説明

表示装置を備えた押ボタンスイッチ

【課題】表示の信頼性が高く、かつ安価な機械式の表示装置を備えた押ボタンスイッチを提供する。
【解決手段】押ボタン1の前面に表示窓11を設けるとともに、操作部3の中心部に前記表示窓11と連なる中空部を形成する一方、先端に表示部を備えた表示棒41とを設け、この表示棒41を、前記表示部が前記ボタン部の表示窓11に臨むように前記操作部3の中空部内に回転可能に収納し、前記操作部3内に前記押ボタン部の押し込み操作および復帰操作に連動して前記表示棒41を所定角度回転させて表示部の表示状態を切り換える表示切換機構を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押ボタンスイッチの操作状態を表示する表示装置を備えた押ボタンスイッチに関する。特に、押ボタンの押し込み操作によりスイッチ機構を開閉し、その押し込み位置を自己保持し、押ボタンの回動操作により自己保持を解いて元の待機位置に復帰させるようにしたプッシュロック・ターンリセット形の押ボタンスイッチの表示装置の改良に関するものである。
【0002】
このような、プッシュロック・ターンリセット形押ボタンスイッチは、非常停止用押ボタンスイッチとして利用される。
【背景技術】
【0003】
この種の押ボタンスイッチの表示装置としては、特許文献1に示すような、押ボタンスイッチの押ボタン内に内蔵したLEDランプや白熱ランプ等からなる表示灯を押ボタンスイッチの操作状態に応じて点灯回路により点灯または消灯して、押ボタンスイッチの動作状態を表示するようにした照光式の表示装置がよく知られている。
【特許文献1】特開平09−213161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような照光式の表示装置を備えた押ボタンスイッチにおいては、表示灯を点灯するための電源を含む点灯回路を必要とするだけでなく、表示灯の球切れの点検等の保守点検が必要となるため、コストが高くなる問題がある。
【0005】
また、表示灯の寿命や点灯回路の不具合により表示灯が正常に動作されず、押ボタンスイッチの動作状態を誤表示する場合もあり、表示の信頼性に欠ける問題もある。このような表示装置の誤表示は、押ボタンスイッチが、機械設備の非常停止を指令する非常停止用押ボタンスイッチとして使用される場合には、機械設備の非常停止時の点検時に運転状態の誤認を招き人身事故に至る危険がある。
【0006】
この発明は、このような従来の照光式表示装置を備えた押ボタンスイッチの問題点を解決するために、表示の信頼性が高く、かつ安価な機械式の表示装置を備えた押ボタンスイッチを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、この発明は、押ボタンと、操作部と、スイッチ部との組立体からなり、待機位置にある押ボタンの押し込み操作により操作部を介してスイッチ部の接点の開閉を切換操作し、同時に押ボタンを押し込み位置に自己保持し、自己保持位置の押ボタンスイッチを所定の角度回動させる復帰操作により待機位置に復帰させるようにした押ボタンスイッチにおいて、前記押ボタンの前面に表示窓を設けるとともに、前記操作部の中心部に前記表示窓と連なる中空部を形成する一方、先端に表示部を備えた表示棒とを設け、この表示棒を、前記表示部が前記ボタン部の表示窓に臨むように前記操作部の中空部内に回転可能に収納し、前記操作部内に前記押ボタン部の押し込み操作および復帰操作に連動して前記表示棒を所定角度回転させて表示部の表示状態を切り換える表示切換機構を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記の発明においては、前記表示部を、少なくとも2色に塗り分けられた表示面を有する表示面板と、円板の一部に切欠き形成された切欠窓を有する表示円板とを対向配置して構成し、前記表示面板と表示円板のいずれか一方を前記押ボタンの操作に連動して回転することにより、表示部の表示色を切り換えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、機械的な表示棒を押ボタンの押し込み操作および復帰操作に連動して回転駆動することにより、押ボタンスイッチの動作状態を表示するものであるので、従来の照光式表示装置のように表示灯の球切れ等による点灯不良が起こらないので、表示の信頼性を高めることができるとともに、保守点検の手間を省力するこができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、この発明の実施の形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1ないし図4にこの発明の第1の実施例を示す。
【0012】
図1は、実施例1による押ボタンスイッチのスイッチ部の一部断面を含む立面図、図2は、同分解斜視図、図3はこの実施例1の押ボタンスイッチに使用するロック板の構成図およびその動作の説明図、図4は、この実施例1の押ボタンスイッチの表示状態の説明図である。
【0013】
この実施例1の押ボタンスイッチは、図1および図2に示すように、キャップ状の押ボタン1、この押ボタン1を軸方向および回転方向に可動可能に支持する支持体2、この支持体2内に収容され、押ボタン1の動きに連動して作動する操作部3、押ボタン1および操作部3の中空部に収容された表示機構4、および支持体2に連結され、操作部3により内部の接点を開閉操作されるスイッチ部5を備える。
【0014】
押ボタン1は、前面に、透明の樹脂により形成されたグローブ12により開閉自在に閉じられた表示窓11を備える。
【0015】
支持体2は、図2に示すように、中心に支持棒24を備えたベース21と、中心部に円筒22aが形成され、このベース21に結合されるフレーム22と、ベース21の対向する2辺に固着される1対のロック板26とを一体に組み合わせて構成される。
【0016】
操作部3は、フレーム22の円筒22a内に回転可能に収容される回転筒31と、この回転筒31にトリガばね34を介して結合された押棒32と、この回転筒31とフレーム22の円筒22aとの間に介装され、回転筒31に回転方向および軸方向の弾性復元力を与える捩りばねからなる押ボタン復帰ばね33と、押棒32の下端に、ベース21に設けられたロック板26と対向して形成されたロックピン収容穴37にロックばね36を介して出没可能に収容されたロックピン35とを備える。
【0017】
そして、操作部3の押棒32にトリガばね34を介して嵌め合わせられた回転筒31は、その軸方向の縦溝31aを押棒32の外周に軸方向に設けた凸条32aに嵌め込むことにより、押棒32に対して、軸方向、すなわち上下方向にのみ移動可能となり、回転方向にはこれと一緒に回動する。
【0018】
また操作部3の押棒32は、中心に軸方向に貫通する貫通孔32bを備える。操作部3は、この押棒32の貫通孔32bにベース21に設けられた支持棒24が遊嵌されるようにベース21上に載置される。
【0019】
表示機構4を構成する表示棒41は円筒状をなし、その先端に、扇形の適宜の色、例えば赤色に塗色された塗色部42aが60°間隔で設けられた表示面板42を備える。表示面板42の塗色部42a以外の部分は、素材の地色のままか、塗色部42aの色と異なる色、例えば緑色に塗り分けるようにする。
【0020】
表示棒41は、表示復帰ばね44を介して押棒32の貫通孔32b内の支持棒24に嵌め合わせられる。このとき、表示棒41に設けられた縦溝41aを、支持棒24の軸方向の凸条に嵌め合わせることにより、この表示棒41は支持棒24に対して軸方向の直線移動だけが可能となり、回動は不能となる。
【0021】
表示面板42と対をなして表示部を形成する表示円板43が設けられ、回転筒31の先端に固着される。表示円板43には、表示面板42の塗色部42aと相似形の扇形の切欠窓43aがこれと同じ配置で形成されている。
【0022】
表示面板42と表示円板43とは、後記するように相対的回転可能に構成され、表示円板43が表示面板42に対して回転することにより、表示円板43の切欠窓43a内に表示面板の塗色部42aが現れたり、消えたりして表示色が切り換わる。
【0023】
スイッチ部5は、内部の図示しない接点を開閉操作する操作片51を備える。このスイッチ部5を支持体2のベース21に結合すると、操作片51の先端がベース21の操作孔21aから支持体2内に突出され、操作部3の押棒32によって操作可能となる。
【0024】
支持体2の円筒22aと操作部3の回転筒31の間に装着される押ボタン復帰ばね33は、下端側が円筒22aに結合され、上端側を回転筒31に結合される。そして、押ボタン1は回転筒31の先端にねじ込むことにより操作部3を介して支持体2に結合される。
【0025】
このように構成された押ボタンスイッチは、図示しない制御盤等のパネルに設けられた取付穴に支持体2の円筒22aを挿通して、取付ナット25(図1参照、図2には図示を省略)を円筒22aの外周に設けられたねじにねじ込んでパネルに締め付け結合する。
【0026】
次にこのように構成された、押ボタンスイッチの動作を説明する。
【0027】
図1は、押ボタンスイッチの待機状態を示している。この状態において、操作部3の押棒32内に納められた表示機構4の表示棒41は、ベース21に突設された支持棒24により軸方向に移動可能に案内支持されているので、介装された圧縮ばねからなる表示復帰ばね44により上方に付勢され、先端の表示面板42が操作部3の回転筒31に固着された表示円板43の下面に押し付けられる。
【0028】
また、押棒32のロックピン35は、ロックばね36によりロック板26に押し付けられているがこのロック板26の内壁には、詳細を図3(a)に示すように、L字形に形成されたロック片27が設けられている。ロック片27の水平辺部27bの先端とロック板26の右側壁26rとの間に間隙27cが設けられている。
【0029】
さらに、押ボタン復帰ばね33は、ロックピン35がロック板26の左側壁26lに当たる位置(図3(b)におけるS点)にあるときに復帰状態となる。このため、押ボタンスイッチの待機状態において、ロックピン35が、ロック片27の水平辺部27b上の垂直辺部27aに当たる位置、すなわち、図3(b)のN位置にあるときは、ロック片27の垂直辺部27aの幅W分だけ押ボタン復帰ばね33に時計方向の捩り力がバイアスとして与えられていることになる。垂直辺部27aの幅Wを所定の回転角、例えば60°となるように設定する。
【0030】
ここで、押ボタンスイッチの操作のために、押ボタン1を押ボタン復帰ばね33のばね力に抗して押し込み操作すると、この押ボタン1とともに回転筒31が押し込まれ、図1において下方へ移動する。これに伴って、トリガばね34が圧縮され、所定のばね力に達したところで、ロックピン35がロック片27を乗り越えてロック片27の下方へ移動し、その位置でロックされる。
【0031】
押棒32のロックピン35がロック片27を乗り越えると、ロックピン35を制止する部分がなくなるため、この押ボタン復帰ばね33から与えられる回転方向の復元力により回転筒31およびこれに結合された押棒32が反時計方向に回転され、ロックピン35がロック板26の左側壁26lに当たるS位置(図3(b)参照)まで移動し、押ボタン1がこの位置でロックされ、押し込み状態を保持するようになる。
【0032】
この位置まで押棒32が押し込まれると、この押棒32が支持体2のベース21上に突出されたスイッチ部5の操作片51に当たり、これを押し下げるので、スイッチ部の接点が開、または閉に操作されて、その状態を保つことになる。
【0033】
この押し込み動作の過程で、表示棒41は、回転筒31の下降によって表示面板42が表示円板43によって押し下げられるので、表示復帰ばね44を圧縮しながら回転筒31に追随して下降するが、回転はしない。
【0034】
そして、押ボタンスイッチの待機状態では、表示機構4の表示円板43は、図4(a)に示す待機位置にある。このとき、表示円板43の切欠窓43aがその下方に接する表示面板42の第1塗色部42aと対向する位置から外れた例えば白色に塗色された位置に置かれることにより、押ボタン1の表示窓11には図4(a)に示すように白色が現れ、押ボタンスイッチが待機状態(非操作状態)にあることを表示する。
【0035】
この状態から、押ボタン1を押し込みロック位置まで押し込むと、前記したとおり、回転筒31および押棒32が押し込まれて、押棒32に設けたロックピン35がロック板26のロック片27を乗り越えてその下方へ移動する。これにより、押棒32の回転方向の抑制がなくなるため、押ボタン復帰ばね33が時計方向に所定角度捩られることによりこれに蓄えられていた反時計方向の回転方向の復元力により、押棒32および回転筒31が、ロック片27の垂直辺部27aの幅W分の角度、例えば60°だけ反時計方向に回転される。この回転により表示円板43が回転筒31と一緒に回転するので、この表示円板43の切欠窓43aが、表示棒41の表示面板42の例えば赤色に塗色された第1塗色部42aに対向する位置に移動するため、押ボタン1の表示窓11には図4(b)に示すように第1塗色部42aの表示色(例えば赤色)を示し、押ボタンスイッチが操作状態にあることを表示する。
【0036】
押し込み位置にロック(自己保持)された操作状態にある押ボタンスイッチを復帰させるためには、押ボタン1をこの押ボタンの表面に示される矢印方向、すなわち時計方向に所定角度回転させる操作を行う。これにより回転筒31および押棒32が、押ボタン1と一緒に回転するので、ロックピン35がロック位置である図3のS位置からロック板26のロック片27の下面に沿ってロック板26の右側壁26rに当たるまで移動される。
【0037】
この位置で、押ボタン1への操作力を解除すると、ロックピン35が、ロック片27の欠ける隙間27cに達しているので、回転筒31、押棒32に加わる押ボタン復帰ばね33による軸方向および回転方向の復元力に対する制限が外れるので、この復元力により、回転筒31および押棒32が上方へ押し上げられると共に反時計方向に回転されるため、ロックピン35が、隙間27cから図3に点線矢印で示すようにロック片27の上方へ移動し、さらにロック片27の上をロック片27の垂直片部27aの壁面に当たるまで水平に移動して図3における待機位置Nに戻り、押ボタン1が待機状態となる。この過程で、押棒32がロック片27の上方へ移動したところで、スイッチ部5の操作片51の押圧が解除され、図示しない接点を開または閉の元の状態に復帰させる。このとき、回転筒31および押ボタン1も押棒32と一緒に押し上げられる。
【0038】
この待機状態への復帰動作の過程で、表示棒41が、表示復帰ばね44の復元力により回転筒31の上昇に追随して押し上げられるので、表示面板42は表示円板43の下面に常に押し付けられたまま、上昇するが回転はしない。これに対して、表示円板43は、回転筒31と一緒に回転して復帰位置に戻るので、表示円板43の切欠窓43aが、表示棒41の表示面板42の例えば赤色の塗色部42aに対向する位置から外れて例えば白色の塗色部に対向する位置へ移動する。これにより、押ボタン1の表示窓11は、図4(a)に示す白色の表示状態に戻り、待機状態(非操作状態)にあることを示す表示となる。
【0039】
このように実施例1においては、押ボタンスイッチの押ボタン1を押し込み操作して押し込み位置にロックしたところで、スイッチ部5の接点が開閉操作され、その後、押ボタン1を回転操作して待機位置に戻して、スイッチ部5の接点を復帰させる一連の操作に連動して、操作部3の内部の回転筒31を回転させる機構が表示切換機構となって、表示機構の表示状態を待機状態から操作状態へ、または操作状態から待機状態へ切り換えるので、スイッチの操作と表示装置の表示が完全に同期して切り換わり、表示の信頼性を向上することができる。また、表示装置が機械的要素で構成されるため、照光式表示装置のような球切れの点検等が不要となり保守の手間を省略できる。
【実施例2】
【0040】
図5ないし図11にこの発明の第2の実施例を示す。以下この実施例について説明する。
【0041】
この実施例2の押ボタンスイッチは、図5および図6から明らかなように、押ボタン1、この押ボタン1を支持する支持体2、支持体2内に納められた操作部3および支持体2に結合されるスイッチ部5を備え、外観は前記実施例1と何ら変わるところはない。また、押ボタン1および操作部3の中心の中空部に表示機構4が納められる点でも同じである。
【0042】
しかし、実施例2は、支持体2に設けられるロック板26のロック片28はL字形でなく、直線状に形成されている点で(図6および図10参照)実施例1と異なっている。
【0043】
また、表示機構4は、実施例1の場合と同様に、表示棒41、この表示棒41の先端に設けられた表示面板42およびこの表示面板42に重ね合わせて相対的に回転可能に配置された表示円板43を備えるが、組立て構造は実施例1と異なる。
【0044】
すなわち、図7に示すように、円筒状の表示棒41は、これに貫通されたベース21から突設された支持棒24により回転可能に支持される。表示棒41と支持棒24の間には表示棒41に回転方向の復元力を与える表示復帰ばね45が装着される。表示面板42が表示棒41の先端に嵌合固着されている。表示面板42の中心の貫通孔42bから支持棒24の先端の2つ割れになった取付部24aに、表示円板43がその取付穴43bを嵌め合わせて回転不能に取り付けられる。
【0045】
このように、この実施例2においては、表示機構における表示円板43が固定され、表示面板42が回転可能に構成され、実施例1とは、逆の関係になっている。実施例1と同様に、表示面板42の表面には、扇形の適宜の色、例えば赤色に塗色された塗色部42aが60°間隔で設けられる。表示面板42の塗色部42a以外の部分は、素材の地色のままか、塗色部42aの色と異なる色、例えば緑色に塗色する。
【0046】
さらに、押棒32内に挿入される表示棒41の外周の対向する位置に1対の案内突起41bが設けられている(図6参照)。そして、押棒32の周壁には、図8に示すようにこの表示棒41の案内突起41bを案内するための縦方向の案内溝32bおよびこの縦案内溝32bの中間付近に連通する横案内溝32cが互いに対向する位置に1対ずつ形成される。縦案内溝32bは、押棒の周壁の上端で開口し、この開口から表示棒41の案内突起41bが挿入される。
【0047】
実施例2のその他の構成は、前記実施例1の構成と同じであるので説明を省略する。
【0048】
次にこの実施例2の押ボタンスイッチの動作を説明する。
【0049】
図5は実施例2の押ボタンスイッチの待機状態を示すものである。この状態において、操作部3の押棒32内に納められた表示機構4の表示棒41は、ベース21に突設された支持棒24により表示復帰ばね45を介して回転方向および軸方向に移動可能に案内支持されている。表示棒41の案内突起41bは、図9に示すように、押棒32に設けられた縦案内溝32bの横案内溝32cより下方の位置まで下がっている。このとき表示復帰ばね45は、予め表示棒41に反時計方向の復元力を与えるように捩って装着してあるため、縦案内溝32bに挿入された表示棒41の案内突起42bは、縦案内溝32bの左側壁に押し付けられている。
【0050】
この状態では、表示棒41の表示面板42は、例えば、赤色に塗色された上面の塗色部42aは、表示円板43の切欠窓43aと対向する位置から外れた回転位置に置かれている。このため、押ボタン1の表示窓11には、図11(a)に示すように、表示面板42の塗色部42a以外の部分の表示色、たとえば白色の表示が現れ、押ボタンスイッチの待機状態(非操作状態)にあることが表示される。
【0051】
また、押ボタン復帰ばね33は、予め押ボタン1および回転筒31にゼロか僅かな反時計方向の付勢力を与える状態にされているため、復帰状態では、押ボタン1、回転筒31および押棒32は、ロックピン35がロック板26の上の左側壁26lに当接する位置、すなわち図10(b)のN位置となる回転位置に置かれる。
【0052】
ここで、押ボタンスイッチの操作のために、押ボタン1を押ボタン復帰ばね33の軸方向のばね力に抗して押し込み操作すると、この押ボタン1とともに回転筒31が押し込まれ図5において下方へ移動する。これに伴って、トリガばね34が圧縮され、所定のばね力に達しところで、図10(b)のN位置にあるロックピン35がロック片28を乗り越えてロック片28の下方のS位置へ移動し、その位置でロックされる。このように押棒32のロックピン35がロック片28を乗り越える位置まで押し込まれると、押棒32の下面によって支持体2のベース21上に突出されたスイッチ部5の操作片51が押し下げられ、スイッチ部の接点が開、または閉に操作されその状態が保たれる。
【0053】
この押し込み動作の過程で、押棒31が下降すると、表示棒41は固定されているため相対的にこれが上昇することになる。表示棒41が押棒31に対して相対的に上昇すると、図9に示すように、押棒31の縦溝内32b内を表示棒41の案内突起41bが上昇し、ロックピン35がロック片28を乗り越えところで、丁度横案内溝32cの位置に達する。案内突起41bが横案内溝32cの位置に達すると、案内突起41bに対する回転方向の抑制がなくなるため、表示復帰ばね45によって与えられた反時計方向の付勢力によって、表示棒41が反時計方向に回動され、案内突起41bが横案内溝32c内を左方向へ移動し、その左側端に当たってS位置で停止する。横案内溝32cの横幅Wは、表示棒41の60°の回転角に相当しているので、表示棒41が反時計方向に60°回転する。これにより、表示面板42の塗色部42aが、表示円板43の切欠窓43aと対向する位置へ移動するため、押ボタン1の表示窓11には、図11(b)に示すように塗色部42aの表示色(例えば赤色)が現れ、押ボタンスイッチが操作状態にあることが表示される。
【0054】
押し込み位置にロックされた操作状態にある押ボタンスイッチを復帰させるためには、押ボタン1を押ボタン復帰ばね33の回転方向のばね力に対抗して時計方向へ所定角度回転させる操作を行う。これにより回転筒31および押棒32が、押ボタン1と一緒に回転するので、ロックピン35がロック位置である図10(b)のS位置からロック板26のロック片28の下面に沿って点線矢印で示すように移動する。ロックピン35が、ロック片28の欠ける隙間28cに達したところで、押ボタン1に加えている操作力を解除すると、押ボタン復帰ばね33による軸方向の復元力によりロックピン35が隙間28cから図10(b)に点線矢印で示すようにロック片28の上方へ移動し、回転筒31、押棒32および押しボタン1が押し上げられる。
【0055】
押棒32の上方への移動により、スイッチ部5の操作片51の押圧が解除され、図示しない接点を開または閉の元の状態に復帰させる。
【0056】
一方、復帰のために押ボタン1が時計方向への回転操作によって、同時に押棒32が回転するが、押棒32の横案内溝32c内にある表示棒41の案内突起41bは相対的にこの横案内溝32内を右方向に移動し、縦案内溝32bに達したところで、表示復帰ばね45の復元力によりこの縦案内溝32b内を下方へ移動し、表示棒41の表示面板42が押棒32の上端に当って止まるので、表示棒41の案内突起41bは、図9のN位置へ復帰する。これにより、表示棒41は、押棒32の回転に伴う回転力を受けないようになるので、表示棒41は、回転方向には移動せずその位置に停止しているため、表示状態もそのままとなる。
【0057】
押ボタン1の回転復帰操作により、押棒32のロックピン35が、ロック板26の隙間28cを通ってロック片28の上方へ移動したところで、押ボタン1へ外部から加える回転方向の操作力が除かれるので、押ボタン復帰ばね33の回転方向の復元力により押ボタン1、回転筒31および押棒32が反時計方向に回転され、ロックピン35が図10(b)の待機位置Nに戻り、待機状態となる。
【0058】
この待機状態への復帰動作の過程で、表示棒41は、押棒32の反時計方向の回転によって案内突起41bが押棒32の縦案内溝32bによって押され(図9参照)、反時計方向に回転され、同時に表示復帰ばね45も同方向に捩られ、表示棒41に復元力を付勢する。これによって表示棒41の表示面42の例えば赤色の塗色部42aが表示円板43の切欠窓43aに対向する位置から外れ、この位置に塗色部42a以外の表示色、例えば白色の位置に移動するため、押ボタン1の表示窓11には、図11(a)の白色の表示が現れ、待機状態(非操作状態)にあることが表示される。
【0059】
この実施例2の押しボタンスイッチおいては、実施例1と同様に、押ボタンスイッチの押ボタン1を押し込み操作して押し込み位置にロックしたところで、スイッチ部5の接点が開閉操作され、その後、押ボタン1を回転操作して待機位置に戻して、スイッチ部5の接点を復帰させる一連の操作に連動して、表示機構の表示棒41を回転させる機構が表示切換機構となって、表示機構の表示状態を待機状態から操作状態へ、または操作状態から待機状態へ切り換えるので、スイッチの操作と表示装置の表示が完全に同期して切り換わり、表示の信頼性を向上することができる。また、表示装置が機械的要素で構成されるため、照光式表示装置のような球切れの点検等が不要となり保守の手間を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施例1の押しボタンスイッチの構成を示す一部断面を含む立面図である。
【図2】この発明の実施例1の押しボタンスイッチの構成を示す分解斜視図である。
【図3】この発明の実施例1の押しボタンスイッチに用いるロック板を示すもので、(a)はその構成を示す斜視図、(b)その動作説明図である。
【図4】この発明の実施例1の押しボタンスイッチの表示状態を示す図であり、(a)は、待機状態を、(b)は操作状態を示すものである。
【図5】この発明の実施例2の押しボタンスイッチの構成を示す一部断面を含む立面図である。
【図6】この発明の実施例2の押しボタンスイッチの構成を示す分解斜視図である。
【図7】この発明の実施例2の押しボタンスイッチにおける表示部の組み立て構造を示す縦断面図である。
【図8】この発明の実施例2の押しボタンスイッチに使用する押棒を示す立面図である。
【図9】この発明の実施例2の押しボタンスイッチ表示部の動作説明図である。
【図10】この発明の実施例2の押しボタンスイッチに用いるロック板を示すもので、(a)はその構成を示す斜視図、(b)はその動作説明図である。
【図11】この発明の実施例2の押しボタンスイッチの表示状態を示す図であり、(a)は、待機状態を、(b)は操作状態を示すものである。
【符号の説明】
【0061】
1:押ボタン
2:支持体
3:操作部
4:表示機構
5:スイッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押ボタンと、操作部と、スイッチ部との組立体からなり、待機位置にある押ボタンの押し込み操作により操作部を介してスイッチ部の接点の開閉を切換操作し、同時に押ボタンを押し込み位置に自己保持し、自己保持位置の押ボタンスイッチを所定の角度回動させる復帰操作により待機位置に復帰させるようにした押ボタンスイッチにおいて、前記押ボタンの前面に表示窓を設けるとともに、前記操作部の中心部に前記表示窓と連なる中空部を形成する一方、先端に表示部を備えた表示棒とを設け、この表示棒を、前記表示部が前記ボタンの表示窓に臨むように前記操作部の中空部内に回転可能に収納し、前記操作部内に前記押ボタンの押し込み操作および復帰操作に連動して表示部の表示状態を切り換える表示切換機構を設けたことを特徴とする表示装置を備えた押ボタンスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の押ボタンスイッチにおいて、前記表示部を、少なくとも2色に塗り分けられた表示面を有する表示面板と、円板の一部に切欠き形成された切欠窓を有する表示円板とを対向配置して構成し、前記表示面板と表示円板のいずれか一方を前記押ボタンの押し込み操作および復帰操作に連動して回転することにより、表示部の表示色を切り換えることを特徴とする表示装置を備えた押ボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−204633(P2008−204633A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35941(P2007−35941)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(390021186)株式会社秩父富士 (54)
【出願人】(503361927)富士電機機器制御株式会社 (402)
【Fターム(参考)】