説明

表示素子および表示装置

【課題】ホワイトの視野角依存性を改善することができ、且つ光の取り出し効率が優れた表示素子および表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子は、第1電極11および第2電極15のうちの光が取り出される方のものおよび有機層13の少なくとも一方が、発光層13cで発光した光を共振させる共振構造となるように構成されている。発光層13cの内部発光スペクトルのピーク波長と、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示素子および表示装置に関する。さらに詳しくは、光共振器構造を有する有機EL素子などの表示素子およびこれを用いた有機ELディスプレイなどの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた有機ELディスプレイが注目されている。有機ELディスプレイは、有機材料に電流を流すことで材料自らが発光する自発光型ディスプレイで、バックライトが不要であることに加え、優れた色再現性や高コントラスト、動画に適した応答性、広視野角などの優れた特徴を有している。
【0003】
有機ELディスプレイに用いる有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機層を配置しており、陽極から正孔が有機層に注入され、陰極から電子が有機層に注入されて、正孔と電子が再結合する部分で光を放出する。有機層は、例えば、正孔と電子が再結合する部分の発光層、陽極から正孔を受け取って発光層まで輸送するために設けられる正孔輸送層、陰極から電子を受け取って発光層まで輸送する電子輸送層などが積層された構造を有する。
【0004】
有機ELディスプレイでは、有機層と陽極または陰極などとで共振器構造を形成することにより光出力を向上させて消費電力を低減させ、また、多重干渉フィルタにより色純度を上げ、色再現範囲を拡大させたディスプレイが、実用化されている。(例えば特許文献1〜4参照)
【0005】
共振器構造を備えた有機ELディスプレイでは、ピーク強度が高く幅が狭い光を取り出すことができるので、色純度を上げ、色再現範囲を拡大させることができる。一方、共振器構造を備えた有機ELディスプレイでは、取り出される光のピーク幅が狭くなると、発光面を斜め方向から見た場合に、光の波長が大きくシフトし、発光強度が低下する等の視野角依存性が高くなる。
【0006】
視野角依存性を改善するため、例えば特許文献5には、発光層の発光主波長よりも厚く、且つ不均一な厚さであり、光透過性反射電極および反射層間で発生しうる光干渉を解消する干渉解消層を設ける技術が記載されている。また、例えば特許文献6には、光散乱性および光反射性を有する層を形成することによって、発光輝度および発光色の角度依存性を小さくする技術が記載されている。
【0007】
また、例えば、特許文献7には、多重干渉効果を用いた場合のホワイト視野角を改善する技術が開示されている。この技術では、内部発光スペクトルのピーク波長と多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを互いにずらすことにより、知覚上非常に認識されやすいホワイトについて視野角依存性を問題ないレベルにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−294421号公報
【特許文献2】特開2007−134345号公報
【特許文献3】特開2008−524819号公報
【特許文献4】特開2008−523551号公報
【特許文献5】特開2008−140714号公報
【特許文献6】再表2005/094130号公報
【特許文献7】特許第3508741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献7に記載の技術では、ホワイトの視野角依存性を重視して、内部発光スペクトルのピーク波長と多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを互いにずらすため、光の取り出し効率が低下する。特許文献7に記載の技術では、ホワイトの視野角依存性を改善できるが、その一方で光の取り出し効率が低下し、消費電力が上昇する。
【0010】
したがって、この発明の目的は、ホワイトの視野角依存性を改善することができ、且つ光の取り出し効率が優れた表示素子および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられ、発光層を含む有機層とを備え、第1電極および第2電極のうちの光が取り出される方のものおよび有機層の少なくとも一方が、発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子である。
【0012】
第2の発明は、光反射材料からなる第1電極と、透明材料からなる第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられ、発光層を含む有機層とを備え、第2電極および有機層の少なくとも一方が、発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子である。
【0013】
第3の発明は、基板上に積層された光反射材料からなる第1電極と、第1電極上に積層された発光層を含む有機層と、有機層上に積層された透明材料からなる第2電極とを備え、第2電極および有機層の少なくとも一方が、発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子である。
【0014】
第4の発明は、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられ、発光層を含む有機層とを備え、第1電極および第2電極のうちの光が取り出される方のものおよび有機層の少なくとも一方が、発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子を備えた表示装置である。
【0015】
第5の発明は、光反射材料からなる第1電極と、透明材料からなる第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられ、発光層を含む有機層とを備え、第2電極および有機層の少なくとも一方が、発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子を備えた表示装置である。
【0016】
第6の発明は、基板上に積層された光反射材料からなる第1電極と、第1電極上に積層された発光層を含む有機層と、有機層上に積層された透明材料からなる第2電極とを備え、第2電極および有機層の少なくとも一方が、発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子を備えた表示装置である。
【0017】
第1〜第6の発明では、発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えるようにしている。これにより、光の取り出し効率の低下を最小限に抑え、視野角依存性があるときの輝度変動量のRGBバランスを調整することができる。よって、ホワイトの視野角依存性を改善でき、且つ、優れた光の取り出し効率を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ホワイトの視野角依存性を改善することができ、且つ、優れた光の取り出し効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第1の実施の形態による有機EL素子を示す要部断面図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による有機EL素子との比較例の有機EL素子(G発光)の視野角依存性を示す略線図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態による有機EL素子との比較例の有機EL素子の視野角依存性を示す略線図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態による有機EL素子(G発光)の視野角依存性を示す略線図である。
【図5】共振部による多重干渉フィルタスペクトルを説明するための概念図である。
【図6】共振部の構成例を説明するための断面図である。
【図7】従来構造の内部発光スペクトルおよび取り出される光のスペクトルを示す略線図である。
【図8】この発明の第1の実施の形態による有機EL素子と従来構造の取り出される光のスペクトルを示す略線図である。
【図9】この発明の第1の実施の形態および従来の有機EL素子のΔuv視野角特性を示す略線図である。
【図10】この発明の第2の実施の形態による有機EL素子を示す要部断面図である。
【図11】この発明の第3の実施の形態による有機EL素子を示す要部断面図である。
【図12】この発明の第4の実施の形態による表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行い、実施の形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
1.第1の実施の形態(有機EL素子の第1の例)
2.第2の実施の形態(有機EL素子の第2の例)
3.第3の実施の形態(有機EL素子の第3の例)
4.第4の実施の形態(有機EL素子を用いた表示装置の例)
5.他の実施の形態(変形例)
【0021】
1.第1の実施の形態
(有機EL素子の構成)
この発明の第1の実施の形態による有機EL素子の構成について説明する。図1は、有機EL素子の断面構造を示す。この有機EL素子は、いわゆる上面発光型の有機EL素子であり、基板11上に、下層から順に第1電極12、有機層13、半透明反射層14および第2電極15が順次積層された構成になっている。有機層13は、バッファ層13a、正孔輸送層13bおよび電子輸送層を兼ねた有機発光層13cとが、基板11側からこの順で積層された構成となっている。
【0022】
詳細は後述するが、この有機EL素子は、第1電極12と有機層13との界面と、半透明反射層14と有機層13との界面との間で、有機発光層13cで発光した光を共振させて、第2の電極15側から光を取り出す共振器構造とされている。
【0023】
[基板]
基板11は、例えば、透明ガラス基板や半導体基板等で構成され、フレキシブルなものであってもよい。
【0024】
[第1電極]
第1電極12は、反射層を兼ねたアノード電極として用いられるものである。第1電極12は、例えば白金(Pt)、金(Au)、クロム(Cr)、またはタングステン(W)等の光反射材料で構成されている。また、第1電極12の膜厚としては、100nm〜300nmの範囲に設定されていることが好ましい。
【0025】
[有機層]
有機層13は、例えば、バッファ層13a、正孔輸送層13bおよび電子輸送層を兼ねた有機発光層13cを下層から順次積層した構造を有する。なお、電子輸送層は有機発光層13cとは別の層として設けてもよい。バッファ層13aはリークを防止するための層である。バッファ層13aは、例えば、m−MTDATA〔4,4’,4’’−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine;4,4’,4’’−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン〕、2−TNATA〔4,4’,4’’−tris(2−naphtylphenylamino)triphenylamine;4,4’,4’’−トリス[2−ナフチル(フェニル)アミノ]トリスフェニルアミン〕等で構成される。
【0026】
なお、バッファ層13aはリークが支障のないレベルであれば省略してもよい。また、正孔輸送層13bは、例えばα−NPD〔N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenyl−(1,1’−biphenyl)−4,4’−diamine;N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン〕で構成される。そして、有機発光層13cは、赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの発光色を有する各発光材料で構成され、例えばGの発光色を有する発光材料としてはAlq3(トリスキノリノールアルミニウム錯体)を用いる。
【0027】
有機層13を構成する各層の膜厚は、例えば、バッファ層13aが15nm〜300nm、正孔輸送層13bが15nm〜100nm、有機発光層13cが15nm〜100nmの範囲に設定されることが好ましい。ただし、有機層13およびこれを構成する各層の膜厚は、その光学的膜厚が後に説明する値になるように設定される。
【0028】
[半透明反射層]
半透明反射層14は、カソード電極を構成するものである。半透明反射層14は、例えば、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、またはこれらの合金などで構成される。半透明反射層14の膜厚としては、例えば5nm〜50nmの範囲に設定されていることが好ましい。
【0029】
[第2電極]
第2電極15は、一般的に透明電極として用いられている材料で構成される。このような材料としては、例えば酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物などが挙げられる。第2電極15の膜厚は、例えば30nm〜1000nmの範囲に設定される。
【0030】
第2電極15上には、透明誘電体からなるパッシベーション膜(図示省略)が設けられている。この透明誘電体は、好ましくは第2電極15を構成する材料と同程度の屈折率を有するものとなる。このような材料としては、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)などを用いることができる。パッシベーション膜は、例えば500nm〜10000nmの膜厚で成膜される。
【0031】
[共振器構造]
この有機EL素子では、光反射材料からなる第1電極12と有機層13と半透明反射層14とで共振器構造が構成されており、有機層13が共振部となっている。
【0032】
第1電極12と半透明反射層14との間の光学的距離、すなわち有機層13からなる共振部の光学的膜厚をLとする。有機発光層13cで発生した光hが第1電極12および半透明反射層14で反射する際に生じる位相シフトをΦラジアンとする。有機発光層13cで発光する光hの波長をλとすると、多重干渉の1回分の位相遅れ量δは、下記(式1)で表される。
【0033】
δ=2π・2L/λ+Φ・・・(式1)
【0034】
また下記(式2)が成立するλは、狭帯域フィルタである多重干渉フィルタのピーク波長となる。
【0035】
δ=2π・m(ただし、mは整数である)・・・(式2)
【0036】
(式2)が成立するλをλmaxとし、(式1)および(式2)から下記(式3)が得られる。光学的距離Lは(式3)を満たすように設定される。
【0037】
2L/λmax+Φ/2π=m・・・(式3)
【0038】
有機層13を構成する各層の膜厚は、(式3)を満たすように設定されている。共振部の光学的距離Lは、有機層13を構成する各層(この第1の実施の形態においては、バッファ層13a、正孔輸送層13bおよび有機発光層13c)の各屈折率n1、n2、・・・、nkと、膜厚d1、d2、・・・、dkとから、下記(式4)のように求められる。
【0039】
L=n1×d1+n2×d2+・・・+nk×dk・・・(式4)
【0040】
光学的距離Lの計算の1例を挙げる。例えば、有機層13が以下のように構成されている場合のLの計算の例について説明する。
【0041】
バッファ層13a:
材料:2−TNATA、膜厚d1=32nm、屈折率n1=1.9
正孔輸送層13b:
材料:α―NPD、膜厚d2=30nm、屈折率n2=1.8
有機発光層13c:
材料:Alq3、膜厚d3=50nm、屈折率n3=1.7
【0042】
このとき、有機層13の光学的距離Lは、L=1.9×32+1.8×30+1.7×50=200nmとなる。
【0043】
また、有機発光層13cで発生した光hが第1電極12および半透明反射層14で反射する際に生じる位相シフトΦは、次のようにして導出される。すなわち、まず、基板(例えば、Si基板)上に反射層(Cr等)または半透明反射層(Mg、Ag、Mg−Ag合金等)を200nm以上の膜厚に成膜し、分光エリプソメトリー測定装置(例えば、SOPRA社製のもの等)を用いてこれらの反射層または半透明反射層の屈折率nおよび吸収係数kを求める。
【0044】
反射層側の位相シフトは、そのn、kと、この反射層と接している有機層の屈折率nとを用いて計算することができる(例えば、Principles of Optics,MaxBorn and Emil Wolf,1974(PERGAMON PRESS)等参照)。
【0045】
また、半透明反射層側の位相シフトも同様に、そのn、kと、この半透明反射層と接している有機層の屈折率n、半透明反射層の膜厚、その上方の各透明膜の屈折率および膜厚とを用いて計算することができる。なお、有機層、各透明膜の屈折率も分光エリプソメトリー測定装置を用いて測定可能である。
【0046】
上記の2つの位相シフトの和がΦである。Φの値の一例を挙げると、λ=535nmに対してΦ=−4.7ラジアンである。
【0047】
[有機EL素子の特徴]
この発明の第1の実施の形態による有機EL素子では、発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させている。そして、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下としている。なお、発光層の内部スペクトルとは、発光層で発光させた光を多重干渉させずに取り出した光のスペクトルのことである。
【0048】
この有機EL素子において、ホワイトの色ずれΔuvの上限値を0.015としたことの技術的意義は、以下の通りである。TVモニターや、プロジェクターなどの色再現範囲を重視するディスプレイにおいては、ホワイトのばらつきを3〜5JND(ジェンド)に抑える必要がある。その範囲はuv単位で0.011以上0.019以下であり、中心値は0.015となる。したがって、0.015が色ずれに関する人間感覚の許容限度であると考えられる。
【0049】
この発明の第1の実施の形態の有機EL素子の特徴について具体例1〜具体例3を挙げて説明する。なお、具体例3がこの発明に対応するものであり、具体例1および具体例2はこの発明の理解を容易にするために例示する比較例である。
【0050】
<具体例1>
図2は、内部発光スペクトルのピーク波長と共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させたときの緑色発光色の取り出される光のスペクトルの視野角依存性を計算したものである。ただし(式3)においてm=1である。なお、この例は、光の取り出し効率を最大にとったものである。
【0051】
図2において、Initialが示す発光スペクトルが内部発光スペクトルである。0°が示す発光スペクトルが、視野角0°における、内部発光スペクトルと共振部による多重干渉フィルタスペクトルとを掛け合わせることにより取り出される光のスペクトルである。30°に示す発光スペクトルが、視野角30°における、内部発光スペクトルと共振部による多重干渉フィルタスペクトルとを掛け合わせることにより取り出される光のスペクトルである。60°に示す発光スペクトルが、視野角60°における、内部発光スペクトルと共振部による多重干渉フィルタスペクトルとを掛け合わせることにより取り出される光のスペクトルである。(以下の図3〜図4でも同様)
【0052】
具体例1では、図2からわかるように、視野角が大きくなるに従って、取り出される光のスペクトルのピークは短波長側にシフトし、ピーク強度も減少している。
【0053】
<具体例2>
図3は、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長を内部発光スペクトルのピーク波長よりも−10nm短波長側にシフトした場合において、緑色発光色の取り出される光のスペクトルの視野角依存性を計算したものである。ただし(式3)においてm=1である。
【0054】
具体例2では、共振部の光学的距離Lに、具体例1の共振部の光学的距離Lとは異なる光学的距離Lを選び、これにより、多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長を内部発光スペクトルのピーク波長よりも−10nm短波長側にシフトするようにしている。
【0055】
図3からわかるように、具体例1と比べて、この例では、取り出される光のスペクトルは、短波長側へシフトするとともに、ピーク強度が低下している。
【0056】
<具体例3>
図4は、内部発光スペクトルのピーク波長と共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、発光層13cの位置をシフトさせた場合に、緑色発光色の取り出される光のスペクトルの視野角依存性を計算したものである。ただし(式3)においてm=1である。なお、具体例3では、発光層13cの位置を厚さ方向でシフトさせ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えるようにしている。
【0057】
具体例3では、発光層13cの位置を厚さ方向(基板11側または基板11とは反対側)でシフトさせることによって、視野角60°において、視野角0°の輝度に対する輝度低下を、具体例2と同様にしている(後述するが、具体的には40%に低下)。なお、このとき、発光層13cの位置をシフトする前と、発光層13bの位置をシフトする前とで、共振部の光学的距離Lを一定にしている。
【0058】
図4からわかるように、具体例3では、取り出される光のスペクトルのピーク強度の低下は、具体例2と比べて僅かである。
【0059】
表1に、具体例1、具体例2および具体例3における、輝度変動量を計算したものを示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示すように、具体例2では、視野角60°の輝度を、視野角0°の輝度に対して40%にするために、内部発光スペクトルのピーク波長から、−10nm短波長側へ多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長をシフトしている。具体例2では、視野角0°の輝度が、ピーク波長のシフト量0nmの具体例1の視野角0°の輝度に対して、12%低下する。
【0062】
一方、表1に示すように、具体例3では、発光層13cの位置を厚さ方向でシフトさせることより、視野角60°での輝度を、視野角0°に対する輝度に対して40%にしている。このとき、具体例3では、具体例1に対する視野角0°の輝度低下を5%に抑えることができる。すなわち、具体例3では、ピーク強度の低下を僅かにして、視野角を大きくしたときの輝度変動量を制御できる。
【0063】
一方、ホワイトの色度は、RGB単色の色度と、ホワイト輝度バランスとが与えられて決定される。すなわち、RGB単色の色度をそれぞれ、R:(xr,yr)、G:(xg,yg)、B:(xb,yb)とし、ホワイト輝度バランスをYr:Yg:Yb(ただし、Yr+Yg+Yb=1)とする。
【0064】
この場合、ホワイトの色度(xw,yw)は、xw=xw´/(xw´+1+zw´)、yw=1/(xw´+1+zw´)できる。ただし、xw´=xr×Yr/yr+xg×Yg/yg+xb×Yb/yb、zw´=(1−xr−yr)×Yr/yr+(1−xg−yg)×Yg/yg+(1−xb−yb)×Yb/ybである。
【0065】
視野角が変わったときには、単色の色度(xr,yr)、(xg,yg)、(xb,yb)が短波長側に変化するとともに、輝度も変動して、ホワイト輝度バランスYr:Yg:Ybが変化し、上式に従ってホワイトの色度がずれる。そこで、視野角があるときの輝度変動量を変化させて、ホワイト輝度バランスの変化量を調整することにより、ホワイトの色ずれを改善する。
【0066】
この発明の第1の実施の形態では、内部発光スペクトルのピーク波長と共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えるようにしている。これにより、多重干渉フィルタによる光束のロストを最小限に抑えつつ、視野角があるときの輝度変動量を変化させて、ホワイト輝度バランスの変化量を調整することにより、ホワイトの色ずれの視野角依存性を減少できる。
【0067】
図5は、この発明の第1の実施の形態による有機EL素子の共振部による多重干渉フィルタスペクトルについて説明するための概念図である。図5に示すように、この発明の第1の実施の形態による有機EL素子では、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長((式3)におけるλmax)と、内部発光スペクトルのピーク波長とを一致させるようにしている。
【0068】
そして、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えるようにしている。すなわち、図5において、点線に示すピーク位置に、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの透過率の最大値が常に存在するように、多重干渉フィルタスペクトルの透過率を変えるようにしている。
【0069】
これにより、視野角があるときの輝度変動量を変化させて、ホワイト輝度バランスの変化量を調整し、多重干渉フィルタによる光束のロストを最小限に抑え、視野角があるときの、ホワイトの色ずれを改善するようにしている。この第1の実施の形態では、具体的には、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下としている。
【0070】
このときの、各発光色(R、G、B)の有機EL素子の各共振構造の一例の構成を以下に示す。なお、L1、L2、L3は、以下の図6に示す膜厚を示す。
【0071】
R:L1=230nm、L2=45nm、L3=20nm、L1+L2+L3=295nm
G:L1=190nm、L2=30nm、L3=30nm、L1+L2+L3=250nm
B:L1=140nm、L2=30nm、L3=30nm、L1+L2+L3=200nm
【0072】
この例では、共振部による多重干渉フィルタによる光束のロストを最小限に抑えることができ、ホワイトの色ずれを改善できる。具体的には、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下としている。
【0073】
一方、例えば、背景技術で例示した特許文献7(特許第3508741号公報)に記載の例では、以下のようにして視野角があるときのホワイトの色ずれを改善している。すなわち、内部発光スペクトルのピーク波長と、多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを、互いにずらすようにして、視野角があるときの輝度変動量を変化させて、ホワイト輝度バランスの変化量を調整することにより、ホワイトの色ずれを改善する。
【0074】
しかしながら、この例では、内部スペクトルのピーク波長と多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを互いにずらしているため、光束のロストが大きくなってしまい、光の取り出し効率が低下してしまう。
【0075】
このときの、各発光色(R、G、B)の有機EL素子の各共振構造の一例の構成を示す。
【0076】
R:L1=200nm、L2=45nm、L3=40nm、L1+L2+L3=285nm
G:L1=180nm、L2=30nm、L3=55nm、L1+L2+L3=265nm
B:L1=20nm、L2=30nm、L3=140nm、L1+L2+L3=190nm
【0077】
この例では、ホワイトの色ずれを改善できるが、光の取り出し効率が低下してしまう。
【0078】
さらに、ホワイトの色ずれの改善結果の具体的な一例を図7〜図9を参照して説明する。図7に示すような内部発光スペクトルおよび取り出される光のスペクトルの場合、赤(R)の共振構造の発光層13cの位置を+10nm、緑(G)の共振構造の発光層13cの位置を+10nm、青(B)の共振構造の発光層13cの位置を−10nmずらす。
【0079】
なお、+は上方(すなわち基板11と反対側)、−は下方(すなわち基板11側)である。また、図7において、添え字でInternalと表記するものは、内部発光スペクトルに対応し、添え字でoutputと表記するものは、取り出される光のスペクトルに対応する。
【0080】
図8に示すように、発光層13cの位置を上記のようにずらすことで、発光層13cの位置をずらす前の取り出される光のスペクトルと、発光層13cの位置をずらした後の取り出される光のスペクトルとで形状が変化する。R形状変更、G形状変更、B形状変更で示すスペクトルが、発光層13cの位置をずらした後の取り出される光のスペクトルである。なお、図8において、R従来、G従来、B従来で示す、取り出される光のスペクトルは、共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長と、内部発光スペクトルのピーク波長とを一致させて、光の取り出し効率を最大にした従来の共振構造に対応する。
【0081】
このときのホワイトの色ずれを図9に示す。図9において線pは、発光層13cの位置をずらした後のホワイトの色ずれを示す。図9において線qは、従来の共振構造のホワイトの色ずれを示す。
【0082】
線pに示すように、発光層13cの位置を上記のようにずらすことによって、ホワイトの色ずれは、視野角30°でΔuv=0.06、視野角60°でΔuv=0.012となり、ホワイトの色ずれを減少させることができた。
【0083】
すなわち、ホワイトの色ずれを、線qに示す、従来の共振構造のホワイトの色ずれに比べて大幅に減少させることができた。なお、発光層13cの位置をずらすことにより、視野角があるときのホワイトの色ずれを改善しているので、発光位置の変更による、必要電流の増加はほとんどない。
【0084】
(効果)
この発明の第1の実施の形態によれば、内部発光スペクトルのピーク波長と共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えるようにしている。これにより、輝度変動量のRGBバランスを調整することができ、ホワイトの視野角依存性を大幅に減少させることができる。また、光の取り出し効率も優れた特性を有する。
【0085】
なお、従来では、内部発光スペクトルのピーク波長と多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを互いにずらすことによって、ホワイトの視野角依存性を減少させるようにしていた。しかしながら、内部発光スペクトルのピーク波長と多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを互いにずらすようにして、ホワイトの視野依存性を減少するようにすると、光の取り出し効率が大幅に低下してしまう。
【0086】
さらに、この発明の第1の実施の形態において、R発光では、ピーク波長より長波長側の波長域において、多重干渉フィルタスペクトルの透過率を大きくすることが好ましい。また、BおよびG発光では、ピーク波長より短波長側の波長域において、多重干渉フィルタスペクトルの透過率を大きくなるようにすることが好ましい。これにより、各色の色度をより深い色にすることができる。
【0087】
2.第2の実施の形態
この発明の第2の実施の形態による有機EL素子について説明する。図10はこの発明の第2の実施の形態による有機EL素子を示す。図10に示す有機EL素子は、図1に示す第1の実施の形態による有機EL素子において、半透明反射層14と第2電極15と、第2電極15の上端界面(例えば、大気層との界面)とで共振器構造を構成したものである。第2電極15の端面と大気層との界面での反射率は10%程度と大きく、ここでは、透明材料からなる第2電極15を共振部とした共振器の効果を利用する。
【0088】
このため、大気層と半透明反射層14との間の距離、すなわち第2電極15からなる共振部の光学的距離がL(ここでは、第1の実施の形態と区別してL2とする)となる。
【0089】
なお、第2電極15上に、この第2電極15と同等の屈折率を有する透明誘電体からなるパッシベーション膜が設けられている場合には、このパッシベーション膜と第2電極15とが共振部となる。その他のことは第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
(効果)
この発明の第2の実施の形態による有機EL素子は、この発明の第1の実施の形態による有機EL素子と同様の効果を得ることができる。
【0091】
3.第3の実施の形態
図11はこの発明の第3の実施の形態による有機EL素子を示す。図11に示す有機EL素子は、第1電極12を光反射材料からなるカソード電極とし、第2電極15を透明電極からなるアノード電極とし、第1電極12側から順次有機発光層13c、正孔輸送層13bおよびバッファ層13aを積層したものである。この場合、有機層13と第2電極15とを合わせて一つの共振部とし、有機発光層13cで発生した光を有機層13の下端(第1電極12との境界面)と第2電極15の上端(大気層との境界面)とで反射させる。有機層13と第2電極15との光学的距離がLとなる。
【0092】
なお、第2電極15上に、この第2電極15と同等の屈折率を有する透明誘電体からなるパッシベーション膜が設けられている場合には、このパッシベーション膜と第2電極15とが共振部となる。その他のことは第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0093】
(効果)
この発明の第3の実施の形態による有機EL素子は、この発明の第1の実施の形態による有機EL素子と同様の効果を得ることができる。
【0094】
4.第4の実施の形態
(表示装置の構成)
この発明の第4の実施の形態による表示装置について説明する。図12は、この発明の第4の実施の形態による表示装置の断面構造を示す。この発明の第4の実施の形態による表示装置は、例えば、アクティブマトリックス型の表示装置であり、所謂、上面発光型(トップエミッション型)の表示装置である。
【0095】
この表示装置は、基板11上に少なくとも第1電極12、有機層13、第1電極15とが順次積層された積層構造の有機EL素子21を有する。この有機EL素子21としては、第1〜第3の実施の形態の有機EL素子を用いることができる。
【0096】
有機EL素子21では、第1電極12との間に、必要な電圧−電流を加えると、第1電極12から正孔が第2電極15から電子が発光層13cに注入され、発光層13cで正孔と電子とが再結合することにより発光する。なお、有機EL素子21の構成については、上述したので、詳細な説明を省略する。
【0097】
第2電極15上には、パッシベーション膜31が設けられ、このパッシベーション膜31上に、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂などの電離放射線硬化型樹脂などの接着層17が設けられている。この接着層17に対して、ガラスなどの封止基板18が全面にわたって貼り合わされることにより、有機EL素子21を封止している。有機EL素子21は、基板11に形成されたTFT層19上に、マトリックス状に複数個配置されている。
【0098】
TFT層17には、有機EL素子21を駆動するための薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transister)が配置されている。薄膜トランジスタは、例えば、プラズマCVDによる製膜とフォトリソグラフィによるパターン形成を繰り返すことにより形成される。
【0099】
表示装置の1画素は、Rサブ画素、Gサブ画素およびBサブ画素の3つのサブ画素で構成され、有機EL素子21R、有機EL素子21Bおよび有機EL素子21Gは、それぞれ1つのサブ画素を構成する。有機EL素子21Rは、赤色光Rを発光しRサブ画素を構成する。有機EL素子21Gは、緑色光Gを発光しGサブ画素を構成する。有機EL素子21Bは、青色光Bを発光しBサブ画素を構成する。各有機EL素子21は、薄膜トランジスタに接続され、発光のONおよびOFFが制御される。
【0100】
(効果)
この発明の第4の実施の形態による表示装置では、ホワイトの視野角依存性を大幅に減少させることができる。また、光の取り出し効率も優れた特性を有する。
【0101】
5.他の実施の形態(変形例)
この発明の実施の形態について、具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0102】
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構造、形状、材料等はあくまでも例にすぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、構造、形状、材料等を用いてもよい。
【0103】
例えば、第1の実施の形態においては、アノード電極を、高仕事関数の金属膜からなる第1電極12で構成したが、アノード電極は、誘電体多層膜やアルミニウム(Al)等の反射膜の上部に透明導電膜を重ねた2層構造にしてもよい。この場合、この反射膜がこの発明における第1電極となる。そして、透明導電膜は、共振部の一部を構成するものとなる。
【0104】
また、第3の実施の形態において、Pt、Au、Cr等の高仕事関数を有する材料からなる半透明反射層(図示せず)を、有機層13と第2電極15との間に設けてもよい。この場合は、共振部の構造は、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様になる。
【0105】
さらに、第1〜第3の実施の形態においては、この発明を上面発光型の有機EL素に適用した場合について説明したが、この発明は、透明な基板11を用いた透過型の有機EL素子に適用することも可能である。また、基板11上の薄膜トランジスタに接続された有機EL素子にも適用することが可能である。
【0106】
また、必要に応じて、第1〜第3の各実施の形態を組み合わせて有機EL素子を構成することも可能である。例えば、第2の実施の形態を第1の実施の形態と組み合わせて有機EL素子を構成してもよい。
【0107】
また、第2の実施の形態で説明した共振部の構成は、有機層13からなる共振部にも適用可能である。しかし、第2の実施の形態で説明した共振部は、その膜厚が比較的厚くなることを考慮すると、膜厚が厚くなる方向への自由度が比較的高い第2電極15を共振部とする構成に好適である。また、第1の実施の形態で説明した共振部の構造は、第2電極15(およびその上部のパッシベーション膜)からなる共振部にも適用可能である。
【0108】
また、(式3)の整数項mはRGB各色で視野角特性が同様の変化をすることから、同一であることが望ましいが、この発明を用いることで、0と1や1と2などの異なる整数の組み合わせを採用することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
11・・・基板
12・・・第1電極
13・・・有機層
13a・・・バッファ層
13b・・・正孔輸送層
13c・・・有機発光層
14・・・半透明反射層
15・・・第2電極
17・・・接着層
18・・・封止基板
19・・・TFT層
21・・・有機EL素子
31・・・パッシベーション膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
上記第1電極と上記第2電極との間に設けられ、発光層を含む有機層とを備え、
上記第1電極および上記第2電極のうちの光が取り出される方のものおよび上記有機層の少なくとも一方が、上記発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、
上記発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、
上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子。
【請求項2】
光反射材料からなる第1電極と、
透明材料からなる第2電極と、
上記第1電極と上記第2電極との間に設けられ、発光層を含む有機層とを備え、
上記第2電極および上記有機層の少なくとも一方が、上記発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、
上記発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、
上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子。
【請求項3】
基板上に積層された光反射材料からなる第1電極と、
該第1電極上に積層された発光層を含む有機層と、
該有機層上に積層された透明材料からなる第2電極とを備え、
上記第2電極および上記有機層の少なくとも一方が、上記発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、
上記発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、
上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子。
【請求項4】
上記発光層で発生した光が上記共振部の両端で反射する際に生じる位相シフトをΦラジアン、上記共振部の光学的距離をL、上記発光層で発生した光のうちの取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλmaxとした場合、下記の式を満たすように構成された請求項1〜3の何れか一項記載の表示素子。
(式)
2L/λmax+Φ/2π=m
(ただし、mは整数である)
【請求項5】
m=0または1である請求項4記載の表示素子。
【請求項6】
上記第1電極、上記有機層および上記第2電極が、基板上にこの順で積層された構造を有する請求項1記載の表示素子。
【請求項7】
第1電極と、
第2電極と、
上記第1電極と上記第2電極との間に設けられ、発光層を含む有機層とを備え、
上記第1電極および上記第2電極のうちの光が取り出される方のものおよび上記有機層の少なくとも一方が、上記発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、
上記発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、
上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子
を備えた表示装置。
【請求項8】
光反射材料からなる第1電極と、
透明材料からなる第2電極と、
上記第1電極と上記第2電極との間に設けられ、発光層を含む有機層とを備え、
上記第2電極および上記有機層の少なくとも一方が、上記発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、
上記発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、
上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子
を備えた表示装置。
【請求項9】
基板上に積層された光反射材料からなる第1電極と、
該第1電極上に積層された発光層を含む有機層と、
該有機層上に積層された透明材料からなる第2電極とを備え、
上記第2電極および上記有機層の少なくとも一方が、上記発光層で発光した光を共振させる共振構造の共振部となるように構成され、
上記発光層の内部発光スペクトルのピーク波長と、上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルのピーク波長とを一致させ、
上記共振部による多重干渉フィルタスペクトルの形状を、ピーク位置を維持したまま変えることによって、視野角が60°のときのホワイトの色ずれΔuvを0.015以下とした表示素子
を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−287524(P2010−287524A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142046(P2009−142046)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】