説明

表示入り食材の製造方法

【課題】 顧客満足度を高めることができる表示入り食材の製造方法を提供しようとするもの。
【解決手段】 食材1に表示しようとする内容に対応した挿通穴2が形成されたガイド型3と、切削刃物4の先端の逃げ用の窪み部5が形成された座板6との間に平坦状の食材1を挟み込み、前記ガイド型3の挿通穴2から切削刃物4を食材1に貫通させて座板6の窪み部5へと臨ませてガイド型3の挿通穴2の内側を切削加工するようにした。食材に表示しようとする内容に対応した挿通穴が形成されたガイド型と切削刃物の先端の逃げ用の窪み部が形成された座板との間に食材を挟み込んで切削加工するようにしており、食材に所望の表示を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、味付け海苔その他の表示入り食材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般家庭の食卓でお馴染みの食材である味付け海苔が知られている。
【0003】
この味付け海苔は干し海苔に食塩、みりん、しょうゆなどの調味液を塗布して電熱で乾燥したものであり(非特許文献1参照)、ご飯をくるみ易い大きさに裁断された5枚程度が一緒にフィルム袋に封入されている。味付け海苔は例えば旅館などにおいてもほぼ必ず供され、日本人の食事(特に朝食)に欠かせない。
【0004】
ところで、旅館などでは味付け海苔の他にも種々の食材が扱われており、また贈答品として色々な食材が流通しているが、同じ食材でもお客さんにより喜んでもらってその満足度を高めたいという要望がある。
【非特許文献1】平凡社 大百科事典「のり 海苔 laver」、平凡社 1985年6月28日、第11巻p.833〜835
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこでこの発明は、顧客満足度を高めることができる表示入り食材の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
【0007】
(1)この発明のの表示入り食材(食品)の製造方法は、食材に表示しようとする内容に対応した挿通穴が形成されたガイド型と、切削刃物の先端の逃げ用の窪み部が形成された座板との間に平坦状の食材を挟み込み、前記ガイド型の挿通穴から切削刃物を食材に貫通させて座板の窪み部へと臨ませてガイド型の挿通穴の内側を切削加工するようにしたことを特徴とする。
【0008】
ここで、ガイド型の食材に表示しようとする内容に対応する挿通穴の切削加工と、座板表面の切削刃物の先端の逃げ用の窪み部の切削加工とは事前に準備しておく。
【0009】
この表示入り食材の製造方法では、食材に表示しようとする内容に対応した挿通穴が形成されたガイド型と切削刃物の先端の逃げ用の窪み部が形成された座板との間に食材を挟み込んで切削加工するようにしており、食材に所望の表示を付与することができる。
【0010】
また、ガイド型と座板との間に平坦状の食材を挟み込んだ状態で切削刃物によりガイド型の挿通穴の内側を切削加工するようにしたので、食材がずれたり移動したりしないように固定し食材を損傷から保護しつつ加工することができる。
【0011】
(1)前記平坦状の食材として、干し海苔、味付け海苔、蒲鉾、高野豆腐、平板状に切断した野菜類(大根、にんじん、竹の子など)、板状のチョコレートなどを例示することができ、保存性のよい食材が好ましい。
【0012】
(2)前記食材に表示しようとする内容として、旅館の場合には泊り客の名前などの文字を例示することができる。また、巻き寿司の海苔に表示する場合には、そのお寿司屋さんの店名などの文字やマークを例示することができる。お歳暮など贈答品として例えば味付け海苔を送る場合には、その海苔に相手方のご家族の方々の各人の姓名を表示することができる。さらに、梅や桜その他の図柄などを表示することもできる。
【0013】
(3)前記ガイド型は例えばプラスチック材料で形成することができるが可食性材料であるとなおよく、前記座板は例えば金属製のものやプラスチック材料とすることができる。座板の窪み部は座板を貫通していてもよい。前記座板は工作機械の加工作業面(テーブル)に固定する。
【0014】
(4)切削刃物による切削加工は、マシニングセンタなどの数値制御工作機械によって行うことができる。切削刃物として例えばエンドミル、リーマ、ドリルなどを用いることができる。切削加工時には、切削刃物がガイド型や座板に直接接触しないように相互間に僅かに隙間を設ける(NC加工)。
【0015】
(2) 前記食材に表示しようとする内容のうち広幅の部分(例えば表示内容が図形などの場合)はその内周軌跡の内側を切削刃物が変移することにより切削加工するようにしたこととしてもよい。このように構成すると、食材に表示しようとする内容について切削刃物の太さよりも広幅の部分がある場合でも好適に切削加工を行うことができる。
【0016】
(3) 前記座板の窪み部も食材に表示しようとする内容に対応して形成されたこととしてもよい。このように構成すると、ガイド型の挿通穴と共に座板の窪み部も食材に表示しようとする内容に対応して形成されているので、食材は切削加工される表示内容箇所以外は上側からのみならず下側からもしっかりと押さえ込まれて固定されることとなって切削加工時にガタツキ難くなり、食材への表示がより綺麗なものとなりまた食材が比較的もろい材質の場合も円滑に加工することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0018】
食材に所望の表示を付与することができるので、顧客満足度を高めることができる表示入り食材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1乃至図3に示すように、この実施形態の表示入り食材(食品)の製造方法は、食材1に表示しようとする内容に対応した挿通穴2(幅2.1mmとした)が形成されたガイド型3(厚み2mmとした)と、切削刃物(切削工具)4の先端の逃げ用の窪み部5(幅2.1mmとした。食材1に表示しようとする内容に対応して形成する。座板を貫通していてもよい)が形成された座板6(厚み5mmとした)とを用いる。
【0021】
前記食材1として味付け海苔を選択したが、他に干し海苔、高野豆腐、平板状に切断した野菜類(大根、にんじん、竹の子など)、板状のチョコレートなどを例示することができ、保存性のよい食材1が好ましい。
【0022】
前記食材1(図3参照)に表示しようとする内容(食材1の除去部分)として、旅館の場合には泊り客の名前などの文字を例示することができる(添付図面上は具体的な氏名は示さず「SN」と表した)。また、巻き寿司の海苔に表示する場合には、そのお寿司屋さんの店名などの文字やマークを例示することができる。お歳暮など贈答品として例えば味付け海苔を送る場合には、その海苔に相手方のご家族の方々の各人の姓名を表示することができる。さらに、梅や桜その他の図柄などを表示することもできる。
【0023】
前記ガイド型3はプラスチック材料で形成したが可食性材料であるとなおよく、前記座板6は金属製として形成したがプラスチック材料とすることもできる。座板6の四隅にはネジ孔7を切ると共に、ガイド型3の対応する箇所には貫通孔8を穿設しており、作業時にはガイド型3と座板6相互間に食材1(複数枚の味付け海苔)を挟んでネジ9で止めることにより位置ずれを防止して固定する。また、前記座板6の両端を座ぐって凹み部10を形成すると共に貫通孔11を穿設しており、工作機械の加工作業面(テーブル)Tにネジ12で固定するようにしている。
【0024】
切削刃物4による切削加工は、マシニングセンタなどの数値制御工作機械(図示せず)によって行うことができる。切削刃物4としてエンドミル(太さ2.0mmとした。工作機械にチャック13で固定する)を用いたが、リーマ、ドリルなどを用いることもできる。切削加工時には、切削刃物4(エンドミル)がガイド型3や座板6に絶対に接触しないように相互間に僅かに隙間ができるようにして精密NC加工する。
【0025】
ここで、前記食材1に表示しようとする内容のうち広幅(5mmなど)の部分(例えば表示内容が通常の文字ではなく図形など)がある場合は、その形状の内周軌跡の内側を切削刃物4(エンドミル)がぐるっと変移していくことにより切削加工する。このようにすると、食材1に表示しようとする内容について切削刃物4の太さよりも広幅の部分がある場合でも好適に切削加工を行うことができる。
【0026】
次に、この実施形態の表示入り食材の製造方法の使用状態を説明する。
【0027】
食材1に表示しようとする内容に対応するプラスチック材料のガイド型3の挿通穴2の切削加工と、金属製の座板6表面の切削刃物4の先端の逃げ用の窪み部5の切削加工とを事前に行う。前記ガイド型3と座板6との間に平坦状の食材1(複数枚の味付け海苔)を挟み込み、四隅のネジ9でぐらぐらしないように固定する。そして、前記座板6を工作機械の加工作業面(テーブル)Tにネジ12で固定する。次いで、前記ガイド型3の挿通穴2から切削刃物4(エンドミル)を食材1(複数枚の味付け海苔)に貫通させて座板6の窪み部5へと臨ませ、ガイド型3の挿通穴2の内側を切削加工していく。こうして食材1を貫通して切削加工により除去された箇所が、食材1に表示しようとする内容(旅館の泊まり客の名前)となる。なお切削加工時の味付け海苔の削り屑は、集塵器で吸引して廃棄する。切削加工が終了すると、ネジを外して表示が付された食材1(味付け海苔)を取り出し、5枚程度づつフィルム袋に収容して包装する。なお、味付け海苔の複数枚が未だ裁断されていない大判の状態で上記のような切削加工を行ってもよい(1回の切削加工で一遍に大判の複数枚×積層枚数を製造することができる)。その後、食べ易い大きさに裁断する。
【0028】
この表示入り食材の製造方法では、食材(味付け海苔)に表示しようとする内容に対応した挿通穴2が形成されたガイド型3と切削刃物4(エンドミル)の先端の逃げ用の窪み部5が形成された座板6との間に食材1を挟み込んで切削加工するようにしており、食材1に所望の表示(泊まり客の名前)を付与(この部分が切削・除去されている)することができ、顧客満足度を高めることができるという利点がある。すなわち、この味付け海苔は旅館に泊まった翌日の朝食に供するのであるが、泊り客は味付け海苔のフィルム袋(5枚程度収容されている)の封を切って海苔を取り出し自分の名前を発見し、びっくりして感激し深く印象付けられることとなる。
【0029】
また、ガイド型3と座板6との間に平坦状の食材1(複数枚の味付け海苔)を挟み込んだ状態で切削刃物4(エンドミル)によりガイド型3の挿通穴2の内側を切削加工するようにしたので、食材1がずれたり移動したりしないように固定し食材1を損傷から保護しつつ加工することができるという利点がある。
【0030】
さらに、前記座板6の窪み部5も食材1に表示しようとする内容に対応して形成されたこととしたので、ガイド型3の挿通穴2と共に座板6の窪み部5も(ただのブロードな空間ではなく)食材1に表示しようとする内容に対応して形成されており、食材1は切削加工される表示内容箇所以外は上側(ガイド型3)からのみならず下側(座板6)からもしっかりと押さえ込まれて固定されることとなって切削加工時に非常にガタツキ難くなり、食材1への表示がより綺麗なものとなり、また食材1が比較的もろい材質の場合も円滑に加工することができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0031】
食材に所望の表示を付与することができ顧客満足度を高めることができることによって、種々の表示入り食材の製造方法の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の表示入り食材の製造方法の実施形態に用いる部材等を説明する分解斜視図。
【図2】図1の部材等を説明する断面図。
【図3】図1の表示入り食材の製造方法により製造した食材(味付け海苔)の斜視図。
【符号の説明】
【0033】
1 食材
2 挿通穴
3 ガイド型
4 切削刃物
5 窪み部
6 座板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材(1)に表示しようとする内容に対応した挿通穴(2)が形成されたガイド型(3)と、切削刃物(4)の先端の逃げ用の窪み部(5)が形成された座板(6)との間に平坦状の食材(1)を挟み込み、前記ガイド型(3)の挿通穴(2)から切削刃物(4)を食材(1)に貫通させて座板(6)の窪み部(5)へと臨ませてガイド型(3)の挿通穴(2)の内側を切削加工するようにしたことを特徴とする表示入り食材の製造方法。
【請求項2】
前記食材(1)に表示しようとする内容のうち広幅の部分はその内周軌跡の内側を切削刃物(4)が変移することにより切削加工するようにした請求項1記載の表示入り食材の製造方法。
【請求項3】
前記座板(6)の窪み部(5)も食材(1)に表示しようとする内容に対応して形成された請求項1又は2記載の表示入り食材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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