説明

衝撃吸収式ステアリングコラム装置

【課題】エネルギー吸収部材を変形させ得るストロークを増大させて、エネルギー吸収部材の変形による衝突エネルギーの吸収量を増大させること。
【解決手段】標準体型より大きい運転者が運転していて車両が衝突したとき、エアバッグ装置の作動前にアクチュエータBが作動して、コラム側ブラケット31が車体側ブラケット32に対して設定値以上の荷重にて定位置から運転者に向けて所定量L後退移動させられる。定位置では、二次衝突時に、エネルギー吸収部材34が第1のプレートストッパ35と係合して、エネルギー吸収部材34の変形を可能とする。一方、後方移動位置では、エネルギー吸収部材34が第2のプレートストッパ36と係合して、二次衝突時に、エネルギー吸収部材34の変形を可能とするため、コラム側ブラケット31の車体側ブラケット32に対する車両前方への移動量(ストローク)が所定量L増大される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時における運転者の二次衝突エネルギー(以下、単に衝突エネルギーという)を吸収するエネルギー吸収部材を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の衝撃吸収式ステアリングコラム装置の一つとして、車体の一部に一体的に組付けられた車体側ブラケットと、ステアリングコラムに一体的に組付けられた状態にて前記車体側ブラケットに対して定位置にて車両前後方向に移動可能に組付けられて設定値以上の荷重が車両前後方向に作用したとき同荷重の作用方向に定位置から移動するコラム側ブラケットと、このコラム側ブラケットの前記車体側ブラケットに対する車両前方への移動により変形して衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材を備え、前記ステアリングコラムに回転可能に支持されコラム軸方向に移動不能なステアリングシャフトに組付けられているステアリングホイールには、車両の衝突時に作動するエアバッグ装置が装備されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−122856号公報
【0003】
上記した特許文献1に記載されている衝撃吸収式ステアリングコラム装置では、車両の衝突時においてエアバッグ装置の作動前に運転者とステアリングホイール間の距離を所定距離とする移動手段が設けられている。このため、車両の衝突時において、ステアリングホイールに装備されているエアバッグ装置での初期拘束性を向上させることが可能である。
【0004】
しかし、上記した移動手段は、例えば、テレスコピック機構を用いたものであり、コラム側ブラケットを車体側ブラケットに対して運転者に向けて後退移動させるものではない。このため、当該装置では、コラム側ブラケットの車体側ブラケットに対する車両前方への移動量(エネルギー吸収部材を変形させ得るストローク)が変化せず、運転者の体格が標準体型より大きい場合には、エネルギー吸収部材による衝突エネルギーの吸収量が不足するおそれがある。
【発明の開示】
【0005】
そこで、本発明は、車両の衝突時において、ステアリングホイールに装備されているエアバッグ装置での初期拘束性を向上させることが可能であるとともに、運転者の体格が標準体型より大きい場合には、運転者の体格が標準以下である場合に比して、エネルギー吸収部材を変形させ得るストロークを増大させることが可能で、エネルギー吸収部材の変形による衝突エネルギーの吸収量を増大させることが可能な衝撃吸収式ステアリングコラム装置を提供することを目的としている。
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明では、衝撃吸収式ステアリングコラム装置が、車両の衝突を検出する衝突検出手段と、運転者の体格が標準体型より大きいか否かを検出する体格検出手段と、前記衝突検出手段にて車両の衝突が検出され前記体格検出手段にて運転者の体格が標準体型より大きいことが検出されたときにはエアバッグ装置の作動前にコラム側ブラケットを車体側ブラケットに対して設定値以上の荷重にて定位置から運転者に向けて所定量後退移動させる後退手段と、コラム側ブラケットが定位置から車両前方に向けて移動するときにエネルギー吸収部材の変形を可能とする第1の機能手段と、コラム側ブラケットが定位置から運転者に向けて所定量後退移動した後方移動位置から車両前方に向けて移動するときにエネルギー吸収部材の変形を可能とする第2の機能手段を備えている。
【0007】
この衝撃吸収式ステアリングコラム装置では、体格が標準体型以下の運転者が運転していて車両が衝突したとき、その初期において、ステアリングホイールに装備したエアバッグ装置は作動するものの、後退手段は作動しなくて、コラム側ブラケットは車体側ブラケットに対して定位置に保持されている。このため、このときには、二次衝突時に、エアバッグ装置が機能して衝突エネルギーが吸収される。また、このときには、定位置にあるコラム側ブラケットに設定値以上の荷重が車両前方に作用して、コラム側ブラケットが車体側ブラケットに対して定位置から車両前方に向けて移動するときに、第1の機能手段がエネルギー吸収部材の変形を可能とする。したがって、エネルギー吸収部材の変形によっても、二次衝突時の衝突エネルギーが吸収される。
【0008】
また、体格が標準体型より大きい運転者が運転していて車両が衝突したときには、その初期において、ステアリングホイールに装備したエアバッグ装置が作動するとともに、このエアバッグ装置の作動前に後退手段が作動して、コラム側ブラケットが車体側ブラケットに対して設定値以上の荷重にて定位置から運転者に向けて所定量後退移動させられる。このため、このときには、二次衝突時に、エアバッグ装置が機能して衝突エネルギーが吸収される。また、このときには、定位置から運転者に向けて所定量後退した後方移動位置にあるコラム側ブラケットに荷重が車両前方に作用して、コラム側ブラケットが車体側ブラケットに対して後方移動位置から車両前方に向けて移動するときに、第2の機能手段がエネルギー吸収部材の変形を可能とする。したがって、エネルギー吸収部材の変形によっても、二次衝突時の衝突エネルギーが吸収される。
【0009】
ところで、第2の機能手段がエネルギー吸収部材の変形を可能とするときには、コラム側ブラケットが定位置から運転者に向けて所定量後退した後方移動位置にあって、第1の機能手段がエネルギー吸収部材の変形を可能とする場合に比して、コラム側ブラケットの車体側ブラケットに対する車両前方への移動量(エネルギー吸収部材を変形させ得るストローク)が所定量増大されていて、エネルギー吸収部材の変形による衝突エネルギーの吸収量を増大させることが可能である。したがって、体格が標準体型より大きい運転者が運転していて車両が衝突したときには、標準体型以下の運転者が運転していて車両が衝突したときに比して、エネルギー吸収部材の変形により二次衝突時の衝突エネルギーを十分に吸収することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置を備えた車両を概略的に示していて、この衝撃吸収式ステアリングコラム装置においては、図1および図2に示したように、ステアリングシャフト10が軸方向にて伸縮可能かつトルク伝達可能なアッパシャフト11とロアシャフト12を備える構成とされ、ステアリングシャフト10を回転自在に支持して軸方向にて伸縮可能なステアリングコラム20がアウターチューブ21とインナーチューブ22を備える構成とされている。
【0011】
アッパシャフト11は、アウターチューブ21に対して軸受(図示省略)を介して回転自在かつ軸方向移動不能に支持されていて、図1右端の上端部にはエアバッグ装置Aを装備したステアリングホイール13が一体回転可能に組付けられている。一方、ロアシャフト12は、インナーチューブ22に軸受(図示省略)を介して回転自在に支持されていて、図1左端の下端部にて自在継手14を介して伸縮可能かつトルク伝達可能な中間軸15に連結されるようになっていて、中間軸15は自在継手16を介してステアリングギヤボックス17に連結されている。
【0012】
アウターチューブ21は、図2に示したように、下端部にてインナーチューブ22の上端部に軸方向へ摺動可能に嵌合連結されていて、下端部に固着したブラケット21aにてチルトおよびテレスコピック調整可能な上方支持機構USとコラム側ブラケット31を介して車体の一部(図示省略)に一体的に組付けられた車体側ブラケット(ステアリングサポートブラケットともいわれる)32に組付けられている。一方、インナーチューブ22は、下端部に固着したブラケット22aにて支持ピン29を介してコラム側ブラケット31に傾動可能に組付けられている。
【0013】
上方支持機構USは、アウターチューブ21に固着したブラケット21aを上下方向にて傾動可能(チルト可能)に支持するブラケット23を備えるとともに、ブラケット23に対してアウターチューブ21に固着したブラケット21aを固定・解除可能なチルト機構と、アウターチューブ21をインナーチューブ22に対して固定・解除可能なテレスコピック機構を備えている。ブラケット23は、逆U字状に形成されていて、上面にてコラム側ブラケット31の後端部下面に一体的に固着されている。
【0014】
チルト機構は、それ自体公知のものであり、ハンドル24の回動操作にて固定・解除可能であり、解除状態ではステアリングシャフト10とステアリングコラム20をブラケット23に対して一体的に上下にチルト調整可能とする。テレスコピック機構は、それ自体公知のものであり、ハンドル24の回動操作にて固定・解除可能であり、解除状態ではアッパシャフト11とアウターチューブ21をロアシャフト12とインナーチューブ22に対してコラム軸方向にテレスコピック調整可能とする。
【0015】
コラム側ブラケット31は、左右二対4個のスライダ部31aを有していて、これらのスライダ部31aにて車体側ブラケット32の左右一対のレール部32aに車両前後方向に移動可能に組付けられている。また、コラム側ブラケット31は、各スライダ部31aと車体側ブラケット32のレール部32aを定位置にて貫通するように設けた2本の剪断可能な樹脂ピン33を介して連結されている。これにより、コラム側ブラケット31は、車体側ブラケット32に対して図2に示した定位置にて車両前後方向に移動可能に組付けられて設定値以上の荷重(樹脂ピン33が剪断される荷重)が車両前後方向に作用したとき同荷重の作用方向に定位置から移動するように構成されている。
【0016】
また、コラム側ブラケット31には、帯板状のエネルギー吸収部材34が組付けられている。エネルギー吸収部材34は、二次衝突時においてコラム側ブラケット31の車体側ブラケット32に対する車両前方への移動により、コラム側ブラケット31のプレート部31bによって押されて変形して衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収プレートであり、T字状の突起34aと係合孔34b(図4では図示省略)を有している。
【0017】
T字状の突起34aは、コラム側ブラケット31が図2に実線で示した定位置から車両前方に向けて移動するときに車体側ブラケット32に設けた第1のプレートストッパ35と係合するものであり、コラム側ブラケット31が定位置から車両前方に向けて移動するときにエネルギー吸収部材34の変形を可能とする第1の機能手段を第1のプレートストッパ35とにより構成している。
【0018】
係合孔34bは、コラム側ブラケット31が図2に実線で示した定位置から図2に仮想線で示した後方移動位置に移動したときに車体側ブラケット32に設けた第2のプレートストッパ36と図3に示したように係合するものであり、コラム側ブラケット31が後方移動位置から車両前方に向けて移動するときにエネルギー吸収部材34の変形を可能とする第2の機能手段を第2のプレートストッパ36とにより構成している。なお、第2のプレートストッパ36は、エネルギー吸収部材34が定位置から後方移動位置に移動する際に、エネルギー吸収部材34により上方に押動されてスプリング37に抗して一時的に退避するように構成されている。
【0019】
車体側ブラケット32は、コラム側ブラケット31を車両前後方向に移動可能に支持するレール部32aを有するとともに、コラム側ブラケット31の車両後方への移動を後方のスライダ部31aとの当接により規制してコラム側ブラケット31を後方移動位置にて停止させる後方ストッパ32bと、コラム側ブラケット31の車両前方への移動を前方のスライダ部31aとの当接により規制してコラム側ブラケット31を前方移動位置にて停止させる前方ストッパ32cを有している。また、車体側ブラケット32には、アクチュエータBが組付けられている。
【0020】
アクチュエータBは、コラム側ブラケット31を定位置から後方移動位置に向けて押動するものであり、その内部には押動力を得るための火薬(図示省略)が充填されている。また、アクチュエータBは保持ピン39によって車両前方への移動を規制されていて、保持ピン39が電磁ソレノイドDによって持ち上げられて退避した状態では車両前方への移動を許容されるように構成されている。
【0021】
電気制御装置ECUは、エアバッグ装置A、アクチュエータBおよび電磁ソレノイドDの各作動を、車両の衝突時に運転者の体格と運転者のシートベルト着用・非着用に応じて制御するものであり、エアバッグ装置A、アクチュエータBおよび電磁ソレノイドDに電気的に接続されるとともに、車両の衝突を検出するための検出信号を出力する衝突検出センサS1と、運転者の体格が標準体型より大きいか否かを検出するための検出信号を出力するシートポジションセンサS2と、運転者がシートベルト装置Cを装着しているか否かを検出するための検出信号を出力するシートベルトセンサS3にそれぞれ電気的に接続されている。
【0022】
また、電気制御装置ECUは、各センサS1〜S3からの検出信号に基づいてエアバッグ装置A、アクチュエータBおよび電磁ソレノイドDの各作動をそれぞれ制御する制御プログラムを備えていて、衝突検出センサS1とにより車両の衝突を検出する衝突検出手段を構成し、シートポジションセンサS2とにより運転者の体格が標準体型より大きいか否かを検出する体格検出手段を構成し、アクチュエータBと車体側ブラケット32に設けた後方ストッパ32bとによりエアバッグ装置Aの作動前にコラム側ブラケット31を車体側ブラケット32に対して設定値以上の荷重(樹脂ピン33が剪断される荷重)にて定位置から運転者に向けて所定量L後退移動させる後退手段を構成している。
【0023】
この電気制御装置ECUにおいては、車両の衝突時に、衝突検出センサS1からの検出信号に基づいてエアバッグ装置Aを作動させる制御プログラムが実行されるとともに、衝突検出センサS1、シートポジションセンサS2およびシートベルトセンサS3からの検出信号に基づいてアクチュエータBおよび電磁ソレノイドDの各作動を制御する制御プログラムが実行されるように構成されている。
【0024】
アクチュエータBおよび電磁ソレノイドDの各作動を制御する制御プログラムは、具体的には、体格が標準体型の運転者Hがシートベルト装置Cを装着して運転していて車両が衝突したとき、二次衝突に備えるエアバッグ装置Aの作動後に電磁ソレノイドDが作動するものの、アクチュエータBが作動しないように設定されている。また、体格が標準体型の運転者Hがシートベルト装置Cを装着しないで運転していて車両が衝突したとき、エアバッグ装置Aの作動前にアクチュエータBが作動するとともに、エアバッグ装置Aの作動後に電磁ソレノイドDが作動するように設定されている。
【0025】
また、体格が標準体型より大きい運転者Hrが運転していて車両が衝突したときには、シートベルト装置Cの着用有無に拘らず、エアバッグ装置Aの作動前にアクチュエータBが作動するとともに、エアバッグ装置Aの作動後に電磁ソレノイドDが作動するように設定されている。また、体格が標準体型より小さい運転者Hfが運転していて車両が衝突したときには、シートベルト装置Cの着用有無に拘らず、エアバッグ装置Aの作動後に電磁ソレノイドDが作動するものの、アクチュエータBが作動しないように設定されている。
【0026】
上記のように構成したこの実施形態においては、車両の衝突時、電気制御装置ECUによって作動を制御されるエアバッグ装置Aが作動して運転者(Hf,HまたはHr)の二次衝突に備えるとともに、アクチュエータBおよび電磁ソレノイドDが電気制御装置ECUによって各作動を制御されて運転者(Hf,HまたはHr)の二次衝突に備える。
【0027】
ところで、体格が標準体型の運転者Hがシートベルト装置Cを装着して運転していて車両が衝突したときには、二次衝突に先立ってエアバッグ装置Aが作動するとともに、このエアバッグ装置Aの作動後に電磁ソレノイドDが作動するが、アクチュエータBは作動しないため、コラム側ブラケット31は定位置から前方移動位置まで車両前方へ移動可能であり、この移動時にエネルギー吸収部材34が変形して衝突エネルギーを吸収する。したがって、このときには、二次衝突時の衝突エネルギーがエアバッグ装置Aとシートベルト装置Cによって吸収されるとともに、コラム側ブラケット31の定位置から前方移動位置までの移動に伴うエネルギー吸収部材34の変形によって吸収される。
【0028】
また、体格が標準体型の運転者Hがシートベルト装置Cを装着しないで運転していて車両が衝突したときには、エアバッグ装置Aの作動前にアクチュエータBが作動するとともに、エアバッグ装置Aの作動後に電磁ソレノイドDが作動するため、コラム側ブラケット31は後方移動位置から前方移動位置まで車両前方へ移動可能であり、この移動時にエネルギー吸収部材34が変形して衝突エネルギーを吸収する。したがって、このときには、二次衝突時の衝突エネルギーがエアバッグ装置Aによって吸収されるとともに、コラム側ブラケット31の後方移動位置から前方移動位置までの移動に伴うエネルギー吸収部材34の変形によって吸収される。
【0029】
また、体格が標準体型より大きい運転者Hrが運転していて車両が衝突したときには、シートベルト装置Cの着用有無に拘らず、エアバッグ装置Aの作動前にアクチュエータBが作動するとともに、エアバッグ装置Aの作動後に電磁ソレノイドDが作動するため、コラム側ブラケット31は後方移動位置から前方移動位置まで車両前方へ移動可能であり、この移動時にエネルギー吸収部材34が変形して衝突エネルギーを吸収する。
【0030】
したがって、シートベルト装置Cの着用時には、二次衝突時の衝突エネルギーがエアバッグ装置Aとシートベルト装置Cによって吸収されるとともに、コラム側ブラケット31の後方移動位置から前方移動位置までの移動に伴うエネルギー吸収部材34の変形によって吸収される。また、シートベルト装置Cの非着用時には、二次衝突時の衝突エネルギーがエアバッグ装置Aによって吸収されるとともに、コラム側ブラケット31の後方移動位置から前方移動位置までの移動に伴うエネルギー吸収部材34の変形によって吸収される。
【0031】
また、体格が標準体型より小さい運転者Hfが運転していて車両が衝突したときには、シートベルト装置Cの着用有無に拘らず、エアバッグ装置Aの作動後に電磁ソレノイドDが作動するものの、アクチュエータBが作動しないため、コラム側ブラケット31は定位置から前方移動位置まで車両前方へ移動可能であり、この移動時にエネルギー吸収部材34が変形して衝突エネルギーを吸収する。
【0032】
したがって、シートベルト装置Cの着用時には、二次衝突時の衝突エネルギーがエアバッグ装置Aとシートベルト装置Cによって吸収されるとともに、コラム側ブラケット31の定位置から前方移動位置までの移動に伴うエネルギー吸収部材34の変形によって吸収される。また、シートベルト装置Cの非着用時には、二次衝突時の衝突エネルギーがエアバッグ装置Aによって吸収されるとともに、コラム側ブラケット31の定位置から前方移動位置までの移動に伴うエネルギー吸収部材34の変形によって吸収される。
【0033】
以上の説明から明らかなように、この実施形態においては、第2のプレートストッパ36がエネルギー吸収部材34の係合孔34bに係合してエネルギー吸収部材34の変形を可能とするときには、コラム側ブラケット31が定位置から運転者に向けて所定量L後退した後方移動位置にあって、第1のプレートストッパ35がエネルギー吸収部材34のT字状突起34aに係合してエネルギー吸収部材34の変形を可能とする場合に比して、コラム側ブラケット31の車体側ブラケット32に対する車両前方への移動量(エネルギー吸収部材34を変形させ得るストローク)が所定量L増大されていて、エネルギー吸収部材34の変形による衝突エネルギーの吸収量を増大させることが可能である。したがって、体格が標準体型より大きい運転者Hrが運転していて車両が衝突したときには、標準体型以下の運転者H,Hfがシートベルト装置Cを装着して運転していて車両が衝突したとき、または体格が標準体型より小さい運転者Hfがシートベルト装置Cを装着しないで運転していて車両が衝突したときに比して、エネルギー吸収部材34の変形により二次衝突時の衝突エネルギーを十分に吸収することが可能である。
【0034】
上記実施形態においては、コラム側ブラケットを定位置から後方移動位置に向けて押動するアクチュエータ(駆動手段)として、火薬を内蔵したアクチュエータBを採用して実施したが、本発明の実施に際しては、上記アクチュエータとして他の駆動手段、例えば、電気モータを用いたものを採用してもよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0035】
また、上記実施形態においては、ステアリングコラム20のアウターチューブ21とインナーチューブ22の軸方向収縮にて、車両の衝突時における運転者の衝突エネルギーを吸収可能な衝突エネルギー吸収機構を備えていないものに本発明を実施したが、同衝突エネルギー吸収機構を備えたものにも本発明は同様に実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置を備えた車両の一実施形態を概略的に示した側面図である。
【図2】図1に示した衝撃吸収式ステアリングコラム装置の拡大側面図である。
【図3】図2に示したコラム側ブラケット、車体側ブラケット、エネルギー吸収部材、第1のプレートストッパ、第2のプレートストッパ等の関係を示す部分拡大側面図である。
【図4】図3の4−4線に沿って切断した断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10…ステアリングシャフト、13…ステアリングホイール、20…ステアリングコラム、31…コラム側ブラケット、31a…スライダ部、31b…プレート部、32…車体側ブラケット、32a…レール部、32b…後方ストッパ、32c…前方ストッパ、33…樹脂ピン、34…エネルギー吸収部材、34a…T字状の突起、34b…係合孔、35…第1のプレートストッパ、36…第2のプレートストッパ、A…エアバッグ装置、B…アクチュエータ、C…シートベルト装置、D…電磁ソレノイド、ECU…電気制御装置、S1…衝突検出センサ、S2…シートポジションセンサ、S3…シートベルトセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の一部に一体的に組付けられた車体側ブラケットと、ステアリングコラムに一体的に組付けられた状態にて前記車体側ブラケットに対して定位置にて車両前後方向に移動可能に組付けられて設定値以上の荷重が車両前後方向に作用したとき同荷重の作用方向に定位置から移動するコラム側ブラケットと、このコラム側ブラケットの前記車体側ブラケットに対する車両前方への移動により変形して衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材を備え、前記ステアリングコラムに回転可能に支持されコラム軸方向に移動不能なステアリングシャフトに組付けられているステアリングホイールには、車両の衝突時に作動するエアバッグ装置が装備されている衝撃吸収式ステアリングコラム装置であって、
車両の衝突を検出する衝突検出手段と、運転者の体格が標準体型より大きいか否かを検出する体格検出手段と、前記衝突検出手段にて車両の衝突が検出され前記体格検出手段にて運転者の体格が標準体型より大きいことが検出されたときには前記エアバッグ装置の作動前に前記コラム側ブラケットを前記車体側ブラケットに対して設定値以上の荷重にて定位置から運転者に向けて所定量後退移動させる後退手段と、前記コラム側ブラケットが定位置から車両前方に向けて移動するときに前記エネルギー吸収部材の変形を可能とする第1の機能手段と、前記コラム側ブラケットが定位置から運転者に向けて所定量後退移動した後方移動位置から車両前方に向けて移動するときに前記エネルギー吸収部材の変形を可能とする第2の機能手段を備えていることを特徴とする衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、前記後退手段は、前記コラム側ブラケットを定位置から後方移動位置に向けて押動するアクチュエータと、前記コラム側ブラケットを後方移動位置にて停止させる後方ストッパを備えていることを特徴とする衝撃吸収式ステアリングコラム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−192971(P2006−192971A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4422(P2005−4422)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】