させる遺伝学的及び細胞遺伝学的事象は、アポトーシスを防止することによって細胞を長期の「準備完了」状態に維持する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血管形成及び腫瘍成長を阻害するための薬剤及び治療上の処置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
ある態様では、本発明は、特定の方法でEphB4に結合しかつそれに作用する抗体及びその抗原結合部位を含め、EphB4仲介機能を阻害するポリペプチド剤を提供する。ここで立証するように、EphB4及びエフリンB2は、癌及び望ましくない又は過剰な血管形成に関連する疾患を含め、様々な病状に関与している。したがって、ここに開示されるある種のポリペプチド剤を使用してこのような疾患を治療することができる。さらなる態様では、本開示は、EphB4及び/又はエフリンB2が様々な腫瘍においてしばしば高レベルで発現するという発見に関する。そのため、EphB4又はエフリンB2機能を下方調節するポリペプチド剤は、腫瘍細胞に及ぼす直接的な影響並びに腫瘍によって補充される血管形成プロセスに及ぼす間接的な影響によって腫瘍に影響を及ぼすことができる。ある具体例では、この開示は、EphB4又はエフリンB2機能を下方調節する試薬による治療に特に適した腫瘍型の同定を提供する。
【0008】
ある態様では、この開示は、EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに結合しかつEphB4活性を阻害する、単離された抗体又はその抗原結合部分を提供する。この単離された抗体又はその抗原結合部位は、図1のEphB4配列のアミノ酸16〜198内に位置したエピトープに結合できる。例えば、該エピトープは、エフリンB2に結合するEphB4の球状ドメイン(GD)内に位置し得る。この単離された抗体又はその抗原結合部分は、EphB4がエフリンB2の細胞外部分に結合するのを阻害することができる。当該単離された抗体又はその抗原結合部分は、図1のEphB4配列のアミノ酸324〜429又は430〜537内に位置したエピトープに結合できる。例えば、この単離された抗体又はその抗原結合部分は、EphB4の第1フィブロネクチン様ドメイン(FND1)又は第2フィブロネクチン様ドメイン(FND2)に結合できる。単離された抗体又はその抗原結合部分は、EphB4の二量体化又は多量体化を阻害することができ、かつ、EphB4のエフリンB2刺激自己燐酸化を随意に阻害することができる。単離された抗体又はその抗原結合部分は、培養内皮細胞による管の形成、生体内での組織の脈管化、動物の角膜に移植された組織の脈管化、動物に移植されたマトリゲル組織プラグの脈管化及び/又はマウスにおけるヒト腫瘍異種移植片の成長を阻害することができる。図1のEphB4配列のアミノ酸16〜198内に位置したエピトープに結合する好ましい抗体としては、本明細書において第001号、第023号、第035号及び第079号と示された抗体が挙げられる。図1のEphB4配列のアミノ酸428〜537内に位置したエピトープに結合する好ましい抗体としては、本明細書において第047号、第057号、第85H号、第098号及び第138号と示される抗体が挙げられる。
【0009】
ある態様では、この開示は、EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに結合しかつEphB4キナーゼ活性を刺激する単離された抗体又はその抗原結合部分を提供する。例えば、ここに記載されるのは、図1のEphB4配列のアミノ酸324〜429又は430〜537内に位置したエピトープに結合しかつEphB4のキナーゼ活性を刺激する単離された抗体又はその抗原結合部分である。この単離された抗体又はその抗原結合部分は、EphB4のFND1又はFND2に結合できる。該抗体は、本明細書において第085L号、第091号、第121号及び第131号と示された抗体よりなる群から選択できる。
【0010】
この開示は、ここに開示された抗体のうち任意のもののヒト化変種並びにここに開示された抗体に由来する少なくとも1個のCDR部分、特にCDR3を含む抗体及びその抗原結合部分を提供する。好ましい具体例では、該抗体は、モノクローナル抗体であってこれが投与されるべき被検体と免疫適合性のあるもの、好ましくはヒトへの投与に対して臨床上許容できるモノクローナル抗体である。
【0011】
ある態様では、この開示は、ここに開示される抗体を産生するハイブリドーマ、特に本明細書において第001号、第023号、第035号、第079号、第047号、第057号、第85H号、第098号、第138号、第085L、第091号及び第131号と示される抗体よりなる群から選択される抗体を産生するハイブリドーマを提供する。抗体第023号(アミノ酸16〜198内のエピトープ)、抗体第091号(キナーゼ活性化抗体;アミノ酸324〜429内のエピトープ)、抗体第098号(アミノ酸430〜537内のエピトープ)、抗体第131号(アミノ酸324〜429内のエピトープ)及び抗体第138号(アミノ酸430〜537内のエピトープ)を産生するハイブリドーマは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC),10801,University Boulevard,Manassas,VA20110−2209に寄託した。抗体第023号、第091号、第098号、第131号及び第138号についてのATCC寄託表示番号は、それぞれ、PTA−6208、PTA−6209、PTA−6210、PTA−6214及びPTA−6211である。
【0012】
したがって、この開示のある特定の態様は、PTA−6208、PTA−6209、PTA−6210、PTA−6214及びPTA−6211よりなる群から選択されるATCC寄託表示番号を有するハイブリドーマ細胞を提供する。
【0013】
驚くべきことに、リガンド結合を阻害する抗体、EphB4キナーゼ活性を阻害する抗体及びEphB4キナーゼ活性を活性化させる抗体は、全て、バイオアッセイにおけるEphB4が仲介する事象を阻害する。したがって、この開示は、癌の治療方法において、それを必要とする患者に、EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに結合しかつEphB4活性を阻害するか又はEphB4のキナーゼ活性を活性化させる単離された抗体又はその抗原結合部分の有効量を投与することを含む、癌の治療方法を提供する。随意に、該患者は、結腸癌、乳房の腫瘍、中皮腫、前立腺腫瘍、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫及び白血病よりなる群から選択される癌と診断されている。この単離された抗体又はその抗原結合部分は、全身的に又は局所的に投与できる。さらに、該開示は、患者における血管形成を阻害する方法において、それを必要とする患者に、EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに結合しかつEphB4活性を阻害する又はEphB4のキナーゼ活性を活性化させる単離された抗体又はその抗原結合部分の有効量を投与することを含む、患者における血管形成を阻害する方法を提供する。随意に、該患者は、黄斑変性症と診断されている。
【0014】
ある態様では、該開示は、ここで開示される単離された抗体又はその抗原結合部分のうち任意のものを含む医薬品並びに癌治療用の医薬品を製造するためにこのような抗体又はその抗原結合部分を使用することに関する。随意に、この癌は、結腸癌、乳房の腫瘍、中皮腫、前立腺腫瘍、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫及び白血病よりなる群から選択される。
【0015】
ある態様では、ここに開示される抗体は、所望の薬物速度論的特性を与える標識又は部分のような追加の機能性部分と共有結合(又はさもなくばこのものと安定に会合)できる。代表的な標識としては、蛍光検出法、陽電子放出型断層撮影検出法及び核磁気共鳴検出法よりなる群から選択される方法による検出に好適なものが挙げられる。標識は、例えば、蛍光標識、放射性同位元素標識及び特有の核磁気共鳴シグナチャーを有する標識よりなる群から選択できる。ポリエチレングリコール(PEG)部分のような部分を抗体又はその抗原結合部分に加えて血中半減期を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面の簡単な説明
図1は、ヒトEphB4前駆体蛋白質のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
図2は、ヒトEphB4蛋白質のcDNAヌクレオチド配列を示す。
図3は、B4ECv3蛋白質のアミノ酸配列を示す(非開裂EphB4リーダーペプチドを含む前駆体の予想される配列を示す)。
図4は、B4ECv3NT蛋白質のアミノ酸配列を示す(非開裂EphB4リーダーペプチドを含む前駆体の予想される配列を示す)。
図5は、EphB4に対して生成されるモノクローナル抗体及びこれらの抗体のエピトープマッピングを示す。球状ドメイン(G)、システインリッチドメイン(C)及び2個のフィブロネクチン3型ドメイン(F1及びF2)を含め、EphB4細胞外ドメインのトポロジーを示している。
図6は、腫瘍細胞成長に及ぼすエフリンB2ポリクローナル抗体及びEphB4ポリクローナル抗体の影響を示している。(A)H28細胞株、(B)H2373細胞株及び(C)H2052細胞株。
図7は、EphB4モノクローナル抗体の親和性試験の結果を示す。親和性の順序(最も弱い〜最も強い)を示している。
図8は、bFGFの存在下又は非存在下での代表的なEphB4抗体(第138号)によるマウス角膜マイクロポケットアッセイ法を示している。
図9は、EphB4抗体がSCC15異種移植腫瘍の成長を阻害することを示す。
図10は、EphB4抗体が、頭部及び頚部癌腫瘍型であるSCC15においてアポトーシス、ネクローシス及び減少した血管形成を生じさせることを示している。
図11は、EphB4抗体の全身投与によって腫瘍の緩解に至ることを示す。
【0017】
発明の詳細な説明
1.EphB4抗体及び他の結合ポリペプチド
この開示は、部分的には、抗体、抗体の抗原結合部分及び非免疫グロブリン抗原結合骨格のような、ポリペプチド結合因子によって効果的に標的にされ得るEphB4分子の特定部分を提供する。ここに記載されたEphB4ポリペプチド結合因子は、様々な疾患、特に癌及び望ましくない血管形成に関連する疾患を治療するために使用できる。この開示は、エフリンB2の結合又はEphB4キナーゼ活性のような1種以上のEphB4仲介機能を阻害する抗体及びその抗原結合部分を提供する。このような結合因子は、試験管内及び生体内でEphB4機能を阻害するために使用でき、そして好ましくは癌又は望ましくない血管形成に関連する疾患を治療するために使用できる。また、この開示は、EphB4キナーゼ活性(典型的には、EphB4の燐酸化状態を評価することによって算定される)を活性化させる抗体又はその抗原結合部分も提供する。驚くべきことに、このような抗体は、細胞系のアッセイ法又は生体内アッセイ法においてEphB4機能をも阻害する。したがって、このような結合因子は、試験管内及び生体内でEphB4機能を阻害するために使用でき、そして好ましくは癌又は望ましくない血管形成に関連する疾患を治療するために使用できる。いかなる特定の機構に制限されることを望まないが、これらの抗体は、EphB4キナーゼ活性だけでなく、膜からのEphB4の除去も刺激し、しかして全体的なEphB4レベル減少させることが予期される。
【0018】
EphB4は、膜貫通型受容体蛋白質チロシンキナーゼのファミリーに属する。EphB4の細胞外部分は、リガンド結合ドメイン(球状ドメインとも呼ばれる)と、システインリッチドメインと、一対のフィブロネクチンIII型ドメイン(例えば、図1参照)とから構成される。細胞質ドメインは、2つの保存チロシン残基を含有する膜近傍領域、蛋白質チロシンキナーゼドメイン、不稔性αモチーフ(SAM)及びPDZドメイン結合モチーフからなる。EphB4は、膜結合リガンドのエフリンB2に特異的である(Sakano,S.外,1996;Brambilla R.外,1995)。EphB4は、クラスター形成した膜結合エフリンリガンドの結合によって活性化される(Davis S外,1994)が、これは該受容体を発現する細胞と該リガンドを発現する細胞との間の接触がEph受容体の活性化に必要であることを示している。リガンドの結合中に、EphB4受容体は二量体化し、そして膜近傍チロシン残基を自己燐酸化して完全な活性化を獲得する。
【0019】
ここで使用するときに、用語「EphB4」とは、ヒトを含むほ乳類からのEphB4ポリペプチドをいう。一具体例では、抗体(免疫グロブリン)は、単離された及び/又は組換え体のほ乳類EphB4又はその部分に対して作製され、或いは組換えほ乳類EphB4を発現する宿主細胞に対して作製される。ある態様では、本発明の抗体は、EphB4蛋白質(ここでは、EphB4可溶性ポリペプチドという。)の細胞外ドメインに対して特異的に結合する。例えば、EphB4可溶性ポリペプチドは球状ドメインを含み、しかもエフリンB2に結合することができる。EphB4可溶性ポリペプチドの例を図2に提供している。ここで使用するときに、「EphB4可溶性ポリペプチド」には、EphB4可溶性ポリペプチドの断片、機能性変異体及び修飾された形態が含まれる。
【0020】
「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然型の免疫グロブリンにおいて、それぞれの四量体は、2個の同一のポリペプチド鎖対であって、それぞれの対が1個の「軽」鎖(約25kDa)及び1個の「重」鎖(約50〜70kDa)を有するものからなる。それぞれの鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に最初に関与する約100〜110又はそれを超えるアミノ酸の可変領域を含む。それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に最初に関与する定常領域を画定する。ヒトの軽鎖は、κ及びλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α又はεとして分類され、そして該抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。軽鎖及び重鎖内において、可変領域及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって結合している(該重鎖は、約10個以上のアミノ酸の「D」領域も含む。)。一般的には、Fundamental Immunology第7章(Paul,W.著,第2版,Raven Press,N.Y.(1989) )(全ての目的のためにその全体における参照によって援用するものとする)。それぞれの軽鎖/重鎖の対の可変領域は、そのままの免疫グロブリンが2個の結合部位を有するように抗体結合部位を形成する。免疫グロブリンは、高次構造に構成され得る。IgAは、一般に、2個の四量体からなる二量体である。IgMは、一般に、5個の四量体からなる五量体である。
【0021】
免疫グロブリン鎖は、相補性決定領域又はCDRとも呼ばれる、3個の超可変領域によって結合した比較的保存性の高いフレームワーク領域(FR)の同一の一般構造を有する。それぞれの対の2個の鎖からのCDRは、該フレームワーク領域によって整列し、特定のエピトープに結合することができる。N末端からC末端までにおいて、軽鎖及び重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。それぞれのドメインに対するアミノ酸の割り当ては、「Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest 」の定義に従う(米国国立保健研究所,メリーランド州ベテスダ,(1987及び1991)又はChothia & Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Chothia外,Nature 342:878−883(1989))。
【0022】
「抗体」とは、そのままの免疫グロブリン又は特異的な結合について該そのままの免疫グロブリンと競合するその抗原結合部分をいう。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって又はそのままの抗体の酵素的若しくは化学的開裂によって生成できる。抗原結合部分としては、特に、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、ダイアボディー並びにポリペプチドであって該ポリペプチドに対する特異的抗原結合性を与えるのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するものが挙げられる。用語「抗EphB4抗体」及び「EphB4抗体」は、本明細書においては区別なく使用する。
【0023】
Fab断片は、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片である。F(ab’).sub.2断片は、2個のFab断片をヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合してなる二価の断片である。Fd断片は、VH及びCH1ドメインからなる。Fv断片は、抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなる。そして、dAb断片(Ward外,Nature 341:544−546,1989)は、VHドメインからなる。
【0024】
一本鎖抗体(scFv)は、一価の分子を単一の蛋白質鎖として作ることのできる合成リンカーを介して形成するようにVL及びVH領域が対をなす(Bird外,Science 242:423−426,1988及びHuston外,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,1988)。ダイアボディーは、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現する二価の二重特異性抗体であるが、ただし、同一の鎖上で該2個のドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによってこれらのドメインを別の鎖の相補ドメインと対合させ、そして2個の抗原結合部位を生じさせたものである(例えば、Holliger,P外,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448,1993及びPoljak,R.J.外,Structure 2:1121−1123,1994)。一つ以上のCDRをある種の分子に共有的に又は非共有的に取り入れることができる。
【0025】
抗体は、1個以上の結合部位を有することができる。1個以上の結合部位がある場合には、これらの結合部位は互いに同一であることができ、又は異なるものであることができる。例えば、天然型の免疫グロブリンは、2個の同一の結合部位を有し、一本鎖抗体又はFab断片は1個の結合部位を有するが、「二重特異性」又は「二官能性」抗体は2個の異なる結合部位を有する。
【0026】
用語「ヒト抗体」には、ヒト免疫グロブリン配列由来の1個以上の可変領域及び定常領域を有する全ての抗体が含まれる。好ましい具体例では、該可変ドメイン及び定常ドメインの全てがヒト免疫グロブリン配列に由来する(完全にヒトの抗体)。これらの抗体は、以下に記載するような様々な方法で調製できる。
【0027】
用語「キメラ抗体」とは、1種の抗体からの1個以上の領域及び1種以上の他の抗体からの1個以上の領域を含有する抗体をいう。好ましい具体例では、CDRの一つ以上がヒト抗EphB4抗体に由来する。さらに好ましい具体例では、CDRの全てがヒト抗EphB4抗体に由来する。別の好ましい具体例では、1種以上のヒト抗EphB4抗体からのCDRを混合し、そしてキメラ抗体に適合させる。例えば、キメラ抗体は、第1ヒト抗EphB4抗体の軽鎖からのCDR1を含むことができるが、これは第2ヒト抗EphB4抗体の軽鎖からのCDR2及びCDR3と結合していてよく、そして重鎖からのCDRは、第3の抗EphB4抗体に由来し得る。さらに、そのフレームワーク領域は、同一の抗EphB4抗体、ヒト抗体のような1種以上の異なる抗体又はヒト化抗体に由来し得る。
【0028】
「中和抗体」とは、抗EphB4抗体の過剰量がエフリンB2に結合するEphB4(可溶性)の量を少なくとも約20%、好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは60%、さらに好ましくは80%、さらに好ましくは85%減少させるときに、EphB4がエフリンB2に結合するのを阻害する抗体である。結合の減少は、例えば、試験管内競合的結合アッセイ法で測定されるように、当業者に知られている任意の手段によって測定できる。結合の減少を測定する例は、実施例に与えている。
【0029】
「EphB4キナーゼ活性化抗体」とは、EphB4を発現する細胞、組織又は器官
に加えられたときに、EphB4キナーゼ活性を少なくとも約20%活性化させる抗体である。好ましい具体例では、該抗体は、EphB4キナーゼ活性を少なくとも40%、より好ましくは60%、より好ましくは80%、より好ましくは85%活性化させる。典型的には、キナーゼ活性は、EphB4自体の燐酸化状態として測定される(チロシンの自己燐酸化)。
【0030】
ここで使用するときに、用語「標識」又は「標識された」とは、該抗体における別の分子の取り込みをいう。一具体例では、該標識は、検出可能なマーカー、例えば、放射性同位元素標識されたアミノ酸の取り込み又はマークされたアビジンによって検出できるビオチニル部分のポリペプチドへの結合(例えば、光学法又は比色分析法によって検出できる蛍光マーカー又は酵素活性を含有するストレプタビジン)である。別の具体例では、該標識又はマーカーは、治療剤、例えば、薬物複合体又は毒素であることができる。ポリペプチド及び糖蛋白質を標識する様々な方法が斯界に知られており、そしてこれらを使用することができる。ポリペプチド用の標識の例としては、次のもの:放射性同位元素又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド燐光体)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ)、化学蛍光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、ガドリニウムキレートのような電磁剤、毒素、例えば、百日咳毒素、タクソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン並びにそれらのアナログ又はホモログが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの具体例では、標識を様々な長さのスペーサーアームによって結合させて見込まれる立体障害を低減させる。
【0031】
以下の実施例に示すように、出願人は、EphB4に対する多数のモノクローナル抗体並びにEphB4モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を作製した。これらの抗体は、EphB4とそのリガンドとの間の相互作用を阻害する能力(例えばエフリン−中和抗体)、EphB4受容体の二量体化又は多量体化を阻害する能力、EphB4のチロシン燐酸化を減少させる能力、他のEphファミリーの種類との交叉反応、血管形成を阻害する能力及び腫瘍成長を阻害する能力のような多くの方法でさらに特徴付けられた。さらに、エピトープマッピング研究から、これらのEphB4抗体がEphB4の1つ以上の領域(例えば、球状ドメイン、システインリッチドメイン又はフィブロネクチンIII型ドメイン)に特異的に結合できることを明らかにする。例えば、EphB4抗体は、両方のフィブロネクチンIII型ドメインに結合できる。
【0032】
ある態様では、本発明の抗体は、EphB4蛋白質(ここでは、可溶性EphB4ポリペプチドともいう)の細胞外ドメイン(ECD)に特異的に結合する。可溶性EphB4ポリペプチドは、球状(G)ドメイン(配列番号1のアミノ酸29〜197)を包含する配列並びに随意にシステインリッチドメイン(配列番号1のアミノ酸239〜321)、第1フィブロネクチン3型ドメイン(配列番号1のアミノ酸324〜429)及び第2フィブロネクチン3型ドメイン(配列番号1のアミノ酸434〜526)のような追加のドメインを含むことができる。代表的なEphB4可溶性ポリペプチドを図3〜4に与える。ここで使用するときに、EphB4可溶性ポリペプチドには、EphB4可溶性ポリペプチドの断片、機能性変異体及び修飾された形態が含まれる。
【0033】
ある態様では、本発明は、EphB4又はEphB4の部分に対する結合特異性を有する抗体(抗EphB4)を提供する。これらの抗体の例としては、図5に示すようなEphB4抗体第1、23、35、47、57、79、85L、85H、91、98、121、131及び138号が挙げられるが、これらに限定されない。随意に、免疫グロブリンは、少なくとも約1×10-6、1×10-7、1×10-8、1×10-9以下の親和性を有するEphB4に結合できる。随意に、抗体及びその部分は、球状リガンド結合ドメインを含む可溶性細胞外EphB4ポリペプチドにほぼ等しい親和性を有するエフリンB2に結合する。
【0034】
ここで開示される抗体は、好ましくは、EphB4に対して特異的であるが、Eph又はエフリンファミリーの他の種類に対してはほとんど結合しないであろう。本発明の別の態様では、抗EphB4抗体は、種選択性及び分子選択性の両方を示す。一具体例では、抗EphB4抗体は、ヒト、カニクイザル又はアカゲザルのEphB4に結合する。好ましい具体例では、抗EphB4抗体は、マウス、ラット、テンジクネズミ、イヌ又はウサギのEphB4には結合しない。随意に、該抗体は、ヒト及びマウスのような異なる種からの複数の異なるEphB4に結合する。当該明細書の教示に従い、斯界に周知の方法を使用して抗EphB4抗体に対する種選択性を決定することができる。例えば、ウェスタンブロット法、FACS、ELISA又はRIAを使用して種選択性を決定することができる。好ましい具体例では、ウェスタンブロット法を使用して種選択性を決定することができる。別の具体例では、抗EphB4抗体は、同一の種からのEphBファミリーの他の種類への結合しやすさよりも少なくとも50倍大きい、好ましくは100又は200倍大きいEphB4への結合しやすさを有する。当該明細書の教示に従い、斯界に周知の方法を使用して選択性を決定することができる。例えば、ウェスタンブロット法、FACS、ELISA又はRIAを使用して選択性を決定することができる。好ましい具体例では、ウェスタンブロット法を使用して分子選択性を決定することができる。
【0035】
ある具体例では、本発明の抗体は、EphB4の1個以上の特定のドメインに結合する。例えば、抗体は、EphB4の1個以上の細胞外ドメイン(例えば、球状ドメイン、システインリッチドメイン並びに第1フィブロネクチン3型ドメイン及び第2フィブロネクチン3型ドメイン)に結合する。例えば、EphB4抗体第1、23、35及び79号は、図1における配列のアミノ酸16〜198を範囲とする領域、すなわち球状ドメインを範囲とする領域内のエピトープに結合する。EphB4抗体第85L、85H、91及び131号は、第1フィブロネクチン3型ドメインを含む、アミノ酸324〜429を範囲とする領域内のエピトープに結合する。EphB4抗体第47、57、85H、98、121及び138号は、第2フィブロネクチン3型ドメインを含む、アミノ酸430〜537を範囲とする領域内のエピトープに結合する。随意に、主題の抗体(例えば、EphB4抗体第85H号)は、EphB4の少なくとも2個のドメインに結合できる(図5)。
【0036】
抗EphB4抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA又はIgD分子であることができる。好ましい具体例では、該抗体は、IgGであり、そしてIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4亜型である。好ましい具体例では、抗EphB4抗体は、サブクラスIgG2である。EphB4抗体のこのクラス及びサブクラスは、斯界に知られている任意の方法によって決定できる。一般に、抗体のクラス及びサブクラスは、抗体の特定のクラス及びサブクラスに特異的な抗体を使用して決定できる。このような抗体は市販されている。このクラス及びサブクラスは、ELISA、ウェスタンブロット法並びに他の技術によって決定できる。別法として、該クラス及びサブクラスは、これらの抗体の重鎖及び/又は軽鎖の定常ドメインの全て又は一部分の配列を決定し、それらのアミノ酸配列と免疫グロブリンの様々なクラス及びサブクラスの既知のアミノ酸配列とを比較し、そしてこれらの抗体のクラス及びサブクラスを決定することによって決定できる。例えば、代表的なEphB4抗体のクラス及びサブクラスを以下の表1に示している。
【0037】
ある種の具体例では、一本鎖抗体及びキメラ抗体、ヒト化抗体又は霊長類化(CDR移植)抗体並びにキメラ又はCDR移植一本鎖抗体(異なる種由来の部分を含む)も抗体の抗原結合部分として本発明によって包含される。これらの抗体の様々な部分は、慣用技術によって互いに化学的に結合でき、又は遺伝子工学技術を使用して隣接する蛋白質として調製できる。例えば、キメラ又はヒト化の鎖をコードする核酸を発現させて隣接蛋白質を生産させることができる。例えば、Cabilly外の米国特許第4,816,567号;Cabilly外,欧州特許第0,125,023号;Boss外,米国特許第4,816,397;Boss外,欧州特許第0,120,694号;Neuberger,M.S.外,WO86/01533号;Neuberger,M.S.外,欧州特許第0,194,276Bl;Winter,米国特許第5,225,539号;及びWinter,欧州特許第0,239,400B1を参照されたい。また、霊長類化抗体に関しては、Newman,R.外,BioTechnology,10:1455−1460(1992)も参照されたい。一本鎖抗体に関しては、例えば、Ladner外,米国特許第4,946,778号;及びBird,R.E.外,Science,242:423−426 (1988)を参照されたい。
【0038】
さらに、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体又は一本鎖抗体の断片を含め、抗体の機能性断片も生成できる。これらの主題の抗体の機能性断片は、これらのものに由来する全長抗体の少なくとも一つの結合機能及び/又は調節機能を保持する。好ましい機能性断片は、対応する全長抗体の抗原結合機能(例えば、EphB4に対する特異性)を保持する。ある種の好ましい機能性断片は、結合活性、シグナル伝達活性及び/又は細胞応答の刺激のような、EphB4の1種以上の機能特性を阻害する能力を保持する。例えば、一具体例では、EphB4抗体の機能性断片は、EphB4とそのリガンド(例えばエフリンB2)との相互作用を阻害することができ、及び/又は細胞移動、細胞増殖、血管形成及び/又は腫瘍成長のような1種以上の受容体仲介機能を阻害することができる。
【0039】
例えば、EphB4受容体又はその部分に結合できる抗体断片(Fv、Fab、Fab'及びF(ab')2断片が挙げられるが、これらに限定されない。)は、本発明に包含される。このような断片は、酵素的開裂によって又は組換え技術によって生成できる。例えば、パパイン又はペプシンによる開裂は、それぞれFab又はF(ab')2を生成させることができる。また、抗体は、1個以上の停止コドンが本来の停止部位の上流に組み込まれた抗体遺伝子を使用して様々な切断形態で生成されることもできる。例えば、F(ab')2重鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、該重鎖のCH1ドメイン及びヒンジ領域をコードするDNA配列を含むようにデザインできる。
【0040】
ヒト化抗体とは、ヒトではない種に由来する抗体であって、それらの重鎖及び軽鎖のフレームワーク及び定常ドメインにおける所定のアミノ酸がヒトにおける免疫応答を回避し又は阻止するように変異したものである。或いは、ヒト化抗体は、ヒト抗体からの定常ドメインをヒトでない種の可変ドメインに融合させることによって生成できる。ヒト化抗体の作製方法の例は、米国特許第6,054,297号、同5,886,152号及び同5,877,293号に見いだすことができる。ヒト化抗体は、異なる起源の免疫グロブリンの部分であって随意に少なくとも一部分がヒト起源のものを含むことができる。したがって、本発明は、EphB4(例えば、ヒトEphB4)に対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンにおいて、非ヒト起源(例えば齧歯類)の抗原結合領域と、ヒト起源の免疫グロブリンの少なくとも一部分(例えば、ヒトのフレームワーク領域、ヒトの定常領域又はそれらの部分)とを含む、ヒト化免疫グロブリンに関する。例えば、当該ヒト化抗体は、マウスのような必須の特異性を有する非ヒト起源の免疫グロブリンとヒト起源の免疫グロブリン配列とに由来する部分を含むことができ(例えば、キメラ免疫グロブリン)、これは、慣用技術(例えば、合成)によって互いに化学的に結合し又は遺伝子工学技術を使用して隣接ポリペプチドとして調製され得る(例えば、該キメラ抗体の蛋白質部分をコードするDNAを発現させて隣接ポリペプチド鎖を生成させることができる)。
【0041】
本発明のヒト化免疫グロブリンの別の例は、非ヒト起源のCDR(例えば、非ヒト起源の抗体に由来する一つ以上のCDR)と、ヒト起源の軽鎖及び/又は重鎖由来のフレームワーク領域(例えば、フレームワークが変化した又は変化していないCDR移植抗体)とを含む1本以上の免疫グロブリン鎖を含有する免疫グロブリンである。一具体例では、当該ヒト化免疫グロブリンは、EphB4ポリペプチドへの結合に対してネズミモノクローナル抗体と競合できる。また、キメラ又はCDR移植一本鎖抗体も用語「ヒト化免疫グロブリン」に包含される。
【0042】
ある具体例では、本発明は、EphB4アンタゴニスト抗体を提供する。ここに記載するときに、用語「アンタゴニスト抗体」とは、結合活性(例えば、リガンド結合)及びシグナル伝達活性(例えば、EphB4のクラスター形成又は燐酸化、細胞移動又は細胞増殖の刺激のような細胞応答の刺激)のようなEphB4の1種以上の機能を阻害できる抗体をいう。例えば、アンタゴニスト抗体は、EphB4受容体と天然リガンド(例えば、エフリンB2又はその断片)との相互作用を阻害(低減又は回避)することができる。好ましくは、EphB4に対するアンタゴニスト抗体は、内皮細胞移動、細胞増殖、血管形成及び/又は腫瘍成長を含め、EphB4によって仲介される機能を阻害することができる。随意に、該アンタゴニスト抗体は、EphB4の細胞外ドメインに結合する。
【0043】
他の具体例では、本発明は、EphB4キナーゼ活性化抗体を提供する。このような抗体は、エフリンB2に依存しなくてもEphB4キナーゼ活性を向上させる。場合によっては、このような抗体を使用してEphB4を刺激することができる。しかしながら、出願人は、ほとんどの細胞ベースアッセイ法及び生体内アッセイ法において、驚くべきことにこのような抗体がアンタゴニスト抗体のように振る舞ったことを指摘する。このような抗体は、2つのフィブロネクチンIII型ドメインの少なくとも一つ、特に図1のアミノ酸324〜429の領域に結合するように思われる。
【0044】
ある具体例では、抗イディオタイプ抗体も提供する。抗イディオタイプ抗体は、別の抗体の抗原結合部位に関連する抗原決定基を認識する。抗イディオタイプ抗体は、二次抗体を産生させるために使用される動物と同一の種、好ましくは同一の株の動物を免疫化させることによって二次抗体に対して調製できる。例えば、米国特許第4,699,880号を参照されたい。一具体例では、抗体は、受容体又はその部分に対して作製され、そしてこれらの抗体は、抗イディオタイプ抗体を産生させるために順次使用される。それによって産生された抗イディオタイプ抗体は、受容体機能のリガンドのような受容体を結合させる化合物を結合させることができ、しかもこのような化合物を検出し又は同定し又は定量するための免疫アッセイ法において使用できる。また、このような抗イディオタイプ抗体は、EphB4受容体機能の阻害因子であることもできるが、受容体自体には結合しない。また、このような抗イディオタイプ抗体は、アンタゴニスト抗体と呼ぶこともできる。
【0045】
ある種の態様では、本発明は、ハイブリドーマ細胞株並びにこれらのハイブリドーマ細胞株によって産生されたモノクローナル抗体を提供する。本発明の該細胞株は、モノクローナル抗体の産生以外の用途を有する。例えば、本発明の該細胞株を他の細胞(例えば、安定的に薬剤標識されたヒトミエローマ、マウスミエローマ、ヒト−マウスヘテロミエローマ又はヒトリンパ芽球細胞)と融合させて追加のハイブリドーマを産生させ、それによってモノクローナル抗体をコードする遺伝子の転移を与えることができる。さらに、当該細胞株は、単離及び発現(例えば、任意の好適な技術を使用して他の細胞に転移させることにより)できる、抗EphB4免疫グロブリン鎖をコードする核酸源として使用できる(例えば、Cabilly外,米国特許第4,816,567号;Winter,米国特許第5,225,539参照)。例えば、再構成された抗EphB4軽鎖又は重鎖を含むクローンを単離することができ(例えばPCRによって)、又は当該細胞株から単離されたmRNAからcDNAライブラリーを調製することができ、そして抗EphB4免疫グロブリン鎖をコードするcDNAクローンを単離することができる。このようにして、これらの抗体又はそれらの部分の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸を、様々な宿主細胞又は試験管内転写系において特定の免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの変異体(例えば、ヒト化免疫グロブリン)を生産させるための組換えDNA技術に従って得ることができ、また使用することができる。例えば、cDNAを含めて核酸又はヒト化免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン鎖のような変異体をコードするそれらの誘導体を、好適な原核細胞又は真核細胞ベクター(例えば、発現ベクター)に該核酸が1個以上の発現調節要素(例えば、ベクター内にあるもの又は宿主細胞のゲノムに組み込まれるもの)に機能的に結合するように入れ、そしてこれを適切な方法(例えば、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔法、感染)によって好適な宿主細胞に導入することができる。産生のために、宿主細胞を発現に好適な条件下(例えば、誘導因子の存在下で、好適な塩、成長因子、抗生物質、栄養剤などを加えた好適な培地)で維持することができ、それによってコードされたポリペプチドが産生される。所望ならば、コードされた蛋白質を回収及び/又は単離できる(例えば、宿主細胞又は培地から)。この産生方法は、遺伝子導入動物の宿主細胞内での発現を包含することが分かるであろう(例えば、WO92/03918,GenPharm International,1992年3月19日発行を参照されたい)。
【0046】
II.抗体の作製方法
ヒト化用抗原の調製並びにポリクローナル抗体及びモノクローナルの作製をここに説明した通りに又は別の好適な技術を使用して実行することができる。様々な方法が説明されている。例えば、Kohler外,Nature,256:495−497(1975)及びEur.J.Immunol.6:511−519(1976);Milstein外,Nature 266:550−552(1977);Koprowski外,米国特許第4,172,124号;Harlow,E.及びD.Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual(コールドスプリングハーバー研究所:ニューヨーク州コールドスプリングハーバー);Current Protocols In Molecular Biology,第2巻(補遺27,94年夏号),Ausubel,F.M.外著(John Wiley & Sons:ニューヨーク州ニューヨーク)第II章(1991)を参照されたい。一般に、ハイブリドーマは、好適な不死化細胞株(例えば、SP2/0のようなミエローマ細胞株)と抗体産生細胞とを融合させることによって作製できる。この抗体産生細胞、好ましくは脾臓又はリンパ節の抗体産生細胞は、対象の抗原で免疫化された動物から得られる。これらの融合細胞(ハイブリドーマ)は、選択培養条件を使用して単離でき、そして限界希釈法によってクローン化できる。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、好適なアッセイ法(例えば、ELISA)によって選択できる。
【0047】
必須の特異性の抗体を作製し又は単離する他の好適な方法を、例えば、ライブラリーから組換え抗体を選択する方法又はヒト抗体の完全なレパートリーを産生させることのできる遺伝子導入動物(例えばマウス)の免疫化に依存する方法を含めて使用できる。例えば、Jakobovits外,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90: 2551−2555(1993);Jakobovits外,Nature,362: 255−258(1993);Lonberg外,米国特許第5,545,806号; Surani外,米国特許第5,545,807号を参照されたい。
【0048】
例えば、EphB4ポリペプチド(例えば、EphB4ポリペプチド若しくは抗体応答を誘導することができるその抗原断片又はEphB4融合蛋白質)を使用してマウス、ハムスター又はウサギのような哺乳動物を免疫化させることができる。例えば、Harlow及びLane著,Antibodies:A Laboratory Manual (コールドスプリングハーバー出版:1988)を参照されたい。蛋白質又はペプチドに免疫原性を与えるための技術としては、キャリヤーへの結合又は斯界に周知の他の技術が挙げられる。EphB4ポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与できる。免疫化の進行は、血漿又は血清中の抗体力価の検出によって監視できる。標準的なELISA又は他の免疫学的検定法を抗原としての免疫原と共に使用して抗体のレベルを評価することができる。一具体例では、本発明の抗体は、EphB4蛋白質(例えば、配列番号2)又はそれらの断片の細胞外部分に特異的である。別の具体例では、本発明の抗体は、EphB4蛋白質の細胞内部分又は膜貫通部分に特異的である。
【0049】
EphB4ポリペプチドの抗原調製物によって動物を免疫化した後に、抗血清を得ることができ、そして所望ならば該血清からポリクローナル抗体を単離することができる。モノクローナル抗体を作製するためには、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫化動物から採取し、そして標準的な体細胞融合手順によってミエローマ細胞のような不死化細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を生じさせることができる。このような技術は斯界に周知であり、例えば、ハイブリドーマ技術(Kohler及びMilsteinによって開発された。Nature,256:495−497(1975))、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbar外,(1983)Immunology Today,4:72)及びヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole外,(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss社,pp.77−96)が挙げられる。ハイブリドーマ細胞は、EphB4ポリペプチドと特に反応性のある抗体の産生に対して免疫化学的にスクリーニングでき、そしてこのようなハイブリドーマ細胞を含む培地からモノクローナル抗体が単離できる。
【0050】
ある具体例では、本発明の抗体は、慣用技術を使用して断片化でき、そして該フラグメントは、全抗体について上記と同一の態様で実用のためにスクリーニングできる。例えば、F(ab)2断片は、抗体をペプシンで処理することによって生成できる。得られたF(ab)2をジスルフィド架橋を還元させるように処理してFab断片を生成させることができる。
【0051】
ある具体例では、本発明の抗体は、二重特異性で一本鎖のキメラ及びヒト化分子であって該抗体の少なくとも一つのCDR領域によって与えられるEphB4ポリペプチドに対する親和性を有するものを包含することをさらに意図する。また、一本鎖抗体の作製技術(米国特許第4,946,778号)も一本鎖抗体を作製するのに適し得る。また、遺伝子導入マウス又は他のほ乳類を含む他の生物を使用してヒト化抗体を発現させることもできる。これらの抗体を作製する方法は斯界に周知である。Cabilly外,米国特許第4,816,567号;Cabilly外,欧州特許第0,125,023号;Queen外,欧州特許第0,451,216号;Boss外,米国特許第4,816,397号;Boss外,欧州特許第0,120,694号;Neuberger,M.S.外,WO86/01533号;Neuberger,M.S.外,欧州特許第0,194,276号;Winter,米国特許第5,225,539号;winter,欧州特許第0,239,400号;Padlan,E.A.外,欧州特許出願公開第0,519,596Al号を参照されたい。また、Ladner外,米国特許第4,946,778号;Huston,米国特許第5,476,786号;及びBird,R.E.外,Science,242:423−426(1988)も参照されたい。
【0052】
このようなヒト化免疫グロブリンは、所望のヒト化鎖をコードする遺伝子(例えばcDNA)を調製するために、合成及び/又は組換え核酸を使用して作製できる。例えば、ヒト化可変領域をコードする核酸(例えばcDNA)配列は、予めヒト化された可変領域からのDNA鋳型のような、ヒトの鎖又はヒト化された鎖をコードするDNA配列を改変させるためにPCR突然変異誘発方法を使用して構築できる(例えば、Kamman,M.外,Nucl.Acids Res.,17:5404(1989);Sato,K.外,Cancer Research,53:851−856(1993);Daugherty,B.L.外,Nucleic Acids Res.,19(9):2471−2476(1991);並びにLewis,A.P.及びJ.S.Crowe,Gene,101:297−302(1991)を参照されたい。)。これらの又はその他の好適な方法を使用すると、変異体もまた容易に作製できる。一具体例では、クローン化された可変領域に突然変異を誘発させることができ、そして所望の特異性を有する変異体をコードする配列を選択することができる(例えば、ファージライブラリーから;Krebber外,米国特許第5,514,548号;1993年4月1日に国際公開されたHoogenboom外,WO93/06213号を参照されたい。)。
【0053】
ある具体例では、これらの抗体は、検出されることができる標識にさらに結合できる(例えば、該標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素又は酵素補助因子であることができる)。この活性部分は、放射性薬剤、例えば、鉄キレート、ガドリニウム若しくはマンガンの放射性キレート、酸素、窒素、鉄、炭素若しくはガリウムの陽電子放射体、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、68Ga、l23I、l25I、13lI、132I又は99Tcのような放射性重金属であることができる。このような部分に結合する結合剤を画像化試薬として使用することができ、しかもこれをヒトのような動物において診断に使用するのに有効な量で投与し、次いで該画像化試薬の局在化及び蓄積を検出する。画像化試薬の局在化及び蓄積は、ラジオシンチグラフィー、核磁気共鳴像法、コンピュータ断層撮影法又は陽電子放出断層撮影法によって検出できる。EphB4に向けられる抗体又は他の結合ポリペプチドを使用した免疫シンチグラフィーを使用して癌及び血管系を検出及び/又は診断することができる。例えば、99テクネチウム、11lインジウム、125沃素で標識されたEphB4マーカーに対するモノクローナル抗体は、このような画像化のために効果的に使用できる。当業者には明白であろうが、放射性同位元素の投与量は、放射性同位元素に依存する。当業者であれば、活性部分として使用される所定の放射性核種の比放射能及びエネルギーに基づき、画像化試薬の投与量を容易に処方できる。典型的には、画像化試薬の線量当たり0.1〜100ミリキューリー、好ましくは1〜10ミリキューリー、ほとんどの場合2〜5ミリキューリーが投与される。したがって、標的部分を放射性部分に結合してなる画像化試薬として有用な本発明に従う組成物は、0.1〜100ミリキューリー、いくつかの具体例では好ましくは1〜10ミリキューリー、いくつかの具体例では好ましくは2〜5ミリキューリー、いくつかの具体例ではより好ましくは1〜5ミリキューリーを含む。
【0054】
ある種の好ましい具体例では、本発明の抗体はモノクローナル抗体であり、そしてある具体例では、本発明は、新規な抗体を作製するための方法を利用可能にする。例えば、EphB4ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を作製するための方法は、マウスに、検出可能な免疫応答を刺激するのに有効な量のEphB4ポリペプチドを含む免疫原性組成物を投与し、該マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓由来の細胞)を得、該抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させて抗体産生ハイブリドーマを得、そして該抗体産生ハイブリドーマを検査して該EphB4ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定することを含むことができる。いったん得られたら、ハイブリドーマを細胞培養液中で、随意に該ハイブリドーマ由来細胞がEphB4ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件で増殖させることができる。該モノクローナル抗体は、該細胞培養液から精製できる。
【0055】
さらに、所望の抗体を同定するために抗体をスクリーニングするのに使用される技術は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、ある治療の目的に使用されるべき抗体は、好ましくは、特定の細胞型を標的とすることができるであろう。したがって、このタイプの抗体を得るためには、対象の抗原を発現する細胞に結合する抗体に対してスクリーニングすることが望ましいかもしれない(例えば、蛍光活性化細胞分類によって)。同様に、ある種の抗体を溶液状の抗原に結合させるために使用すべき場合には、溶液結合を試験することが望ましいかもしれない。特に望ましい抗体を同定するために抗体:抗原相互作用を試験するにあたっては、様々な異なる技術が利用できる。このような技術としては、ELISA、表面プラスモン共鳴結合アッセイ法(例えば、ビアコア結合アッセイ法、ビアコアAB社,スウェーデン王国ウプサラ)、サンドイッチアッセイ法(例えば、IGENインターナショナル社(米国メリーランド州ゲーサーズバーグ)の常磁性ビードシステム)、ウェスタンブロット法、免疫沈降アッセイ法及び免疫組織化学法が挙げられる。
【0056】
本発明の抗体は、学術研究、診断及び治療用途を含め、様々な用途に有用である。例えば、これらのものは、受容体又はその部分を同定及び/又は精製し、そして受容体の構造(例えば、コンフォメーション)及び機能を研究するために使用できる。
【0057】
III.診断用途
ある態様では、本発明の様々な抗体は、内皮細胞(例えば、静脈内皮細胞)上又はEphB4受容体遺伝子がトランスフェクトされた細胞上でのEphB4受容体の発現を検出し又は測定するために使用できる。したがって、これらのものは、診断又は研究の目的で、細胞分類及び画像化(例えば、フローサイトメトリー及び蛍光活性化細胞分類)のような用途にも有用性を有する。
【0058】
ある具体例では、抗体又は該抗体の抗原結合断片は、診断の目的のために標識されていてよく又は標識されていなくてもよい。典型的には、診断分析は、抗体がEphB4に結合することによって生ずる複合体の形成を検出することを伴う。これらの抗体は、直接標識できる。放射性核種、蛍光剤、酵素、酵素の基質、酵素補助因子、酵素阻害剤及びリガンド(例えば、ビオチン、ハプテン)を含め、様々な標識が使用できるが、これらに限定されない。多数の好適な免疫アッセイ法が当業者に知られている(例えば、米国特許第3,817,827号;同3,850,752号;同3,901,654号;及び同4,098,876号を参照されたい)。標識されない場合には、該抗体は、凝集アッセイ法のようなアッセイ法に使用できる。また、標識されていない抗体は、第1の抗体(例えば、抗イディオタイプ抗体又は非標識免疫グロブリンに特異的な他の抗体)又は他の好適な試薬(例えば、標識蛋白質A)と反応性のある標識抗体(例えば、二次抗体)のような抗体を検出するために使用できる別の(1種以上の)好適な試薬と併用することもできる。また、EphB4抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)、メチル若しくはエチル基又は炭水化物基のような化学基で誘導体化されることもできる。これらの基は、抗体の生物学的特性を改善させるため、例えば、血中半減期を増大させ又は組織結合性を増大させるために有用である得る。
【0059】
一具体例では、本発明の抗体は、この主題の抗体又は二次抗体が酵素に結合する酵素免測定法に使用できる。EphB4蛋白質を含む生物学的試料が主題の抗体と混合されると、該抗体とEphB4蛋白質の間で反応が生ずる。一具体例では、EphB4蛋白質を発現する細胞(例えば、内皮細胞)を含有する試料が主題の抗体と混合され、該抗体と、該抗体によって認識されるエピトープを含むEphB4蛋白質を保有する細胞との間で結合が生ずる。これらの結合細胞は、結合しなかった試薬から分離でき、そして該細胞に特異的に結合した抗体−酵素結合体の存在は、例えば、該試料と、該酵素が作用すると色又は又はその他の検出可能な変化を生じさせる酵素の基質とを接触させることによって決定できる。別の具体例では、主題の抗体は標識されていなくてもよく、そして該主題の抗体を認識する第2の標識抗体を付加することができる。
【0060】
ある態様では、生物学的試料中にEphB4蛋白質が存在することを検出する際に使用するためのキットも製造できる。このようなキットは、EphB4蛋白質又は該受容体の部分に結合する抗体並びに該抗体とEphB4又はその部分との間の複合体の存在を検出するのに好適な1種以上の補助試薬を包含するであろう。本発明の抗体組成物は、単独で又は他のエピトープに特異的な追加の抗体と共に、凍結乾燥された形態で与えることができる。標識されていてもよく又は標識されていなくてもよい抗体は、補助成分(例えば、トリス、燐酸塩及び炭酸塩のような緩衝液、安定剤、賦形剤、殺生物剤及び/又は不活性蛋白質、例えば、ウシ血清アルブミン)と共にキットに包含できる。例えば、該抗体は、補助成分との凍結乾燥混合物として準備でき、又は、この該補助成分は、使用者が組み合わせるために別々に準備できる。一般に、これらの補助材料は、活性な抗体の量を基にして約5重量%未満で存在し、そして通常は抗体濃度を基にして少なくとも約0.001重量%の総量で存在するであろう。モノクローナル抗体に結合できる二次抗体を使用する場合には、そのような抗体は、キット中、例えば、別個のガラス瓶又は容器中に与えられ得る。当該二次抗体は、存在する場合には、典型的に標識されており、しかも上記の抗体処方物と同様の態様で処方できる。
【0061】
同様に、本発明は、細胞又はその画分(例えば、膜画分)を含む組成物とEphB4又はその受容体の部分に結合する抗体とを該抗体がそれに結合するのに好適な条件下で接触させ、そして抗体の結合を監視する、ある種の細胞によってEphB4又はその受容体の部分の発現を検出し及び/又は定量する方法に関するものでもある。抗体とEphB4又はその部分との間の複合体の形成を示す抗体の検出は、受容体の存在を表す。該細胞に対する抗体の結合は、実施例に記載したような標準的な方法によって決定できる。該方法を使用してある種の個体由来の細胞上でのEphB4の発現を検出することができる。随意に、内皮細胞の表面上でのEphB4の定量的発現は、例えば、フローサイトメトリーによって評価でき、そしてその染色強度は、病気の感受性、プログレッション及び危険性と相関し得る。
【0062】
また、本発明は、ある種の疾患に対する哺乳動物の感受性を検出する方法に関するものでもある。例えば、この方法は、哺乳動物において細胞上に存在するEphB4の量及び/又はEphB4陽性細胞の数に基づき進行する疾患に対する哺乳動物の感受性を検出するために使用できる。一具体例では、本発明は、腫瘍に対する哺乳動物の感受性を検出する方法に関する。この具体例では、試験されるべき試料であって正常の個体内でEphB4を発現する細胞を含むものとEphB4又はその部分に結合する抗体とを、該抗体が該試料に結合するのに好適な条件下で接触させる。抗体の結合及び/又は結合の量が検出され、これが腫瘍に対する該個体の感受性を示すが、この場合に、より高レベルの受容体が腫瘍に対する該固体の感受性の増大と相関する。出願人及び他のグループは、EphB4の発現が腫瘍の成長及びプログレッションと相関があることを見いだした。また、本発明の抗体を使用してある種の個体におけるEphB4発現と血管形成関連疾患のプログレッションとの相関をさらに明らかにすることもできる。
【0063】
IV.治療への応用
ある具体例では、本発明は、血管形成を阻害しかつ血管形成関連の病気(又は疾患)を治療するための組成物及び方法を提供する。他の具体例では、本発明は、腫瘍成長を阻害し又は低減させる方法及び癌に罹患した個体を治療する方法を提供する。これらの方法は、該個体に上記のような1種以上の抗体の治療上有効な量を投与することを伴う。これらの方法は、特に、動物、より具体的にはヒトの治療及び予防的治療を目的とする。
【0064】
ここに記載するときに、血管形成関連疾患としては、充実性腫瘍、白血病のような血液から生じた腫瘍及び腫瘍転移を含めて血管形成依存性の癌;良性腫瘍、例えば、血管種、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ及び化膿性肉芽種;免疫及び非免疫炎症のような炎症性疾患;慢性関節リウマチ及び乾癬;眼球血管形成疾患、例えば、糖尿病性網膜症、未熟網膜症、黄斑変性症、角膜移植片拒絶反応、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシス;オスラー・ウェバー症候群;心筋血管新生;プラーク新血管形成;毛細血管拡張症;血友病患者の関節;血管線維腫;創傷肉芽形成及び創傷治癒;毛細血管拡張性乾癬強皮症、化膿性肉芽腫、冠状動脈側副循環、虚血肢血管形成、角膜疾患、ルベオーシス、関節炎、糖尿病性新血管形成、骨折、血管形成、造血が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
また、本発明の方法及び組成物は、血管形成非依存性の癌(腫瘍)を治療するためにも有用であると考えられる。ここで使用するときに、用語「血管形成非依存性の癌」とは、腫瘍組織において新血管形成が全く又はほとんど存在しない癌(腫瘍)をいう。
【0066】
特に、本発明の抗体は、結腸癌、乳癌、中皮腫、前立腺癌、膀胱癌、頭部及び頸部の扁平上皮癌(HNSCC)、カポジ肉腫及び白血病(これらに限定されない)を含め、癌(腫瘍)を治療し又は予防するのに有用である。
【0067】
このような方法のある種の具体例では、1種以上の抗体は、一緒に(同時に)又は異なるときに(連続的に)投与できる。さらに、抗体は、癌を治療するための又は血管形成を阻害するための別の薬剤と共に投与できる。特定の具体例では、本発明の主題の抗体は、他の抗体療法(モノクローナル又はポリクローナル)と共に使用することもできる。
【0068】
ある具体例では、本発明の主題の抗体は、単独で使用できる。或いは、主題の抗体は、増殖性疾患(例えば、腫瘍)の治療又は予防に向けられる他の慣用の抗癌治療手段と併用できる。例えば、このような方法は、癌の予防、術後の癌の再発及び転移の予防において使用でき、また他の慣用の癌治療のアジュバントとして使用できる。本発明は、慣用の癌治療(例えば、化学療法、放射線治療、光線療法、免疫療法及び外科処置)の有効性が本発明の1種以上のEphB4抗体の使用を通して向上できると認められる。
【0069】
多数の従来の化合物が抗腫瘍活性を有することが示されている。これらの化合物は、充実性腫瘍を収縮させ、転移及びさらには成長を妨害し、又は白血病若しくは骨髄悪性腫瘍における悪性細胞の数を減らすための化学療法において治療剤として使用されてきた。化学療法は、様々なタイプの悪性腫瘍を治療するのには有効であったが、多くの抗腫瘍化合物は、望ましくない副作用を誘発する。2種の異なる治療を組み合わせると、これらの治療は、相乗的に働き、しかもこれらの治療のそれぞれの投与量の減少を可能にし、それによって、より高い投与量でのそれぞれの化合物によってもたらされる有害な副作用を低減させることが示された。他の例では、治療に耐性のある悪性腫瘍は、2種以上の異なる治療の併用療法に反応し得る。
【0070】
本発明の主題のEphB4抗体を別の慣用の抗腫瘍剤と共に付随的に又は連続的に投与すると、このような抗体は、抗腫瘍剤の治療効果を向上させ又はこのような抗腫瘍剤に対する細胞耐性を克服することが示される。これは、抗腫瘍剤の投与量の減少を可能にし、それによって望ましくない副作用を低減させ、又は耐性細胞における抗腫瘍剤の有効性を取り戻すことを可能にする。
【0071】
組み合わせ抗腫瘍療法のために使用できる医薬品としては、単なる例示にすぎないが、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルチシン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドクソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エクセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオルウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、ミトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンが挙げられる。
【0072】
これらの化学療法用抗腫瘍化合物は、それらの作用機構によって、例えば次の群:代謝拮抗物質/抗癌剤、例えば、ピリミジンアナログ(5−フルオルウラシル、フロキシウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン及びシタラビン)及びプリンアナログ、葉酸拮抗剤及び関連する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2−クロルデオキシアデノシン(クラドリビン));ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)のような天然物質、微小管破壊剤、例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン及びナベルビン、epidipodophyllotoxin(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラシクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドクソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メルクロレフタミン、ミトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテレ、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミド及びエトポシド(VP16)を含めて抗増殖剤/抗分裂剤;抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラシクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びミトマイシン;酵素(L−アスパラギンを全身的に代謝し、かつ、アスパラギンを合成する能力を有しない細胞を喪失させるL−アスパラギナーゼ);抗血小板剤;抗増殖性/抗分裂性アルキル化剤、例えば、窒素マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及びアナログ、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル−ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)及びアナログ、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(DTIC);抗増殖性/抗分裂性代謝拮抗剤、例えば、葉酸アナログ(メトトレキセート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモンアナログ(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)及びアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩及び他のトロンビン阻害剤);線維素溶解剤(例えば、組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗移動剤;分泌抑制剤(ブレベルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノレートモフェチル;抗血管形成化合物(TNP−470、ゲニステイン)及び成長因子阻害剤(血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤、繊維芽細胞成長因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断剤;一酸化窒素ドナー;アンチセンスヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤及び分化誘導物質(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン及びミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチソン、デキサメタソン、ヒドロコルチソン、メチルプレドニソロン、プレドニソン及びプレニソロン);成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘導物質及びカスパーゼ活性化剤;並びにクロマチン破壊剤に分類される。
【0073】
ある具体例では、組み合わせ抗血管形成療法に使用できる医薬品としては、(1)bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)のような「血管新生促進分子」の放出阻害剤、(2)抗βbFGF抗体のような血管新生促進分子の中和剤及び(3)コラゲナーゼ阻害剤、基底膜回転阻害剤、アンギオスタチンステロイド、真菌由来血管形成阻害剤、血小板因子4、トロンボスポンジン、関節炎薬、例えば、D−ペニシラミン及びチオリンゴ酸金、ビタミンD3アナログ、α−インターフェロンなどを含め、血管形成刺激に応答する内皮細胞の阻害剤が挙げられる。さらに提案されている血管形成の阻害剤については、Blood 外,Bioch.Biophys.Acta.,1032:89−118(1990),Moses外,Science,248:1408−1410(1990),Ingber外,Lab.Invest.,59:44−51(1988)並びに米国特許第5,092,885号、同5,112,946号、同5,192,744号、同5,202,352号及び同6,573,256号を参照されたい。さらに、血管形成を阻害するために使用できる様々な化合物、例えば、VEFG仲介血管形成経路を遮断するペプチド又は薬剤、エンドスタチン蛋白質又は誘導体、アンギオスタチンのリシン結合断片、メラニン又はメラニン促進化合物、プラスミノゲン断片(例えば、プラスミノゲンのクリングル1〜3)、トロポニンサブユニット、ビトロネクチンαvβ3のアンタゴニスト、サポシンBから誘導されるペプチド、抗生物質又はアナログ(例えば、テトラサイクリン又はネオマイシン)、ジエノゲスト含有組成物、ペプチドに結合するMetAP−2抑制コアを含む化合物、化合物EM−138、カルコン及びそのアナログ並びにNAALADアーゼ阻害剤が存在する。例えば、米国特許第6,395,718号、同6,462,075号、同6,465,431号、同6,475,784号、同6,482,802号、同6,482,810号、同6,500,431号、同6,500,924号、同6,518,298号、同6,521,439号、同6,525,019号、同6,538,103号、同6,544,758号、同6,544,947号、同6,548,477号、同6,559,126号及び同6,569,845号を参照されたい。
【0074】
この組合せ療法の性質によっては、他の治療を施している間又はその後、本発明の抗体の投与を続行できる。これらの抗体の投与は、単回投与又は複数回投与で行うことができる。ある場合には、抗体の投与は慣用の治療前の少なくとも数日で開始されるが、他の場合には、投与は慣用の治療の実施直前又は実施時に開始される。
【0075】
V.医薬組成物及び投与形態
ある具体例では、本発明の主題の抗体は、薬剤として許容できるキャリヤーと共に処方される。このような抗体は、単独で又は医薬処方物(組成物)の成分として投与できる。これらの化合物は、ヒト用医薬又は動物薬に使用するにあたって任意の簡便な方法で投与するために処方できる。また、湿潤剤、乳化剤及び滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色料、離型剤、被覆剤、甘味料、香味剤及び香料、保存料及び酸化防止剤も該組成物中に存在し得る。
【0076】
主題の抗体の処方物としては、経口投与、食餌投与、局部投与、非経口(例えば、静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、皮下注射)投与、吸入(例えば、気管支内吸入、鼻腔内吸入又は経口吸入、鼻腔内点滴)投与、直腸投与及び/又は膣内投与に好適なものが挙げられる。また、他の好適な投与方法としては、充電式又は生体分解性装置及び徐放性高分子装置も挙げることができる。また、本発明の医薬組成物は、他の薬剤(同一の処方物又は別個の処方物のいずれか)との組合せ療法の一部分としても投与できる。
【0077】
これらの処方物は、単位剤形で都合よく与えられ、かつ、調剤の技術分野に周知の任意の方法によって調製できる。単回剤形を作製するためにキャリヤー材料と混合できる活性成分の量は、治療される宿主、特定の投与形態に応じて変化するであろう。単回剤形を作製するためにキャリヤー材料と混合できる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じさせる化合物の量であろう。
【0078】
ある具体例では、これらの処方物又は組成物を製造する方法は、別のタイプの抗腫瘍剤又は抗血管新生剤と、キャリヤーと、随意に1種以上の副成分とを混合させることを包含する。一般に、これらの処方物は、液体キャリヤー若しくは微粉化固体キャリヤー又はその両方により製造でき、次いで所望ならば製品を成形できる。
【0079】
経口投与用の処方物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(着香された主成分、通常はスクロース及びアラビアガム又はトラガカントを使用する)、粉剤、顆粒剤の形態で、又は水溶液若しくは非水性溶液若しくは水性懸濁液若しくは非水性懸濁液として、又は水中油型若しくは油中水型エマルジョンとして、又はエリキシル剤若しくはシロップ剤として、又はトローチ剤(ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアガムのような不活性主成分を使用する)として、及び/又は洗口剤などとしての形態にあることができるが、ここで、それぞれが活性成分として所定量の1種以上の主題の抗体を含有するものとする。
【0080】
経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉剤、顆粒剤など)では、本発明の1種以上の抗体は、クエン酸ナトリウム又は燐酸二カルシウムのような1種以上の薬剤として許容できるキャリヤー及び/又は次のうちの任意のもの:(1)澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニット及び/又は珪酸のような充填剤又は増量剤、(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアラビアガムのような結合剤、(3)グリセリンのような湿潤剤、(4)寒天−寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉、アルギン酸、ある種の珪酸塩及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤、(5)パラフィンのような溶解遅延剤、(6)第四アンモニウム化合物のような吸収促進剤、(7)例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤、(8)カオリン及びベントナイトクレーのような吸湿剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物のような滑剤、並びに(10)着色剤と混合できる。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合には、該医薬組成物は、緩衝剤も含むことができる。また、同様のタイプの固体組成物を、ラクトース、すなわち乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として使用することもできる。
【0081】
経口投与用の液体剤形としては、薬剤として許容できるエマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。活性成分のほかに、該液体剤形は、斯界において一般的に使用されている不活性希釈剤、例えば、水又はその他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、オイル(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタン脂肪酸エステル並びにこれらの混合物を含有することができる。不活性希釈剤のほかに、該経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、香味剤、着色料、香料及び保存料のようなアジュバントも含むことができる。
【0082】
懸濁液は、活性化合物のほかに、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビット及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天及びトラガカント並びにそれらの混合物のような懸濁剤を含有することができる。
【0083】
本発明の方法は、皮膚又は子宮頚部若しくは膣上にあるような粘膜のいずれかに局所的に投与できる。これは、副作用を誘発させる最も低い確率で、腫瘍への直接送達にとって最大の機会を与える。この局所処方物は、皮膚又は角質層浸透向上剤として有効であることが知られている様々な薬剤のうち1種以上をさらに含むことができる。これらの例は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ポリプロピレングリコール、メチル又はイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド及びアゾンである。美容上許容できる処方物を作るために、追加の薬剤をさらに含めることができる。これらの例は、脂肪、ワックス、オイル、染料、フレグランス、防腐剤、安定剤及び界面活性剤である。また、斯界に知られているような角質溶解剤も含めることができる。例は、サリチル酸及び硫黄である。
【0084】
局所又は経皮投与用の剤形としては、粉剤、スプレー剤、軟膏、泥膏、乳剤性軟膏、ローション剤、ゲル剤、溶剤、パッチ及び吸入剤が挙げられる。主題の抗体は、無菌条件下で薬剤として許容できるキャリヤー及び必要かもしれない任意の防腐剤、緩衝剤又は推進剤と混合できる。軟膏、泥膏、乳剤性軟膏及びゲル剤は、抗体のほかに、動物性及び植物性の脂肪、オイル、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルク及び酸化亜鉛又はそれらの混合物のような賦形剤を含有することができる。
【0085】
粉剤及びスプレー剤は、抗体のほかに、ラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム及びポリアミド粉末又はこれらの物質の混合物のような賦形剤を含有することができる。スプレー剤は、クロルフルオル炭化水素及び揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタン及びプロパンのような従来の促進剤をさらに含有することができる。
【0086】
非経口投与に好適な医薬組成物は、1種以上の抗体を1種以上の薬剤として許容できる滅菌等張水溶液若しくは滅菌等張非水溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョン又は使用直前に滅菌注射用溶液若しくは分散液に再構成できる滅菌粉末と共に含むことができ、ここで、これらのものは、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、対象とする賦形剤又は懸濁剤若しくは増粘剤の溶質であって該処方物を血液と等張にするものを含むことができる。本発明の医薬組成物に使用できる好適な水性及び非水性キャリヤーの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びそれらの好適な混合物、オリーブ油のような植物性油及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。例えば、レシチンのような被覆用物質を使用すること、分散体の場合には必要な粒度を維持すること及び界面活性剤を使用することによって適切な流動性を維持することができる。
【0087】
また、これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のようなアジュバントも含有することができる。微生物の活動の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロルブタノール、フェノールソルビン酸などの包含によって保証できる。また、糖質、塩化ナトリウムなどのような等張剤を組成物に包含させることが望ましいかもしれない。さらに、注射用製剤の持続的吸収を、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅延させる薬剤の包含によってもたらすことができる。
【0088】
注射用のデポー製剤は、ポリラクチド−ポリグルコリドのような生分解性重合体中に1種以上の抗体の微小被包化マトリックスを形成させることによって作られる。薬剤対重合体の比率及び使用される特定の重合体の性質によって、薬物の放出速度が制御できる。他の生分解性重合体の例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。また、注射用デポー製剤は、生体組織と適合性のあるリポソーム又はミクロエマルジョン中に薬剤を閉じ込めることによっても製造される。
【0089】
膣内又は直腸内投与用の処方物は、座薬として与えることができるが、これは、本発明の1種以上の化合物と、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、座剤ワックス又はサリチレートを含む1種以上の好適な刺激性のない賦形剤又はキャリヤーとを混合させることによって調製でき、しかもこのものは室温では固体である一方で体温では液体であるため、直腸又は膣腔内で溶け、そして活性化合物を放出するであろう。
【実施例】
【0090】
実施例
本発明を一般的に説明してきたが、次の実施例を参照することによってさらに容易に理解されるであろう。この実施例は、単に本発明のある種の態様及び具体例を例示する目的のために含めており、本発明を限定することを意図するものではない。
【0091】
例1.腫瘍細胞成長に及ぼすエフリンB2及びEphB4ポリクローナル抗体の影響
2種のEphB4ポリクローナル抗体(H−200及びN−19)をサンタクルーズバイオテック社(米国カリフォルニア州サンタクルーズ)から購入した。H−200抗体(sc−5536ともいう)は、ヒトEphB4の細胞外ドメイン内にアミノ酸201〜400に相当するエピトープ領域を有するが、N−19抗体(sc−7285ともいう)は、ヒトEphB4のN末端細胞外ドメイン内にエピトープ領域を有する。さらに、エフリンB2ポリクローナル抗体をR&Dシステムズ社(ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。
3種の中皮腫細胞株(H28、H2052及びH2373)をATCC社(バージニア州マナッサス)から得、そしてこれらを使用してこれらのEphB4及びエフリンB2ポリクローナル抗体の抗腫瘍活性を試験した。これらの細胞(約5000細胞/ウェル)を48ウェルプレート中で平板培養し、そして次の日に異なる濃度の各抗体で処理した。細胞生死判別アッセイ法(MTT)を4日目に行った。腫瘍細胞成長に及ぼすエフリンB2及びEphB4ポリクローナル抗体の影響を図6に示した。
【0092】
例2.血管形成及び腫瘍成長に及ぼすEphB4モノクローナル抗体の影響
A.EphB4抗体の生成及び機能分析
抗EphB4モノクローナル抗体をマウスにおいてEphB4の細胞外ドメイン(ECD)に対して産生させた。EphB4ECD(例えば、図5参照)を発現ベクター(例えば、pGEX)にクローン化させてEphB4ECD融合蛋白質(例えば、GST−ECDを生成させた。E. coli BL21株中で発現するEphB4ECD融合蛋白質を親和性クロマトグラフィーによって精製した。GST融合蛋白質の場合には、そのGSTドメインをトロンビンによって開裂させた。モノクローナル抗体をハイブリドーマの上澄みから蛋白質Aクロマトグラフィーによって精製した。
これらのモノクローナル抗体は、EphB4抗体第1、23、35、47、57、79、85L、85H、91、98、121、131及び138号を包含する(図5)。抗体マッピング研究から、これらの抗体のそれぞれについてのエピトープドメインが示された(図5)。それぞれのEphB4抗体の結合親和性を分析した。これを図7に示している。
エフリンB2のようなこれらの抗体の結合相手と競合する能力、EphB4チロシン燐酸化を活性化させる能力、HUAECにおける試験管内管形成を阻害する能力、マトリゲルプラグアッセイ法による生体内血管形成を阻害する能力、SCC15腫瘍細胞におけるアポトーシス又はネクローシスを刺激する能力及びSCC15異種移植片成長を阻害する能力を含め、これらの抗体の機能活性を分析するためにさらなる実験を実施した。これらの結果を以下の表1にまとめる。
【0093】
【表1】

【0094】
血管形成に及ぼすこれらの抗体の影響をマウス角膜マイクロポケットアッセイ法でさらに分析した。例えば、EphB4抗体番号第138号は、図8に示すように血管形成を有意に阻害した。
表1にまとめたEphB4抗体の抗腫瘍活性を例示するために、代表的な実験を図9に示している。BaIbCヌードマウスに2.5×106個の生存能力のある腫瘍細胞(SCC15:頭部及び頸部の扁平上皮細胞癌株)を皮下注射した。nu/nuマウスにおいてマトリゲル及び成長因子と予備混合された2.5〜5×106個の細胞を注射することによって腫瘍を開始させ、そして抗体を皮下注射して腫瘍異種移植を開始させた。注射後14日目にマウスを切開した。SCC15は頭部及び頸部の扁平上皮細胞癌株であり、B16はメラノーマ細胞株であり、MCF−7は乳癌株である。これらの処置に対する腫瘍の応答を、PBS注射を受けたコントロールの処置済みマウスと比較した。動物を腫瘍成長について毎日観察し、そして皮下腫瘍を、2日毎にキャリパーを使用して測定した。抗体第1及び23号は、特にいかなる追加の成長因子を添加することなしに、コントロールと比較してSCC15腫瘍寸法の有意な退行を示したが、これは、EphB4抗体がSCC15細胞の生体内腫瘍成長を阻害したことを示している。
表1にまとめたEphB4抗体の抗腫瘍活性及び抗血管形成活性を例示するために、図10に別の代表的な実験を示す。血管形成をCD31の免疫組織化学分析によって評価した。処置を受けたマウス及び処置を受けなかったマウスからの腫瘍組織切片をCD31に対して染色した。アポトーシスを免疫組織化学的TUNNELによって評価し、そして増殖をBrdUアッセイ法によって評価した。外科切除後に、腫瘍を直ちに2mmの連続切片にスライスし、そして標準的な手順を使用してパラフィンに包埋した。パラフィンに包埋された組織を5μmの切片にし、このワックスを取り除き、そしてこの組織を再水和させた。この再水和された組織を抗原抽出溶液中でマイクロ波照射した。スライドをPBSですすぎ、そしてTUNNEL反応混合物(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ及びフルオレセイン標識ヌクレオチド溶液)及びBrdUを、完全に遮光された湿度室内で添加した。次いで、このTUNNEL及びBrdU反応混合物を除去し、スライドをすすぎ、そしてホースラディッシュペルオキシダーゼが結合した抗フルオレセイン抗体を添加した。インキュベーション及びリンス後、3,3’−ジアミノベンジジンを添加した。また、形態を視覚化するために、マッソントリクロームとヘマトキシリンとエオシンとを使用してスライドを染色した。マッソントリクロームは、ネクローシス及び線維症を視覚化することを可能にする。腫瘍は、腫瘍/皮膚、筋肉の境界から血液の支援を受ける。腫瘍が成長すると、内部領域は、栄養が枯渇する。これは、好ましくは腫瘍中央部でのネクローシス(細胞死)に至らしめる。細胞死の後に、(腫瘍)細胞は、線維芽組織による置換を受ける。スライドを20倍率下で視覚化し、デジタル画像を取得した。投与されたそれぞれの抗体によりSCC腫瘍について異なる形態が得られた。抗体第1号は、ネクローシス及び線維症の増加を示したが、アポトーシスの増加は示さなかった。抗体第23号は、アポトーシス、ネクローシス及び線維症の増加及び血管浸潤の減少を示した。抗体第35号は、ネクローシス及び線維症の増加と、アポトーシスの僅かな増加と、血管浸潤の減少を示した。抗体第79号は、アポトーシス、ネクローシス及び線維症の大きな増加を示した。抗体第91号は、アポトーシスにおいていかなる変化も示さなかったが、増殖の増加を示した。そして、抗体第138号は、アポトーシス、ネクローシス及び線維症の増加と、増殖及び血管浸潤の減少を示した。コントロールのPBSで処理された腫瘍は、大きな腫瘍密度及び強い血管形成応答を示した。EphB4抗体で処理された腫瘍は、腫瘍細胞密度の減少及び生存能力のある細胞の領域内における腫瘍血管形成の顕著な阻害並びに腫瘍のネクローシス及びアポトーシスを示した。これらの結果は、EphB4抗体がSCC15頭部及び頚部癌腫瘍型においてアポトーシス、ネクローシス及び減少した血管形成を生じさせたことを示している。
表1にまとめたEphB4抗体の抗腫瘍活性を例示するために、図11にさらなる代表的な実験を示す。EphB4モノクローナル抗体又はコントロールとして等容量のPBSによる隔日処理を腫瘍の定着後4日目に開始し、そして14日にわたって続行した。全身投与を有意な相違なくIP又はSCのいずれかで行った。これらの実験の全てを二重盲検方式で実施して研究者の偏りを排除した。2週間の処理期間の終了時にマウスを犠牲にした。免疫組織化学検査のために、死後直ちに腫瘍を採取し、固定し、そして処理した。体重kg当たり40mgのEphB4抗体が投与された。EphB4抗体による処理は、コントロール処理マウスと比較してヒトSCC腫瘍成長を有意に阻害した(p<0.05)。EphB4抗体による処理は、コントロール処理マウスと比較して腫瘍重量を有意に抑制した(P<0.05)。これらの結果は、異種移植物への抗体の全身投与がSCC15異種移植物における腫瘍の緩解に至らしめることを示している。
【0095】
例3.材料及び方法
(1)免疫組織化学
ホルマリン固定された組織切片を脱蝋し、そして−70℃で10分間10%のヤギ血清と共にインキュベートし、そしてEphB4モノクローナル抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。アイソタイプ特異的ラビットIgGをコントロールとして使用した。これらの受容体に対する免疫反応性を、ベクターラボラトリーズ社製のアビジン−ビオチンキットを使用して明らかにした。ペルオキシダーゼ活性をジアミノベンジジン(シグマ社)細胞化学反応によって明らかにした。次いで、これらのスライドを0.12%のメチレンブルー又はH&Eで対比染色した。凍結切片用に、OCT包埋組織を5μmの切片にし、そして燐酸緩衝4%パラホルムアルデヒド中で固定した。切片をPBSで3×5分間洗浄し、そして内因性ペルオキシダーゼを0.3%H22のPBS溶液中で10分間室温でインキュベートすることによってブロックした。切片をEph4(C−16)抗体(1:50)と共に1時間にわたって室温でインキュベートし、その後PBSで3回洗浄し、そしてロバ抗ヤギ二次抗体(サンタクルーズバイオテック社)と共に1時間にわたって室温でインキュベートした。PBSで3回洗浄後、DAB基質溶液(ベクターラボラトリーズ社,カリフォルニア州バーリンゲーム)中で10分間室温でインキュベートすることによってペルオキシダーゼ活性を局在化させた。切片をヘマトキシリンで20秒間対比染色し、脱水し、そして固定した。染色についてのネガティブコントロールは、一次抗体を正常のヤギ血清と置き換えたものであった。
【0096】
(2)ウェスタンブロット法
全細胞溶解物を、特に示さない限り、プロテアーゼ阻害剤カクテル(ピアス社,イリノイ州ロックフォード)を加えた細胞溶解緩衝液(ジーンハンター社,テネシー州Basgvukke)を使用して調製した。全蛋白質を、DC試薬系(バイオラド社,カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して決定した。典型的には、20μgの全細胞溶解物を4〜20%のトリス−グリシン勾配ゲルで流した。これらの試料をPVDF膜に電気移行させ、そして非特異的な結合を、5%の脱脂乳を含有するTBST緩衝液(0.5mMのTris−HCl,45mMのNaCl,0.05%のTween−20,pH7.4)でブロックした。膜を、まず一次抗体で一晩プローブし、Restore(商標)ウェスタンブロット用ストリッピング緩衝液(ピアス社,イリノイ州ロックフォード)でストリップし、そしてβ−アクチンで再プローブして蛋白質の等量のローディング及び移動を確認した。シグナルを、スーパーシグナルWest Femto Maximum Sensitivity基質(ピアス社)を使用して検出した。
【0097】
(3)チロシンキナーゼ燐酸化分析
60mm皿中で増殖させた細胞を血清飢餓培養(1%のFBS添加RPMI1640,24時間)し又は通常の条件(10%のFBS)で培養し、次いで、1μg/mLのマウスエフリンB2/Fcで10分間処理して(又は処理せず)EphB4受容体を活性化させた。透明な細胞溶解液をEphB4モノクローナル抗体と共に一晩4℃でインキュベートした。抗原−抗体複合体を100μLの蛋白質G−セファロースの20mM燐酸ナトリウム溶液(pH7.0)の添加と共に一晩4℃でのインキュベーションによって免疫沈降させた。免疫沈降物を1:1000希釈のホスホチロシン(pTyr)特異的抗体(アップステート社,クローン4G10)によりウェスタンブロットし、その後1:5000希釈の蛋白質G−HRP(バイオラド社)と共にインキュベートすることによって分析した。免疫沈降効率を監視するために、複写膜をEphB4特異的モノクローナル抗体でプローブした。
【0098】
(4)細胞培養
正常HUVECをキャンブレックス社(バイオホイッテカー)から得、そして0.1mg/mLの内皮成長補助因子(ウシ脳からの粗抽出物)、ペニシリン(50U/mL)、ストレプトマイシン(50U/mL)、2mmol/Lのグルタミン及び0.1mg/mLのヘパリンナトリウムを添加したEBM2培地中で保持した。細胞のアリコートを継代1〜3の間で冷凍状態で保存した。全ての実験について、HUVECを継代4以下で使用し、そして合流皿から採取した。
NCI H28及びNCI H2373中皮腫細胞株をATCC(バージニア州マナッサス)から得た。細胞を10%の加熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS;ライフテクノロジーズ社,ミッドランド州ゲーサーズバーグ)及び抗生物質が添加されたRPMI1640培地中で保持した。初代細胞を中皮腫患者の胸水から得た。
【0099】
(5)内皮細胞管形成アッセイ法
マトリゲル(10mg/mLの60μL;コラボラティブラボ,カタログ番号35423)を氷冷96ウェルプレートのそれぞれのウェルに置いた。このプレートを室温で15分間置き、次いで37℃で30分間インキュベートしてマトリゲルを重合させた。平均時間内に、ヒト臍帯静脈内皮細胞を2×105細胞/mLの濃度のEGM−2(クロネティック社,カタログ番号CC3162)中で調製した。細胞(500μL)と試験EphB4抗体を混合し、この懸濁液の200μLを重合マトリゲル上に重複して置いた。24時間のインキュベーション後、それぞれの濃度について3枚の写真を、Bioquant画像分析装置を使用して撮影した。蛋白質添加効果(IC50)を、形成された索状組織の長さ及び結合部の数を測定することによって未処理コントロールと比較して評価した。
【0100】
(6)細胞移動アッセイ法
HUVECのVEGFへの化学走性を、改良型モイデンチャンバーと、24ウェルプレート中のトランスウェル膜フィルター挿入物と、6.5mmの直径、8μmの細孔寸法、10μLの厚さのマトリゲル被覆ポリカーボネート膜(BDバイオサイエンセズ)とを使用して評価した。HUVEC(2×105細胞/mL)の200μLのEBM細胞懸濁液を上部チャンバー中に接種し、そして試験EphB4抗体を刺激因子(VEGF又はbFGF)と同時に該チャンバーの下部区画に添加し、そして100nM〜1μMの試験化合物による(又はそれなしの)10〜20ng/mLのVEGFに応答したポリカーボネートフィルターにわたるそれらの移動を調査した。37℃で4〜24時間のインキュベーション後に、該フィルターの上部表面を綿棒で解体し、フィルターを固定し、そしてディフクイックで染色した。200×倍率での10の無作為の領域をカウントし、そしてそれらの結果を領域当たりの平均#として表した。ネガティブ非刺激コントロール値を刺激コントロール及び蛋白質処理試料値から引き、そしてデータを平均移動細胞±S.Dとしてプロットした。IC50をこのプロットしたデータから算出した。
【0101】
(7)成長阻害アッセイ法
HUVEC(1.5×103個の細胞)を96ウェルプレートにおいて100μLのEBM−2(クローンティック社,カタログ番号CC3162)中で平板培養した。24時間(0日)後に、この試験EphB4抗体をEBM−2培地における所望の濃度でそれぞれのウェルに添加した。0日目に、一つのプレートを0.5%のクリスタルバイオレットの20%メタノール溶液で10分間にわたり染色し、水ですすぎ、そして風乾した。残りのプレートを37℃で72時間インキュベートした。72時間後に、プレートを0.5%のクリスタルバイオレットの20%エタノール溶液で染色し、水ですすぎ、そして風乾した。染色物をエタノール:0.1Mクエン酸ナトリウムの1:1溶液で溶離させ(0日のプレートを含む)、そして吸光度をELISA読み取り装置(ダイナテックラボラトリーズ社)を使用して540nmで測定した。0日の吸光度を72時間のプレートから引き、そしてデータをコントロールの増殖(賦形剤処理した細胞)のパーセンテージとしてプロットした。IC50値をこのプロットしたデータから算出した。
【0102】
(8)ネズミマトリゲルプラグ血管形成アッセイ法
生体内での血管形成は、試験試料を含有するマトリゲルプラグへの皮下組織由来の血管の成長として、マウスにおいて評価した。マトリゲルは、周囲の組織への持続放出及び長期暴露を可能にするように該因子を閉じこめる固形ゲルを体温で迅速に形成する。4℃で液状のマトリゲル(8.13mg/mL,0.5mL)を内皮細胞成長補助因子(ECGS)、試験EphB4抗体+ECGS又はマトリゲル+賦形剤単独(0.25%のBSAを含有するPBS)と混合させた。マトリゲル(0.5mL)を雌のnu/nuマウス(生後6週間)の腹部皮下組織に腹膜の中央線に沿って注入した。それぞれの群には3匹のマウスが存在した。これらの動物を制度上の及びNIHの指針に従って管理した。6日目に、マウスを犠牲にし、そしてプラグを回収し、組織学的分析のために処理した。典型的には、覆っている皮膚を取り除き、そしてゲルを、サポートのために腹膜の内側を保持することによって摘出し、10%の緩衝化ホルマリンPBS溶液中で固定し、そしてパラフィンに包埋した。3μmの切片を切断し、そしてH&E又はマッソン三色染色法により染色し、光学顕微鏡下で試験した。
【0103】
(9)マウス角膜マイクロポケットアッセイ法
マウス角膜マイクロポケットアッセイ法をKenyon外,1996に詳述されたものに従って実行した。簡単に言えば、90ngのbFGF(R&D)又は180ngのVEGF(R&Dシステムズ社,米国ミネソタ州ミネアポリス)のいずれかと40μgのスクロース硫酸アルミニウム(シグマ)とを含有するヒドロンペレット[ポリヒドロキシエチルメタクリレート(ポリHEMA),インターフェロンサイエンセズ社,米国ニュージャージー州ニューブランズウィック]を調製した。手術用顕微鏡を使用して、間質直線角膜切開を、麻酔をかけられた動物における外直筋の付着点に平行に手術用ナイフ(バード・パーカー第15号)で行った。基質内マイクロポケットを、改良型フォン・グレーフェナイフ(2”30mm)を使用して解剖した。単一のペレットを埋め込み、そして側頭角膜縁に向かって進めた(bFGFペレットについては0±7±1±0mm、VEGFペレットについては0±5mm)。それぞれの成長因子についてのペレット位置の相違は、このモデルにおいてVEGFの比較的弱い毛管形成刺激を与えるのに必要であると決定された。次いで、抗生物質軟膏(エリスロマイシン)を、手術を受けた眼球に塗布して感染を予防し、そしてムラを低減させた。その後の血管応答を周縁血管系からペレット及び新血管形成の隣接周縁帯域に向けて延長させて測定した。ここに提供するデータ及び臨床写真は、ペレット埋め込み後6日目に得たものであり、これは最大の血管形成応答の日であることが分かった。
【0104】
(10)試験管内浸潤アッセイ法
「マトリゲル」マトリックス被覆9mm細胞培養インサート(細孔寸法8μm;ベクトンディッキンソン社,ニュージャージー州フランクリンレーク)を24ウェルプレートにセットした。HUVEC細胞を該培養インサートの上層にウェル当たり5×103個の細胞の密度で接種し、試験EphB4抗体の存在下で血清フリーのEBMで24時間培養した。コントロール群をEphB4抗体なしの同一の培地で培養した。次いで、ヒトSCC15細胞株ならし培地の0.5mLを化学誘引物質として培養インサートの下層に充填した。これらの細胞を24時間にわたってインキュベートし、次いで、上層中の残りの細胞を綿で吸い取り、そして下層中の浸透細胞を5%のグルタルアルデヒドで固定し、そしてディフクイックで染色した。マトリゲルマトリックスと該培養インサートの各8μm細孔とを通過する細胞の総数を、光学顕微鏡を使用してカウントし、そしてこれを侵襲指数(細胞数/面積)と表した。
【0105】
(11)マウスにおけるSCC15腫瘍成長
対数的に増殖しているSCC15頭部及び頚部扁平上皮癌細胞株を、5×106個の細胞密度で(ヒトbFGFの存在下又は非存在下に試験EphB4抗体と共に又はそれなしで)、胸腺欠損Balb/cヌードマウスにマトリゲル(BDバイオサイエンス)合成基底膜(1:1v/v)と共に皮下注射し、そして2週間以内に腫瘍を検査した。移植後の成長因子の存在下及び非存在下での試験EphB4抗体群における腫瘍容積は、賦形剤群における腫瘍容積よりも3倍小さかった。これらの群間において体重に差はなかった。切除された腫瘍の断面並びにTUNEL陽性アポトーシス又はネクローシス、CD34免疫染色及びBrdU増殖速度の免疫組織化学的検査は、脱パラフィンし、再水和させ、そして内因性ペルオキシダーゼ活性のための急冷した後及び10分のプロテインキナーゼKによる浸透化後に実行されるであろう。また、血管密度の定量的評価も実行されるであろう。また、試験EphB4抗体の局所的腫瘍内デリバリ又はIVデリバリも1週間当たり2回実行されるであろう。
30匹の胸腺欠損ヌードマウスBALB/c(nu/nu)に、それぞれ1×106個のB16メラノーマ細胞を、0.1mLのマトリゲルと混合された0.1mLのPBSと共に注射し、又は1.5×106個のSCC15細胞を200μLのDMEM血清フリー培地に再懸濁させ、そして0日目にマウスの右肩領域に皮下注射した。試験EphB4抗体を腫瘍の周囲に静脈内注射又は皮下注射したが、ここで、1日目に4μg/mgの負荷量で始めて、2μg/mgを毎週注射し(10μg/g、50μg/kg/日)、そして2週間で接種を終えた。マウスを14日目に犠牲にした。コントロールマウスは、各日にPBS50μLを受けた。
【0106】
(12)ヌードマウスにおける腫瘍形成
全ての動物を(米国)動物保護協会委員の承認済みプロトコールの下で処理した。癌細胞(5×106)をヌードマウスの背面皮膚に皮下接種した。腫瘍が約10mm3の寸法にまで成長したときに(通常12日かかる)、試験EphB4抗体を1日1回腹腔内又は皮下注射し、そして腫瘍形成を2週間にわたって監視した。腫瘍容積を式a2×b(ここで、a及びbは、それぞれ最も小さい直径及び最も大きい直径である)に従って算出した。スチューデントtテストを使用して腫瘍容積を比較した(P<0.05は有意であるとみなされる)。
【0107】
(13)微小血管密度の定量
腫瘍を4%のホルムアルデヒド中で固定し、パラフィンで包埋し、5μmの切片にし、そしてヘマトキシリン−エオシンで染色した。血管密度を、コンピューターベースの画像解析機(それぞれの群において3匹のマウスから切片当たり5種の領域)を使用して半定量した。
【0108】
参照による援用
本明細書において言及した全ての文献及び特許文献は、あたかもそれぞれ個々の文献又は特許文献が具体的かつ個別的に参照によって援用されていることが示されるように、それらの全体における参照によって援用するものとする。
【0109】
主題の発明の特定の具体例を議論してきたが、上記の明細書は例示であって限定ではない。当業者であれば、本明細書及び特許請求の範囲の再検討に基づき、本発明の多くの変形例が明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲をそれらの均等の全範囲とともに、及び本明細書をこのような変形例と共に参照することによって決定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】ヒトEphB4前駆体蛋白質のアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。
【図2】ヒトEphB4蛋白質のcDNAヌクレオチド配列を示す図である。
【図3】B4ECv3蛋白質のアミノ酸配列を示す図である。
【図4】B4ECv3NT蛋白質のアミノ酸配列を示す図である。
【図5】EphB4に対して生成されるモノクローナル抗体及びこれらの抗体のエピトープマッピングを示す図である。
【図6−1】腫瘍細胞成長に及ぼすエフリンB2ポリクローナル抗体及びEphB4ポリクローナル抗体の影響を示す図である。
【図6−2】腫瘍細胞成長に及ぼすエフリンB2ポリクローナル抗体及びEphB4ポリクローナル抗体の影響を示す図である。
【図7】EphB4モノクローナル抗体の親和性試験の結果を示す。親和性の順序(最も弱い〜最も強い)を示す図である。
【図8】bFGFの存在下又は非存在下での代表的なEphB4抗体(第138号)によるマウス角膜マイクロポケットアッセイ法を示す図である。
【図9】EphB4抗体がSCC15異種移植腫瘍の成長を阻害することを示す図である。
【図10】EphB4抗体が、頭部及び頚部癌腫瘍型であるSCC15においてアポトーシス、ネクローシス及び減少した血管形成を生じさせることを示す図である。
【図11】EphB4抗体の全身投与によって腫瘍の緩解に至ることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに結合し、かつ、EphB4活性を阻害する、単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
抗体又はその抗原結合部分が図1のEphB4配列のアミノ酸16〜198内に位置したエピトープに結合する、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
抗体又はその抗原結合部分が、エフリンB2の細胞外部分にEphB4が結合するのを阻害する、請求項2に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
抗体又はその抗原結合部分が、図1のEphB4配列のアミノ酸324〜429又は430〜537内に位置したエピトープに結合する、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
抗体又はその抗原結合部分がEphB4の二量体又は多量体の形成を阻害する、請求項4に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
抗体又はその抗原結合部分がEphB4の第1フィブロネクチン様ドメイン(FND1)に結合する、請求項3に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
抗体又はその抗原結合部分がEphB4の第2フィブロネクチン様ドメイン(FND2)に結合する、請求項3に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項8】
抗体又はその抗原結合部分がEphB4のエフリンB2刺激自己燐酸化を阻害する、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項9】
抗体又はその抗原結合部分が培養上皮細胞による管形成を阻害する、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項10】
抗体又はその抗原結合部分が生体内での組織の血管新生を阻害する、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項11】
抗体又はその抗原結合部分が、動物の角膜に移植された組織の血管新生を阻害する、請求項10に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項12】
抗体又はその抗原結合部分が、動物に移植されたマトリゲル組織プラグの血管新生を阻害する、請求項10に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項13】
抗体又はその抗原結合部分が、マウスにおけるヒト腫瘍異種移植物の成長を低減させる、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項14】
抗体が第001号、第023号、第035号及び第079号と表される抗体よりなる群から選択される、請求項2に記載の単離された抗体。
【請求項15】
抗体が第001号、第023号、第035号及び第079号と表される抗体よりなる群から選択される抗体のヒト化変種である、請求項2に記載の単離された抗体。
【請求項16】
抗体又はその抗原結合部分が、第001号、第023号、第035号及び第079号と表される抗体よりなる群から選択される抗体に由来する少なくとも一つのCDR部分を含む、請求項2に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項17】
抗体が第047号、第057号、第85H号、第098号及び第138号と表される抗体よりなる群から選択される、請求項4に記載の単離された抗体。
【請求項18】
抗体が第001号、第023号、第035号及び第079号と表される抗体よりなる群から選択される抗体のヒト化変種である、請求項4に記載の単離された抗体。
【請求項19】
抗体又はその抗原結合部分が第001号、第023号、第035号及び第079号と表される抗体よりなる群から選択される抗体に由来する少なくとも一つのCDR部分を含む、請求項4に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項20】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項21】
モノクローナル抗体がヒトへの投与に対して臨床上許容できる、請求項20に記載の抗体。
【請求項22】
請求項1の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項23】
第001号、第023号、第035号、第079号、第047号、第057号、第85H号、第098号及び第138号と表される抗体よりなる群から選択される抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項24】
癌の治療方法において、それを必要としている患者に、EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに結合しかつEphB4活性を阻害する単離された抗体又はその抗原結合部分の有効量を投与することを含む、癌の治療方法。
【請求項25】
患者が、結腸癌、乳房の腫瘍、中皮腫、前立腺腫瘍、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫及び白血病よりなる群から選択される癌と診断されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
単離された抗体又はその抗原結合部分を全身的に投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
単離された抗体を局所的に投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
患者における血管形成を阻害する方法において、それを必要としている患者に、EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに結合しかつEphB4活性を阻害する単離された抗体又はその抗原結合部分の有効量を投与することを含む方法。
【請求項29】
患者が黄斑変性症と診断されている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分を含む医薬品。
【請求項31】
請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分の、癌治療用の医薬品を製造するための使用。
【請求項32】
癌が結腸癌、乳房の腫瘍、中皮腫、前立腺腫瘍、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫及び白血病よりなる群から選択される、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
図1のEphB4配列のアミノ酸324〜429又は430〜537内に位置したエピトープに結合し、かつ、EphB4キナーゼ活性を刺激する、単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項34】
抗体がEphB4の第1フィブロネクチン様ドメイン(FND1)に結合する、請求項33に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項35】
抗体がEphB4の第2フィブロネクチン様ドメイン(FND2)に結合する、請求項34に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項36】
抗体が第85L号、第091号、第121号及び第131号と表される抗体よりなる群から選択される、請求項33に記載の単離された抗体。
【請求項37】
抗体が第85L号、第091号、第121号及び第131号と表される抗体よりなる群から選択される抗体のヒト化変種である、請求項33に記載の単離された抗体。
【請求項38】
抗体又はその抗原結合部分が第85L号、第091号、第121号及び第131号と表される抗体よりなる群から選択される抗体に由来する少なくとも一つのCDR部分を含む、請求項33に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項39】
モノクローナル抗体がヒトへの投与に対して臨床上許容できる、請求項33に記載の抗体。
【請求項40】
請求項33に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項41】
第001号、第023号、第035号、第079号、第047号、第057号、第85H号、第098号及び第138号と表される抗体よりなる群から選択される抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項42】
癌の治療方法において、それを必要としている患者に、EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに結合しかつEphB4キナーゼ活性を刺激する単離された抗体又はその抗原結合部分の有効量を投与することを含む、癌の治療方法。
【請求項43】
患者が結腸癌、乳房の腫瘍、中皮腫、前立腺腫瘍、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫及び白血病よりなる群から選択される癌と診断されている、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
単離された抗体又はその抗原結合部分を全身的に投与する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
単離された抗体を局所的に投与する、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
患者における血管形成の阻害方法において、それを必要としている患者に、EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに結合しかつEphB4キナーゼ活性を刺激する単離された抗体又はその抗原結合部分の有効量を投与することを含む、患者における血管形成の阻害方法。
【請求項47】
患者が黄斑変性症と診断されている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
請求項33に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分を含む医薬品。
【請求項49】
請求項33に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分の、癌治療用医薬品を製造するための使用。
【請求項50】
癌が結腸癌、乳房の腫瘍、中皮腫、前立腺腫瘍、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫及び白血病よりなる群から選択される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
EphB4の細胞外部分に位置したエピトープに特異的に結合する抗体であって、第1号、第23号、第35号、第47号、第57号、第79号、第85L号、第85H号、第91号、第98号、第121号、第131号及び第138号よりなる群から選択される、前記抗体。
【請求項52】
単離された抗体又はその抗原結合部分が追加の機能性部分に共有結合している、請求項1又は請求項33に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項53】
追加の機能性部分が標識である、請求項52に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項54】
標識が、蛍光検出法、陽電子放出型断層撮影検出法及び核磁気共鳴検出法よりなる群から選択される方法による検出に好適である、請求項53に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項55】
標識が蛍光標識、放射性同位元素標識及び特有の核磁気共鳴シグナチャーを有する標識よりなる群から選択される、請求項54に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項56】
追加の機能性部分が、抗体又はその抗原結合部分に血中半減期の増大を与える、請求項52に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項57】
追加の機能性部分がポリエチレングリコール(PEG)部分を含む、請求項56に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項58】
単離された抗体が、PTA−6208、PTA−6209、PTA−6210、PTA−6211及びPTA−6214から選択されるATCC寄託表示番号を有する宿主細胞によって発現する、請求項1又は33に記載の単離された抗体。
【請求項59】
PTA−6208、PTA−6209、PTA−6210、PTA−6211及びPTA−6214から選択されるATCC寄託表示番号を有する宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−500964(P2008−500964A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503075(P2007−503075)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008280
【国際公開番号】WO2005/090406
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506307902)バスジーン セラピューティクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】