説明

衛星信号受信装置

【課題】特別な操作を行うことなくアンテナの指向特性を窓方向に向けるようにしてアンテナの受信強度を室内においても高める。
【解決手段】まず、アンテナ2で受信信号の信号強度を受信強度判定部17で推定する(ステップS2)。受信信号の信号強度が基準値を下回っているときは(ステップS3のY)、太陽光方向判定部15が太陽光の来る方向は受光素子6,7,8,9のうちのどちら側の方向であるかを推定する(ステップS4)。そして、その窓側に向いていると推定された受光素子6,7,8又は9に対応しているアンテナ2,3,4又は5が受信部16と接続されるように、スイッチ11,12,13又は14の何れかひとつを閉じる(ステップS5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星信号を受信する衛星信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1によれば、室内において、概略、衛星の方向によらず、また、窓からの距離によらず、アンテナの指向特性を窓方向に向けた場合、天井や窓と逆方向に向けた場合に比べ、5dB程度、受信強度が強いことが記載されている。
【0003】
また、非特許文献1のFigure24によれば、5dBの感度向上が受信可能範囲を拡大するのに効果的であることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ION GPS/GNSS2003,Space Time Characteristics of the RF Absolute Powerof Indoor GPS Signals(特に、Figure25〜27)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GNSS衛星などの衛星信号を受信して現在位置を測位する衛星信号受信装置を室内で使用する場合には、受信可能範囲を拡大するために衛星信号受信装置の高感度化が必要である。この高感度化は、もっぱら信号処理の改善にのみにより図られていて、アンテナに関する工夫により高感度化を図る技術については知られていなかった。
【0006】
しかしながら、前述の非特許文献1に開示されているように、アンテナの指向特性を窓方向に向けた場合、天井や窓と逆方向に向けた場合に比べ、有意に受信強度が強いことが分かっている。
【0007】
本発明の目的は、特別な操作を行うことなくアンテナの指向特性を窓方向に向けるようにしてアンテナの受信強度を室内においても高めることができる衛星信号受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、筐体と、アンテナと、前記筐体の外面の互いに異なる位置に設けられた複数個の受光素子と、前記各受光素子でそれぞれ光電変換された信号に基づいて最も太陽光の入射する方向を推定し、その推定結果に応じて前記アンテナの指向特性を変える指向特性可変手段と、前記アンテナで受信した受信信号に基づいて前記受信信号を受信したアンテナの現在位置を計算する現在位置計算手段と、を備えている衛星信号受信装置である。
【0009】
(2)この場合に、前記各アンテナの前記各受信信号の受信強度に基づいて前記筐体が室内又は室内に準じる場所にあるか否かを判定する受信強度判定手段をさらに備え、前記指向特性可変手段は、前記受信強度判定手段で前記筐体が前記室内又は場所にあると判定したことを条件に、前記各受光素子でそれぞれ光電変換された信号に基づいて最も太陽光の入射する方向を推定し、その推定結果に応じて前記アンテナの指向特性を変える、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
(1)の発明によれば、衛星信号受信装置が室内などにあるときでも、太陽光側、すなわち窓側の方向を推定し、その方向にアンテナの指向特性を向けることができるので、アンテナの受信強度を室内においても高めることができる。
【0011】
(2)の発明によれば、衛星信号受信装置が室内などにあるか否かも推定し、室内にあると推定したときはアンテナの受信強度を室内においても高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態であるGPS受信機の平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるGPS受信機の機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態であるGPS受信機が実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態にかかるGPS受信機の平面図であり、図2は、同機能ブロック図である。
【0015】
このGPS受信機1は、本発明の衛星信号受信装置を実施するものであり、その筐体21には、現在位置を地図中に表示するためのディスプレイ19と、操作パネル23とが設けられている。また、この筐体21上にはGPS衛星からの衛星信号を受信する複数、この例では4個のアンテナ2,3,4,5が筐体21の4方向にそれぞれ設けられている(アンテナ5については筐体21の背面にあるため、図1には図示されていない)。また、筐体21内には、各アンテナ2,3,4,5にそれぞれ対応して4個の受光素子6,7,8,9がそれぞれ4方向に設けられている(受光素子9については筐体21の背面にあるため、図1には図示されていない)。
【0016】
各アンテナ2,3,4,5と受信部10との間はそれぞれスイッチ11,12,13,14を介して接続されている。
【0017】
太陽光方向判定部15は、各受光素子6,7,8,9で光電変換した信号を受信し、受光素子6,7,8,9のうちどれが太陽光の来る方向に最も近いかを判定し、この判定に基づいてスイッチ11,12,13,14のうちのいずれか一つを閉じることにより、アンテナ2,3,4,5のいずれか一つでの衛星の受信信号を選択することで、アンテナの指向特性を変える。
【0018】
受光素子6,7,8,9は、CCDカラーイメージセンサであるため、光のR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)成分をそれぞれ検出することができる。太陽光方向判定部15では、このR,G,Bの各光成分があらかじめ定められた所定範囲内の比率になっていれば、当該受光素子で受光した光には太陽光が含まれていると判断することができる。
【0019】
受信部16は、アンテナ2,3,4,5のいずれか一つで受信した衛星の受信信号を復調する。位置計算部18は、当該アンテナ2,3,4又は5の現在位置を計算する。そして、その現在位置を地図上に示してディスプレイ19上に表示する。
【0020】
受信強度判定部17は、スイッチ11,12,13,14のうちのいずれか1つが閉じられることにより、アンテナ2,3,4,5のうちのいずれかひとつで受信した衛星の受信信号の信号強度を判定し、この受信信号の信号強度が予め定められた基準値より高いか低いかを判定する。この判定の具体的な手段の一例を挙げれば、一定の短時間の受信信号電圧の平均値を予め定められた基準値と比較すればよい。
【0021】
次に、GPS受信機1が実行する処理の内容について図3のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
まず、GPS受信機1の電源が投入されると、デフォルトとしてスイッチ11が閉じられ、アンテナ2が選択される(ステップS1)。そして、その受信信号の信号強度を受信強度判定部17で判定する(ステップS2)。そして、その信号強度が基準値を下回っているときはGPS受信機1が室内にあると判定することができる。そこで、受信信号の信号強度が基準値を下回っているときは(ステップS3のY)、太陽光方向判定部15により、太陽光の来る方向は受光素子6,7,8,9のうちのどちら側の方向であるかを判定する(ステップS4)。これは、受光素子6,7,8,9のうちR,G,Bの各光成分があらかじめ定められた所定範囲内の比率になっているものがどれであるかを判定すればよい。R,G,Bの各光成分があらかじめ定められた所定範囲内の比率になっている受光素子6,7,8又は9のある方向が太陽光の来る方向であると判断することができる。R,G,Bの各光成分があらかじめ定められた所定範囲内の比率になっている受光素子が複数あるときは、そのうちで光強度が最も強いものある方向が太陽光の来る方向であると判断すればよい。
【0023】
こうして太陽光の来る方向がどちら側の方向であるかがわかれば、GPS受信機1が存在している室内で窓がどちら側であるかがわかる。そして、GPS受信機1からみて窓がどちら側であるかがわかったら、受信強度判定部17は、その窓側に向いていると判断された受光素子6,7,8又は9に対応しているアンテナ2,3,4又は5が受信部16と接続されるように、スイッチ11,12,13又は14の何れかひとつを閉じる(ステップS5)。
【0024】
以上説明したGPS受信機1によれば、GPS受信機1が室内にあるときでも、太陽光側、すなわち窓側の方向を判断し、その方向にアンテナの指向特性を向けることができるので、アンテナの受信強度を室内においても高めることができる。
【0025】
しかも、ユーザが特別な操作を行わずとも、GPS受信機1が室内にあるか否かもGPS受信機1が判断し、室内にあると判断したときはアンテナの受信強度を室内においても高めることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 GPS受信機
2,3,4,5 アンテナ
6,7,8,9 受光素子
11,12,13,14 スイッチ
15 太陽光方向判定部
16 受信部
17 受信強度判定部
18 位置計算部
19 ディスプレイ
21 筐体
23 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
アンテナと、
前記筐体の外面の互いに異なる位置に設けられた複数個の受光素子と、
前記各受光素子でそれぞれ光電変換された信号に基づいて最も太陽光の入射する方向を推定し、その推定結果に応じて前記アンテナの指向特性を変える指向特性可変手段と、
前記アンテナで受信した受信信号に基づいて前記受信信号を受信したアンテナの現在位置を計算する現在位置計算手段と、
を備えている衛星信号受信装置。
【請求項2】
前記各アンテナの前記各受信信号の受信強度に基づいて前記筐体が室内又は室内に準じる場所にあるか否かを判定する受信強度判定手段をさらに備え、
前記指向特性可変手段は、前記受信強度判定手段で前記筐体が前記室内又は場所にあると判定したことを条件に、前記各受光素子でそれぞれ光電変換された信号に基づいて最も太陽光の入射する方向を推定し、その推定結果に応じて前記アンテナの指向特性を変える、
請求項1に記載の衛星信号受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−216929(P2010−216929A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62669(P2009−62669)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】