衛生用紙入りカートン
【課題】 箱の取出口(開口部)の内面に取出口を被覆する窓貼りフィルムの貼りつけを必要としない衛生用紙入りカートンを提供する。
【解決手段】 細長い取出口を有し、該取出口を有する面の内側にフィルムが配置されていない衛生用紙入りカートンにおいて、該取出口は、取出口が配置されている面の中央部に箱の長手方向に伸びると共に、少なくとも曲線部を有することにより短手方向内側に凸形状の開封用の切込線を有する。開封用の切込線を挟んでその両側に、箱の長手方向に沿って折れ線によって構成されるヒンジ部が配置されている。開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線とが、それぞれの端部において、切込線によって接続されている。前記開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線と、これらを接続する前記切込線とによって囲まれ、短手方向内側に凸形状の第1フラップ部を形成して、該一対の第1フラップ部は、取出口の開封後に扉として機能するようにした。
【解決手段】 細長い取出口を有し、該取出口を有する面の内側にフィルムが配置されていない衛生用紙入りカートンにおいて、該取出口は、取出口が配置されている面の中央部に箱の長手方向に伸びると共に、少なくとも曲線部を有することにより短手方向内側に凸形状の開封用の切込線を有する。開封用の切込線を挟んでその両側に、箱の長手方向に沿って折れ線によって構成されるヒンジ部が配置されている。開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線とが、それぞれの端部において、切込線によって接続されている。前記開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線と、これらを接続する前記切込線とによって囲まれ、短手方向内側に凸形状の第1フラップ部を形成して、該一対の第1フラップ部は、取出口の開封後に扉として機能するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にティシュペーパー等の衛生用紙を収納したカートンに関するものである。更に詳しく述べると、紙箱の上下少なくとも一方の面に、衛生用紙を取出すための取出口(開口部)を設けると共に箱の内面に取出口を被覆する窓貼りフィルムの貼りつけを必要としない所謂フィルムレスティシュカートンの取出口の構造に関する。
なお、本発明でいう「衛生用紙」とは、ティシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙などと呼ばれるもの)、ちり紙、ペーパータオル(キッチンペーパーなど)、トイレットペーパー(ロールを除く)、ワッティング(紙綿)などの使い捨て紙を総称する概念である。
【背景技術】
【0002】
家庭やオフィス等で広く使われているティシュペーパーを収納したカートンは、略直方体の収納箱の一面(通常は箱の上面)に、ティシュペーパーを取り出すための取出口を設けた構造である。使用者は、箱の一面(通常は箱の上面)に設けられているほぼ楕円形状のミシン目状切込線に沿って切取片を切り離して、取出口(開口部)を細長く開く。この取出口の内面には、通常、取出口を被覆するポリエチレンフィルム等のフィルムが貼着されている(特許文献1参照)。
このフィルムの中央部には直線状のスリットが設けられ、内容物であるティシュペーパーは、このスリットを通して外部へ引き出される。カートン内部のティシュペーパーは、通例2枚一組として、一組一組が継続して箱から取出せるように交互に折り重ねられて収納され、スリットからティシュペーパー1組が引き出されたときに、次のティシュペーパー1組が箱の内部からスリットに保持される位置まで引き出されるように、所謂ポップアップ方式で折り畳まれている。
箱の内面に貼着した前記フィルムは、取出口の開口面積を小さくすることで外部の塵や異物に対して内容物を保護し、また、ティシュペーパーを外部に取出す際に、フィルムのスリット間での摩擦により所謂ポップアップしたティシュペーパーが箱の内部に落ち込むことを防ぎ、ティシュペーパーを所定位置に保持する役割を果たしている。
【0003】
これに対し、ポリエチレン等のプラスチックフィルムの材料コストおよび同フィルムを箱に貼りつける工程を省く目的で、取出口内面にフィルムを貼着しない構造の所謂「フィルムレスティシュカートン」が既に提案されている。すなわち、箱入りティッシュペーパーの取出口にフィルムを使用しないで、取出口を観音開き状に開口可能したティシュペーパー包装箱が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照、)。
また、前例と同様な「フィルムレスティシュカートン」において、箱の長手方向に細長く、ほぼひし形に形成した取出口の長手方向両端部を特定な角度形状に開口させることで、取出し中のティシュペーパーを取出口の両端部で保持できるようにして、箱内部に落ち込みをなくしたティシュペーパー入りカートンが知られている(例えば、特許文献5参照)。
更に、取出口の形状をひし形に限定しないで、取出口の両端縁にスリットを形成してティシュペーパーを挟むようにしたカートンも知られている(例えば、特許文献6参照)。
【0004】
一方、ティシュペーパー入りカートンの上面とこれに対向する下面の2面に、ティシュペーパー取出口を設けて、カートンの両面からティシュペーパーを取り出すことができるようにしたティッシュペーパー用箱が知られている(例えば、特許文献7参照)。
【0005】
近年、環境問題の一つである廃棄物の処理に関して、特に容器包装廃棄物について、消費者の分別排出、自治体の分別収集、事業者のリサイクル責任を明確にした「容器リサイクル法」が1997年から本格施行され、循環型経済社会の構築に向けた動きが加速している。こうした動きの中で、ティシュペーパー、キッチンペーパーなどの衛生用紙の使用済みカートンを廃棄するとき、取出口に貼着したプラスチックフィルムをカートン本体からひき剥がす必要がなくなり、あるいはカートンを古紙として回収しリサイクルするとき、紙とプラスチックとに分別する手間が省け、そのまま押しつぶすだけでリサイクル処理にまわすことができるなどの利点により「フィルムレスティシュカートン」の需要は、ますます増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭41−6464号公報
【特許文献2】実開昭57−167080号公報
【特許文献3】特開平9−150871号公報
【特許文献4】実開平4−80878号公報
【特許文献5】実開平6−72883号公報
【特許文献6】特開平9−30573号公報
【特許文献7】実開昭61−32070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のフィルムレスティシュカートンにおいては、前記特許文献2〜6の場合、取出口両端部の形状が直線状であったり、フラップ端部の形状が角張っていたりすることにより、ティシュペーパーを外部に取出す際に、ティシュペーパーが取出口の角部等に引っかかりやすく、上方に引き上げたときに破れたり、ティシュペーパー一組一組ずつがポップアップ方式で継続してスムーズに取出すことができないという問題がある。
【0008】
ティシュペーパーの紙力は、収納箱内に保持されているティシュペーパーを引き出す方向での紙力が問題であるが、紙力はティシュペーパーの他の品質要件との関連もあり、その変更は容易ではない。また、ティシュペーパー取出口の大きさは、大きい方が破れにくいが、大きすぎるとポップアップしたティシュペーパーを取出口の所定位置に保持しにくくなり、箱の中に落ちやすくなるという問題が発生する。
【0009】
一方、特許文献5に示すカートンは、略ひし形状をした取出口の長手方向両端部の開口角度を60度から170度に設定したものであるが、その開口角度が60度未満のものではティシュペーパーを取出す際に角部に引っ掛かって破れたり取出しにくくなる一方、170度を超えると把持機能が低下して、ティシュペーパーが箱の中に落下しやすいなどの問題があった。
また、特許文献6のカートンの場合はスリットの入り口が狭いので、ティシュが入り易いと言えないと共に、スリット部の形状が滑らかな形状でないので、ティシュが角部に引っ掛かり易いとも言える。
【0010】
そればかりでなく、取出口が大きすぎると、外の塵その他の異物が箱内に入り込みやすく、また、キッチンまわりで使用したときは、食材に付着した泥、埃、あるいは調理で使用する水や油が取出口から箱の中に飛び込んで、清潔に保持すべき内容物を汚したり濡らしたりしやすいという問題が発生する。
ところで、前記特許文献1〜6に示したように、ティシュペーパーカートンの多くは、略直方体状の収納箱の一面(通常上面)に、ティシュペーパーを取り出すための取出口を設けるようになっていた。このティシュペーパーカートンは、ティシュペーパーの取出口が上面にしかないため、卓上や床上に置いて上面の取出口からティシュを取出すしか使用の方法がない。そのために箱の内部に収納されたティシュペーパーが少なくなると下の方のものは取出しにくくなる。それを取出すには箱を一方の手でおさえる必要があり、また少ないティシュペーパーを持ち上げるため箱底面に底上げのためのボトムアップ機構を配置しなければならなかった。また、使用の際に、卓上または床上のスペースを取るために場所塞ぎともなっていた。
【0011】
上記問題点を改善する試みとして、先の特許文献7としてティシュペーパー入りカートンの上面とこれに対向する下面の2面にティシュペーパー取出口を設けて、使用時の置き方を問わず、箱の上下2面からティシュペーパーを取出すことができるものが提案されている。しかし、箱の内部に収納されたティシュペーパーの残りが少なくなると、底上げ機構を設置しても、ティシュペーパーを取出口の所定位置に保持しにくくなり、箱の中に落ちやすくなるという問題が発生して中身のティシュペーパーが取出口からスムーズに取出せないことがある。ましてや、ティシュペーパー箱を側面を下にして立てて使用すると、中のティシュペーパー束がその重みで湾曲したり、下方にずれ下がるためにティシュペーパーの最後の1枚まで安定してポップアップできないという問題が発生している。
【0012】
本発明の目的は、ティシュペーパーを外部に取出す際に、開口部の角部などに引っ掛かって破れたり、取出しにくくなったりする問題を解決すると同時に、カートン使用後の廃棄時に、紙とプラスチックとに分別する手間が省けるフィルムレスカートンを提供することである。また、本発明の他の目的は、使用中に箱の中にティッシュペーパーが落下せずにティシュペーパー一組一組ずつをポップアップ方式で継続してスムーズに取出すことができると共に、取出口から外部の塵や異物も侵入し難い構造のフィルムレスカートンを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、ティシュペーパーの取出しの際、カートンの上下2面の何れからも取出すことができ、カートン上下面の差別なく使用できるようにするとともに、カートンの置き方も、平面置き、立て置き(垂直置き)何れも使用可能であり、狭い場所において使用することができ、また、収納されたティシュペーパーの残りが少なくなったときにも、中身のティシュペーパーを取出しやすくしたフィルムレスカートンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は次のような手段を包含する。
本発明の第1は、箱の上下少なくとも一方の面に、箱の長手方向に細長い取出口を有し、該取出口を有する面の内側にフィルムが配置されていない衛生用紙入りカートンにおいて、
該取出口は、取出口を有する面の中央部に、箱の長手方向に間隔を置いて伸びると共に、少なくとも曲線部を有することにより短手方向内側に凸形状の2本または2組の開封用の切込線と、その端部を接続する端部切込線とによって囲まれた帯状切取部を有し、
該帯状切取部を挟んでその両側に、箱の長手方向に沿って折れ線によって構成されるヒンジ部が配置され、
前記2本または2組の開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線とが、それぞれの端部において、切込線によって接続されており、
前記開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線と、これらを接続する前記切込線とによって囲まれ、短手方向内側に凸形状の一対の第1フラップ部が形成されていることを特徴とする衛生用紙入りカートンである。
【0014】
本発明の第2は、前記箱の長手方向に沿って配置されるヒンジ部を構成する折れ線は、箱の長手方向に沿って外側に向かって膨らんだ曲線状であることを特徴とする請求項1に記載の衛生用紙入りカートンである。
【0015】
本発明の第3は、前記帯状切取部両端の端部切込線は、箱の内側に向かって膨らんだ曲線状に形成され、前記開封用の切込線の端部と前記ヒンジ部を構成する折れ線の端部とを接続する前記切込線は、箱の外側に向かって膨らんだ曲線状に形成されることにより、これら二つの切込線は連続した波形状をなし、この波形状の切込線により形成される取出口端縁部と、前記第1フラップ部の端縁部とが、取り出し中の紙を摩擦力によって保持する挟み部として機能することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した衛生用紙入りカートンである。
【0016】
本発明の第4は、前記帯状切取部を構成する2本または2組の切込線の間隔は、取出口開封前に、間隔の狭い部分において、5〜20mmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載した衛生用紙入りカートンである。
【0017】
尚、本発明における「切込線」は開封時に切離す線を意味し、「折れ線」は開封時に折り曲げ易くした線を意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のティシュペーパー、キッチンペーパーなどの衛生用紙を収納したカートンは、取出口を有する面にフィルムを配置しなくても、ペーパー取出し時には、扉として機能する一対の第1フラップ部、特に第1フラップ部の両端に形成される挟み部にペーパーが挟まれながら取り出されるので、取り出し途中のペーパーの落下が生じることがなく、取出しが容易である。また、この挟み部の作用により、ペーパーが1枚または1組毎に取り出され易いので、重なって必要以上に取り出されることも防止できる。
また、前記取出口は、曲線状の切込線と曲線状の折れ線とによって囲まれているので、ティシュペーパー等の取出しに際して、従来のようにティシュペーパーが開口部の角部に引っかかって破れることがない。特にティシュペーパーの場合、交互に折り畳んで収納されているため、取り出し時には、取り出されるティシュペーパーの取り出される方向が交互に変化するため、第1フラップ端部の挟み部も交互に入れ替わって挟むことになるが、第1フラップ端部の曲線状の切込線と、切取部端部の端部切取線とは、連続した滑らかな波形状をなしているため、この挟み部間の移動がスムーズに行われることになり、紙の破れや引っ掛かりの防止に優れている。
また、取出口における開口部が小さく、ペーパーを取り出さないときには、2枚のフラップに取出口を閉止する方向に力が作用するので、塵や異物も侵入し難い構造である。
さらに、取出口の内側にフィルムを配置しなくてもよいので、廃棄時に紙製のカートンとフィルムの分別作業が必要なくなり、環境にやさしい製品である。さらに、フィルムを無くすことにより材料費の節約に留まらず、製造工程が短縮でき、省エネルギ、省資源を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は箱の上下両面に、ティシュペーパー取出口を設けた本発明のカートンの一例を示す展開図である。
【図2】図2は図1のカートン上面の取出口からティシュペーパーを取出すときの使用状態の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は図2のカートンを一部切欠いて示す側面図である。
【図4】図4は、本発明カートンの取出口に設けるフラップ部に挟持されるティシュペーパーを示した拡大斜視図である。
【図5】図5は本発明カートンのティシュペーパー取出口にジッパー形式の切れ目を設けた平面図である。
【図6】図6はカートンのティシュペーパー取出口に直線状スリットを設けた例を示す平面図であり、参考図である。
【図7】図7の(a)は、実質的に同一寸法の2本の平行なミシン目からなる2重線(ダブルミシン目線)が1組の切込線として構成されている例であって、上記した2重線(ダブルミシン目線)の切込線が、帯状切取部13の両側にそれぞれ配置されている例を示す平面図である。 図7の(b)は、ミシン目の切込部の長さが長短異なる2本の平行なミシン目からなる2重線が1組の切込線として構成され、該2重線におけるそれぞれのミシン目の切込部が千鳥状配置となるように、位相をずらして交互に位置するように配置された例であって、上記した千鳥状に配置した長短異なる長さの切込部を有する平行なミシン目からなる1組の切込線が、帯状切取部13の両側にそれぞれ配設されている例を示す平面図である。 図7の(c)は、図7の(b)に示したミシン目の部分拡大図である。
【図8】図8は本発明カートンの取出口に設けるフラップ部を底上げ部材として利用した状態を示す断面図である。
【図9】図9はティシュペーパー取出口の帯状切取部に摘み部用折れ線を設けて摘み部を形成させた本発明カートンの変形例を示す展開図である。
【図10】図10は第1フラップ部のヒンジ部端部に接続する小さな略円弧状切込線の形状を示す拡大図である。
【図11】図11は本発明カートンの置き方の例を示す説明図である。
【図12】図12は本発明のカートンの下面板にスタンド部材を一体的に組み込み、その下面板からスタンド部材を切り取って使用する場合の一例を示す展開図である。
【図13】図13はスタンド部材の組立方法の説明図である。
【図14】図14はスタンド部材の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に発明の実施形態に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
既に説明した通り本発明は、ティシュペーパー、キッチンペーパーなどの衛生用紙を収納する略直方体形状のカートンであり、少なくとも上面に取出口を有している。この発明において、カートンに収納される衛生用紙は、ティシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙などとも称する)、ちり紙、ペーパータオル(キッチンタオル、キッチンシート、あくとりシートと呼ばれる主にキッチンで使用されるペーパーを含んでいる)、トイレットペーパー(但しロールを除く)、ワッティング(紙綿)、などの使い捨て紙である(紙パルプ技術便覧第5版、第459頁参照、1992年1月30日発行、紙パルプ技術協会編集・発行)。本発明においては、これらの使い捨て紙の総称として、衛生用紙と言う語句を用いている。一般に、「ティシュペーパー」と言う語句は、顔ふき紙、トイレットペーパーなどの使い捨て紙全般を指す語句として用いる場合も多いが、狭義では、通常ドライクレープを有し、主に顔拭き用として用いるフェイシャルティシュペーパーに限定して用いており、本明細書では後者を採用した。また、「ペーパータオル」は、ふきん、タオルの代用品としてパルプ繊維を主原料として製造されるペーパーであり、この内、主にキッチンにおいて使用されるものをキッチンペーパーと称している。
【0021】
本発明におけるカートンは、木材パルプ、古紙などを原料とする厚紙などの紙材料を主体に製造した収納箱であって、主にティシュペーパー、ペーパータオル、等の衛生用紙を収納した収納箱である。更に詳しく述べると、紙箱の上下少なくとも一方の面(通常は上面)に、衛生用紙を取出すための取出口(開口部)を設けると共に箱の内面に取出口を被覆するスリットを有する窓貼りフィルムを設けない、所謂フィルムレスティッシュカートンの取出口の構造に特徴がある。
【0022】
本発明の取出口を形成するために、箱の上下少なくとも一方の面に、中央部長手方向に伸びる切込線を有している。この切込線は、直線状の切れ目(スリット)でもよいが、部分的につながりを有するミシン目状の切れ目でもよいし、包装業界で「ジッパー」と呼称されている切れ目が鉤形に屈曲した開封用破断線を包含し(包装産業の周知・慣用技術集第281頁参照、昭和53年12月20日特許庁発行)、これも本発明の切込線の一例である。なお、本発明のこの切込線は、後記の実施例に示すように、取出口の略中央部長手方向に、直線状に1本伸びるものでもよいが、通例は、取出口の幅方向に所定間隔をおいて略平行に形成させた2本または2組の切込線によって構成されている。そして、この切込線が2組の場合は、複数の例えば2本のミシン目などの切込線が2重線として配置されて1組の切込線を構成している。
【0023】
本発明の一つの実施形態は、箱の上下両面の少なくとも一面に位置して、箱の幅方向の略中央部に長手方向に伸びる少なくとも2本または2組のミシン目状の切込線によって構成される幅狭の帯状切取部を有している。この帯状切取部を挟んだ両側に、箱の長手方向に伸びかつ箱の外側に向かって膨らんだ曲線状折れ線によって構成されたヒンジ部が形成されている。また、前記切取部とヒンジ部とで囲まれて、引分け可能な観音扉形式の一対の第1フラップ部を設けている。
【0024】
前記一対の第1フラップ部の長手方向の両端部は、前記一対のヒンジ部に連続する切込線により箱の外側に膨らんだなめらかな曲線状に、好ましくは円弧状に形成されている。そして、この切込線はミシン目状またはジッパーでもよいが、切断面をなめらかにする為、連続した切れ目とすることが好ましい。また、この切込線により形成された曲線状開口端部と前記第1フラップ部の端部とで、箱内部から取出中の衛生用紙を摩擦力により挟持して、箱内部への衛生用紙の落下を防止することができる。
【0025】
本発明の第2の実施形態は、前記第1の実施形態における開封用切込線が1本または1組であり、帯状切取部が存在しない点が異なるが、その他の構成は第1の実施形態と略同一である。また1組とは、複数の例えば2本のミシン目などの切込線が2重線として配置されて1組の切込線を構成している。
本発明における取出口からカートンに収納された衛生用紙を取り出すときには、開封用切込線が1本または1組の場合(第2の実施形態の場合)は、この開封用の切込線を指で押圧開披し、帯状切取部が配置されている場合(第1の実施形態の場合)は、この帯状切取部を切り取った後、その開口した部分から指を入れて、最上部の衛生用紙をつまんで上方に引き出すと、その力に応じて、前記一対の第1フラップ部は前記箱の外側に膨らんだ曲線状の折れ線に沿って、斜め上方に向かって傾斜して立ち上がりながら引き出される。そして、この傾斜角は15〜30度くらいが好ましい。さらにこれに続く次の衛生用紙が、開口した部分から引き出され、前記一対の第1フラップ部の対向辺間は衛生用紙を弾力的に挟み込んで保持する働きもする。勿論、第1フラップ部を指の力で、斜め上方に折り曲げることにより一対の第1フラップ部(扉)を開いて開口部を形成することも可能であり、取出口を確実に形成するためには、このように「指の力」で形成する方が好ましい。
【0026】
なお、前記のように左右に引分け可能な一対の第1フラップ部のヒンジを構成する折れ線をカートン上面の長辺側に(箱の外側に)向かって膨らんだ曲線状、好ましくは円弧状とすることにより、該第1フラップ部には斜め上方に開いた時に閉じ傾向の力(折り曲げ前の状態に戻ろうとする力)が働く。このために、取出中の衛生用紙を一対の第1フラップ部で弾力的に挟んで開口部の所定位置に保持する力が働くと共に、中身の衛生用紙が少なくなっても、衛生用紙がカートン内へ落下することが防止できる。衛生用紙を取り出さない時には、第1フラップ部が折り曲げ前の状態に戻ろうとしてカートンの蓋の役割をはたし、外部の塵や異物の侵入を防止する働きをする。尚、衛生用紙を保持する作用は、主に第1フラップ部の両端部において大きく、2本または2組の開封用切込線によって形成される対向辺間においては、この作用は小さい。
【0027】
前記帯状切取部を構成する2本または2組の切取線の間隔は、取出口開封前に、間隔の狭い部分において、5〜20mm程度であることが好ましい。この間隔が狭すぎると切取部の切り取りが難しくなり、また広すぎると塵や異物がカートンの中に入り易くなり好ましくない。
また、前記第1フラップ部の長手方向の長さは、収納されている衛生用紙のカートン長辺方向の長さ(衛生用紙の長さ)に対する比率で表した場合、65〜100%程度であることが好ましく、75〜95%であればさらに好ましい。この比率が小さくなると衛生用紙が破れたりして取り出しが難しくなり、この比率が大き過ぎると取出口より上方に出て保持されるべき衛生用紙が箱内部に落下し易くなるので好ましくない。同様の理由から、前記帯状切取部の長手方向の長さ(中央部の最小となる寸法)は、収納されている衛生用紙のカートン長辺方向の長さに対する比率で表した場合、50〜95%程度であることが好ましく、65〜85%であればさらに好ましい。
【0028】
本発明のカートンは、少なくとも上面に取出口を有しているが、さらに、この上面と対向する下面にも同様の取出口を有していてもよい。このように対向する2面に本発明の構成を有する取出口を配置すると、残りの衛生用紙が少なくなってきた時、下面の取出口における2枚の保持フラップ部をカートンの内側に略90度折り曲げて、内部の衛生用紙を上面側に押し上げることにより衛生用紙の最後の1枚まで安定してポップアップでき、衛生用紙が取り出し易くなる。
また、対向する2面に本発明の構成を有する取出口を配置したカートンを、側面を下にして垂直に立てて使用するとき、両面から衛生用紙が取り出せるばかりでなく、カートンの内側に第1フラップ部を折り曲げて使用すると、中の衛生用紙の束がその重みで湾曲したり、下方にずれ下がるのを防止できるために、衛生用紙の取出し性が向上して、特に狭い場所、例えば自動車のダッシュボード上などにおいて使用するのに便利である。
【0029】
また、第1フラップ部の内面(箱の内側の面)に、開封したときに外から見える模様や文字や図柄を印刷して使用することができる。例えばその面に当たりくじ等を印刷しておくと、消費者の興味を引き、宣伝効果を高め、需要を喚起することができる。
【実施例】
【0030】
次に、図面を用いて本発明をさらに説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。図1〜図5、図7は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な箱の構成は従来のもの(ティシュペーパーカートン)と同様である。
図1は箱の上下両面に、ティシュペーパー取出口を設けた本発明のカートンの一例を示す展開図である。図2は図1のカートン上面の取出口からティシュペーパー取出すときの使用状態の一例を示す斜視図である。また、図3はその断面図である。さらに図4は、本発明のカートンの取出口に設けるフラップ部に挟持されるティシュペーパーを示した拡大斜視図である。図5は本発明カートンのティシュペーパー取出口にジッパー形式の切れ目を設けた平面図である。図6はカートンのティシュペーパー取出口に直線状スリットを設けた例を示す平面図であり、参考例である。
図7の(a)は、実質的に同一寸法の2本の平行なミシン目からなる2重線(ダブルミシン目線)が1組の切込線として構成されている例であって、上記した2重線(ダブルミシン目線)として構成されている1組の切込線が、帯状切取部13の両側にそれぞれ配設されている例を示す平面図である。
また、図7の(b)は、ミシン目の切込部の長さが長短異なる2本の平行なミシン目からなる2重線が1組の切込線として構成され、該2重線におけるそれぞれのミシン目の切込部が千鳥状配置となるように、位相をずらして交互に位置するように配置された例であって、上記した千鳥状に配置した長短異なる長さの切込部を有する平行なミシン目からなる1組の切込線が、帯状切取部13の両側にそれぞれ配設されている例を示す平面図である。
さらに、図7の(c)は、図7の(b)に示したミシン目の部分拡大図である。
【0031】
図1に示すように、本発明のカートンは、従来のものと同様に、厚紙を所要の展開形状に打ち抜いて折れ線や切込線を入れたカートンブランクを形成し、このブランクを折れ線を介して直方体形状に組み立て使用する。このカートンは、通常は箱の上面にティシュペーパー取出口を設けるものであるが、図1は、カートンの対向する2面(上面と下面)にティシュペーパー取出口10a、10bを設けた例である。図1において、符号1と2は長方形の上面板と下面板であり、両者は対称的に形成されている。3と4は同じく長方形の一対の側面板であり、また5は下面板の一方の側縁に連接した糊代片を示している。上面板1と下面板2は、側面板3と4よりも幅広に形成されている。ティシュペーパー取出口10a、10bは、上面板と下面板と同様に対称的に形成されている。符号6と7に示すのは上面板1と下面板2と両端縁に連接した端面板であり、8と9は側面板3と4の両端縁に連接した内フラップである。なお、端面板6と7は、カートン製造時に、前記内フラップ8と9の上に折り重ねて筒状の箱本体の両端面を封緘するものである。端面板6と7の長さは、製箱時に筒状本体の両端面を封緘するときに、端面板の先端部を互いに重ね合せて固着しうる長さに形成されている。
【0032】
次にティシュペーパー取出口の構成を実施例について説明する。図1に示したティシュペーパー取出口は、上面板1と下面板2の中央部に長手方向に細長く設けられている。すなわちこの取出口は、前記各面板の中央部に箱の長手方向に伸び、かつ所定の間隔を置いて平行に2本のミシン目状をした開封用の切込線11aと11bを有している。また前記切込線11aと11bの両端部をそれぞれ連結する端部切込線12aと12bを有している。
そして、前記2本のミシン目状の切込線11a、11bと、端部切込線12a、12bとによって囲まれた帯状切取部13が、上面板1と下面板2の中央部の長手方向にそれぞれ形成されている。
また、前記帯状切取部13の両側には、箱の長手方向に伸び、かつ箱の外側に向かって膨らんだ曲線状折れ線14a、14bによって構成されたヒンジ部を形成し、前記開封用の切込線11a、11bは、前記ヒンジ部を構成する曲線状折れ線14a、14bの両端部に、曲線状の切込線15aと15bによって連結されている。
【0033】
そして、前記開封用の切込線11a、11bと、前記ヒンジ部を構成する曲線状折れ線14a、14bと、これらを連結する曲線状の切込線15a、15bによって囲まれた一対の第1フラップ部16、16が形成される。
また、前記切取部13の両端の端部切込線12a、12bと、曲線状切込線15a、15bとにより囲まれた舌片状の突起部は、その付け根部分に、箱の短辺に平行な折れ線18を配置して第2フラップ部17を形成している。
このように、第2フラップ部の曲線部(曲線状切込線15a、15b、端部切込線12a、12b)と、カートン開口部の曲線状縁部(切込線15a、15b)とは、連続した滑らかな波形状をなしており、この波形状の曲線部と、第1フラップ端部の曲線部(曲線状切込線15a、15b)とにより、カートンから取り出すティシュペーパー等の衛生用紙を挟み、滑らかに取り出しできると共に、カートン内部への紙の落下を防止することができる。特に、ティシュペーパーのように、交互に折り畳んで収納されている場合は、取り出し時に、取り出されるティシュペーパーの取り出し方向が交互に変化するため(図3参照)、第1フラップ端部の挟み部も交互に入れ替わって(15a側と15b側に交互に入れ替わること)挟むことになるが、上述したように、第2フラップ部等により形成される連続した滑らかな波形状により、この挟み部間をティシュペーパーがスムーズに移動することができ、紙の破れや引っ掛かりの防止に優れている。
【0034】
また、図中において、第1フラップ部16のヒンジ部を構成する曲線状折れ線14a、14bと、第1フラップ部の端部の曲線状切込線15a、15bとが連結する部分は、箱の長辺側に向かって湾曲した小さな略円弧状切込線19を介して接するように形成することが好ましい。このような構成にすることにより、ヒンジ部を構成する曲線状折れ線14a、14bの端部の破断を回避し、またティシュペーパーが引き出される時に、ヒンジ部に引っ掛かることなくスムーズに引き出しができるものとなる。この小さな略円弧状の形状は、例えば曲率半径が数mmであってもよく、円弧でなく円弧に近い曲線でも構わない。また、円形、楕円形等に打ち抜いてもよい。この部分の具体的な形状の例を図10に示すが、これに限定される訳ではない。図10の(1)は、部分的に半径1mmの円弧状であり、全体として細長い円形に近い例を示している。又、図10の(2)は半径1mmの円弧状の例を示し、図10の(3)は半径2mmの円弧状の例を示している。
【0035】
因みに、図1に示すカートンの場合その長手方向の寸法は、一例として242mmであり、短手方向の寸法は116mmであり、高さは、50mmである。また、取出口10の長手方向の寸法は200mmであり、カートンの短手方向の寸法は60mmに形成されている。また、取出口の切取部13を構成する2本のミシン目の切込線11aと11bの間隔は、図1の場合は10mmに形成されているが、指を入れて切取部を容易に切り取うる程度の大きさとするのが良く、5〜20mm程度とするのが好ましい。なお、取出口のヒンジ部を構成する曲線状折れ線14aと14bが円弧状の場合の曲率半径は、一例として560mmに設定されているが、第1フラップ部を開いた後に閉止方向の力を得るために300〜760mm程度とするのが好ましい。この曲率半径が小さすぎると閉止力が大きくなりすぎ、逆に大きくすぎると閉止力が小さくなりすぎる。又、このヒンジ部は円弧でなく円弧に近い曲線でもよく、適切な閉止力が得られればよい。
【0036】
なお、本発明の取出口に設ける切込線11の図1とは異なる例を図5、図6、図7に示す。図5は前記ミシン目の切込線をジッパーに代えた例であり、図6は取出口の中央部に1本の切込線のみを設けた例(参考例)であり、図7の(a)と(b)はミシン目状の切込線が2重線で構成されている2組の切込線を設けた例である。また図7の(a)と(b)の例では2組の2重線にはさまれた帯状切取部の一端にジッパーを設けている。なお図示省略したが、切込線は、直線状でなければならない必要性はなく、波刃により波形に設けてもよい。さらにこの切込線はマイクロ刃と呼ばれる通常のミシン目より細かい切れ目でもよく、これらはすべて本発明の切込線の一例である。
また、図7の(b)は、帯状切取部13の両側に長短異なる長さの切込部を有する2本のミシン目を平行に配置し、かつそれぞれのミシン目の切込部を千鳥状に配置した例を示しており、長い切込部を有するミシン目がカートンの内側に位置し、短い切込部を有するミシン目がカートンの外側に位置するように配置されている。このような切込部の長さの異なる2種類のミシン目を千鳥状に配置すると、帯状切取部を指で摘んで切り取るとき、ミシン目に沿って凹凸状の切り口が形成されるため見栄えがよく、帯状切取部の縁が毛羽立ったり、ささくれ立ったりすることがなく、不均一なギザギザの切断面にならないので体裁がよい。また、帯状切取部を切り取るとき少ない力で簡単に裂開できるので開け易く、切り裂き時の音も小さくできる。さらに本発明のカートンを、古紙を主体とする多層抄き白板紙で製造したときも、前記のとおり帯状切取部の縁を比較的なめらかに綺麗に切り取ることができるので、印刷や色彩を施した周囲の紙の上層部を薄く剥がし取ること無く切取ることができる(紙層剥離が防止できる)。さらにまた、帯状切取部13の両側に千鳥状配置となるようした長短異なる長さの切込部を有する2本の平行なミシン目からなる切込線は、内側のミシン目の切込部を長く、外側のミシン目の切込部を短く形成させたので、帯状切取部を切り取るとき、帯状切取部の縁が凹凸状に綺麗に切り裂けるので、切り口の見栄えがよくなるものである。
【0037】
この場合、図7の(c)に示すように、ミシン目の長い切込部mの長さdは1〜6mmであることが好ましく、ミシン目の短い切込部nの長さeは0.5〜3mmであることが好ましく、また、ミシン目の長い切込部の長さdとミシン目の短い切込部の長さeの比率d/eが1.2〜12の範囲にあることが好ましい。2本のミシン目の切込部の長さ及び比率がこの範囲にあると、帯状切取部を容易かつ綺麗に切り取ることができる。ミシン目の長い切込部mとミシン目の短い切込部nの長さがそれぞれ1mm未満及び0.5mm未満になると、帯状切取部を切り取り難くなり、長い切込部mと短い切込部nの長さがそれぞれ6mm及び3mmを超えて長くなると、帯状切取部の強度が低下し、輸送中あるいは保存中の衝撃により帯状切取部が破れ易くなる。また、d/eの比率が1.2未満になると帯状切取部を綺麗に切り取り難くなり、d/eの比率が12を超えると帯状切取部の強度が低下し、輸送中あるいは保存中の衝撃により帯状切取部が破れ易くなる。
また、2本のミシン目の切込部m、nの間隔iは0.2〜1mmであることが好ましい。2本のミシン目のそれぞれの切込部m、nの間隔iが0.2mm未満になると、帯状切取部の強度が低下し、輸送中あるいは保存中の衝撃により帯状切取部が破れ易くなり、1mmを超えて長くなると、帯状切取部を切り取り難くなる。
さらに、長い切込部mを有するミシン目における隣接する切込部m間の距離h(つなぎ部の長さ)は、短い切込部nを有するミシン目の切込部nの長さeと同程度の長さとし、また、短い切込部nを有するミシン目における隣接する切込部n間の距離g(つなぎ部の長さ)は、長い切込部mを有するミシン目の切込部mの長さdと同程度の長さに設定して、2本のミシン目の長短の切込部mとnを千鳥状に配置することが好ましいが、2本のミシン目のそれぞれの切込部の長さを調節して若干重ね代をもたせるように構成しても良い。長い切込部mを有するミシン目における隣接する切込部m間の距離h(つなぎ部の長さ)は0.5〜3mmであることが好ましく、また、短い切込部nを有するミシン目における隣接する切込部n間の距離g(つなぎ部の長さ)は1〜6mmであることが好ましい。
また、各ミシン目の切込部m、nの幅fは0.5〜3mmであることが好ましい。
【0038】
図9は、図1、図5、図6、図7とは別の例を示し、ティシュペーパー取出口の帯状切取部13に摘み部用折れ線30を設けて摘み部31を形成した、本発明のカートンの変形例である。また、この例においては、図1、図5〜7の例と異なり、曲線状切込線15a、15bと端部切込線12a、12bが、つなぎ部(接続部)を有する不連続の切込線で構成されている。図1他の例は、これらの切込線が、連続した切込線で構成されている例である。また、本例(図9)は、図1の例と異なり、取出口が上面板のみに設けられた例を示している。また、図10はティシュペーパー取出口の一方の端部の構成の一例を示した拡大図であり、第1フラップのヒンジ部端部に接続する小さな略円弧状切込線の形状を示している。
【0039】
本発明のカートンにおいては、図2、図3に示すように箱の内部に収納されたティシュペーパーPを取り出すため取出口を開封するときに、上面開口部の開封用切込線11が1本の場合には指で押圧開披する。帯状切取部13が配置されているときは、左右いずれか一方の第2フラップ部17を折れ線18より押下して、切取部13の端部の下に指を入れて切取部をつまんで切り取った後、開口した部分から最上部のティシュペーパーをつまんで上方に引き出すと、一対の第1フラップ部16、16は外側に膨らんだ曲線状の折れ線14a、14bに沿って斜め上方に向かって傾斜しながら折り曲がる。この場合、図9に示すように、帯状切取部13の端部付近に、開封用切込線11a、11bに略直交して摘み部用折れ線30を配置して、摘み部31を形成すると、開封しやすく好ましい。
さらにこれに続く次のティシュペーパーが、開口した部分から引き出され、前記一対の第1フラップ部の対向辺間と、第1フラップ部の両端部と第2フラップ部との対向辺間、及び箱の開口端縁間に弾力的に挟み込まれてポップアップ状態に保持される。
また、前記一対の第1フラップ部16、16は、ヒンジとなる折れ線14a,14bをカートン上面の長辺側の外側に向かって膨らんだ円弧状とすることにより、このものには斜め上方に開いた時に閉じ傾向(折り曲げ前の状態に戻ろうとする力)が働く。このために、取出中のティシュペーパーを一対の第1フラップ部と第2フラップ部で弾力的に挟んで開口部の所定位置に保持する力が働くと共に、中身のティシュペーパーが少なくなっても、ティシュペーパーがカートン内部へ落下するのを防止する。ティシュペーパーを取り出さない時には、第1フラップ部が折り曲げ前の状態に戻ろうとしてカートンの蓋の役割をはたし、外部の塵や異物の侵入を防止する。
【0040】
なお、箱内のティシュペーパーの残量が少なくなったときには、図8に示すように、下面板の取出口に設けた一対の第1フラップ部を底上げ部材として内側に折り曲げて使用することもできる。すなわち、下面の取出口10bにおける2枚の第1フラップ部10をカートンの内側に略90度折り曲げて、内部のティシュペーパーを上面側に押し上げると、これにより上面の取出口10aからティシュペーパーの最後の1枚まで安定してポップアップさせることができる。
【0041】
また、この実施例(図1の例)では、カートンの対向する2面(上面と下面)にティシュペーパー取出口を設けているから、カートン上下面の差別がなくなり、使用時のカートンの置き方も、図11のように横置き、縦置き何れも使用可能であるから、狭い場所において使用することができる。またティシュペーパーを上下2面の何れからも取出すことができるので、収納されたティシュペーパーの残りが少なくなったときにも、中身のティシュペーパーの取出性が向上する。
また、カートンを開封する際に、帯状切取部13が破断したり、開口部の周辺部に切れ目が生じたりしないようにするためには、カートンの材質を考慮する必要がある。本発明におけるカートンは、木材パルプ、古紙などを原料とする厚紙により製造することが好ましく、この場合、JISP8116−2000に規定する引裂強度が、縦方向2500〜2900mN、横方向3000〜3400mNの範囲であることが好ましい。引裂強度が低すぎると破断し易く、必要以上に引裂強度があると開口部が形成しにくくなったりするため、好ましくない。尚、従来の衛生用紙入りカートンにおいては、JISP8116−2000に規定する引裂強度が、縦方向2300mN程度、横方向2800mN程度の厚紙が使用されており、本発明においては、取出口の構造上、従来より強度アップした厚紙を使用することが好ましいと言える。
【0042】
また、本発明のフィルムレスカートンは、以下の点において、従来から発案されている他のフィルムレスカートンより優れ、従来のフィルム付きカートンと同様の効果が得られることが確認できた。すなわち本発明のフィルムレスカートンは取出口に第1のフラップと第2のフラップを有し、開口部が大きいのでカートンの取出口においてティシュの触れる部分が少なく、かつ開口部形状が滑らかなのでフラップを開いてティシュを一組ずつ取り出す際に、(1)ティシュを取り出す際の音が、従来のフィルム付きカートンとほぼ同程度に小さい。(2)ティシュを取り出す際の紙紛の発生が少ない。
【0043】
なお一般に、ティシュペーパー等の衛生用紙を収納したカートンは、複数個(通常は5個を1単位)を1パックとして集積し、その周囲をフィルムにより包装して市場で販売されているので、その包装パックの中に、カートンのスタンド部材を内蔵させておくと使用者に便利である。このスタンド部材は、厚紙を用いてカートンとは別に作製してもよいが、例えば5個の内の1個のカートンの下面板から作製するようにしてもよい。もちろん2個以上のカートンからスタンド部材が得られるようにしてもよく、又、このようなスタンド部材を設けるカートンは、取出口の構造や、上下両面に取出口を有する構造のカートンと一緒に包装するものに限定される訳ではない。また、スタンド部材の裏面等に粘着剤やマグネット等を設けて、冷蔵庫、キッチンキャビネット、テーブルワゴン、オフィスの机、自動車のダッシュボードに取付け使用することもできる。図12は、本発明のカートンの下面板2にスタンド部材を一体的に組み込んだ場合の一例を示す展開図である。図13は、図12の下面板2から切り取ったスタンド部材Sを組立てる方法の説明図である。図12において符号20は矩形の基盤、21は基盤の両端に設けた抑え板、22は抑え板の両側に設けた直角3角形の側板、23は側板に付設した差込フラップ、24は基盤の両側に設けた内フラップ、25は内フラップの付け根に形成した差込フラップが挿入される差込溝である。図14は、組立型スタンド部材Sにより、本発明のカートンCを垂直状態に保持した説明図である。
このようなスタンド部材を使用すると、カートンの置き場所に困らず、ティシュペーパーの取出しの際、特に、上下両面取出し構造の場合、効果が大きく、ティシュペーパーの取出し操作性は向上する。
【符号の説明】
【0044】
1 上面板 2 下面板 3,4 側面板 5 糊代片
6,7 端面板 8, 9 内フラップ 10 取出口
11a、11b 切込線 12a,12b 端部切込線
13 帯状切取部 14a、14b 曲線状折れ線(ヒンジ部)
15a、15b 曲線状切込線 16 第1フラップ部
17 第2フラップ部 18 折れ線 19 小さな略円弧状切込線
30 摘み部用折れ線 31 摘み部
S スタンド部材 C カートン
d 長い切込部を有するミシン目における切込部の長さ
e 短い切込部を有するミシン目における切込部の長さ
f ミシン目の切込部の幅
g 短い切込部を有するミシン目における隣接する切込部間の距離(短い切込部を有するミシン目におけるつなぎ部の長さ)
h 長い切込部を有するミシン目における隣接する切込部間の距離(長い切込部を有するミシン目におけるつなぎ部の長さ)
i 2本のミシン目の切込部mとnの間の間隔
m 長い切込部 n 短い切込部
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にティシュペーパー等の衛生用紙を収納したカートンに関するものである。更に詳しく述べると、紙箱の上下少なくとも一方の面に、衛生用紙を取出すための取出口(開口部)を設けると共に箱の内面に取出口を被覆する窓貼りフィルムの貼りつけを必要としない所謂フィルムレスティシュカートンの取出口の構造に関する。
なお、本発明でいう「衛生用紙」とは、ティシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙などと呼ばれるもの)、ちり紙、ペーパータオル(キッチンペーパーなど)、トイレットペーパー(ロールを除く)、ワッティング(紙綿)などの使い捨て紙を総称する概念である。
【背景技術】
【0002】
家庭やオフィス等で広く使われているティシュペーパーを収納したカートンは、略直方体の収納箱の一面(通常は箱の上面)に、ティシュペーパーを取り出すための取出口を設けた構造である。使用者は、箱の一面(通常は箱の上面)に設けられているほぼ楕円形状のミシン目状切込線に沿って切取片を切り離して、取出口(開口部)を細長く開く。この取出口の内面には、通常、取出口を被覆するポリエチレンフィルム等のフィルムが貼着されている(特許文献1参照)。
このフィルムの中央部には直線状のスリットが設けられ、内容物であるティシュペーパーは、このスリットを通して外部へ引き出される。カートン内部のティシュペーパーは、通例2枚一組として、一組一組が継続して箱から取出せるように交互に折り重ねられて収納され、スリットからティシュペーパー1組が引き出されたときに、次のティシュペーパー1組が箱の内部からスリットに保持される位置まで引き出されるように、所謂ポップアップ方式で折り畳まれている。
箱の内面に貼着した前記フィルムは、取出口の開口面積を小さくすることで外部の塵や異物に対して内容物を保護し、また、ティシュペーパーを外部に取出す際に、フィルムのスリット間での摩擦により所謂ポップアップしたティシュペーパーが箱の内部に落ち込むことを防ぎ、ティシュペーパーを所定位置に保持する役割を果たしている。
【0003】
これに対し、ポリエチレン等のプラスチックフィルムの材料コストおよび同フィルムを箱に貼りつける工程を省く目的で、取出口内面にフィルムを貼着しない構造の所謂「フィルムレスティシュカートン」が既に提案されている。すなわち、箱入りティッシュペーパーの取出口にフィルムを使用しないで、取出口を観音開き状に開口可能したティシュペーパー包装箱が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照、)。
また、前例と同様な「フィルムレスティシュカートン」において、箱の長手方向に細長く、ほぼひし形に形成した取出口の長手方向両端部を特定な角度形状に開口させることで、取出し中のティシュペーパーを取出口の両端部で保持できるようにして、箱内部に落ち込みをなくしたティシュペーパー入りカートンが知られている(例えば、特許文献5参照)。
更に、取出口の形状をひし形に限定しないで、取出口の両端縁にスリットを形成してティシュペーパーを挟むようにしたカートンも知られている(例えば、特許文献6参照)。
【0004】
一方、ティシュペーパー入りカートンの上面とこれに対向する下面の2面に、ティシュペーパー取出口を設けて、カートンの両面からティシュペーパーを取り出すことができるようにしたティッシュペーパー用箱が知られている(例えば、特許文献7参照)。
【0005】
近年、環境問題の一つである廃棄物の処理に関して、特に容器包装廃棄物について、消費者の分別排出、自治体の分別収集、事業者のリサイクル責任を明確にした「容器リサイクル法」が1997年から本格施行され、循環型経済社会の構築に向けた動きが加速している。こうした動きの中で、ティシュペーパー、キッチンペーパーなどの衛生用紙の使用済みカートンを廃棄するとき、取出口に貼着したプラスチックフィルムをカートン本体からひき剥がす必要がなくなり、あるいはカートンを古紙として回収しリサイクルするとき、紙とプラスチックとに分別する手間が省け、そのまま押しつぶすだけでリサイクル処理にまわすことができるなどの利点により「フィルムレスティシュカートン」の需要は、ますます増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭41−6464号公報
【特許文献2】実開昭57−167080号公報
【特許文献3】特開平9−150871号公報
【特許文献4】実開平4−80878号公報
【特許文献5】実開平6−72883号公報
【特許文献6】特開平9−30573号公報
【特許文献7】実開昭61−32070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のフィルムレスティシュカートンにおいては、前記特許文献2〜6の場合、取出口両端部の形状が直線状であったり、フラップ端部の形状が角張っていたりすることにより、ティシュペーパーを外部に取出す際に、ティシュペーパーが取出口の角部等に引っかかりやすく、上方に引き上げたときに破れたり、ティシュペーパー一組一組ずつがポップアップ方式で継続してスムーズに取出すことができないという問題がある。
【0008】
ティシュペーパーの紙力は、収納箱内に保持されているティシュペーパーを引き出す方向での紙力が問題であるが、紙力はティシュペーパーの他の品質要件との関連もあり、その変更は容易ではない。また、ティシュペーパー取出口の大きさは、大きい方が破れにくいが、大きすぎるとポップアップしたティシュペーパーを取出口の所定位置に保持しにくくなり、箱の中に落ちやすくなるという問題が発生する。
【0009】
一方、特許文献5に示すカートンは、略ひし形状をした取出口の長手方向両端部の開口角度を60度から170度に設定したものであるが、その開口角度が60度未満のものではティシュペーパーを取出す際に角部に引っ掛かって破れたり取出しにくくなる一方、170度を超えると把持機能が低下して、ティシュペーパーが箱の中に落下しやすいなどの問題があった。
また、特許文献6のカートンの場合はスリットの入り口が狭いので、ティシュが入り易いと言えないと共に、スリット部の形状が滑らかな形状でないので、ティシュが角部に引っ掛かり易いとも言える。
【0010】
そればかりでなく、取出口が大きすぎると、外の塵その他の異物が箱内に入り込みやすく、また、キッチンまわりで使用したときは、食材に付着した泥、埃、あるいは調理で使用する水や油が取出口から箱の中に飛び込んで、清潔に保持すべき内容物を汚したり濡らしたりしやすいという問題が発生する。
ところで、前記特許文献1〜6に示したように、ティシュペーパーカートンの多くは、略直方体状の収納箱の一面(通常上面)に、ティシュペーパーを取り出すための取出口を設けるようになっていた。このティシュペーパーカートンは、ティシュペーパーの取出口が上面にしかないため、卓上や床上に置いて上面の取出口からティシュを取出すしか使用の方法がない。そのために箱の内部に収納されたティシュペーパーが少なくなると下の方のものは取出しにくくなる。それを取出すには箱を一方の手でおさえる必要があり、また少ないティシュペーパーを持ち上げるため箱底面に底上げのためのボトムアップ機構を配置しなければならなかった。また、使用の際に、卓上または床上のスペースを取るために場所塞ぎともなっていた。
【0011】
上記問題点を改善する試みとして、先の特許文献7としてティシュペーパー入りカートンの上面とこれに対向する下面の2面にティシュペーパー取出口を設けて、使用時の置き方を問わず、箱の上下2面からティシュペーパーを取出すことができるものが提案されている。しかし、箱の内部に収納されたティシュペーパーの残りが少なくなると、底上げ機構を設置しても、ティシュペーパーを取出口の所定位置に保持しにくくなり、箱の中に落ちやすくなるという問題が発生して中身のティシュペーパーが取出口からスムーズに取出せないことがある。ましてや、ティシュペーパー箱を側面を下にして立てて使用すると、中のティシュペーパー束がその重みで湾曲したり、下方にずれ下がるためにティシュペーパーの最後の1枚まで安定してポップアップできないという問題が発生している。
【0012】
本発明の目的は、ティシュペーパーを外部に取出す際に、開口部の角部などに引っ掛かって破れたり、取出しにくくなったりする問題を解決すると同時に、カートン使用後の廃棄時に、紙とプラスチックとに分別する手間が省けるフィルムレスカートンを提供することである。また、本発明の他の目的は、使用中に箱の中にティッシュペーパーが落下せずにティシュペーパー一組一組ずつをポップアップ方式で継続してスムーズに取出すことができると共に、取出口から外部の塵や異物も侵入し難い構造のフィルムレスカートンを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、ティシュペーパーの取出しの際、カートンの上下2面の何れからも取出すことができ、カートン上下面の差別なく使用できるようにするとともに、カートンの置き方も、平面置き、立て置き(垂直置き)何れも使用可能であり、狭い場所において使用することができ、また、収納されたティシュペーパーの残りが少なくなったときにも、中身のティシュペーパーを取出しやすくしたフィルムレスカートンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は次のような手段を包含する。
本発明の第1は、箱の上下少なくとも一方の面に、箱の長手方向に細長い取出口を有し、該取出口を有する面の内側にフィルムが配置されていない衛生用紙入りカートンにおいて、
該取出口は、取出口を有する面の中央部に、箱の長手方向に間隔を置いて伸びると共に、少なくとも曲線部を有することにより短手方向内側に凸形状の2本または2組の開封用の切込線と、その端部を接続する端部切込線とによって囲まれた帯状切取部を有し、
該帯状切取部を挟んでその両側に、箱の長手方向に沿って折れ線によって構成されるヒンジ部が配置され、
前記2本または2組の開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線とが、それぞれの端部において、切込線によって接続されており、
前記開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線と、これらを接続する前記切込線とによって囲まれ、短手方向内側に凸形状の一対の第1フラップ部が形成されていることを特徴とする衛生用紙入りカートンである。
【0014】
本発明の第2は、前記箱の長手方向に沿って配置されるヒンジ部を構成する折れ線は、箱の長手方向に沿って外側に向かって膨らんだ曲線状であることを特徴とする請求項1に記載の衛生用紙入りカートンである。
【0015】
本発明の第3は、前記帯状切取部両端の端部切込線は、箱の内側に向かって膨らんだ曲線状に形成され、前記開封用の切込線の端部と前記ヒンジ部を構成する折れ線の端部とを接続する前記切込線は、箱の外側に向かって膨らんだ曲線状に形成されることにより、これら二つの切込線は連続した波形状をなし、この波形状の切込線により形成される取出口端縁部と、前記第1フラップ部の端縁部とが、取り出し中の紙を摩擦力によって保持する挟み部として機能することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した衛生用紙入りカートンである。
【0016】
本発明の第4は、前記帯状切取部を構成する2本または2組の切込線の間隔は、取出口開封前に、間隔の狭い部分において、5〜20mmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載した衛生用紙入りカートンである。
【0017】
尚、本発明における「切込線」は開封時に切離す線を意味し、「折れ線」は開封時に折り曲げ易くした線を意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のティシュペーパー、キッチンペーパーなどの衛生用紙を収納したカートンは、取出口を有する面にフィルムを配置しなくても、ペーパー取出し時には、扉として機能する一対の第1フラップ部、特に第1フラップ部の両端に形成される挟み部にペーパーが挟まれながら取り出されるので、取り出し途中のペーパーの落下が生じることがなく、取出しが容易である。また、この挟み部の作用により、ペーパーが1枚または1組毎に取り出され易いので、重なって必要以上に取り出されることも防止できる。
また、前記取出口は、曲線状の切込線と曲線状の折れ線とによって囲まれているので、ティシュペーパー等の取出しに際して、従来のようにティシュペーパーが開口部の角部に引っかかって破れることがない。特にティシュペーパーの場合、交互に折り畳んで収納されているため、取り出し時には、取り出されるティシュペーパーの取り出される方向が交互に変化するため、第1フラップ端部の挟み部も交互に入れ替わって挟むことになるが、第1フラップ端部の曲線状の切込線と、切取部端部の端部切取線とは、連続した滑らかな波形状をなしているため、この挟み部間の移動がスムーズに行われることになり、紙の破れや引っ掛かりの防止に優れている。
また、取出口における開口部が小さく、ペーパーを取り出さないときには、2枚のフラップに取出口を閉止する方向に力が作用するので、塵や異物も侵入し難い構造である。
さらに、取出口の内側にフィルムを配置しなくてもよいので、廃棄時に紙製のカートンとフィルムの分別作業が必要なくなり、環境にやさしい製品である。さらに、フィルムを無くすことにより材料費の節約に留まらず、製造工程が短縮でき、省エネルギ、省資源を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は箱の上下両面に、ティシュペーパー取出口を設けた本発明のカートンの一例を示す展開図である。
【図2】図2は図1のカートン上面の取出口からティシュペーパーを取出すときの使用状態の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は図2のカートンを一部切欠いて示す側面図である。
【図4】図4は、本発明カートンの取出口に設けるフラップ部に挟持されるティシュペーパーを示した拡大斜視図である。
【図5】図5は本発明カートンのティシュペーパー取出口にジッパー形式の切れ目を設けた平面図である。
【図6】図6はカートンのティシュペーパー取出口に直線状スリットを設けた例を示す平面図であり、参考図である。
【図7】図7の(a)は、実質的に同一寸法の2本の平行なミシン目からなる2重線(ダブルミシン目線)が1組の切込線として構成されている例であって、上記した2重線(ダブルミシン目線)の切込線が、帯状切取部13の両側にそれぞれ配置されている例を示す平面図である。 図7の(b)は、ミシン目の切込部の長さが長短異なる2本の平行なミシン目からなる2重線が1組の切込線として構成され、該2重線におけるそれぞれのミシン目の切込部が千鳥状配置となるように、位相をずらして交互に位置するように配置された例であって、上記した千鳥状に配置した長短異なる長さの切込部を有する平行なミシン目からなる1組の切込線が、帯状切取部13の両側にそれぞれ配設されている例を示す平面図である。 図7の(c)は、図7の(b)に示したミシン目の部分拡大図である。
【図8】図8は本発明カートンの取出口に設けるフラップ部を底上げ部材として利用した状態を示す断面図である。
【図9】図9はティシュペーパー取出口の帯状切取部に摘み部用折れ線を設けて摘み部を形成させた本発明カートンの変形例を示す展開図である。
【図10】図10は第1フラップ部のヒンジ部端部に接続する小さな略円弧状切込線の形状を示す拡大図である。
【図11】図11は本発明カートンの置き方の例を示す説明図である。
【図12】図12は本発明のカートンの下面板にスタンド部材を一体的に組み込み、その下面板からスタンド部材を切り取って使用する場合の一例を示す展開図である。
【図13】図13はスタンド部材の組立方法の説明図である。
【図14】図14はスタンド部材の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に発明の実施形態に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
既に説明した通り本発明は、ティシュペーパー、キッチンペーパーなどの衛生用紙を収納する略直方体形状のカートンであり、少なくとも上面に取出口を有している。この発明において、カートンに収納される衛生用紙は、ティシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙などとも称する)、ちり紙、ペーパータオル(キッチンタオル、キッチンシート、あくとりシートと呼ばれる主にキッチンで使用されるペーパーを含んでいる)、トイレットペーパー(但しロールを除く)、ワッティング(紙綿)、などの使い捨て紙である(紙パルプ技術便覧第5版、第459頁参照、1992年1月30日発行、紙パルプ技術協会編集・発行)。本発明においては、これらの使い捨て紙の総称として、衛生用紙と言う語句を用いている。一般に、「ティシュペーパー」と言う語句は、顔ふき紙、トイレットペーパーなどの使い捨て紙全般を指す語句として用いる場合も多いが、狭義では、通常ドライクレープを有し、主に顔拭き用として用いるフェイシャルティシュペーパーに限定して用いており、本明細書では後者を採用した。また、「ペーパータオル」は、ふきん、タオルの代用品としてパルプ繊維を主原料として製造されるペーパーであり、この内、主にキッチンにおいて使用されるものをキッチンペーパーと称している。
【0021】
本発明におけるカートンは、木材パルプ、古紙などを原料とする厚紙などの紙材料を主体に製造した収納箱であって、主にティシュペーパー、ペーパータオル、等の衛生用紙を収納した収納箱である。更に詳しく述べると、紙箱の上下少なくとも一方の面(通常は上面)に、衛生用紙を取出すための取出口(開口部)を設けると共に箱の内面に取出口を被覆するスリットを有する窓貼りフィルムを設けない、所謂フィルムレスティッシュカートンの取出口の構造に特徴がある。
【0022】
本発明の取出口を形成するために、箱の上下少なくとも一方の面に、中央部長手方向に伸びる切込線を有している。この切込線は、直線状の切れ目(スリット)でもよいが、部分的につながりを有するミシン目状の切れ目でもよいし、包装業界で「ジッパー」と呼称されている切れ目が鉤形に屈曲した開封用破断線を包含し(包装産業の周知・慣用技術集第281頁参照、昭和53年12月20日特許庁発行)、これも本発明の切込線の一例である。なお、本発明のこの切込線は、後記の実施例に示すように、取出口の略中央部長手方向に、直線状に1本伸びるものでもよいが、通例は、取出口の幅方向に所定間隔をおいて略平行に形成させた2本または2組の切込線によって構成されている。そして、この切込線が2組の場合は、複数の例えば2本のミシン目などの切込線が2重線として配置されて1組の切込線を構成している。
【0023】
本発明の一つの実施形態は、箱の上下両面の少なくとも一面に位置して、箱の幅方向の略中央部に長手方向に伸びる少なくとも2本または2組のミシン目状の切込線によって構成される幅狭の帯状切取部を有している。この帯状切取部を挟んだ両側に、箱の長手方向に伸びかつ箱の外側に向かって膨らんだ曲線状折れ線によって構成されたヒンジ部が形成されている。また、前記切取部とヒンジ部とで囲まれて、引分け可能な観音扉形式の一対の第1フラップ部を設けている。
【0024】
前記一対の第1フラップ部の長手方向の両端部は、前記一対のヒンジ部に連続する切込線により箱の外側に膨らんだなめらかな曲線状に、好ましくは円弧状に形成されている。そして、この切込線はミシン目状またはジッパーでもよいが、切断面をなめらかにする為、連続した切れ目とすることが好ましい。また、この切込線により形成された曲線状開口端部と前記第1フラップ部の端部とで、箱内部から取出中の衛生用紙を摩擦力により挟持して、箱内部への衛生用紙の落下を防止することができる。
【0025】
本発明の第2の実施形態は、前記第1の実施形態における開封用切込線が1本または1組であり、帯状切取部が存在しない点が異なるが、その他の構成は第1の実施形態と略同一である。また1組とは、複数の例えば2本のミシン目などの切込線が2重線として配置されて1組の切込線を構成している。
本発明における取出口からカートンに収納された衛生用紙を取り出すときには、開封用切込線が1本または1組の場合(第2の実施形態の場合)は、この開封用の切込線を指で押圧開披し、帯状切取部が配置されている場合(第1の実施形態の場合)は、この帯状切取部を切り取った後、その開口した部分から指を入れて、最上部の衛生用紙をつまんで上方に引き出すと、その力に応じて、前記一対の第1フラップ部は前記箱の外側に膨らんだ曲線状の折れ線に沿って、斜め上方に向かって傾斜して立ち上がりながら引き出される。そして、この傾斜角は15〜30度くらいが好ましい。さらにこれに続く次の衛生用紙が、開口した部分から引き出され、前記一対の第1フラップ部の対向辺間は衛生用紙を弾力的に挟み込んで保持する働きもする。勿論、第1フラップ部を指の力で、斜め上方に折り曲げることにより一対の第1フラップ部(扉)を開いて開口部を形成することも可能であり、取出口を確実に形成するためには、このように「指の力」で形成する方が好ましい。
【0026】
なお、前記のように左右に引分け可能な一対の第1フラップ部のヒンジを構成する折れ線をカートン上面の長辺側に(箱の外側に)向かって膨らんだ曲線状、好ましくは円弧状とすることにより、該第1フラップ部には斜め上方に開いた時に閉じ傾向の力(折り曲げ前の状態に戻ろうとする力)が働く。このために、取出中の衛生用紙を一対の第1フラップ部で弾力的に挟んで開口部の所定位置に保持する力が働くと共に、中身の衛生用紙が少なくなっても、衛生用紙がカートン内へ落下することが防止できる。衛生用紙を取り出さない時には、第1フラップ部が折り曲げ前の状態に戻ろうとしてカートンの蓋の役割をはたし、外部の塵や異物の侵入を防止する働きをする。尚、衛生用紙を保持する作用は、主に第1フラップ部の両端部において大きく、2本または2組の開封用切込線によって形成される対向辺間においては、この作用は小さい。
【0027】
前記帯状切取部を構成する2本または2組の切取線の間隔は、取出口開封前に、間隔の狭い部分において、5〜20mm程度であることが好ましい。この間隔が狭すぎると切取部の切り取りが難しくなり、また広すぎると塵や異物がカートンの中に入り易くなり好ましくない。
また、前記第1フラップ部の長手方向の長さは、収納されている衛生用紙のカートン長辺方向の長さ(衛生用紙の長さ)に対する比率で表した場合、65〜100%程度であることが好ましく、75〜95%であればさらに好ましい。この比率が小さくなると衛生用紙が破れたりして取り出しが難しくなり、この比率が大き過ぎると取出口より上方に出て保持されるべき衛生用紙が箱内部に落下し易くなるので好ましくない。同様の理由から、前記帯状切取部の長手方向の長さ(中央部の最小となる寸法)は、収納されている衛生用紙のカートン長辺方向の長さに対する比率で表した場合、50〜95%程度であることが好ましく、65〜85%であればさらに好ましい。
【0028】
本発明のカートンは、少なくとも上面に取出口を有しているが、さらに、この上面と対向する下面にも同様の取出口を有していてもよい。このように対向する2面に本発明の構成を有する取出口を配置すると、残りの衛生用紙が少なくなってきた時、下面の取出口における2枚の保持フラップ部をカートンの内側に略90度折り曲げて、内部の衛生用紙を上面側に押し上げることにより衛生用紙の最後の1枚まで安定してポップアップでき、衛生用紙が取り出し易くなる。
また、対向する2面に本発明の構成を有する取出口を配置したカートンを、側面を下にして垂直に立てて使用するとき、両面から衛生用紙が取り出せるばかりでなく、カートンの内側に第1フラップ部を折り曲げて使用すると、中の衛生用紙の束がその重みで湾曲したり、下方にずれ下がるのを防止できるために、衛生用紙の取出し性が向上して、特に狭い場所、例えば自動車のダッシュボード上などにおいて使用するのに便利である。
【0029】
また、第1フラップ部の内面(箱の内側の面)に、開封したときに外から見える模様や文字や図柄を印刷して使用することができる。例えばその面に当たりくじ等を印刷しておくと、消費者の興味を引き、宣伝効果を高め、需要を喚起することができる。
【実施例】
【0030】
次に、図面を用いて本発明をさらに説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。図1〜図5、図7は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な箱の構成は従来のもの(ティシュペーパーカートン)と同様である。
図1は箱の上下両面に、ティシュペーパー取出口を設けた本発明のカートンの一例を示す展開図である。図2は図1のカートン上面の取出口からティシュペーパー取出すときの使用状態の一例を示す斜視図である。また、図3はその断面図である。さらに図4は、本発明のカートンの取出口に設けるフラップ部に挟持されるティシュペーパーを示した拡大斜視図である。図5は本発明カートンのティシュペーパー取出口にジッパー形式の切れ目を設けた平面図である。図6はカートンのティシュペーパー取出口に直線状スリットを設けた例を示す平面図であり、参考例である。
図7の(a)は、実質的に同一寸法の2本の平行なミシン目からなる2重線(ダブルミシン目線)が1組の切込線として構成されている例であって、上記した2重線(ダブルミシン目線)として構成されている1組の切込線が、帯状切取部13の両側にそれぞれ配設されている例を示す平面図である。
また、図7の(b)は、ミシン目の切込部の長さが長短異なる2本の平行なミシン目からなる2重線が1組の切込線として構成され、該2重線におけるそれぞれのミシン目の切込部が千鳥状配置となるように、位相をずらして交互に位置するように配置された例であって、上記した千鳥状に配置した長短異なる長さの切込部を有する平行なミシン目からなる1組の切込線が、帯状切取部13の両側にそれぞれ配設されている例を示す平面図である。
さらに、図7の(c)は、図7の(b)に示したミシン目の部分拡大図である。
【0031】
図1に示すように、本発明のカートンは、従来のものと同様に、厚紙を所要の展開形状に打ち抜いて折れ線や切込線を入れたカートンブランクを形成し、このブランクを折れ線を介して直方体形状に組み立て使用する。このカートンは、通常は箱の上面にティシュペーパー取出口を設けるものであるが、図1は、カートンの対向する2面(上面と下面)にティシュペーパー取出口10a、10bを設けた例である。図1において、符号1と2は長方形の上面板と下面板であり、両者は対称的に形成されている。3と4は同じく長方形の一対の側面板であり、また5は下面板の一方の側縁に連接した糊代片を示している。上面板1と下面板2は、側面板3と4よりも幅広に形成されている。ティシュペーパー取出口10a、10bは、上面板と下面板と同様に対称的に形成されている。符号6と7に示すのは上面板1と下面板2と両端縁に連接した端面板であり、8と9は側面板3と4の両端縁に連接した内フラップである。なお、端面板6と7は、カートン製造時に、前記内フラップ8と9の上に折り重ねて筒状の箱本体の両端面を封緘するものである。端面板6と7の長さは、製箱時に筒状本体の両端面を封緘するときに、端面板の先端部を互いに重ね合せて固着しうる長さに形成されている。
【0032】
次にティシュペーパー取出口の構成を実施例について説明する。図1に示したティシュペーパー取出口は、上面板1と下面板2の中央部に長手方向に細長く設けられている。すなわちこの取出口は、前記各面板の中央部に箱の長手方向に伸び、かつ所定の間隔を置いて平行に2本のミシン目状をした開封用の切込線11aと11bを有している。また前記切込線11aと11bの両端部をそれぞれ連結する端部切込線12aと12bを有している。
そして、前記2本のミシン目状の切込線11a、11bと、端部切込線12a、12bとによって囲まれた帯状切取部13が、上面板1と下面板2の中央部の長手方向にそれぞれ形成されている。
また、前記帯状切取部13の両側には、箱の長手方向に伸び、かつ箱の外側に向かって膨らんだ曲線状折れ線14a、14bによって構成されたヒンジ部を形成し、前記開封用の切込線11a、11bは、前記ヒンジ部を構成する曲線状折れ線14a、14bの両端部に、曲線状の切込線15aと15bによって連結されている。
【0033】
そして、前記開封用の切込線11a、11bと、前記ヒンジ部を構成する曲線状折れ線14a、14bと、これらを連結する曲線状の切込線15a、15bによって囲まれた一対の第1フラップ部16、16が形成される。
また、前記切取部13の両端の端部切込線12a、12bと、曲線状切込線15a、15bとにより囲まれた舌片状の突起部は、その付け根部分に、箱の短辺に平行な折れ線18を配置して第2フラップ部17を形成している。
このように、第2フラップ部の曲線部(曲線状切込線15a、15b、端部切込線12a、12b)と、カートン開口部の曲線状縁部(切込線15a、15b)とは、連続した滑らかな波形状をなしており、この波形状の曲線部と、第1フラップ端部の曲線部(曲線状切込線15a、15b)とにより、カートンから取り出すティシュペーパー等の衛生用紙を挟み、滑らかに取り出しできると共に、カートン内部への紙の落下を防止することができる。特に、ティシュペーパーのように、交互に折り畳んで収納されている場合は、取り出し時に、取り出されるティシュペーパーの取り出し方向が交互に変化するため(図3参照)、第1フラップ端部の挟み部も交互に入れ替わって(15a側と15b側に交互に入れ替わること)挟むことになるが、上述したように、第2フラップ部等により形成される連続した滑らかな波形状により、この挟み部間をティシュペーパーがスムーズに移動することができ、紙の破れや引っ掛かりの防止に優れている。
【0034】
また、図中において、第1フラップ部16のヒンジ部を構成する曲線状折れ線14a、14bと、第1フラップ部の端部の曲線状切込線15a、15bとが連結する部分は、箱の長辺側に向かって湾曲した小さな略円弧状切込線19を介して接するように形成することが好ましい。このような構成にすることにより、ヒンジ部を構成する曲線状折れ線14a、14bの端部の破断を回避し、またティシュペーパーが引き出される時に、ヒンジ部に引っ掛かることなくスムーズに引き出しができるものとなる。この小さな略円弧状の形状は、例えば曲率半径が数mmであってもよく、円弧でなく円弧に近い曲線でも構わない。また、円形、楕円形等に打ち抜いてもよい。この部分の具体的な形状の例を図10に示すが、これに限定される訳ではない。図10の(1)は、部分的に半径1mmの円弧状であり、全体として細長い円形に近い例を示している。又、図10の(2)は半径1mmの円弧状の例を示し、図10の(3)は半径2mmの円弧状の例を示している。
【0035】
因みに、図1に示すカートンの場合その長手方向の寸法は、一例として242mmであり、短手方向の寸法は116mmであり、高さは、50mmである。また、取出口10の長手方向の寸法は200mmであり、カートンの短手方向の寸法は60mmに形成されている。また、取出口の切取部13を構成する2本のミシン目の切込線11aと11bの間隔は、図1の場合は10mmに形成されているが、指を入れて切取部を容易に切り取うる程度の大きさとするのが良く、5〜20mm程度とするのが好ましい。なお、取出口のヒンジ部を構成する曲線状折れ線14aと14bが円弧状の場合の曲率半径は、一例として560mmに設定されているが、第1フラップ部を開いた後に閉止方向の力を得るために300〜760mm程度とするのが好ましい。この曲率半径が小さすぎると閉止力が大きくなりすぎ、逆に大きくすぎると閉止力が小さくなりすぎる。又、このヒンジ部は円弧でなく円弧に近い曲線でもよく、適切な閉止力が得られればよい。
【0036】
なお、本発明の取出口に設ける切込線11の図1とは異なる例を図5、図6、図7に示す。図5は前記ミシン目の切込線をジッパーに代えた例であり、図6は取出口の中央部に1本の切込線のみを設けた例(参考例)であり、図7の(a)と(b)はミシン目状の切込線が2重線で構成されている2組の切込線を設けた例である。また図7の(a)と(b)の例では2組の2重線にはさまれた帯状切取部の一端にジッパーを設けている。なお図示省略したが、切込線は、直線状でなければならない必要性はなく、波刃により波形に設けてもよい。さらにこの切込線はマイクロ刃と呼ばれる通常のミシン目より細かい切れ目でもよく、これらはすべて本発明の切込線の一例である。
また、図7の(b)は、帯状切取部13の両側に長短異なる長さの切込部を有する2本のミシン目を平行に配置し、かつそれぞれのミシン目の切込部を千鳥状に配置した例を示しており、長い切込部を有するミシン目がカートンの内側に位置し、短い切込部を有するミシン目がカートンの外側に位置するように配置されている。このような切込部の長さの異なる2種類のミシン目を千鳥状に配置すると、帯状切取部を指で摘んで切り取るとき、ミシン目に沿って凹凸状の切り口が形成されるため見栄えがよく、帯状切取部の縁が毛羽立ったり、ささくれ立ったりすることがなく、不均一なギザギザの切断面にならないので体裁がよい。また、帯状切取部を切り取るとき少ない力で簡単に裂開できるので開け易く、切り裂き時の音も小さくできる。さらに本発明のカートンを、古紙を主体とする多層抄き白板紙で製造したときも、前記のとおり帯状切取部の縁を比較的なめらかに綺麗に切り取ることができるので、印刷や色彩を施した周囲の紙の上層部を薄く剥がし取ること無く切取ることができる(紙層剥離が防止できる)。さらにまた、帯状切取部13の両側に千鳥状配置となるようした長短異なる長さの切込部を有する2本の平行なミシン目からなる切込線は、内側のミシン目の切込部を長く、外側のミシン目の切込部を短く形成させたので、帯状切取部を切り取るとき、帯状切取部の縁が凹凸状に綺麗に切り裂けるので、切り口の見栄えがよくなるものである。
【0037】
この場合、図7の(c)に示すように、ミシン目の長い切込部mの長さdは1〜6mmであることが好ましく、ミシン目の短い切込部nの長さeは0.5〜3mmであることが好ましく、また、ミシン目の長い切込部の長さdとミシン目の短い切込部の長さeの比率d/eが1.2〜12の範囲にあることが好ましい。2本のミシン目の切込部の長さ及び比率がこの範囲にあると、帯状切取部を容易かつ綺麗に切り取ることができる。ミシン目の長い切込部mとミシン目の短い切込部nの長さがそれぞれ1mm未満及び0.5mm未満になると、帯状切取部を切り取り難くなり、長い切込部mと短い切込部nの長さがそれぞれ6mm及び3mmを超えて長くなると、帯状切取部の強度が低下し、輸送中あるいは保存中の衝撃により帯状切取部が破れ易くなる。また、d/eの比率が1.2未満になると帯状切取部を綺麗に切り取り難くなり、d/eの比率が12を超えると帯状切取部の強度が低下し、輸送中あるいは保存中の衝撃により帯状切取部が破れ易くなる。
また、2本のミシン目の切込部m、nの間隔iは0.2〜1mmであることが好ましい。2本のミシン目のそれぞれの切込部m、nの間隔iが0.2mm未満になると、帯状切取部の強度が低下し、輸送中あるいは保存中の衝撃により帯状切取部が破れ易くなり、1mmを超えて長くなると、帯状切取部を切り取り難くなる。
さらに、長い切込部mを有するミシン目における隣接する切込部m間の距離h(つなぎ部の長さ)は、短い切込部nを有するミシン目の切込部nの長さeと同程度の長さとし、また、短い切込部nを有するミシン目における隣接する切込部n間の距離g(つなぎ部の長さ)は、長い切込部mを有するミシン目の切込部mの長さdと同程度の長さに設定して、2本のミシン目の長短の切込部mとnを千鳥状に配置することが好ましいが、2本のミシン目のそれぞれの切込部の長さを調節して若干重ね代をもたせるように構成しても良い。長い切込部mを有するミシン目における隣接する切込部m間の距離h(つなぎ部の長さ)は0.5〜3mmであることが好ましく、また、短い切込部nを有するミシン目における隣接する切込部n間の距離g(つなぎ部の長さ)は1〜6mmであることが好ましい。
また、各ミシン目の切込部m、nの幅fは0.5〜3mmであることが好ましい。
【0038】
図9は、図1、図5、図6、図7とは別の例を示し、ティシュペーパー取出口の帯状切取部13に摘み部用折れ線30を設けて摘み部31を形成した、本発明のカートンの変形例である。また、この例においては、図1、図5〜7の例と異なり、曲線状切込線15a、15bと端部切込線12a、12bが、つなぎ部(接続部)を有する不連続の切込線で構成されている。図1他の例は、これらの切込線が、連続した切込線で構成されている例である。また、本例(図9)は、図1の例と異なり、取出口が上面板のみに設けられた例を示している。また、図10はティシュペーパー取出口の一方の端部の構成の一例を示した拡大図であり、第1フラップのヒンジ部端部に接続する小さな略円弧状切込線の形状を示している。
【0039】
本発明のカートンにおいては、図2、図3に示すように箱の内部に収納されたティシュペーパーPを取り出すため取出口を開封するときに、上面開口部の開封用切込線11が1本の場合には指で押圧開披する。帯状切取部13が配置されているときは、左右いずれか一方の第2フラップ部17を折れ線18より押下して、切取部13の端部の下に指を入れて切取部をつまんで切り取った後、開口した部分から最上部のティシュペーパーをつまんで上方に引き出すと、一対の第1フラップ部16、16は外側に膨らんだ曲線状の折れ線14a、14bに沿って斜め上方に向かって傾斜しながら折り曲がる。この場合、図9に示すように、帯状切取部13の端部付近に、開封用切込線11a、11bに略直交して摘み部用折れ線30を配置して、摘み部31を形成すると、開封しやすく好ましい。
さらにこれに続く次のティシュペーパーが、開口した部分から引き出され、前記一対の第1フラップ部の対向辺間と、第1フラップ部の両端部と第2フラップ部との対向辺間、及び箱の開口端縁間に弾力的に挟み込まれてポップアップ状態に保持される。
また、前記一対の第1フラップ部16、16は、ヒンジとなる折れ線14a,14bをカートン上面の長辺側の外側に向かって膨らんだ円弧状とすることにより、このものには斜め上方に開いた時に閉じ傾向(折り曲げ前の状態に戻ろうとする力)が働く。このために、取出中のティシュペーパーを一対の第1フラップ部と第2フラップ部で弾力的に挟んで開口部の所定位置に保持する力が働くと共に、中身のティシュペーパーが少なくなっても、ティシュペーパーがカートン内部へ落下するのを防止する。ティシュペーパーを取り出さない時には、第1フラップ部が折り曲げ前の状態に戻ろうとしてカートンの蓋の役割をはたし、外部の塵や異物の侵入を防止する。
【0040】
なお、箱内のティシュペーパーの残量が少なくなったときには、図8に示すように、下面板の取出口に設けた一対の第1フラップ部を底上げ部材として内側に折り曲げて使用することもできる。すなわち、下面の取出口10bにおける2枚の第1フラップ部10をカートンの内側に略90度折り曲げて、内部のティシュペーパーを上面側に押し上げると、これにより上面の取出口10aからティシュペーパーの最後の1枚まで安定してポップアップさせることができる。
【0041】
また、この実施例(図1の例)では、カートンの対向する2面(上面と下面)にティシュペーパー取出口を設けているから、カートン上下面の差別がなくなり、使用時のカートンの置き方も、図11のように横置き、縦置き何れも使用可能であるから、狭い場所において使用することができる。またティシュペーパーを上下2面の何れからも取出すことができるので、収納されたティシュペーパーの残りが少なくなったときにも、中身のティシュペーパーの取出性が向上する。
また、カートンを開封する際に、帯状切取部13が破断したり、開口部の周辺部に切れ目が生じたりしないようにするためには、カートンの材質を考慮する必要がある。本発明におけるカートンは、木材パルプ、古紙などを原料とする厚紙により製造することが好ましく、この場合、JISP8116−2000に規定する引裂強度が、縦方向2500〜2900mN、横方向3000〜3400mNの範囲であることが好ましい。引裂強度が低すぎると破断し易く、必要以上に引裂強度があると開口部が形成しにくくなったりするため、好ましくない。尚、従来の衛生用紙入りカートンにおいては、JISP8116−2000に規定する引裂強度が、縦方向2300mN程度、横方向2800mN程度の厚紙が使用されており、本発明においては、取出口の構造上、従来より強度アップした厚紙を使用することが好ましいと言える。
【0042】
また、本発明のフィルムレスカートンは、以下の点において、従来から発案されている他のフィルムレスカートンより優れ、従来のフィルム付きカートンと同様の効果が得られることが確認できた。すなわち本発明のフィルムレスカートンは取出口に第1のフラップと第2のフラップを有し、開口部が大きいのでカートンの取出口においてティシュの触れる部分が少なく、かつ開口部形状が滑らかなのでフラップを開いてティシュを一組ずつ取り出す際に、(1)ティシュを取り出す際の音が、従来のフィルム付きカートンとほぼ同程度に小さい。(2)ティシュを取り出す際の紙紛の発生が少ない。
【0043】
なお一般に、ティシュペーパー等の衛生用紙を収納したカートンは、複数個(通常は5個を1単位)を1パックとして集積し、その周囲をフィルムにより包装して市場で販売されているので、その包装パックの中に、カートンのスタンド部材を内蔵させておくと使用者に便利である。このスタンド部材は、厚紙を用いてカートンとは別に作製してもよいが、例えば5個の内の1個のカートンの下面板から作製するようにしてもよい。もちろん2個以上のカートンからスタンド部材が得られるようにしてもよく、又、このようなスタンド部材を設けるカートンは、取出口の構造や、上下両面に取出口を有する構造のカートンと一緒に包装するものに限定される訳ではない。また、スタンド部材の裏面等に粘着剤やマグネット等を設けて、冷蔵庫、キッチンキャビネット、テーブルワゴン、オフィスの机、自動車のダッシュボードに取付け使用することもできる。図12は、本発明のカートンの下面板2にスタンド部材を一体的に組み込んだ場合の一例を示す展開図である。図13は、図12の下面板2から切り取ったスタンド部材Sを組立てる方法の説明図である。図12において符号20は矩形の基盤、21は基盤の両端に設けた抑え板、22は抑え板の両側に設けた直角3角形の側板、23は側板に付設した差込フラップ、24は基盤の両側に設けた内フラップ、25は内フラップの付け根に形成した差込フラップが挿入される差込溝である。図14は、組立型スタンド部材Sにより、本発明のカートンCを垂直状態に保持した説明図である。
このようなスタンド部材を使用すると、カートンの置き場所に困らず、ティシュペーパーの取出しの際、特に、上下両面取出し構造の場合、効果が大きく、ティシュペーパーの取出し操作性は向上する。
【符号の説明】
【0044】
1 上面板 2 下面板 3,4 側面板 5 糊代片
6,7 端面板 8, 9 内フラップ 10 取出口
11a、11b 切込線 12a,12b 端部切込線
13 帯状切取部 14a、14b 曲線状折れ線(ヒンジ部)
15a、15b 曲線状切込線 16 第1フラップ部
17 第2フラップ部 18 折れ線 19 小さな略円弧状切込線
30 摘み部用折れ線 31 摘み部
S スタンド部材 C カートン
d 長い切込部を有するミシン目における切込部の長さ
e 短い切込部を有するミシン目における切込部の長さ
f ミシン目の切込部の幅
g 短い切込部を有するミシン目における隣接する切込部間の距離(短い切込部を有するミシン目におけるつなぎ部の長さ)
h 長い切込部を有するミシン目における隣接する切込部間の距離(長い切込部を有するミシン目におけるつなぎ部の長さ)
i 2本のミシン目の切込部mとnの間の間隔
m 長い切込部 n 短い切込部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱の上下少なくとも一方の面に、箱の長手方向に細長い取出口を有し、該取出口を有する面の内側にフィルムが配置されていない衛生用紙入りカートンにおいて、
該取出口は、取出口を有する面の中央部に、箱の長手方向に間隔を置いて伸びると共に、少なくとも曲線部を有することにより短手方向内側に凸形状の2本または2組の開封用の切込線と、その端部を接続する端部切込線とによって囲まれた帯状切取部を有し、
該帯状切取部を挟んでその両側に、箱の長手方向に沿って折れ線によって構成されるヒンジ部が配置され、
前記2本または2組の開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線とが、それぞれの端部において切込線によって接続されており、
前記開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線と、これらを接続する前記切込線とによって囲まれ、短手方向内側に凸形状の一対の第1フラップ部が形成されていることを特徴とする衛生用紙入りカートン。
【請求項2】
前記箱の長手方向に沿って配置されるヒンジ部を構成する折れ線は、箱の長手方向に沿って外側に向かって膨らんだ曲線状であることを特徴とする請求項1に記載の衛生用紙入りカートン。
【請求項3】
前記帯状切取部両端の端部切込線は、箱の内側に向かって膨らんだ曲線状に形成され、前記開封用の切込線の端部と前記ヒンジ部を構成する折れ線の端部とを接続する前記切込線は、箱の外側に向かって膨らんだ曲線状に形成されることにより、これら二つの切込線は連続した波形状をなし、この波形状の切込線により形成される取出口端縁部と、前記第1フラップ部の端縁部とが、取り出し中の紙を摩擦力によって保持する挟み部として機能することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した衛生用紙入りカートン。
【請求項4】
前記帯状切取部を構成する2本または2組の切込線の間隔は、取出口開封前に、間隔の狭い部分において、5〜20mmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載した衛生用紙入りカートン。
【請求項1】
箱の上下少なくとも一方の面に、箱の長手方向に細長い取出口を有し、該取出口を有する面の内側にフィルムが配置されていない衛生用紙入りカートンにおいて、
該取出口は、取出口を有する面の中央部に、箱の長手方向に間隔を置いて伸びると共に、少なくとも曲線部を有することにより短手方向内側に凸形状の2本または2組の開封用の切込線と、その端部を接続する端部切込線とによって囲まれた帯状切取部を有し、
該帯状切取部を挟んでその両側に、箱の長手方向に沿って折れ線によって構成されるヒンジ部が配置され、
前記2本または2組の開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線とが、それぞれの端部において切込線によって接続されており、
前記開封用の切込線と、前記ヒンジ部を構成する折れ線と、これらを接続する前記切込線とによって囲まれ、短手方向内側に凸形状の一対の第1フラップ部が形成されていることを特徴とする衛生用紙入りカートン。
【請求項2】
前記箱の長手方向に沿って配置されるヒンジ部を構成する折れ線は、箱の長手方向に沿って外側に向かって膨らんだ曲線状であることを特徴とする請求項1に記載の衛生用紙入りカートン。
【請求項3】
前記帯状切取部両端の端部切込線は、箱の内側に向かって膨らんだ曲線状に形成され、前記開封用の切込線の端部と前記ヒンジ部を構成する折れ線の端部とを接続する前記切込線は、箱の外側に向かって膨らんだ曲線状に形成されることにより、これら二つの切込線は連続した波形状をなし、この波形状の切込線により形成される取出口端縁部と、前記第1フラップ部の端縁部とが、取り出し中の紙を摩擦力によって保持する挟み部として機能することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した衛生用紙入りカートン。
【請求項4】
前記帯状切取部を構成する2本または2組の切込線の間隔は、取出口開封前に、間隔の狭い部分において、5〜20mmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載した衛生用紙入りカートン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−102078(P2009−102078A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29451(P2009−29451)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【分割の表示】特願2003−345584(P2003−345584)の分割
【原出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【分割の表示】特願2003−345584(P2003−345584)の分割
【原出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]