説明

衛生洗浄便座

【課題】 着座センサの設置に伴う製造工程および部材点数の増加を有効に抑えて構成の簡素化を図り、さらには、着座センサが設置される位置の自由度を高めることができる衛生洗浄便座を提供する。
【解決手段】 着座センサ10aは、人体が近接することにより静電容量が変化するアンテナ電極と、当該アンテナ電極おける静電容量の変化を検出する検出ICとから構成され、好ましくは支持基板上で一体化されている。この着座センサ10aは、衛生洗浄便座の本体51の内部であり、かつ、便座53を閉じた状態で当該便座53の着座面より上側となる位置、例えば、洗浄ユニット61の上部や、本体51の上側である筐体57の内面に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄便座に関し、特に、静電容量式センサを着座センサとして備えている衛生洗浄便座に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ装置の分野では、従来から、便座の暖房、または、局部等を洗浄する洗浄水の加熱等に大きな電力を消費するため、使用者の便座への着座を検出する着座センサが用いられている。この種の着座センサとしては、通常、光学式センサが用いられている。この光学式センサとしては、便座に着座した使用者の背後から当該使用者の腰部近傍に、赤外線等の検知光を照射し、その反射光を検出する構成が一般的である。
【0003】
光学式センサが用いられているトイレ装置の一例として、例えば、特許文献1には、衛生洗浄装置の着座検出装置として、発光部および受光部からなる着座センサを、衛生洗浄装置の機能部を収納するケーシング内であって、このケーシングの前壁面に開口した窓孔と対向させて配置する構成が提案されている。この技術では、着座センサとケーシングの前壁面との間にある程度の間隔を設けている。これにより、着座センサは、窓孔に嵌着したフィルターは検出不能とすることができ、かつ、前壁面に近接したり接触したりする使用者の着衣等は検出可能とすることができるので、使用者の便座への着座を確実に検出することができるとされる。
【0004】
また最近では、光学式以外の着座センサとして、静電容量式センサも提案されている。静電容量式センサは、人体の存在による静電容量の変化を検出電極により検出することで人体を検知する。例えば、特許文献2には、静電容量式の人体局部洗浄装置用の静電着座センサとして、便座内部へ人体着座面に近い方から順に、検出電極、絶縁層、保護電極、絶縁層、および接地電極で構成した電極を配置する構成が提案されている。この技術では、前記構成の静電着座センサが、便座の人体着座面の近傍に設置されており、前記保護電極には検出電極と同電位同位相が印加されている。それゆえ、検出電極自身の不必要な静電容量をすべてキャンセルすることができ、安定した人体検知ができるとされる。
【特許文献1】特開2002−294812号公報
【特許文献2】特開2000−080703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、着座センサとして、光学式センサまたは静電容量式センサのいずれが用いられる構成であっても、製造工程および部材点数の増加を抑える点で不十分であるという問題を有している
まず、着座センサとして光学式センサが用いられる場合、検出光を使用者に直接出射してその反射光を検出するため、特許文献1に開示の技術のように、検出光を出射するための出射窓(窓孔)を、トイレ装置の本体に形成しなければならない。それゆえ、本体の筐体(ケーシング)を製造する過程で出射窓を形成するための工程数が増加するとともに、フィルター等の部材も必要となるため、部材点数が増加する。
【0006】
一方、着座センサとして静電容量式センサが用いられる場合、便座に着座した使用者の存在を、静電容量の変化として検出することから、特許文献2に開示の技術のように、通常、便座内部に検出電極が設けられる構成が採用される。この構成では、光学式センサの場合と比較して、本体のケーシングに出射窓を形成する必要はないが、便座の製造時に検出電極を内蔵させるための工程が追加される。それゆえ、製造工程が増加することにおいて代わりが無く、また、検出精度を向上するために、特許文献2に開示されるように、検出電極に対して絶縁層で挟持された保護電極および接地電極を積層するといった、特別な電極構造が採用される。
【0007】
さらに、特許文献2では、使用者が便座に着座したことをより確実に検知するために、検出電極はある程度の面積を有するか、便座内に複数設置されるか、いずれかでなければならない。特許文献2では、便座に接地される静電着座センサは、具体的な実施の形態として、便座の左右に1個ずつ計2個設置されている構成が開示され、また、静電着座センサが大面積であれば1個でよく、小面積であれば複数個とすることが開示されている。これは、使用者が着座するときに着座面に接する臀部に偏りが生じる場合であっても、着座を確実に検出するためである。このように、便座に設けられる検出電極が、面積の大きいものであったり複数個であったりすれば、製造工程の増加や部材点数の増加は必然的に生じる。
【0008】
トイレ装置としては、現在、さまざまな種類のものが実用化され提案されているが、局部を洗浄する機能を少なくとも有する衛生洗浄便座では、通常、使用者が着座していないときに洗浄機能が誤って動作しないように構成されており、この構成を実現するために、前記のような各種の着座センサが用いられている。ここで、トイレ装置の分野では、最近、トイレ装置そのものに高度なデザイン性が求められたり、多様な間取りのトイレットルームにでも対応できるような構成の自由度が求められたりする傾向にある。このとき、製造工程が増加したり部材点数が増加したりするということは、単に製造コストが増大するだけでなく、設計の自由度にも影響が及ぼされる。つまり、デザイン性および構成の自由度を高めるために、設計変更すれば、個々の部材の設計を変更したり、製造工程を見直したりする必要が生じるが、前記いずれの技術においても、衛生洗浄便座に着座センサを設置する上で制約が生じている。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、着座センサの設置に伴う製造工程および部材点数の増加を有効に抑えて構成の簡素化を図り、さらには、着座センサが設置される位置の自由度を高めることができる衛生洗浄便座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記の課題に鑑み鋭意検討した結果、衛生洗浄便座の着座センサとして静電容量式センサを選択し、かつ、当該静電容量式センサの検知電極としてアンテナ電極を用いれば、着座センサおよび衛生洗浄便座の構成をより簡素化でき、かつ、着座センサを設置する上での制約も小さなものとできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る衛生洗浄便座は、前記の課題を解決するために、便座と、当該便座が回動可能に取り付けられるとともに、当該便座に着座した使用者の局部を洗浄する洗浄ユニットを、機能ユニットとして少なくとも内蔵する本体と、前記便座への使用者の着座を検知する着座センサと、を備え、前記着座センサとして、導電体からなり、人体が近接することにより静電容量が変化するアンテナ電極、および、当該アンテナ電極に電気的に接続され、当該アンテナ電極おける静電容量の変化を検出する静電容量検出器、を備えている静電容量式センサが用いられるとともに、少なくとも前記アンテナ電極は、前記本体の内部であり、かつ、前記便座を閉じた状態で当該便座の着座面より上側となる位置に設けられている構成である。
【0012】
前記構成によれば、着座センサがアンテナ電極を用いた静電容量式センサであり、この着座センサが、本体の内部で着座面より上側となる位置に設けられている。それゆえ、従来の光学式センサのように検出光の出射窓を形成する必要がないだけでなく、従来の静電容量式センサのように、便座に大面積の検出電極を内蔵させなくても、少なくともアンテナ電極を本体の内部の適切な位置に取り付けるだけで、精度を低下させることなく着座の検知を行うことができる。したがって、着座センサの設置に伴う製造工程および部材点数の増加を有効に抑えて構成の簡素化することができる。しかも、静電容量式センサそのものを小型化した本体の内部の適切な位置に設けることができるので、着座センサの装備に伴って、衛生洗浄便座の全体の設計や個々の部材の設計、製造工程等を大幅に見直す必要がなくなり、着座センサが設置される位置の自由度を高めることができる。
【0013】
前記衛生洗浄便座においては、前記本体は、前記機能ユニットを内部に収容する空間を有する筐体と、当該筐体の下方に取り付けられ、その上面で前記機能ユニットを固定する底板と、を備え、前記アンテナ電極は、前記本体の内部のうち、前記機能ユニットの上部、または、前記筐体の内面に取り付けられていることが好ましい。
【0014】
前記構成によれば、本体の内部で、機能ユニットの上部や筐体の内面であれば、便座の着座面より上側となる位置に、アンテナ電極またはこれを含む着座センサを、簡素な構成で容易かつ確実に取り付けることができる。
【0015】
前記着座センサの具体的な構成は特に限定されないが、より好ましい構成として、前記アンテナ電極および前記静電容量検出器が単一の支持基板上に固定されて一体化され、前記本体の内部に設けられている構成を挙げることができる。あるいは、前記本体には、前記機能ユニットを少なくとも制御する制御器が内蔵され、前記静電容量式センサの前記静電容量検出器は、前記制御器と一体化されている構成であってもよい。
【0016】
前記衛生洗浄便座においては、前記便座が、少なくとも着座部が金属で形成されている構成であるとより好ましい。これにより、便座を迅速に暖めることができるので、着座センサにより、使用者が着座する直前を検知して便座の加温を開始することができるだけでなく、着座部が金属で形成されていることから、着座面よりも下側での静電容量の変化が遮蔽されるので、着座センサの検知におけるノイズを低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、着座センサが設置された衛生洗浄装置において、製造工程および部材点数の増加を有効に抑えて構成の簡素化を図ることができるとともに、着座センサが設置される位置の自由度を高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0019】
(実施の形態1)
[衛生洗浄便座の構成]
まず、本実施の形態に係る衛生洗浄便座の構成について、図1、図2および図3に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄便座50の外観構成を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示す衛生洗浄便座50が備える制御系統の概略構成を示すブロック図であり、図3は、図1に示す衛生洗浄便座50の本体51の概略構成を示す模式図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄便座50は、本体51、操作部52、便座53、便蓋54、リモートコントローラ55、着座センサ10a、および入室センサ56を備えている。衛生洗浄便座50の本体51、便座53および便蓋54は、一体的に組み付けられて便器70の上面に設置される。なお、着座センサ10aは、本体51の内部に位置しているため、図1では、点線で外形状を図示している。また、本体51には、図2に示すように、着座センサ10aに加えて、制御部59、洗浄ユニット61、便座・便蓋開閉ユニット62、ファンユニット63、および便座ヒータ調節部64等が収容されている。以下、便座53に着座した使用者から見て前方を前、後方を後ろ、左右側方を左右として説明する。また、便座53と便蓋54とは、それぞれ起立位置と倒伏位置との間で、それぞれ別個にかつ両者一緒に回動可能に設けられるが、以下では、便宜上、これらが倒伏位置から起立位置へ向かって回動することを「開く」といい、起立位置から倒伏位置へ向かって回動することを「閉じる」という。
【0021】
本体51は、図3に示すように、筐体57および底板58を備えている。筐体57は中空で下面が開放された箱状に形成されており、本体51の右側部には操作部52が設けられ、本体51の前方の内面側には、図1に示すように、着座センサ10aが設けられている。本体51内には、前記のとおり、制御部59、洗浄ユニット61、便座・便蓋開閉ユニット62、ファンユニット63等の機能ユニット60、便座ヒータ調節部64等が収容されているが、このうち、少なくとも機能ユニット60は、図3に示すように、底板58の上面に固定されている。そして、底板58および機能ユニット60の上に筐体57が被せられて底板58に固定されることによって本体51が構成され、本体51の内部に制御部59や機能ユニット60等が内蔵される。なお、図3において機能ユニット60は破線で示している。また、筐体57および底板58の具体的構成は特に限定されず、本発明の技術分野で公知の構成を好適に用いることができる。
【0022】
ここで、図1および図3に示すように、本体51は、便座53が閉じ、便蓋54が開いた状態で露出する上方部51aと、便座53の下側となる下方部51bとで構成される。なお、これら上方部51aおよび下方部51bは、それぞれ筐体57の部分であって、この筐体57および底板58により構成される本体51の形状を説明するための便宜上の呼称であり、互いに独立した異なる部材となっているわけではない。本実施の形態では、図3に示すように、上方部51aは下方部51bから突出するような形状を有しているが、本体51の形状はこのような構成に限定されず、便座53が閉じた状態で、上方部51aの一部が少なくとも便座53の着座面よりも上方となるように露出していればよい。この点については、着座センサ10aの取付構成とともに説明する。
【0023】
本体51内に収容されている機能ユニット60、すなわち洗浄ユニット61、便座・便蓋開閉ユニット62、およびファンユニット63は、衛生洗浄便座50の特定の機能を行うユニットである。制御部59は、操作部52、着座センサ10a、リモートコントローラ55、および入室センサ56からの信号を受けて衛生洗浄便座50の動作、特に前記機能ユニットを制御する。その具体的構成は特に限定されず、本実施の形態では、公知のマイクロコンピュータで構成されている。
【0024】
前記機能ユニット60のうち、洗浄ユニット61は、便座53に着座した使用者の局部を洗浄する洗浄機構であり、何れも図示されないが、便座53に着座した使用者の局部へ洗浄水を噴出する洗浄ノズル、洗浄ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給機構、洗浄ノズルに供給される洗浄水を温める温水ヒータ、使用者の局部等を洗浄後に乾燥する乾燥ヒータ、制御部59からの出力信号に基づき洗浄ノズルを駆動するノズル駆動部、および、制御部59からの出力信号に基づき温水ヒータおよび乾燥ヒータの温度を調節するヒータ調節部等から構成されている。
【0025】
便座・便蓋開閉ユニット62は、便座53および便蓋54を自動的に開閉する開閉機構であり、いずれも図示されないが、駆動モータ、駆動モータからの回転駆動力を便座および便蓋に伝達してこれらを開閉する動力伝達機構、便座および便蓋の開閉を検知する開閉センサ、並びに、制御部59からの出力信号に基づき便座および便蓋の開閉を駆動する便座・便蓋開閉駆動部等から構成されている。
【0026】
ファンユニット63は、衛生洗浄便座50の使用時に脱臭する脱臭ファン、洗浄後の臀部等を乾燥したりするため送風ファン、および、制御部59からの出力信号に基づき、これらファンを駆動するファン駆動部等から構成されている。また、便座ヒータ調節部64は、便座53内部に設けられている便座ヒータ65の温度を調節する。
【0027】
なお、前記洗浄ユニット61、便座・便蓋開閉ユニット62、ファンユニット63等の具体的な構成は特に限定されず、本発明の技術分野で公知の構成を好適に用いることができる。また、衛生洗浄便座50は、これら以外の機能ユニット60を備えていてもよい。
【0028】
操作部52は、本体51の右側に位置し、衛生洗浄便座50に備えられた機能のうち主要な一部を操作する。なお、操作部52には、使用者に操作上の各種情報を表示する表示部が備えられていてもよい。本実施の形態では、操作部52は、図3に示すように、本体51に一体化されているが、これに限定されず、別体であってもよい。
【0029】
便座53は、便蓋54とともに、便座・便蓋開閉ユニット62を介して本体51に回動自在に取り付けられている。便座53の具体的な構成は、前記便座ヒータを内蔵する公知の構成であればよいが、本実施の形態では、少なくとも着座部を金属で形成した構成となっている。
【0030】
具体的には、便座53は、いずれも図示されないが、合成樹脂製の便座ベースおよびステンレス、アルミニウム等の金属で形成された着座部から少なくともなっており、これらはそれぞれの内周縁および外周縁で接合され、その内部には水等の浸入を阻止できる密閉された空洞部が形成されている。この空洞部内には、着座部の裏面に設けられた面形状の便座ヒータ65(図2参照、図1には図示されない。)が備えられている。便座53がこのような構成であれば、使用者が便座53に着座するまでのごく短い時間で、便座ヒータ65により便座53を所望の温度までに加温することができるので、便座ヒータ65を常時通電しておく必要がなく省エネルギー効率を向上することができる。
【0031】
また、便座ヒータ65が面形状であれば、便座53全体を均一に加温することが可能となる。さらに、便座53内部に空洞部が形成されていれば、空気による断熱効果によって便座ヒータ65から発生した熱はほとんど着座部の加温に使われるので、着座部を効率よく加温することができる。
【0032】
便蓋54は、便座53の後側に、便座53とともに、便座・便蓋開閉ユニット62を介して本体51に回動自在に取り付けられている。
便蓋54の具体的な構成は特に限定されない。すなわち、衛生洗浄便座50の非使用状態では、便座53および便蓋54はいずれも閉じており、便器70の上面に、便座53、便蓋54の順で重ねられた状態となる。このとき、便蓋54は、便座53を覆うような形状となっていればよい。便座54の材質も特に限定されず、例えば、プロピレン樹脂等の公知の樹脂材料で形成されている。便蓋54は、入室センサ56および着座センサ10aによる使用者の検知によって自動で開閉される。まず、入室センサ56により使用者のトイレットルームへの入室が検知されれば、制御部59の制御により便座・便蓋開閉ユニット62が動作し、使用者の入室とほぼ同時に便蓋54が自動で開かれる。また、使用者が便座53に着座した状態から立ち上がり、着座センサ10aによる着座が検知されなくなれば、制御部59の制御により便座・便蓋開閉ユニット62が動作し、便蓋54が自動で閉じられる。
【0033】
リモートコントローラ55は、トイレットルーム内において便座53に着座した使用者が操作可能な位置に設置される。このリモートコントローラ55には、衛生洗浄便座50に備えられた機能を操作するための操作部が設けられている。リモートコントローラ55は、本体51の制御部59と無線通信可能に構成されており、リモートコントローラ55の操作部にて入力された操作信号は本体51の制御部59へ送信され、制御部59では受信した操作信号に応じた衛生洗浄便座50の動作制御を行う。
【0034】
入室センサ56は、トイレットルーム内に使用者が入室したことを検知し、トイレットルームの壁面等に設置される。本実施の形態において、入室センサ56は反射型の赤外センサで構成され、赤外線を所定位置へ向けて投射するとともに人体で反射された赤外線を検出して、この検出信号を本体51の制御部59へ送信する。本体51の制御部59では、入室センサ56から検出信号を受信して、トイレットルーム内に使用者が入室したことが検知される。
【0035】
[着座センサの構成]
次に、本実施の形態に係る衛生洗浄便座が備えている着座センサ10aの具体的な構成について、図4ないし図6に基づいて説明する。図4は、図1に示す衛生洗浄便座50の本体51に設けられている着座センサ10aの構成の一例を示す模式図であり、図5は、図4に示す着座センサ10aが備えている電磁波遮蔽部材の構成の一例を示す模式図である。また、図6(a)および(b)は、着座センサ10aに含まれる検出IC13の構成の一例を示す模式図である。なお、図5では、着座センサ10aの正面図と、この正面図に対応する横側面図および縦側面図とが、点線により位置関係を対応付けて示されている。
【0036】
本実施の形態で用いられる着座センサ10aは、静電容量式センサであり、具体的には、図3に示すように、アンテナ電極11、抵抗12、検出IC13、および支持基板21を備えている。アンテナ電極11は、導電性の線状体であって、人体が接近することにより静電容量が増加する。アンテナ電極11は抵抗12を介して検出IC13の入力端子に接続されている。アンテナ電極11において静電容量が変化すれば、その変化は抵抗12を介して検出IC13によって検出される。検出IC13は、その検出した静電容量の変化に応じたデジタルの電気信号(デジタル信号)を生成し、当該デジタル信号を出力端子から図示されない家電製品の制御部に出力する。制御部59では、所定の制御により、入力されたデジタル信号から使用者が便座53に着座しているか、または、着座する直前にあると判定するよう制御する。
【0037】
前記アンテナ電極11、抵抗12および検出IC13は、いずれも支持基板21の表面に固定されている。特に、アンテナ電極11は、所定のパターンで支持基板21の表面に配線されて固定されている。アンテナ電極11の材質は特に限定されず、銅やアルミニウム、またはその合金等の各種金属材料が用いられる。検出IC13は、アンテナ電極11おける静電容量の変化を検出する静電容量検出器であり、その具体的な構成は特に限定されず、公知の静電容量の検出回路が用いられる。検出回路の具体的構成の一例については後述する。
【0038】
支持基板21は、本実施の形態では、プリント配線技術で公知のリジッド基板であり、その形状は長方形状で、そのサイズは、例えば20mm×50mmである。もちろん支持基板21の具体的な構成はこれに限定されず、基板の種類としてはフレキシブル基板であってもよいし、その形状やサイズも装備の対象となる衛生洗浄便座の具体的構成や種類に応じて適宜設定することができる。支持基板21の材質も特に限定されず、リジッド基板またはフレキシブル基板にかかわらず、プリント配線基板として公知の樹脂材料が好適に用いられる。
【0039】
また、本実施の形態では、支持基板21がプリント配線基板として用いられるリジッド基板であるため、支持基板21へのアンテナ電極11および検出IC13の固定方法は、プリント配線基板で公知のパターン配線技術やICの実装技術が好適に用いられる。本実施の形態では、アンテナ電極11は、図3に示すように、つづら折り状のパターンで配線されているが、このパターン配線は、フォトレジスト技術を利用して形成される。この場合、アンテナ電極11は、支持基板21の表面に連続した1本の配線パターンとして積層された導電層となる。あるいは、支持基板21がプリント配線基板であっても、フォトレジスト等の公知のパターン配線技術を用いずに、アンテナ電極11を配線することもできる。たとえば、アンテナ電極11として、ケーブル状の線状体が用いられた場合には、適宜折り曲げて所定のパターンに形成して、支持基板21の表面に公知の接着剤や固定部材等で固定することで配線してもよい。
【0040】
アンテナ電極11の配線パターンは特に限定されず、アンテナ電極11の種類、支持基板21の形状、アンテナ電極11および検出IC13の配置デザイン、支持基板21の表面に固定される他の素子や他の配線等に応じて、適切なパターンが設計される。例えば、本実施の形態では、長方形状の支持基板21において、長手方向を横方向とすれば、支持基板21の表面は横方向に2分割され、一方の領域(図3では向かって左側の領域)にアンテナ電極11がつづら折り状のパターンで配線されており、他方の領域(図3では向かって右側の領域)に抵抗12および検出IC13が固定されている。この構成においては、アンテナ電極11は、支持基板21の縦方向に沿って複数回往復するようにつづら折り状のパターンで配線されることで、所望の検出精度で静電容量の変化を有効に検出できるように、アンテナ電極11の長さを確保することができる。
【0041】
なお、図3に示すつづら折り状のパターンは、縦方向に沿って3回半往復する形状となっているが、支持基板21がより細長い形状であったり、アンテナ電極11の長さをより長くしたりする場合であれば、往復の回数を増やせばよい。あるいは、抵抗12および検出IC13の領域に及ばない程度に、横方向に複数回往復する形状であってもよい。また、つづら折り状以外に渦巻き状やこれらを組み合わせた形状のパターンであってもよい。
【0042】
本実施の形態では、支持基板21はリジッド基板であるので、着座センサ10aを衛生洗浄便座50の本体51内に取り付けるために、支持基板21にはビス穴22が形成されている。本実施の形態では、図4に示すように、支持基板21の横両端部であり、各端部の縦側の中央部に円形のビス穴22がそれぞれ形成されているが、これに限定されず、支持基板21の形状や家電製品の種類、取り付けの位置等に応じて、適切な位置とすればよい。また、ビス穴22の数も特に限定されず、着座センサ10aを家電製品の所望の位置に適切に取り付けて固定できるような数であればよい。なお、着座センサ10aを家電製品へ取り付けるための構成は、前記ビス穴22に限定されず、例えば、支持基板21の裏面に接着剤を塗布して貼り付ける構成を採用してもよい。
【0043】
このように、本実施の形態に係る着座センサ10aは、アンテナ電極11が支持基板21の表面で検出IC13とともに固定されているため、着座センサ10aの主要構成が一体化されていることになる。
【0044】
ここで、着座センサ10aによる人体検知の具体的な例について、図6(a)および(b)に基づいて説明する。着座センサ10aに含まれる検出IC13は、例えば、図6(a)および(b)に示すように、C−V変換回路34、電圧比較器35、抵抗36および37から構成されている。C−V変換回路34は、アンテナ電極11に接続されるとともに、電圧比較器35のプラス入力側ノード接続されている。また、電圧比較器35マイナス入力側ノードには、抵抗36および37が接続されている。抵抗36および37は図示されないが、基準電圧を生成する構成の回路に接続されている。
【0045】
さらに、電圧比較器35の出力側ノードは、図示されないが制御部59に接続され、制御部59にデジタル信号が出力される。C−V変換回路34は、静電容量を電圧に変換する回路であり、公知の構成の回路が用いられる。電圧比較器35は、公知のコンパレータが用いられる。抵抗36および37も一般的な抵抗が用いられる。
【0046】
検出IC13がこのような構成であれば、着座センサ10は、アンテナ電極11と周囲にあるグランドと見なすことができる物体(床、壁、または人体等)との間に発生する浮遊容量を、C−V変換回路34で電圧に変換して出力電圧として生成し、電圧比較器35により、検出IC13内で生成される基準電圧と出力電圧とを比較し基準電圧以上か未満かでデジタル出力信号の論理を変更する。
【0047】
例えば、図6(a)に示すように、トイレットルーム61に使用者すなわち人体が不在であると、浮遊容量も小さくなるため、C−V変換回路34の出力電圧は基準電圧を下回る。それゆえ、電圧比較器35の出力側ノードで出力されるデジタル出力信号はLOWレベルとなる。また、図6(b)に示すように、トイレットルーム61に使用者62すなわち人体が存在(着座状態であっても接近中であってもよい。)すると、アンテナ電極11との間の静電容量が増加するため、C−V変換回路34の出力電圧は基準電圧を上回る。それゆえ、電圧比較器35のデジタル出力信号はHIGHレベルとなる。
【0048】
さらに、着座センサ10aは、静電容量の変化の精度をより一層向上するために、支持基板21の適切な位置に電磁波遮蔽部材をさらに備えている。このように、電磁波遮蔽部材が設けられることで、アンテナ電極11の指向性をより一層向上させることができる。具体的には、図5に示すように、電磁波遮蔽部材として、支持基板21の表面側に設けられる遮蔽板31および32と、支持基板21の裏面に設けられる遮蔽膜33とが、着座センサ10aに備えられている。
【0049】
遮蔽板31および32は、支持基板21の表面側に突出するように設けられ、着座センサ10aによる人体検知の方向を、表面側の特定の方向に規制する。つまり、アンテナ電極11は、人体が接近することで、その静電容量が変化するが、遮蔽板31、32が支持基板21の表面側の適切な位置に設けられることで、特定の方向に人体が接近したときにのみ、アンテナ電極11の静電容量が変化するように、その指向性を向上することができる。特に図5の横側面図に示すように、支持基板21の横側の縁部には、遮蔽板31が、支持基板21の表面に垂直になるように設けられ、着座センサ10aの縦方向において人体検知の方向を規制する。また、図5の縦側面図に示すように、支持基板21の縦側の縁部にも、遮蔽板32が、支持基板21の表面に垂直になるように設けられ、着座センサ10aの横方向において検知方向を規制する。
【0050】
このように、支持基板21の周囲の縁部全てに遮蔽板31および遮蔽板32が設けられていれば、着座センサ10aは、支持基板21の表面側にほぼ垂直な方向のみで人体を検知するように規制される。なお、図5の横側面図では、遮蔽板31を説明する便宜上、遮蔽板32の記載を省略しており、同様に、図5の縦側面図では、遮蔽板32を説明する便宜上、遮蔽板31の記載を省略している。また、図5では、ビス穴22の記載も省略している。
【0051】
遮蔽板31、32の具体的構成は特に限定されず、本実施の形態では、各種金属等の導電性の材料で形成される板状部材が用いられる。遮蔽板31、32は、着座センサ10aの表面側に突出するよう設けられるので、後述するように、本体51への取り付けに際して、着座センサ10aと取り付け面との間隔を保持するスペーサとしても機能させることができる。したがって、スペーサとしての機能が必要となる場合には、ある程度の強度を有する板状部材とすればよいし、そのような機能が不要であれば、人体の検知方向を規制するための形状を維持できる程度の強度を有する板状部材であればよい。それゆえ、これら遮蔽板31、32の大きさや厚み等は特に限定されない。
【0052】
ここで、遮蔽板31、32が設けられる位置、突出の方向は、前記構成に限定されず、人体検知の方向に応じて適宜設定することができる。例えば、縦方向に人体検知を規制したいが、横方向には規制する必要がない場合には、遮蔽板32のみが設けられればよく、横方向に規制したいが縦方向に規制する必要がない場合には、遮蔽板31のみが設けられればよい。また、人体検知の方向に広がりを持たせたい場合には、遮蔽板31、32は、支持基板21の外側に向かって傾斜するように突出していればよいし、人体検知の方向を狭めたい場合には、遮蔽板31、32は、支持基板21の内側に向かって傾斜するように突出していればよいし、傾斜が外側および内側となる遮蔽板31、32が混在してもよい。また、図5に示す構成では、遮蔽板31、32は、支持基板21の縁の表面に立設するよう取り付けられているが、支持基板21の側面に取り付けられる構成であってもよい。あるいは、別途公知の取付部材を用いて支持基板21に取り付けられてもよい。
【0053】
図5に示す構成では、遮蔽板31、遮蔽板32は接地されている(横側面図では遮蔽板31が、縦側面図では遮蔽板32が、それぞれ接地されている)。前記のとおり、これら遮蔽板31、32は、導電性の板状部材であるため、これにアース配線を接続することで、着座センサ10aを接地電位とすることができる。なお、着座センサ10aの接地方法は、これら遮蔽板31、32を接地する構成に限定されず、公知の他の方法を用いることができる。
【0054】
次に、遮蔽膜33は、人体検知の方向の対象外である裏面側からの影響を排除するために、支持基板21の裏面に設けられている。その具体的な構成は特に限定されないが、本実施の形態では、アルミニウムテープ等、金属材料からなるテープが用いられる。このようなテープであれば、支持基板21の裏面に接着剤等により貼り付けることができるとともに、着座センサ10aの裏面側に厚みが増大することを抑制することができる。
【0055】
本実施の形態では、遮蔽膜33は、支持基板21の裏面全面を覆うように設けられてもよいが、支持基板21におけるアンテナ電極11が配線されている領域に対応するように設けられることが好ましい。つまり、図4に示すように、支持基板21の表面のうち、アンテナ電極11が配線されている領域をアンテナ配線領域30(図4において破線で囲まれている領域)とすれば、遮蔽膜33は、少なくとも、アンテナ配線領域30に対応する裏面の領域に設けられていればよい。着座センサ10aにおける検知の要部はアンテナ電極11であるため、このアンテナ電極11に対して、裏面側から何らかの影響が及ぼされないようにすればよいので、必要最低限の領域にのみ遮蔽膜33を設ければよい。なお、必要に応じて、検出IC13の裏側等も遮蔽膜33で覆うように構成してもよい。
【0056】
[着座センサの本体への取付構成]
次に、前記着座センサ10aを衛生洗浄便座50の本体51内に取り付ける構成について、その取付位置も含めて、図7および図8に基づいて説明する。図7は、図1に示す衛生洗浄便座50の本体51の外観構成を模式的に示す正面図であり、図8は、図7に示す本体51において、その内部に設けられる着座センサ10aの位置の例を示す模式的断面図である。なお、図7では、本体51の正面図(図中向かって右)と、この正面図に対応する部分断面図(図中向かって左)とが、点線により位置関係を対応付けて示されている。また、図7では、着座センサ10aは、本体51の内部に位置しているため、図1と同様に、点線で外形状を図示している。
【0057】
図7に示すように、本体51の下方部51bには、洗浄ノズル進出開口51c、乾燥風吹出開口51d等が形成されているため、下方部51bは閉じられた便蓋53の下方に位置している。一方、上方部51aには、その両側に、便座53および便蓋54の回動軸を取り付ける回動軸取付部51eが形成されている。本実施の形態では、便蓋53は、当該便座53の着座部から本体51側に向かって取付腕部が延びており、この取付腕部に回動軸が接続される。
【0058】
ここで、便座53が閉じた状態では、取付腕部が上方部51aに嵌合することで、本体51の前方における表面から便座53の着座面にかけて連続した面が形成される。それゆえ、本体51の上方部51aは、取付腕部の形状に対応して、両端側が切り欠かれた形状となっている。言い換えれば、上方部51aは、下方部51bから見れば、当該下方部51bの上側に突出している位置関係となる。この突出した上方部51aの前方に着座センサ10aを配置すれば、便座53が閉じた状態でも確実に便座53の上側に露出するので、便座53に着座した使用者を適切に検知することができる。つまり、本実施の形態においては、着座センサ10aは、本体51の内部であり、かつ、便座53を閉じた状態で、当該便座53の着座面よりも上側となる位置に設けられればよい。
【0059】
着座センサ10aを本体51の上方部51aに装備する具体的な構成は特に限定されないが、本実施の形態に係る着座センサ10aは、静電容量式センサであるので、光学式センサのように検知光の出射窓を形成する必要がなく、本体51の内部に配置することができる。具体的には、図7の部分断面図(向かって左側の図)に示すように、上方部51aの前方の内面に、その表面を向けるように着座センサ10aを配置し、ビス23で固定すればよい。なお、上方部51aの前方の内面には、ビス23を挿入するために、ボス51fが形成されていればよい。
【0060】
このように、本実施の形態では、着座センサ10aは、アンテナ電極11における静電容量の変化から人体検知を行う構成となっており、検出電極として、従来のような平板状である程度大きな面積が必要な電極ではなく、線状のアンテナ電極11が用いられている。それゆえ、公知の静電容量式センサのように、便座53に検出電極を内蔵する必要がなく、検出電極そのものを小さくすることができる。
【0061】
特に、本実施の形態のように、アンテナ電極11と検出IC13とを一体化すれば、着座センサ10aそのものを小型化することができる。特に、また、アンテナ電極11の配線の形状を適宜設計することで、人体検知の指向性が調整しやすくなり、人体検知の精度を向上することができる。さらに、本体51に出射窓を形成するような加工が不要となるので、本体51の成形加工が容易となるだけでなく、出射窓に保護部材を取り付ける必要もない。それゆえ、便座53に検出電極を内蔵することによる構成の複雑化や製造過程の煩雑化を回避することができるとともに、本体51へ着座センサ10aを設置する位置の制限が小さくなり、設置の位置の自由度が向上する。
【0062】
しかも、本実施の形態では、アンテナ電極11は支持基板21上で、つづら折り状のパターン等、所定のパターンで配線されている。それゆえ、支持基板21の表面では、アンテナ電極11の位置は安定して維持することができる。したがって、本体51に着座センサ10aを装備するときに、アンテナ電極11の取り付け状態にばらつきが発生することを回避することができる。
【0063】
加えて、着座センサ10aに、縦方向の人体検知を規制する遮蔽板31が設けられていれば、この遮蔽板31は、着座センサ10aと内面との間隔を保持するスペーサとして機能する。これにより、別途スペーサを用いることなく、着座センサ10aを適切な位置関係で本体51の内部に取り付けることができる。
【0064】
また、着座センサ10aは、本体51の内部であれば、その内部構成に合わせてさまざまな位置に取り付けることができる。例えば、図7および図8のAの位置に示すように、本実施の形態では、本体51の筐体57の内面に直接取り付けてもよいし、図7のBの位置に示すように、洗浄ユニット61の上部に取り付けてもよい。洗浄ユニット61は、本体51のほぼ中央に位置しているので、着座センサ10aを取り付ける構成として好ましい。なお、図8では、洗浄ユニット61は、説明の便宜上、外形状のみを破線で示している。
【0065】
ここで、本実施の形態では、着座センサ10aは、静電容量の変化を検出するものであるが、便座53としては、金属製の着座部を備えている構成が採用されているので、便座53は、着座センサ10aからみれば遮蔽部材として機能する。それゆえ、着座センサ10aは、便座53の着座面よりも上側に配置される必要がある。この場合、図8のAの位置に示すように、本体51の前方の内面に取り付けても、図8のBの位置に示すように、洗浄ユニット61の上部に取り付けても、便座53の着座面の上側とすることができる。
【0066】
また、前記AおよびBの位置のいずれに取り付ける場合でも、遮蔽板31を適宜傾斜させることで、所望の方向で人体を適切に検知できるように規制することができる。図8では、AおよびBの位置のいずれにおいても、下側の遮蔽板31を、便座53の着座面の上側となる方向に傾斜させるだけでなく、上側の遮蔽板31を前方側に傾斜させている。これにより、着座の検知には無関係な衛生洗浄便座50の上方の影響を排除することができ、前方に使用者が着座しているか否かを、より一層適切に検知することができる。
【0067】
さらに、本実施の形態では、便座53が金属製の着座部を備える構成であることにより、人体検知および検知結果を用いた制御に関して、次のような利点が得られる。
【0068】
まず、制御上、便座53の加温の開始を、使用者の着座直前に設定することができる。つまり、着座センサ10aは、静電容量の変化を検出するため、実際に着座しなくても、トイレットルームに入室して着座するまでの間に、使用者の存在を検知することができる。そして本実施の形態では、便座53の着座部が金属で形成されていることから、便座53を迅速に暖めることができる。これにより、着座直前に加温を開始する制御が実施できるため、便座53を加温する時間を削減することができるので、省エネルギー効果を高めることができる。
【0069】
また、着座センサ10aから見れば、金属製の着座部全体が遮蔽部材として機能することになる。それゆえ、下側の遮蔽板31と着座部との双方により、衛生洗浄便座50の下方側からの影響をより有効に排除することができ、着座センサ10aの検知におけるノイズを低減し、人体検知の精度を向上させることができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、便座53の着座部は金属製でなく、従来の樹脂製であってもよいことはいうまでもない。また、本実施の形態で、着座センサ10aに設けられる、スペーサを兼用する遮蔽部材としては、縦方向の検知を規制する遮蔽板31を例示したが、横方向の検知を規制する遮蔽板32であってもよいし、これら両方の遮蔽板31、32であってもよい。
【0071】
さらに、本実施の形態では、図1および図7に示すように、着座センサ10aは本体51の前方中央の向かって右寄り(着座した使用者から見れば左寄り)に設けられているが、これに限定されず、便座53の着座面の上側であれば、本体51の前方のさまざまな位置に着座センサ10aを設けることができる。
【0072】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、着座センサ10aが、アンテナ電極11と検出IC13とが支持基板21上に固定されて一体化されている構成について説明したが、本実施の形態では、アンテナ電極11が検出IC13と一体化されていない構成の例について具体的に説明する。図9(a)は、本発明の実施の形態2に係る衛生洗浄便座50の制御系統の概略構成を示すブロック図であり、図9(b)は、本実施の形態に係る衛生洗浄便座50に設けられる着座センサ10bの具体的構成を示す模式図である。また、図10(a)および(b)は、本実施の形態で用いられる他の構成の着座センサ10c、10dの具体的構成を示す要部ブロック図である。
【0073】
図9(a)に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄便座50は、前記実施の形態1で説明したとおりの構成を備えているが、アンテナ電極11および検出IC13が一体化された着座センサ10aに代えて、独立した棒状のアンテナ電極14を備える着座センサ10bが設けられている。着座センサ10bの基本的な構成も、前記着座センサ10aと同様であるが、図9(b)に示すように、アンテナ電極14は、それ単独で形状保持性を有していればよく、外力によって自由に変形できるフレキシブルな構成であってもよい。アンテナ電極14は、リード線15を介して検出IC13に接続されている。なお、アンテナ電極14およびリード線15の具体的な構成(材質や形状等)は従来公知の構成を用いればよく、特に限定されない。
【0074】
このように、アンテナ電極14が検出IC13に一体化されていなければ、アンテナ電極14のみを、本体51の前方の内部の特定の位置に設けることができる。アンテナ電極14を設ける位置も特に限定されず、前記実施の形態1で説明したように、洗浄ユニット61等の機能ユニットの上部(図8のBの位置参照)、または、本体51を構成する筐体57の内面(図8のAの位置参照)であればよい。
【0075】
ここで、アンテナ電極14が検出IC13とは別個の部材となっていれば、検出IC13の実装の自由度も向上できる。例えば、検出IC13は、前記実施の形態1のように、支持基板21に固定され、この支持基板21をアンテナ電極14の近傍でより安定して保持できる位置に取り付けることができる。あるいは、図9(a)の要部ブロック図に示すように、制御部59となるマイクロコンピュータを実装する制御基板16上に、検出IC13も実装して、これらを一体化してもよい。さらには、検出IC13を独立した集積回路等として構成せずに、制御部66の機能構成である検出部67として組み込んでもよい。この場合、検出部67は、制御部66としてのマイクロコンピュータのCPUが、同マイクロコンピュータの記憶部に格納されるプログラムに従って動作することにより実現される。
【0076】
このように、本実施の形態では、衛生洗浄便座50が備える着座検出器が、アンテナ電極11および検出IC13を一体化した構成(着座センサ10a)ではなく、アンテナ電極14が、リード線15を介して検出IC13に接続されているか(着座センサ10b)、制御基板16に接続されているか(着座センサ10c)、あるいは、制御部66に直接に接続されているか(着座センサ10d)、いずれの構成であってもよい。また、着座センサ10b〜10dを構成する構成要素のうち、少なくともアンテナ電極14のみを、本体51の前方の内部に取り付ければよいので、検出IC13は、同じ支持基板に実装される形で制御部59と一体化されてもよい(着座センサ10c)し、制御部66の機能構成となる形で一体化されてもよい(着座センサ10d)。
【0077】
なお、本実施の形態および前記実施の形態1のいずれにおいても、従来の便座53に内蔵される静電容量式センサと比較して、着座センサ10a〜10dが小型化されているので、本体51の内部へ取り付ける際に、衛生洗浄便座50の全体の設計や個々の部材の設計、製造工程等を大幅に見直す必要がなくなる。つまり、本実施の形態で開示した構成の衛生洗浄便座50に限らず、さまざまな形状や種類のトイレ装置に対しても前記着座センサ10a〜10dを設置することができる。それゆえ、着座センサ10a〜10dが設置される位置の自由度を高めることができる。
【0078】
衛生洗浄便座の構成上、本実施の形態で開示する以外のタイプであっても、通常、本体51には少なくとも便座53が回動可能に取り付けられるので、便座53が閉じた状態であれば、本体51の上方部51aは必然的に着座面に近くなる。また、本体51には機能ユニット60を内蔵することから、ある程度の容積が必要になり、それゆえ、本体51の上方部51aの表面を便座53の着座面と合わせてほぼ連続した面となるように構成したとしても、本体51には、着座面よりも上側となる領域が含まれることになる。本発明は、従来全く考慮されていなかった、この本体51の構成に着目したものであり、前記のとおり、優れた作用効果を得ることができる。
【0079】
なお、本実施の形態および前記実施の形態1では、アンテナ電極11は、導電性の線状体が用いられているが、本発明はこれに限定されず、二次元的に広がりを有する面状体であってもよいし、着座センサ10aが設けられる衛生洗浄便座の種類や構成によっては、三次元的な立体形状を有するものであってもよい。すなわち、アンテナ電極11は、人体が近接することにより静電容量が変化する導電体であればよく、その構成や材質は、線状体のアンテナ電極11に限定されない。また、本実施の形態では、アンテナ電極11は、銅、アルミニウム、これらの合金等からなっているが、もちろんこれに限定されず、一部に非導電性の材料を含む複合体として構成されてもよい。
【0080】
本発明は前記の実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、着座センサを備える衛生洗浄便座に好適に用いることができ、特に、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄機能に加えて、便座暖房機能を備える衛生洗浄便座に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄便座の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す衛生洗浄便座が備える制御系統の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す衛生洗浄便座の本体の構成を示す模式図である。
【図4】図1に示す衛生洗浄便座が備える着座センサの構成を示す平面図である。
【図5】図4に示す着座センサに電磁波遮蔽部材を備えた構成を示す模式図である。
【図6】図4に示す着座センサに含まれる検出ICの構成の一例を示す模式図である。
【図7】図1に示す衛生洗浄便座の本体の正面および部分断面の構成を示す模式図である。
【図8】図1に示す衛生洗浄便座の本体内部に設けられる着座センサの位置を示す模式的断面図である。
【図9】(a)は、本発明の実施の形態2に係る衛生洗浄便座が備える制御系統の概略構成を示すブロック図であり、(b)は、(a)に示す衛生洗浄便座が備える着座センサの構成を示す模式図である。
【図10】(a)および(b)は、図8(a)に示す衛生洗浄便座が備える着座センサの他の構成を示す要部のブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
10a 着座センサ
10b 着座センサ
10c 着座センサ
11 アンテナ電極
13 検出IC(静電容量検出器)
14 アンテナ電極
21 支持基板
31・32 遮蔽板(電磁波遮蔽部材)
33 遮蔽膜(電磁波遮蔽部材)
50 衛生洗浄便座(トイレ装置)
51 本体
53 便座
57 筐体
58 底板
59 制御部(制御器)
60 機能ユニット
61 洗浄ユニット(機能ユニット)
66 制御部(制御器)
67 検出部(静電容量検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座と、
当該便座が起立位置と倒伏位置との間で回動可能に取り付けられるとともに、少なくとも当該便座に着座した使用者の局部を洗浄する洗浄ユニットを、機能ユニットとして内蔵する本体と、
前記倒伏位置における前記便座への使用者の着座を検知する着座センサと、を備え、
前記着座センサとして、導電体からなり、人体が近接することにより静電容量が変化するアンテナ電極、および、当該アンテナ電極に電気的に接続され、当該アンテナ電極おける静電容量の変化を検出する静電容量検出器、を備えている静電容量式センサが用いられるとともに、
少なくとも前記アンテナ電極は、前記本体の内部であり、かつ、前記倒伏位置における便座を閉じた状態で当該便座の着座面より上側となる位置に設けられている、衛生洗浄便座。
【請求項2】
前記本体は、前記機能ユニットを内部に収容する空間を有し下面が開放された筐体と、当該筐体に当該筐体の下面を塞ぐように取り付けられ、その上面で前記機能ユニットを固定する底板と、を備え、
前記アンテナ電極は、前記本体の内部のうち、前記機能ユニットの上部、または、前記筐体の内面に取り付けられている、請求項1に記載の衛生洗浄便座。
【請求項3】
前記静電容量式センサは、前記アンテナ電極および前記静電容量検出器が単一の支持基板上に固定されて一体化され、前記本体の内部に設けられている、請求項1または2に記載の衛生洗浄便座。
【請求項4】
前記本体には、前記機能ユニットを少なくとも制御する制御器が内蔵され、
前記静電容量式センサの前記静電容量検出器は、前記制御器と一体化されている、請求項1または2に記載の衛生洗浄便座。
【請求項5】
前記便座は、少なくとも着座部が金属で形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の衛生洗浄便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−180665(P2010−180665A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27280(P2009−27280)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】