説明

衝突回避支援装置

【課題】適切な誘導を行うことによって、より安全な衝突回避を支援する衝突回避支援装置を提供する。
【解決手段】 衝突回避支援システムは、歩行者に装着される携帯端末1、及び車両に設置される運転支援装置2を備える。運転支援装置2は、歩行者との通信を行う歩車間通信部26と、運転支援ECU20とを有する。運転支援ECU20は、歩行者周囲の道路環境及び他車両の接近状況に応じて身体誘導装置12の作動条件を変更し、身体誘導装置12の作動を制御する。これにより、歩行者に対して適切な誘導を行うことが可能となり、より安全な衝突回避を支援することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者に装着される誘導手段を作動させて車両との衝突回避方向に歩行者を誘導し、車両との衝突を回避する衝突回避支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衝突回避支援装置として、例えば特開2004−254790号公報に記載されるように、歩行者に装着される身体誘導装置を介して歩行者に電気的刺激を与え、意識下での条件反射的な動作を利用して、車両との衝突回避方向に歩行者を誘導するものが知られている。この衝突回避支援装置は、条件反射的な動作を利用することにより、回避反応時間の短縮を図ろうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−254790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した装置にあっては、歩行者を反射的に誘導させる際に、歩行者の周囲他車両の走行状況、道路環境及び運転者の運転状態等を考慮していないため、歩行者に適切な誘導を行えない問題点があった。
【0005】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、適切な誘導を行うことによって、より安全な衝突回避を支援する衝突回避支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る衝突回避支援装置は、歩行者に装着される誘導手段を作動させて車両との衝突回避方向に歩行者を誘導し、車両との衝突を回避する衝突回避支援装置であって、誘導手段を作動させる際における歩行者の周囲の状況に応じて、誘導手段の作動条件を変更する作動条件変更手段を備えて構成されている。
【0007】
この発明によれば、歩行者の周囲の状況に応じて誘導手段の作動条件を変更する作動条件変更手段を備えるので、歩行者の周囲の状況に応じて適当な作動条件で誘導手段を作動させることが可能となる。従って、歩行者に対して適切な誘導を行うことができ、より安全な衝突回避を支援することができる。なお、ここでの歩行者の周囲の状況は、周囲の道路環境、他車両の接近状況、運転者の運転状態等の状況を含む。
【0008】
本発明に係る衝突回避支援装置において、作動条件変更手段は、誘導方向への他車両の接近状況に応じて誘導手段の作動条件を変更することが好適である。このようにすれば、誘導により生じる他車両との衝突を防止することができ、より安全な衝突回避支援を行える。
【0009】
本発明に係る衝突回避支援装置において、作動条件変更手段は、誘導方向における路面環境に応じて誘導手段の作動条件を変更することが好適である。このようにすれば、より安全な路面環境に歩行者を適切に誘導することで、歩行者の安全性の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る衝突回避支援装置において、作動条件変更手段は、誘導手段を作動させる際の車両運転者の状態に応じて誘導手段の作動条件を変更することが好適である。ここで、運転者の状態は、運転者の運転状態のみならず、運転者の身体状態も含む。従って、例えば運転者の脇見状態あるいは居眠り運転状態の場合、運転者の反応度が低下しているので、誘導手段の作動タイミングを通常より早める。これによって、より安全な衝突回避を支援可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、適切な誘導を行うことによって、より安全な衝突回避を支援する衝突回避支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態係る衝突回避支援装置を用いた衝突回避支援システムの概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る衝突回避支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る衝突回避支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】回避方向に他車両が接近する状態を示す平面図である。
【図5】身体誘導装置の作動条件を示す図である。
【図6】身体誘導装置の作動条件を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る衝突回避支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る衝突回避支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】身体誘導装置の作動条件を示す図である。
【図10】身体誘導装置の作動条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る衝突回避支援装置の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態では、本発明に係る衝突回避支援装置を車両に搭載される運転支援装置に適用する。図1は第1実施形態に係る衝突回避支援装置を用いた衝突回避支援システムの概略構成図である。この衝突回避支援システムは、歩行者に装着される携帯端末1と、車両に設置される運転支援装置2とを備えて構成されている。
【0015】
携帯端末1は、電気刺激部11、身体誘導装置12及び通信部13を有する。電気刺激部11は、歩行者の刺激部位への電気的刺激信号を供給するものである。身体誘導装置12は、身体誘導用電極を有し、電気刺激部11の刺激により歩行者の前庭感覚へ作用し、意識下での条件反射的な動作を利用して歩行者を誘導する装置である。
【0016】
通信部13は、歩行者と車両との間に情報信号の送受信(すなわち、歩車間通信)を行うものであり、例えばアンテナ14を通じて歩行者の現在位置、進行方向及び歩行者の向き等の情報を車両に送信し、アンテナ14で受信した信号を電気刺激部11及び身体誘導装置12に入力する。
【0017】
運転支援装置2は、運転支援ECU(Electronic Control Unit)20、GPSセンサ21、車速センサ22、周囲環境認識センサ23、運転者状態検出センサ24、衝突被害低減ユニット25、歩車間通信部26及び車車間通信部28を備える。
【0018】
GPSセンサ21は、自車両の位置を検出するためのGPS(Global Positioning System)衛星信号を受信し、受信されたGPS衛星信号に基づき自車両の位置を検出するものである。このGPSセンサ21は、運転支援ECU20と接続され、自車両の位置情報を運転支援ECU20に出力する。
【0019】
車速センサ22は、自車両の車速を検出し、検出した車速を車速信号として運転支援ECU20に出力する機能を有している。この車速センサ22は、例えば車輪に取り付けられ、車輪の回転速度を計測することにより車速を検出するものである。
【0020】
周囲環境認識センサ23は、自車両周辺の環境を認識するものであり、例えば歩行者及び他車両の位置情報を検出するレーダ、あるいは自車両の周辺を撮像するカメラなどによって構成される。この周囲環境認識センサ23は、認識された各情報を運転支援ECU20に出力する。
【0021】
運転者状態検出センサ24は、例えば車内に設置されたカメラであって、運転者の顔を撮像することにより、運転者の運転状態(例えば脇見運転状態、居眠り運転状態)や身体状態を検出し、検出した結果を運転支援ECU20に出力する。
【0022】
衝突被害低減ユニット25は、例えば警報、ブレーキアシスト、プリクラッシュシートベルト、プリクラッシュブレーキ等により構成されている。この衝突被害低減ユニット25は、運転支援ECU20に接続され、運転支援ECU20から制御信号を受けて実行される。
【0023】
歩車間通信部26は、歩行者との通信を行うものであって、例えばアンテナ27を通じて携帯端末1から送信される情報を受信し、身体誘導装置12を作動させる作動信号などの情報を携帯端末1に送信する。車車間通信部28は、自車両周辺の他車両と通信を行う通信手段であり、例えばアンテナ29を通じて自車両の走行位置情報や進行情報等を他車両に送信し、他車両の走行位置情報及び進行情報等を受信する。
【0024】
運転支援ECU20は、車両全体の制御を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。この運転支援ECU20は、地図情報データベース30と、演算部31と、衝突可能性判定部32とを備える。
【0025】
地図情報データベース30は、例えば自車両が走行する地図の情報、路面の勾配情報、道路形状及び道路構造などの情報を記憶するものである。演算部31は、運転支援に必要とされる各データの演算を行うものであり、例えば自車両の走行位置情報、進行方向情報、及び歩車間通信部26を通じて得られた歩行者の現在位置情報、進行方向情報、向き情報に基づいて、自車両に対する歩行者の相対位置、相対速度、衝突余裕時間(Time To Collision TTC)、衝突可能性などを算出する。
【0026】
衝突可能性判定部32は、演算部31により算出された衝突余裕時間や衝突可能性の結果に基づき、衝突可能性の判定を行い、その判定結果を運転支援ECU20に出力する。そして、衝突可能性があると判定された場合に、運転支援ECU20は歩車間通信部26を通じて歩行者の身体誘導装置12に作動信号を送信する。
【0027】
また、運転支援ECU20は、身体誘導装置12を作動させる際における歩行者の周囲の状況に応じて、身体誘導装置12の作動条件を変更する作動条件変更手段として機能している。例えば、運転支援ECU20は、歩行者を誘導しようとする方向への他車両の接近状況、路面環境、あるいは車両運転者の運転状態等に応じて身体誘導装置12の作動条件の変更を行う。
【0028】
次に、図2及び図3を参照して運転支援装置2の動作について説明する。この運転支援装置2の制御処理は、例えば運転支援ECU20によって所定の周期で繰り返し実行される。初めに、S11の処理では、自車両の走行位置、進行方向の情報取得が行われる。このとき、運転支援ECU20は、GPSセンサ21と車速センサ22とからの信号に基づいて、自車両の現在の走行位置(絶対位置)、進行方向のデータを取得する。
【0029】
S11の処理に続くS12の処理では、他車両の走行位置、進行方向の情報取得が行われる。このとき、運転支援ECU20は、車車間通信部28を通じて自車両周辺を走行する他車両の現在走行位置(絶対位置)、進行方向のデータを取得する。なお、これらのデータは、自車両に搭載された周囲環境認識センサ23により検出された他車両との相対距離、相対速度、及び自車両の現在の走行位置、進行方向に基づいて算出することも可能である。
【0030】
S12の処理に続くS13の処理では、歩行者の歩行位置、進行方向、向きの情報取得が行われる。このとき、運転支援ECU20は、歩車間通信部26を通じて携帯端末1との通信により、歩行者の現在の歩行位置(絶対位置)、進行方向及び向きの情報を取得する。なお、これらのデータは、自車両に搭載された周囲環境認識センサ23により検出された歩行者との相対距離、相対速度、及び自車両の現在の走行位置、進行方向に基づいて算出することも可能である。
【0031】
S13の処理に続くS14の処理では、自車両に対する歩行者の相対位置、相対速度の算出が行われる。このとき、運転支援ECU20の演算部31は、S11の処理で取得した自車両の走行位置、進行方向のデータ、及びS13の処理で取得した歩行者の現在の歩行位置、進行方向、向きのデータに基づいて、自車両に対する歩行者の相対位置、相対速度を算出する。なお、上述したように、これらのデータは周囲環境認識センサ23により直接求めることもできる。
【0032】
S14の処理に続くS15の処理では、衝突可能性があるか否かの判定が行われる。このとき、演算部31は、S13で得られた自車両に対する歩行者の相対位置、相対速度及び自車両の走行状態量(例えば車速、操舵角等)に基づいて、TTCや衝突可能性を算出し、その算出結果を衝突可能性判定部32に出力する。衝突可能性判定部32は、その結果に基づいて自車両が歩行者と衝突する可能性を判定する。
【0033】
衝突可能性がないと判定された場合、制御処理を終了する。一方、衝突可能性があると判定された場合、制御処理がS16に進み、歩行者位置周辺の道路形状・構造データの読出が行われる。このとき、運転支援ECU20は、S13で取得した歩行者現在の歩行位置に基づいて、地図情報データベース30に記憶された歩行者周辺の道路形状・構造のデータを読み出す。
【0034】
道路形状・構造のデータは、道路の詳細な3次元形状データと道路領域、歩道領域(歩行可能領域)、道路からの段差、側溝等の属性データを有し、更に歩行者がその領域に移動したときに「負傷するリスクなし」又は「軽傷の可能性あり」に分けられている。
【0035】
S16の処理に続くS17の処理では、身体誘導装置による歩行者の回避方向(すなわち誘導方向)の決定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、自車両に対する歩行者の相対位置及び自車両の進行方向に基づいて、歩行者に装着された身体誘導装置12を介して歩行者を回避させたい方向を決定する。なお、回避方向として、基本的には歩行者を自車両から遠ざける方向である。
【0036】
S17の処理に続くS18の処理では、回避方向に他車両が接近しているか否かの判定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、S17で決定した歩行者の回避方向に他車両が接近しているかを判定する。この場合、例えば図4に示すように自車両M1の右側前方を歩行者Pが歩行し、歩行者Pを対向車線側に回避させたく、対向車線に他車両M2が接近しているか否かの場合である。
【0037】
回避方向に他車両が接近していると判定された場合、制御処理がS19に進み、自車両のTTCと他車両のTTCに基づき身体誘導装置の作動制御が行われる。このとき、運転支援ECU20は、自車両のTTCと他車両のTTCに基づいて図5に示すような作動条件を決定し、身体誘導装置12の作動を制御する。
【0038】
図5は、身体誘導装置の作動条件を示す図である。図5に示すように、自車両のTTCが短く衝突可能性が高い場合あるいは衝突不可避の場合であって、且つ、他車両のTTCが長く他車両の運転者がブレーキを踏んで十分に止まれる余裕がある場合には、運転支援ECU20は、身体誘導装置12の作動を決定する。また、これと合わせて自車両に搭載される衝突被害低減ユニット25を歩行者とのTTCに応じて作動させる。
【0039】
S19の処理に続くS20の処理では、制御信号が携帯端末に送信される。このとき、運転支援ECU20は、歩車間通信部26を通じて携帯端末1に作動制御信号を送信し、身体誘導装置12を作動させる。これによって、身体誘導装置12が作動し、歩行者を衝突回避方向に回避させる。
【0040】
一方、回避方向に他車両が接近していないと判定された場合、制御処理がS21に進み、回避方向に危険領域が存在するか否かの判定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、S16で読み出された道路形状、構造データに基づいて回避方向に危険領域があるか否かを判定する。
【0041】
回避方向に危険領域が存在すると判定された場合、制御処理がS22に進み、自車両のTTCと危険領域の危険度に基づき身体誘導装置の作動制御が行われる。図6は、身体誘導装置の作動条件を示す図である。図6に示すように、危険領域は危険度0、危険度1と設定されている。危険度0は「負傷するリスクなし」の場合を示し、危険度1は「軽傷の可能性あり」の場合を示す。
【0042】
回避方向に危険領域(図6の危険度1)が存在する場合には、運転支援ECU20は、図6に示すように自車両のTTCと危険度に応じて身体誘導装置12の作動を決定する。すなわち、自車両のTTCが短く衝突可能性が高い場合あるいは衝突不可避の場合であって、且つ、回避領域の危険度が1(軽傷の可能性あり)の場合には、運転支援ECU20は、歩行者の車両に衝突するリスクの方が回避領域に回避するリスクよりも高いと判定して、身体誘導装置12の作動を決定する。
【0043】
それ以外の場合、運転支援ECU20は身体誘導装置12を作動させない。また、これと合わせて自車両に搭載される衝突被害低減ユニット25を歩行者とのTTCに応じて作動させる。S22の処理が終了すると、制御処理がS20に移行する。
【0044】
一方、S21で回避方向に危険領域が存在しないと判定された場合、制御処理がS23に進み、身体誘導装置の作動制御が行われる。すなわち、回避方向に危険領域が存在しない(図6の危険度0)場合には、運転支援ECU20は、自車両のTTCに関わらず身体誘導装置12の作動を決定する。また、これと合わせて自車両に搭載される衝突被害低減ユニット25を歩行者とのTTCに応じて作動させる。S23の処理を終了すると、制御処理がS20に移行する。そして、S20の処理を終えたら、一連の制御処理を終了する。
【0045】
本実施形態に係る運転支援装置2によれば、運転支援ECU20が、歩行者周囲の道路環境及び他車両の接近状況に応じて身体誘導装置12の作動条件を変更し、身体誘導装置12の作動を制御するので、誘導により生じる他車両との衝突を防止することができ、安全な路面環境に歩行者を適切に誘導することができる。このように歩行者の周囲の状況に応じて適当な作動条件で身体誘導装置12を作動させることによって、歩行者に対して適切な誘導を行うことが可能となり、より安全な衝突回避を支援することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る衝突回避支援装置は、上記第1実施形態と同様の構成を有しており、上記第1実施形態と比較して、運転支援装置の制御処理が主に異なる。以下、この相違点を中心として本実施形態について説明する。
【0047】
図7及び図8は、第2実施形態に係る衝突回避支援装置の動作を示すフローチャートである。本実施形態に係る運転支援装置の制御処理は、例えば運転支援ECU20によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0048】
初めに、S31の処理では、自車両の走行位置、進行方向の情報取得が行われる。このとき、運転支援ECU20は、GPSセンサ21と車速センサ22とからの信号に基づいて、自車両の現在の走行位置(絶対位置)、進行方向のデータを取得する。
【0049】
S31の処理に続くS32の処理では、運転者の脇見状態、閉眼状態の推定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、運転者状態検出センサ24により検出された結果に基づいて、運転者が脇見状態にあるかあるいは閉眼状態にあるかを推定する。具体的には、例えば運転者状態検出センサ24が運転者の顔を撮像可能なカメラである場合、カメラに撮像されたデータに基づいて運転者の顔向き角度が正面状態にあるか非正面状態にあるかを判定して、その推定を行う。
【0050】
また、運転者の目の開閉状態を検出して、閉眼状態が通常の瞬きよりも長く継続する場合あるいは閉眼の頻度が通常よりも増加する場合は、運転者の反応度が低下していると判定し、その推定を行う。なお、これらの状態の推定は画像に基づくことに限らず、例えば運転者の生理的信号や車両の挙動(蛇行しているか否か)等から推定することも可能である。
【0051】
S32の処理に続くS33の処理では、他車両の走行位置、進行方向の情報取得が行われる。このとき、運転支援ECU20は、車車間通信部28を通じて自車両周辺を走行する他車両の現在走行位置(絶対位置)、進行方向のデータを取得する。なお、これらのデータは、自車両に搭載された周囲環境認識センサ23により検出された他車両との相対距離、相対速度、及び自車両の現在の走行位置、進行方向に基づいて算出することも可能である。
【0052】
S33の処理に続くS34の処理では、歩行者の歩行位置、進行方向、向きの情報取得が行われる。このとき、運転支援ECU20は、歩車間通信部26を通じて携帯端末1との通信により、歩行者の現在の歩行位置(絶対位置)、進行方向及び向きの情報を取得する。なお、これらのデータは、自車両に搭載された周囲環境認識センサ23により検出された歩行者との相対距離、相対速度、及び自車両の現在の走行位置、進行方向に基づいて算出することも可能である。
【0053】
S34の処理に続くS35の処理では、自車両に対する歩行者の相対位置、相対速度の算出が行われる。このとき、運転支援ECU20の演算部31は、S31の処理で取得した自車両の走行位置、進行方向のデータ、及びS34の処理で取得した歩行者の現在の歩行位置、進行方向、向きのデータに基づいて、自車両に対する歩行者の相対位置、相対速度を算出する。なお、上述のように、これらのデータは周囲環境認識センサ23により直接求めることもできる。
【0054】
S35の処理に続くS36の処理では、衝突可能性があるか否かの判定が行われる。このとき、演算部31は、S35の処理で得られた自車両に対する歩行者の相対位置、相対速度及び自車両の走行状態量(例えば車速、操舵角等)に基づいて、TTCや衝突可能性を算出し、その算出結果を衝突可能性判定部32に出力する。衝突可能性判定部32は、その結果に基づいて自車両が歩行者と衝突する可能性を判定する。
【0055】
衝突可能性がないと判定された場合、制御処理が終了する。一方、衝突可能性があると判定された場合、制御処理がS37に進み、歩行者位置周辺の道路形状・構造データの読出が行われる。このとき、運転支援ECU20は、S34で取得した歩行者現在の歩行位置に基づいて、地図情報データベース30に記憶された歩行者周辺の道路形状・構造のデータを読み出す。
【0056】
道路形状・構造のデータは、道路の詳細な3次元形状データと道路領域、歩道領域(歩行可能領域)、道路からの段差、側溝等の属性データを有し、更に歩行者がその領域に移動したときに「負傷するリスクなし」又は「軽傷の可能性あり」に分けられている。
【0057】
S37の処理に続くS38の処理では、身体誘導装置による歩行者の回避方向の決定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、自車両に対する歩行者の相対位置及び自車両の進行方向に基づいて、歩行者に装着された身体誘導装置12を介して歩行者を回避させたい方向を決定する。なお、回避方向として、基本的には歩行者を自車両から遠ざける方向である。
【0058】
S38の処理に続くS39の処理では、回避方向に他車両が接近しているか否かの判定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、S38で決定した歩行者の回避方向に他車両が接近しているかを判定する。この場合、例えば図4に示すように自車両M1の右側前方を歩行者Pが歩行し、歩行者Pを対向車線側に回避させたく、対向車線に他車両M2が接近しているか否かの場合である。
【0059】
回避方向に他車両が接近していると判定された場合、制御処理がS40に進み、運転者が脇見状態あるいは閉眼状態にあるかの判定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、S32で推定した結果に基づいて運転者が脇見状態、閉眼状態にあるかを判定する。
【0060】
運転者が脇見状態あるいは閉眼状態にないと判定された場合、制御処理がS41に進み、通常時の制御が実行される。このとき、運転支援ECU20は、通常時と同様に図5に示す作動条件に基づいた制御を行う。S41の処理に続くS42の処理では、図5に示すように自車両のTTCと他車両のTTCに基づき身体誘導装置の作動制御が行われる。
【0061】
図5は、身体誘導装置の作動条件を示す図である。自車両のTTCが短く衝突可能性が高い場合あるいは衝突不可避の場合であって、且つ、他車両のTTCが長く他車両の運転者がブレーキを踏んで十分に止まれる余裕がある場合には、運転支援ECU20は、身体誘導装置12の作動を決定する。また、これと合わせて自車両に搭載される衝突被害低減ユニット25を歩行者とのTTCに応じて作動させる。
【0062】
S42の処理に続くS43の処理では、制御信号が携帯端末に送信される。このとき、運転支援ECU20は、歩車間通信部26を通じて携帯端末1に作動制御信号を送信し、身体誘導装置12を作動させる。これによって、身体誘導装置12が作動し、歩行者を衝突回避方向に回避させる
【0063】
一方、S40において運転者が脇見状態あるいは閉眼状態にあると判定された場合、制御処理がS44に進み、通常より早出しが行われる。すなわち、運転支援ECU20は、通常より身体誘導装置12の作動を早出しする図9のような制御を行う(S42)。
【0064】
具体的には、他車両のTTCが長く他車両の運転者がブレーキを踏んで十分に止まれる余裕がある場合であって、且つ自車両のTTCが短く衝突可能性がある場合には、運転支援ECU20は、身体誘導装置12を作動させる。このとき、運転者の反応度が低下しており警報等で報知しても反応時間が通常よりも長くなる可能性があり、身体誘導装置12の作動タイミングを早める。また、これと合わせて自車両に搭載されている衝突被害低減ユニット25を歩行者とのTTCに応じて早出しして作動させる。S42の処理が終了すると、制御処理がS43に移行する。
【0065】
S39において回避方向に他車両が接近していないと判定された場合、制御処理がS45に進み、回避方向に危険領域が存在するか否かの判定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、S37で読み出された道路形状、構造データに基づいて回避方向に危険領域があるか否かを判定する。
【0066】
回避方向に危険領域が存在すると判定された場合には、制御処理がS46に進み、運転者が脇見状態あるいは閉眼状態にあるかの判定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、S32で推定した結果に基づいて運転者が脇見状態、閉眼状態にあるかを判定する。
【0067】
運転者が脇見状態あるいは閉眼状態にないと判定された場合、制御処理がS47に進み、通常時の制御が実行される。このとき、運転支援ECU20は、通常時と同様に図6に示す作動条件に基づいた制御を行う。S47の処理に続くS48の処理では、図6に示すように自車両のTTCと危険領域の危険度に基づき身体誘導装置の作動制御が行われる。
【0068】
具体的には、回避方向に危険領域(図6の危険度1)が存在する場合、運転支援ECU20は、自車両のTTCと危険度に応じて身体誘導装置12の作動を決定する。すなわち、自車両のTTCが短く衝突可能性が高くあるいは衝突不可避の場合であって、且つ、回避領域の危険度が1(軽傷の可能性あり)の場合には、運転支援ECU20は、歩行者の車両に衝突するリスクの方が回避領域に回避するリスクよりも高いと判定して、身体誘導装置12の作動を決定する。
【0069】
それ以外の場合、運転支援ECU20は身体誘導装置12を作動させない。また、これと合わせて自車両に搭載されている衝突被害低減ユニット25を歩行者とのTTCに応じて作動させる。S48の処理が終了すると、制御処理がS43に移行する。
【0070】
S46において運転者が脇見状態あるいは閉眼状態にあると判定された場合、制御処理がS49に進み、通常より早出しが行われる。すなわち、運転支援ECU20は、通常より身体誘導装置12の作動を早出しする図10のような制御を行う(S48)。
【0071】
図10は、身体誘導装置の作動条件を示す図である。図10に示すように、危険領域は危険度0、危険度1と設定されている。危険度0は「負傷するリスクなし」の場合を示し、危険度1は「軽傷の可能性あり」の場合を示す。
【0072】
回避領域の危険度が1(軽傷の可能性あり)の場合であって、且つ自車両のTTCで衝突可能性がある場合には、運転支援ECU20は、歩行者の車両に衝突するリスクの方が回避領域に回避するリスクよりも高いと判定して、身体誘導装置12を作動させる。このとき、運転者の反応度が低下しており警報等で報知しても反応時間が通常よりも長くなる可能性があり、身体誘導装置12の作動タイミングを早める。
【0073】
それ以外の場合、運転支援ECU20は身体誘導装置12を作動させない。また、これと合わせて自車両に搭載されている衝突被害低減ユニット25を歩行者とのTTCに応じて早出しして作動させる。S48の処理が終了すると、制御処理がS43に移行する。
【0074】
一方、S45で回避方向に危険領域が存在しないと判定された場合、制御処理がS50に進み、運転者が脇見状態あるいは閉眼状態にあるかの判定が行われる。このとき、運転支援ECU20は、S32で推定した結果に基づいて運転者が脇見状態、閉眼状態にあるかを判定する。
【0075】
運転者が脇見状態あるいは閉眼状態にないと判定された場合、制御処理がS51に進み、通常時の制御が実行される。このとき、運転支援ECU20は、通常時と同様に図6に示す作動条件に基づいた制御を行う(S52)。
【0076】
S52の処理では、身体誘導装置の作動制御が行われる。すなわち、回避方向に危険領域が存在しない(危険度0)場合には、運転支援ECU20は、自車両のTTCに関わらず身体誘導装置12の作動を決定する。また、身体誘導装置12の作動と合わせて自車両に搭載されている衝突被害低減ユニット25を歩行者とのTTCに応じて作動させる。
【0077】
S50で運転者が脇見状態あるいは閉眼状態にあると判定された場合、制御処理がS53に進み、通常より早出しが実行される。すなわち、運転支援ECU20は、通常より身体誘導装置12の作動を早出しする図10のような制御を行う(S52)。具体的には、回避方向に危険領域が存在しない(危険度0)場合には、運転支援ECU20は、自車両のTTCに関わらず通常より早出しして、身体誘導装置12の作動を決定する。また、これと合わせて自車両に搭載されている衝突被害低減ユニット25を歩行者とのTTCに応じて、早出しして作動させる。S52の処理が終了すると、制御処理がS43に移行する。そして、S43の処理を終えたら、一連の制御処理を終了する。
【0078】
本実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様な効果を得られるほか、運転支援ECU20が、運転者の運転状態に応じて身体誘導装置12の作動条件を変更しその作動を制御するので、適切な誘導を行うことが可能となる。上述のように運転者の脇見状態あるいは閉眼状態にあると判定された場合、身体誘導装置12の作動タイミングを通常より早めることによって、より安全な衝突回避の支援を行うことができる。
【0079】
なお、上述した実施形態は本発明に係る衝突回避支援装置の一例を説明したものであり、本発明に係る衝突回避支援装置は実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係る衝突回避支援装置は、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る衝突回避支援装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0080】
例えば、上述の実施形態では、運転支援ECU20が運転者の運転状態に応じて身体誘導装置12の作動条件を変更することとしたが、これに限らず、例えば運転者の健康状態に応じて身体誘導装置の作動条件を変更することとしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
2…運転支援装置(衝突回避支援装置)、12…身体誘導装置(誘導手段)、20…運転支援ECU(作動条件変更手段)、P…歩行者、M1…自車両、M2…他車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者に装着される誘導手段を作動させて車両との衝突回避方向に前記歩行者を誘導し、前記車両との衝突を回避する衝突回避支援装置であって、
前記誘導手段を作動させる際における前記歩行者の周囲の状況に応じて、前記誘導手段の作動条件を変更する作動条件変更手段を備えることを特徴とする衝突回避支援装置。
【請求項2】
前記作動条件変更手段は、誘導方向への他車両の接近状況に応じて前記誘導手段の作動条件を変更することを特徴とする請求項1に記載の衝突回避支援装置。
【請求項3】
前記作動条件変更手段は、誘導方向における路面環境に応じて前記誘導手段の作動条件を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の衝突回避支援装置。
【請求項4】
前記作動条件変更手段は、前記誘導手段を作動させる際の前記車両運転者の状態に応じて前記誘導手段の作動条件を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の衝突回避支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−198205(P2010−198205A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41087(P2009−41087)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】