説明

表示装置、表示装置の制御方法およびプログラム

【課題】ユーザーが意図した一連の整った円弧(または真円)を表示することができる。
【解決手段】コンパスツール3dの描画支点および描画動点の位置情報を検出するツール情報検出部32と、各位置情報に基づき描画操作を検出する描画操作検出部34と、描画操作に基づきコンパス描画線64を表示する描画線表示部33、34と、一連の描画操作における描画支点の位置ズレ量ΔCを検出する位置ズレ検出部34とを備え、描画線表示部33、34は、位置ズレ量ΔCが、0より大きく且つ第1の所定ズレ量ΔA(ΔA>0)未満である場合、位置ズレ量ΔCに基づき、位置ズレ前のコンパス描画線64および位置ズレ後のコンパス描画線64のいずれか一方を、他方のコンパス描画線64の描画支点に合わせて補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールの操作に伴って描画線を表示する表示装置、表示装置の制御方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の表示装置として、ボード部と、ボード部に配置して使用される黒板ツールと、黒板ツールから発せされる信号を受信するセンサー部と、センサー部が受信した信号を元に、黒板ツールの位置情報を検出するツール制御部と、検出した位置情報に基づいてボード部に仮想線を投写表示する投写表示部と、を備えた電子黒板が知られている(特許文献1参照)。黒板ツールは、仮想円を描画するためのコンパスツールを含んでおり、投写表示部は、コンパスツールの各脚の先端である中心点指定部(描画支点)および円描画部(描画動点)の位置情報に基づき、円描画部の軌跡に従って、中心点指定部の配置位置を中心とする仮想円を投写表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−284797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構成においては、コンパスツールを用いて円弧を描画する際、描画中に描画支点がズレてしまう場合がある。すなわち、一般的なコンパスでは、描画面が水平面である上、針で固定するので、描画中に描画支点がズレてしまうことがないが、電子黒板では、描画面が鉛直面である上、針で固定することができないので、重力の影響で、描画中に描画支点がズレてしまう場合がある。描画中に描画支点がズレてしまうと、位置ズレ前の線と位置ズレ後の線とが不連続になり円弧が歪んでしまう。よって、ユーザーが意図した一連の整った円弧(または真円)を表示することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、ユーザーが意図した一連の整った円弧(または真円)を表示することができる表示装置、表示装置の制御方法およびプログラムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置は、描画支点および描画動点を有するコンパスツールの操作に伴って描画線を表示する表示装置であって、描画支点および描画動点の位置情報を検出する位置情報検出部と、各位置情報に基づいて、描画支点を中心に描画動点を円運動させる操作である描画操作を検出する描画操作検出部と、検出した描画操作に基づいて、描画動点の円運動軌跡である描画線を表示する描画線表示部と、検出した一連の描画操作における描画支点の位置ズレ量ΔCを検出する位置ズレ検出部と、を備え、描画線表示部は、検出した位置ズレ量ΔCが、0より大きく且つ第1の所定ズレ量ΔA(ΔA>0)未満である場合、当該位置ズレ量ΔCに基づき、位置ズレ前の描画線および位置ズレ後の描画線のいずれか一方を、他方の描画線の描画支点に合わせて補正することを特徴とする。
【0007】
本発明の表示装置の制御方法は、描画支点および描画動点を有するコンパスツールの操作に伴って描画線を表示する表示装置の制御方法であって、表示装置が、描画支点および描画動点の位置情報を検出する位置情報検出ステップと、各位置情報に基づいて、描画支点を中心に描画動点を円運動させる操作である描画操作を検出する描画操作検出ステップと、検出した描画操作に基づいて、描画動点の円運動軌跡である描画線を表示する描画線表示ステップと、検出した一連の描画操作における描画支点の位置ズレ量ΔCを検出する位置ズレ検出ステップと、を備え、描画線表示ステップでは、検出した位置ズレ量ΔCが、0より大きく且つ第1の所定ズレ量ΔA(ΔA>0)未満である場合、当該位置ズレ量に基づき、位置ズレ前の描画線および位置ズレ後の描画線のいずれか一方を、他方の描画線の描画支点に合わせて補正することを特徴とする。
【0008】
上記の表示装置において、描画線表示部は、検出した位置ズレ量ΔCが、第2の所定ズレ量ΔB(0<ΔB<ΔA)未満である場合、位置ズレ後の描画線を、位置ズレ前の描画線の描画支点に合わせて補正することが好ましい。
【0009】
また、描画線表示部は、検出した位置ズレ量ΔCが、第2の所定ズレ量ΔB(0<ΔB<ΔA)以上且つ第1の所定ズレ量ΔA未満である場合、位置ズレ前の描画線を、位置ズレ後の描画線の描画支点に合わせて補正することが好ましい。
【0010】
これらの構成によれば、検出した位置ズレ量ΔCが、0より大きく且つ第1の所定ズレ量ΔA(ΔA>0)未満である場合、当該位置ズレ量ΔCに基づき、描画線を補正することで、位置ズレ前の描画線と位置ズレ後の描画線とが連続となり、ユーザーが意図した一連の整った円弧(または真円)を表示することができる。なお、位置ズレ前の描画線を、位置ズレ後の描画線の描画支点に合わせて補正する場合、既に表示されている補正前の描画線を削除して、補正後の描画線を表示しても良いし、補正前の描画線を削除せずに、補正後の描画線を表示しても良い。
【0011】
上記の表示装置において、描画線表示部は、描画線の補正を行う際、既表示の描画線を削除し、補正した描画線を表示することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、補正前の描画線と補正後の描画線とで、描画線が二重に表示されるのを防止することができる。
【0013】
上記表示装置において、描画線表示部は、投射面に描画線を投射表示することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、スクリーンや壁、ホワイトボード上に上記描画線を表示させることができる。すなわち、表示装置として、電子黒板(インタラクティブホワイトボード)を利用することができる。
【0015】
本発明のプログラムは、コンピューターに、上記の表示装置の制御方法における各ステップを実行させることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、本プログラムを搭載するだけで、上記の表示装置の制御方法における各ステップを実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るプロジェクターシステムの模式図である。
【図2】プロジェクターシステムの制御ブロック図である。
【図3】各入力ツールを示した図である。
【図4】コンパスツールの操作に基づく表示制御を説明するための説明図である。
【図5】コンパスツールの操作に伴う表示動作を示したフローチャートである。
【図6】表示動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照し、本発明の一実施形態に係る表示装置、表示装置の制御方法およびプログラムについて説明する。本実施形態では、表示装置であるプロジェクターを構成要素とするプロジェクターシステムを例示する。図1および図2に示すように、プロジェクターシステム1は、投射面4に映像画面を投射するプロジェクター2と、投射面4上において操作を行うための複数種の入力ツール3と、により構成されている。すなわち、本プロジェクターシステム1は、電子黒板(インタラクティブホワイトボード)としての機能を有している。
【0019】
図3に示すように、入力ツール3は、投射面4に臨ませて、映像画面に対し描画を行う操作や、映像画面上に特定のオブジェクトを表示させる操作を行うためのツールであり、複数種の入力ツール3としては、ペンツール3a(電子ペン)と、三角定規ツール3bと、分度器ツール3cと、コンパスツール3dとがある。なお、これら各入力ツール3を複数個備える構成であっても良い。また、各入力ツール3には、1以上の変調反射部11が配設されており、変調反射部11の配設位置が各入力ツール3の位置情報を検出するための各検出点となる。各変調反射部11は、プロジェクター2から照射された赤外線を、特定のパターンに変調しつつプロジェクター2側に反射する。一方、詳細は後述するが、プロジェクター2は、この変調・反射した赤外線を受信することで、各入力ツール3における各検出点の位置情報を検出する。なお、変調反射部11は、上記特定のパターンとして、各入力ツール3および各検出点を識別する識別信号と、入力ツール3上の操作子の操作内容を示す操作信号を含んだパターンに変調することで、プロジェクター2が識別情報および操作情報を検出できるようになっている。
【0020】
コンパスツール3dは、コンパスを模った物理的形状を有する入力ツール3である。また、コンパスツール3dは、2本の脚の先端部に配設された2個の変調反射部11を備えている。すなわち、コンパスツール3dの検出点は、その2本の脚の先端部、すなわち、コンパスツール3dの描画支点および描画動点に配置されている。そして、投射面4に一方の脚の先端部(描画支点)をあてがい、これを動かさずに回転させて、他方の脚の先端部(描画動点)を円運動軌道で移動させることにより、映像画面に対する円弧の描画操作を行う。なお、コンパス同様、コンパスツール3dは、2本の脚の開き角度を可変自在になっており、任意の大きさの円弧(または円)を描画することができる。
【0021】
図2に示すように、プロジェクター2は、信号入力部31と、ツール情報検出部(位置情報検出部)32と、投射光学系33と、これらを統括制御する制御部34と、を備えている。なお、描画操作検出部および位置ズレ検出部は、制御部34により構成されている。また、描画線表示部は、投射光学系33および制御部34により構成されている。
【0022】
信号入力部31は、PC(Personal Computer)、USBメモリーやコンパクトフラッシュ(登録商標)等の外部機器41から画像データを入力する。この場合、信号入力部31は、図示しないUSBポートやメモリーカードスロットにより構成される。なお、本実施形態においては、外部機器41から信号入力部31を介して画像データが入力されることとしたが、ビデオレコーダーやDVDプレーヤー等の映像機器から画像信号を入力する構成としても良い。この場合、信号入力部31は、HDMI端子、Sビデオ端子、およびビデオ端子等により構成される。
【0023】
ツール情報検出部32は、変調反射部11が変調・反射した赤外線に基づいて、各入力ツール3における各検出点の位置情報および識別情報を検出すると共に、各入力ツール3の操作情報を検出する。具体的には、ツール情報検出部32は、投射面4に赤外線を照射する赤外線照射部42と、入力ツール3の各変調反射部11により、変調し反射された赤外線を受信する赤外線受信部43と、を備えており、各検出点から反射された赤外線に基づいて、各検出点の位置情報を検出する。また、識別信号および操作信号を含む特定パターンに変調させた赤外線を受信することで、識別信号に基づいて入力ツール3および各検出点の識別情報を検出すると共に、操作信号に基づいて入力ツール3の操作情報を検出する。位置情報は、投射面4に対する検出点の位置の座標情報である。識別情報は、各入力ツール3および各検出点を識別するための情報である。そのため、各検出点は、各検出点間で相違する識別情報が付加されている。操作情報は、入力ツール3上の操作子を操作した操作内容を示す情報である。ツール情報検出部32により、各検出点の位置情報と共に、各検出点の識別情報を検出するため、制御部34により、検出した位置情報が、どの検出点の情報であるかを識別することができる。
【0024】
投射光学系33は、投射面4上に画像(映像画面)を投射するものであり、光源ランプ51、液晶ライトバルブ52、投射レンズ53、ランプ駆動部54およびライトバルブ駆動部55を有している。
【0025】
光源ランプ51としては、ハロゲンランプ、メタルハライドランプまたは高圧水銀ランプを適用可能である。また、光源ランプ51に代えて、レーザーやLEDなどの固体光源を用いても良い。液晶ライトバルブ52は、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル等によって構成され、各透明基板の内面には、液晶に対して微小領域毎に駆動電圧を印加可能な透明電極が、画素としてマトリクス状に形成されている。ランプ駆動部54は、制御部34からの点灯指令に基づいて、光源ランプ51を点灯させる。ライトバルブ駆動部55は、液晶ライトバルブ52の各画素に、画像データに応じた駆動電圧を印加することにより、各画素の光透過率を設定する。
【0026】
上記の構成により、投射光学系33では、光源ランプ51から射出された照明光が、液晶ライトバルブ52を透過することによって変調される。また、変調された画像光は、不図示の光合成光学系(ダイクロイックプリズムなど)により画素毎に合成され、投射レンズ53によって投射面4上に投射される。
【0027】
制御部34は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等により構成される。CPUは、各種演算処理を行う中央処理装置であり、各部との信号の入出力を行うことによりプロジェクター2を統括制御する。ROMは、CPUが各種演算処理を行うために用いられる制御プログラムおよび制御データを記憶している。また、ROMには、基本ソフトウェアであるOS(Operating System)も記憶されている。RAMは、CPUが各種演算処理を行う際の作業領域として用いられる。なお、本実施形態では、特に、入力ツール3の操作に基づく表示制御を行う。
【0028】
ここで図4および図5を参照して、コンパスツール3dの操作に伴う表示制御について説明する。なお、各入力ツール3には、各入力ツール3間で相違する識別情報が割り当てられており、制御部34によって、ツール情報検出部32により検出した識別情報に基づき入力ツール3の種別(ペンツール3a、三角定規ツール3b等)を判別するものとする。
【0029】
コンパスツール3dに対する表示制御では、単位時間ごとにコンパスツール3dの描画支点および描画動点の位置情報を検出し、これに伴って、単位時間ごとのコンパスツール3dの描画操作(描画支点を中心に描画動点を円運動させる操作)を検出して、その描画操作に基づき描画動点の円運動軌跡であるコンパス描画線(描画線)64を映像画面に表示する。これを繰り返すことで、一連の描画操作におけるコンパス描画線64を表示するものである(図4参照)。ここで図5のフローチャートを参照して、コンパスツール3dの操作に伴うコンパス描画線64の表示動作について詳細に説明する。なお、ここでは、一連の描画操作における位置情報の検出処理回数をn(n>0)とする。そして、n回目の検出処理における描画支点の位置情報をCn(Xcn,Ycn)とし、描画動点の位置情報をPn(Xpn,Ypn)とする。また、位置ズレ量ΔCの判定に用いる2つの閾値を、第1の所定ズレ量ΔA(ΔA>0)、および第2の所定ズレ量ΔB(0<ΔB<ΔA)とする。
【0030】
図5に示すように、まず、プロジェクター2は、ツール情報検出部32により、単位時間ごとに描画支点および描画動点の位置情報(Cn、Pn)を検出する(S1:Yes、位置情報検出ステップ)。すなわち、コンパスツール3dの2個の変調反射部11からの赤外線を受信し、各検出点の位置情報および識別情報を検出することで、描画支点および描画動点の位置情報を検出する。
【0031】
描画支点および描画動点の位置情報を検出すると、制御部34により、今回の検出処理が、一連の描画操作における初回の検出処理(n=1)であるか否かを判定する(S2)。初回の検出処理である場合(S2:Yes)には、検出した描画支点および描画動点の位置情報(C1、P1)を、一連の描画操作における初期位置として記録する(S3)。そして、位置情報の検出待ちの状態(S1)に戻る。
【0032】
一方、初回の検出処理でない場合(S2:No)には、n回目の検出位置として、検出した描画支点および描画動点の位置情報(Cn、Pn)を記録する(S4)。そして、今回検出した各点の位置情報(Cn、Pn)と、前回検出した各点の位置情報(C(n−1)、P(n−1))とを参照して、描画操作を検出する(S5:描画操作検出ステップ)。厳密には、今回検出した描画支点Cnを中心に、前回検出した描画動点P(n−1)から、今回検出した描画動点Pnまで円運動軌道で移動させる描画操作が行われたものとし、これを検出する。すなわち、描画操作の描画開始点を、前回検出した描画動点P(n−1)とし、描画操作の描画終了点を、今回検出した描画動点Pnとして検出する。
【0033】
描画操作を検出したら、初期位置の描画支点C1に対する、当該描画操作の描画支点Cnの位置ズレ量ΔC(ΔXc,ΔYc)を算出する(S6:位置ズレ検出ステップ)。すなわち、X座標における位置ズレ量ΔXcは、ΔXc=Xcn−Xc1であり、Y座標における位置ズレ量ΔYcは、ΔYc=Ycn−Yc1である。これにより、検出した一連の描画操作における描画支点の位置ズレ量を検出する。なお、両座標の位置ズレ量ΔXcおよびYcは、投射光学系33における画素単位の値で検出する。
【0034】
位置ズレ量ΔC(ΔXc,ΔYc)を算出したら、X座標の位置ズレ量ΔXcおよびY座標の位置ズレ量ΔYcが、共に0(ゼロ)であるか否かを判定する(S7)。両座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcが0である場合(S7:Yes)には、描画支点が位置ズレしていないものと判断し、検出した描画操作に基づいて、コンパス描画線64を映像画面に表示する(S8:描画線表示ステップ)。厳密には、描画操作の描画支点Cnを中心とした円上の、描画開始点P(n−1)から描画終了点Pnまでを結ぶ円弧をコンパス描画線64として表示する(図6(a)参照)。コンパス描画線64を表示したら、位置情報の検出待ちの状態(S1)に戻る。
【0035】
一方、両座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcのいずれか少なくとも一方が、0でない場合(S7:No)には、両座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcとが、共に第2の所定ズレ量ΔB未満(例えば、1画素未満)であるか否かを判定する(S9)。両座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcが第2の所定ズレ量ΔB未満である場合(S9:Yes)には、位置ズレ量ΔCに基づいて、検出した描画操作における描画支点および描画終了点を補正する(S10)。厳密には、X座標およびY座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcだけ、描画支点および描画終了点の各座標を減算する。より厳密には、描画操作の描画支点Cn(Xcn,Ycn)を、Cn´(Xcn−ΔXc,Ycn−ΔYc)に補正し、描画操作の描画終了点Pnを、Pn´(Xpn−ΔXc,Ypn−ΔYc)に補正する。なお、補正した描画支点Cnおよび描画終了点Pnは、n回目の検出位置として記録しておく。
【0036】
その後、補正した描画操作に基づいて、コンパス描画線64を映像画面に表示する(S11)。すなわち、補正した描画支点Cn´を中心した円上の、描画開始点P(n−1)から補正した描画終了点Pn´までを結ぶ円弧をコンパス描画線64として表示する(図6(b)参照)。コンパス描画線64を表示したら、位置情報の検出待ちの状態(S1)に戻る。このように、位置ズレ量ΔCが、0より大きく且つ第2の所定ズレ量ΔB未満である場合、位置ズレ後のコンパス描画線64を、位置ズレ前のコンパス描画線64の描画支点に合わせて補正する。
【0037】
S9に戻り、両座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcのいずれか少なくとも一方が、第2の所定ズレ量ΔB以上である場合(S9:No)には、両座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcが、共に第1の所定ズレ量ΔA未満(例えば5画素未満)であるか否かを判定する(S12)。両座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcが、第1の所定ズレ量ΔA未満である場合(S12:Yes)には、今度は、位置ズレ量ΔCに基づいて、前回を含む前回以前に検出した描画操作、およびそのコンパス描画線64を補正する。すなわち、まず、初期位置の描画支点C1(Xc1,Yc1)を、C1´(Xc1+ΔXc,Yc1+ΔYc)に補正して記録する(S13)。そして、前回以前に検出した各描画動作について、既表示の各コンパス描画線64を削除しつつ、位置ズレ量ΔCに基づき、当該各描画動作における描画支点、描画開始点および描画終了点を補正し、補正した各描画動作に基づいて、各コンパス描画線64を映像画面に再表示する(S14)。なお、描画支点、描画開始点および描画終了点の補正では、X座標およびY座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcだけ、描画支点、描画開始点および描画終了点の各座標を加算する。また、補正した描画支点および描画終了点は、各回の検出位置として記憶しておく。
【0038】
その後、位置ズレ量ΔCに基づいて、今回検出した描画動作の描画開始点P(n−1)を補正する(S15)。すなわち、X座標およびY座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcだけ、描画開始点の各座標を加算する。そして、補正した描画動作に基づいてコンパス描画線64を映像画面に表示する(S16)。すなわち、描画支点Cnを中心した円上の、補正した描画開始点P(n−1)´から描画終了点Pnまでを結ぶ円弧をコンパス描画線64として表示する(図6(c)参照)。このように、位置ズレ量ΔCが、第2の所定ズレ量ΔB以上且つ第1の所定ズレ量ΔA未満である場合、位置ズレ前のコンパス描画線64を、位置ズレ後のコンパス描画線64の描画支点に合わせて補正する。
【0039】
S12に戻り、両座標の位置ズレ量ΔXc、ΔYcのいずれか少なくとも一方が、第1の所定ズレ量ΔA以上である場合(S12:No)には、新規の描画であるとし、検出した描画支点および描画動点の位置情報を、一連の描画操作における初期位置として記録する(S3)。そして、位置情報の検出待ちの状態(S1)に戻る。その後は、この初期位置としたコンパス描画線64が表示されていくことになる。なお、請求項にいう描画線表示ステップは、位置ズレ量ΔCの判定以降の工程(S7〜S16)により実行される。
【0040】
以上のような構成によれば、コンパスツール3dの操作に伴う表示動作において、検出した位置ズレ量ΔCが、0より大きく且つ第1の所定ズレ量ΔA(ΔA>0)未満である場合、当該位置ズレ量ΔCに基づき、コンパス描画線64を補正することで、位置ズレ前のコンパス描画線64と位置ズレ後のコンパス描画線64とが連続となり、ユーザーが意図した一連の整った円弧(または真円)を表示することができる。
【0041】
また、前回以前のコンパス描画線64の補正を行う際、既表示のコンパス描画線64を削除し、補正したコンパス描画線64を表示することにより、補正前のコンパス描画線64と補正後のコンパス描画線64とで、コンパス描画線64が二重に表示されるのを防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、位置ズレ量ΔCが第1の所定ズレ量ΔA未満である場合、コンパス描画線64の補正を行う構成であったが、位置ズレ量ΔCが第1の所定ズレ量ΔA以下である場合、コンパス描画線64の補正を行う構成であっても良い。また、第2の所定ズレ量ΔB未満である否かに基づいて、補正の仕方を変更したが、第2の所定ズレ量ΔB以下である否かに基づいて、補正の仕方を変更する構成であっても良い。
【0043】
また、本実施形態においては、位置ズレ前のコンパス描画線64を、位置ズレ後のコンパス描画線64の描画支点に合わせて補正する場合、既に表示されている補正前のコンパス描画線64を削除して、補正後のコンパス描画線64を表示する構成であったが、補正前のコンパス描画線64を削除せずに残して、補正後のコンパス描画線64を表示しても良い。
【0044】
さらに、本実施形態においては、前回以前のコンパス描画線64を補正する場合に、予め記憶した各回の検出位置(Cn、Pn)に基づいて、補正を行う構成であったが、初期位置と前回の描画動点P(n−1)とから、過去の軌跡を再現して補正する構成であっても良い。
【0045】
またさらに、本実施形態においては、検出した位置ズレ量ΔC(ΔXc,ΔYc)が、第2の所定ズレ量ΔB未満である場合、位置ズレ後のコンパス描画線64を補正し、第2の所定ズレ量ΔB以上且つ第1の所定ズレ量ΔA未満である場合、位置ズレ前のコンパス描画線64を補正する構成であったが、逆に、検出した位置ズレ量ΔC(ΔXc,ΔYc)が、第2の所定ズレ量ΔB未満である場合、位置ズレ前のコンパス描画線64を補正し、第2の所定ズレ量ΔB以上且つ第1の所定ズレ量ΔA未満である場合、位置ズレ後のコンパス描画線64を補正する構成であっても良い。
【0046】
また、上記実施形態では詳しく言及していないが、第1の所定ズレ量ΔAおよび第2の所定ズレ量ΔBは、第1の所定ズレ量ΔAが、2画素以上5画素以下であることが好ましく、第2の所定ズレ量ΔBが、1画素以上2画素以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
2:プロジェクター、 3d:コンパスツール、 4:投射面、 32:ツール情報検出部、 33:投射光学系、 34:制御部、 64:コンパス描画線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画支点および描画動点を有するコンパスツールの操作に伴って描画線を表示する表示装置であって、
前記描画支点および前記描画動点の位置情報を検出する位置情報検出部と、
前記各位置情報に基づいて、前記描画支点を中心に前記描画動点を円運動させる操作である描画操作を検出する描画操作検出部と、
検出した前記描画操作に基づいて、前記描画動点の円運動軌跡である前記描画線を表示する描画線表示部と、
検出した一連の前記描画操作における前記描画支点の位置ズレ量ΔCを検出する位置ズレ検出部と、を備え、
前記描画線表示部は、検出した前記位置ズレ量ΔCが、0より大きく且つ第1の所定ズレ量ΔA(ΔA>0)未満である場合、当該位置ズレ量ΔCに基づき、位置ズレ前の前記描画線および位置ズレ後の描画線のいずれか一方を、他方の前記描画線の前記描画支点に合わせて補正することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記描画線表示部は、検出した前記位置ズレ量ΔCが、第2の所定ズレ量ΔB(0<ΔB<ΔA)未満である場合、前記位置ズレ後の描画線を、前記位置ズレ前の描画線の描画支点に合わせて補正することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記描画線表示部は、検出した前記位置ズレ量ΔCが、第2の所定ズレ量ΔB(0<ΔB<ΔA)以上且つ第1の所定ズレ量ΔA未満である場合、前記位置ズレ前の描画線を、前記位置ズレ後の描画線の描画支点に合わせて補正することを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記描画線表示部は、前記描画線の補正を行う際、既表示の描画線を削除し、補正した描画線を表示することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記描画線表示部は、投射面に前記描画線を投射表示することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
描画支点および描画動点を有するコンパスツールの操作に伴って描画線を表示する表示装置の制御方法であって、
前記表示装置が、
前記描画支点および前記描画動点の位置情報を検出する位置情報検出ステップと、
前記各位置情報に基づいて、前記描画支点を中心に前記描画動点を円運動させる操作である描画操作を検出する描画操作検出ステップと、
検出した前記描画操作に基づいて、前記描画動点の円運動軌跡である前記描画線を表示する描画線表示ステップと、
検出した一連の前記描画操作における前記描画支点の位置ズレ量ΔCを検出する位置ズレ検出ステップと、を備え、
前記描画線表示ステップでは、検出した前記位置ズレ量ΔCが、0より大きく且つ第1の所定ズレ量ΔA(ΔA>0)未満である場合、当該位置ズレ量に基づき、前記位置ズレ前の前記描画線および前記位置ズレ後の描画線のいずれか一方を、他方の前記描画線の前記描画支点に合わせて補正することを特徴とする表示装置の制御方法。
【請求項7】
コンピューターに、請求項6に記載の表示装置の制御方法における各ステップを実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86406(P2013−86406A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230410(P2011−230410)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】