説明

表示データ処理装置、画像表示装置、表示データ処理方法、およびプログラム

【課題】例えばデータバスのトラフィックがあがった場合など、プロセッサ外部の外部メモリからのデータ読み込みが間に合わなくなる虞がある状況であっても、表示データ処理を確実にできるようにし、表示性能を確保することができるようにする。
【解決手段】プロセッサ内部の制御手段は、プロセッサ外部の外部メモリからの表示データ読み込みの遅延時間が予め定められた閾値を越えると、その外部メモリ内の表示データの少なくとも一部をプロセッサ内部の内部メモリに転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセッサ外部の外部メモリと、プロセッサ内部の内部メモリとを用いて表示データの処理を行う表示データ処理装置、画像表示装置、表示データ処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末装置は、LCDの大画面化、MPUの高周波数化、装置機能(ソフトウェア)の高機能化・複雑化が進んでいる。また、画面に表示させる表示データが複数の表示レイヤから構成されている場合、端末装置がその複数の表示レイヤのデータを合成し、表示データを生成して表示させることとなる。
【0003】
また、本発明の関連技術として、更新頻度フラグが低頻度モードを示し、かつフレーム更新フラグが更新有りを示している場合に、画像供給ユニット外部の画像レイヤメモリから複数の画像レイヤを順次読み出して合成画像を作成し、その画像レイヤメモリに合成レイヤとして保存するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、本発明の関連技術として、画像信号生成手段による画像信号生成能力よりも、外部出力用の画像信号を生成する時にその画像信号生成手段にかかる負荷の度合いの方が大きい時に、画像信号を外部出力装置に出力しないように処理するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−182632号公報
【特許文献2】特開2006−138912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように複数の表示レイヤを合成しようとした場合、トラフィック状況などによっては、プロセッサ外部の外部メモリからの表示データの読み込みが間に合わなくなる虞がある。このように、一般的な表示データ処理では、以下の課題があった。
【0006】
(1) 携帯端末装置で複数の表示レイヤを合成する場合に、各レイヤの表示データを外部メモリから読み込む際、その外部メモリからデータを読み込む外部のデータバスのトラフィック(使用量)があがってくると、表示データの読み込みが間に合わず、表示がくずれるなどの支障がでる虞がある。
【0007】
(2) このため、表示性能を確保するためには、携帯端末装置のユースケースをもとに、データバスのトラフィック(使用量)の最大値を事前に把握し、表示をくずさないための制約条件を明確にする必要がある。このように、制約条件内でハードウェアを機能させる必要が出てしまうため、ハードウェアがもつ表示機能をフルに発揮することができない。
【0008】
また、上述した特許文献1,2のものは、プロセッサ外部の外部メモリからのデータ読み込みが間に合わなくなることへの対策についてまで考慮されたものではなかった。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、例えばデータバスのトラフィックがあがった場合など、プロセッサ外部の外部メモリからのデータ読み込みが間に合わなくなる虞がある状況であっても、表示データ処理を確実にできるようにし、表示性能を確保することができる表示データ処理装置、画像表示装置、表示データ処理方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明に係る表示データ処理装置は、プロセッサ外部に外部メモリを備えると共に、該プロセッサ内部に内部メモリと、制御手段とを備え、上記制御手段は、上記外部メモリからの表示データ読み込みの遅延時間が予め定められた閾値を越えると、該外部メモリ内の表示データの少なくとも一部を上記内部メモリに転送することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る画像表示装置は、上述した本発明に係る表示データ処理装置と、上記表示データ処理装置からの表示データを表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る表示データ処理方法は、プロセッサ外部に外部メモリを備えると共に、該プロセッサ内部に内部メモリを備えた装置における表示データ処理方法であって、上記外部メモリからの表示データ読み込みの遅延時間が予め定められた閾値を越えた場合、該外部メモリ内の表示データの少なくとも一部を上記内部メモリに転送することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る表示データ処理プログラムは、プロセッサ外部に外部メモリを備えると共に、該プロセッサ内部に内部メモリを備えた装置における表示データ処理プログラムであって、上記外部メモリからの表示データ読み込みの遅延時間が予め定められた閾値を越えた場合、該外部メモリ内の表示データの少なくとも一部を上記内部メモリに転送する処理を上記装置のコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、例えばデータバスのトラフィックがあがった場合など、プロセッサ外部の外部メモリからのデータ読み込みが間に合わなくなる虞がある状況であっても、表示データ処理を確実にできるようにし、表示性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る表示データ処理装置、画像表示装置、表示データ処理方法、およびプログラムを、携帯端末装置に適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
本実施形態の携帯端末装置は、複数の表示レイヤを合成して表示を行う場合に、データバスの帯域があがっても表示性能を劣化させることなく、複数レイヤの合成を実現する好適なものを例示している。
【0016】
まず、本実施形態の概要について説明する。
本実施形態は、図1に示すように、プロセッサ外部に外部メモリを備えると共に、プロセッサ内部に内部メモリと、制御手段とを備えた構成となっている。この制御手段は、外部メモリからの表示データ読み込みの遅延時間が予め定められた閾値を越えると、その外部メモリ内の表示データの少なくとも一部を、内部メモリに転送する。
【0017】
このことにより、例えばデータバスのトラフィックがあがった場合など、プロセッサ外部の外部メモリからのデータ読み込みが間に合わなくなる虞がある状況であっても、表示データ処理が確実に行われるようにすることができるようになっている。
【0018】
次に、本実施形態の構成について、図2を参照して説明する。
本実施形態は、図2に示すように、複数の表示レイヤの合成機能を備えた表示制御部(制御手段)をもつマイクロプロセッサ(MPU;Microprocessing Unit)1が実装された携帯端末装置となっている。
さらに、本実施形態の携帯端末装置は、表示データが格納される外部メモリであるRAM2(Random Access Memory)と、OSや表示を制御するためのプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)3と、LCD(Liquid Crystal Display;表示手段)4とを備え、これらがデータバス5を介してマイクロプロセッサ1と互いに接続されて構成される。
【0019】
マイクロプロセッサ1は、プログラム制御により命令を実行するCPU(Central Processing Unit)11と、表示制御部12と、内部メモリ15とを備え、これらが内部バス16を介して互いに接続されて構成される。
【0020】
表示制御部12は、RAM2から表示データを読み込み、LCD4へ転送する機能を備える。この表示制御部12は、表示データをRAM2から読み込むときの遅延を監視するバス監視部13と、各表示レイヤの更新頻度をカウントするカウンタ部14とを備えている。
【0021】
次に、本発明の実施形態の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、携帯端末装置として、CPU11がROM3に格納されたプログラムを実行し、表示データがRAM2へ格納される(ステップS1)。この表示データは、複数の表示レイヤを有したものであることとする。
【0022】
プログラムに基づいてCPU11は、目的に応じた設定を表示制御部12に対して行い、表示制御部12の動作を開始する。表示制御部12は、動作の概略として、LCD表示の周期に同期してRAM2に格納されている表示データを読み出し、LCD4へ転送することにより、画面に表示データを表示させる。
【0023】
このため、表示制御部12は、まずRAM2に対して表示データの読み出し要求を送出する(ステップS2)。表示制御部12のバス監視部13は、表示データの読み込み要求を出してから、その応答が返ってくるまでの遅延を監視している。この遅延時間が、予め定められた任意の閾値をこえると(ステップS3;Yes)、表示制御部12が更新頻度の最も低い表示レイヤの表示データを内部メモリ15へ転送する(ステップS4)。
【0024】
更新頻度は、表示制御部12にあるカウンタ部14の情報に基づいて、表示制御部12が判断する。
このカウンタ部14は、図4に示すように、表示レイヤを特定する表示レイヤ特定情報に、更新カウントを関連付けて格納する。更新カウントは、表示を実行するプログラムが、各レイヤの表示データを更新する際に更新カウンタを順次更新する。このカウンタ部14に格納された更新カウントに基づいて、表示制御部12は各表示レイヤにおける更新頻度の多少を判別する。
【0025】
以上のようにして、内部メモリ15またはRAM2から読み出した表示データを表示制御部12がLCD4へ転送することにより、RAM2からの表示データの読み込みが遅延無く行われ、LCD4に表示データが正常に表示される(ステップS5)。
【0026】
内部メモリ15からRAM2への書き戻しは、表示を実行しているプログラムが表示制御部12を制御し、プログラムとして定められた任意のタイミングで切替える。
内部メモリ15内の表示データの更新については、内部メモリ15に一旦格納した表示データに対して、次の表示データを順次上書きして更新する構成であってよい。
【0027】
また、内部メモリ15と表示データの容量によっては、表示レイヤの表示データが内部メモリ15に入りきれない場合も考えられる。この場合、表示制御部12は、プログラムが設定した転送量にしたがい、表示データを内部メモリ15へ転送する。表示は、内部メモリ15とRAM2に存在する残りの表示データを読み込むことで行う。
【0028】
以上のように、本実施形態では、表示制御部12がもつカウンタ部14とバス監視部13の機能を用い、図5に示す表示データの読み込み異常状態のように、表示データの読み込みがLCD4への転送タイミングに間に合わなくなる場合を、上述した遅延時間の閾値に基づいて検出する。
【0029】
こうしてデータ読み出し状況に応じて表示データを内部メモリ15へ転送できる構成になっているため、バストラフィックによらず、複数の表示レイヤを正常に合成することができる。このため、表示データの読み込み異常状態を引き起こすことなく、表示データ処理を確実に行うことができ、LCD4による表示性能を確実に確保することができる。
【0030】
このため、本実施形態によれば、装置のハードウェアが持つ表示機能を、制約条件なしにフルに使用できる。
また、データバス5の帯域(使用量)により、表示データのメモリからの読み込み速度を監視でき、表示データのメモリからの読み込み速度が間に合わなくなりそうな場合に、表示データを任意の容量で内部メモリ15に転送できる。
また、任意のタイミングで、内部メモリ15の表示データをRAM2に書き戻せすことができる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、複数の表示レイヤを合成して表示する場合、LCDの大画面化、MPUの高周波数化、装置機能(ソフトウェア)の高機能化・複雑化が進んだ携帯端末装置であっても、データバスの帯域(使用量)が多くなるなどの状況により表示データの読み込みが間に合わなくなるケースを回避できる。
【0032】
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
例えば、上述した実施形態では、プログラムはROM3に格納されることとして説明したが、コンピュータが読み取り可能な記録媒体であればこのものに限定されず、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリーカード、ROM等に格納されてもよい。
すなわち、本発明の各実施形態による上述した各機能が、上述した記録媒体から供給されるプログラムによって、画像形成装置のCPUや、画像形成装置に接続されたPCが処理を行うことにより実現されてもよい。
そして、その場合、上述した記録媒体により、あるいはネットワークを介して外部の記録媒体から、プログラムを含む情報群を出力装置に供給される場合でも本発明は適用されるものである。
すなわち、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記録媒体および該記録媒体から読み出された信号は本発明を構成することになる。
【0033】
この本発明に係るプログラムによれば、当該プログラムによって制御される各種装置のコンピュータに、上述した実施形態における各機能を実現させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明は、複数の表示レイヤの合成機能をオンチップ化したMPUを実装し、複数の画面を合成する機能を備える情報処理装置であれば、例えば携帯電話機など、各種の画像表示装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態としての携帯端末装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の動作例を示すフローチャートである。
【図4】カウンタ部14の格納情報を示す図である。
【図5】表示データの読み込み正常状態と異常状態とを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 マイクロプロセッサ
11 CPU
12 表示制御部
13 バス監視部
14 カウンタ部
15 内部メモリ
16 内部バス
2 RAM
3 ROM
4 LCD
5 データバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ外部に外部メモリを備えると共に、
該プロセッサ内部に内部メモリと、制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記外部メモリからの表示データ読み込みの遅延時間が予め定められた閾値を越えると、該外部メモリ内の表示データの少なくとも一部を前記内部メモリに転送することを特徴とする表示データ処理装置。
【請求項2】
前記表示データは複数の表示レイヤを有して構成され、
前記制御手段が前記内部メモリに前記転送する表示データは、更新頻度の最も低い表示レイヤのデータを少なくとも含むことを特徴とする請求項1記載の表示データ処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記表示レイヤを特定する表示レイヤ特定情報に更新カウントを関連付けて格納するカウンタ部を備え、該カウンタ部に格納された更新カウントに基づいて、前記各表示レイヤにおける前記更新頻度の多少を判別することを特徴とする請求項2記載の表示データ処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記内部メモリに格納された前記表示データの少なくとも一部を、表示を実行しているプログラムの制御に基づいて前記外部メモリに書き戻すことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の表示データ処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記外部メモリからの前記表示データ読み込みの遅延時間を監視する監視部を備え、該監視部による監視結果に基づいて、前記表示データの少なくとも一部を前記内部メモリに前記転送することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の表示データ処理装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の表示データ処理装置と、
前記表示データ処理装置からの表示データを表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
プロセッサ外部に外部メモリを備えると共に、該プロセッサ内部に内部メモリを備えた装置における表示データ処理方法であって、
前記外部メモリからの表示データ読み込みの遅延時間が予め定められた閾値を越えた場合、該外部メモリ内の表示データの少なくとも一部を前記内部メモリに転送することを特徴とする表示データ処理方法。
【請求項8】
前記表示データは複数の表示レイヤを有して構成され、
前記内部メモリに前記転送される表示データは、更新頻度の最も低い表示レイヤのデータを少なくとも含むことを特徴とする請求項7記載の表示データ処理方法。
【請求項9】
前記各表示レイヤにおける前記更新頻度は、前記表示レイヤを特定する表示レイヤ特定情報に更新カウントを関連付けて格納するカウンタ部の更新カウントに基づいて判別されることを特徴とする請求項8記載の表示データ処理方法。
【請求項10】
プロセッサ外部に外部メモリを備えると共に、該プロセッサ内部に内部メモリを備えた装置における表示データ処理プログラムであって、
前記外部メモリからの表示データ読み込みの遅延時間が予め定められた閾値を越えた場合、該外部メモリ内の表示データの少なくとも一部を前記内部メモリに転送する処理を前記装置のコンピュータに実行させることを特徴とする表示データ処理プログラム。
【請求項11】
前記表示データは複数の表示レイヤを有して構成され、
前記内部メモリに前記転送される表示データは、更新頻度の最も低い表示レイヤのデータを少なくとも含むことを特徴とする請求項10記載の表示データ処理プログラム。
【請求項12】
前記各表示レイヤにおける前記更新頻度は、前記表示レイヤを特定する表示レイヤ特定情報に更新カウントを関連付けて格納するカウンタ部の更新カウントに基づいて判別されることを特徴とする請求項11記載の表示データ処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−192741(P2009−192741A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32258(P2008−32258)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】