説明

表示装置および表示方法

【課題】フィールド反転駆動における動画像の表示性能を向上する。
【解決手段】1フレーム目の1フィールド目の各画素が正極性で表示されたとき、1フレーム目の2フィールド目は負極性、3フィールド目は正極性となり、2フレーム目の1フィールド目は負極性、2フィールド目は正極性、3フィールド目は負極性となる。そして、各フレームとも、3フィールド目の各画素の透過率が0%であり、同一画素位置の画素の明るさが、1フィールド目>2フィールド目となる。すなわち、各フレームで一番明るいフィールドである先頭フィールドの極性も、各フレームで一番暗い、または、真っ黒に表示される最終フィールドの極性も、いずれも、交互に設定されるため、液晶に印可される電界に偏りが生じないので、焼き付き等の不具合を抑制することができ、信頼性が向上する。本発明は、液晶表示装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および表示方法に関し、特に、画素間のピッチが狭い液晶パネルにより画像を表示する場合に用いて好適な、表示装置および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の液晶表示装置は、走査(ゲート)線がマトリクス配置における行としてまた、信号線がマトリクス配置における列として配置され、各走査線および信号線の交差部に、画素に対応する液晶セルが、行列状(マトリクス状)に配置されている。そして、液晶セルに格納されている液晶は、1水平期間(1H)毎にその行の素子をアクティブ状態にする水平駆動回路と、アクティブ状態になっている行の走査線を順次走査(スキャン)して画素を行毎(ライン毎)に選択して駆動する垂直駆動回路とにより印加される電圧により駆動されるようになされている。
【0003】
なお、画素に対応する液晶セルに格納されている液晶は、直流電圧が印加されると寿命が短くなってしまう。そこで、一般的な液晶表示装置においては、共通電極に印加する電圧を基準にして、液晶セルの画素電極に印加する電圧を、一定時間毎に、正電圧側と負電圧側に変化させることにより、寿命が短くなることを防止することができるようになされている。
【0004】
また、液晶表示装置に代表されるホールド型ディスプレイでは、動画表示時、ホールド型固有の動画ボケが生じる。このため、一般的なアモルファスシリコンを用いた直視型液晶表示装置では、網膜残像効果を解消して動画の表示性能を向上するために、例えば、入力信号60Hzに対し、倍速の120Hz駆動にして、黒表示を挿入するインパルス駆動、もしくは、インパルス駆動で生じる明るさ低下の対策として、それぞれの画素の輝度を分割し、1フィールド目を明るめに2フィールド目を暗めにする擬似インパルス駆動をおこなうことにより、動画の表示性能を改善してきた。
【0005】
図1を参照して、一般的なアモルファスシリコンを用いた直視型液晶表示装置において実行される、擬似インパルス駆動について説明する。
【0006】
直視型液晶表示では、画素の極性反転がドット(1H/1V)反転駆動である。図1においては、説明を簡単にするために、1フレーム(1フィールド)を、4×4ドットであるものとし、画面中央部に黒のウィンドウが表示されている画面を擬似インパルス駆動で表示させる場合について説明する。
【0007】
擬似インパルス駆動では、上述したように、1フィールド目を明るめに2フィールド目を暗めに表示することにより、網膜残像効果を解消して、動画の表示性能を向上することができるようになされている。一般的なアモルファスシリコンを用いた直視型液晶表示でドット反転駆動が行われている場合、図1に示されるように、1フィールド目と2フィールド目との極性は同一であり、フレームごとに極性を反転するようになされている。この場合、極性毎の光リークによる影響や、それに伴う対向電圧値(VCOM)の最適値からのずれが画素毎に存在しても、ドット反転駆動が行われ、画素が小さいため、そのずれは、隣接画素間で補完され、人間の目には60Hz駆動そのままでの視認が可能である。
【0008】
これに対して、従来、特に高温ポリシリコンなどを用いたマイクロディスプレイにおいて、1水平ラインごとに反転駆動を行う、1H反転駆動が行われていた。しかしながら、近年、パネルの小型化とともに画素の狭ピッチ化が進み、1H反転駆動が行われた場合、液晶に印加される電界は、画素電位と対向電位間で決定される電界より、逆極性である上下隣接画素電位間の電界の影響を強く受け(1H反転駆動が行われた場合、左右の隣接画素は同一極性のため電界の影響は少ない)、リバースチルトが発生し、結果的に光漏れの原因となっていた。
【0009】
逆極性となる隣接画素電位間の電界の影響によるリバースチルトの発生を回避するためには、例えば、1フィールド内の極性は各水平ライン垂直ラインとも同一として上下左右の隣接画素の極性が同一になるようにして、フィールド間で極性を反転させる1F反転駆動が行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】特開2005−017528号公報
【0011】
1F反転駆動では、極性毎の光リークによる影響やそれに伴う最適VCOMの微妙なズレが画素毎にある場合、隣接画素間で補完されることがなく、画面のちらつき、所謂、フリッカが問題となるが、例えば、図2に示されるように、60Hzのフレーム画像データにおいて、同一の画像を120Hzで2回表示する、すなわち、1フレームを2フィールドの画像を用いて表示するようにして、フィールド周波数を倍速にする事でフリッカの発生を防止するように成されてきた。
【0012】
すなわち、対向電圧値(VCOM)が最適値に設定されておらず、VCOMが最適値より低い場合、または、高い場合、1フレームを2フィールドの画像を用いて表示しないならば、透過率が変化しないはずの画素に印加される電圧値がフレームごとに変化してしまい、30Hz成分のフリッカが発生してしまう。これに対して、図2に示されるように、出力を120Hzとすることにより、例えば、図中Aで示される画素において発生するフリッカ成分を60Hzとすることができるため、人間の目には、フリッカが視認されなくなる。すなわち、入力される画像のフレームレートをあげなくても、出力される画像のフィールドレートを入力フレームレートの倍にすることにより、発生するフリッカの周波数を高くすることが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
液晶表示装置を用いて画像を表示する技術分野においては、画素数が増加され、表示パネル自体が小型化されることにより、更に画素ピッチが狭くなり、高精細化が進んでいる。
【0014】
具体的には、例えば、640×480の表示解像度であるVGA(Video Graphics Array)から、1024×768の表示解像度であるXGA(eXtended Graphics Array)に高精細化が進み、現在は、1920×1080の有効画素数を有するFull HD(Full High Definition)まで実用化されている。そして、更に高い表示解像度が求められ、開発研究が進められている。
【0015】
したがって、逆極性となる隣接画素電位間の電界の影響によるリバースチルトの発生を回避するためには、逆極性である上下隣接画素電位間の電界の影響を受けないように、1F反転駆動を行うことが有効である。
【0016】
しかしながら、1フィールド内の極性は各水平ライン垂直ラインとも同一として上下左右の隣接画素の極性が同一になるようにして、黒フィールドを挿入するインパルス駆動、または1フィールド目が明るく2フィールド目が暗くなるような擬似インパルス駆動をする場合、フィールド間で極性を反転させる1F反転駆動をしてしまっては、全てのフレームにおいて、1フィールド目の明るめ画面の極性に対し、2フィールド目の黒または暗い画面の極性が逆極性となってしまうため、液晶に印加される電圧に偏りが生じ、焼き付き等の不具合が発生してしまう。
【0017】
このため、画素のピッチの狭い、例えば、高温ポリシリコンなどを用いたマイクロディスプレイにおいて、インパルス駆動や擬似インパルス駆動を実行して、動画の表示性能を向上させることができなかった。
【0018】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、リバースチルトの発生を抑制するとともに、動画の表示性能を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一側面の表示装置は、液晶に両極性の電圧を印加し、前記液晶の透過率を変更することによって画像を表示する表示装置であって、画素ごとに、前記液晶と、前記液晶への電圧の印加を入切するスイッチング素子とを含んで構成される液晶パネルと、前記液晶パネルを駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、入力画像フレームのそれぞれ1フレームを奇数のフィールドに分割し、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率となり、かつ、最初に表示されるフィールドの透過率が最も高く、最後に表示されるフィールドの透過率が最も低くなり、人間の目に奇数枚のフィールド画像が積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように、それぞれの透過率を設定し、各画素に対応する液晶が、それぞれのフィールドにおいて設定された透過率となり、かつ、各画素において周辺画素がほぼ同極性となるような反転表示において、1フィールドずつ各画素の極性が反転するように、前記駆動手段を制御する。
【0020】
前記制御手段には、1フィールドの全画素が同一極性である反転表示が実行されるように、前記駆動手段を制御させるようにすることができる。
【0021】
前記制御手段には、間引き1H反転駆動が実行されるように、前記駆動手段を制御させるようにすることができる。
【0022】
前記制御手段には、各フレームの最後のフィールドの全画素の透過率を0%とさせるようにすることができる。
【0023】
本発明の一側面の表示方法は、液晶パネルに含まれる液晶に両極性の電圧を印加し、前記液晶の透過率を変更することによって画像を表示する表示装置の表示方法であって、入力画像フレームの入力を受け、入力画像フレームのそれぞれ1フレームを奇数のフィールドに分割し、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率となり、かつ、人間の目に奇数枚のフィールド画像が積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように、分割後の透過率を設定し、分割された透過率を、最初に表示されるフィールドの透過率が最も高く、最後に表示されるフィールドの透過率が最も低くなるように割り当て、各画素に対応する液晶が、それぞれのフィールドにおいて設定された透過率となり、かつ、各画素において周辺画素がほぼ同極性となるような反転表示において、1フィールドずつ各画素の極性が反転するように、前記液晶を駆動するステップを含む。
【0024】
本発明の一側面においては、入力画像フレームの入力を受け、入力画像フレームのそれぞれ1フレームが奇数のフィールドに分割され、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率となり、かつ、人間の目に奇数枚のフィールド画像が積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように、分割後の透過率が設定され、分割された透過率が、最初に表示されるフィールドの透過率が最も高く、最後に表示されるフィールドの透過率が最も低くなるように割り当てられ、各画素に対応する液晶が、それぞれのフィールドにおいて設定された透過率となり、かつ、各画素において周辺画素がほぼ同極性となるような反転表示において、1フィールドずつ各画素の極性が反転するように、液晶が駆動される。
【0025】
表示装置は、独立した装置であっても良いし、情報処理装置の表示処理を行うブロックであっても良い。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の一側面によれば、液晶を駆動して画像を表示することができ、特に、1フレームをそれぞれ透過率の異なる奇数フィールドに分解して、最初に表示されるフィールドの透過率が最も高く、最後に表示されるフィールドの透過率が最も低くなるように表示させることにより、動画像の表示品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書または図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書または図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書または図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0028】
本発明の一側面の表示装置は、液晶に両極性の電圧を印加し、前記液晶の透過率を変更することによって画像を表示する表示装置であって、画素ごとに前記液晶と前記液晶への電圧の印加を入切するスイッチング素子とを含んで構成される液晶パネル(例えば、図3の液晶パネル11)と、前記液晶パネルを駆動する駆動手段(例えば、図3の信号線駆動回路12およびゲート線駆動回路13)と、前記駆動手段を制御する制御手段(例えば、図3のコントローラ14)とを備え、前記制御手段は、入力画像フレームのそれぞれ1フレームを奇数(例えば、3枚)のフィールドに分割し、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率となり、かつ、最初に表示されるフィールドの透過率が最も高く、最後に表示されるフィールドの透過率が最も低くなり、人間の目に奇数枚のフィールド画像が積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように、それぞれの透過率を設定し、各画素に対応する液晶が、それぞれのフィールドにおいて設定された透過率となり、かつ、各画素において周辺画素がほぼ同極性となるような反転表示において、1フィールドずつ各画素の極性が反転するように、前記駆動手段を制御する。
【0029】
本発明の表示方法は、液晶パネルに含まれる液晶に両極性の電圧を印加し、前記液晶の透過率を変更することによって画像を表示する表示装置の表示方法であって、入力画像フレームの入力を受け(例えば、図6のステップS1の処理)、入力画像フレームのそれぞれ1フレームを奇数(例えば、3枚)のフィールドに分割し、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率となり、かつ、人間の目に奇数枚のフィールド画像が積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように、分割後の透過率を設定し(例えば、図6のステップS2の処理)、分割された透過率を、最初に表示されるフィールドの透過率が最も高く、最後に表示されるフィールドの透過率が最も低くなるように割り当て(例えば、図6のステップS3の処理)、各画素に対応する液晶が、それぞれのフィールドにおいて設定された透過率となり、かつ、各画素において周辺画素がほぼ同極性となるような反転表示において、1フィールドずつ各画素の極性が反転するように、前記液晶を駆動する(例えば、図6のステップS4乃至ステップS6の処理)ステップを含む。
【0030】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
図3に示されるように、液晶表示装置1は、液晶パネル11、信号線駆動回路12、ゲート線駆動回路13、およびコントローラ14を含む。液晶パネル11は、マトリックス駆動される画素型のディスプレイであり、画素である、画面に配置されている液晶セル内部の液晶の配列を制御することにより透過する光量を変化させて、画像を表示する。
【0032】
信号線駆動回路12およびゲート線駆動回路13は、コントローラ14から供給される制御信号に基づいて、液晶パネル11の各画素をマトリックス駆動する。
【0033】
液晶パネル11には、1行1列からn行m列まで画素としての液晶セルが配置されている。なお、液晶パネル11には、例えば、640×480の表示解像度であるVGA(Video Graphics Array)、1024×768の表示解像度であるXGA(eXtended Graphics Array)、または、1920×1080の有効画素数を有するFull HD(Full High Definition)等を採用することができ、これらのように、表示解像度が高いと、画像の品質が向上し、好適である。液晶パネル11においては、共通電極に印加する電圧(所謂コモン電圧)を基準にして、液晶セルの画素電極に印加する電圧を、一定時間毎に、正電圧側と負電圧側に変化させることにより、寿命が短くなることを防止するようになされている。
【0034】
擬似インパルス駆動では、上述したように、1フィールド目を明るめに2フィールド目を暗めに表示することにより、網膜残像効果を解消して、動画の表示性能を向上することができるようになされている。一般的なアモルファスシリコンを用いた直視型液晶表示では、図1を用いて説明したように、1フィールド目と2フィールド目との極性は同一であり、フレームごとに極性を反転するようになされている。この場合、ドット反転駆動が行われているので、極性毎の光リークによる影響やそれに伴う最適VCOMの微妙なズレが画素毎にあっても、そのずれは隣接画素間で補完され、入力されるフレーム画像データのフレームレートが60Hzである場合、人間の目には60Hz駆動で視認される。
【0035】
しかしながら、図1を用いて説明した擬似インパルス駆動において、リバースチルトの発生を抑制するために、それぞれの隣接画素間で電位差が発生しないように、1フィールド内のそれぞれの画素の極性を同一にし、1フィールド目と2フィールド目との極性を変更してしまった場合、1フィールド目と2フィールド目とのそれぞれにおいて画素の液晶に印可される電圧に偏りが生じて、焼き付き等の不具合が発生する可能性がある。
【0036】
具体的には、図4に示されるように、全てのフレームにおいて、それぞれのフィールドを構成する全ての画素の極性が同一であり、1フィールド目の明るい画面(透過率の高い画面)の極性(ここでは正極性)に対し、2フィールド目の暗い画面(透過率の低い画面)の極性が逆極性(ここでは負極性)となるようになされていた場合では、液晶に印加される電圧に偏りが生じ、上述したように、焼き付き等の不具合が発生してしまう。
【0037】
また、図4を用いて説明した場合に発生する、液晶に印可される電圧の偏りは、黒画面を挿入するインパルス駆動でも同様に発生してしまう。
【0038】
従来の倍速1F反転駆動を実行する液晶表示装置においては、1フレームを2フィールドで表示する際、入力信号に対し、同じ画(1枚の画)を2回表示するようになされていたが、液晶表示装置1では、1枚の画を奇数枚のフィールドに分解し、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率となるように、対応する画素に電圧を印可する。
【0039】
具体的には、例えば、液晶表示装置1では、1枚の画が3枚に分解される場合、中間調を表示する画素においては、1回目と2回目と3回目とで異なる透過率となるように、対応する画素に電圧を印可する。
【0040】
すなわち、1フィールド目乃至3フィールド目の画は、その画像が白と黒(透過率100%と0%)の画素のみから構成されているのでなければ、換言すれば、中間調を有する画素を含む画像であれば、いずれかの画素において、異なる透過率を有する画となる。このとき、1フィールド目乃至3フィールド目の画は、人間の目に積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように分解される。このとき、3フィールド目の全画素の透過率を0%(黒)にする場合がインパルス駆動、3フィールド目の各画素においても、その画素の明るさに応じて必要に応じて透過率を設定する場合が擬似インパルス駆動に対応する。
【0041】
1枚の入力画像フレームを3フィールドに分解して擬似インパルス駆動を実行する場合を例として、画像の分解の方法の詳細例を、以下に説明する。
【0042】
透過率100%の画素は、1フィールド目乃至3フィールド目の3枚とも透過率100%とされる。そして、透過率0%の画素は、1フィールド目乃至3フィールド目の3枚とも透過率0%とされる。
【0043】
これに対して、中間調を有する画素は、1フィールド目、2フィールド目、3フィールド目の3枚の画の対応する画素の透過率が少なくともいずれか1つは異なり、1フィールド目が最も明るく、3フィールド目が最も暗くなるようにそれぞれのフィールドの画素の透過率が設定される。例えば、擬似インパルス駆動に対応する表示処理が行われる場合、入力フレーム画像のある画素の透過率が33%以上であるときには、1枚目の画を透過率100%とし、透過率が66%以上であるときには、1枚目と2枚目の画を透過率100%として、残りのフィールドの画素の透過率が、人間の目に3枚のフィールド画像が積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように設定されるようにすれば良い。
【0044】
具体的に例を挙げると、透過率75%の画素は、1フィールド目および2フィールド目を透過率100%として、3フィールド目を透過率25%とすることができる。また、透過率50%の画素は、1フィールド目を透過率100%とし、2フィールド目を透過率50%とし、3フィールド目を透過率0%とすることができる。また、透過率25%の画素は、1フィールド目を透過率75%として、2フィールド目および3フィールド目を透過率0%としたり、1フィールド目を透過率50%とし、2フィールド目を透過率25%とし、フィールド目を透過率0%とすることができる。
【0045】
擬似インパルス駆動に対応する表示を実行する場合、透過率の設定方法は、上述した例以外の方法であっても良く、3フィールドにおいて、同一画素位置の画素の明るさが、1フィールド目>2フィールド目>3フィールド目となるのであれば、自由に設定してもよい。
【0046】
また、インパルス駆動に対応する表示を実行する場合、透過率の設定方法は、3フィールド目の各画素の透過率が0%であり、同一画素位置の画素の明るさが、1フィールド目>2フィールド目となるのであれば、自由に設定してもよい。
【0047】
また、フレームをフィールドに分割する場合の分割の数、すなわち、フィールドの数は、奇数であれば、3枚以上であっても良く、各画素の透過率は、倍速駆動のため、人間の目に積算されて視認されたときに、同じ画、同じ明るさになるように分解される物であれば良い。具体的には、1枚の画がn(nは奇数)枚に分割される場合、次の式(1)が成り立つように、それぞれのフィールドの画素の透過率α1、α2、・・・αnが決められる。
【0048】
入力フレームにおける対応する画素の透過率=α1/n+α2/n+・・・+αn/n
・・・(1)
【0049】
そして、各フィールドの極性は、フィールドごとに反転するものとされる。1フレームは、奇数枚数のフィールドで表示されるので、それぞれのフレームの先頭フィールドの極性は、フレームごとに反転し、それぞれのフレームの最終フィールドの極性も、フレームごとに反転する。
【0050】
例えば、図5に示されるように、1フレームを3フィールドで表示するインパルス駆動に対応する表示処理が行われる場合、1フレーム目の1フィールド目の各画素が正極性で表示されたとき、1フレーム目の2フィールド目は負極性、3フィールド目は正極性となり、2フレーム目の1フィールド目は負極性、2フィールド目は正極性、3フィールド目は負極性となる。そして、各フレームとも、3フィールド目の各画素の透過率が0%であり、同一画素位置の画素の明るさが、1フィールド目>2フィールド目となる。
【0051】
すなわち、液晶表示装置1においては、各フレームで一番明るいフィールドである先頭フィールドの極性も、各フレームで一番暗い、または、真っ黒に表示される最終フィールドの極性も、いずれも、交互に設定されるため、液晶に印可される電界に偏りが生じないので、焼き付き等の不具合を抑制することができ、信頼性が向上する。
【0052】
このようにすることにより、液晶に印可される電圧の極性のバランスを取ることができ、かつ、インパルス駆動または擬似インパルス駆動と実質的に同様にして、網膜残像効果を解消して動画の表示性能を向上することが可能となる。
【0053】
次に、図6を参照して、液晶表示装置1において実行される画像表示処理について説明する。
【0054】
ステップS1において、コントローラ14は、1フレームの画像データを取得する。
【0055】
コントローラ14は、ステップS2において、取得された1フレームの画像データを構成するそれぞれの画素において、人間の目に3枚のフィールド画像が積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように、透過率を分割し、ステップS3において、それぞれのフィールドの各画素において、分割された透過率を、先に表示されるフィールドのほうが透過率が高くなるように割り振る。
【0056】
具体的には、コントローラ14は、中間調を表示する画素においては、1フィールド目が最も明るく、3フィールド目が最も暗くなる透過率となるように、透過率を設定する。例えば、透過率100%の画素は、1フィールド目乃至3フィールド目の3枚とも透過率100%とされる。そして、透過率0%の画素は、1フィールド目乃至3フィールド目の3枚とも透過率0%とされる。また、例えば、透過率75%の画素は、1フィールド目および2フィールド目を透過率100%としてもう3フィールド目を透過率25%とすることができる。また、透過率50%の画素は、1フィールド目を透過率100%とし、2フィールド目を透過率50%とし、3フィールド目を透過率0%とすることができる。また、透過率25%の画素は、1フィールド目を透過率75%として、2フィールド目および3フィールド目を透過率0%としたり、1フィールド目を透過率50%とし、2フィールド目を透過率25%とし、フィールド目を透過率0%とすることができる。
【0057】
すなわち、1フィールド目乃至3フィールド目の画は、その画像が白と黒(透過率100%と0%)の画素のみから構成されているのでなければ、換言すれば、中間調を有する画素を含む画像であれば、いずれかの画素において、異なる透過率を有する画となる。このとき、1フィールド目乃至3フィールド目の画は、人間の目に積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように分解される。このとき、3フィールド目の全画素の透過率を0%(黒)にする場合がインパルス駆動、3フィールド目の画素も、その画素の明るさに応じて必要に応じて透過率を設定する場合が擬似インパルス駆動に対応する。
【0058】
ステップS4において、コントローラ14は、前のフィールドは正極性で表示されたか否かを判断する。
【0059】
ステップS4において、前のフィールドは正極性で表示されたと判断された場合、ステップS5において、コントローラ14は、選択された分割パターンにおいて、負極性で表示を行う。
【0060】
ステップS4において、前のフィールドは正極性で表示されていないと判断された場合、すなわち、前のフィールドは負極性で表示されたと判断された場合、ステップS6において、コントローラ14は、選択された分割パターンにおいて、正極性で表示を行う。
【0061】
ステップS5またはステップS6の処理の終了後、ステップS7において、コントローラ14は、このフレームの全てのフィールドの表示が終了したか否かを判断する。ステップS7において、終了していないと判断された場合、処理は、ステップS4に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0062】
ステップS7において、このフレームに含まれる全てのフィールドの表示が終了したと判断された場合、ステップS8において、コントローラ14は、次のフレームのデータが存在するか否かを判断する。
【0063】
ステップS8において、次のフレームのデータが存在すると判断された場合、処理は、ステップS1に戻り、それ以降の処理が繰り返される。ステップS8において、次のフレームのデータが存在しないと判断された場合、処理は終了される。
【0064】
このような処理により、入力されたフレームレートに対する出力フィールドレートを、例えば、3倍などの奇数倍の周波数にすることで、光漏れの影響を低減し、人間に視認されやすいフリッカの発生を抑制するとともに、各フィールドにおいて、画素ごと(各液晶)に印可される電圧の極性のバランスが取れ、信頼性が向上するとともに、インパルス駆動または擬似インパルスに近い表示処理を行うことができるので、動画質を更に向上させることが可能である。
【0065】
また、液晶表示装置1においては、入力信号が60Hz以外の周波数、例えば、50Hzや、120Hzなど、いずれの周波数であっても、上述した処理を適用することにより、良好な画質を得ることができることは言うまでもない。
【0066】
また、以上の説明においては、1フレームを3フィールドに分解する場合を主に例示して説明したが、上述したように、液晶表示装置1では、1フレームから分解されるフィールドの数は3フィールドでなくても良く、1枚の画を奇数枚のフィールドに分解し、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率であり、かつ、フレーム内の最初のフィールドが最も透過率が高く、最後のフィールドが最も透過率が低いものとなるように、対応する画素に電圧を印可するようにすればよい。
【0067】
また、動画像を表示させる場合、フレームレートまたはフィールドレートが高くなるにともなって、ジャーキネスや動きぼけに関して、表示される画像を見る観察者からの評価値が向上する。ジャーキネスに関しても動きぼけに関しても、250Hz近辺までは評価値が向上するが、更に高いフレームレートまたはフィールドレートでは、評価値はあまり向上しないという傾向が示される(例えば、特開2004−266808号公報参照)。
【0068】
換言すれば、出力フィールドレートが250Hzに近い値であるとき、または、250Hz以上の値であるとき、表示される画像を見る観察者からは、フリッカが視認されないのみならず、ジャーキネスや動きボケもほとんど感じられないため、好適である。
【0069】
そこで、液晶表示装置1では、1枚の画を奇数枚のフィールドに分解し、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率となるように、対応する画素に電圧を印可するようになされているので、例えば、入力フレームレートが50Hzであるとき、1フレームを5フィールドに分解して250Hzのフィールドレートで出力したり、入力フレームレートが60Hzであるとき、1フレームを5フィールドに分解して300Hzのフィールドレートで出力するようにしてもよい。
【0070】
また、ここでは、それぞれの画素において周辺画素の極性が同一になる(すなわち、1H反転駆動ではそれぞれの画素において上下の画素の極性が異なり、1V反転駆動ではそれぞれの画素において左右の画素の極性が異なり、ドット反転駆動ではそれぞれの画素において上下左右の画素の極性が異なるので、それらの反転駆動とは異なる)駆動として、1F反転駆動を例にしたが、それに限らず、例えば、特開2004−177930号公報に開示されているように、リフレッシュの際に上下左右の極性が同一になる駆動(例えば、飛び越し走査駆動や、間引き1H反転駆動とも称される)が実行される場合などにおいても、上述した処理を適用することにより、良好な画質を得ることができることは言うまでもない。
【0071】
また、1つの画面を、例えば、2つまたは3つなど、比較的少ない数の領域に分割し、それぞれの領域ごとに反転駆動を行うようにした場合も、その領域が極端に小さい(ドット反転駆動に実質的に同じとなる)ような場合を除いては、上述した処理を適用することにより、良好な画質を得ることができることは言うまでもない。
【0072】
すなわち、本発明は、1フレーム表示期間内の各画素において、周辺画素がほぼ同極性となるような、換言すれば、隣接する画素が1垂直期間の所定割合以上同極性となるような反転表示が実行される場合に適用されると好適である。
【0073】
また、本明細書において、処理を実行するそれぞれのステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0074】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】擬似インパルス駆動について説明するための図である。
【図2】対向電圧値(VCOM)とフリッカ成分との関係について説明するための図である。
【図3】液晶表示装置の構成を示す図である。
【図4】1F反転駆動で単純に擬似インパルス駆動を行った場合について説明するための図である。
【図5】液晶表示装置において実行される、擬似インパルス駆動に対応する表示処理において表示されるフィールドについて説明するための図である。
【図6】画像表示処理について説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 液晶表示装置, 11 液晶パネル, 12 信号線駆動回路, 13 ゲート線駆動回路, 14 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶に両極性の電圧を印加し、前記液晶の透過率を変更することによって画像を表示する表示装置において、
画素ごとに、前記液晶と、前記液晶への電圧の印加を入切するスイッチング素子とを含んで構成される液晶パネルと、
前記液晶パネルを駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
入力画像フレームのそれぞれ1フレームを奇数のフィールドに分割し、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率となり、かつ、最初に表示されるフィールドの透過率が最も高く、最後に表示されるフィールドの透過率が最も低くなり、人間の目に奇数枚のフィールド画像が積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように、それぞれの透過率を設定し、
各画素に対応する液晶が、それぞれのフィールドにおいて設定された透過率となり、かつ、各画素において周辺画素がほぼ同極性となるような反転表示において、1フィールドずつ各画素の極性が反転するように、前記駆動手段を制御する
表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、1フィールドの全画素が同一極性である反転表示が実行されるように、前記駆動手段を制御する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、間引き1H反転駆動が実行されるように、前記駆動手段を制御する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、各フレームの最後のフィールドの全画素の透過率を0%とする
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
液晶パネルに含まれる液晶に両極性の電圧を印加し、前記液晶の透過率を変更することによって画像を表示する表示装置の表示方法において、
入力画像フレームの入力を受け、
入力画像フレームのそれぞれ1フレームを奇数のフィールドに分割し、中間調を表示する画素においては、分解されたそれぞれのフィールドにおいて異なる透過率となり、かつ、人間の目に奇数枚のフィールド画像が積算されて視認されたときに、入力画像と同じ画、同じ明るさになるように、分割後の透過率を設定し、
分割された透過率を、最初に表示されるフィールドの透過率が最も高く、最後に表示されるフィールドの透過率が最も低くなるように割り当て、
各画素に対応する液晶が、それぞれのフィールドにおいて設定された透過率となり、かつ、各画素において周辺画素がほぼ同極性となるような反転表示において、1フィールドずつ各画素の極性が反転するように、前記液晶を駆動する
ステップを含む表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−304662(P2008−304662A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151184(P2007−151184)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】