説明

衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法

【課題】 本発明は衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法に係り、プレイヤーに対する良好な衝撃緩衝性を確保しつつ、施工作業性に優れコストの安い衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 請求項1に係る衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法は、コンクリート壁の壁面に発泡体製緩衝材層を取り付け、該発泡体製緩衝材層の表面を覆って表層を設けた野球場,競技場等の既設の衝撃緩衝フェンス上に、発泡体製緩衝材を接着し、該発泡体製緩衝材の表面と前記衝撃緩衝フェンスの既存露出面に、速硬化樹脂からなる高粘度混合物を吹き付けて表層を形成することを特徴とする。
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法に於て、既設の前記衝撃緩衝フェンスの表層に孔を設けて、該表層上に前記発泡体製緩衝材を接着することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球場,競技場等のリフォームが必要な既存の衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法に係り、詳しくはプレイヤーに対する良好な衝撃緩衝性を確保しつつ、施工作業性に優れコストの安い衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、多くの野球場や競技場等では、プレイヤーがコンクリート壁のフェンスに激突した際に怪我をしないように、衝撃緩衝機能を持たせた衝撃緩衝フェンスが設置されている。
【0003】
図3は従来のこの種の衝撃緩衝フェンスを示し、図示するようにこの衝撃緩衝フェンス1は、コンクリート壁のフェンス3の壁面(表面)3aに連続気泡のウレタン等からなる厚さ40mm程のクッション材(発泡体製緩衝材層)5を接着剤で貼着した後、該クッション材5を覆って補強繊維入りの厚さ3mm程のゴムシートからなるカバーゴム(表層)7を取り付けて、カバーゴム7の上下両端を、夫々、押さえ板9とボルト11等の締結部材13でフェンス3の壁面3aや上壁面3bに固定した構造となっている。
【0004】
また、図4は特許文献1に開示された衝撃緩衝フェンスを示し、この衝撃緩衝フェンス15は、フェンス3の壁面3aの上部コーナ部3cに沿って切欠部17aを設けたゴム状弾性部材からなる枕状の支持部材17を上部コーナ部3cに固定し、支持部材17の突出した長さLの部分と同じ厚さに形成したクッション材5を壁面3aに接着剤で貼着して、壁面3aの下部に押さえ板9とボルト11等の締結部材13を介してカバーゴム7の下端側を固定すると共に、該カバーゴム7をクッション材5及び支持部材17を覆うように引っ張り上げ、更にカバーゴム7をジャッキ等を用いて展張させた状態で、その上端側をフェンス3の上壁面3bに締結部材13を介して固定したものである。
【0005】
而して、図3の衝撃緩衝フェンス1は、長期に亘って使用した場合にカバーゴム7の自重でカバーゴム7に弛みが発生して外観が著しく損なわれるという課題が指摘されていたが、図4の衝撃緩衝フェンス15によれば、カバーゴム7の重量の一部を支持部材17に持たせることができるため、施工後にカバーゴム7に弛みが発生することがなくなる。
【0006】
一方、図5は特許文献2に開示された衝撃緩衝フェンス(スプレーラバーフェンス)を示し、この衝撃緩衝フェンス19は、コンクリート壁3の壁面3aにクッション材5を接着剤で貼着した後、クッション材5の表面に吹き付け手段21により主剤と硬化剤とを混合させた速硬化性樹脂からなる高粘度混合物23を吹き付けて、クッション材5の表面に厚さ2mm程のスプレー層(表層)25を形成したものである。
【0007】
而して、この衝撃緩衝フェンス19によれば、前記衝撃緩衝フェンス1,15に比し、施工に当たりカバーゴム7や締結部材13が不要となるため、施工作業性に優れた利点を有している。
【特許文献1】特開平8−151706号公報
【特許文献2】特許第3439841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、昨今では、東京ドームや札幌ドーム等、多くのドーム形の屋内野球場が建設されているが、その他の野球場や競技場では衝撃緩衝フェンスは屋外に取り付けられ、直射日光,雨雪,オゾン等の環境下に晒され、加えてドーム形の野球場に於てもプレイヤーの衝撃,スパイクの衝撃,ボールの衝撃を日常的に受ける等、過酷な条件下で使用されている。
【0009】
そのため、衝撃緩衝フェンスは定期的な部分補修(メンテナンス)が必要であり、また、例えば施工後5〜10年には、部分補修に加えて専用塗料を用いてトップコート塗布を行ったり、速硬化ウレタン吹付けを行って衝撃緩衝フェンス全体のリフォームを図っているのが実情である。
【0010】
しかし乍ら、斯様に速硬化ウレタンや専用塗料を用いてトップコート塗布を行った場合、衝撃緩衝フェンスの表層が硬くなってしまう虞があった。
【0011】
そして、従前と同様の衝撃緩衝性を確保するために、現状では衝撃緩衝フェンスを全面リフォームするしかないのが実情であるが、全面リフォームを行った場合、既存の衝撃緩衝フェンスの撤去に費やす時間が必要になると共に、撤去費用,産廃費用等が負担となってコストが非常にかかってしまう不具合があった。
【0012】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、プレイヤーに対する良好な衝撃緩衝性を確保しつつ、施工作業性に優れコストの安い衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法は、コンクリート壁の壁面に発泡体製緩衝材層を取り付け、該発泡体製緩衝材層の表面を覆って表層を設けた野球場,競技場等の既設の衝撃緩衝フェンス上に、発泡体製緩衝材を接着し、該発泡体製緩衝材の表面と前記衝撃緩衝フェンスの既存露出面に、速硬化樹脂からなる高粘度混合物を吹き付けて表層を形成することを特徴とする。
【0014】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法に於て、既設の前記衝撃緩衝フェンスの表層に孔を設けて、該表層上に前記発泡体製緩衝材を接着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
専用塗料を用いて衝撃緩衝フェンスの表層にトップコート塗布を行ったり速硬化ウレタン吹付けを行っていた従来のリフォーム方法では、表層が硬くなってしまう虞があったが、請求項1に係る発明によれば斯かる不具合がなく、プレイヤーに対する良好な衝撃緩衝性を確保することができる。
【0016】
また、既設の衝撃緩衝フェンスを撤去する必要がないため、工期が短縮でき、而も、撤去費用,産廃費用がかかることがないため、全面リフォームに比しコストの大幅な削減が図れる利点を有する。
【0017】
そして、請求項2に係る発明によれば、既設の衝撃緩衝フェンスのクッション材と新たなクッション材39との間に空気が流通するため、新たな衝撃緩衝フェンスが更に柔らかくなって衝撃緩衝性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は請求項1に係る発明方法の一実施形態を用いてリフォームした衝撃緩衝フェンスの断面図を示し、図中、31は野球場のコンクリート壁からなる高さ1140mmの内野フェンス(以下、「フェンス」という)で、その上部は120〜150mmの厚みに形成されている。尚、図中、GLはグラウンドである。
【0020】
そして、フェンス31の壁面(表面)33に衝撃緩衝フェンス35が設置されており、本実施形態は該衝撃緩衝フェンス35のリフォーム方法である。
【0021】
前記衝撃緩衝フェンス35は既述した衝撃緩衝フェンス1,15と略同一構造からなり、図中、37は前記壁面33に接着剤を介して接着された厚さ3mm程の樹脂製の背面止水板、39は該背面止水板37に接着剤で接着された厚さ47mm程の連続気泡のウレタン発泡材からなるクッション材(発泡体製緩衝材層)で、該クッション材39の上下に上部クッション材41と下部クッション材43が接着されている。
【0022】
上部クッション材41は、前記クッション材39と同一材料を用いて棒状且つ枕状に形成された断面半円形状(1/2円形状)からなり、その断面の略半径分の長さがフェンス31の上部コーナ部45から外方向に突出し、その突出量と同じ厚さに形成した前記クッション材39が、背面止水板37に接着剤で接着されている。
【0023】
一方、下部クッション材43は、前記クッション材39と同一材料を用いて棒状に形成された断面1/4円形状からなり、その半径の長さが前記クッション材39の厚さと同一に設定されている。
【0024】
そして、これらのクッション材39,41,43を覆って補強繊維入りの厚さ3mm程のゴムシートからなるカバーゴム(表層)47が接着されて、カバーゴム47の上端が、押さえ板49と図示しないコンクリートアンカーでフェンス31の上壁面51に固定されると共に、カバーゴム47の下端が、前記背面止水板37を介して押さえ板49とコンクリートアンカーでフェンス31の表面33に固定されて、衝撃緩衝フェンス35が内野の全フェンス31の最上部から地上高さ10cmmに亘って形成されている。
【0025】
尚、図示しないが、野球場の外野のフェンスやバックネット側のフェンスにも、コンクリート壁の高さ寸法に応じて前記衝撃緩衝フェンス35が取り付けられている。
【0026】
ところで、既述したように屋外に取り付けられた衝撃緩衝フェンス35は直射日光,雨雪,オゾン等の環境下に晒され、加えて衝撃緩衝フェンス35はプレイヤーの衝撃,スパイクの衝撃,ボールの衝撃を日常的に受ける等、過酷な条件下で使用されている。
【0027】
このため、衝撃緩衝フェンス35は定期的な部分補修(メンテナンス)が必要であると共に、例えば施工後5〜10年には、部分補修に加えて衝撃緩衝フェンス35全体のリフォームが必要となる。
【0028】
そこで、本実施形態は、前記衝撃緩衝フェンス35のカバーゴム47の表面にクッション材(発泡体製緩衝材層)53を接着剤で貼り付け、更に、該クッション材53の表面と衝撃緩衝フェンス35の既存露出面に速硬化ウレタンを吹き付けて、該衝撃緩衝フェンス35をリフォームしたもので、以下、請求項1に係るリフォーム方法の一実施形態を説明する。
【0029】
先ず、衝撃緩衝フェンス35のリフォームに当たり、カバーゴム47の汚れを水で洗浄し、カバーゴム47の劣化の程度に応じてプライマーをかける。
【0030】
そして、図1に示すようにカバーゴム47の表面に、連続気泡のウレタン発泡材からなる厚さ30〜50mmの前記クッション材53を接着剤で貼着すると共に、該クッション材53の上下に上部クッション材55と下部クッション材57を配置して、これらをクッション材53とカバーゴム47に貼着する。
【0031】
上部クッション材55と下部クッション材57は、クッション材53と同一材料を用いて棒状に形成された断面1/4円形状からなり、その半径の長さが前記クッション材53の厚さと同一に設定されている。
【0032】
尚、図2(a),(b)に示すように前記クッション材53に代え、クッション材53-1の上端側と下端側を、夫々、先細に形成すると共に、クッション材53-1の背面側上部と背面側下部に複数の切欠き58を設けて、カバーゴム47の上下の円弧状の湾曲に沿ってクッション材53-1の上下を湾曲させて該カバーゴム47に貼着可能としてもよく、この場合、前記上部クッション材55と下部クッション材57は不要である。
【0033】
そして、衝撃試験から、連続気泡のウレタン発泡材は独立気泡のポリエチレン発泡材に比し衝撃緩衝性に優れ、また、斯かるウレタン発泡材は厚さ30〜50mmで十分な衝撃緩衝性が期待できることが明らかとなった。
【0034】
このため、本実施形態では、前記クッション材53を連続気泡のウレタン発泡材を用いて厚さ30〜50mmに形成している。
【0035】
但し、独立気泡のポリエチレン発泡材で前記クッション材を形成した場合、例えばその厚さを70mm程度にすれば、厚さ50mm程度の前記クッション材53と同様な衝撃緩衝性が期待できることが衝撃試験から明らかとなっているため、クッション材53の材料は連続気泡のウレタン発泡材に限定されず独立気泡のポリエチレン発泡材を使用してもよく、これに合わせて上部クッション材55と下部クッション材57を独立気泡のポリエチレン発泡材で形成してもよい。
【0036】
このように、カバーゴム47の表面にクッション材53を接着剤で貼り付けた後、該クッション材53,上部クッション材55,下部クッション材57の表面と衝撃緩衝フェンス35の既存露出面に、図示しない吹付け装置で速硬化ウレタンを吹き付けてウレタンスプレー層(表層)59を形成する。
【0037】
前記吹付け装置は、一例として周知のスタティックミキサー方式(スタティックミキサーの外部を流れる圧縮エアーによるスプレー方式)を使用する。
【0038】
このようにクッション材53,55,57の表面と衝撃緩衝フェンス35の既存露出面に速硬化ウレタンを吹き付けてウレタンスプレー層59を形成することで、衝撃緩衝フェンス35をリフォームした新たな衝撃緩衝フェンス61が設置されて、衝撃緩衝フェンス35のリフォームが完了する。
【0039】
而して、この新たな衝撃緩衝フェンス61にプレイヤーが激突しても、2層のクッション材39,53の衝撃緩衝機能によってプレイヤーは保護される。そして、既述したように専用塗料を用いてカバーゴムにトップコート塗布を行ったり、カバーゴムに速硬化ウレタン吹付けを行っていた従来のリフォーム方法では、表層が硬くなってしまう虞があったが、本実施形態のリフォーム方法によれば斯かる虞がなく、プレイヤーに対する良好な衝撃緩衝性を確保することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、既存の衝撃緩衝フェンス35を撤去する必要がないため、工期が短縮でき、而も、撤去費用,産廃費用がかかることがないため、全面リフォームに比しコストの大幅な削減が図れる利点を有する。
【0041】
尚、図示しないが、請求項2の一実施形態のように、カバーゴム47へのクッション材53の貼着に当たり、カバーゴム47に複数の孔を設けてクッション材53とクッション材39との間に空気の流通性を持たせてもよい。
【0042】
而して、この実施形態によれば、連続気泡のウレタン発泡材からなるクッション材39,53が連続した構造となるため、衝撃緩衝フェンス61が更に柔らかくなって衝撃緩衝性が向上する利点を有する。尚、既述したように図1の実施形態は、クッション材39,53を連続気泡のウレタン発泡材で形成したため、カバーゴム47に複数の孔を設けることで衝撃緩衝性を向上させることができるが、例えばクッション材39を独立気泡のポリエチレン発泡材で形成し、クッション材53を連続気泡のウレタン発泡材で形成した場合には、衝撃緩衝性を向上させるため、独立気泡のポリエチレン発泡材のクッション材39に前記複数の孔を貫通させて背面の止水板37まで削孔させる必要がある。
【0043】
また、リフォームに当たり、前記カバーゴム47を撤去してクッション材39にクッション材53を直接貼り付けてもよい。
【0044】
更に、前記実施形態では、速硬化ウレタンの吹き付けに周知のスタティックミキサー方式を用いたが、その他の吹付け方法を用いることができることは勿論であり、例えばスプレーガン内部で主剤と硬化剤を衝突混合させて、材料を送る圧力(高圧)で速硬化ウレタンを吹き付ける衝突混合方法を利用してもよい。
【0045】
そして、前記実施形態は、図3,図4の従来構造と同様な衝撃緩衝フェンス35をリフォームの対象としたが、本発明方法は、図5に示す衝撃緩衝フェンス(スプレーラバーフェンス)19のリフォームにも利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】請求項1の一実施形態でリフォームされた衝撃緩衝フェンスの断面図である。
【図2】既設の衝撃緩衝フェンスに貼着するクッション材の変形例である。
【図3】従来の衝撃緩衝フェンスの断面図である。
【図4】従来の他の衝撃緩衝フェンスの断面図である。
【図5】従来の更に他の衝撃緩衝フェンスの断面図である。
【符号の説明】
【0047】
31 フェンス
33 壁面
35,61 衝撃緩衝フェンス
37 背面止水板
39,53,53-1 クッション材
41,55 上部クッション材
43,57 下部クッション材
47 カバーゴム
59 ウレタンスプレー層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート壁の壁面に発泡体製緩衝材層を取り付け、該発泡体製緩衝材層の表面を覆って表層を設けた野球場,競技場等の既設の衝撃緩衝フェンス上に、発泡体製緩衝材を接着し、該発泡体製緩衝材の表面と前記衝撃緩衝フェンスの既存露出面に、速硬化樹脂からなる高粘度混合物を吹き付けて表層を形成することを特徴とする衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法。
【請求項2】
既設の前記衝撃緩衝フェンスの表層に孔を設けて、該表層上に前記発泡体製緩衝材を接着することを特徴とする請求項1に記載の衝撃緩衝フェンスのリフォーム方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−256931(P2009−256931A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105602(P2008−105602)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(501302924)ヨコハマ弾性舗装システム株式会社 (2)
【出願人】(501194134)横浜ゴムエムビーイー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】