説明

表示装置及びその製造方法

【課題】レンズを形成する際に、レンズの剥離や亀裂が発生を抑制することを目的とする。
【解決手段】基板上に、複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子の発光領域の外にある光吸収層107を形成し、前記複数の有機EL素子の発光領域の上にあるレンズ部109を形成する前に、前記光吸収層と前記レンズ部との間に、前記レンズ部がある領域を覆って、かつ、前記光吸収層と前記レンズ部とに接しているように下地層108を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を有する表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一対の電極間に有機化合物層を備える有機EL素子を複数有する表示装置が盛んに開発されている。このような表示装置において、有機EL素子から発光される光を効率よく外部に取り出すためにレンズを設ける構成が知られている。また、外光反射を低減するために光吸収層を設ける構成も知られている。
【0003】
特許文献1には、レンズと光吸収層となるバンクとを備えるレンズアレイを有機EL素子上に備えた有機EL装置について開示されている。特許文献1のレンズアレイは、基板上に光吸収層となるバンクを形成し、光吸収層と接して基板上の所望の領域にレンズを形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−317559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のレンズは、光吸収層と基板という異なる材料からなる複数の領域に接するため、以下のような課題が生じる。すなわち、レンズに対する密着力、熱応力が接する材料によって異なるため、機械的な応力集中が起こりやすく、レンズを形成する際に剥離や亀裂が発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、レンズの剥離や亀裂が発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、基板上に複数の有機EL素子を形成する工程と、前記複数の有機EL素子の発光領域の外に光吸収層を形成する工程と、前記複数の有機EL素子の発光領域の上にレンズ部を形成する工程と、を順に有する表示装置の製造方法であって、前記光吸収層を形成する工程と前記レンズ部を形成する工程との間に、レンズ部が形成される領域を覆って、かつ、前記光吸収層と前記レンズ部とに接するように下地層を形成する工程を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、基板上に、複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子の発光領域の外にある光吸収層と、前記複数の有機EL素子の発光領域の上にあるレンズ部と、を有する表示装置であって、前記光吸収層は前記レンズ部よりも前記有機EL素子側にあり、前記光吸収層と前記レンズ部との間に、前記レンズ部がある領域を覆って、かつ、前記光吸収層と前記レンズ部とに接している下地層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械的な応力集中を低減し、レンズの剥離や亀裂の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一の実施形態および第二の実施形態に係る表示装置の模式図
【図2】第一の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図
【図3】第一の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図
【図4】第二の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図
【図5】第三の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図
【図6】第三の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図
【図7】第四の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図
【図8】第四の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る表示装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0012】
〔第一の実施形態〕
図1(a)は、本発明の実施形態1に係る表示装置を示す斜視模式図である。本実施形態の表示装置は、有機EL素子を備える画素1を複数有している。そして、複数の画素1はマトリックス状に配置され、表示領域2を形成している。なお、画素とは、1つの発光素子の発光領域に対応した領域を意味している。本実施形態の表示装置では、発光素子は、有機EL素子であり、画素1のそれぞれに1つの色の有機EL素子が配置された表示装置である。有機EL素子の発光色としては、赤色、緑色、青色が考えられ、そのほかに黄色、シアン、白色でもよく、少なくとも2色以上であれば特に制限はない。
【0013】
図1(b)は、図1(a)のA−B線における部分断面模式図である。100は有機EL素子であり、第1電極102と有機化合物層104と第2電極105とを含んでいる。また、101は基板、103は絶縁層、106は保護層、107は光吸収層、108は下地層、109はレンズ部である。なお、有機EL素子100は、基板上に設けられるトランジスタ(不図示)によって駆動される。
【0014】
光吸収層107は、複数の有機EL素子100の発光領域の外に、外光反射を低減する目的、さらに隣の画素間での混色を抑制する目的で配置されている。また、光吸収層107はレンズ部109よりも有機EL素子100側に配置されている。なお、発光領域とは、基板に垂直な方向で、有機化合物層104が第1電極102と第2電極105とに接して挟まれる領域である。
【0015】
下地層108は、後述するように、レンズ部109と光吸収層107とが接することを防ぐ目的で配置されている。具体的には、光吸収層107とレンズ部109との間に位置し、光吸収層107とレンズ部109とに接するように配置されている。また、下地層108は、レンズ部109が形成される領域を覆っている。より具体的には、下地層108は、有機EL素子100の発光領域と光吸収層107とを覆って配置されている。
【0016】
レンズ部109は、複数の有機EL素子100それぞれの発光領域の上に配置され、有機EL素子100の光取り出し効率を向上させる機能を有するレンズ120を備えている。また、レンズ部109のレンズ120が有機EL素子100の発光領域に対応する位置に配置されている。レンズ部109が隣の画素との間で切れている場合には、下地層108も切れていてもよい。なお、図1(c)のように、レンズ部109は隣の画素との間でつながっていてもよい。
【0017】
<表示装置の製造方法>
次に、本実施形態の表示装置の製造方法について図2、図3を参照して説明する。図2、図3は、本実施形態の表示装置の各製造工程を示す断面模式図である。なお、第2電極105の形成までは周知な製造工程であるため、ここでは説明を省略する。
【0018】
先ず、図2(a)に示すように、有機EL素子100が複数形成された基板101を用意する。この基板101は、不図示のトランジスタなどの画素回路が形成された上に、半導体保護層、平坦化膜を介して、第1電極102、絶縁層103、有機化合物層104、第2電極105を形成したものである。
【0019】
第1電極102は、例えば、Ag等の高い反射率を持つ導電性の金属材料から形成される。また、第1電極102は、上述した金属材料から成る層とホール注入特性に優れたITO(Indium−Tin−Oxide)などの透明導電性材料から成る層との積層体から構成しても良い。
【0020】
一方、第2電極105は、複数の有機EL素子100に対して共通に形成されており、また、有機化合物層104で発光した光を素子外部に取り出し可能な半反射性或いは光透過性の構成を有している。具体的には、素子内部での干渉効果を高めるために第2電極105を半反射性の構成とする場合、第2電極105は、AgやAgMgなどの電子注入性に優れた導電性の金属材料から成る層を2乃至50nmの膜厚で形成される。なお、半反射性とは、素子内部で発光した光の一部を反射し、一部を透過する性質を意味し、可視光に対して20乃至80%の反射率を有するものをいう。また、光透過性とは、可視光に対して80%以上の透過率を有するものをいう。なお、第1電極102と第2電極105のうちいずれか一方が陽極であり、他方が陰極であれば、どちらが陽極か陰極かは適宜選択される。
【0021】
また、有機化合物層104は、少なくとも発光層を含む単層又は複数の層からなる。例えば、有機化合物層104の構成例としては、第1の輸送層、発光層、第2の輸送層及び注入層からなる4層構成や、第1の輸送層、発光層及び第2の輸送層からなる3層構成等が挙げられる。有機化合物層104を構成する材料は、公知の材料を使用することができる。正孔輸送性と電子輸送性および正孔注入性と電子注入性はどちらの極性も選択できる。
【0022】
絶縁層103は、第1電極102と第2電極105とが異物によってショートするのを防ぐために、画素(より具体的には、第1電極102)間に設けられている。保護層106は、有機EL素子100への外部からの水分あるいは酸素の侵入を防ぐように、複数の有機EL素子100を覆っている。
【0023】
次に、図2(a)に示すように保護層106を表示領域2の全域に形成する。保護層106は、水分や酸素が有機EL素子100に接触することを遮断するための、言わば封止機能を有する部材である。そのため、保護層106は、防湿性に優れた部材であることが好ましい。また、保護層106の厚みは特に制限はないが、実用的には1.0μm乃至50μm程度が好ましい。保護層106は、例えば、SiN、SiONなどの無機材料で構成される。また例えば、無機材料と無機材料、無機材料とエポキシ樹脂等の有機樹脂材料との積層で構成することも可能である。なお、図2(a)では保護層の表面は第2電極105に倣った形状をしているが、平坦であってもよい。
【0024】
次に、図2(b)に示すように保護層106上に、光吸収層材料107aを表示領域2の全域に形成する。光吸収層材料107aとしてはブラックレジストを用いることができる。ブラックレジストを用いた場合、成膜方法としては、スピンコート法、ディスペンス法などを用いることが可能である。
【0025】
次に、図2(c)に示すように、フォトマスク110を使い、光吸収層107を形成したい部分のブラックレジストを露光する。その後現像を行うことで、図2(d)で示したパターンを得る。光吸収層107は光の透過性が低い樹脂材料からなる。また、光吸収層107の膜厚は、十分に光の遮光が可能なように、10nm乃至10μm程度が好ましい。外光を多く吸収し、また隣の画素に対応するレンズ120へ向かう光の多くを吸収できるように光吸収層107のパターンは形成される。光吸収層107の開口は、画素間隔よりは広く、レンズ120間隔より狭いほうが好ましい。なお、好ましくは光吸収層の光吸収率は、可視光に対して90%以上がよい。
【0026】
次に図2(e)に示すように、下地層108を表示領域2の全域に形成する。この下地層108は、光吸収層107の上に、レンズ部109が直接形成される際の以下の問題を解決するためのものである。
【0027】
第1に、光吸収層107と保護層106のような異なる材料からなる面にレンズ部109を形成する場合では、レンズに対する密着力、熱応力が材料によって異なるため、機械的な一部分に応力集中が起こりやすく、レンズ部109に剥離や亀裂が発生してしまう。さらに、図1(b)のように、レンズ120の基板101の面内方向での厚みが異なると薄い部分の構造的な強度は弱く、熱膨張等での変形量も異なり、剥離がより発生しやすくなる。そして、レンズ部109の厚みが薄い部分では、剥離や亀裂の起点となりやすい。
【0028】
第2に、異なる材料からなる面にレンズ部109を設けると、表面エネルギーの違いにより、濡れ性が各面で異なる場合がある。レンズ部109にレンズ120を形成するため、レンズ部109となる材料を現像する時や、現像後の加熱時にレンズ120の形状の制御が困難になり、ムラやシミが発生する場合もある。
【0029】
第3に、異なる材料からなる面では、露光時の紫外線の反射吸収特性が異なり、レンズ部109として感光性材料を利用する場合には、露光条件を場所ごとに異ならせる必要が生じたり、そうでない場合はレンズ120の形状が安定しないなどの問題が生じてしまう。
【0030】
このため、本発明では、光吸収層107を形成した後、後述するレンズ部109を形成する前に、下地層108を形成する。その際、レンズ部109が形成される領域を覆って、かつ、光吸収層107とレンズ部109とに接するように下地層108を形成する。この構成により、レンズ部109が光吸収層107と接することがなく、同じ材料の上にレンズ部109を形成することができるので、レンズ部109の剥離や亀裂を抑制することができる。さらには、レンズ120の形状の制御が容易になる。また、下地層108は、光吸収層107の段差を平坦化する機能、または、レンズ部109と有機化合物層104との距離を調節する機能を有していてもよい。
【0031】
下地層108の膜厚は10nm乃至100μmであることが好ましい。また下地層108としては、ネガレジスト(東京応化製OMR−83、日本化薬製SU−8)や光硬化性樹脂(JSR製KZ6666)、紫外線を吸収する熱硬化樹脂(日本触媒製ハルスハイブリッドUV−G)などが使用できる。なお、下地層108は、光透過率が可視光域において80%以上であることが望ましい。また、下地層108はレンズ部109の材料との屈折率が小さいことが光取り出し効率を向上させるという観点で望ましく、具体的には下地層108の屈折率とレンズ部109の屈折率の差が0.2以下であることがよい。またレンズ部109のレンズ120が凸レンズである場合には、集光特性を向上させるという観点で、下地層108の屈折率はレンズ部109の屈折率よりも高いことが望ましい。
【0032】
次に、図2(f)に示すように、レンズ部材料109aを表示領域の全域に形成する。その厚みは1.0μmから50μmが好ましい。本実施形態に適するレンズ部材料としてはポジ型のレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ製AZ4620など)が好ましい。
【0033】
次に、図3(g)に示すように、フォトマスク111を使い、レンズ120を形成する部分以外のレンズ部材料109aを露光する。その後現像を行うことで、図3(h)のパターンを得る。これを所定の温度で加熱することでレンズ部パターン109bがリフローし、表面張力により、図3(i)で示す球面レンズ120を有するレンズ部109が形成される。なお、レンズ120は、集光性などの必要な光学機能に応じて高さ(下地層108とレンズ120の頂点との距離)や曲率半径が選択される。凸状のレンズ120の場合、曲率半径を選択してレンズ120の焦点位置を発光層に近づけると、有機EL素子100からの発光光を集光する特性が向上し、所望の方向の明るさを増すことができるが、所望の方向以外の光量は低下する。このため、用途によって選択することが必要である。なお、発光領域に対応する位置に必ずレンズ120が配置されていなくてもよく、画素の発光色に応じてレンズ120が形成される画素、レンズ120が形成されない画素を設定してもよい。また、1つの発光領域に複数のレンズ120が形成されていてもよい。また、レンズ120の形状は特に限定されず、凸状であってもよいし、凹状であってもよく、さらに、球面であってもよいし、非球面であってもよい。
【0034】
〔第二の実施形態〕
第二の実施形態の表示装置の製造方法について、図4を参照して説明する。本実施形態は、図2(f)で示すレンズ部材料109aを表示領域2の全域に形成する工程までは第一の実施形態と同様である。
【0035】
本実施形態では、第一の実施形態における図3(g)のフォトマスク111の代わりに、図4(g)で示すグレースケールマスク112を用いてレンズ部材料109aを露光する。これを現像することで、図4(h)の所望のレンズ120を有するレンズ部109を形成する。このとき、第一の実施形態よりも露光条件の均一性および再現性が重要であり、レンズ部材料109aの下にある層の光吸収、光反射の特性が同じであることがより好ましい。従って、下地層108を設けることで得られる効果は第一の実施形態よりも大きくなる。また、下地層108に紫外線吸収の熱硬化樹脂を用いるのが好ましい。紫外線吸収の熱硬化樹脂の下地層108を設けることにより、レンズ部109のレンズ120の形状を安定して形成することができる。また、本実施形態に適するレンズ部材料としてはポジ型のレジストが好ましい。
【0036】
〔第三の実施形態〕
第三の実施形態の表示装置の製造方法について、図5、図6を参照して説明する。本実施形態は、図2(f)で示すレンズ部材料109aを表示領域2の全域に形成する工程までは第一の実施形態と同様である。ただし、この場合のレンズ部材料109aとしてはネガ型のレジスト(日本化薬製SU−8)を用いる。
【0037】
次に、図5(g)で示すようにレンズ部材料109aの上に、例えば遮光性の金属膜310a(アルミニウム、ニッケル、クロムなど)を形成し、さらにフォトレジスト311aを形成する。
【0038】
次にフォトレジスト311aをフォトマスク(不図示)で露光して、現像し、レジストパターン311を形成する。さらに、レジストパターン311をマスクとして金属膜310aをエッチングし、図5(h)で示す金属膜パターン310を形成する。
【0039】
次に図5(i)に示す金属膜パターン310をマスクとして、基板101を傾斜させた状態で回転させながらレンズ部材料109aの破線で囲まれた部分を露光する。必要により傾斜角を変えて露光部分の体積を変える。また所望の角度が得られない場合には、屈折率を調整するため、例えば水などの液体中で露光してもよい。
【0040】
次に、図6(j)で示すようにレジストパターン311と金属膜パターン310を取り除く。
【0041】
次に、図6(k)で示すように、レンズ部材料109aを現像して、コーン形状のレンズ120を有するレンズ部109を形成する。ネガ型レジストの場合、露光後の加熱で反応を促進させる必要があるが、このとき形状の変化も伴う。このため、下地層108を設けることで、場所によらず、安定した形状を形成できる。
【0042】
〔第四の実施形態〕
第四の実施形態の表示装置の製造方法について、図7、図8を参照して説明する。本実施形態は、図2(f)で示すレンズ部材料109aを表示領域の全域に形成する工程までは第一の実施形態と同様である。
【0043】
次に、図7(g)に示すように、レンズ部材料109aの上にレンズ形状作成用のフォトレジスト410aを形成する。
【0044】
次に、図7(h)に示すように、グレースケールマスク411で露光した後、現像して図8(i)で示す形状のレジストパターン410を形成する。
【0045】
続いて、レジストパターン410とレンズ部材料109aをドライエッチングすることにより、図8(j)に示すようにレジストパターン410の形状と同様の形状でレンズ部109が形成される。なお、ドライエッチングの条件により、レジストの形状とレンズ部の形状の対応は調整が可能である。
【0046】
このとき、第一の実施形態よりも露光条件の均一性および再現性が重要であり、レンズ部材料109aの下にある層の光吸収、光反射の特定が同じであることが好ましい。従って、下地層108を設けることで得られる効果は第一の実施形態より大きくなる。また、下地層108に紫外線吸収の熱硬化樹脂を用いるのが好ましい。紫外線吸収の熱硬化樹脂の下地層108を設けることにより、レンズ部109のレンズ120の形状を安定して形成することができる。
【0047】
また、本実施の形態ではフォトリソグラフィ技術でのパターン形成用ではない材料(たとでばJSR製KZ6666)でもレンズ部109を形成することができる。
【実施例】
【0048】
〔実施例1〕
ガラス基板上に、低温ポリシリコンTFTで画素回路(不図示)を形成し、その上にSiNからなる半導体保護層とポリイミド樹脂からなる平坦化膜を、この順番で形成して図2(a)に示す基板101を作成した。この基板101上にAlNd膜とITO膜をスパッタリング法にて100nmと38nmの厚さでこの順に形成した。続いて、AlNd膜とITO膜を画素毎にパターニングし、第1電極102を形成した。
【0049】
次に、第1電極102の上にポリイミド樹脂をスピンコートした。そして、ポリイミド樹脂をフォトリソグラフィ技術により、第1電極102が形成された部分に開口(この開口部が画素に相当)が形成されるようにパターニングし絶縁層103を形成した。各画素のピッチを30μm、開口による第1電極102の露出部の大きさを10μmとした。これをイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄し、次いで、煮沸洗浄後乾燥した。
【0050】
次に、UV/オゾン洗浄してから有機化合物層104を真空蒸着法により成膜した。有機化合物層104としては、始めに、ホール輸送層をすべての画素にわたって90nmの厚さで成膜した。次に、シャドーマスクを用いて、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層をそれぞれ厚さ30nm、40nm、25nmで成膜した。図では2色分、2画素の図と成っているが同様の構成の繰り返しであるため省略している。続いて、すべての画素に共通の電子輸送層を50nmの厚さで成膜した。
【0051】
次に、有機化合物層104を成膜した基板101を、真空を破ること無しにスパッタ装置に移動し、第2電極105としてAg膜およびITO膜をそれぞれ10nm及び50nmの厚さで順に成膜した。
【0052】
次に、図2(a)に示すように、窒化珪素からなる保護層106を、SiHガス、Nガス、Hガスを用いたプラズマCVD法で6.0μmの厚みに成膜した。
【0053】
次に、図2(b)に示すように、光吸収層材料107aとして東京応化工業製ブラックレジストをスピンコーターにて塗布した。膜厚は1.0μmであった。
【0054】
次に、図2(c)に示すように、画素ピッチ30μmでφ20μmのドットが並んだフォトマスク110を用い、ブラックレジストを露光、そして現像し、図2(d)に示す、画素に対応した開口を有する光吸収層107を形成した。
【0055】
次に、図2(e)に示すように、下地層108として、紫外線硬化性樹脂(ネガレジスト)である日本化薬製SU−8、3005を、スピンコーターにて塗布した。その後紫外線硬化樹脂を露光し、加熱硬化させた。膜厚は5.0μmであった。
【0056】
次に、図2(f)に示すように、レンズ部材料109aとして、ポジ型レジストであるAZエレクトロニックマテリアルズ製AZ4620を、スピンコーターにて塗布した。膜厚は10μmであった。
【0057】
次に、図3(g)で示すように、φ25μm、ピッチ30μmのドットパターンを有するフォトマスク111にて露光した。そして、レンズ部材料109aを現像することにより、図3(h)で示すようなレンズ部パターン109bをパターニング形成した。
【0058】
最後に、レンズ部パターン109bを加熱してリフローさせることにより、図3(i)で示すようなレンズ120を有するレンズ部109を形成した。レンズ部109の高さは14μm、レンズ120の曲率半径は20μmであった。
【0059】
このようにして形成されたレンズ部109は、剥離や亀裂が生じていなかった。
【0060】
〔比較例1〕
本比較例は、下地層108を形成する工程を省略した以外は実施例1と同様に作製した。このようにして形成されたレンズ部109は、その一部が剥離した。これは光吸収層107の部分と、光吸収層107のない開口にわたり、レンズ部109を設けたため、密着力、熱応力、濡れ性などが異なり、応力が吸収できず剥離に至ったものと思われる。
【0061】
〔実施例2〕
本実施例は光吸収層107を形成するまでは実施例1と同様である。光吸収層107の上に、図2(e)に示すように、下地層108として紫外線吸収の熱硬化樹脂である日本触媒製ハルスハイブリッドUV−Gを、スピンコーターにて塗布し、の後紫外線硬化樹脂を露光し、加熱硬化させた。膜厚は5.0μmであった。
【0062】
その上に、実施例1と同じく、図2(f)に示すように、レンズ部材料109aとして、ポジ型レジストであるAZエレクトロニックマテリアルズ製AZ4620を、スピンコーターにて塗布した。膜厚は10μmであった。
【0063】
次に、図4(g)で示すように凸版印刷製グレースケールマスク112を用い、キヤノン製露光機MPA−600Fでレンズ部材料109aを露光した。これをAZエレクトロニックマテリアルズ製現像液AZ400Kで現像することで、図4(h)で示すレンズ120を有するレンズ部109が形成された。レンズ部109の高さは8.0μm、レンズ120の曲率半径は20μmであった。
【0064】
このようにして形成されたレンズ部109は、剥離や亀裂が生じていなかった。また、レンズ部109の形状を安定して形成できた。
【0065】
〔実施例3〕
本実施例は光吸収層107を形成するまでは実施例1と同様である。次に、図2(e)で示すように、下地層108として紫外線硬化性樹脂であるJSR製KZ6666を、スピンコーターにて塗布した。その後この紫外線硬化樹脂を露光し、加熱硬化させた。膜厚は3.0μmであった。
【0066】
次に、図2(f)で示すように、レンズ部材料109aとしてネガ型のレジストである日本化薬製SU−8を、スピンコーターにて塗布した。膜厚は10μmであった。
【0067】
次に、図5(g)に示すように、遮光性の金属膜310aとしてアルミニウムをスパッタにて100nmの厚みに形成し、さらにポジ型のフォトレジスト311a(AZエレクトロニックマテリアルズ製AZ1500)を形成した。
【0068】
次に、フォトレジスト311aをフォトマスク(不図示)で露光した後、現像してレジストパターン311を形成し、さらにレジストパターン311をマスクとして、金属膜310aをエッチングして、図5(h)の金属膜パターン310を形成した。
【0069】
次に図5(i)に示すように、金属膜パターン310をマスクとして、基板101を45度傾斜させた状態で回転させながらレンズ部材料109aを露光した。
【0070】
次に図6(j)で示すように、レジストパターン311と金属膜パターン310を取り除いた。
【0071】
次に、レンズ部材料109aを現像して、図6(k)で示すようなレンズ120を有するレンズ部109を形成した。レンズ部109の高さは6.0μm、コーン形状のレンズ120の底面の直径は20μmであり、上面の直径は8.0μmであった。
【0072】
このようにして形成されたレンズ部109は、剥離や亀裂が生じていなかった。また、レンズ部109の形状を安定して形成できた。
【0073】
〔比較例2〕
下地層108を形成する工程を省略した以外は実施例3と同様に作製した。このように形成したレンズ部109は、その一部が剥離した。これは光吸収層107の部分と、光吸収層107のない開口にわたり、レンズ部109を設けたため、密着力、熱応力、濡れ性などが異なり、応力が吸収できず剥離に至ったものと思われる。
【0074】
〔実施例4〕
本実施例は下地層108を形成するまでは実施例2と同様である。次に、図2(f)で示すように、レンズ部材料109aとしてJSR製KZ6666を、スピンコーターにて塗布した。膜厚は15μmであった。
【0075】
次に、図7(g)で示すように、レンズ部材料109a上にレンズ形状作成用のフォトレジスト410aとしてAZエレクトロニックマテリアルズ製AZ4620をスピンコーターにて塗布した。
【0076】
次に、図7(h)で示すように、凸版印刷製グレースケールマスク411でフォトレジスト410aを露光し、現像して、図8(i)で示すようなレジストパターン410を形成した。
【0077】
次に、レジストパターン410とレンズ部材料109aをドライエッチングすることにより、図8(j)に示すようにレジストパターン410の形状で規定された形状に、レンズ部109を形成した。レンズ部109の高さは8.0μm、レンズ120の曲率半径は20μmであった。なお、ドライエッチングはアルバック製の理アクティブイオンエッチング装置を用い、CFとOガスを用い、圧力10Pa、電力150Wの条件で行った。
【0078】
このようにして形成されたレンズ部109は、剥離や亀裂が生じていなかった。また、レンズ部109の形状を安定して形成できた。
【符号の説明】
【0079】
100 有機EL素子
101 基板
107 光吸収層
108 下地層
109 レンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の有機EL素子を形成する工程と、前記複数の有機EL素子の発光領域の外に光吸収層を形成する工程と、前記複数の有機EL素子の発光領域の上にレンズ部を形成する工程と、を順に有する表示装置の製造方法であって、
前記光吸収層を形成する工程と前記レンズ部を形成する工程との間に、レンズ部が形成される領域を覆って、かつ、前記光吸収層と前記レンズ部とに接するように下地層を形成する工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
基板上に、複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子の発光領域の外にある光吸収層と、前記複数の有機EL素子の発光領域の上にあるレンズ部と、を有する表示装置であって、
前記光吸収層は前記レンズ部よりも前記有機EL素子側にあり、
前記光吸収層と前記レンズ部との間に、前記レンズ部がある領域を覆って、かつ、前記光吸収層と前記レンズ部とに接している下地層を有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−226906(P2012−226906A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92156(P2011−92156)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】