説明

表示装置の製造方法

【課題】フレキシブルディスプレイの製造方法において、流品中は膜剥がれを防ぎ、最終的には支持基板とポリイミドフィルムを表示領域の素子変動を抑制可能な剥離による表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】
表示装置の製造方法は、支持基板の上にフィルム材料層を形成する工程と、前記フィルム材料層を加熱してフィルム層を形成する第1の加熱工程と、前記フィルム層の中央部に設けられた第1領域を囲む第2領域を、前記第1の加熱工程より高い温度で加熱する第2の加熱工程と、前記第1領域の一部に表示層を形成し前記第2領域の少なくとも一部に周辺回路部を形成する工程と、前記フィルム層のうち表示層が形成された範囲以外の少なくとも一部を前記第2の加熱工程より高い温度で加熱する第3の加熱工程と、前記支持基板と前記フィルム層とを剥離する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子や電界発光素子(エレクトロルミネッセンス素子、EL素子)などの表示素子を用いた表示装置には、軽量化や大型化という要求に加え、長期信頼性、形状の自由性が高いこと、曲面表示が可能なことなどの高度な要求がなされている。そこで、表示装置に用いる基板としては、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって、透明プラスチック等のフィルム層が注目を集めている。ロールトゥーロールプロセスによってプラスチックを用いた表示を形成することも可能であるが、コスト面を考慮すると、ガラス基板などの支持基板の上にフィルム層を設け、フィルム層上に回路および表示層を形成したのちに、フィルム層を支持基板から剥離して表示装置を形成する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−512568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、回路および表示層を形成する際には支持基板とフィルム層とが剥離しにくく、回路および表示層を形成したのちには支持基板とフィルム層とを剥離し易い表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る表示装置の製造方法は、支持基板の上にフィルム材料層を形成する工程と、前記フィルム材料層を加熱してフィルム層を形成する第1の加熱工程と、前記フィルム層の中央部に設けられた第1領域を囲む第2領域を、前記第1の加熱工程より高い温度で加熱する第2の加熱工程と、前記第1領域の一部に表示層を形成し前記第2領域の少なくとも一部に周辺回路部を形成する工程と、前記フィルム層のうち表示層が形成された範囲以外の少なくとも一部を前記第2の加熱工程より高い温度で加熱する第3の加熱工程と、前記支持基板と前記フィルム層とを剥離する工程と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態に係る表示装置の上面図である。
【図2】実施形態に係る表示装置の一部断面図である。
【図3】実施形態に係る表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図4】実施形態に係る表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】実施形態に係る表示装置の製造工程を示す平面図である。
【図6】レーザのエネルギー密度と荷重との関係を示す図である。
【図7】画素TFTに紫外線を照射する前後の電流電圧特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0008】
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1は、実施形態に係る表示装置400の上面図である。図2(a)は図1における表示装置400のAA線断面を示し、すなわち後述する第1領域の断面を示す。図2(b)は表示装置400のBB線断図を示し、すなわち後述する第2領域の断面を示す。
【0010】
図1に示すように、表示装置400は一主面を有する。表示装置400の一主面はその中央部に設けられた第1領域310と、第1領域310を囲む第2領域320とを有する。第1領域310の端辺が表示装置400の一主面の端辺よりも内側に設けられていることとする。図1においては、第1領域310と第2領域320との境界を、破線を用いて示している。
【0011】
第1領域310には表示層311および画素回路部312が設けられる。表示層311とは、例えば、液晶層や有機電界発光層(OLED層)などである。第2領域の少なくもと一部には、周辺回路部321や実装部322(図4に示す)が設けられる。周辺回路部321は、表示層311を駆動するための回路である。また、実装部322は、表示装置に接続可能な中継基板が接続される部分である。
【0012】
ここでは、表示装置400はアクティブマトリクス型の表示装置とする。図2(a)に示すように、第1領域310には、フィルム基板110と、フィルム基板110上に形成された画素用TFT(薄膜トランジスタ、Thin Film Transistor)310Tと、画素用TFT310T上にパッシベーション膜180およびカラーフィルタ190を介して設けられた表示層311が設けられている。画素用TFT310Tは、画素回路部312の一部であり、表示層311を駆動するためのスイッチング素子として機能する。
【0013】
表示層311として、ここでは有機電界発光層を用いることとする。フィルム基板110の表示層311と対向する主面と反対側の主面には、偏光板100が設けられている。フィルム層110と画素用TFT311の間にはアンダーコート層120が設けられている。表示層311上には、表示層311への水分等の侵入を防止する封止膜240が設けられている。封止膜240上には、接着層250を介してバリアフィルム260が設けられている。バリアフィルム260は、表示層311への水分等の浸入を防止するとともに支持材としての機能を有する。
【0014】
画素用TFT310Tは、ここではボトムゲート型の薄膜トランジスタとする。アンダーコート層120上の一部に設けられたゲート電極130と、ゲート電極130を覆うゲート絶縁膜140と、ゲート絶縁膜140を介してゲート電極130と対向する半導体層150と、半導体層150上の一部に設けられたチャネル保護膜160と、チャネル保護膜160からする半導体層150と接続されたソース電極170Sおよびドレイン電極170Dと、を有する。半導体層150としては、酸化物半導体やシリコン半導体を用いることができる。酸化物半導体としては、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を含む酸化物を用いることができる。具体的には、酸化物半導体として、インジウムガリウム亜鉛酸化物を用いることができる。画素用TFT310Tは、不図示の信号線、走査線とともに画素回路部310を形成する。
【0015】
パッシベーション膜180は、絶縁性の材料で形成される。カラーフィルタ190は特定の波長の光を透過し、例えば、赤色の光を透過する部分、緑色の光を透過する部分、青色の光を透過する部分を有する。パッシベーション膜180およびカラーフィルタ190には、ドレイン電極170Dを覆う一部に開口が設けられている。
【0016】
表示層311は、カラーフィルタ190上に設けられた陽極200と、陽極200上に設けられたバンク210と、バンク210上に設けられた発光層220と、発光層220上に設けられた陰極230と、を有する。陽極200は、パッシベーション膜180およびカラーフィルタ190の開口を介してドレイン電極170Dと接続される。バンク210は少なくとも画素用TFT310T上に設けられ、一部に開口を有する。発光層220および陰極230は、バンク210とバンク210から露出する陽極200の上に設けられている。発光層220はバンク210の開口を介して陽極200と接触する。すなわち、バンク210の開口においては、陰極200と発光層220と陰極230とが積層されている。表示層311に電圧を印加すると、発光層220から光が放出される。
【0017】
第2領域320には、フィルム基板110と、フィルム基板110上に設けられた周辺回路用TFT320Tを有する。周辺回路用TFT320T上にはパッシベーション膜180が設けられている。周辺回路用TFT320Tは、不図示の信号線、走査線とともに周辺回路部320を形成する。
【0018】
周辺回路用TFT320Tは、ここではボトムゲート型の薄膜トランジスタとする。アンダーコート層120上の一部に設けられたゲート電極130と、ゲート電極130を覆うゲート絶縁膜140と、ゲート絶縁膜140を介してゲート電極130と対向する半導体層150と、半導体層150上の一部に設けられたチャネル保護膜160と、チャネル保護膜160からする半導体層150と接続されたソース電極170Sおよびドレイン電極170Dと、を有する。周辺回路用TFT320Tは、不図示の配線と共に駆動回路を形成する。酸化物半導体としては、例えば、アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物(a-IGZO)など、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を含む酸化物を用いることができる。
【0019】
表示装置400はアクティブマトリクス型のものとしたが、パッシブ型の表示装置とすることもできる。また、画素用TFT310T及び周辺回路用TFT320Tはボトムゲート型のものとしたが、トップゲート型のものとすることもできる。
【0020】
図2(a)、(b)では画素用TFT311Tおよび周辺回路用TFT320Tとしてトップゲート型の構成を例示したが、ボトムゲート型の構成とすることもできる。カラーフィルタ190は、必要に応じて設けられるものである。
【0021】
フィルム層110としてはポリイミド系樹脂を用いる。ポリイミドを用いたフィルム層110は、耐熱性を有し、また熱膨張係数が小さいため加熱による寸法変化が生じにくい。ポリイミド系樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミドエステル、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等、その構造中にイミド基を有するポリマーが挙げられる。ポリイミド系樹脂は、ジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で反応させてポリアミド酸重合体を生成し、ポリアミド酸重合体を脱水閉環する(イミド化)ことで形成することが出来る。
【0022】
アンダーコート層120、ゲート絶縁膜140およびチャネル保護膜160としては、絶縁性の材料を用いることができ、例えば酸化シリコンや窒化シリコンなどを用いることができる。
【0023】
ゲート電極130、ソース電極170Sおよびドレイン電極170Dとしては、導電性の金属を用いることができる。例えば、ゲート電極130としてモリブデンタングステン(MoW)、モリブデンタンタル(MoTa)、タングステン(W)のような高融点金属を用いることができる。例えば、ソース電極140Sとドレイン電極140Dとして、導電性の材料を用いることができる。例えば、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/チタン(Ti)やモリブデン(Mo)/アルミニウム(Al)/モリブデン(Mo)の積層膜やインジウムタングステンオキサイド(ITO)などを用いることができる。
【0024】
パッシベーション膜180としては、絶縁性の材料を用いることができ、例えば酸化シリコン、窒化シリコンやテトラエトキシシランなどを用いることができる。
【0025】
カラーフィルタ190としては、所定の波長の光を透過する材料を用いることができ、例えば赤、緑、青それぞれの色の光を透過し、他の色の可視光を吸収する顔料を用いることができる。
【0026】
陰極200としては導電性の材料を用いることができ、たとえば酸化インジウムスズ(ITO)などの金属を用いることができる。バンク200としては、絶縁性の材料を用いることができ、例えば感光性アクリル樹脂などの樹脂材料を用いることができる。発光層210としては、下層のカラーフィルタ190が透過する光と同じ色の光を放出する発光材料をホスト材料中に分散させたものを用いることができる。あるいは赤の光を放出する発光材料と緑の光を放出する発光材料と青の光を放出する発光材料とを含むホスト材料を用いることができる。
【0027】
陽極230としては、光透過性で導電性の材料を用いることができ、たとえばアルミニウム(Al)などの金属を用いることができる。
【0028】
封止膜240としては光透過性で絶縁性の材料を用いることができ、たとえばシリコン酸化物やアルミニウム酸化物などの酸化物や、シリコン窒化物などの窒化物,や、パリレンなどの有機膜や、これらの積層膜を用いることができる。接着250としては光透過性の材料を用いることができ、例えば熱硬化性樹脂や光硬化性の樹脂を用いることができる。バリアフィルム260としては光透過性の材料を用いることができ、例えばプラスチック基材に封止膜材料をコーティングしたものなどを用いることができる。
【0029】
後述する支持基板90は、画素回路部312や周辺回路部321、表示層311および実装部322を形成する際にフィルム層110を支持することができる強度を有し、フィルム層110以上の耐熱性を有する。支持基板90は透明であることが好ましい。支持基板90としては、例えばガラス基板を用いることができる。
【0030】
フィルム層110は耐熱性が低いため、フィルム層110を用いた表示装置は低温で製造する必要がある。酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタは、低温で作製してもが十分な特性を発揮することができる。特に、IGZOは、駆動電流が高く、素子間ばらつきが小さく、特性を素子間で均一にしやすいアモルファス膜で、しかも移動度が比較的高い。
【0031】
また、有機電界発光層はコントラストが高く、斜め方向からでも良く見えるという性質を有するため、曲面表示が可能な表示装置の表示層311に用いることができる。
【0032】
図3および図4は、実施形態に係る表示装置の製造工程を示す断面図である。図5は、実施形態に係る表示装置の製造工程を示す平面図である。図5(a)乃至(c)に示す製造方法の各工程は図4(a)乃至(c)に示す製造方法の各工程と対応する。
【0033】
本実施形態においては、支持基板90上にフィルム層110を形成し、フィルム層110上に画素回路部312、周辺回路部321、表示層311、および実装部322を形成したのちにフィルム層110を支持基板90から剥離して、曲面表示が可能な表示装置400を製造する。
【0034】
まずは図3(a)に示すような支持基板90上にフィルム層110を形成する工程について説明する。本実施形態においては、フィルム層110の材料としてポリイミドを用いる。
【0035】
支持基板90の上に、フィルム材料層111としてポリアミド酸溶液を塗布したのちに乾燥し、フィルム材料層111を形成する(図3(b))。
【0036】
フィルム材料層111を熱処理することによってポリアミド酢酸をイミド化し、支持基板90の上にポリイミドからなるフィルム層110を形成する(第1の加熱工程、図3(c))。
【0037】
熱処理としては、例えばランプアニールや、ホットプレート、オーブンなどを使った加熱方法を用いることができる。
【0038】
第1の加熱工程におけるフィルム材料層111の温度をT1とする。T1は、フィルム材料層111をフィルム層110とすることができる温度以上であれば良い。例えば、T1を200℃以上500℃以下度以上とすることができる。フィルム材料層111に200℃以上500℃の熱を加えることにより、ポリイミド樹脂製のフィルム層110を形成することができる。
【0039】
支持基板90は、フィルム材料層111を形成する際の支持体としての機能を持つ。
【0040】
次に、フィルム層110の中央部に設けられた第1領域310を囲む第2領域320の少なくとも一部を、第1の加熱工程より高い温度で加熱する(第2の加熱工程、図4(a)、図5(a))。第1領域310には、後に画素回路部312および表示層311が形成される。第2領域320には、後に周辺回路部321および実装部322が形成される。第2の加熱工程における加熱方法としては、例えばフィルム層110に対して可視光、赤外線、紫外線、マイクロ波、ミリ波、電子線、放射線を照射したり、ジュール熱によって加熱したりする方法が挙げられる。例えば、レーザを照射したり、ハロゲンランプにより加熱したりする方法がある。図4(a)においてはレーザ1を照射した場合を示している。
【0041】
第2の加熱工程としてレーザ照射を行う場合には、例えば、Nd、Tm、HoをドープしたYAG、YVO4、YLF、YAlO3で示される結晶を使った固体レーザ、エキシマレーザ、COレーザ、アルゴンレーザ、または半導体レーザを用いることができる。例えばキセノン・塩素(XeCl)エキシマレーザを用いることができる。
【0042】
第2の加熱工程におけるフィルム層110の温度は、第1の加熱工程におけるフィルム層110の温度よりも高くする。第2の加熱工程におけるフィルム層110の温度をT2とする。T1とT2は、T1<T2の関係にある。具体的には、第2の加熱工程としてレーザを用いる場合には、レーザの波長、パルス幅、レーザを繰り返し照射するときの周波数などの条件によりT2を調整することができる。
【0043】
例えば、第1の加熱工程をホットプレートとオーブンにより行いT1を350℃とする。第2の加熱工程にXeClエキシマレーザを用い、レーザのエネルギーを160mJ/cm2、中心波長を308nm、繰り返し周波数を300Hz、パルス幅を29 ナノ秒とすること場合、T2を1000℃以上とすることができる。
【0044】
第2の加熱工程により、加熱された部分320Lにおける支持基板90とフィルム層110との密着性が高まる。第2の加熱工程により加熱されていない部分においては、支持基板90とフィルム層110との密着力はそのままである。
【0045】
続いて、フィルム層110上の第1領域310に画素回路部312を形成し、第2領域に周辺回路部321を形成したのちに第1領域310に表示層311を形成し、第2領域に実装部322を設ける(図4(b)、図5(b))。
【0046】
そして、第2領域320のうち、第2の加熱工程により過熱した範囲の少なくとも一部を過熱する(第3の加熱工程、図4(c)、図5(c))。第3の加熱工程におけるフィルム層110の温度は、第2の加熱工程におけるフィルム層110の温度よりも高くする。第3の加熱工程におけるフィルム層110の温度をT3とする。T2とT3は、T2<T3の関係にある。第3の加熱工程における加熱方法としては、例えばフィルム層110に対して可視光、赤外線、紫外線、マイクロ波、ミリ波、電子線、放射線を照射したり、ジュール熱によって加熱したりする方法が挙げられる。例えば、レーザを照射したり、ハロゲンランプにより加熱したりする方法がある。
【0047】
図4(c)においてはレーザ2を照射した場合を示している。第3の加熱工程としてレーザ照射を行う場合には、例えば、Nd、Tm、HoをドープしたYAG、YVO4、YLF、YAlOで示される結晶を使った固体レーザ、エキシマレーザ、COレーザ、アルゴンレーザ、または半導体レーザを用いることができる。第3の加熱工程としてレーザを用いる場合、レーザの波長、パルス幅、レーザを繰り返し照射するときの周波数などの条件によりT3を調整することができる。例えばキセノン・塩素(XeCl)エキシマレーザを用いることができる。XeClエキシマレーザを用いる場合、エネルギーを180mJ/cm2、中心波長を308 nm、繰り返し周波数を300Hz、パルス幅を29 ナノ秒とすることができる。
【0048】
第3の加熱工程により過熱する部分320Mは、ここでは周辺回路部321および実装部322が設けられた部分とする。第3の加熱工程に過熱する部分320Mは、第2の加熱工程により過熱する部分320Lのりも広くても狭くても良い。
【0049】
第3の加熱工程により支持基板90とフィルム層110に高いエネルギーが加えられるので、フィルム層110を支持基板90から剥離することが出来る。例えば第3の加熱工程をレーザ照射により行う場合、支持基板90側からレーザ2を照射してレーザを照射し、照射した部分の支持基板90とフィルム層110を剥離する。レーザを照射した部分以外の部分については機械的に支持基板90とフィルム層110を剥離する(図4(d))。
【0050】
機械的に支持基板90と支持基板110とを剥離するには、例えば剥離装置などを用いることができる。
【0051】
第2の加熱工程によりフィルム層110の第2領域320の温度を選択的に上昇させることで、フィルム層110と支持基板90との密着力を上昇させることができる。密着力向上のモデルは幾つか考えられるが、フィルム層110の温度を上昇させることで、フィルム層110内のイミド化をさらに進行させ、生じた水分を支持基板90側へ逃がす効果により密着力が向上すると予想される。
【0052】
第2領域320の少なくとも一部の密着力を高めることにより、後に画素回路部312、周辺回路部320、表示層311および実装部322を形成する際に、フィルム層110が支持基板90から剥離しにくくなる。従って、に画素回路部312、周辺回路部321、表示層311および実装部322を形成しやすくなるので、表示装置400は製造の歩留まりを向上させることができる。に画素回路部312、周辺回路部321、表示層311および実装部322を形成する際には熱が加えられるため、フィルム層110が支持基板90から剥離すると、フィルム層110の寸法が変化する虞がある。
【0053】
フィルム層110上に画素回路部312、周辺回路部321、表示層311および実装部322を形成するには、既存のガラス基板上のプロセスと同じ方法により行うことができる。すなわち、ガラス基板にアクティブマトリックス方式の表示装置を形成するのと同様にしてフィルム層110上にこれらを形成することが可能である。
【0054】
第2の加熱工程において、支持基板90とフィルム層110の密着力を向上させた部分については、機械的に剥離しようとすると、フィルム層110にしわや伸び、裂けなどの剥離不良が起こる。この部分にレーザ照射を行うことによって、フィルム層110が支持基板90から浮かせてフィルム層110を支持基板90から剥離することができる。レーザのエネルギーは、フィルム層110を支持基板90から浮かせられる程度以上とすればよい。
【0055】
実装部は温度をかけた状態で圧着することによって設けるので、これによりフィルム層110と支持基板90の密着力がさらに高まり、剥離が難しくなる場合がある。従って、剥離のためにレーザを照射するのは第2領域320の一部であっても全部であってもよいが、特に実装部322が設けられた部分にレーザを照射することが好ましい。
【0056】
第1領域310の画素回路部312や表示層311は、レーザ照射により特性変動を生じる可能性がある。特に画素回路部312に設けられる画素TFT310Tに酸化物半導体を用いる場合や、表示層311として有機電界発光層220を用いる場合には、加熱やレーザのエネルギーが加えられることにより表示装置400の表示品位が劣る可能性がある。しかし、本実施形態によると、第1領域310においては第2の工程を行わず支持基板90とフィルム層110の密着力を高めないため、レーザ照射によらず機械的な剥離によってフィルム層110を支持基板90から剥離することができる
また、支持基板90の透湿度は、支持基板90とフィルム層110との剥離性に影響がある。フィルム材料層111に含まれる有機溶剤が、フィルム材料層111を乾燥する際およびイミド化する際に、支持基板90とフィルム層110との界面に集中する。またイミド化により生成される水分子が支持基板90とポリイミドフィルム層110との界面に集中する。これにより、支持基板90とフィルム層110の密着が阻害される。従って、後にフィルム層110上に画素回路部312、周辺回路部321、表示層311や実装部322を形成する際に、フィルム層110が支持基板90から容易に剥離してしまう場合がある。
【0057】
ここで、支持基板90の透湿度が大きければ、支持基板90とフィルム層110との界面に存在する水分子および有機溶剤を外側に通すため、支持基板90とフィルム層110との密着性を高くすることができる。ただし密着性が高すぎると、フィルム層110上に画素回路部312、周辺回路部321、表示層311、および実装部322を形成したのちにフィルム層310を支持基板90から剥離する際に剥離が困難になる。一方、支持基板90の透湿度が小さければ、支持基板90とフィルム層110との界面に水分子および有機溶剤を留めるため、画素回路部312、周辺回路部321、表示層311および実装部322を形成する際にフィルム層110のが支持基板90から浮く可能性がある。従って、支持基板90の透湿度によって支持基板90とフィルム層110の密着性を調節することができる。
【0058】
さらに、フィルム層110に用いるポリイミドはある程度の透湿度を有しているため、時間経過により支持基板90とフィルム層110との界面の水分量が変わる虞がある。また支持基板90とフィルム層110との表面自由エネルギーや、環境温度や環境湿度などの外部要因によっても界面の水分量は変動するため、界面の水分量の制御が難しく、一定の強度でフィルム層110と支持基板90の剥離を行うことは難しい。このようにフィルム層110と支持基板90との剥離性(または密着性)を制御することは困難である。
【0059】
しかし、本実施形態によると第1領域310と第2領域320の密着力を変えることができるので、表示装置によらず一定の強度でフィルム層110と支持基板90の剥離を行うことができ、量産性に優れる。
【0060】
特に、第2の加熱工程により加熱する部分が第1領域310を囲むような形状であれば、第1領域310周辺部の密着性が向上する。従って、画素回路部312、周辺回路部312、表示層311、および実装部322を形成するためのウェットプロセスにおいて環境雰囲気に含まれる液体やガスが支持基板90とフィルム層110との間に入る可能性を減らすことができ、支持基板90とフィルム層110との間の水分量が変化しにくくなる。第1領域310を囲むような形状としては、第1領域310が略矩形状であれば額縁状、第1領域310が略円形であれば環状とすることができる。
【0061】
以上のように、本実施形態によると、画素回路部312、周辺回路部312、表示層311、および実装部322を形成する際には支持基板90とフィルム層110とが剥離しにくく、画素回路部312、周辺回路部312、表示層311、および実装部322を形成したのちには支持基板90とフィルム層110とを剥離し易い表示装置およびその製造方法を提供することができる。
【0062】
(実施例)
第2の加熱工程による支持基板とフィルム層との密着力の評価を行ったので以下に説明する。
ガラス基板上(膜厚700μm)に塗布形成したポリイミドフィルム(10μm)に上部支持基板としてPEN基板を貼り付け、レーザ照射による密着性およびポリイミドの状態に関する評価を行った。レーザとしてXeClエキシマレーザ(中心波長308 nm)を用い、ガラス基板を介してポリイミド界面に照射した。XeClレーザをパルス化し、ビームをライン形状200mm×0.4mmとした。
【0063】
図6は第2の加熱工程としてレーザ照射を用いた場合のレーザのエネルギー密度と、支持基板とフィルム層とを剥離するのに要した荷重と、の関係を示す図である。縦軸にレーザのエネルギー密度を表し、横軸に支持基板とフィルム層とを剥離するのに要した荷重を表す。
【0064】
レーザのエネルギー密度を100mJ/cm2乃至300mJ/cm2の範囲でレーザ照射を行った結果、180mJ/cm2以上で明らかにポリイミドフィルムとガラス基板の間に空間が出来たことが確認された。従ってレーザのエネルギー密度を180mJ/cm2以上とすると、ポリイミドが浮くことが分かった。また160mJ/cm2では照射後にポリイミド層自身に見た目の変化が無いが剥離試験を行った結果、密着力が大幅に上がり、それ以下のエネルギー密度の領域では見た目にも剥離強度にも変化が無いこと分かった。密着力を図に示したが、ポリイミドが浮く直前に密着力が向上していることが分かる。これはT2>T1となり、フィルム層のイミド化が進行した結果と予想される。すなわち、第1の加熱工程よりも高いエネルギーを与える第2の加熱工程を行うことにより、フィルム層と支持基板との密着性が向上する。
【0065】
また、この表示装置について、第1領域に紫外(UV)光を照射する前401と照射した後の402の、画素用TFTの電流電圧特性を図7に示す。図7の横軸がゲート電圧、縦軸がドレイン電流を示す。第1領域に紫外光が照射されると、画素用TFTの電流電圧特性が負にシフトしている。すなわち、第2の加熱工程、及び第3の加熱工程を第1領域に施すと、画素用TFTについて所望の特性が得られず、表示装置の表示品位が悪くなる場合がある。
【0066】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0067】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0068】
90 支持基板、100 偏光板、110 フィルム層、111 フィルム材料層、120 アンダーコート層、130 ゲート電極、140 ゲート絶縁膜、150 半導体層、160 チャネル保護膜、170S ソース電極、170D ドレイン電極、180 パッシベーション膜、190 カラーフィルタ、200 陽極、210 バンク、220 発光層、230 陰極、240 封止膜、250 接着層、260 バリアフィルム、310 第1領域、310T 画素用TFT、311 表示層、312 画素回路部、320 第2領域、320L 第2の加熱工程により加熱された部分、320M 第3の加熱工程により過熱する部分、320T 周辺回路用TFT、321 周辺回路部、322 実装部、400 表示装置、401 第1領域に紫外(UV)光を照射する前の状態を表す曲線、402 第1領域に紫外(UV)光を照射した後の状態を表す曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板の上にフィルム材料層を形成する工程と、
前記フィルム材料層を加熱してフィルム層を形成する第1の加熱工程と、
前記フィルム層の中央部に設けられた第1領域を囲む第2領域を、前記第1の加熱工程より高い温度で加熱する第2の加熱工程と、
前記第1領域の一部に表示層を形成し前記第2領域の少なくとも一部に周辺回路部を形成する工程と、
前記フィルム層のうち表示層が形成された範囲以外の少なくとも一部を前記第2の加熱工程より高い温度で加熱する第3の加熱工程と、
前記支持基板と前記フィルム層とを剥離する工程と、
を有する表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の加熱工程における前記フィルム層の温度は、前記第1の加熱工程における前記フィルム層の温度よりも高い請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第3の加熱工程における前記フィルム層の温度は、前記第1の加熱工程における前記フィルム層の温度よりも高い請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の加熱工程は、前記フィルム層にレーザを照射するか、前記フィルム層をハロゲンランプにより加熱することにより行う請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3の加熱工程は、前記フィルム層にレーザを照射するか、前記フィルム層をハロゲンランプにより加熱することにより行う請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の加熱工程は、ランプアニール、ホットプレート、およびオーブンのいずれかを用いて行う請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記フィルム層はポリイミドを含む材料で形成される請求項6に記載の表示装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73001(P2013−73001A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211661(P2011−211661)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】