説明

衛星通信車載局

【課題】衛星系の通信設備と地上系の移動体通信設備を搭載した衛星通信車載局において、利用者が車両の静動状態および通信設備を意識することなくIPデータ通信を可能とする。
【解決手段】車両30の動作状態を検出する車両状態検出手段41と、衛星系の通信設備10と地上系の移動体通信設備20の通信可否状態を監視する監視手段42、43と、車両状態検出手段41が車両の停止を検出した場合、衛星系の通信設備10に対して電波発射を停止する電波停止/許可手段42と、通信状態の監視手段42、43と車両状態検出手段41からの出力に基づいて衛星系の通信設備または地上系の通信設備のいずれか一方に通信路を切替える通信路切替手段45を有する通信制御装置40を設けることにより、利用者は車両30の静動状態や通信設備を意識することなく、IPデータ通信をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衛星系の通信設備と地上系の移動体通信設備とを車両に搭載して、どちらか一方の通信設備を使用してユーザー端末と相手先端末との間で通信を行なうようにした衛星通信車載局に関するもので、特に衛星系の通信設備と地上系の移動体通信設備を切り替え制御するようにした通信制御装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来においては、地上系セルラー通信用無線部と移動体衛星通信用無線部を搭載し、それぞれの機器の受信レベルから機器の切替え指示を出力する制御部と、この制御部の指示に従い地上系セルラー通信か移動体衛星通信かを切り替えるベースバンド部と、このベースバンド部からの信号の音声を復号化または符号化するCODEC部と、このCODEC部で復調された音声を聞くスピーカーと通話用のマイクとを備えた移動体通信装置が知られている。
この装置は、地上系セルラー通信の受信レベルが低下したときは移動体衛星通信に切替え、地上系セルラー通信の受信レベルが回復すると地上系セルラー通信に切替えることにより通話が途切れることなく通信を行えるようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
また、衛星通信の追尾アンテナを制御するアンテナ制御装置において、車両の移動スピードを検出する検出器と、この検出器により制御される第1のスイッチを備え、検出器が車両停止を検出すると、第1のスイッチを制御してアンテナ駆動モータを停止させ、アンテナの追尾を停止することにより、低消費電力化をはかったアンテナ制御装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−108262号公報
【特許文献2】特開平4−319803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された従来技術が対象としている衛星通信端末は、移動体衛星通信の端末であり防災通信や報道で使われている衛星通信車載局ではない。そのため、従来の衛星通信端末を移動中に衛星通信をすることが出来ない衛星通信車載局で適用した場合、衛星への電波発射を強制的に停止させる機構が搭載されていないため、免許上、移動体通信として運用の出来ない衛星通信局でも移動中に衛星へ電波を発射することとなる。
また、地上系セルラーシステムの補完に衛星移動体通信を使用する設計となっており、衛星通信を主として使用したい場合には適切ではない。さらに、通信用途が音声通話に特化しておりIPデータ通信に対応していない。
【0006】
また、特許文献2に開示された従来技術は、衛星系の移動体通信に特化したものであり、また移動体免許を有した衛星通信車載局に適用されるもので、移動中に衛星通信をすることが出来ない衛星通信車載局では適用することができない。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、衛星通信車載局が通信中に移動を始めた場合、衛星通信設備を停止すると共に衛星通信から地上系の移動体通信設備を用いた通信に自動的に切替えすることができる衛星通信車載局を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の衛星通信車載局は、衛星系の通信設備と地上系の移動体通信設備を車両に搭載し、衛星系の通信設備または地上系の通信設備のいずれか一方を使用してユーザー端末と相手先端末との間で通信を行なうよう制御する通信制御装置を有した衛星通信車載局において、通信制御装置は、車両の動作状態を検出する車両状態検出手段と、衛星系の通信設備と地上系の移動体通信設備の通信可否状態を監視する監視手段と、車両状態検出手段からの出力に応じて衛星系の通信設備に対して電波発射を停止または許可する電波停止/許可手段と、通信状態の監視手段と車両状態検出手段からの出力に基づいて衛星系の通信設備または地上系の通信設備のいずれか一方に通信路を切替える通信路切替手段と備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、移動中に衛星通信することが出来ない衛星通信車載局において、使用者は車両が移動中または停止中の状態を意識することなく、また、衛星系の通信設備と地上系の移動体通信設備のいずれが使用可能かを意識せずに、ユーザー端末と相手先端末との間でIPデータなどの通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る衛星通信車載局の構成を示したブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る衛星通信車載局の通信制御装置の内部構成を示した図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る一般の処理フロー図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る地上系の移動体通信設備の受信レベルが低下した場合の処理フロー図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る車両が移動した場合の処理フロー図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る通信制御装置による通信路の切替制御をまとめた表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における衛星通信車載局を図1〜図6により説明する。
図1はこの発明の衛星通信車載局の機器構成を示したブロック図、図2は衛星通信車載局に使用される通信制御装置の内部構成図である。
図1において、衛星通信車載局は、衛星系の通信設備10と地上系の移動体通信設備20を車両30に搭載している。衛星系の通信設備10および地上系の移動体通信設備20はそれぞれ通信制御装置40に接続され、通信制御装置40はそれに接続されたユーザー端末(IP端末)50と相手先端末(図示省略)との間で、衛星系の通信設備10または地上系の移動体通信設備20のいずれか一方の設備を使用して通信を行なうよう通信路を切り替え制御する。
【0012】
衛星系の通信設備10は、衛星追尾アンテナ11と、衛星との間で電波を送受信する送受信装置12と、アンテナ駆動/制御装置13と、衛星モデム14とを備えている。アンテナ駆動/制御装置13と通信制御装置40との間は、通信制御装置40がアンテナ駆動/制御装置13の駆動状態取得と制御を行う制御線15が接続されている。衛星モデム14と通信制御装置40との間は、ユーザー端末(IP端末)50からのIPデータの信号を衛星モデム14に伝送するネットワークケーブル16と、通信制御装置40が衛星モデム14の装置状態取得と制御を行う制御線17がそれぞれ接続されている。
【0013】
地上系の移動体通信設備20は、携帯電話網を使用しIPデータ通信を行う携帯電話/データ通信端末21とそれに接続されたアンテナ22、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)網を使用しIPデータ通信を行うWiMAX端末23とそれに接続されたアンテナ24を備えている。携帯電話/データ通信端末21と通信制御装置40との間は、通信制御装置40が携帯電話/データ通信端末21の通信状態取得と制御とIPデータ伝送を行う信号線/制御線25が接続されている。WiMAX端末23と通信制御装置40との間は、通信制御装置40がWiMAX端末23の通信状態取得と制御とIPデータ伝送を行う信号線/制御線26が接続されている。
【0014】
車両30と通信制御装置40の間は、リアルタイムに車両30のパーキングブレーキ状態の信号を取得するパーキングブレーキ信号線31と、リアルタイムに車両30の速度情報を取得する車速信号線32が接続されている。
利用者がIPデータ通信を行うユーザー端末(IP機器)50と通信制御装置40の間は、ネットワークケーブル51が接続されている。
通信制御装置40は、車両30の動作状態監視ならびに衛星系の通信設備10と地上系の移動体通信設備20の通信状態を監視し、IPデータの信号を衛星系の通信設備10もしくは地上系の移動体通信設備20を介して通信するよう切り替え制御する。
【0015】
通信制御装置40は、ユーザー端末(IP機器)50からネットワークケーブル51を用いてIPデータの送受信を行う。その際、ユーザー端末(IP機器)50と通信の相手先との疎通のために車両30の動作状態に応じて衛星モデム14、もしくは携帯電話/データ通信端末21を通して外部ネットワークに接続を行う。車両30の動作状態については、車両30のパーキングブレーキ信号線31と車速信号線32から車両30の動作状態を常に監視しており、車両30が移動した場合は制御線15を使いアンテナ駆動/制御装置13に対して駆動停止の信号を送信して動作を停止させると同時に、制御線17を使い衛星モデム14に対して送信停止の信号を送信し衛星への信号送信を停止させる。
【0016】
さらに通信制御装置40は、衛星系の通信設備10の状態を知るために制御線17を使い衛星モデム14から通信状態と装置状態と受信電力強度(RSSI=Received Signal Strength Indication)とビット符号誤り率(BER=Bit Error Rate)を、制御線15を使いアンテナ駆動/制御装置13からその装置の駆動状態を監視している。
衛星通信が可能の場合は、通信制御装置40はネットワークケーブル16を用いて衛星モデム14とユーザー端末50からのIPデータを送受信する。衛星系の通信設備10と地上系の移動体通信設備20を用いた通信の両方が使用可能の場合、どちらの回線を優先的に使用するかはあらかじめユーザーが設定しておくことができ、その設定に従い通信制御装置40はIPデータを衛星モデム15に伝送するか、携帯電話/データ通信端末21もしくはWiMAX端末23へ伝送するかを判断しデータ伝送を行う。
【0017】
また、地上系の移動体通信設備20の状態を知るために信号線/制御線25を使い携帯電話/データ通信端末21の通信状態と受信電力強度を、信号線/制御線26を使いWiMAX端末23の通信状態と受信電力強度を監視している。また、信号線/制御線25は携帯電話/データ通信端末21で通信する際に、ダイヤルアップや切断の制御と通信中のデータ伝送を行う際にも使用する。また信号線/制御線26はWiMAX端末23で通信する際に、ダイヤルアップや切断の制御とIP通信中のデータ伝送を行う際にも使用する。
【0018】
次に通信制御装置40の内部構成を図2に基づいて詳しく説明する。図2において、車両30の動作状態を検出する車両状態検出手段41は、車両30のパーキングブレーキからの信号をパーキングブレーキ信号線31で、車両30の速度信号を車速信号線32でそれぞれ入力し、車両30が移動中であるか停止中であるかを識別して、その動作状態を常に監視している。
電波発射を停止または許可する電波停止/許可手段42は、車両状態検出手段41がパーキングブレーキ信号および速度信号に基づいて、車両30の移動中と判断した場合は、衛星系の通信設備10のアンテナ駆動/制御装置13対して駆動停止の信号を送信してアンテナ駆動を停止させると同時に、衛星モデム14に対して送信停止の信号を送信し衛星への電波発射を強制停止する。一方、電波停止/許可手段42は、車両状態検出手段41が車両30の停止中と判断した場合は、衛星系の通信設備10に対して送信許可の信号を送信して衛星に向けての電波発射を許可する。
【0019】
衛星系の通信設備10の通信可否状態を監視する監視手段43は、制御線17を使い衛星モデム14の通信状態と装置状態、および回線品質に係る情報である受信電力強度(RSSI)とビット符号誤り率(BER)をリアルタイムに監視している。ここで衛星モデム14の通信状態と装置状態とは、例えば次の状態である。
(1)ウォームアップ状態 :起動中の状態
(2)アイドル状態 :利用可能の状態
(3)ビジー状態 :衛星通信中で使用中の状態
(4)障害状態 :障害が起きている状態
【0020】
また、衛星系の通信設備10の通信可否状態を監視する監視手段43は、制御線15を使いアンテナ駆動/制御装置13の駆動状態を監視している。ここでアンテナ駆動/制御装置13の駆動状態とは、例えば次の状態である。
(1)自動駆動状態 :自動制御によりアンテナを駆動させている状態
(2)手動駆動状態 :手動制御によりアンテナを駆動させている状態
(3)起動中状態 :起動中の状態
(4)停止状態 :アンテナ駆動を行なっていない状態
(5)インターロック状態 :電波発射を強制停止している状態
(6)通信可能状態 :アンテナから電波発射可能の状態
(7)障害状態 :障害が起きている状態
【0021】
地上系の移動体通信設備20の通信可否状態を監視する監視手段44は、信号線/制御線25を使い携帯電話/データ通信端末21から通信状態と受信電力強度を、信号線/制御線26を使いWiMAX端末23から通信状態と受信電力強度を、それぞれ監視している。ここで「通信状態」とは、例えば次の状態である。
(1)発信可能状態(待受中)
(2)電波検出中(圏外表示中)
(3)データ通信中
(4)通信開始/通信終了の処理中
(5)使用不可
【0022】
通信路を切替える通信路切替手段45は、車両状態検出手段41から車両30の動作状態と、衛星系の監視手段43と地上系の監視手段44からそれぞれの通信状態と受信電力強度を入力して、それらの状態に基づいて衛星系の通信設備10または地上系の通信設備20のいずれか一方に通信路を切替える。
そして衛星通信が可能の場合(アンテナ駆動/制御装置13の駆動状態が「通信可能状態」で、衛星モデム14の通信状態が「アイドル状態」の場合)は、通信路切替手段45は衛星系の通信設備10に通信路を切り替え、ネットワークケーブル16、51を介してユーザー端末50と衛星モデム14を接続し、ユーザー端末50からのIPデータを衛星系の通信設備10を通じて相手先端末と送受信する。
【0023】
もし、衛星系の通信設備10と地上系の移動体通信設備20を用いた通信の両方が使用可能の場合、どちらの回線を優先的に使用するかは、通信路切替手段45内に設けた優先路設定手段46によってあらかじめユーザーが設定しておくことができる。その設定は、ソフトウェアのパラメータ、もしくはディップスイッチなどによるハードウェアで行なわれる。
この優先路の設定に従い、通信路切替手段45はユーザー端末50からのIPデータを衛星モデム15に伝送するか、携帯電話/データ通信端末21もしくはWiMAX端末23へ伝送するかを判断しデータ伝送を行う。
【0024】
図3はこの発明における通信制御装置40の一般的な処理フロー図である。
図3において、ステップST1は、通信制御装置40がユーザー端末(IP機器)50からのIPデータを受信し、ステップST2で通信を開始する。ステップST3は、車両
30の状態が移動中であるかどうか判断し、移動中の場合(YES)、ステップST4に進む。ステップST4は、地上系の移動体通信設備20の状態を確認し、通信可能であれば(YES)、ステップST5でダイヤルアップしIPデータの伝送を開始する。ここで、通信可能な状態とは、携帯電話/データ通信端末21またはWiMAX端末23の受信状態が「発信可能状態(待受中)」であり、且つ受信電力強度が所定レベル以上である状態をいう。IPデータの伝送が完了した場合、ステップST6で通信を終了する。
【0025】
ステップST4において、もし地上系の移動体通信設備20が輻輳やサービス圏外等理由で使用できない場合(NO)、ステップST7において一定時間待機し、一定時間後にステップST4に進み、再度地上系の移動体通信設備20の状態を確認し、使用可能であればダイヤルアップを試みIPデータの伝送を開始する。
ステップST3において、車両30の状態が移動中でない場合(NO)はステップST8に進み、ステップST8で、優先的に使用する回線が衛星系の通信設備10であるかどうか判断する。
【0026】
ステップST8において、優先的に使用する回線が衛星系の通信設備10の場合(YES)、ステップST9はアンテナ駆動/制御装置13を作動させ、衛星の捕捉をさせる。ステップST10で衛星の捕捉が完了するとステップST11に進む。ステップST11は衛星通信が可能かどうか判断し、衛星通信が可能の場合(YES)は、ステップST12で衛星モデム5に向けてIPデータの伝送を開始する。ここで、衛星通信可能な状態とは、衛星モデム14の装置状態が「アイドル状態」で、アンテナ駆動/制御装置13の駆動状態が「通信可能状態」であり、且つ受信信号のBERが基準値以上確保できている状態をいう。IPデータの伝送が完了した場合、ステップST13で通信を終了する。
【0027】
ステップST8において、優先的に使用する回線が衛星系の通信設備10でなく(NO)、優先的に使用する回線が地上系の通信設備20の場合、ステップST4に戻って、地上系の移動体通信設備20が通信可能かどうか判断する。ステップST4において、地上系の移動体通信設備20が通信可能であれば、ステップST5で地上系の移動体通信設備20のダイヤルアップし、IPデータの伝送を開始する。もしステップST4で地上系の移動体通信網20が輻輳やサービス圏外等理由で使用できない場合(NO)、ステップST7に進んで一定時間待機し、一定時間後に再度地上系の移動体通信設備20の状態を確認し、使用可能であればダイヤルアップを試みIPデータ通信を開始する。
【0028】
また、ステップST11において、衛星の捕捉が完了しても衛星通信が不可能の場合(NO)、ステップST4に戻って、地上系の移動体通信設備20が通信可能かどうか判断する。
ステップST4において、地上系の移動体通信設備20が通信可能(YES)であれば、ステップST5で地上系の移動体通信設備20のダイヤルアップを行い、IPデータの伝送を開始する。もしステップST4で地上系の移動体通信網20が輻輳やサービス圏外等理由で使用できない場合(NO)、ステップST7に進んで一定時間待機し、一定時間後に再度地上系の移動体通信設備20の状態を確認し、使用可能であればダイヤルアップを試みIPデータ通信を開始する。
【0029】
図4は、衛星系の通信設備10で通信中に車両30が移動状態となった場合の通信制御装置40の処理フロー図である。
図4において、ステップST21は、通信制御装置40が、パーキングブレーキ信号線31と車速信号線32からの情報で車両30の移動を検知した場合、ステップST22に進む。ステップST22は、通信制御装置40が、アンテナ駆動/制御装置13に対して停止信号を送信し、アンテナ駆動を停止する。同時に衛星モデム14に対しても停止信号を送信し、衛星への電波発射を停止させる。
【0030】
ステップST23は、アンテナ駆動/制御装置13および衛星モデム14の停止と同タイミングで地上系の移動体通信設備20が使用可能かどうかを判断し、もし使用可能であれば(YES)、ステップST24において、地上系の移動体通信設備20のダイヤルアップをし、IPデータの伝送を開始する。IPデータの伝送が完了した場合、ステップST25で通信を終了する。
ステップST23において、もし地上系の移動体通信網が輻輳やサービス圏外等の理由で使用できない場合(NO)、ステップST26に進んで一定時間待機し、一定時間後にステップST23へ戻り、再度地上系の移動体通信設備20の状態を確認し、使用可能であればダイヤルアップを試み、IPデータ通信を開始する。
【0031】
図5は、地上系の移動体通信設備20で通信中に、受信信号レベルが低下しサービス圏外となった場合の通信制御装置40の処理フロー図である。
図5において、ステップST31は、通信制御装置40が、地上系の移動体通信設備20から取得している受信信号レベルが圏外状態となったことを検出した場合、ステップST32に進む。ステップST32は、地上系の移動体通信設備20に対して通信終了の信号を送信し、地上系の移動体通信設備20での通信を終了させる。
【0032】
ステップST33は、通信制御装置40が、地上系の移動体通信設備20での通信終了と同タイミングで車両30の状態が移動中であるかどうか判断する。ステップST33において、車両30の状態が移動中でなければ(YES)、ステップST34に進み、通信制御装置40は衛星系の通信設備10のアンテナ駆動/制御装置13に対して衛星捕捉開始の制御信号を送信し衛星捕捉させる。
ステップST35は、アンテナ駆動/制御装置13が衛星の捕捉が完了したらステップST36に進む。ステップST36は、衛星系の通信設備10による衛星通信が可能であるかどうか判断し、衛星通信が可能であれば(YES)、ステップST37に進んで、衛星モデム5に対してIPデータの伝送を開始する。IPデータの伝送が完了した場合、ステップST38で通信を終了する。
【0033】
ステップST36において、もし衛星系の通信設備10による衛星通信が不可能の場合(NO)、ステップST39に進んで一定時間待機し、一定時間後にステップST41に行き、再度地上系の移動体通信設備20の状態を確認する。ステップST41において、地上系の移動体通信設備20が使用可能であれば(YES)、ステップST42でダイヤルアップを試み、IPデータ通信を開始する。IPデータの伝送が完了した場合、ステップST43で通信を終了する。
【0034】
ステップST41において、もし地上系の移動体通信設備20が輻輳やサービス圏外等の理由で使用できない場合(NO)、ステップST44に進んで一定時間待機する。一定時間後にステップST41に戻り、再度地上系の移動体通信設備20の状態を確認する。ステップST41において、地上系の移動体通信設備20が使用可能であれば(YES)、ステップST42でダイヤルアップを試み、IPデータ通信を開始する。IPデータの伝送が完了した場合、ステップST43で通信を終了する。
【0035】
ステップST33において、車両30の状態が移動中であれば(NO)、ステップST40に進み、一定時間待機する。一定時間後にステップST41において、再度地上系の移動体通信設備20の状態を確認し、使用可能であれば(YES)、ステップST42で地上系の移動体通信設備20のダイヤルアップを試み、IPデータの伝送を開始する。ステップST41において、もし地上系の移動体通信網が輻輳やサービス圏外等の理由で使用できない場合(NO)、ステップST44に進み、一定時間待機する。ステップST44で一定時間待機した後にステップST41へ戻り、再度地上系の移動体通信設備20の状態を確認し、使用可能であればダイヤルアップを試みIPデータの伝送を開始する。
【0036】
以上説明したように、衛星通信車載局の通信制御装置40は、主に次のような動作を行なっている。
(1)衛星通信が出来ない状況で、地上系の移動体通信網が利用できるときは、地上系の移動体通信設備20を用いてIPデータ通信を行なうようよう通信路の切替制御をする。この切替制御に伴い、地上系の移動体通信網への発呼制御も行なう。
(2)衛星通信が出来ない状況では、衛星通信車載局に搭載している衛星系の通信設備10に対して、電波の発射を停止するよう機器の制御をする。
(3)、衛星通信車載局(車両)が移動中か停止中かを監視する。
なお、上記の「衛星通信が出来ない状況」とは、車両が移動中の場合、障害物などで衛星方向へのクリアランスがとれない場合、周囲環境により回線マージンが確保できない場合、衛星系の通信設備10の故障の場合などを指す。
【0037】
通信制御装置40のこれらの動作において、車両30の状態と、衛星系の通信設備10の状態と、地上系の移動体通信設備20の状態と、優先的に使用する通信路の設定状態によって、使用する通信路が衛星系の通信設備10と地上系の移動体通信設備20のどちらに切り替え制御するかをまとめたものが図6に示す表である。
図6の表において、車両状態は図2の車両状態検出手段41によって検出する。衛星系の通信設備の状態は図2の衛星系の監視手段43によって監視する。地上系の移動体通信設備の状態は図2の地上系の監視手段44によって監視する。優先的に使用する通信路の設定は図2の優先路設定手段46によって設定する。通信路は図2の通信路切替手段45によって切り替えられる通信設備を示す。
【0038】
実施の形態2.
なお、以上の実施の形態1では、地上系の移動体通信設備20として、携帯電話/データ通信端末21とWiMAX端末23の両方を備えた場合について説明したが、必ずしも両方を備える必要はなく、WiMAX端末23を省略してもよい。WiMAX端末23は一種のデータ通信端末であり、実施の形態2の発明は地上系の移動体通信設備20として携帯電話/データ通信端末21のみを設けたものである。この場合でも、実施の形態1と同様な効果を得ることが出来る。
【0039】
以上のようにこの発明は、通信制御装置40が車両30の動作状態を把握して、車両30の移動中は衛星系の通信設備10に対して電波発射を停止すると共に、衛星系の通信設備10の状態と地上系の移動体通信設備20の状態とを監視して、通信路の切替制御を行っているから、使用者は車両30の動作状態やどの通信設備10、20を使用するかを意識せずに、自動的に通信路を切換えてくれ、ユーザー端末と相手先端末との間でIPデータなどの通信を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
10:衛星系の通信設備、 11:衛星追尾アンテナ、
12:送受信装置、 13:アンテナ駆動/制御装置、
14:衛星モデム 15:制御線、
16:ネットワークケーブル、 17:制御線、
20:地上系の移動体通信設備、 21:携帯電話/データ通信端末、
22:アンテナ、 23:WiMAX端末、
24:アンテナ、 25:信号線/制御線、
26:信号線/制御線、 30:車両、
31:パーキングブレーキ信号線、 32:車速信号線、
40:通信制御装置、 41:車両状態検出手段、
42:電波停止/許可手段、 43:監視手段、
44:監視手段、 45:通信路切替手段、
46:優先路設定手段、
50:ユーザー端末(IP機器)、 51:ネットワークケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星系の通信設備と地上系の移動体通信設備を車両に搭載し、前記衛星系の通信設備または地上系の通信設備のいずれか一方を使用してユーザー端末と相手先端末との間で通信を行なうよう制御する通信制御装置を有した衛星通信車載局において、前記通信制御装置は、前記車両の動作状態を検出する車両状態検出手段と、前記衛星系の通信設備と地上系の移動体通信設備の通信可否状態を監視する監視手段と、前記車両状態検出手段からの出力に応じて前記衛星系の通信設備に対して電波発射を停止または許可する電波停止/許可手段と、前記通信状態の監視手段と前記車両状態検出手段からの出力に基づいて前記衛星系の通信設備または地上系の通信設備のいずれか一方に通信路を切替える通信路切替手段と備えたことを特徴とした衛星通信車載局。
【請求項2】
前記車両状態検出手段は、車両の速度信号とパ−キングブレーキ信号の両方から車両の移動または停止状態を識別することを特徴とする請求項1に記載の衛星通信車載局。
【請求項3】
前記電波停止/許可手段は、衛星系の通信設備のアンテナ駆動/制御装置と衛星モデムに対して電波発射の停止または許可の信号を、制御線を通じて伝達するようにした請求項1または請求項2に記載の衛星通信車載局。
【請求項4】
前記電波停止/許可手段は、車両が移動中は衛星系の通信設備の電波発射を停止するようにした請求項3に記載の衛星通信車載局。
【請求項5】
前記監視手段は、衛星系の通信設備のアンテナ駆動状態と回線品質に係る情報の最新情報を保持するとともに、地上系の移動体通信設備の通信状況と受信信号強度を把握するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の衛星通信車載局。
【請求項6】
前記通信路切替手段は、車両が移動した時は地上系の移動体通信設備に通信路を切替、車両が停止中の時は衛星系の通信設備と地上系の移動体通信設備の通信状態のうち、通信状態が良い方に通信路を切替るようにした請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の衛星通信車載局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−175134(P2012−175134A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31898(P2011−31898)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】