説明

表示装置の検査方法、表示装置および自動取引装置

【課題】表示部をフォトセンサ内蔵液晶パネルにて構成した自動取引装置において、高精度、すなわち高価格となる設備を要することなく確実に、出荷時および保守時の検査を行えるようにする。
【解決手段】反射部材10をフォトセンサ内蔵液晶パネル4の上に置いて、所定のテストパタンデータに基づいてフォトセンサ内蔵液晶パネル4に表示し、当該表示された画像をフォトセンサ内蔵液晶パネル4のフォトセンサにより読み取って前記テストパタンデータと比較して不良を検査するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動預払機等の自動取引装置における顧客操作部等の表示部を検査する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネル等の表示部を備えた自動取引装置の出荷検査や定期保守において、当該表示部にドット抜けなどがなく正常に表示されているかどうかの検査は、表示部にテストパタンを表示し、検査員或いは保守員が目視確認するのが、一般的であった。
【0003】
そして、この検査を自動化するために、検査対象の液晶パネルを構成する全画素を光通過および光遮断の状態に制御し、点光源からレンズを介して平行光を液晶パネルに照射し、液晶パネルを通過した光を光電変換器にて電気信号に変換し、その電気信号から液晶パネルの光通過性能、光遮断性能を判定し、画像表示機能の適否を検査する技術はあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−322700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、人による確認、判断の場合、確認漏れが発生する可能性があり、文献1の技術では、高精度、すなわち高価格となる設備が必要となり、結果的に自動取引装置の低価格化を妨げる要因となっていた。また、定期保守時などでは特許文献1の技術を採用することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題を解決するため次の構成を採用する。すなわち、所定のテストパタンデータに基づいてフォトセンサ内蔵液晶パネルに表示された画像をフォトセンサ内蔵液晶パネルの近傍に置いた反射部材により反射させ、当該反射画像を前記フォトセンサ内蔵液晶パネルのフォトセンサにより読み取って前記テストパタンデータと比較し、不良を検査するようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動取引装置によれば、所定のテストパタンデータに基づいてフォトセンサ内蔵液晶パネルに表示された画像をフォトセンサ内蔵液晶パネルの近傍に置いた反射部材により反射させ、当該反射画像を前記フォトセンサ内蔵液晶パネルのフォトセンサにより読み取って前記テストパタンデータと比較し、不良を検査するようにしたので、高精度、すなわち高価格となる設備も要することなく確実な検査を行うことができ、また、定期保守時などの場合においても確実な検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の自動取引装置の概観斜視図である。
【図2】実施例1の自動取引装置の制御系ブロック図である。
【図3】実施例1の自動取引装置の動作フローチャート図である。
【図4】実施例2の自動取引装置の動作フローチャート図である。
【図5】フォトセンサ内蔵液晶パネルの構成の一例(斜視図)である。
【図6】フォトセンサ内蔵液晶パネルの構成の一例(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。なお、以下の説明では、現金自動預払機を例として説明するが、切符、定期等の発券機などの自動券売機などの自動取引装置にも本発明を容易に適用することができる。
【実施例1】
【0010】
(構成)
(自動取引装置の外観構成)
実施例1の自動取引装置1は、図1のような外観をしており、硬貨入出金口2、紙幣入出金口3、表示操作部として機能するフォトセンサ内蔵液晶パネル4、通帳挿入口5、カード挿入口6を備えている。
【0011】
紙幣入出金口3は、紙幣が投入されるとともに、これらが排出される開口部である。紙幣入出金口3には、シャッタが設けられシャッタが駆動されることにより紙幣入出金口3が開閉される。
【0012】
カード挿入口6は、カードを用いて取引を行う場合、当該カードがここから挿入され、取引が終了するとここから排出される。通帳挿入口5は、取引で使用される通帳がここから挿入され、取引が終了するとここから排出される。また、硬貨入出金口2は、硬貨が投入または排出される開口部である。
【0013】
紙幣入出金口3は、入金紙幣が投入されるとともに、出金紙幣が排出される部分で、その奥部には、図示していないが後述の紙幣の入出金処理を行う紙幣処理部26が設けられている。カード挿入口6は、カードが挿入または排出される部分で、その奥部には、図示していないが後述のカード処理部21が設けられている。
【0014】
硬貨入出金口2は、入金硬貨が投入されるとともに、出金硬貨が排出される部分で、その奥部には、図示しないが、硬貨の入出金処理を行う後述の硬貨処理部25が設けられている。通帳挿入出口5は、通帳が挿入または排出される部分で、その奥部には、図示していないが後述の通帳処理部23が設けられている。
【0015】
表示操作部として機能するフォトセンサ内蔵液晶パネル4は、後述記載の構成となっており、顧客の操作により各種の入力を行なうとともに、操作ガイダンス等が表示される。また、フォトセンサ内蔵液晶パネル4の上には、ミラーなどの反射部材10を置くことができるようになっている。
【0016】
フォトセンサ内蔵液晶パネル4は、図5の斜視図および図6の断面図に示したような構造となっており、通常の液晶パネル部分としての、バックライト120、バックライト120の上面および表面に設けられた偏向板121および125、各画素との電気的接続回路として機能するアレイ基板122、各画素のカラーフィルタとして機能するカラーフィルタ基板124とからなる。
【0017】
そして、フォトセンサ内蔵型としての液晶層は、図5右側に示したように液晶の画素(赤)101r、画素(緑)101g、画素(青)101bに加えて、フォトセンサ素子100aがそれぞれの画素に設けられた構成となっており、表示機能とともにスキャナーとしての機能をも有する構成となっている。
【0018】
そして、これらの液晶画素およびフォトセンサ素子が、それぞれフォトセンサ駆動回路100、液晶駆動回路101により駆動されて、液晶表示およびフォトセンサが動作するようになっている。なお、ボタンなどの押下は、指の接近をフォトセンサによるスキャン画像から認識し押下と判断するようにすればよい。或いは、フォトセンサ素子100aのほか、図示していないが、所定の押圧により導通するタッチセンサ素子を各画素に設けた構成とし、当該タッチセンサ素子のオンオフを検出し、所定の範囲の押下を検出するようにしてもよい。
【0019】
(自動取引装置の内部構成)
実施例1の自動取引装置の内部は、図2に示したように、後述する各部の制御を行う主制御部20と、前述の表示操作部として機能するフォトセンサ内蔵液晶パネル4と、フォトセンサ内蔵液晶パネル4の上に置かれる反射部材10と、キャッシュカード等に記録された情報のリードライトを行うカード処理部21と、音声やブザーによりガイダンスを出力する音声案内部22と、通帳の磁気ストライプのリードライトおよび通帳への印字制御を行う通帳処理部23と、取引内容の明細票を印字して出力する明細票処理部24と、図示しない硬貨入出金金庫や硬貨装填庫を備え硬貨の入出金制御を行う硬貨処理部25と、図示しない紙幣入出金金庫や紙幣装填庫を備え紙幣の入出金制御を行う紙幣処理部26と、からなる。
【0020】
さらに、各部に電源を供給する電源部27、主制御部の記憶部として機能し、プログラムやフォトセンサ内蔵液晶パネル4に表示するテストパタンを記憶するメモリ部28と、図示しないホストコンピュータとのインタフェイスを制御するインタフェイス部29を有する。
【0021】
(動作)
以上の構成により実施例1の自動取引装置1は以下のように動作する。この動作を、図3の動作フローチャート図を用いて詳細に説明する。
【0022】
まず、検査作業者或いは定期保守員が、フォトセンサ内蔵液晶パネル4を操作してテストプログラムを起動する。そして、例えば、「テストパタン表示後、N秒以内にミラーを表示部上に置いてください」とのガイダンスをフォトセンサ内蔵液晶パネル4に表示する(ステップS01)。
【0023】
次に、自動取引装置1の主制御部20は、記憶部28に格納されているテストパタンをフォトセンサ内蔵液晶パネル4に表示する(ステップS02)。
【0024】
ここで、テストパタンは、カラー表示の場合では、液晶の画素(赤)101r、画素(緑)101g、画素(青)101bをそれぞれテストする必要があるため、表示するテストパタンを各色にて順に表示するようにするのがよい。
【0025】
検査作業者或いは定期保守員は、ステップS01の「テストパタン表示後、N秒以内にミラーを表示部上に置いてください」とのガイダンスを見て、テストパタンが表示され始めてから表示部を覆う程度の反射部材10を表示部の上に置く。勿論、検査作業者或いは定期保守員が、反射部材10を表示部の上に置いてからテストパタンを表示するようにしてもよい。
【0026】
そして、N秒経過後に(ステップS03)、その間のフォトセンサ内蔵液晶パネル4のフォトセンサの画像を読出し(ステップS04)、主制御部20により読み出した画像とテストパタンの比較を行う(ステップS05)。例えば、カラー表示の場合では、各色ごとのテストパタンのマッチングを液晶表示全体の各ドットごとに行い、明暗のチェックを行う。
【0027】
そして、不一致となったドットがあったときは、ドット抜けがあり不良である旨の表示或いは音声、ブザーにより検査作業者或いは定期保守員に通知し(ステップS06)、本処理を終了する。
【0028】
一方、各色のすべてのドットが一致した場合、正常である旨を表示或いは音声、ブザーにより検査作業者或いは定期保守員に通知し(ステップS07)、本処理を終了する。
【0029】
(実施例1の効果)
以上詳細に述べたように実施例1の自動取引装置によれば、表示部をフォトセンサ内蔵液晶パネルにて構成した自動取引装置であって、反射部材を前記表示部の上に置いて、テストパタンデータを表示し、前記表示部に表示された画像を前記表示部のフォトセンサにより読み取って比較し表示不良を検査するようにしたので、高精度、すなわち高価格となる設備も要することなく確実な検査を行うことができ、また、定期保守時などの場合においても確実な検査を行うことができる。
【実施例2】
【0030】
(構成)
実施例2の自動取引装置の外観構成、内部構成およびフォトセンサ内蔵液晶パネルの構成は、実施例1の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0031】
(動作)
上記構成により実施例2の自動取引装置1は以下のように動作する。この動作を図4の動作フローチャート図を用いて詳細に説明する。
【0032】
まず、検査作業者或いは定期保守員が、フォトセンサ内蔵液晶パネル4を操作して、テストプログラムを起動する。そして、例えば、「テストパタン表示後、N秒以内にミラーを表示部上に置いてください」とのガイダンスをフォトセンサ内蔵液晶パネル4に表示する(ステップS11)。
【0033】
次に、自動取引装置1の主制御部20は、記憶部28に格納されているテストパタンをフォトセンサ内蔵液晶パネル4に表示する(ステップS12)。
【0034】
ここで、テストパタンは、カラー表示の場合では、液晶の画素(赤)101r、画素(緑)101g、画素(青)101bをそれぞれテストする必要があるため、表示するテストパタンを各色にて順に表示するようにするのがよいことは実施例1と同様である。
【0035】
次に、自動取引装置1の主制御部20は、N秒、例えば10秒程度のタイマーを起動する(ステップS13)。
【0036】
検査作業者或いは定期保守員は、ステップS11にて「テストパタン表示後、N秒以内にミラーを表示部上に置いてください」とのガイダンスを見て、テストパタンが表示され始めてから表示部を覆う程度の反射部材10を表示部の上に置く。勿論、検査作業者或いは定期保守員が、反射部材10を表示部の上に置いてからテストパタンを表示するようにしてもよいことは実施例1と同様である。
【0037】
そして、N秒経過の間に、フォトセンサ内蔵液晶パネル4のフォトセンサの画像を読出し(ステップS14)、主制御部20により読み出した画像とテストパタンの比較を行う(ステップS15)。例えば、カラー表示の場合では、各色ごとのパタンのマッチングを液晶表示全体の各ドットごとに行い、明暗のチェックを行う。
【0038】
そして、不一致となったドットがあったときは、N秒経過かどうかを判定し(ステップS16)、N秒を経過していない場合は、ステップS14に戻り、フォトセンサにより画像を読み取り、テストパタンとの比較を繰り返す。
【0039】
一方、ステップS16にて、N秒を経過していた場合は、N秒間、画像比較を行ったが、一致しなかったとして、ドット抜けがあり不良である旨の表示或いは音声やブザーにより検査作業者或いは定期保守員に通知し(ステップS17)、本処理を終了する。
【0040】
一方、N秒間以内であっても、各色のすべてのドットが一致した場合などでは、正常である旨を表示或いは音声やブザーにより検査作業者或いは定期保守員に通知して(ステップS18)、本処理を終了する。
【0041】
(実施例2の効果)
以上詳細に述べたように実施例2の自動取引装置によれば、所定のテストパタンデータに基づいてフォトセンサ内蔵液晶パネルに表示された画像をフォトセンサ内蔵液晶パネルの近傍に置いた反射部材により反射させ、当該反射画像を前記フォトセンサ内蔵液晶パネルのフォトセンサにより読み取って前記テストパタンデータと比較し、当該比較により、一致した場合は、直ちに検査を終了するようにしたので、実施例1の効果に加え、正常な場合に所定の時間待つ必要がなく、検査時間を短くすることができる。
【0042】
《その他の変形例》
なお、以上の実施例の説明では、検査作業者或いは定期保守員が反射部材10をフォトセンサ内蔵液晶パネル4の上に置くように説明したが、反射部材10をフォトセンサ内蔵液晶パネル4の上に移動する機構を備え、テストプログラムにより反射部材10をフォトセンサ内蔵液晶パネル4上に移動するようにしてもよい。
【0043】
また、以上の実施例の説明では、反射部材10をフォトセンサ内蔵液晶パネル4上に置くように説明したが、反射部材10の角度を数度程度変え、別のフォトセンサ素子、例えば隣のフォントセンサ素子で受光するようにしてチェックするようにしてもよい。このようにした場合、反射部材10の角度を変えても、不良となる場合は発光側である液晶素子101側が不良であり、正常となる場合は、受光側であるフォトセンサ100側が不良であると判定することができる。
【0044】
なお、反射部材10にほこり等の汚れが付着した場合も、反射部材10の角度を変えても不良となるので、不良が連続する場合は、反射部材10のクリーニングを促すガイダンスを表示或いは音声・ブザーにより通知するようにするとよい。
【0045】
また、以上の実施例の説明では、反射部材10を通常のミラーとして説明したが、シート状の反射部材であってもよいし、フレネルレンズなどのレンズを備えたミラーとし、液晶画素を拡大或いは縮小して検査するようにしてもよい。
【0046】
また、以上の実施例の説明では、ドット抜けのチェックを行うように説明したが、フォトセンサの色ごとの受光強度を検査して色ムラを検査したり、動画を表示してフォトセンサにより取得した動画像との比較を行って、動的表示の検査を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上述べたように、本発明は、表示部を有する現金自動預払機等の自動取引装置に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 自動取引装置
4 フォトセンサ内蔵液晶パネル
10 反射部材
20 主制御部
22 音声案内部
100a フォトセンサ素子
101r、101g、101b 液晶画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のテストパタンデータに基づいてフォトセンサ内蔵液晶パネルに表示された画像をフォトセンサ内蔵液晶パネルの近傍に置いた反射部材により反射させ、
当該反射画像を前記フォトセンサ内蔵液晶パネルのフォトセンサにより読み取って前記テストパタンデータと比較し、不良を検査するようにしたことを特徴とするフォトセンサ内蔵液晶パネルの検査方法。
【請求項2】
前記比較は、所定の時間の間、行うようにしたことを特徴とする請求項1記載のフォトセンサ内蔵液晶パネルの検査方法。
【請求項3】
前記比較は、所定の時間内とし、一致したときは正常と判定し検査を終了するようにしたことを特徴とする請求項1記載のフォトセンサ内蔵液晶パネルの検査方法。
【請求項4】
前記反射部材をフォトセンサ内蔵液晶パネルと所定の角度を持たせて配置して前記比較を行い、表示不良およびセンサ不良を検査できるようにしたことを特徴とする請求項1記載のフォトセンサ内蔵液晶パネルの検査方法。
【請求項5】
実施例1ないし実施例4いずれか記載の検査方法を用いて検査するようにしたことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
表示部をフォトセンサ内蔵液晶パネルにて構成した自動取引装置であって、
実施例1ないし実施例4いずれか記載の検査方法を用いて前記フォトセンサ内蔵液晶パネルを検査するようにしたことを特徴とする自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−118169(P2011−118169A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275793(P2009−275793)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】