説明

表示装置、光導波シート、及び光導波シートの製造方法

【課題】 大型の光導波路製造装置を必要とすることなく、薄型でさらに軽量の大画面高精細の拡大光学ディスプレイである表示装置を提供する。
【解決手段】 実質的に主面に沿って配列されるように複数の光導波路が形成された複数の光導波シート3と、複数の光導波シート3が厚み方向から見て各々の光導波路の延在方向が実質的に揃うように該厚み方向に配置されて形成された光導波シート積層体4と、光導波シート積層体4の光導波路の延在方向における一方の端面からなり、画像光が入射する入光端面5aと、各光導波シート3が互いに離隔された、光導波シート積層体4の光導波路の延在方向における他方の端面からなり、前記入射した画像光が出射する出光端面6aと、光導波シート積層体5の出光端面6aから出射する画像光の画像を表示する画像表示部8と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を拡大して表示する表示装置に関し、特に、光導波路を用い、その一方の端部から画像光を入力し他方の端部においてこの画像光による画像を拡大して表示する拡大光学ディスプレイである表示装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示情報や画像情報を表示する表示装置には、主にフラットパネルディスプレイと呼ばれる液晶モニターなどの等倍型表示装置と、背面投影型液晶テレビなどの拡大投影型表示装置とがある。等倍型表示装置はディスプレイの厚みを薄く出来、設置に必要なスペースが少なくて済むという利点を有するが、大きな画面、例えば30インチ以上のサイズの画面を得ようとする場合、大型製造装置の必要性や大型部材の取り扱いにくさ、歩留まりの悪さなどからコストが高くなってしまう欠点がある。一方、拡大投影型表示装置は、50インチ以上の大きな表示サイズを等倍型表示装置に比べ安価に提供できる利点があるが、ディスプレイの厚みを等倍型と同じように薄くすることは光学系が大きくなって難しく、設置に必要なスペースが広くなってしまう欠点がある。
【0003】
ところで、表示や画像を拡大して表示する表示装置に関し、特に多数の光ファイバを集束固定した光ファイバ束(光ファイバ集合体)を用いて、一方の端部から表示や画像を入力し他方の端部でこれを拡大して表示する拡大光学ディスプレイである表示装置が知られている。この拡大光学ディスプレイは、光ファイバ束の両端面側に夫々位置する各光ファイバ間の相対的位置関係が均等になるように各光ファイバをその間隔を調整して整列させる一方で、光ファイバ束の一方の端面を構成する各光ファイバの間隔を疎に、他方の端面を構成する各光ファイバの間隔を密に束ねた構成を備えている。この拡大光学ディスプレイは、両面テープ等でシート状に固定した光ファイバ(光ファイバシート)を多層状に積層して光ファイバ束とし、光ファイバ束の一端面を密に集束させてプロジェクターからの光の結像面とし、かつ光ファイバ間の間隔を広く配置した他端面を出力側とした構成を備え、従来の上記拡大投影型表示装置よりも、薄型で大画面の表示装置を実現した製品として商品化されている。
【0004】
従来、拡大光学ディスプレイである表示装置として、光ファイバ束又は光導波路を有する膜体の積層体によって構成された光導波路集積体の一端が光導波路に対して垂直面からなる入光端面で、他端が傾斜して切断された傾斜端面からなる拡大表示面とすることにより、表示情報を拡大して表示する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の技術においては、光ファイバ束の一端を光ファイバの光軸に対して垂直面からなる入光端面とし、他端を光ファイバの光軸に対し傾斜して切断した傾斜端面からなる拡大表示面としている。
【0006】
また、上記従来の表示装置における光ファイバ束の入光端面と出射端面において、光ファイバを1:1対応で配列させる具体的な光ファイバ束の集束方法として、光ファイバ束の光ファイバ間隔を所望のピッチにて一列に整列し固定する光ファイバ束の集束装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図8はこの特許文献2に記載された表示装置における光ファイバの集束装置の構成を示す斜視概念図である。図8に示すように、この光ファイバの集束装置65においては、光ファイバ供給手段60と光ファイバ保持手段61との間の光ファイバFの相互間のピッチを両面テープ等で一定の広いピッチにて保持し、このシート状の光ファイバ束(光ファイバシート)Fsの一部に相当する各光ファイバFを集束部材62の外周の螺旋溝63に嵌合させ、集束部材62を一方向に回転させることにより、最終的に各光ファイバを螺旋溝63の溝ピッチに合致したピッチにて集束させる。
【0008】
特許文献1による他の構成例として、光導波路を用いて拡大表示する構成が記載されている。
【0009】
図9はこの特許文献1の他の構成例としての表示装置における光導波路部を示す平面概念図である。図9に示すように、この表示装置では、光導波路部74において、薄膜上又は厚膜70内に光導波路71を作製した膜体70を積層して光導波路積層体を形成して表示面Sを構成し、その拡大部77において光導波路71自体を拡大して作製し、光導波路71相互間をスペーサ72とすることにより、スペーサを使用することなく入光面73から入射された画像が表示面Sで拡大表示される。
【特許文献1】特開昭59−139082号公報
【特許文献2】特開2003−270456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の技術によれば、垂直面からなる入光端面と他端を傾斜して切断した傾斜端面とを有する光ファイバ束を用いた場合、画素に対応した光ファイバをそれぞれ束ねる必要があり、大画面化かつ高精細化したとき、取り扱うその光ファイバの本数が膨大となり、表示装置として奥行きが厚く、かつ重量が重くなるという大きな問題がある。
【0011】
また、特許文献2の技術によれば、光ファイバ束の光ファイバ間隔を所望のピッチにて集束させ保持する光ファイバ束の集束装置では、1:1対応で光ファイバを所望のピッチで配列し集束し保持することはできるが、大画面高精細の表示装置の場合には光ファイバの本数が増大し、その増大した本数の光ファイバ集合体を集束配列させることは困難であるという問題がある。
【0012】
また、上述の特許文献1の他の構成例では、光導波路積層体を用いて、複数の光導波路自体を薄膜又は厚膜内に互いの間隔を拡大するように形成する場合、大画面高精細の表示装置の拡大部を製造するための大型の光導波路製造装置が必要となって、光導波路積層体自体の製造コストが高くなり、その結果、表示装置が高価になるという大きな問題がある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、大型の光導波路製造装置を必要とすることなく、薄型でさらに軽量の大画面高精細の拡大光学ディスプレイである表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明に係る表示装置は、実質的に主面に沿って配列されるように複数の光導波路が形成された複数の光導波シートと、前記複数の光導波シートが厚み方向から見て各々の前記光導波路の延在方向が実質的に揃うように該厚み方向に配置されて形成された光導波シート積層体と、前記光導波シート積層体の前記光導波路の延在方向における一方の端面からなり、画像光が入射する入光端面と、各光導波シートが互いに離隔された、前記光導波シート積層体の前記光導波路の延在方向における他方の端面からなり、前記入射した画像光が出射する出光端面と、前記光導波シート積層体の前記出光端面から出射する前記画像光の画像を表示する画像表示部と、を備えている。このような構成とすると、光導波シートを積層することにより表示装置の主要部である光導波シート積層体を製造できるので、大型の光導波路製造装置は不要である。また、表示装置の主要部が薄型で軽量の光導波シートの積層体で構成されているので、薄型でさらに軽量の大画面高精細の拡大光学ディスプレイである表示装置を得ることができる。
【0015】
前記光導波シートの主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成され、前記複数の格子溝は複数の中実領域の少なくとも格子溝の配列方向における範囲を定めるように形成され、前記複数の中実領域が前記複数の導波路の導波部を構成し、前記複数の格子溝が前記複数の導波路の反射部を構成していてもよい。このような構成とすると、光導波シートが空間である格子溝を有するので、この格子溝が存在する分、光導波シートがさらに軽くて薄くなり、その積層体である光導波シート積層体はさらに軽くなる。その結果、さらに薄型で軽量の拡大光学ディスプレイである大画面高精細の表示装置を得ることができる。
【0016】
前記光導波シートの前記複数の格子溝は、前記複数の導波部の、前記格子溝の配列方向における範囲と前記光導波シートの厚み方向における範囲とを定めるように形成されていてもよい。
【0017】
前記光導波シートの前記複数の格子溝は、前記複数の導波部の、前記格子溝の配列方向における範囲のみを定めるように形成されていてもよい。
【0018】
前記光導波シート積層体の前記一方の端部は、隣り合う前記光導波シートの間にスペーサが挟まれるようにして前記複数の光導波シート及び複数の前記スペーサが積層されて形成され、それにより、前記光導波シートが互いに離隔されており、前記スペーサは前記光導波シートの前記導波部に接触していて、前記導波部より小さい屈折率を有していてもよい。このような構成とすると、光導波シートの導波部が格子溝と屈折率の小さいスペーサとに囲まれるので、この導波部に光を閉じ込めてこれを伝搬させることができる。
【0019】
前記複数の格子溝が、前記導波シートの双方の主面に該導波シートの厚み方向から見て重なり合うように形成されていてもよい。このような構成とすると、導波部の光伝搬特性をさらに向上させ、かつ光導波シートをさらに軽量化することができる。
【0020】
前記光導波シート積層体の前記一方の端部は、隣り合う前記光導波シートの間にスペーサが挟まれるようにして前記複数の光導波シート及び複数の前記スペーサが積層されて形成され、それにより、前記光導波シートが互いに離隔されていてもよい。このような構成とすると、スペーサの厚みを適宜選択することにより、隣り合う光導波シートがスペーサによって画素ピッチ間隔で保持されるので、正確な画像の画像光を拡大して出光端面から出射し、これを画像表示部に表示することができる。
【0021】
前記スペーサはシートで構成され、該シートの主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成されていてもよい。このような構成とすると、スペーサを格子溝の分、軽量化することができる。
【0022】
前記複数の格子溝が、前記スペーサを構成する前記シートの双方の主面に該シートの厚み方向から見て重なり合うように形成されていてもよい。このような構成とすると、スペーサをさらに軽量化することができる。
【0023】
前記光導波シートの主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成され、前記複数の格子溝は複数の中実領域の、前記格子溝の配列方向における範囲と前記光導波シートの厚み方向における範囲とを定めるように形成され、前記複数の中実領域が前記複数の導波路の導波部を構成し、前記複数の格子溝が前記複数の導波路の反射部を構成しており、前記スペーサの複数の格子溝が、前記光導波シートの前記複数の格子溝と合わさって複数の格子孔を形成するようにして、前記複数の光導波シートと前記スペーサとが積層されていてもよい。このような構成とすると、格子孔が光導波路の反射部として機能するので、光導波シートの導波部において光をさらに効率よく伝搬させることができる。
【0024】
前記スペーサはプラスチックシートで構成されていてもよい。
【0025】
前記入光端面における各光導波シートの各導波路の相対的位置と前記出光端面における各光導波シートの各導波路の相対的位置とが対応していてもよい。このような構成とすると、入光端面に入射した画像光の画像を正確に拡大した画像の画像光を出光端面から出射することができる。
【0026】
前記光導波シート積層体の前記出光端面は、前記光導波シートの厚み方向から見て前記導波路の光軸に対し傾斜するように形成されていてもよい。このような構成とすると、出光端面が導波路の光軸に対し傾斜する分、画像光をより拡大して出光端面から出射することができる。
【0027】
前記光導波シート積層体の前記一方の端部は、前記複数の光導波シートが集束されて形成されていてもよい。このような構成とすると、入光端面に小さな画像の画像光を入射させて、画像表示部に大きな画像を表示することができる。
【0028】
前記光導波シートはプラスチックシートで構成されていてもよい。
【0029】
前記格子溝の中に前記光導波シートの前記導波部の屈折率より小さい屈折率を有する材料が充填されていてもよい。このような構成とすると、光導波シートの光導波路を好適に伝搬可能な光の波長を調整することができる。
【0030】
表示装置は、前記光導波シート積層体の入光端面に入射させる画像を形成する画像形成部を備えていてもよい。
【0031】
また、本発明に係る光導波シートは、主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成され、前記複数の格子溝は複数の中実領域の少なくとも前記格子溝の配列方向における範囲を定めるように形成され、それにより、各導波部が各前記中実領域で構成されかつ各反射部が前記複数の格子溝で構成された複数の導波路が実質的に主面に沿って配列されている。このような構成とすると、この光導波シートを用いて、大型の光導波路製造装置を必要とすることなく、薄型でさらに軽量の大画面高精細の拡大光学ディスプレイである表示装置を構築することができる。
【0032】
前記複数の格子溝は、前記複数の導波部の、前記格子溝の配列方向における範囲と前記光導波シートの厚み方向における範囲とを定めるように形成されていてもよい。
【0033】
前記複数の格子溝は、前記複数の導波部の、前記格子溝の配列方向における範囲のみを定めるように形成されていてもよい。
【0034】
また、本発明に係る光導波シートの製造方法は、主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成され、前記複数の格子溝は複数の中実領域の少なくとも前記格子溝の配列方向における範囲を定めるように形成され、それにより、各導波部が各前記中実領域で構成されかつ各反射部が前記複数の格子溝で構成された複数の導波路が実質的に主面に沿って配列された光導波シートの製造方法であって、移形加工により前記光導波シートを製造する。ここで、移形加工とは、加工結果物の表面形状と凹凸が逆の表面形状が形成された加工部材を用い、加工材料にこの加工部材の表面形状と凹凸が逆の表面形状を形成する加工をいう。移形加工としては、例えば、ロール成形加工、鋳型加工、プレス加工等が挙げられる。このような構成とすると、光導波シートを簡単に低コストで製造することができる。
【0035】
前記移形加工として、前記光導波シートの断面形状に相当する断面形状の間隙を有するように各々の周面が形成されかつ互いの間隔が調整された一対の成形ローラの間を、一定の厚みを有するシートを通過させ、それにより、通過後のシートからなる前記光導波シートを得てもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明は以上に説明した構成を有し、大型の光導波路製造装置を必要とすることなく、薄型でさらに軽量の大画面高精細の拡大光学ディスプレイである表示装置を提供できるとう効果を奏する。
【0037】
また、光導波シートを簡単に低コストで製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
(実施の形態1)
[構成]
図1は本発明の実施の形態1に係る表示装置の構成を概念的に示す斜視図、図2は図1の表示装置における光導波シート積層体の出光端部を拡大して示す斜視図である。なお、図2では、光導波シートが長手方向に圧縮して描かれている。
【0039】
図1に示すように、表示装置1は、複数の光導波シート3を有している。各光導波シート3は、ここでは一定の幅及び一定の厚みを有する帯状に形成されている。光導波シートには、複数の導波路2が、該光導波シート3の長手方向に沿いかつ該光導波シーとの幅方向に並ぶように形成されている。そして、この複数の光導波シート3が厚み方向に積層されて光導波シート積層体4を形成している。この光導波シート積層体4の一方の端部(以下、出光端部という)6は、各光導波シート3が離隔手段によって互いに離隔するように配置されている。具体的には、この出光端部6においては、隣り合う光導波シート3の間に離隔手段としてのスペーサ10が配設されている。この出光端部6では、複数の光導波シート3と複数のスペーサ10とが平面視において(光導波シート3の厚み方向から見て)重なり合うように整列されて積層され、かつスペーサ10により支持されてこの積層された形状が保持されている。スペーサ10は、一定の厚みを有していて、隣り合う光導波シート3の間に介在して積層された複数の光導波シート3の全体形状を保持できればよく、隣り合う光導波シート3の間に介在する数及び形状は問わない。スペーサ10は、ここでは、光導波シート3の約10倍の厚みを有し、かつ光導波シート積層体4の光出射端部6における光導波シート3の形状と同じ平面形状を有する板状に形成され、隣り合う光導波シート3の間に1枚ずつ挿入されている。そして、出光端部6の端面(以下、出光端面という)6aは平面視において光導波シート3の導波路2の光軸(光導波シートの長手方向)に対し斜めに形成されている。
【0040】
一方、光導波シート積層体4の他端部(以下、入光端部という)5は集束手段61によって集束されている。具体的には、入光端部5においては、複数の光導波シート3が集束手段としての枠状の結束部材61によって側縁(幅方向の端)を揃えて互いに接して積層されるようにして、互いに固定されている。この入光端部5の端面(以下、入光端面という)5aは、平面視において導波路2の光軸に垂直に形成されている。このように、結束部材61によって光導波シート積層体4の入光端部5の形状が保持されることによって、入光端面5aにおける各光導波シート3の各導波路2の相対位置と、出光端面6aにおける各光導波シート3の各導波路2の相対位置とが対応するものとなり、入光端面5aに入射する画像光の画像が、出光端面6aから出射される画像光の画像として正確に再現される。また、入光端部5においては光導波シート関積層体4が集束されかつ入光端面5aが平面視において導波路2に垂直に形成されているのに対し、出光端部6においては光導波シート積層体4が離隔されかつ出光端面6aが平面視において導波路2に斜めに形成されているので、出光端面6aから出射される画像光の画像が、入光端面5aに入射する画像光の画像を拡大したものとなる。
【0041】
また、表示装置1は、光導波シート積層体4の入光端部5に入射させる画像光の画像を形成する画像形成部7と、光導波シート積層体4の出光端面6aから出射された画像光の画像を表示する表示部8とを有している。画像形成部7は、画像装置部9及び画像形成光学系(図示せず)などにより構成されている。画像装置部9はカラー画像又は白黒画像表示が可能であり、具体的には、液晶ディスプレイ、ディジタルマイクロミラー装置、ベクトルスキャナー、ラスタースキャナー、FED、CRT、PDPなどで構成されている。画像形成光学系(図示省略)は、画像装置部9と光導波シート積層体4の入光端部5とを効率よく光結合するようにこれらの間に配設されている。具体的には、レンズ、ミラー、導光体などで構成され、画像装置部9からの画像光を縮小、拡大、集束、あるいは光伝搬して入光端部5に入射させる。これにより、画像装置部9で表示(形成)された画像の画像光が画像形成光学系を介して入光端部5に入射する。
【0042】
表示部8は、光導波シート積層体4の出光端面6aに配設され、出光端面6aから出射された光を広角度で拡散させる光拡散板8aを備えている。これにより、出光端面6aから出射された画像光が光拡散板8aで拡散され、それにより、光拡散板8aにこの画像光の画像が表示される。
【0043】
次に、光導波シート積層体4の構造について詳しく説明する。
【0044】
以下では、表示装置1が、例えば、100インチ(約1200mm×約2200mm)の大画面を有するハイビジョン規格の大画面高精細表示装置である場合について説明する。ハイビジョン高精細表示装置は9:16の画面有効比を有し、かつ1080×1920の総画素数(縦画素数が1080、横画素数が1920)を有している。
【0045】
図2に示すように、光導波シート積層体4においては、出光端面6aに露出する各光導波シート3の導波路2が画面の各画素を構成している。従って、光導波シート3が、その幅方向に配列された、横画素数Hに対応する1920本の光導波路2有し、かつこの光導波シート3が縦画素数Vに対応するように1080枚積層されている。そして、光導波シート積層体4の出光端部6では、隣り合う光導波シート3の間に厚さDが約1mmのプラスチックシートからなるスペーサ10が挟まれている。このスペーサ10により、出光端面6aにおける縦方向の画素ピッチが規定されている。これにより、出光端面6aが、画素が縦方向に正確に配置されたものとなり、入光端面5a(図1参照)に入射した画像光を正確に出射して表示部8にその正確な画像を拡大表示させることができる。なお、光導波シート積層体4の出光端面6aに露出するスペーサ10の端面の一部は黒色材料を含んで形成されることが好ましい。そのように構成すると、ブラックストライプを有する高コントラストの表示装置を形成することができる。
【0046】
一方、出光端面6aにおける横方向の画素ピッチは各光導波シート3の導波路2の配列ピッチによって定められている。
【0047】
次に、光導波シート3の構造を詳細に説明する。
【0048】
図3は光導波シートの構成を示す図であって、図2のIII-III線断面を示す斜視断面図である。
【0049】
図3に示すように、光導波シート3はフォトニック結晶構造ファイバの基本構造を有している。
【0050】
フォトニック結晶構造ファイバは、光を伝搬させるコア部を囲むクラッド部に同一径の格子孔を規則的に複数本平行に設けることにより、格子孔を設けていないコア部に所定波長の光を伝搬させることができる光ファイバとして知られている。
【0051】
光導波シート3の導波路2は導波部31と反射部32とで構成されている。そして、複数の導波路2が反射部32において接続されるようにして幅方向に配列されて光導波シート3が形成されている。
【0052】
反射部32は、同一形状でかつ規則的に配列された複数の第1の格子溝33aと同一形状でかつ規則的に配列された複数の第2の格子溝34aとで構成されている。ここで、格子溝とは、ある平面内に一定のピッチで互いに平行に延びる複数の溝をいう。
【0053】
光導波シート3は一定の厚みtを有している。この光導波シート3の幅方向に一定の間隔を置いて光導波シート3の長手方向に延びるように4本の第1の格子溝33a(以下、第1の格子溝セット33という)が形成されている。この第1の格子溝セット33では、第1の格子溝33aが光導波シート3の双方の主面(上面及び下面)にそれぞれ一対ずつ形成されている。一方の主面に形成された一対の第1の格子溝33aと、他方の主面に形成された一対の第1の格子溝33aとは、双方の対間で各々の第1の格子溝33aが平面視において重なり合いかつ双方の対が互いに近接するように形成されている。第1の格子溝33aは、U字状の断面形状を有し、底部が直径dの半円形に形成され、かつ深さD1に形成されている。従って第1の格子溝33aの幅はdである。同じ主面に形成された一対の第1の格子溝33aのピッチはΛ(ラムダ)である。
【0054】
そして、光導波シート3の第1の格子溝セット33の間の部分に4本の第2の格子溝34a(以下第2の格子溝セット34という)が該光導波シート3の長手方向に延びるように形成されている。この第2の格子溝セット34では、第2の格子溝34aが光導波シート3の双方の主面にそれぞれ一対ずつ形成されている。一方の主面に形成された一対の第2の格子溝34aと、他方の主面に形成された一対の第2の格子溝34aとは、双方の対間で各々の第2の格子溝34aが平面視において重なり合いかつ双方の対が互いに離隔するように形成されている。第2の格子溝34aは、直径dの半円状の断面形状を有している。従って第2の格子溝34aの幅はdであり、その深さはD2=d/2である。同じ主面に形成された一対の第2の格子溝34aのピッチはΛである。つまり、第2の格子溝34aは、第1の格子溝33aとは深さが異なるだけである。格子溝33a,34aは導波部31に入射した光を反射して導波部31を伝搬させるという機能を有するが、この光を反射するという機能上はその幅dが重要であり、その深さD1、D2は重要ではない。ここでは光導波シート3の構造を説明する便宜上、第1の格子溝33aと第2の格子溝34aとを区別したが、機能上、これらは同じ格子溝である。また、第1及び第2の格子溝33a,34aは空である(何も充填されていない)。
【0055】
そして、2つの第1の格子溝セット33とその間に位置する1つの第2の格子溝セット34の2対の第2の格子溝34aとに囲まれるようにして中実領域(中身の詰まった領域:二点鎖線で囲まれた領域)が形成されている。この中実領域は、換言すれば、2つの第1の格子溝セット33によって光導波シート3の幅方向における範囲が定められ、第2の格子溝セット34の2対の第2の格子溝34aによって光導波シート3の厚み方向における範囲が定められている。この中実領域が導波部31を構成している。導波部31のピッチはPである。
【0056】
従って、このように構成された光導波シート3では、導波路2がフォトニック結晶構造ファイバに相当し、導波部31がフォトニック結晶構造ファイバのコア部に相当し、反射部32がフォトニック結晶構造ファイバのクラッド部に相当する。
【0057】
本実施の形態は、上述のように、このフォトニック結晶構造ファイバのクラッド部に形成される格子孔の幅(直径)をd、ピッチ(格子間隔)をΛとしたとき、これらで決まる零分散波長(λ)とd及びΛとの関係が、Λ/λ=3、d/Λ=0.63となる場合を例示している。
【0058】
光導波シート3をさらに詳しく説明する。
【0059】
図3において、本実施の形態では、光導波シート3は光学プラスチックファイバ材料から成り、t=約10μmの厚さを有している。光学プラスチックファイバ材料としては、非結晶性の含フッ素重合体材料や後述する材料を使用することができる。第1及び第2の格子溝33a,34aは、共に、d=1.1μmの幅及びΛ=1.65μmのピッチを有している。これにより、フォトニック結晶構造ファイバと同様に、可視光の緑〜赤色の0.55〜0.68μmの波長の光を伝搬させることができる。また、同様に、第1及び第2の格子溝33a,34aの幅d及びピッチΛの値を変えることによって、青色以上の波長の光である0.43〜0.55μmの光を伝搬させるようにすることもできる。
このように、光導波シート3は、フォトニック結晶構造ファイバの構造を有する複数の光導波路2がその幅方向に連結されてシート状に一体的に配列されるようにして形成されている。光導波シート3には、ここでは、光導波路2(正確には導波部31)がP=約10μmのピッチで横画素数1920に相当する1920本形成されている。なお、光導波路2は1つのシートに形成されることが望ましいが、製法に応じて光導波路2を個別の小シートに形成しても構わない。
【0060】
この光導波シート3を積層してなる光導波シート積層体4は、従来の光ファイバ束よりさらに軽量でしなやかである。光導波シート積層体4は、入光端部5及び出光端部6にそれぞれ位置する光導波路2間の相対的位置関係が均等になるように、各光導波路2の導波部31及び反射部32の第1及び第2の格子溝33a,34aは、入光端部5と出光端部6との間で位置合わせされる。これにより、入光端部5における各光導波シート3の各光導波路2と光出射端部6における各光導波シート3の各光導波路2との縦方向及び横方向における位置が相互に対応するように配置されるので、光導波シート積層体4の入光端部5に画像光を入射させ、光出射端部6から画像光を出射して、画像表示部8において正確な画像を拡大表示することができる。
[製造方法]
次に、以上のように構成された表示装置1の製造方法を説明する。
【0061】
図4は、図1の表示装置の光導波シート3の製造方法を示す図であって、図4(a)は斜視図、図4(b)は図4(a)のIVB-IVB断面を示す断面図である。
【0062】
光導波シート3を製造するために、ロール成形機が用いられる。図4(a)に示すように、このロール成形機は加熱可能でかつ平行に配置された一対の成形ローラ51を有し、図示されない駆動手段によってこの一対の成形ローラ51が互いに反対方向に回転させられる。図4(b)に示すように、一対の成形ローラ51は、その間隙が図3に示す光導波シート3の断面形状に対応する断面形状を有するように、その周面5252が形成されかつその間隔が調整されている。具体的には、各成形ローラ51の円筒状の周面には、光導波シート3の第1の格子溝33aに対応する逆U字状の断面形状を有する一対の第1の凸部52aが間隔を置いて形成されている。第1の凸部52aは、成形ローラ51の周方向に環状に形成されている。この一対の第1の凸部52aの間に、光導波シート3の第2の格子溝34aに対応する半円状の断面形状を有する一対の第2の凸部52bが形成されている。第2の凸部52bは、成形ローラ51の周方向に環状に形成されている。第2の凸部52bは、第1の凸部52aより低く形成されている。
【0063】
そして、図4(a)に示すように、厚さtが約10μmの光学プラスチック材料からなるシート30を用意し、この一対の成形ローラ51をシート30のガラス転移温度付近に加熱するとともに加圧しながら互いに反対方向に回転させる。次いで、この一対の成形ローラ51の間にシート30を一定の速度で送り込み、該一対のローラ51の反対側から引き出しながら冷却する。すると、図4(b)に示すように、送り込まれたシート30が、一対の成形ローラ51の間隙に対応する断面を有するように加熱変形されて引き出され、この引き出されたシートからなる光学シート3が得られる。
【0064】
その後、図1及び図2に示すように、光導波シート3とプラスチックシートからなるスペーサ10とを交互に所定枚数積層して光導波シート積層体4を形成する。
【0065】
次いで、光導波シート積層体4の一方の端部を集束して結束部材61で結束し、この一方の端部を、平面視において光導波シート3の長手方向に対し垂直に切断して入光端面5aを形成する。また、光導波シート積層体4の他方の端を、平面視において光導波シート3の長手方向に対し斜めに切断して出光端面6aを形成する。これにより、光導波シート積層体4において、前記一方の端部が入光端部5を構成し、前記他方の端部が出光端部6を構成する。
【0066】
次いで、画像形成部7を所定の位置に配設する。
【0067】
シート30を形成する光学プラスチックファイバ材料としては、実質的にC−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体の他、伝搬光に対して透明な重合体を用いることができる。
【0068】
この伝搬光に対して透明な重合体として、以下のモノマーを以下の重合開始剤などを用いて重合させて得られる重合体を用いることができる。
【0069】
すなわち、モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(以下、「3FMA」という)、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸1,1−ジハイドロパーフルオロプロピル、メタクリル酸1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロブチル、メタクリル酸2−パーフルオロオクチルエチル、メタクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル、2−フルオロアクリル酸メチル、2−フルオロアクリル酸テトラフルオロプロピル、2−フルオロアクリル酸2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル、2−フルオロアクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル、2−フルオロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、2−フルオロアクリル酸1,1−ジハイドロパーフルオロプロピル、2−フルオロアクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、2−フルオロアクリル酸ノナフルオロt−ブチル、スチレン、置換スチレン又はこれらの混合物などが用いられる。
【0070】
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、アゾビスイソブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどを用いることができ、また、連鎖移動剤としては、例えばn−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン等のメルカプタン系の連鎖移動剤が用いられる。
【0071】
これらにより上記モノマーが重合されて上述の重合体が得られる。
[動作]
次に、以上のように構成された表示装置1の動作を説明する。
【0072】
図1において、画像装置部9の画像形成部7が所要の画像を形成すると、この画像の画像光が図示されない画像形成光学系を介して光導波シート積層体4の入光端部5の入光端面5aに入射する。この入光端面5aに入射した画像光は、各光導波シート3の各光導波路2を伝搬して、出光端部6の出光端面6aから出射される。この際、入光端面5aのサイズに対する出光端面6aのサイズの倍率に応じて前記入射した画像光の画像が拡大され、出光端面6aからこの拡大された画像の画像光が出射される。そして、この画像光が光拡散板8aで拡散されて、光拡散板8aに上述の拡大された画像が表示される。
【0073】
次に、本実施の形態の実施例を説明する。
【実施例1】
【0074】
図3に示すように、PMMA(ポリメチルメタクリレート)からなる厚さ約10μmのプラスチックシートの両面にピッチΛが1.65μmで幅dが1.1μmの第1の格子溝33a及び第2の格子溝34aを設けて光導波シート3を形成した。光導波シート3には、フォトニック結晶構造ファイバに相当する光導波路2が形成され、波長0.55〜0.68μmの光が伝搬したことが確認された。
【0075】
この光導波シート3は、図1乃至図3に示すように、光導波路2を約10μmのピッチPで横画素数に相当する1920本有するように形成した。そして、この光導波シート3を、厚さ約1mmのスペーサ10を間に挟んで縦画素数に相当する1080枚積層し、それにより、光導波シート積層体4を形成した。そして、光導波シート積層体4の一方の端部を集束し、導波路2の光軸(導波部31の光軸)に対して垂直に切断して入光端面5a及び入光端部5を形成した。また、光導波シート積層体4の他端を導波路2の光軸に対して斜めに切断して出光端面6a及び出光端部6を形成した。このようにして、縦横が約1200mm×約2200mmの画像表示部8を有する大画面高精細の表示装置を製造した。
【0076】
そして、画像形成部7から画像光を入光端面5aに入射したところ、この画像光が、光導波シート積層体4の各光導波路2の各導波部31を伝搬し、出光端面6aから出射され、画像表示部8で拡大表示された。
【実施例2】
【0077】
図4(a)において、成形ローラ51の周面に、第1の凸部52a及び第2の凸部52bを、共に、1.1μmの幅及び1.65μmのピッチを有するように形成した。そして、ガラス転移温度Tgが105℃のPMMA(ポリメチルメタクリレート)からなる厚さ約10μmのシート30を、所定の間隙を有するよう調整した一対の成形ローラ51の間に送り込んだ。成形ローラ51の加熱温度は約105℃とした。その結果、冷却しながら引き出したシート30の両面には、幅dが1.1μm、ピッチΛが1.65μmの第1の格子溝33a及び第2の格子溝34aが、図3に示すような態様で形成されており、このようにして光導波シート3を得た。なお、この光導波シート3では、光導波路2がピッチ約10μmで形成されていた。そして、このようにして得た光導波シート3を実施例1と同様に用いて表示装置を作製したところ、実施例1と同様の効果が得られた。
[効果]
実施例1において作製された100インチの大画面ハイビジョン高精細の表示装置は、その奥行が約100mmでかつ重量が約15kgであった。一方、比較のために作製した、光ファイバ束を使用した100インチ画面の従来の表示装置は、奥行きが約600mmでかつ重量が約600kgであった。このことから、本実施の形態によって、薄型で軽量の拡大光学ディスプレイからなる表示装置が得られたことが明らかである。
【0078】
このように、本実施の形態の表示装置においては、表示装置を構成する光導波シート3が、光伝搬させる導波部31を囲む反射部32に格子溝33a,34aが規則的に複数本形成されたフォトニック結晶構造ファイバの構造を有する光導波路2が複数シート状に配列されるようにして形成されているので、画像光を入光面から出光面まで伝搬する媒体である光導波シート3が軽くて薄くなり、少なくともその積層体である光導波シート積層体4はさらに軽くなるので、薄型で軽量の拡大光学ディスプレイである大画面高精細の表示装置を得ることができる。
【0079】
また、本実施の形態の光導波シートの製造方法によれば、光導波シート3の断面形状に対応する周面形状及び相互の間隙を有する一対の成形ローラに、一定の厚みを有するシートを通すことにより、光導波シート3を形成するので、光導波シート3及び光導波シート積層体4を安価に製造することができる。その結果、薄型で軽量の大画面高精細の拡大光学ディスプレイである表示装置1を低コストで製造することができる。
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2に係る表示装置の構成を概念的に示す斜視図である。図5において、図1と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0080】
図5に示すように、本実施の形態では、光導波シート積層体4の入光端部5が集束されずに結束部材61によって結束されている。すなわち、入光端部5においても、隣り合う光導波シート3の間にスペーサ10を挟むようにして、複数の光導波シート3と複数のスペーサ10とが積層されている。入光端面5aは、実施の形態1と同様に、平面視において光導波シート3の導波路2(図2参照)の光軸に垂直に形成されている。また、入光端面5aに対向するように光反射板410が配置され、画像形成部7からその断面積が拡張する(拡大する)ビームの画像光が出射され、この画像光が光反射板410で反射されて入光端面5aに入射するように、図示されない画像形成光学系が構成されている。
【0081】
このように構成された表示装置1では、画像形成部7から光反射板410を介して入光端面5aに向けて画像光が投射され、入光端面5aに入射した画像光が、光導波シート積層体4の各光導波シート3の各光導波路2の中を伝搬して出光端面6aから出射される。
【0082】
従って、この表示装置1では、光導波シート積層体4の集束されない入光端面5aに画像光を拡大して入射させ、光導波路2の光軸に傾斜して入光端面5aより広い面積を有する出光端面6aから画像光をさらに拡大して出射するので、画像光を効率よく拡大できる薄型で軽量の表示装置を得ることができる。
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3に係る表示装置の光導波シート積層体の構成を概念的に示す部分拡大断面図である。図6において、図3と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0083】
本実施の形態は、以下の点が実施の形態2と相違し、その他の点は実施の形態2と同様である。
【0084】
すなわち、本実施の形態では、光導波シート積層体4において、光導波シート3が導波路2の反射部32として第1の格子溝33aのみを有していて、図3の第2の格子溝34aを有していない。従って、導波路2の導波部31を構成する中実領域(二点鎖線で囲われた領域)は、光導波シート3の幅方向における範囲のみが第1の格子溝セット33で定められ、光導波シート3の厚み方向における範囲は格子溝ではなく光導波シート3の双方の主面で定められている。しかし、スペーサ10が光導波シート3の双方の主面に接していて、ひいては導波部31に接しており、しかもこのスペーサ10がこの導波部31より小さい屈折率を有している。従って、導波部31は、第1の格子溝セット33と該導波部31より小さい屈折率を有するスペーサ10とに囲まれているので、効率よく光を閉じ込めてこれを伝搬させることができる。
【0085】
具体的には、光導波シート3は、光学プラスチックファイバ材料から成り、t=約10μmの厚さを有している。光導波シート3には、光導波路2が約10μmのピッチPで少なくとも横画素数1920に相当する1920本形成されている。スペーサ10は約1mmのプラスチックシートで構成され、具体的には、例えば旭硝子(株)の商品名サイトップやdupont社の商品名テフロン(登録商標)AFといった非晶質フッ素樹脂材料からなるフィルムなどで構成されている。これにより、スペーサ10の屈折率が光導波シート3の導波部31の屈折率より小さくなる。
【0086】
このような構成としても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、光導波シート3では、導波部31の、光導波シート3の厚み方向において格子溝が形成されていないので、光導波シート3の構造を簡素化することができる。
【0087】
なお、上記では、スペーサ10全体が、光導波シート3の導波部31より小さい屈折率を有する材料で構成されているが、スペーサ10を、例えば、厚さ約1mmのプラスチックシートと、このプラスチックシートの両面に貼られた、光導波シート3の導波部31より小さい屈折率を有する厚さ約10μmのプラスチックフィルムとで構成してもよい。
(実施の形態4)
図7は本発明の実施の形態4に係る表示装置の光導波シート積層体の構成を概念的に示す図であって、図7(a)はスペーサの構成を示す部分拡大断面図、図7(b)は光導波シートの両側にスペーサが積層された状態を示す部分拡大断面図である。図7において図3と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0088】
図7(a)において、本実施の形態では、光導波シート積層体4において、格子溝35が形成されたスペーサ10が用いられている。その他の点は、実施の形態1と同様である。
【0089】
具体的には、光導波シート3は、実施の形態1と同じものが用いられている。そして、スペーサ10は厚みt’の光学プラスチックファイバ材料からなるプラスチックシートで構成され、その両面に格子溝35が形成されている。一方の主面に形成された格子溝35の群と、他方の主面に形成された格子溝35の群とは、双方の群間で各々の格子溝が平面視において重なり合いかつ双方の群が互いに近接するように形成されている。
【0090】
格子溝35は、光導波シート3の第1の格子溝33a及び第2の格子溝34aと同じ幅及びピッチを有し、かつ同様の形状を有するように形成されている。すなわち、格子溝35は、U字状の断面形状を有し、底部が直径dの半円形に形成され、かつ所定の深さに形成されている。従って格子溝35の幅はdであり、また、ピッチはΛである。
【0091】
図7(b)に示すように、このスペーサ10が、その格子溝35が光導波シート3の第1の格子溝33a及び第2の格子溝34aと平面視において重なり合うようにして、光導波シート3に重ねられている。これにより、光導波シート3の第1の格子溝33a及び第2の格子溝34aとスペーサ10の格子溝35とが合わさって(合体して)格子孔35を形成している。
【0092】
次に、スペーサ10の製造方法を説明する。
【0093】
スペーサ10を製造するには、図4(a)に示すロール成形機が用いられる。そして、光導波シート3と同様にしてスペーサ10が製造される。
【0094】
すなわち、一対の成形ローラ51は、その間隙が図7(a)に示すスペーサ10の断面形状に対応する断面形状を有するように、その周面5252が形成されかつその間隔が調整されている。具体的には、各成形ローラ51の円筒状の周面52には、スペーサ10の格子溝35に対応する逆U字状の断面形状を有する凸部がピッチP(ここではΛ)で所定の本数形成されている。この凸部は、成形ローラ51の周方向に環状に形成されていて、幅dを有している。
【0095】
そして、一定厚の光学プラスチック材料からなるシートを用意し、この一対の成形ローラ51をこのシートのガラス転移温度付近に加熱するとともに加圧しながら互いに反対方向に回転させ、この一対の成形ローラ51の間にこのシートを一定の速度で送り込み、該一対のローラ51の反対側から引き出しながら冷却する。これにより、図7(a)に示すスペーサ10が得られる。
【0096】
以上のように構成された表示装置においては、光導波シート積層体4の格子孔35が、ファトニック結晶構造ファイバの構造を有する導波路2の導波部31の反射部32として、導波部31の光伝搬特性をさらに向上させる。
【0097】
また、スペーサ10に格子溝35が形成されているので、光導波シート積層体4を、薄くさらにしなやかにかつ軽量化することができる。その結果、この光導波シート積層体4を用いた表示装置を、薄型でさらに軽量な表示装置とすることができる。
【0098】
なお、上記では、格子溝35が形成されたスペーサ10を光導波シート3の間に1枚挟んだが、スペーサ10を2枚以上挟んでもよい。
【0099】
なお、実施の形態1乃至4において、格子溝の幅、ピッチを変えることにより、フォトニック結晶構造ファイバの構造を変え、光導波路2やスペーサ10としての光学特性を変えることができる。
【0100】
また、実施の形態1乃至4では、格子溝を同一幅かつ同一ピッチで形成したが、各光導波シートにおいて、色画素単位毎に格子溝の幅及びピッチを部分的に変えることにより、各色画素に対応する導波路2をその伝搬させる光の波長に最適になるように設計することが可能である。
【0101】
また、実施の形態1乃至4において、光導波シート3又はスペーサ10の格子溝の中は空であったが、この格子溝の中に導波部31の屈折率より小さい屈折率を有する光学材料が充填されていてもよい。このような導波部31の屈折率より小さい屈折率を有する光学材料として、例えば旭硝子(株)の商品名サイトップやdupont社の商品名テフロン(登録商標)AFといった非晶質フッ素樹脂材料を使用することができる。このような構成とすることにより、光導波シート3は、反射部32に導波部31の屈折率より小さい屈折率を有する光学材料が充填された格子溝が形成されたフォトニック結晶構造ファイバの構造を有する光導波路2が配列されたものとなるので、伝搬させる光波長を調整することができる。
【0102】
また、実施の形態1の表示装置の製造方法において、光導波シート3の第1及び第2の格子溝33a,34aの中に導波部31の屈折率より小さい屈折率を有する光学材料を充填する工程を含んでいてもよい。
【0103】
また、実施の形態1乃至4において、ハイビジョン大画面高精細の表示装置として、光導波シート3の枚数、光導波路2の本数、そのピッチ、スペーサ10厚さなどの数値を挙げたが、これらは例示であり、他の画面を有する表示装置において上記数値を適宜変えてもよいことは言うまでもない。
【0104】
また、実施の形態1乃至4において、光導波シート3に形成される格子溝の幅、ピッチなどの値は、伝搬波長を決める為の設計事項であり、所望の値で設計することができる。例えば、これらを、カラー画像が形成できる赤色、緑色、及び青色の三色の光を伝搬させる各値で変えて設計することができる。
【0105】
また、実施の形態2の光導波シート3を製造するには、図4(a)のロール成形機において、一対の成形ローラ51の間隙が図6に示す光導波シート3の断面形状に対応する断面形状となるように、一対の成形ローラ51の周面形状を形成しかつその間隙を調整すればよい。同様に、一対の成形ローラ51の周面形状を形成しかつその間隙を調整することにより、任意の断面形状の光導波シート3又はスペーサ10を製造することができる。
【0106】
また、実施の形態1及び4では、光導波シート3又はスペーサ10をロール成形加工により製造したが、これを他の移形加工、例えば、鋳型加工、プレス加工等で製造してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の表示装置は、従来よりもさらに薄型で軽量の拡大光学ディスプレイである表示装置として有用である。例えば、PDPや液晶ディスプレイでは実現が困難な100インチを超えるような大画面高精細で薄型で軽量の表示装置を製造し使用するAV機器産業、映像機器産業、大画面広告宣伝機器産業その他の産業分野に利用することができ、その産業上の利用可能性は非常に広く且つ大きい。
【0108】
また、本発明の光導波シートは、薄型で軽量の拡大光学ディスプレイである表示装置等に用いられる光導波部材として有用である。
【0109】
また、本発明の光導波シートの製造方法は、薄型で軽量の拡大光学ディスプレイである表示装置等に用いられる光導波シートの製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態1に係る表示装置の構成を概念的に示す斜視図である。
【図2】図1の表示装置における光導波シート積層体の出光端部を拡大して示す斜視図である。
【図3】光導波シートの構成を示す図であって、図2のIII-III線断面を示す斜視断面図である。
【図4】図1の表示装置の光導波シート3の製造方法を示す図であって、図4(a)は斜視図、図4(b)は図4(a)のIVB-IVB断面を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る表示装置の構成を概念的に示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る表示装置の光導波シート積層体の構成を概念的に示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る表示装置の光導波シート積層体の構成を概念的に示す図であって、図7(a)はスペーサの構成を示す部分拡大断面図、図7(b)は光導波シートの両側にスペーサが積層された状態を示す部分拡大断面図である。
【図8】従来の表示装置における光ファイバの集束装置の構成を示す斜視概念図である。
【図9】従来の表示装置における光導波路部を示す平面概念図である。
【符号の説明】
【0111】
1 表示装置
2 光導波路
3 光導波シート
4 光導波シート積層体
5 入光端部
5a 入光端面
6 出光端部
6a 出光端面
7 画像形成部
8 画像表示部
8a 拡散板
9 画像装置部
10 スペーサ
30 シート
31 導波部
32 反射部
33 第1の格子溝セット
33a 第1の格子溝
34 第2の格子溝セット
34a 第2の格子溝
43 格子孔
51 成形ローラ
52 周面
52a 第1の凸部
52b 第2の凸部
61 結束部材
410 光反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に主面に沿って配列されるように複数の光導波路が形成された複数の光導波シートと、前記複数の光導波シートが厚み方向から見て各々の前記光導波路の延在方向が実質的に揃うように該厚み方向に配置されて形成された光導波シート積層体と、
前記光導波シート積層体の前記光導波路の延在方向における一方の端面からなり、画像光が入射する入光端面と、
各光導波シートが互いに離隔された、前記光導波シート積層体の前記光導波路の延在方向における他方の端面からなり、前記入射した画像光が出射する出光端面と、
前記光導波シート積層体の前記出光端面から出射する前記画像光の画像を表示する画像表示部と、を備えた表示装置。
【請求項2】
前記光導波シートの主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成され、前記複数の格子溝は複数の中実領域の少なくとも格子溝の配列方向における範囲を定めるように形成され、前記複数の中実領域が前記複数の導波路の導波部を構成し、前記複数の格子溝が前記複数の導波路の反射部を構成している、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記光導波シートの前記複数の格子溝は、前記複数の導波部の、前記格子溝の配列方向における範囲と前記光導波シートの厚み方向における範囲とを定めるように形成されている、請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記光導波シートの前記複数の格子溝は、前記複数の導波部の、前記格子溝の配列方向における範囲のみを定めるように形成されている、請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記光導波シート積層体の前記一方の端部は、隣り合う前記光導波シートの間にスペーサが挟まれるようにして前記複数の光導波シート及び複数の前記スペーサが積層されて形成され、それにより、前記光導波シートが互いに離隔されており、
前記スペーサは前記光導波シートの前記導波部に接触していて、前記導波部より小さい屈折率を有している、請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の格子溝が、前記導波シートの双方の主面に該導波シートの厚み方向から見て重なり合うように形成されている、請求項2記載の表示装置。
【請求項7】
前記光導波シート積層体の前記一方の端部は、隣り合う前記光導波シートの間にスペーサが挟まれるようにして前記複数の光導波シート及び複数の前記スペーサが積層されて形成され、それにより、前記光導波シートが互いに離隔されている、請求項1記載の表示装置。
【請求項8】
前記スペーサはシートで構成され、該シートの主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成されている、請求項7記載の表示装置。
【請求項9】
前記複数の格子溝が、前記スペーサを構成する前記シートの双方の主面に該シートの厚み方向から見て重なり合うように形成されている、請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
前記光導波シートの主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成され、前記複数の格子溝は複数の中実領域の、前記格子溝の配列方向における範囲と前記光導波シートの厚み方向における範囲とを定めるように形成され、前記複数の中実領域が前記複数の導波路の導波部を構成し、前記複数の格子溝が前記複数の導波路の反射部を構成しており、
前記スペーサの複数の格子溝が、前記光導波シートの前記複数の格子溝と合わさって複数の格子孔を形成するようにして、前記複数の光導波シートと前記スペーサとが積層されている、請求項8記載の表示装置。
【請求項11】
前記スペーサはプラスチックシートで構成されている、請求項5記載の表示装置。
【請求項12】
前記入光端面における各光導波シートの各導波路の相対的位置と前記出光端面における各光導波シートの各導波路の相対的位置とが対応している、請求項1記載の表示装置。
【請求項13】
前記光導波シート積層体の前記出光端面は、前記光導波シートの厚み方向から見て前記導波路の光軸に対し傾斜するように形成されている、請求項1記載の表示装置。
【請求項14】
前記光導波シート積層体の前記一方の端部は、前記複数の光導波シートが集束されて形成されている、請求項1記載の表示装置。
【請求項15】
前記光導波シートはプラスチックシートで構成されている、請求項1記載の表示装置。
【請求項16】
前記格子溝の中に前記光導波シートの前記導波部の屈折率より小さい屈折率を有する材料が充填されている、請求項1記載の表示装置。
【請求項17】
前記光導波シート積層体の入光端面に入射させる画像を形成する画像形成部を備えた、請求項1記載の表示装置。
【請求項18】
主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成され、前記複数の格子溝は複数の中実領域の少なくとも前記格子溝の配列方向における範囲を定めるように形成され、それにより、各導波部が各前記中実領域で構成されかつ各反射部が前記複数の格子溝で構成された複数の導波路が実質的に主面に沿って配列されている、光導波シート。
【請求項19】
前記複数の格子溝は、前記複数の導波部の、前記格子溝の配列方向における範囲と前記光導波シートの厚み方向における範囲とを定めるように形成されている、請求項18記載の光導波シート。
【請求項20】
前記複数の格子溝は、前記複数の導波部の、前記格子溝の配列方向における範囲のみを定めるように形成されている、請求項18記載の光導波シート。
【請求項21】
主面に規則的に配列されるように同一幅の複数の格子溝が形成され、前記複数の格子溝は複数の中実領域の少なくとも前記格子溝の配列方向における範囲を定めるように形成され、それにより、各導波部が各前記中実領域で構成されかつ各反射部が前記複数の格子溝で構成された複数の導波路が実質的に主面に沿って配列された光導波シートの製造方法であって、
移形加工により前記光導波シートを製造する、光導波シートの製造方法。
【請求項22】
前記移形加工として、前記光導波シートの断面形状に相当する断面形状の間隙を有するように各々の周面が形成されかつ互いの間隔が調整された一対の成形ローラの間を、一定の厚みを有するシートを通過させ、それにより、通過後のシートからなる前記光導波シートを得る、請求項21記載の光導波シートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−138955(P2006−138955A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326982(P2004−326982)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】