説明

表示装置の製造装置、及び、表示装置の製造方法

【課題】製造過程で異物が付着したとしてもショートの発生を抑制することが可能な表示装置の製造装置、及び、表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 表示素子を構成する第1電極を形成済みの処理基板SUBを保持する保持機構220と、光活性層を形成するための材料を放射する蒸着源210と、保持機構220によって保持された処理基板SUBと蒸着源210とが対向した状態で相対的に蒸着源210が処理基板SUBの一端部SAから他端部SBまで走査するように蒸着源210及び処理基板SUBの少なくとも一方を移動させる移動機構240と、を備え、移動機構240は、処理基板SUBの一端部SAから他端部SBに向かう順方向に規定幅で移動させた後に前記処理基板の他端部から一端部に向かう逆方向に規定幅より小さい幅で移動させる揺動を繰り返して走査させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自発光性の表示素子を備えた表示装置の製造装置、及び、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が注目されている。この有機EL表示装置は、自発光性素子であることから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0003】
これらの特徴から、有機EL表示装置は、液晶表示装置に代わる、次世代平面表示装置の有力候補として注目を集めている。このような有機EL表示装置は、第1電極(陽極)と第2電極(陰極)との間に発光機能を有する有機化合物を含む有機活性層を保持した有機EL素子をマトリックス状に配置することにより構成されている。このような構成において、例えば、第1電極(陽極)及び有機活性層は、画素毎に配置されている。また、第2電極は、複数の画素に共通に配置されている。
【0004】
このような有機EL素子の製造工程において、低分子系の有機化合物からなる有機活性層を形成する工程においては、蒸着源から放射した材料を蒸着する蒸着法を適用可能である。このような蒸着法により有機活性層を成膜するのに先立って、第1電極表面に異物が付着することがある。異物の周辺では、有機活性層の膜厚が薄く、あるいは、有機活性層が存在せず、有機活性層上に第2電極を配置したときに、この異物周辺において第1電極と第2電極とがショートするおそれがある。このため、有機活性層を成膜した後に、加熱する工程を追加することにより、有機活性層を溶融し、異物周辺でのショートを抑制するよう有機活性層の膜厚を確保する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第6,506,088号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法によれば、有機活性層を成膜する工程の後に有機活性層を溶融するための加熱工程が必要となり、製造コストの増大を招くとともに、製造効率の低下を招くおそれがある。
【0006】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、製造過程で異物が付着したとしてもショートの発生を抑制することが可能な表示装置の製造装置、及び、表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1態様による表示装置の製造装置は、
画素毎に配置された第1電極と、
前記第1電極上に配置された光活性層と、
複数の画素に共通に配置されるとともに、前記光活性層上に配置された第2電極と、を備えた表示素子を備えた表示装置の製造装置であって、
前記第1電極を形成済みの処理基板を保持する保持機構と、
前記光活性層を形成するための材料を放射する蒸着源と、
前記保持機構によって保持された前記処理基板と前記蒸着源とが対向した状態で、相対的に前記蒸着源が前記処理基板の一端部から他端部まで走査するように、前記蒸着源及び前記処理基板の少なくとも一方を移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記処理基板の一端部から他端部に向かう順方向に規定幅で移動させた後に前記処理基板の他端部から一端部に向かう逆方向に規定幅より小さい幅で移動させる揺動を繰り返して走査させることを特徴とする。
【0008】
この発明の第2態様による表示装置の製造方法は、
画素毎に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極を形成済みの処理基板と、前記第1電極上に前記光活性層を形成するための材料を放射する蒸着源と、が対向した状態で、相対的に前記蒸着源が前記処理基板の一端部から他端部まで走査するように、前記蒸着源及び前記処理基板の少なくとも一方を移動させて光活性層を形成する工程と、
各画素の前記光活性層を覆うように第2電極を形成する工程と、を備え、
前記光活性層を形成する工程は、
前記処理基板の一端部から他端部に向かう順方向に規定幅で相対移動するステップと、前記処理基板の他端部から一端部に向かう逆方向に規定幅より小さい幅で相対移動するステップとを含む揺動を繰り返しながら行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、製造過程で異物が付着したとしてもショートの発生を抑制することが可能な表示装置の製造装置、及び、表示装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置の製造装置、及び、表示装置の製造方法について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0011】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、画像を表示する表示エリア102を有するアレイ基板100を備えている。表示エリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成されている。図1では、カラー表示タイプの有機EL表示装置を例に図示しており、表示エリア102は、赤色に発光する赤色画素PXR、緑色に発光する緑色画素PXG、及び、青色に発光する青色画素PXBを含んでいる。
【0012】
また、アレイ基板100は、画素PXの行方向(すなわち図1のY方向)に沿って配置された複数の走査線Ym(m=1、2、…)と、走査線Ymと略直交する列方向(すなわち図1のX方向)に沿って配置された複数の信号線Xn(n=1、2、…)と、有機EL素子40の第1電極60側に電源を供給するための電源供給線Pと、を備えている。
【0013】
さらに、アレイ基板100は、表示エリア102の外周に沿った周辺エリア104に、走査線Ymのそれぞれに走査信号を供給する走査線駆動回路107の少なくとも一部と、信号線Xnのそれぞれに映像信号を供給する信号線駆動回路108の少なくとも一部と、を備えている。すべての走査線Ymは、走査線駆動回路107に接続されている。また、すべての信号線Xnは、信号線駆動回路108に接続されている。
【0014】
各画素PX(R、G、B)は、画素回路及び画素回路によって駆動制御される表示素子を備えている。画素回路は、オン画素とオフ画素とを電気的に分離しかつオン画素への映像信号を保持する機能を有する画素スイッチ10と、画素スイッチ10を介して供給される映像信号に基づき表示素子へ所望の駆動電流を供給する駆動トランジスタ20と、駆動トランジスタ20のゲート−ソース間電位を所定期間保持する蓄積容量素子30とを有している。これら画素スイッチ10及び駆動トランジスタ20は、例えば薄膜トランジスタにより構成され、ここでは、半導体層にポリシリコンを用いている。
【0015】
表示素子は、自発光素子である有機EL素子40(R、G、B)によって構成されている。すなわち、赤色画素PXRは、主に赤色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、主に緑色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、主に青色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Bを備えている。
【0016】
各種有機EL素子40(R、G、B)の構成は、基本的に同一である。すなわち、図2に示すように、アレイ基板100は、配線基板120の主面側に配置された複数の有機EL素子40を備えている。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性の支持基板上に、画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、走査線駆動回路107、信号線駆動回路108、各種配線(走査線、信号線、電源供給線等)などを備えて構成されたものとする。
【0017】
有機EL素子40は、マトリクス状に配置され画素PX毎に独立島状に配置された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され複数の画素PXに共通に配置された第2電極66と、これら第1電極60と第2電極66との間に保持された光活性層として機能する有機活性層64と、によって構成されている。
【0018】
有機EL素子40を構成する第1電極60は、配線基板120表面の絶縁膜上に配置され、陽極として機能する。配線基板120側から光を取り出す下面発光方式を採用した構成では、この第1電極60は、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化錫)、In(酸化インジウム)などの光透過性を有する導電材料によって形成され、特にITO、IZOを用いて形成することが好ましい。
【0019】
有機活性層64は、少なくとも発光層64Aを含んでいる。この有機活性層64は、発光層64A以外の機能層を含むことができ、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、バッファ層などの機能層を含むことができる。この有機活性層64は、複数の機能層を複合した単層で構成されても良いし、各機能層を積層した多層構造であっても良い。有機活性層64においては、発光層64Aが有機系材料であればよく、発光層64A以外の層は無機系材料でも有機系材料でも構わない。有機活性層64において、発光層64A以外は共通層であっても良く、図2に示した例では、第1電極60側に配置されたホール側共通層64Hは、ホール注入層及びホール輸送層を含み、また、第2電極66側に配置された電子側共通層64Eは、ブロッキング層及び電子輸送層を含み、発光層64Aは、これらのホール側共通層64Hと電子側共通層64Eとの間に配置されている。発光層64Aは、赤、緑、または青に発光する発光機能を有した有機化合物によって形成される。
【0020】
第2電極66は、各色画素の有機活性層64上に共通に配置される。この第2電極66は、電子注入機能を有する金属材料によって形成され、陰極として機能する。下面発光方式を採用した構成では、この第2電極66は、光反射性を有する導電材料を用いて形成され、例えば、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分あるいは3成分の合金系を用いて形成することが好ましい。合金系材料としては、例えばAg・Mg(Ag:1〜20at%)、Al・Li(Li:0.3〜14at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・Ca(Ca:5〜20at%)等が好ましい。
【0021】
また、アレイ基板100は、表示エリア102において、少なくとも隣接する色毎に画素PX(R、G、B)間を分離する隔壁70を備えている。隔壁70は、各画素を分離するよう形成することが望ましく、例えば各第1電極60の縁に沿って格子状またはストライプ状に配置され、第1電極60を露出する隔壁70の開口形状が矩形となるよう形成されている。この隔壁70は、例えば樹脂材料によって形成される。
【0022】
この実施の形態においては、有機EL素子40を構成する有機活性層64は、低分子系材料を用いて蒸着法により形成される。ここで、有機活性層64を形成するための製造装置すなわち蒸着装置について説明する。
【0023】
図3に示すように、蒸着装置200は、真空チャンバ201の内部に、有機活性層64の少なくとも1層の薄膜を形成するための材料を放射する蒸着源210と、蒸着対象である処理基板(例えば第1電極60を形成済みの配線基板120)SUBを保持する保持機構220と、蒸着源210と処理基板SUBとの間に配置され所定の開口パターンを有する蒸着マスク230と、を備えている。
【0024】
蒸着源210は、四角形状の処理基板SUBの長辺方向またはこれに直交する短辺方向に延在するラインソースである。この実施の形態では、図3に示すように、処理基板SUBの長辺方向をLとし、短辺方向をSとしたとき、蒸着源210は、短辺方向Sに沿って延在している。
【0025】
保持機構220は、マグネットなどを備えて構成されており、第1電極60を形成した側の面が蒸着源210と対向するように処理基板SUBを保持する。
【0026】
また、蒸着装置200は、処理基板SUBと蒸着源210とが対向した状態で、相対的に蒸着源210が処理基板SUBの一端部SAから他端部SBまで走査するように、蒸着源210及び処理基板SUBの少なくとも一方を移動する移動機構240を備えている。この実施の形態では、移動機構240は、蒸着源210のみを処理基板SUBの長辺方向Lに沿って移動させるように構成されている。つまり、蒸着源210の延在する方向は、移動機構240による移動方向に直交する。
【0027】
さらに、蒸着装置200は、蒸着源210から放射される材料の蒸着レートを検出するセンサ250を備えている。このセンサ250は、水晶振動子などを備えて構成されており、処理基板SUBに隣接して配置されている。このセンサ250によって検出された蒸着レートは、所望の膜厚の有機活性層64を形成するのに必要な移動機構240による移動速度を決定するのに利用される。
【0028】
ところで、各画素PX(R、G、B)に有機EL素子40(R、G、B)を形成する過程において、異物が混入することがある。すなわち、第1電極60を形成済みの配線基板120の表面つまり第1電極60の表面に異物が付着することがある。異物が付着した状態で、有機活性層64を形成したのに続いて第2電極66を形成すると、異物の周辺で第1電極60と第2電極66とがショートするおそれがある。
【0029】
より具体的には、第1電極60の表面に異物が付着した状態で、有機活性層64を形成するための材料を蒸着したとき、蒸着源から放射される材料の指向性が高いため、異物に対する材料のカバレッジが悪い。つまり、異物の影となる部分に有機活性層64の材料が成膜されずに隙間が形成される。その後に、第2電極66を形成するための材料を蒸着したとき、有機活性層64の隙間に第2電極66の材料が回り込んで成膜されることにより、第1電極60と第2電極66とのショートが発生する。
【0030】
特に、ラインソースタイプの蒸着源を適用し、蒸着源を一方向に走査することで有機活性層64を形成する方式においては、通常、蒸着源210が延在する方向と走査方向とが直交するため、走査方向に直交する方向(ここでは処理基板SUBの短辺方向S)では、図4Aに示すように、蒸着源210から放射される材料が広がりをもって飛散する(指向性が低い)ため、異物Fが存在しても、この異物Fの周囲に材料が回り込み、成膜された材料によって異物Fを包囲することが可能である。これに対して、走査方向(ここでは処理基板SUBの長辺方向L)では、図4Bに示すように、蒸着源210から放射される材料の広がりが小さい(指向性が高い)ため、異物Fの周囲に材料が回り込みにくく、成膜された材料によって異物Fを包囲することが困難であり、ショートが発生する可能性が高い。
【0031】
そこで、蒸着源210と処理基板SUBとを対向した状態で相対的に蒸着源210が処理基板SUBの一端部SAから他端部SBまで走査する際、移動機構240は、処理基板SUBの一端部SAから他端部SBに向かう順方向に規定幅で移動させた後に処理基板SUBの他端部SBから一端部SAに向かう逆方向に規定幅より小さい幅で移動させる揺動を繰り返して走査させている。
【0032】
すなわち、図5に示すように、処理基板SUBの一端部SAから他端部SBに向かう順方向をLABとし、処理基板SUBの他端部SBから一端部SAに向かう逆方向LBAとしたとき、この実施の形態においては、蒸着源210は、順方向LABに規定幅W1で移動した後に、逆方向LBAに規定幅W1より小さい幅W2で移動する。これにより、蒸着源210は、(W1−W2)の幅だけ順方向LABに移動する。
【0033】
逆方向LBAへの移動幅W2は、規定幅W1の略半分(50%)から略2/3(67%)程度とすることが望ましい。
【0034】
処理基板SUB上に成膜される有機活性層64の膜厚は、蒸着レート及び走査する際の移動速度によって決まる。逆方向LBAへの移動幅W2を規定幅W1の50%に設定したとき、図5に示すように、同一エリアArは3回走査される。このため、所定の蒸着レートで揺動することなしに順方向LABに移動速度T1で走査した際に所定膜厚の有機活性層64が得られる条件の場合、この条件と同一の蒸着レートであれば、揺動しながら走査する際の移動速度を(T1×3)に設定すれば、揺動なしの条件と同一膜厚の有機活性層64が得られる。
【0035】
このような揺動を繰り返しながら蒸着源210が順方向LABに沿って処理基板SUBの他端部SBまで走査し、有機活性層64の少なくとも1層の薄膜を成膜することにより、例え第1電極60上に異物が付着していたとしても、走査方向及び走査方向に直交する方向において成膜した薄膜によって異物を包囲することが可能となる。したがって、異物の周辺での第1電極60と第2電極66とのショートの発生を抑制することが可能となる。
【0036】
また、有機活性層64の形成工程において、成膜後の有機活性層を溶融するための加熱工程が不要となり、製造コストの低減が可能であるとともに、製造効率を改善することが可能である。
【0037】
次に、この実施の形態に係る有機EL素子の製造方法について説明する。
【0038】
まず、図6Aに示すように、配線基板120上の表示エリア102において、複数種類の画素PX(R、G、B)毎に独立島状の第1電極60を形成する。すなわち、配線基板120の一主面側において陽極として機能する金属膜をパターン化し、第1電極60を形成する。この第1電極60については、一般的はフォトリソグラフィプロセスで形成しても良いし、画素PX(R、G、B)に対応したパターンを有するマスクを介して金属材料を蒸着する蒸着法によって形成しても良い。
【0039】
続いて、各画素PX(R、G、B)を分離する隔壁70を形成する。すなわち、感光性樹脂材料例えばアクリルタイプのポジティブトーンのレジストを第1電極60上を含む配線基板120の一主面側全体に成膜した後にフォトリソグラフィプロセスなどでパターニングした後に、220℃で60分の焼成処理を行う。これにより、各色画素PX(R、G、B)を囲むように第1電極60の縁に沿って格子状の隔壁70を形成する。
【0040】
続いて、各画素PX(R、G、B)内における第1電極60上に有機活性層64を形成する。ここで、有機活性層64は、複数の薄膜、すなわちホール注入層、ホール輸送層、発光層64A、ブロッキング層、電子輸送層を積層して構成されており、これらは全て低分子系の薄膜材料を蒸着することによって形成される。この有機活性層64の形成工程では、図3を参照して説明したような製造装置が適用される。
【0041】
すなわち、有機活性層64を構成する少なくとも1層の薄膜は、第1電極60を配置した配線基板120の一主面側に蒸着法によって成膜する。ここでは、図3に示したように、ラインソースタイプの蒸着源210を備えた蒸着装置200において、まず、保持機構220により、第1電極60を形成した主面が蒸着源210側を向くように配線基板(すなわち処理基板SUB)を保持する。その後、センサ250と対向した退避位置に配置された蒸着源210を所定の温度に加熱し、センサ250により蒸着レートを検出する。移動機構240は、センサ250により検出された蒸着レートに基づいて所定の膜厚の薄膜を形成するための移動速度を算出する。その後、移動機構240により蒸着源210を移動し、処理基板SUBと対向した状態で蒸着源210の長手方向と直交する方向に蒸着源210を揺動しながら走査した。このとき、蒸着源210と処理基板SUBとの間に蒸着マスク230が介在している。
【0042】
まず、図6Bに示すように、蒸着法により複数種類の画素PX(R、G、B)に共通のホール側共通層64Hを形成する。ここでは、まず、ホール注入層として機能する材料として、CuPc(銅フタロシアニン)を100オングストロームの膜厚で成膜する。その後、ホール輸送層として機能する材料として、α−NPD(芳香族ジアミン)を成膜する。これらのホール側共通層64Hを形成するための材料は、上述したように、揺動しながら順方向に沿って走査する蒸着源から放射され、蒸着マスクを介して第1電極60上に成膜される。
【0043】
図6Bに示した例では、赤色画素PXRにおける第1電極60上に異物Fが付着している。このため、ホール側共通層64Hを形成するための材料は、第1電極60上に蒸着されるとともに、異物F上にも蒸着され、また、異物Fの陰となる第1電極60の表面にも堆積し、異物Fの全体を略包囲している。
【0044】
続いて、図6Cに示すように、同様の蒸着法により画素PX(R、G、B)のそれぞれに個別の発光層64Aを形成する。さらに、蒸着法により複数種類の色画素PX(R、G、B)に共通のブロッキング層及び電子輸送層を連続して成膜し、電子側共通層64Eを形成する。ここでは、赤色画素PXRに配置される発光層64ARとして、ホスト材料にAlq(アルミニウムキリノール錯体)、ドーパント材料にDCM色素を用いて400オングストロームの膜厚で成膜し、緑色画素PXGに配置される発光層64AGとして、ホスト材料にAlq(アルミニウムキリノール錯体)、ドーパント材料にクマリン誘電体を用いて400オングストロームの膜厚で成膜し、青色画素PXBに配置される発光層64ABとして、ホスト材料にAlq(アルミニウムキリノール錯体)、ドーパント材料にペリレンを用いて400オングストロームの膜厚で成膜した。また、ブロッキング層として、BCP(バソキョプロイン)を成膜し、さらに、電子輸送層として、Alq(アルミニウムキリノール錯体)を成膜した。これにより、電子側共通層64Eが形成される。仮に、ホール側共通層64Hによって異物Fを完全に包囲できなかったとしても、これらの発光層64A(R、G、B)や電子側共通層64Eを形成する過程で異物Fの全体を包囲することが可能である。
【0045】
続いて、図6Dに示すように、有機活性層64上に複数種類の画素PX(R、G、B)に共通の第2電極66を形成する。
【0046】
このような工程により、有機EL素子40が形成される。
【0047】
このようにして形成した有機EL素子40によれば、異物Fが混入した赤色画素PXRにおいて、有機活性層64は、異物Fを完全に包囲しており、異物Fの周囲での第1電極60と第2電極66とのショートを抑制できていることが確認できた。
【0048】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0049】
例えば、上述した実施の形態では、主に処理基板SUBの一端部SAから他端部SBに向かう順方向LABに沿って蒸着源210を揺動しながら走査したが、移動機構240は、処理基板SUBの一端部SAから他端部SBまでの走査が終了した後に、処理基板SUBの他端部SBから一端部SAに向かう逆方向LBAに規定幅W1で移動させた後に処理基板SUBの一端部SAから他端部SBに向かう順方向LABに規定幅W1より小さい幅W2で移動させる揺動を繰り返して処理基板SUBの他端部SBから一端部SAまで走査させるように構成しても良い。つまり、主に順方向LABに沿って揺動しながら走査した後に、主に逆方向LBAに沿って揺動しながら走査しても良い。このような往復走査により、さらに異物のカバレッジ性能を向上することができ、第1電極と第2電極とのショートの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置の1画素分の構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、有機EL素子を製造するための製造装置(蒸着装置)の構成を概略的に示す図である。
【図4A】図4Aは、図3に示した製造装置において、蒸着源の長手方向に沿った異物のカバレッジ性能を説明するための図である。
【図4B】図4Bは、図3に示した製造装置において、蒸着源の長手方向に直交する方向に沿った異物のカバレッジ性能を説明するための図である。
【図5】図5は、図3に示した製造装置における揺動動作を伴った走査方法を説明するための図である。
【図6A】図6Aは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、第1電極及び隔壁を形成する工程を示す図である。
【図6B】図6Bは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、有機活性層のホール側共通層を形成する工程を示す図である。
【図6C】図6Cは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、有機活性層の発光層及び電子側共通層を形成する工程を示す図である。
【図6D】図6Dは、有機EL表示装置を形成するための製造工程を説明するための図であり、第2電極を形成する工程を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…有機EL表示装置、10…画素スイッチ、20…駆動トランジスタ、30…蓄積容量素子、40…有機EL素子、60…第1電極、64…有機活性層、64A…発光層、64H…ホール側共通層、64E…電子側共通層、66…第2電極、70…隔壁、100…アレイ基板、120…配線基板、PX…画素、F…異物、200…製造装置、210…蒸着源、220…保持機構、230…蒸着マスク、240…移動機構、250…センサ、SUB…処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素毎に配置された第1電極と、
前記第1電極上に配置された光活性層と、
複数の画素に共通に配置されるとともに、前記光活性層上に配置された第2電極と、を備えた表示素子を備えた表示装置の製造装置であって、
前記第1電極を形成済みの処理基板を保持する保持機構と、
前記光活性層を形成するための材料を放射する蒸着源と、
前記保持機構によって保持された前記処理基板と前記蒸着源とが対向した状態で、相対的に前記蒸着源が前記処理基板の一端部から他端部まで走査するように、前記蒸着源及び前記処理基板の少なくとも一方を移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記処理基板の一端部から他端部に向かう順方向に規定幅で移動させた後に前記処理基板の他端部から一端部に向かう逆方向に規定幅より小さい幅で移動させる揺動を繰り返して走査させることを特徴とする表示装置の製造装置。
【請求項2】
前記蒸着源は、前記移動機構による移動方向に直交する方向に延在することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記処理基板の一端部から他端部までの走査が終了した後に、前記処理基板の他端部から一端部に向かう逆方向に規定幅で移動させた後に前記処理基板の一端部から他端部に向かう順方向に規定幅より小さい幅で移動させる揺動を繰り返して前記処理基板の他端部から一端部まで走査させることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項4】
画素毎に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極を形成済みの処理基板と、前記第1電極上に前記光活性層を形成するための材料を放射する蒸着源と、が対向した状態で、相対的に前記蒸着源が前記処理基板の一端部から他端部まで走査するように、前記蒸着源及び前記処理基板の少なくとも一方を移動させて光活性層を形成する工程と、
各画素の前記光活性層を覆うように第2電極を形成する工程と、を備え、
前記光活性層を形成する工程は、
前記処理基板の一端部から他端部に向かう順方向に規定幅で相対移動するステップと、前記処理基板の他端部から一端部に向かう逆方向に規定幅より小さい幅で相対移動するステップとを含む揺動を繰り返しながら行うことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記光活性層を形成する工程は、前記処理基板の一端部から他端部までの走査が終了した後に、前記処理基板の他端部から一端部に向かう逆方向に規定幅で相対移動するステップと、前記処理基板の一端部から他端部に向かう順方向に規定幅より小さい幅で相対移動するステップとを含む揺動を繰り返して前記処理基板の他端部から一端部まで走査させることを特徴とする請求項4に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【公開番号】特開2007−103278(P2007−103278A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294625(P2005−294625)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】