説明

表示装置の製造方法

【課題】一対の貼り合わせた基板を切断した後にその端面に薬剤を塗布する工程を円滑に行う方法を提供する。
【解決手段】まず、A面110に垂直クラックであるスクライブライン102を入れ(図a)、次に表裏を反転させてB面120にスクライブライン104を入れ(図b)、次にB面120側からブレイクバー42で加圧してA面110のスクライブライン102を垂直クラック103とし(図c)、次にA面110側からブレイクバー42で加圧してB面120のスクライブライン104を垂直クラック105とする(図d)ことで、分割され2枚の分割表示パネルユニット15を得る(図e)。分割表示パネルユニット15の切断端面は、基板11と基板12とで段差が生じているので、薬剤を塗布するディスペンサの先端52を、切断端面の段差に沿わせて移動させながら、薬剤を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶ディスプレイ等の表示装置について薄型化の要求がある。液晶ディスプレイ等の表示パネルにおいて最も厚みを有している部分は、例えばガラス等から成る、貼り合わされた一対の基板である。そこで、比較的厚いガラス基板を用いて表示パネルを組み立てた後に、一対のガラス基板の貼り合わされた外周を封止剤で封止し、フッ酸(HF)等から成る薬剤に浸潤させて、当該ガラス基板を表面から溶解させることにより、ガラス基板を薄くし、表示パネルの薄型化を図るエッチング工程が設けられることがある。このような技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−318547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、前記一対のガラス基板の外周を封止する際に、当該外周部に封止剤を円滑に塗布するために、貼り合わせる2枚の基板を僅かにずらして段差を設けることが開示されている。この段差は、封止剤を塗布するディスペンサの先端の位置を安定させる為のものである。
【0005】
表示装置の製造工程においては、例えば、大判の基板上に携帯電話用等の小さな表示パネルを複数形成し、その後当該大判の基板を切断して複数の小さな表示パネルを得ることが行われる。ここでは、この様な大きな基板に複数の表示パネルを形成したものを表示パネルユニットと呼ぶことにする。この様な複数の小さな表示パネルを形成した比較的大きな大判表示パネルユニットを用いる製造工程における前記の様な薄型化の為のエッチング工程では、表示パネルユニットの取り扱いの容易化のため、大判表示パネルユニットを、例えば4分割して4つの分割表示パネルユニットにし、その後エッチングを行うことがある。しかし乍この場合、切断後の分割表示パネルユニットに、エッチングのための外周封止剤の塗布を行おうとすると、切断面では、2枚の基板の端面が揃っており、前記の様に2枚の基板を僅かにずらした状態が実現せず、封止剤を円滑に供給できないという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、一対の基板を貼り合わせて形成した表示パネルユニットを切断し、その後に該切断端面に薬剤を塗布する工程を、円滑に行うことができる表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を果たすため、本発明の表示装置の製造方法の一態様は、間隙を設けて一対の基板を貼り合わせることで複数の表示パネルが作製された表示パネルユニットを、それぞれ少なくとも1個の表示パネルが含まれるように切断する際、前記一対の基板のうち一方の基板の切断面と他方の基板の切断面が該基板の平面方向にずれた位置とし切断し、前記表示パネルユニットの前記切断によって形成された切断面において、前記一対の基板のうち一方の基板の切断面と他方の基板の切断面が該一対の基板の平面方向にずれていることによって形成された段差に沿わせて、薬剤を塗布する塗布具の先端を移動させて該切断面の一対の基板の前記間隙に該薬剤を塗布する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に依れば、切断端面の2枚の基板に段差がつけられており、その段差に沿わせて薬剤を塗布する塗布具の先端を移動させることで、一対の基板を貼り合わせて形成した表示パネルユニットを切断し、その後に該切断端面に薬剤を塗布すること工程を、円滑に行うことができる表示装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る大判表示パネルユニット、その切断、及び封止剤の塗布を説明するための図。
【図2】本発明の一実施形態に係る大判表示パネルユニットにスクライブラインを入れる方法を説明するための図。
【図3】本発明の一実施形態に係る大判表示パネルユニットの切断工程を説明する図。
【図4】本発明の一実施形態の変形例に係る大判表示パネルユニットの切断工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。ここでは例として、図1(a)に示す通り、複数の表示パネル90を大判の基板を用いて形成し、その後当該大判の基板を切断して複数の小さな表示パネルを得る表示装置の製造方法の一工程について説明する。ここでは、この様な大きな基板に複数の表示パネルを形成したものを表示パネルユニットと呼ぶことにする。本実施形態では、図1(a)に示す通り、大判表示パネルユニット10を切断して例えば4つに分割し、ユニットエッチングのため外周を封止しようとする場合を考える。
【0011】
大判表示パネルユニットは、図1(b)に示す通り、大判の基板11と基板12を間隙を設けて貼り合わされて形成されている。大判表示パネルユニットの元々の外周は、大判表示パネルユニット10を製造する際に用いた一対の例えばガラス等から成る基板11及び基板12の端面に施された面取りによる曲面等のため、封止剤20を塗布するためのディスペンサの先端52を、基板11の山と基板12の山との間に押し付けるようにして沿わせて移動させると、ディスペンサの先端52がぶれない。また、ディスペンサにより封止剤20を塗布すると、基板11の山と基板12の山の形状のため、毛細管現象により封止剤20は基板11と基板12の間に自然と流入する。
【0012】
しかし、図1(c)に示す通り、従来の切断方法により切断した端面は平坦であるため、封止剤20を塗布するためのディスペンサの先端52を、基板11と基板12の境目に沿って移動させようとしても、ディスペンサの先端52がぶれてしまい、安定して封止剤20を塗布することが困難である。また、前記の様に、面取りが施されている面の場合の様に、塗布した封止剤20が基板11と基板12の間に効率よく流入しない。
【0013】
そこで、本実施形態では、大判表示パネルユニット10を切断した端面において、基板11と基板12にずれが生じる様に、大判表示パネルユニット10を切断する。当該切断工程は、以下の4つの工程により成る。
【0014】
第1工程において大判表示パネルユニット10は、図2及び図3(a)に示す通り、例えば、基板11を上にして、スクライバ30のスクライブテーブル32に設置される。スクライブテーブル32は、大判表示パネルユニット10が動かないように、例えば真空吸着で大判表示パネルユニット10を保持する。そして、例えば焼結ダイヤ製等のカッターホイールチップ34を取り付けたスクライバ30は、ガラス基板のガラス表面に垂直クラックであるスクライブライン102を入れる。ここでガラス基板の両面のうち、初めにスクライブライン102を入れる面をA面110と呼ぶことにする。
【0015】
第2工程において大判表示パネルユニット10は、図3(b)に示す通り、表裏を反転され、スクライブテーブル32に設置される。そして、第1工程と同様に、スクライバ30は、ガラス基板のガラス表面にスクライブライン104を入れる。ここで、大判表示パネルユニット10のA面110と反対側の面であり、スクライブライン104を入れる面をB面120と呼ぶことにする。A面110のスクライブライン102とB面120のスクライブライン104は平行であり、且つガラス基板の面方向に平行移動させた位置とする。即ち図3(b)にΔで示したずれを生じさせる。
【0016】
第3工程において大判表示パネルユニット10は、図3(c)に示す通り、B面120を上にする様に、ブレイクマシンのブレイクテーブルに設置され、ブレイクバー42でB面120側から押圧される。すると、A面110のスクライブライン102の垂直クラックは、助長させられ垂直クラック103となる。
【0017】
第4工程において、大判表示パネルユニット10は、図3(d)に示す通り、表裏を反転され、ブレイクテーブルに設置され、ブレイクバー42でA面110側から押圧される。すると、B面120のスクライブライン104の垂直クラックは、助長させられ垂直クラック105となる。その結果、大判表示パネルユニット10は、図3(e)に示す通り、分割され2枚の分割表示パネルユニット15と成る。
【0018】
尚、第3工程と第4工程の順序を入れ替えても良いことは勿論である。即ち、まず、A面110を上にし、A面110側からブレイクバー42で押圧し、B面120のスクライブライン104を垂直クラック105とし、次に表裏を反転させて、B面120側からブレイクバー42で押圧し、A面110のスクライブライン102を垂直クラック103としても良い。
【0019】
同様の工程により、分割表示パネルユニット15を更に切断して、大判表示パネルユニット10を4分割した分割表示パネルユニット15を作製する。
【0020】
次に、分割表示パネルユニット15の外周を封止する封止工程に移る。前記の通り切断して得られた分割表示パネルユニット15の切断端面は、基板11の断面と基板12の断面とに段差が生じている。従って、図1(d)に示す様に、本封止工程では、ディスペンサの先端52を切断端面の段差に沿わせて移動させながら、封止剤20を塗布する。即ち、ディスペンサの先端52を、基板11と基板12の段差に押し付けるようにして移動させる。するとディスペンサの先端52は、ぶれずに安定して移動する。
【0021】
以上の説明の通り、本実施形態に係る切断方法を用いると、封止剤20の塗布時に、封止剤20を塗布するためのディスペンサの先端52を、基板11と基板12の間に生じる段差に沿わせて移動させることができる。その結果、ディスペンサの先端52がぶれず、基板11と基板12の隙間に沿って、安定して移動させることができる。また、前記段差部分に封止剤20を塗布すると、この段差形状のため、毛細管現象により封止剤20は基板11と基板12の間に自然と流入する。その結果、今まで困難であった切断面の封止を容易にし、歩留まりを向上させ、タクトタイムロスを減少させることができる。
【0022】
[変形例]
次に、本実施形態に係る大判表示パネルユニット10の切断工程の変形例について図面を参照して説明する。ここで本変形例の説明では、前記実施形態との相違点について説明し、前記実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0023】
本変形例に係る大判表示パネルユニット10の切断工程は、図4に示す通り、前記実施形態に係る第2工程と第3工程の順序を入れ替えたものである。即ち、第1の工程(図4(a))において、前記実施形態と同様に大判表示パネルユニット10のA面110にスクライブライン102が入れられる。第2工程(図4(b))において、大判表示パネルユニット10は、表裏を反転され、ブレイクバー42でB面120側から加圧される。その結果、A面110のスクライブライン102の垂直クラックを助長させられ、垂直クラック103と成る。第3工程(図4(c))において、B面120にスクライブライン104を入れられる。第4工程(図4(d))において、大判表示パネルユニット10は、表裏を反転され、ブレイクバー42でA面110側から加圧される。その結果、B面120のスクライブライン104の垂直クラックを助長させられ、垂直クラック105と成る。その結果、大判表示パネルユニット10は、図4(e)に示す通り、分割され2枚の分割表示パネルユニット15と成る。
【0024】
封止工程は前記実施形態の場合と同じである。
【0025】
本変形例の工程により大判表示パネルユニット10切断しても、前記実施形態と同様に基板11と基板12とで段差がついているので、図1(d)に示す様に、ディスペンサの先端52を切断端面の段差に沿わせて移動させながら、封止剤20を塗布することができる。その結果、前記実施形態と同様に、封止剤20の塗布時に、封止剤20を塗布するためのディスペンサの先端52を、基板11の山と基板12の山との間に沿わせて移動させることができる。その結果、ディスペンサの先端52がぶれず、基板11と基板12の隙間に沿って、安定して移動させることができる。また、前記段差部分に封止剤20を塗布すると、この段差形状のため、毛細管現象により封止剤20は基板11と基板12の間に自然と流入する。その結果、今まで困難であった切断面の封止を容易にし、歩留まりを向上させ、タクトタイムロスを減少させることができる。
【0026】
[実施例]
以上に説明した、実施形態及びその変形例に依る切断及び封止の方法は、例えば880mm×680mmの大判表示パネルユニットを4分割してユニットエッチングする場合に用いることができる。例えば、図3(b)中にΔで示した前記A面110に入れるスクライブライン102とB面120に入れるスクライブライン104との面方向のずれは、2mmとするなどが考えられる。この様に、一対の基板を2mmずらして切断し、その後外周を封止剤で封止する。その際に、元々の大判表示パネルユニットの外周に封止剤を塗布する際には、一対の基板のそれぞれの端面に施された面取りの曲面などによって生じている段差に沿わせて、ディスペンサの先端を移動させる。一方、切断面に封止剤を塗布する際には、本実施形態に係る切断工程によりできた段差に沿わせて、ディスペンサの先端を移動させれば良い。この際用いる封止剤としては、熱硬化性の樹脂等でも良いし、紫外線硬化性の樹脂等でも良い。但し、その後のユニットエッチングの際に用いる、フッ酸を含む薬剤に対する耐性が必要である。封止をしたら、当該分割し封止した表示パネルユニットを、フッ酸を含む薬剤が入った反応槽に浸潤させ、ガラス基板表面のエッチングを行う。例えば、一対のガラス基板それぞれについて、厚さが0.5mmであったものを、厚さ0.2mm程度まで薄くすることができる。
【0027】
尚、本実施形態に係る切断及び封止方法は、勿論、前記例を挙げて説明した大判表示パネルユニットを4分割してユニットエッチングを行う場合に用いるに限らない。即ち、2枚の基板を貼り合わせて形成した表示パネルユニットを切断し、その後外周部分にディスペンサにより薬剤を塗布するプロセス全般に用いることができる。
【0028】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0029】
10…大判表示パネルユニット、11…基板、12…基板、15…分割表示パネルユニット、20…封止剤、30…スクライバ、32…スクライブテーブル、34…カッターホイールチップ、42…ブレイクバー、52…ディスペンサの先端、90…表示パネル、102…スクライブライン、103…垂直クラック、104…スクライブライン、105…垂直クラック、110…A面、120…B面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙を設けて一対の基板を貼り合わせることで複数の表示パネルが作製された表示パネルユニットを、それぞれ少なくとも1個の表示パネルが含まれるように切断する際、前記一対の基板のうち一方の基板の切断面と他方の基板の切断面が該基板の平面方向にずれた位置とし切断し、
前記表示パネルユニットの前記切断によって形成された切断面において、前記一対の基板のうち一方の基板の切断面と他方の基板の切断面が該一対の基板の平面方向にずれていることによって形成された段差に沿わせて、薬剤を塗布する塗布具の先端を移動させて該切断面の一対の基板の前記間隙に該薬剤を塗布する、
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記一対の基板のうち一方の基板の表面の切断面を形成する位置に切込みを入れ、
前記一対の基板のうち他方の基板の表面の切断面を形成する位置に切込みを入れ、
前記一対の基板のうち一方の基板を該基板の基板面に対する法線方向に押圧し、
前記一対の基板のうち他方の基板を該基板の基板面に対する法線方向に押圧して、
前記一対の基板のうち一方の基板の切断面と他方の基板の切断面が該基板の平面方向にずれた位置として切断することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記一対の基板のうち一方の基板の表面の切断面を形成する位置に切込みを入れ、
前記一対の基板のうち前記切込みを入れた基板と異なる基板側から、該基板の基板面に対する法線方向に押圧し、
前記一対の基板のうち前記切込みを入れた基板と異なる基板の表面の切断面を形成する位置に切込みを入れ、
前記押圧した側の基板と異なる基板の側から、該基板の基板面に対する法線方向に押圧して、
前記一対の基板のうち一方の基板の切断面と他方の基板の切断面が該基板の平面方向にずれた位置として切断することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−145489(P2011−145489A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6132(P2010−6132)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】