表示システム及び照明システム
【課題】照明から放射される光によって表示装置に表示される画像の視認性が損なわれることを抑制することができる表示システム及び照明システムを提供する。
【解決手段】光を放射する照明10と、複数の異なる色の光を出射し、照明10から放射される光の一部が照射される表示装置20と、表示装置20の表示面に設けられ、表示装置20から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタ21と、を備え、照明10から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、表示装置20から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、第1のバンドパスフィルタ21の透過率の波長に対する極小値は、照明10から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長の近傍の波長領域にある。
【解決手段】光を放射する照明10と、複数の異なる色の光を出射し、照明10から放射される光の一部が照射される表示装置20と、表示装置20の表示面に設けられ、表示装置20から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタ21と、を備え、照明10から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、表示装置20から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、第1のバンドパスフィルタ21の透過率の波長に対する極小値は、照明10から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長の近傍の波長領域にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システム及び照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表示装置には、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ等がある。また、有機ELディスプレイ等も開発されている。
【0003】
また、電子ペーパーのような反射型表示装置と、反射型表示装置に光を照射する照明装置とを備え、表示装置に表示する情報に応じて照明光を設定する表示システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−286234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の表示装置では、照明光が表示装置の表示面で反射し、視認性を損なうという問題があった。
一方、表示装置の表示内容に応じて照明光を変化させると、同一の照明下で読書や学習をする妨げとなる。
【0006】
本発明の課題は、照明から放射される光によって表示装置に表示される画像の視認性が悪くなることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の態様は、表示システムであって、光を放射する照明と、複数の異なる色の光を出射するとともに、前記照明から放射される光の一部が照射される表示装置と、前記表示装置の表示面に設けられ、前記表示装置から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタと、を備え、前記照明から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極小値は、前記照明から放射される光のスペクトル分布における前記ピーク波長±15nm以内の波長領域にあることとした。
【0008】
好ましくは、前記第1のバンドパスフィルタは、単一のフィルムからなる。
また、好ましくは、前記第1のバンドパスフィルタは、前記表示装置から出射される光の、前記複数の色の各々に対応した、複数のカラーフィルターからなる。
好ましくは、前記照明における光の放射面に設けられ、前記照明から放射される光の一部を透過させる第2のバンドパスフィルタを有し、前記第2のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極大値は、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の前記極小値±15nm以内の波長領域にある。
好ましくは、前記表示装置は、前記複数の色に対応する、カラー表示を行う複数の発光色の何れかの発光色の光を放射する発光素子を備える。
好ましくは、前記発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子からなる。
【0009】
本発明の他の態様は、複数の異なる色の光を出射する表示装置が設けられた環境を照明する照明システムであって、光を放射して前記環境を照明する光源を有する照明と、
前記表示装置の表示面に設けられ、前記表示装置から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタと、を備え、前記照明から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極小値は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における前記ピーク波長±15nm以内の波長領域にあることとした。
【0010】
好ましくは、前記第1のバンドパスフィルタは、単一のフィルムからなる。
また、好ましくは、前記第1のバンドパスフィルタは、前記表示装置から出射される光の、前記複数の色の各々に対応した、複数のカラーフィルターからなる。
好ましくは、前記照明における光の放射面に設けられ、前記照明から放射される光の一部を透過させる第2のバンドパスフィルタを有し、前記第2のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極大値は、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の前記極小値±15nm以内の波長領域にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、照明から放射される光によって表示装置に表示される画像の視認性が損なわれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示システムを適用した部屋100Aを示す模式図である。
【図2】バンドパスフィルタ21の分光反射率の理想的な波長特性を示すグラフである。
【図3】バンドパスフィルタ21の分光透過率の理想的な波長特性を示すグラフである。
【図4】有機ELディスプレイのRGB3色の発光素子から出射される光の輝度の波長特性の一例を示すグラフである。
【図5】照明10Aから放射される光の分光波長特性を示す。
【図6】バンドパスフィルタ13の分光透過率を示すグラフである。
【図7】蛍光灯分光特性を示すグラフである。
【図8】照明10Aの照度と表示装置20のコントラスト比との関係を示すグラフである。
【図9】照明10Aの照度と表示装置20のコントラスト比との関係を示すグラフである。
【図10】xy表示の色再現範囲を示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る表示システムを適用した部屋100Bを示す模式図である。
【図12】バンドパスフィルタ15の分光透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る表示システムを適用した部屋100Aを示す模式図である。
図1に示すように、部屋100Aの天井101には、照明10Aとしてシーリングライトが設けられている。照明10Aは、光源11と、光源11を覆うカバー12とからなる。光源11は、例えば白熱灯である。カバー12の外側面には、バンドパスフィルタ13が設けられている。
【0014】
部屋100A内の床102上には、表示装置20が配置されている。表示装置20は、カラー表示を行うRGB3色の発光色の発光素子を備える画素がマトリクス状に配置されてなる。表示装置20としては、例えば有機ELディスプレイ等が挙げられる。
表示装置20の表示面には、バンドパスフィルタ21が設けられている。
図2にバンドパスフィルタ21の分光反射率の理想的な波長特性を、図3にバンドパスフィルタ21の分光透過率の理想的な波長特性を示す。なお、分光反射率は、バンドパスフィルタ21の正面に測定装置を置き、測定装置を通るバンドパスフィルタ21の法線に対して斜め45°の位置にハロゲンランプ、キセノンランプ等の光源を配置して測定した。また、図4は表示装置が有機ELディスプレイであるときのRGB3色の発光素子から出射される光の輝度の波長特性(スペクトル分布)の一例を示すグラフである。なお、輝度はピーク波長における輝度を1とする相対値で示している。
【0015】
バンドパスフィルタ21は、約412nm(青色光)、約520nm(緑色光)、約640nm(赤色光)に分光反射率、分光透過率のピーク(極大値)がある。このピークは、図4に示す表示装置20の3色(R、G、B)の発光素子から放射される光の波長のスペクトル分布のピーク(極大値)波長にほぼ一致する。
【0016】
また、図2、図3に示すように、バンドパスフィルタ21は、約490nm、約595nmに分光反射率、分光透過率の極小値を有する。このため、バンドパスフィルタ21は、約490nm、約595nm近傍の光を吸収する。この極小値の波長は、照明10Aから放射される光のピーク波長とほぼ一致する。
図5に照明10Aから放射される光の分光波長特性(スペクトル分布)を示す。なお、縦軸は放射エネルギーの相対値であり、任意単位である。図5に示すように、シーリングライトから放射される光は、約480nm、約590nmにスペクトル分布のピーク(極大値)波長がある。このような照明10Aは、例えば光源11に白熱灯を用いた場合に、図6に示すような分光透過率を示すバンドパスフィルタ13を用いることで得ることができる。この場合、バンドパスフィルタ21の分光透過率が極小値となる波長は約490nm、595nmであり、照明10Aから放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は約480nm、590nmであるから、バンドパスフィルタ21の分光透過率が極小値となる波長は、概ね、照明10Aから放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長±15nm以内の波長領域にあるということができる。
【0017】
図2、図3に示す特性を示すバンドパスフィルタ21や図6に示す特性を示すバンドパスフィルタ13は、例えば単一のフィルムからなり、例えばアゾ色素等、透過領域以外の波長の光を吸収する色素を用いて形成することができる。また液晶用に用いられる顔料(或いは染料)を用いて、その吸収波長を調整し、基材に分散することにより形成することもできる。更に、薄膜干渉を用いて形成することもできる。この場合には、例えば特開2003−337337号公報に記載されているように、TiO2/SiO2の薄膜を複数層積層して形成することもできるし、フッ素系アクリレート樹脂と無機高屈折率微粒子含有アクリレート樹脂とを多層薄膜塗布工程によって複数層を積層して形成することもできる。
【0018】
このように、本発明の表示システムでは、照明10Aから放射される光のピーク波長が、表示装置20から出射される光のピーク波長の間にあり、表示装置20の表示面に設けられたバンドパスフィルタ21が表示装置20から出射される光のピーク波長の近傍に反射率及び透過率の極大値を有し、照明10Aから放射される光のピーク波長の近傍に反射率及び透過率の極小値を有する。このため、照明10Aから放射される光によって表示装置20に表示される画像のコントラスト比が低下することや色再現範囲が狭くなることを抑えることができる。
【0019】
また、照明10Aにより充分な輝度が得られるため、部屋100A内での読書や学習が妨げられることがない。
また、表示装置20の輝度を上げずに視認性を改善することができるので、全体として省電力とすることができる。さらに、表示装置20の表示面に反射防止膜として円偏光板を設ける必要がないので、表示装置20のコストダウンや工程簡略化を図ることができる。
【0020】
ここで、図2、図3の特性を示すバンドパスフィルタ21及び図5の特性を示す照明10Aを用いてコントラスト比、色再現範囲について計算した。比較のため、図7に示す分光特性を示す蛍光灯を用いた。
図8、図9に照明10Aの照度と表示装置20のコントラスト比との関係を示す。また、図10にxy表示の色再現範囲を示す。
なお、計算に用いた表示装置20のXYZ表色系での発光特性を表1に示す。この値は標準的なものである。
【表1】
【0021】
色再現範囲の計算に用いたx、yは以下の式(1)、(2)で表される。
【数1】
・・・(1)
【数2】
・・・(2)
ここで、X、Y、ZはXYZ表色系を意味しており、以下の式(3)、(4)、(5)で表される。
【数3】
・・・(3)
【数4】
・・・(4)
【数5】
・・・(5)
ここで、Eは表示装置20の表示面における照明の照度[lx]であり、X0、Y0、Z0は暗室での値(E=0)を意味している。また、ρX、ρY、ρZは、以下の式(6)、(7)で表される。
【数6】
・・・(6)
【数7】
・・・(7)
【数8】
・・・(8)
ここで、x’、y’はCIE等色関数である。ρ(λ)は図2に示した分光反射率、S(λ)は図5に示した分光波長特性である。
【0022】
図8、図9に示すように、表示装置20の表示面における照明の照度を高くしていくと、表示面のコントラストが低下していくが、同じコントラスト比となる照度は、図7の特性を示す蛍光灯を照明10Aに用いた場合よりも、本実施例の場合の方が照度を高くすることができる。図9に示すように、コントラスト比が10となる照度を許容照度と定義すると、蛍光灯の場合には3600[lx]であるのに対して、本実施例では5900[lx]にまで増大した。
【0023】
また、図10に示すように、照明がある場合の表示装置20の色再現範囲は、照明がない場合の色再現範囲(RGB_0lx)より狭くなるが、同じ6000lxの照度の場合で比較すると、蛍光灯の場合の色再現範囲(RGB_6000lx(蛍光灯))より実施例の色再現範囲(RGB_6000lx(実施例))の方が広くなることがわかる。
【0024】
〔第2実施形態〕
図11は本発明の第2の実施形態に係る表示システムを適用した部屋100Bを示す模式図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
本実施形態においては、照明10Bの光源として太陽光等の外光が用いられている。そして、カバー12の代わりに部屋100Bの壁103に窓14が設けられ、窓14にバンドパスフィルタ15が貼り付けられている。
【0025】
バンドパスフィルタ15には、図12に示すような分光透過率を示すものを用いることができる。このようなバンドパスフィルタ15は、バンドパスフィルタ13、21と同様に形成することができる。
【0026】
このようなバンドパスフィルタ15を用いると、光源として外光を用いた場合に、照明10Bから放射される光は図5に示すような分光波長特性となる。このため、本実施形態においても、照明10Bから放射される光によって表示装置20に表示される画像のコントラスト比が低下することや色再現範囲が狭くなることを抑えることができる。
【0027】
なお、以上の実施形態においては、表示装置20として有機ELディスプレイを想定したが、本発明はこれに限ることはなく、例えばRGBのカラーフィルターが各画素に配置された透過型カラーLCDを用いることもできる。この場合、RGBのカラーフィルターは実質的に図2、図3に示すバンドパスフィルタ21の特性に類似しているため、RGBのカラーフィルターを図1におけるバンドパスフィルタ21と見なすことができる。
その他、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイを用いることもできる。
【0028】
また、以上の実施形態においては、屋内についてのみ説明したが、本発明はこれに限らず、屋外の表示装置と夜間の照明に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
10A、10B 照明
11 光源
12 カバー
13、15、21 バンドパスフィルタ
14 窓
20 表示装置
100A、100B 部屋
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システム及び照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表示装置には、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ等がある。また、有機ELディスプレイ等も開発されている。
【0003】
また、電子ペーパーのような反射型表示装置と、反射型表示装置に光を照射する照明装置とを備え、表示装置に表示する情報に応じて照明光を設定する表示システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−286234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の表示装置では、照明光が表示装置の表示面で反射し、視認性を損なうという問題があった。
一方、表示装置の表示内容に応じて照明光を変化させると、同一の照明下で読書や学習をする妨げとなる。
【0006】
本発明の課題は、照明から放射される光によって表示装置に表示される画像の視認性が悪くなることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の態様は、表示システムであって、光を放射する照明と、複数の異なる色の光を出射するとともに、前記照明から放射される光の一部が照射される表示装置と、前記表示装置の表示面に設けられ、前記表示装置から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタと、を備え、前記照明から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極小値は、前記照明から放射される光のスペクトル分布における前記ピーク波長±15nm以内の波長領域にあることとした。
【0008】
好ましくは、前記第1のバンドパスフィルタは、単一のフィルムからなる。
また、好ましくは、前記第1のバンドパスフィルタは、前記表示装置から出射される光の、前記複数の色の各々に対応した、複数のカラーフィルターからなる。
好ましくは、前記照明における光の放射面に設けられ、前記照明から放射される光の一部を透過させる第2のバンドパスフィルタを有し、前記第2のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極大値は、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の前記極小値±15nm以内の波長領域にある。
好ましくは、前記表示装置は、前記複数の色に対応する、カラー表示を行う複数の発光色の何れかの発光色の光を放射する発光素子を備える。
好ましくは、前記発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子からなる。
【0009】
本発明の他の態様は、複数の異なる色の光を出射する表示装置が設けられた環境を照明する照明システムであって、光を放射して前記環境を照明する光源を有する照明と、
前記表示装置の表示面に設けられ、前記表示装置から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタと、を備え、前記照明から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極小値は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における前記ピーク波長±15nm以内の波長領域にあることとした。
【0010】
好ましくは、前記第1のバンドパスフィルタは、単一のフィルムからなる。
また、好ましくは、前記第1のバンドパスフィルタは、前記表示装置から出射される光の、前記複数の色の各々に対応した、複数のカラーフィルターからなる。
好ましくは、前記照明における光の放射面に設けられ、前記照明から放射される光の一部を透過させる第2のバンドパスフィルタを有し、前記第2のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極大値は、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の前記極小値±15nm以内の波長領域にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、照明から放射される光によって表示装置に表示される画像の視認性が損なわれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示システムを適用した部屋100Aを示す模式図である。
【図2】バンドパスフィルタ21の分光反射率の理想的な波長特性を示すグラフである。
【図3】バンドパスフィルタ21の分光透過率の理想的な波長特性を示すグラフである。
【図4】有機ELディスプレイのRGB3色の発光素子から出射される光の輝度の波長特性の一例を示すグラフである。
【図5】照明10Aから放射される光の分光波長特性を示す。
【図6】バンドパスフィルタ13の分光透過率を示すグラフである。
【図7】蛍光灯分光特性を示すグラフである。
【図8】照明10Aの照度と表示装置20のコントラスト比との関係を示すグラフである。
【図9】照明10Aの照度と表示装置20のコントラスト比との関係を示すグラフである。
【図10】xy表示の色再現範囲を示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る表示システムを適用した部屋100Bを示す模式図である。
【図12】バンドパスフィルタ15の分光透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る表示システムを適用した部屋100Aを示す模式図である。
図1に示すように、部屋100Aの天井101には、照明10Aとしてシーリングライトが設けられている。照明10Aは、光源11と、光源11を覆うカバー12とからなる。光源11は、例えば白熱灯である。カバー12の外側面には、バンドパスフィルタ13が設けられている。
【0014】
部屋100A内の床102上には、表示装置20が配置されている。表示装置20は、カラー表示を行うRGB3色の発光色の発光素子を備える画素がマトリクス状に配置されてなる。表示装置20としては、例えば有機ELディスプレイ等が挙げられる。
表示装置20の表示面には、バンドパスフィルタ21が設けられている。
図2にバンドパスフィルタ21の分光反射率の理想的な波長特性を、図3にバンドパスフィルタ21の分光透過率の理想的な波長特性を示す。なお、分光反射率は、バンドパスフィルタ21の正面に測定装置を置き、測定装置を通るバンドパスフィルタ21の法線に対して斜め45°の位置にハロゲンランプ、キセノンランプ等の光源を配置して測定した。また、図4は表示装置が有機ELディスプレイであるときのRGB3色の発光素子から出射される光の輝度の波長特性(スペクトル分布)の一例を示すグラフである。なお、輝度はピーク波長における輝度を1とする相対値で示している。
【0015】
バンドパスフィルタ21は、約412nm(青色光)、約520nm(緑色光)、約640nm(赤色光)に分光反射率、分光透過率のピーク(極大値)がある。このピークは、図4に示す表示装置20の3色(R、G、B)の発光素子から放射される光の波長のスペクトル分布のピーク(極大値)波長にほぼ一致する。
【0016】
また、図2、図3に示すように、バンドパスフィルタ21は、約490nm、約595nmに分光反射率、分光透過率の極小値を有する。このため、バンドパスフィルタ21は、約490nm、約595nm近傍の光を吸収する。この極小値の波長は、照明10Aから放射される光のピーク波長とほぼ一致する。
図5に照明10Aから放射される光の分光波長特性(スペクトル分布)を示す。なお、縦軸は放射エネルギーの相対値であり、任意単位である。図5に示すように、シーリングライトから放射される光は、約480nm、約590nmにスペクトル分布のピーク(極大値)波長がある。このような照明10Aは、例えば光源11に白熱灯を用いた場合に、図6に示すような分光透過率を示すバンドパスフィルタ13を用いることで得ることができる。この場合、バンドパスフィルタ21の分光透過率が極小値となる波長は約490nm、595nmであり、照明10Aから放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は約480nm、590nmであるから、バンドパスフィルタ21の分光透過率が極小値となる波長は、概ね、照明10Aから放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長±15nm以内の波長領域にあるということができる。
【0017】
図2、図3に示す特性を示すバンドパスフィルタ21や図6に示す特性を示すバンドパスフィルタ13は、例えば単一のフィルムからなり、例えばアゾ色素等、透過領域以外の波長の光を吸収する色素を用いて形成することができる。また液晶用に用いられる顔料(或いは染料)を用いて、その吸収波長を調整し、基材に分散することにより形成することもできる。更に、薄膜干渉を用いて形成することもできる。この場合には、例えば特開2003−337337号公報に記載されているように、TiO2/SiO2の薄膜を複数層積層して形成することもできるし、フッ素系アクリレート樹脂と無機高屈折率微粒子含有アクリレート樹脂とを多層薄膜塗布工程によって複数層を積層して形成することもできる。
【0018】
このように、本発明の表示システムでは、照明10Aから放射される光のピーク波長が、表示装置20から出射される光のピーク波長の間にあり、表示装置20の表示面に設けられたバンドパスフィルタ21が表示装置20から出射される光のピーク波長の近傍に反射率及び透過率の極大値を有し、照明10Aから放射される光のピーク波長の近傍に反射率及び透過率の極小値を有する。このため、照明10Aから放射される光によって表示装置20に表示される画像のコントラスト比が低下することや色再現範囲が狭くなることを抑えることができる。
【0019】
また、照明10Aにより充分な輝度が得られるため、部屋100A内での読書や学習が妨げられることがない。
また、表示装置20の輝度を上げずに視認性を改善することができるので、全体として省電力とすることができる。さらに、表示装置20の表示面に反射防止膜として円偏光板を設ける必要がないので、表示装置20のコストダウンや工程簡略化を図ることができる。
【0020】
ここで、図2、図3の特性を示すバンドパスフィルタ21及び図5の特性を示す照明10Aを用いてコントラスト比、色再現範囲について計算した。比較のため、図7に示す分光特性を示す蛍光灯を用いた。
図8、図9に照明10Aの照度と表示装置20のコントラスト比との関係を示す。また、図10にxy表示の色再現範囲を示す。
なお、計算に用いた表示装置20のXYZ表色系での発光特性を表1に示す。この値は標準的なものである。
【表1】
【0021】
色再現範囲の計算に用いたx、yは以下の式(1)、(2)で表される。
【数1】
・・・(1)
【数2】
・・・(2)
ここで、X、Y、ZはXYZ表色系を意味しており、以下の式(3)、(4)、(5)で表される。
【数3】
・・・(3)
【数4】
・・・(4)
【数5】
・・・(5)
ここで、Eは表示装置20の表示面における照明の照度[lx]であり、X0、Y0、Z0は暗室での値(E=0)を意味している。また、ρX、ρY、ρZは、以下の式(6)、(7)で表される。
【数6】
・・・(6)
【数7】
・・・(7)
【数8】
・・・(8)
ここで、x’、y’はCIE等色関数である。ρ(λ)は図2に示した分光反射率、S(λ)は図5に示した分光波長特性である。
【0022】
図8、図9に示すように、表示装置20の表示面における照明の照度を高くしていくと、表示面のコントラストが低下していくが、同じコントラスト比となる照度は、図7の特性を示す蛍光灯を照明10Aに用いた場合よりも、本実施例の場合の方が照度を高くすることができる。図9に示すように、コントラスト比が10となる照度を許容照度と定義すると、蛍光灯の場合には3600[lx]であるのに対して、本実施例では5900[lx]にまで増大した。
【0023】
また、図10に示すように、照明がある場合の表示装置20の色再現範囲は、照明がない場合の色再現範囲(RGB_0lx)より狭くなるが、同じ6000lxの照度の場合で比較すると、蛍光灯の場合の色再現範囲(RGB_6000lx(蛍光灯))より実施例の色再現範囲(RGB_6000lx(実施例))の方が広くなることがわかる。
【0024】
〔第2実施形態〕
図11は本発明の第2の実施形態に係る表示システムを適用した部屋100Bを示す模式図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
本実施形態においては、照明10Bの光源として太陽光等の外光が用いられている。そして、カバー12の代わりに部屋100Bの壁103に窓14が設けられ、窓14にバンドパスフィルタ15が貼り付けられている。
【0025】
バンドパスフィルタ15には、図12に示すような分光透過率を示すものを用いることができる。このようなバンドパスフィルタ15は、バンドパスフィルタ13、21と同様に形成することができる。
【0026】
このようなバンドパスフィルタ15を用いると、光源として外光を用いた場合に、照明10Bから放射される光は図5に示すような分光波長特性となる。このため、本実施形態においても、照明10Bから放射される光によって表示装置20に表示される画像のコントラスト比が低下することや色再現範囲が狭くなることを抑えることができる。
【0027】
なお、以上の実施形態においては、表示装置20として有機ELディスプレイを想定したが、本発明はこれに限ることはなく、例えばRGBのカラーフィルターが各画素に配置された透過型カラーLCDを用いることもできる。この場合、RGBのカラーフィルターは実質的に図2、図3に示すバンドパスフィルタ21の特性に類似しているため、RGBのカラーフィルターを図1におけるバンドパスフィルタ21と見なすことができる。
その他、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイを用いることもできる。
【0028】
また、以上の実施形態においては、屋内についてのみ説明したが、本発明はこれに限らず、屋外の表示装置と夜間の照明に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
10A、10B 照明
11 光源
12 カバー
13、15、21 バンドパスフィルタ
14 窓
20 表示装置
100A、100B 部屋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射する照明と、
複数の異なる色の光を出射するとともに、前記照明から放射される光の一部が照射される表示装置と、
前記表示装置の表示面に設けられ、前記表示装置から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタと、を備え、
前記照明から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、
前記第1のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極小値は、前記照明から放射される光のスペクトル分布における前記ピーク波長±15nm以内の波長領域にあることを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記第1のバンドパスフィルタは、単一のフィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記第1のバンドパスフィルタは、前記表示装置から出射される光の、前記複数の色の各々に対応した、複数のカラーフィルターからなることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記照明における光の放射面に設けられ、前記照明から放射される光の一部を透過させる第2のバンドパスフィルタを有し、
前記第2のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極大値は、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の前記極小値±15nm以内の波長領域にあることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示システム。
【請求項5】
前記表示装置は、前記複数の色に対応する、カラー表示を行う複数の発光色の何れかの発光色の光を放射する発光素子を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示システム。
【請求項6】
前記発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子からなることを特徴とする請求項5に記載の表示システム。
【請求項7】
複数の異なる色の光を出射する表示装置が設けられた環境を照明する照明システムであって、
光を放射して前記環境を照明する光源を有する照明と、
前記表示装置の表示面に設けられ、前記表示装置から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタと、を備え、
前記照明から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、
前記第1のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極小値は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における前記ピーク波長±15nm以内の波長領域にあることを特徴とする照明システム。
【請求項8】
前記第1のバンドパスフィルタは、単一のフィルムからなることを特徴とする請求項7に記載の照明システム。
【請求項9】
前記第1のバンドパスフィルタは、前記表示装置から出射される光の、前記複数の色の各々に対応した、複数のカラーフィルターからなることを特徴とする請求項7に記載の照明システム。
【請求項10】
前記照明における光の放射面に設けられ、前記照明から放射される光の一部を透過させる第2のバンドパスフィルタを有し、
前記第2のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極大値は、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の前記極小値±15nm以内の波長領域にあることを特徴とする請求項7に記載の照明システム。
【請求項1】
光を放射する照明と、
複数の異なる色の光を出射するとともに、前記照明から放射される光の一部が照射される表示装置と、
前記表示装置の表示面に設けられ、前記表示装置から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタと、を備え、
前記照明から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、
前記第1のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極小値は、前記照明から放射される光のスペクトル分布における前記ピーク波長±15nm以内の波長領域にあることを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記第1のバンドパスフィルタは、単一のフィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記第1のバンドパスフィルタは、前記表示装置から出射される光の、前記複数の色の各々に対応した、複数のカラーフィルターからなることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記照明における光の放射面に設けられ、前記照明から放射される光の一部を透過させる第2のバンドパスフィルタを有し、
前記第2のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極大値は、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の前記極小値±15nm以内の波長領域にあることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示システム。
【請求項5】
前記表示装置は、前記複数の色に対応する、カラー表示を行う複数の発光色の何れかの発光色の光を放射する発光素子を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示システム。
【請求項6】
前記発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子からなることを特徴とする請求項5に記載の表示システム。
【請求項7】
複数の異なる色の光を出射する表示装置が設けられた環境を照明する照明システムであって、
光を放射して前記環境を照明する光源を有する照明と、
前記表示装置の表示面に設けられ、前記表示装置から出射される光の一部を透過させる第1のバンドパスフィルタと、を備え、
前記照明から放射される光のスペクトル分布におけるピーク波長は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における複数のピーク波長の間にあり、
前記第1のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極小値は、前記表示装置から出射される光のスペクトル分布における前記ピーク波長±15nm以内の波長領域にあることを特徴とする照明システム。
【請求項8】
前記第1のバンドパスフィルタは、単一のフィルムからなることを特徴とする請求項7に記載の照明システム。
【請求項9】
前記第1のバンドパスフィルタは、前記表示装置から出射される光の、前記複数の色の各々に対応した、複数のカラーフィルターからなることを特徴とする請求項7に記載の照明システム。
【請求項10】
前記照明における光の放射面に設けられ、前記照明から放射される光の一部を透過させる第2のバンドパスフィルタを有し、
前記第2のバンドパスフィルタの透過率の波長に対する極大値は、前記第1のバンドパスフィルタの透過率の前記極小値±15nm以内の波長領域にあることを特徴とする請求項7に記載の照明システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−75738(P2011−75738A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225713(P2009−225713)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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