説明

表示装置及び映像視聴システム

【課題】左眼用映像と右眼用映像との間のクロストークを抑制することができる表示装置及び映像視聴システムを提供する。
【解決手段】映像信号に基づき映像を表示する表示装置であって、左眼用映像信号が走査されることによって左眼用映像を表示するとともに、右眼用映像信号が走査されることによって右眼用映像を表示する表示部と、左眼用映像と右眼用映像との間のクロストークに影響し得る特性を解析する解析部と、クロストークに影響し得る特性に応じて、左眼用映像が左眼で視聴される期間及び右眼用映像が右眼で視聴される期間のうち少なくとも一方の視聴期間のタイミングを調整し、クロストークを低減するタイミング制御部と、を備えることを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を立体的に知覚させるための映像を表示する表示装置及び該表示装置が表示する映像を視聴するための映像視聴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
映像を立体的に知覚させるための映像を表示する表示装置は、左眼で視聴されるための左眼用映像と、右眼で視聴されるための右眼用映像とを所定周期(例えば、フィールド周期)で交互に表示する表示部を含む。左眼用映像及び右眼用映像は、視差の分だけ異なる内容を含む。視聴者は、左眼用映像及び右眼用映像の表示周期に同期して駆動される液晶シャッタを備える眼鏡装置を通じて、左眼用映像及び右眼用映像を視聴する(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
図14は、従来の映像視聴システムのブロック図である。尚、図14に示される映像視聴システムには、60Hzの映像信号が入力される。
【0004】
映像視聴システム900には、60Hzの映像信号が入力される映像信号処理部901を備える。映像信号処理部901は、入力された映像信号を120Hzの左眼用映像信号と右眼用映像信号とに変換する。変換された左眼用映像信号及び右眼用映像信号は、液晶駆動部902及びバックライト制御部903へ出力される。液晶駆動部902は、120Hzの左眼用映像信号及び右眼用映像信号を液晶パネル904で表示可能な形式に変換する。液晶駆動部902によって変換された左眼用映像信号及び右眼用映像信号は液晶パネル904に出力される。バックライト制御部903は、バックライト905に発光制御信号を出力する。バックライト905は、発光制御信号により液晶パネル904に対し、液晶パネル904の背面から光を照射する。この結果、液晶パネル904に、120Hzで左眼用映像及び右眼用映像が交互に表示される。
【0005】
眼鏡装置950は、左眼シャッタ951と右眼シャッタ952とを備える。映像信号処理部901によって変換された120Hzの左眼用映像信号及び右眼用映像信号を基準にして、左眼シャッタ951用のシャッタ制御回路906及び右眼シャッタ952用のシャッタ制御回路907は、左眼シャッタ951及び右眼シャッタ952を同期制御する。
【0006】
図15(a)は、従来の映像視聴システムの制御タイミングチャートである。図15(a)のセクション(A)は、液晶パネル904に対する左眼用映像信号及び右眼用映像信号の走査タイミングを示す。図15(a)のセクション(B)は、バックライト905の点灯タイミングを示す。図15(a)のセクション(C)は、眼鏡装置950のシャッタ951,952の開閉タイミングを示す。
【0007】
液晶パネル904に左眼用映像信号及び右眼用映像信号が順次書き込まれる。この間、バックライト905は常時点灯している。シャッタ制御回路906,907は、シャッタ951,952を制御する。シャッタ制御回路906,907の制御下で、液晶パネル904への左右交互の書き込み走査の後、シャッタの開期間がそれぞれの映像期間の1/4となるようにシャッタ951,952は、開閉制御される。シャッタ951,952を通じて視聴される左眼用映像及び右眼用映像は、視聴者の左右の眼でそれぞれ視聴される。この結果、視聴者は、脳内で、視覚的な立体像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−133891号公報
【特許文献2】特開2009−25436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図15(a)のセクション(A)のハッチング領域に示される如く、左眼用映像信号及び/又は右眼用映像信号が液晶パネル904に書き込まれてから、液晶パネル904が応答を完了するまでにある程度の時間がかかる。したがって、右眼用映像信号が書き込まれても、すぐには右眼用映像になりきらない。この結果、液晶パネル904の応答が完了するまでは、左眼用映像が液晶パネル904に表示され続けることとなる。
【0010】
液晶の応答は、書き込み走査の順に(即ち、液晶パネル904の上部から順に)完了する。図15(a)のセクション(C)に示されるタイミングで右眼シャッタ952が開かれるとき、液晶パネル904の中央部より下の領域は、右眼用映像に完全に変わりきっていない。この結果、右眼用映像の前に表示される左眼用映像が右眼シャッタ952を透過し、クロストークと称される妨害映像が視聴者の右眼で視聴されるという課題が生ずる。
【0011】
図15(b)は、クロストーク量を示している。図15(b)に示される如く、クロストーク量は、液晶パネルの下方に向けて大きくなるという課題も生ずる。上述のクロストークに係る課題は、左眼用映像に対しても共通する。
【0012】
また、上述のクロストークに関する課題は、液晶パネルを表示部として用いる液晶ディスプレイだけでなく、同様の方式で映像を表示する他の表示装置(例えば、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス))にも共通する。
【0013】
本発明は、左眼用映像と右眼用映像との間のクロストークを抑制することができる表示装置及び映像視聴システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の局面に係る表示装置は、左眼で視聴されるための左眼用映像を表現するための左眼用映像信号と、右眼で視聴されるための右眼用映像を表現するための右眼用映像信号と、を含む映像信号に基づき、前記左眼用映像と、前記右眼用映像と、を含む映像を表示する表示装置であって、前記左眼用映像信号が走査されることによって前記左眼用映像を表示するとともに、前記右眼用映像信号が走査されることによって前記右眼用映像を表示する表示部と、前記左眼用映像と前記右眼用映像との間のクロストークに影響し得る特性を解析する解析部と、前記クロストークに影響し得る前記特性に応じて、前記左眼用映像が前記左眼で視聴される期間及び前記右眼用映像が前記右眼で視聴される期間のうち少なくとも一方の視聴期間のタイミングを調整し、前記クロストークを低減するタイミング制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、表示装置は、左眼で視聴されるための左眼用映像を表現するための左眼用映像信号と、右眼で視聴されるための右眼用映像を表現するための右眼用映像信号と、を含む映像信号に基づき、左眼用映像と右眼用映像とを含む映像を表示する。表示部は、左眼用映像信号及び右眼用映像信号を走査し、左眼用映像及び右眼用映像それぞれを表示する。解析部は、クロストークに影響し得る特性を解析する。タイミング制御部は、クロストークに影響し得る特性に応じて、左眼用映像が左眼で視聴される期間及び右眼用映像が右眼で視聴される期間のうち少なくとも一方の視聴期間のタイミングを調整し、クロストークを低減する。したがって、クロストークに影響し得る特性に応じて、左眼用映像と右眼用映像との間でのクロストークが適切に抑制される。
【0016】
上記構成において、前記左眼用映像及び前記右眼用映像は、オブジェクトを表現し、前記解析部は、前記映像信号の走査が開始される開始位置に対する前記オブジェクトの位置を解析し、前記表示部は、前記開始位置を含む第1表示領域と、該第1表示領域よりも前記開始位置から離間した第2表示領域と、を含み、前記オブジェクトが前記第2表示位置に存するとき、前記タイミング制御部は、前記視聴期間のタイミングを遅延させることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、表示部は、第1表示領域と第2表示領域とを含む。第2領域は走査の開始位置から離間しているので、開始位置を含む第1表示領域よりも遅く表示がなされることとなる。左眼用映像及び右眼用映像に表現されるオブジェクトが第2表示領域に存するとき、タイミング制御部は、左眼用映像が左眼で視聴される期間及び右眼用映像が右眼で視聴される期間のうち少なくとも一方の視聴期間のタイミングを遅延させる。第1表示領域よりも遅く表示がなされる結果、比較的クロストークを生じさせやすいオブジェクトに併せて、視聴期間が遅延されるので、左眼用映像と右眼用映像との間でのクロストークが適切に抑制される。
【0018】
上記構成において、前記タイミング制御部は、前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する第1制御部を含み、該第1制御部の制御下で、前記左眼フィルタは前記左眼用映像が表示されている間、前記左眼へ到達する光量を増大させ、前記右眼フィルタは、前記右眼用映像が表示されている間、前記右眼へ到達する光量を増大させ、前記オブジェクトが前記第2表示領域に存するとき、前記第1制御部は、前記左眼フィルタが前記左眼へ到達する光量を増大させるタイミング及び前記右眼フィルタが前記右眼へ到達する光量を増大させるタイミングのうち少なくとも一方を、前記オブジェクトが前記第1表示領域に存するときよりも遅らせることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、第1制御部は、映像から左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと映像から右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する。左眼フィルタは、第1制御部の制御下で、左眼用映像が表示されている間、左眼へ到達する光量を増大させる。また、右眼フィルタは、第1制御部の制御下で、右眼用映像が表示されている間、右眼へ到達する光量を増大させる。オブジェクトが第2領域に存するとき、第1制御部は、左眼フィルタが左眼へ到達する光量を増大させるタイミング及び右眼フィルタが右眼へ到達する光量を増大させるタイミングのうち少なくとも一方を、オブジェクトが第1表示領域に存するときよりも遅らせる。オブジェクトの表示の遅れに応じて、光量を増大させるタイミングが遅れるので、クロストークが適切に低減される。
【0020】
上記構成において、前記表示部は、前記映像信号が走査される液晶パネルと、該液晶パネルに光を照射するバックライトと、を含み、前記タイミング制御部は、前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する第1制御部と、前記バックライトを制御する第2制御部と、を含み、前記第1制御部の制御下で、前記左眼フィルタは前記左眼用映像が表示されている間、前記左眼へ到達する光量を増大させ、前記右眼フィルタは、前記右眼用映像が表示されている間、前記右眼へ到達する光量を増大させ、前記オブジェクトが前記第2表示領域に存するとき、前記左眼フィルタが前記左眼へ到達する光量を増大させている期間及び前記右眼フィルタが前記右眼へ到達する光量を増大させている期間のうち少なくとも一方の光量増大期間内において、前記第2制御部は前記バックライトの前記点灯タイミングを前記オブジェクトが前記第1表示領域に存するときよりも遅らせることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、表示部は、映像信号が走査される液晶パネルと、液晶パネルに光を照射するバックライトとを含む。第1制御部は、映像から左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと映像から右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する。左眼フィルタは、第1制御部の制御下で、左眼用映像が表示されている間、左眼へ到達する光量を増大させる。また、右眼フィルタは、第1制御部の制御下で、右眼用映像が表示されている間、右眼へ到達する光量を増大させる。オブジェクトが第2表示領域に存するとき、左眼フィルタが左眼へ到達する光量を増大させている期間及び右眼フィルタが右眼へ到達する光量を増大させている期間のうち少なくとも一方の光量増大期間内において、第2制御部はバックライトの点灯タイミングを、オブジェクトが第1表示領域に存するときよりも遅らせる。オブジェクトの表示の遅れに応じて、バックライトの点灯タイミングが遅れるので、クロストークが適切に低減される。
【0022】
上記構成において、前記第2制御部は、前記オブジェクトが前記第2表示領域に存するとき、前記バックライトの点灯開始時刻を遅らせることによって前記バックライトの点灯期間を短縮するとともに前記バックライトの輝度を増加させることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、第2制御部は、オブジェクトが第2表示領域に存するとき、バックライトの点灯開始時刻を遅らせる。したがって、視聴期間が適切に遅延される。バックライトの点灯開始時刻に遅延に起因するバックライトの点灯期間の短縮は、バックライトの輝度の増加によって補われ、視聴者は適切に映像を視聴することが可能となる。
【0024】
上記構成において、前記解析部は、前記オブジェクトを表現する映像領域と前記オブジェクトの周囲を表現する映像領域との間の輝度差を解析し、該輝度差が所定の値以上であるとき、前記タイミング制御部は、前記視聴期間の前記タイミングを遅延させることが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、解析部は、オブジェクトを表現する映像領域とオブジェクトの周囲を表現する映像領域との間の輝度差を解析する。輝度差が所定の値以上であるとき、タイミング制御部は、左眼用映像と右眼用映像との間でのクロストークを低減させる制御を行う。したがって、視聴者に知覚されやすいクロストークが適切に低減される。
【0026】
上記構成において、前記解析部は、前記左眼用映像に表現される前記オブジェクトと前記右眼用映像に表現される前記オブジェクトとの間の視差量を解析し、該視差量が所定の値以上であるとき、前記タイミング制御部は、前記視聴期間の前記タイミングを遅延させることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、解析部は、左眼用映像に表現されるオブジェクトと右眼用映像に表現されるオブジェクトとの間の視差量を解析する。視差量が所定の値以上であるとき、タイミング制御部は、左眼用映像と右眼用映像との間でのクロストークを低減させる制御を行う。したがって、視聴者に知覚されやすいクロストークが適切に低減される。
【0028】
上記構成において、前記解析部は、前記クロストークに影響し得る前記特性を定量化した指標を算出する算出部を含み、前記タイミング制御部は、前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する第1制御部を含み、該第1制御部の制御下で、前記左眼フィルタは前記左眼用映像が表示されている間、前記左眼へ到達する光量を増大させ、前記右眼フィルタは、前記右眼用映像が表示されている間、前記右眼へ到達する光量を増大させ、前記第1制御部は、前記指標に応じて、前記左眼フィルタが前記左眼へ到達する光量を増大させている期間及び前記右眼フィルタが前記右眼へ到達する光量を増大させている期間のうち少なくとも一方の光量増大期間の開始時刻を遅くすることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、解析部は、左眼用映像と右眼用映像との間のクロストークを定量化した指標を算出する算出部を含む。第1制御部は、映像から左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと映像から右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する。左眼フィルタは、第1制御部の制御下で、左眼用映像が表示されている間、左眼へ到達する光量を増大させる。また、右眼フィルタは、第1制御部の制御下で、右眼用映像が表示されている間、右眼へ到達する光量を増大させる。第1制御部は、指標に応じて、左眼フィルタが左眼へ到達する光量を増大させている期間及び右眼フィルタが右眼へ到達する光量を増大させている期間のうち少なくとも一方の光量増大期間の開始時刻を遅くする。指標に応じて、左眼用映像及び右眼用映像のうち少なくとも一方を視聴するための光量増大期間が遅延されるので、クロストークが適切に低減されることとなる。
【0030】
上記構成において、前記表示部は、前記映像信号が走査される液晶パネルと、該液晶パネルに光を照射するバックライトと、を含み、前記タイミング制御部は、前記バックライトを制御する第2制御部と、を含み、前記第2制御部は、前記指標に応じて、前記光量増大期間中における前記バックライトの輝度を増大させることが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、表示部は、映像信号が走査される液晶パネルと、液晶パネルに光を照射するバックライトと、を含む。第2制御部は、指標に応じて、光量増大期間中におけるバックライトの輝度を増大させる。光量増大期間の開始時刻の遅延に起因する光量増大期間の短縮によって生じた視聴者が受ける光量の低減が、増大されたバックライトの輝度によって補われるので、視聴者は映像を好適に視聴することができる。
【0032】
上記構成において、前記解析部は、前記クロストークに影響し得る前記特性を定量化した指標を算出する算出部を含み、前記タイミング制御部は、前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する第1制御部と、前記バックライトを制御する第2制御部と、を含み、前記第1制御部の制御下で、前記左眼フィルタは前記左眼用映像が表示されている間、前記左眼へ到達する光量を増大させ、前記右眼フィルタは、前記右眼用映像が表示されている間、前記右眼へ到達する光量を増大させ、前記第2制御部は、前記指標に応じて、前記左眼フィルタが前記左眼へ到達する光量を増大させている期間及び前記右眼フィルタが前記右眼へ到達する光量を増大させている期間のうち少なくとも一方の光量増大期間中の前記バックライトの点灯開始時刻を遅らせることを特徴とする。
【0033】
上記構成によれば、解析部は、左眼用映像と右眼用映像との間のクロストークを定量化した指標を算出する算出部を含む。第1制御部は、映像から左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと映像から右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する。左眼フィルタは、第1制御部の制御下で、左眼用映像が表示されている間、左眼へ到達する光量を増大させる。また、右眼フィルタは、第1制御部の制御下で、右眼用映像が表示されている間、右眼へ到達する光量を増大させる。第2制御部は、指標に応じて、左眼フィルタが左眼へ到達する光量を増大させている期間及び右眼フィルタが右眼へ到達する光量を増大させている期間のうち少なくとも一方の光量増大期間中のバックライトの点灯開始時刻を遅らせる。指標に応じて、左眼用映像及び右眼用映像のうち少なくとも一方を視聴するためのバックライトの点灯期間が遅延されるので、クロストークが適切に低減されることとなる。
【0034】
上記構成において、前記第2制御部は、前記指標に応じて、前記光量増大期間中における前記バックライトの輝度を増大させることが好ましい。
【0035】
上記構成によれば、第2制御部は、指標に応じて、光量増大期間中におけるバックライトの輝度を増大させる。バックライトの点灯開始時刻の遅延に起因する点灯期間の短縮によって生じた視聴者が受ける光量の低減が、増大されたバックライトの輝度によって補われるので、視聴者は映像を好適に視聴することができる。
【0036】
上記構成において、前記左眼用映像及び前記右眼用映像は、オブジェクトを表現し、前記算出部は、前記オブジェクトを表現する映像領域と前記オブジェクトの周囲を表現する映像領域との間の輝度差及び前記左眼用映像に表現される前記オブジェクトと前記右眼用映像に表現される前記オブジェクトとの間の視差量のうち少なくとも一方を用いて前記指標を算出することが好ましい。
【0037】
上記構成によれば、算出部は、映像中に含まれるオブジェクトを表現する映像領域とオブジェクトの周囲を表現する映像領域との間の輝度差及び左眼用映像に表現されるオブジェクトと右眼用映像に表現されるオブジェクトとの間の視差量のうち少なくとも一方を用いて指標を算出する。したがって、視聴者に知覚されやすいクロストークが適切に低減される。
【0038】
本発明の他の局面に係る表示装置は、左眼で視聴されるための左眼用映像を表現するための左眼用映像信号と、右眼で視聴されるための右眼用映像を表現するための右眼用映像信号と、を含む映像信号に基づき、前記左眼用映像と、前記右眼用映像と、を含む映像を表示する表示装置であって、前記左眼用映像信号が走査されることによって前記左眼用映像を表示するとともに、前記右眼用映像信号が走査されることによって前記右眼用映像を表示する表示部と、前記左眼用映像と前記右眼用映像との間のクロストークに影響し得る特性を解析する解析部と、前記クロストークに影響し得る前記特性に応じて、前記映像信号の走査が開始される開始位置を調整し、前記クロストークを低減する位置制御部と、を備えることが好ましい。
【0039】
上記構成によれば、表示装置は、左眼で視聴されるための左眼用映像を表現するための左眼用映像信号と、右眼で視聴されるための右眼用映像を表現するための右眼用映像信号と、を含む映像信号に基づき、左眼用映像と右眼用映像とを含む映像を表示する。表示部は、左眼用映像信号及び右眼用映像信号を走査し、左眼用映像及び右眼用映像それぞれを表示する。解析部は、クロストークに影響し得る特性を解析する。位置制御部は、クロストークに影響し得る特性に応じて、映像信号の走査が開始される開始位置を調整し、クロストークを低減する。したがって、クロストークに影響し得る特性に応じて、左眼用映像と右眼用映像との間でのクロストークが適切に抑制される。
【0040】
上記構成において、前記左眼用映像及び前記右眼用映像は、オブジェクトを表現し、前記解析部は、前記左眼用映像及び前記右眼用映像中の前記オブジェクトの位置を解析し、前記位置制御部は、前記開始位置が前記オブジェクトの位置に近づくように前記開始位置を調整することが好ましい。
【0041】
上記構成によれば、解析部は、左眼用映像及び右眼用映像中のオブジェクトの位置を解析する。位置制御部は、開始位置がオブジェクトの位置に近づくように、開始位置を調整する。この結果、左眼用映像において表現されるオブジェクトが左眼で視聴される期間及び右眼用映像において表現されるオブジェクトが右眼で視聴される期間のうち少なくとも一方の視聴期間のタイミングが早められる。オブジェクトは比較的早いタイミングで視聴されることになるので、クロストークが適切に低減される。
【0042】
上記構成において、前記解析部は、前記オブジェクトを表現する映像領域と前記オブジェクトの周囲を表現する映像領域との間の輝度差を解析し、該輝度差が所定の値以上であるとき、前記位置制御部は、前記開始位置が前記オブジェクトの位置に近づくように前記開始位置を調整することが好ましい。
【0043】
上記構成によれば、解析部は、オブジェクトを表現する映像領域とオブジェクトの周囲を表現する映像領域との間の輝度差を解析する。輝度差が所定の値以上であるとき、位置制御部は、左眼用映像と右眼用映像との間でのクロストークを低減させる制御を行う。したがって、視聴者に知覚されやすいクロストークが適切に低減される。
【0044】
上記構成において、前記解析部は、前記左眼用映像に表現される前記オブジェクトと前記右眼用映像に表現される前記オブジェクトとの間の視差量を解析し、該視差量が所定の値以上であるとき、前記位置制御部は、前記開始位置が前記オブジェクトの位置に近づくように前記開始位置を調整することが好ましい。
【0045】
上記構成によれば、解析部は、左眼用映像に表現されるオブジェクトと右眼用映像に表現されるオブジェクトとの間の視差量を解析する。視差量が所定の値以上であるとき、位置制御部は、左眼用映像と右眼用映像との間でのクロストークを低減させる制御を行う。したがって、視聴者に知覚されやすいクロストークが適切に低減される。
【0046】
本発明の更に他の局面に係る映像視聴システムは、上述の表示装置と、該表示装置が表示する前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置と、を備えることを特徴とする。
【0047】
上記構成によれば、上述の表示装置と、表示装置が表示する映像から左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと映像から右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置と、を備える映像視聴システムであるので、クロストークの影響が低減された映像の視聴環境が視聴者に提供される。
【発明の効果】
【0048】
上述の如く、本発明に係る表示装置及び映像視聴システムは、左眼用映像と右眼用映像との間のクロストークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態に係る映像視聴システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1に示される映像視聴システムを概略的に示す模式図である。
【図3】クロストークの発生原理を概略的に説明する図である。
【図4】クロストークの知覚されやすさの程度(知覚度)を概略的に説明する図である。
【図5】第1実施形態に係るクロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。
【図6】第2実施形態に係るクロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。
【図7】第3実施形態に係る映像視聴システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】第3実施形態に係るクロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。
【図9】第4実施形態に係る映像視聴システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図10】第4実施形態に係るクロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。
【図11】第4実施形態に係るクロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。
【図12】第5実施形態に係るクロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。
【図13】第5実施形態に係るクロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。
【図14】従来の映像視聴システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図15】従来の映像視聴システムの制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の一実施形態に係る表示装置及び映像視聴システムが図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、説明の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、単に本実施形態の原理を容易に理解させることを目的とするものであり、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0051】
<第1実施形態>
(映像視聴システムの構成)
図1は、第1実施形態に係る映像視聴システムの構成を概略的に示すブロック図である。図2は、図1に示される映像視聴システムを概略的に示す模式図である。図1及び図2を参照しつつ、映像視聴システムの構成が説明される。
【0052】
映像視聴システム100は、左眼で視聴されるための左眼用映像を表現するための左眼用映像信号(以下、L信号と称される)と、右眼で視聴されるための右眼用映像を表現するための右眼用映像信号(以下、R信号と称される)とを含む映像信号に基づき、左眼用映像と右眼用映像とを表示する表示装置200と、表示装置200が表示する映像の視聴を補助する眼鏡装置300とを備える。視聴者は、眼鏡装置300を通じて、表示装置200が表示する映像を立体的に知覚する。
【0053】
視力矯正用の眼鏡と同様の形状をなす眼鏡装置300は、視聴者の左眼前に配設される左眼フィルタ311と、視聴者の右眼前に配設される右眼フィルタ312とを含む光学フィルタ部310を備える。左眼フィルタ311及び右眼フィルタ312は、表示装置200が表示する映像から視聴者の左眼へ到達する光の量(以下、左眼光量と称される)及び視聴者の右眼へ到達する光の量(以下、右眼光量と称される)を調整可能に形成される光学素子を含む。左眼フィルタ311及び右眼フィルタ312として、視聴者の左眼及び右眼へ透過する光路を開閉するシャッタ素子(例えば、液晶シャッタ)、視聴者の左眼及び右眼へ透過する光を偏光する偏光素子(例えば、液晶フィルタ)や光量を調整可能な他の光学素子が好適に用いられる。左眼フィルタ311は、左眼用映像の表示に同期して、左眼光量を増大させる一方で、右眼用映像の表示に同期して、左眼光量を低減させるように制御される。同様に、右眼フィルタ312は、右眼用映像の表示に同期して、右眼光量を増大させる一方で、左眼用映像の表示に同期して、右眼光量を低減させるように制御される。
【0054】
表示装置200は、映像信号処理部210、液晶駆動部220、表示部230、第1制御部240及び第2制御部250を備える。
【0055】
映像信号処理部210には、基本となる垂直同期周波数を有する映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)が入力される。そして、映像信号処理部210は、入力された映像信号を、基本となる垂直同期周波数のN倍(Nは自然数)の周波数で、L信号とR信号とに分割して出力する。本実施形態では、入力された60Hzの映像信号が、120HzのL信号及びR信号に変換される。変換を通じて得られたL信号及びR信号は、液晶駆動部220へ出力される。映像信号処理部210は、L信号及びR信号の出力に同期して、第1制御部240を制御するための制御信号を出力する。第1制御部240は、映像信号処理部210からの制御信号に基づき、光学フィルタ部310を制御する。必要に応じて、映像信号処理部210は、L信号及びR信号の出力に同期して、第2制御部250に制御信号を出力してもよい。第2制御部250は、映像信号処理部210からの制御信号に基づき、表示部230のバックライト232を制御してもよい。第1制御部240及び/又は第2制御部250へ出力される制御信号は、映像信号処理部210による変換後のL信号及び/又はR信号自体であってもよい。代替的に、L信号及び/又はR信号の出力に同期する120Hzの同期信号であってもよい。
【0056】
表示部230は、液晶の駆動によって左眼用映像及び右眼用映像を含む映像を表示する液晶パネル231と、液晶パネル231に光を照射するバックライト232とを備える。液晶駆動部220は、120HzのL信号及びR信号を、液晶パネル231が表示可能な形式に変換する。液晶駆動部220は、変換されたL信号及びR信号を液晶パネル231へ出力する。尚、液晶パネル231に代えて、有機ELディスプレイが用いられてもよい。
【0057】
液晶パネル231は、入力されたL信号とR信号とに応じて、背面から入射する光を変調し、左眼で視聴されるように形成された左眼用映像と、右眼で視聴されるように形成された右眼用映像とを順次表示する。液晶パネル231には、例えば、IPS(In Plane Switching)方式や、VA(Vertical Alignment)方式やTN(Twisted Nematic)方式といった様々な駆動方式が好適に適用される。
【0058】
バックライト232は、液晶パネル231の背面から液晶パネル231の表示面に向けて光を照射する。本実施形態において、バックライト232として、面発光するように二次元配列された複数の発光ダイオード(LED)(図示せず)が用いられている。代替的に、バックライト232として、面発光するように配列された複数の蛍光管が用いられてもよい。バックライト232として用いられる発光ダイオードや蛍光管は、液晶パネル231の縁部に配設され、面発光を生じさせてもよい(エッジタイプ)。
【0059】
第2制御部250は、映像信号処理部210から出力された120Hzの制御信号を基準に発光制御信号を出力する。バックライト232は、発光制御信号に基づき明滅する。尚、本実施形態において、バックライト232は、常時点灯しているように制御される。したがって、第2制御部250は、省略されてもよい。他の実施形態において、バックライト232は、発光制御信号に基づき、左眼用映像及び/又は右眼用映像の表示に同期して、繰り返し明滅される。更に他の実施形態において、バックライト232の発光輝度は可変とされてもよい。バックライト232が点灯している間、視聴者は液晶パネル231に表示された映像を視聴可能である。バックライト232が消灯している間、視聴者は液晶パネル231に表示された映像をほとんど視聴することはできない。
【0060】
第1制御部240は、眼鏡装置300の光学フィルタ部310を、左眼用映像及び右眼用映像の表示周期に合わせて制御する。第1制御部240は、左眼フィルタ311を制御するための左眼用のフィルタ制御部241(以下、Lフィルタ制御部241と称される)と、右眼フィルタ312を制御するための右眼用のフィルタ制御部242(以下、Rフィルタ制御部242と称される)とを備える。液晶パネル231が左眼用映像及び右眼用映像を、例えば、120Hzで表示するとき、Lフィルタ制御部241は、左眼フィルタ311が60Hzの周期で左眼光量を調整する(増減させる)ように眼鏡装置300を制御する。同様に、Rフィルタ制御部242は、右眼フィルタ312が60Hzの周期で右眼光量を調整する(増減させる)ように眼鏡装置300を制御する。
【0061】
図2に示される如く、本実施形態において、表示装置200は、左眼用映像の表示に同期する第1同期信号を送信する第1送信部243と、右眼用映像の表示に同期する第2同期信号を送信する第2送信部244とを備える。また、眼鏡装置300は、左眼フィルタ311と右眼フィルタ312との間に配設される受信部320を備える。受信部320は、第1同期信号及び第2同期信号を受信する。第1同期信号の波形は、好ましくは、第2同期信号の波形と異なる。受信部320は、受信された同期信号の波形に基づき、第1同期信号と第2同期信号とを識別する。かくして、眼鏡装置300は、第1同期信号に基づき、左眼フィルタ311を動作させる。また、眼鏡装置300は、第2同期信号に基づき、右眼フィルタ312を動作させる。表示装置200と眼鏡装置300との間の同期信号の無線通信並びに眼鏡装置300による同期信号の内部処理に対して、既知の他の通信技術並びに既知の他の信号処理技術が用いられてもよい。代替的に、表示装置200と眼鏡装置300との間の同期信号の通信が、有線式に行われてもよい。
【0062】
Lフィルタ制御部241及びRフィルタ制御部242は、映像信号処理部210からの制御信号を基準とし、左眼フィルタ311による左眼光量の増減周期の位相及び右眼フィルタ312による右眼光量の増減周期の位相を決定する。Lフィルタ制御部241及びRフィルタ制御部242は、決定された位相に従い、第1同期信号及び第2同期信号を出力する。左眼フィルタ311及び右眼フィルタ312それぞれは、第1同期信号及び第2同期信号に基づき、左眼用映像の表示及び右眼用映像の表示に同期して、左眼光量及び右眼光量を増減させる。
【0063】
第1制御部240は、液晶パネル231の応答特性並びに表示される左眼用映像及び右眼用映像との間のクロストーク(相互干渉)を考慮して、左眼フィルタ311及び右眼フィルタ312それぞれが左眼光量及び右眼光量を増大させている期間(以下、光量増大期間と称される)の長さと、光量増大期間のタイミング(位相)を決定する。本実施の形態において、光量増大期間の長さは、60Hzの左眼用映像の表示及び/又は60Hzの右眼用映像の表示の一周期期間(16.7msec)の25%(デューティ25%)とされている。Lフィルタ制御部241は、左眼光量に対する光量増大期間の長さ及びタイミングを制御する。Rフィルタ制御部242は、右眼光量に対する光量増大期間の長さ及びタイミングを制御する。尚、映像信号処理部210からの120Hzの制御信号に基づき発光制御信号を出力する第2制御部250は、左眼光量及び右眼光量の光量増大期間中にバックライト232が点灯するようにバックライト232を制御してもよい。
【0064】
(クロストークの発生原理)
図3は、クロストークの発生原理を概略的に説明する図である。図3(a)は、任意の映像視聴システムの制御を概略的に表す制御タイミングチャートである。図3(b)は、図3(a)に示される制御により生ずるクロストーク量と液晶パネル中の位置との関係を概略的に示す模式図である。図3(a)のセクション(A)は、液晶パネルに対する映像信号の走査タイミングを概略的に示す。図3(a)のセクション(B)は、バックライトの点灯を示す。図3(a)のセクション(C)は、眼鏡装置の左眼フィルタによって調整される左眼光量の変動並びに右眼フィルタによって調整される右眼光量の変動を概略的に表す。尚、図3(a)に示される制御タイミングチャートは、クロストークの発生原理を説明するためのものであり、本実施形態に係る表示装置200並びに映像視聴システム100の制御に特有のものではない。
【0065】
図3(a)のセクション(A)に示される液晶パネルには、最初にL信号が書き込まれ、次に、R信号が書き込まれている。液晶パネルの上端は、映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)の走査の開始位置Sである。また、液晶パネルの下端は、映像信号の書き込みの終了位置Eである。L信号及びR信号は、開始位置Sから終了位置Eに向けて、順次、液晶パネルに書き込まれている。尚、開始位置Sから終了位置EまでL信号又はR信号を書き込むのに、1フィールド(60Hz=16.7m秒)の約4分の1の時間かかっている。図3(a)のセクション(A)中、液晶パネルの縦位置と書き込み時刻との関係は、矢印Aで示されている。
【0066】
図3(a)のセクション(A)には、矢印Aを左側の境界として、ハッチングされた菱形の領域が示される。菱形の領域は、液晶パネルの応答に要する期間を表す応答時間領域Rである。図3(a)のセクション(A)に示される如く、L信号又はR信号の書き込みがなされてから、L信号又はR信号に従って、液晶パネルの液晶が動作されるまでに、ある程度の時間がかかる(液晶の応答遅れ)。液晶パネルの応答が完了した後、L信号又はR信号に従った表示がなされることとなる。図3(a)のセクション(A)中、液晶パネルの縦位置と液晶の応答完了時刻との関係は、応答時間領域Rの右側境界線となる直線Lで示されている。液晶の応答遅れは、液晶パネルに含まれる液晶層(図示せず)の液晶分子の配列方向が変化して光通過率が変化するのに時間がかかることに起因する。
【0067】
図3(a)のセクション(A)に示されるように、左眼用映像信号が走査される左眼走査区間において、矢印Aで示されるように、L信号が液晶パネルに書き込まれる。その後、直線Lで示される時刻を経過した後、左眼用映像が液晶パネルに表示される。その後、右眼用映像信号が走査される右眼走査区間において、矢印Aで示されるように、R信号が液晶パネルに書き込まれる。応答時間領域Rで示される期間中は、液晶パネルはL信号に従う左眼用映像を保持する。その後、直線Lで示される時刻を経過した後、液晶パネルは右眼用映像を表示する。
【0068】
図3(a)のセクション(B)に示されるように、バックライトは常時点灯されている。したがって、眼鏡装置が左眼光量を増大させたとき、視聴者は左眼で液晶パネルが表示する映像を視聴することができる。また、眼鏡装置が右眼光量を増大させたとき、視聴者は右眼で液晶パネルが表示する映像を視聴することができる。
【0069】
左眼でL信号に従って表示された左眼用映像を視聴し、右眼でR信号に従って表示された右眼用映像を視聴するとき、視聴者は、左眼用映像と右眼用映像との間の視差を知覚することによって、脳内でオブジェクトが立体であると認識する。この結果、視聴者は、左眼用映像及び右眼用映像中に表現されたオブジェクトを、液晶パネルの表示面から飛び出たように或いは引っ込んだように知覚することができる。
【0070】
図3(a)のセクション(A)において、説明の明瞭化のため、液晶パネルの表示面は、3つの領域(上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3)に分割されている。図3(a)のセクション(C)に示されるタイミング(点線T参照)で、左眼光量が増大されたとき、上部領域D1では、右眼用映像の表示から左眼用映像の表示への切り替えが達成されている。一方で、中間領域D2の下部から下部領域D3の領域においては、右眼用映像の表示から左眼用映像の表示への切り替えは完了していない。したがって、中間領域D2の下部から下部領域D3の領域において、右眼用映像の影響が残存した状態で表示されていることとなる。同様に、図3(a)のセクション(C)に示されるタイミング(点線T参照)で、右眼光量が増大されたとき、上部領域D1では、左眼用映像の表示から右眼用映像の表示への切り替えが達成されている。一方で、中間領域D2の下部から下部領域D3の領域においては、左眼用映像の表示から右眼用映像の表示への切り替えは完了していない。したがって、中間領域D2の下部から下部領域D3の領域において、左眼用映像の影響が残存した状態で表示されていることとなる。結果として、視聴者は、中間領域D2の下部から下部領域D3の領域において、右眼用映像の影響の残った左眼用映像を左眼で視聴し、左眼用映像の影響の残った右眼用映像を右眼で視聴することとなる。このような現象は、クロストークと称される。
【0071】
図3(b)は、クロストークの発生の度合いを示すグラフである。図3(b)の縦軸は、液晶パネルの縦位置を示す。図3(b)の横軸は、クロストークの発生の度合いを示す。上記の説明から明らかな如く、クロストークの発生の度合い(確率)は、点線Tと直線Lとの間の時間軸方向の距離に比例する。点線Tと直線Lとの間の時間軸方向の距離が長いほど、上述のクロストークは発生しやすい。図3(b)のグラフ中、実線で示されるように、液晶パネルの中間位置から下方の領域でクロストークの発生の度合いが増加する。
【0072】
図4は、クロストークの知覚されやすさの程度(知覚度)を概略的に説明する図である。図4(a)を用いて、左眼用映像と右眼用映像との間の輝度差が与える知覚度への影響が説明される。図4(b)を用いて、L信号で表される左眼用映像とR信号で表される右眼用映像との間の視差量の知覚度への影響が説明される。図4(a)及び図4(b)のセクション(A)は、左眼用映像を表示する液晶パネルQを示す。図4(a)及び図4(b)のセクション(B)は、右眼用映像を表示する液晶パネルQを示す。図4(a)及び図4(b)のセクション(C)は、左眼用映像と右眼用映像とが合成された映像を示す。
【0073】
図4に示される液晶パネルQにおいて、映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)の走査の開始位置S及び走査の終了位置Eは、図3に関連する説明と同様に、液晶パネルQの上端及び下端に設定されている。また、図3に関連する説明と同様に、液晶パネルQの表示面は、上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3に分割して示されている。
【0074】
左眼用映像中の下部領域D3には、オブジェクトOLが示されている。右眼用映像中の下部領域D3には、オブジェクトORが示されている。尚、オブジェクトOL,ORはともに同一の物体を表現しているが、視差の分だけ、左眼用映像と右眼用映像との間で異なる位置に表現されている。尚、オブジェクトOL,ORが表示されている下部領域D3は、図3に関連して説明された如く、クロストークが最も生じやすい領域である。
【0075】
オブジェクトOL,ORは、大きな輝度レベル(液晶パネルQの最大輝度255に対して、例えば、200の輝度レベル:略白色)で表現されている。液晶パネルQの他の表示面は、小さな輝度レベル(例えば、輝度レベル0:略黒色)で表現されている。
【0076】
図4(a)のセクション(C)に示される如く、左眼用映像(図4(a)のセクション(A)参照)及び右眼用映像(図4(a)のセクション(B)参照)が交互に表示されるとき、オブジェクトOL,ORが重複して表示される領域K1は、左眼用映像と右眼用映像との切り換えの間、200の輝度レベルを保つ。一方、領域K1を除くオブジェクトOLの領域K2及び領域K1を除くオブジェクトORの領域K3の輝度レベルは、「0」と「200」との間で変動する(例えば、60Hzで)。
【0077】
一般に、大きな輝度レベルの変動は、液晶パネルQへの書込みに伴う液晶層の光通過率の変化に長い時間を生じさせる(即ち、図3に関連して説明された応答時間領域Rが時間軸方向へ広がる)。したがって、図3(b)に関連して説明されたクロストーク量が大きくなる。かくして、L信号で表現される左眼用映像とR信号で表現される右眼用映像との間の視差によって生ずる輝度レベルの差が大きいとき、クロストークが知覚されやすくなる。
【0078】
図4(b)に示される左眼用映像及び右眼用映像間の視差量P2は、図4(a)に示される左眼用映像及び右眼用映像間の視差量P1よりも大きい。このとき、輝度レベルの変動がほとんど生じない領域K1の面積は減少する一方で、輝度レベルの変動が大きな領域K2,K3の面積は増大する。したがって、左眼用映像と右眼用映像との間の視差量の大きな差は、クロストークの知覚されやすさの程度を増大させる。
【0079】
図4に関連する説明から、(1)オブジェクトとオブジェクト周囲の像との輝度差及び(2)左眼用映像と右眼用映像との視差量は、クロストークの知覚されやすさの程度に影響することが分かる。
【0080】
以下の説明において、図1に関連して示された映像信号処理部210は、図3及び図4に関連して説明されたクロストークの特性を解析する解析部として例示される。以下の説明において、クロストークの特性として、走査の開始位置Sからのオブジェクトの距離、オブジェクトを表現する映像領域とオブジェクト周囲を表現する映像領域との輝度差や左眼用映像において表現されるオブジェクトと右眼用映像において表現されるオブジェクトとの間の視差量が例示される。尚、クロストークの発生のしやすさやクロストークの知覚のされやすさに影響を与える任意の特性がクロストークの特性として用いられてもよい。
【0081】
映像信号処理部210は、オブジェクトを表現する映像領域とオブジェクト周囲を表現する映像領域との輝度差や左眼用映像において表現されるオブジェクトと右眼用映像において表現されるオブジェクトとの間の視差量に基づき、クロストークを生じさせる或いは知覚させる因子となるオブジェクトを識別してもよい。例えば、映像信号処理部210は、オブジェクトを表現する映像領域とオブジェクト周囲を表現する映像領域との輝度差が所定の閾値を超えているとき、及び/又は、左眼用映像において表現されるオブジェクトと右眼用映像において表現されるオブジェクトとの間の視差量が所定の閾値を超えているとき、対象となるオブジェクトがクロストークを生じさせる因子となっていると判定してもよい。映像信号処理部210は更に、映像信号(L信号及びR信号)に基づき、クロストークを生じさせる因子として判定されたオブジェクトと走査の開始位置Sとの間の距離が所定の値以上であるとき、制御部として例示される第1制御部240及び/又は第2制御部250に眼鏡装置300及び/又はバックライト232を制御させ、クロストークを低減させる制御を実行させてもよい。
【0082】
(クロストークを低減させるための制御)
図5は、クロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。図5(a)は、映像視聴システム100の制御を概略的に表す制御タイミングチャートである。図5(a)のセクション(A)は、液晶パネル231に対する映像信号の走査タイミングを概略的に示す。図5(a)のセクション(B)は、バックライト232の点灯を示す。図5(a)のセクション(C1)乃至セクション(C3)は、眼鏡装置300の左眼フィルタ311によって調整される左眼光量の変動並びに右眼フィルタ312によって調整される右眼光量の変動を概略的に表す。図5(b)乃至図5(d)それぞれは、図5(a)のセクション(C1)乃至セクション(C3)に示される左眼光量及び/又は右眼光量の変動により生ずるクロストーク量と液晶パネル231中の位置との関係を概略的に示す模式図である。図1、図3及び図5を参照しつつ、クロストークを低減させるための制御(第1実施形態)が説明される。
【0083】
図5(a)のセクション(A)に示される液晶パネル231には、最初にL信号が書き込まれ、次に、R信号が書き込まれている。液晶パネル231の上端は、映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)の走査の開始位置Sである。また、液晶パネル231の下端は、映像信号の走査の終了位置Eである。L信号及びR信号は、開始位置Sから終了位置Eに向けて、順次、液晶パネル231に書き込まれている。尚、図3と同様に、開始位置Sから終了位置EまでL信号又はR信号を書き込むのに、1フィールド(60Hz=16.7m秒)の約4分の1の時間かかっている。図5(a)のセクション(A)中、液晶パネル231の縦位置と書き込み時刻との関係は、矢印Aで示されている。
【0084】
図5(a)のセクション(A)には、矢印Aを左側の境界として、図3と同様の応答時間領域R及び応答時間領域Rの右側境界線として示される応答完了時刻を示す直線Lが示されている。直線Lは、開始位置Sにおいて入力された映像信号に基づく映像が最初に表示され、終了位置Eにおいて、入力された映像信号に基づく映像が最後に表示されることを表している。図5(a)のセクション(A)の液晶パネル231の表示面は、説明の明瞭化のため、図3と同様に、上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3に分割して示されている。液晶パネル231上の左眼用映像又は右眼用映像は、上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3の順で映像信号の走査が行われることにより形成される。尚、上部領域D1は、開始位置Sを含む第1表示領域として例示される。このとき、中間領域D2及び/又は下部領域D3は、第1表示領域よりも映像信号の走査の開始位置Sから離間した第2表示領域として例示される。
【0085】
本実施形態において、図5(a)のセクション(B)に示されるように、バックライト232は常時点灯されている。したがって、眼鏡装置300が左眼光量を増大させたとき、視聴者は左眼で液晶パネル231が表示する映像を視聴することができる。また、眼鏡装置300が右眼光量を増大させたとき、視聴者は右眼で液晶パネル231が表示する映像を視聴することができる。かくして、本実施形態において、左眼フィルタ311が映像から左眼へ到達する光量を増大させている光量増大期間I及び/又は右眼フィルタ312が映像から右眼へ到達する光量を増大させている光量増大期間Iは、視聴者が左眼で左眼用映像を視聴する視聴期間及び/又は視聴者が右眼で右眼用映像を視聴する視聴期間に略一致する。
【0086】
図5(a)のセクション(C1)乃至セクション(C3)には、映像から左眼又は右眼へ到達する光量が増大する光量増大期間Iが示されている。図5(a)のセクション(C1)において、左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻前に、光量増大期間Iが開始され、左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻に光量増大期間Iが終了する。図5(a)のセクション(C1)に示される光量増大期間Iの設定において、下部領域D3に存在するオブジェクトは、上部領域D1及び中間領域D2に存在するオブジェクトよりもクロストークの因子となりやすい。
【0087】
本実施形態において、映像信号処理部210は、入力された左眼用映像信号及び/又は右眼用映像信号が含む情報からクロストークとして知覚されやすいオブジェクトの有無及び当該オブジェクトの位置(液晶パネル231の表示面の縦方向の位置)を演算する。映像信号処理部210の演算結果は、Lフィルタ制御部241及びRフィルタ制御部242へ出力される。本実施形態において、Lフィルタ制御部241及びRフィルタ制御部242を含む第1制御部240は、タイミング制御部として例示される。
【0088】
クロストークとして知覚されやすいオブジェクトが上部領域D1に存在するとき、Lフィルタ制御部241及びRフィルタ制御部242は、図5(a)のセクション(C1)に示されるタイミングの光量増大期間Iが設けられるように、左眼フィルタ311及び右眼フィルタ312を制御する。左眼フィルタ311及び右眼フィルタ312それぞれは、左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻直前の光量増大期間Iにおいて、左眼光量及び右眼光量を増大させる。このとき、図5(a)のセクション(C1)に対応する図5(b)に示される如く、上部領域D1において、クロストーク量は小さくなる(図5(b)に示される上部領域D1では、クロストーク量は「0」となっている)。したがって、視聴者は、上部領域D1に存するオブジェクトのクロストークをほとんど知覚しないこととなる。
【0089】
図5(a)のセクション(C2)において、左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻前に、光量増大期間Iが開始され、左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻後に光量増大期間Iが終了する。左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻は、光量増大期間Iの略中央に位置している。このとき、図5(a)のセクション(C2)に対応する図5(c)に示される如く、中間領域D2において、クロストーク量は小さくなる(図5(c)に示される中間領域D2では、クロストーク量は「0」となっている)。
【0090】
映像信号処理部210が、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトが中間領域D2に存すると判定した場合、映像信号処理部210の演算結果が入力されたLフィルタ制御部241及びRフィルタ制御部242それぞれは、左眼フィルタ311及び右眼フィルタ312を制御し、図5(a)のセクション(C2)に示されるタイミングの光量増大期間Iを設ける。この結果、視聴者は、中間領域D2に存するオブジェクトのクロストークをほとんど知覚しないこととなる。
【0091】
図5(a)のセクション(C3)において、左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻に、光量増大期間Iが開始され、左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻後に光量増大期間Iが終了する。このとき、図5(a)のセクション(C3)に対応する図5(d)に示される如く、下部領域D3において、クロストーク量は小さくなる(図5(d)に示される下部領域D3では、クロストーク量は「0」となっている)。
【0092】
映像信号処理部210が、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトが下部領域D3に存すると判定した場合、映像信号処理部210の演算結果が入力されたLフィルタ制御部241及びRフィルタ制御部242それぞれは、左眼フィルタ311及び右眼フィルタ312を制御し、図5(a)のセクション(C3)に示されるタイミングの光量増大期間Iを設ける。この結果、視聴者は、下部領域D3に存するオブジェクトのクロストークをほとんど知覚しないこととなる。
【0093】
開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離に対して設定された閾値を用いて、映像信号処理部210は、当該オブジェクトが上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3のいずれにあるかを判定してもよい。開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が第1閾値未満であるとき、映像信号処理部210は、上部領域D1に当該オブジェクトが存すると判定してもよい。開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が、第1閾値と、第1閾値よりも大きい第2閾値との間の値であるとき、映像信号処理部210は、中間領域D2に当該オブジェクトが存すると判定してもよい。開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が、第2閾値より大きな値であるとき、映像信号処理部210は、下部領域D3に当該オブジェクトが存すると判定してもよい。
【0094】
開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が、第1閾値を超えたとき、第1制御部240は、当該オブジェクトが上部領域D1に存するときよりも光量増大期間Iのタイミングを遅らせる。開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が、第2閾値を超えたとき、第1制御部240は、当該オブジェクトが中間領域D2に存するときよりも光量増大期間Iのタイミングを遅らせる。かくして、第1制御部240は、クロストークの因子となるオブジェクトの表示位置に基づき、左眼光量及び右眼光量の調整タイミングを適切に変更する。クロストークの因子となるオブジェクトの表示位置に基づくクロストークを低減させる制御の結果、視聴者は、クロストークの少ない(あるいは、無い)高品位の立体映像を視聴することができる。
【0095】
尚、液晶パネル231の表示面は縦方向を3分割する上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3中のクロストークの因子となるオブジェクトの有無に基づく制御に代えて、2分割する領域或いは4以上の分割領域中のクロストークの因子となるオブジェクトの有無に基づく、光量増大期間Iのタイミングの調整を行う制御がなされてもよい。
【0096】
映像信号処理部210は、1つのフレーム画像中のクロストークの因子となる複数のオブジェクトに対して、優先度を設定してもよい。映像信号処理部210は、(1)各オブジェクトと各オブジェクトの周囲の像との輝度差、(2)左眼用映像と右眼用映像との間での各オブジェクトの視差量、(3)オブジェクトの面積といった情報に基づき、クロストークとして最も知覚されやすいオブジェクトを選択してもよい。クロストークとして最も知覚されやすいオブジェクトが、例えば、上部領域D1に存するとき、第1制御部240は、図5(a)のセクション(C1)に示される光量増大期間Iが得られるように、光学フィルタ部310を制御する。クロストークとして最も知覚されやすいオブジェクトが、例えば、中間領域D2に存するとき、第1制御部240は、図5(a)のセクション(C2)に示される光量増大期間Iが得られるように、光学フィルタ部310を制御する。クロストークとして最も知覚されやすいオブジェクトが、例えば、下部領域D3に存するとき、第1制御部240は、図5(a)のセクション(C3)に示される光量増大期間Iが得られるように、光学フィルタ部310を制御する。
【0097】
映像信号処理部210がクロストークの因子となるオブジェクトが左眼用映像及び/又は右眼用映像中に存在しないと判定する場合には、光量増大期間Iに対して予め定められたデフォルトタイミング(例えば、図5(a)のセクション(C1)に示されるタイミング)で、第1制御部240は、光学フィルタ部310を動作させる。
【0098】
<第2実施形態>
図1に関連して説明された映像視聴システム100の構成は、第2実施形態に援用される。第2実施形態において、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの表示位置に応じて、バックライト232の点灯タイミングが調整される。尚、第2実施形態において、光量増大期間のタイミングは、第1実施形態と異なるタイミングに設定されている。
【0099】
図6は、クロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。図6(a)は、映像視聴システム100の制御を概略的に表す制御タイミングチャートである。図6(a)のセクション(A)は、液晶パネル231に対する映像信号の走査タイミングを概略的に示す。図6(a)のセクションB1乃至セクションB3は、バックライト232の点灯制御を示す。図6(a)のセクション(C)は、眼鏡装置300の左眼フィルタ311によって調整される左眼光量の変動並びに右眼フィルタ312によって調整される右眼光量の変動を概略的に表す。図6(b)乃至図6(d)それぞれは、図6(a)のセクション(B1)乃至セクション(B3)に示されるバックライト232の点灯制御により生ずるクロストーク量と液晶パネル231中の位置との関係を概略的に示す模式図である。図1、図5及び図6を参照しつつ、クロストークを低減させるための制御(第2実施形態)が説明される。
【0100】
図6(a)のセクション(A)に示される液晶パネル231には、図5と同様に、最初にL信号が書き込まれ、次に、R信号が書き込まれている。液晶パネル231の上端は、映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)の走査の開始位置Sである。また、液晶パネル231の下端は、映像信号の走査の終了位置Eである。L信号及びR信号は、開始位置Sから終了位置Eに向けて、順次、液晶パネル231に書き込まれている。尚、図3と同様に、開始位置Sから終了位置EまでL信号又はR信号を書き込むのに、1フィールド(60Hz=16.7m秒)の約4分の1の時間かかっている。図6(a)のセクション(A)中、液晶パネル231の縦位置と書き込み時刻との関係は、矢印Aで示されている。
【0101】
図6(a)のセクション(A)には、矢印Aを左側の境界として、図5と同様の応答時間領域R及び応答時間領域Rの右側境界線として示される応答完了時刻を示す直線Lが示されている。直線Lは、開始位置Sにおいて入力された映像信号に基づく映像が最初に表示され、終了位置Eにおいて、入力された映像信号に基づく映像が最後に表示されることを表している。図6(a)のセクション(A)の液晶パネル231の表示面は、説明の明瞭化のため、図5と同様に、上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3に分割して示されている。液晶パネル231上の左眼用映像又は右眼用映像は、上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3の順で映像信号の走査が行われることにより形成される。
【0102】
図6(a)のセクション(C)に示される如く、第1制御部240は、眼鏡装置300の光学フィルタ部310を制御し、光量増大期間Iを左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻前に開始させ、切り換え時刻後に終了させる。左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻は、光量増大期間Iの略中央に位置する。光量増大期間Iは、バックライト232の点灯タイミングの調整範囲を規定する。
【0103】
図6のセクション(B1)乃至セクション(B3)に示される如く、第2制御部250は、クロストークの因子となるオブジェクトの表示位置に応じて、バックライト232が点灯される点灯期間Jのタイミングを光量増大期間Iの範囲内で制御する。尚、点灯期間Jは、光量増大期間Iよりも短く設定される。点灯期間Jの間、視聴者は液晶パネル231に表示される映像を視聴し、映像中で表現されるオブジェクトを立体的に知覚することができる。したがって、本実施形態において、点灯期間Jは、視聴者が左眼で左眼用映像を視聴する視聴期間及び/又は視聴者が右眼で右眼用映像を視聴する視聴期間に略一致する。
【0104】
映像信号処理部210は、第1実施形態と同様に、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの有無及び液晶パネル231中の当該オブジェクトの位置を検出及び/又は演算する。映像信号処理部210による演算結果は、第2制御部250へ出力される。本実施形態において、第2制御部250及び第1制御部240は、タイミング制御部として例示される。第2制御部250は、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの位置に応じて、点灯期間Jのタイミングを調整するための制御信号をバックライト232へ出力する。この結果、左眼用映像又は右眼用映像が表示されている期間だけ、バックライト232は点灯する。
【0105】
図6(a)のセクション(B1)に示される如く、左眼走査区間と右眼走査区間との間の切り換え時刻前に点灯期間Jが開始され、切り換え時刻に点灯期間Jが終了されてもよい。図6(a)のセクション(B2)に示される如く、左眼走査区間と右眼走査区間との間の切り換え時刻前に点灯期間Jが開始され、切り換え時刻後に点灯期間Jが終了されてもよい。尚、図6(a)のセクション(B2)に示される点灯期間Jの略中央位置に、左眼走査区間と右眼走査区間との間の切り換え時刻は位置する。図6(a)のセクション(B3)に示される如く、左眼走査区間と右眼走査区間との間の切り換え時刻に点灯期間Jが開始され、切り換え時刻後に点灯期間Jが終了されてもよい。図6(a)のセクション(B1)乃至セクション(B3)に示される点灯期間Jは、光量増大期間Iによってカバーされている。本実施形態において、光量増大期間Iは長く設定されているが、バックライト232は常時点灯していないため、点灯期間Jの間(即ち、左眼用映像又は右眼用映像が表示されている期間)にのみ、視聴者は映像を視聴することができる。かくして、視聴者は映像を立体的に知覚することができる。
【0106】
バックライト232の点灯期間Jのタイミングの調整によってもたらされる液晶パネル231の縦方向におけるクロストーク量の変化が説明される。図4(a)のセクション(B1)に示される点灯期間Jのタイミングの場合、上部領域D1において、入力されたL信号又はR信号に基づく液晶の応答は完了している。したがって、視聴者が、上部領域D1のオブジェクトに対して、クロストークを知覚することはほとんどない。一方、中間領域D2の下部及び下部領域D3において、入力されたL信号又はR信号に基づく液晶の応答は完了していない。したがって、図6(b)の実線で示される如く、中間領域D2の下部及び下部領域D3において、クロストーク量は増大する。
【0107】
図4(a)のセクション(B2)に示される点灯期間Jのタイミングの場合、中間領域D2において、入力されたL信号又はR信号に基づく液晶の応答は完了している。したがって、視聴者が、中間領域D2のオブジェクトに対して、クロストークを知覚することはほとんどない。一方、下部領域D3において、入力されたL信号又はR信号に基づく液晶の応答は完了していない。したがって、図6(c)に示される如く、中間領域D2の下部及び下部領域D3において、クロストーク量は増大する。また、上部領域D1において、新たに入力されたL信号又はR信号に基づく液晶の応答が始まっている。したがって、視聴者は、上部領域D1において、新たに入力されたL信号又はR信号に従う映像を知覚する可能性があり、図6(c)の破線で示される如く、クロストーク量は増大する。
【0108】
図4(a)のセクション(B3)に示される点灯期間Jのタイミングの場合、下部領域D3において、入力されたL信号又はR信号に基づく液晶の応答は完了している。したがって、視聴者が、下部領域D3のオブジェクトに対して、クロストークを知覚することはほとんどない。一方、中間領域D2の上部及び上部領域D1において、新たに入力されたL信号又はR信号に基づく液晶の応答が始まっている。視聴者は、中間領域D2の上部及び上部領域D1において、新たに入力されたL信号又はR信号に従う映像を知覚する可能性があり、図6(d)の一点鎖線で示される如く、中間領域D2の上部及び上部領域D1において、クロストーク量は増大する。
【0109】
本実施形態において、第2制御部250は、映像信号処理部210から出力された演算結果(クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの有無及び当該オブジェクトの位置)に応じて、点灯期間Jのタイミングを調整する。上部領域D1に、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトが存在する場合には、第2制御部250は、図6(a)のセクション(B1)に示される点灯期間Jのタイミングで、バックライト232を点灯させる。中間領域D2に、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトが存在する場合には、第2制御部250は、図6(a)のセクション(B2)に示される点灯期間Jのタイミングで、バックライト232を点灯させる。下部領域D3に、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトが存在する場合には、第2制御部250は、図6(a)のセクション(B3)に示される点灯期間Jのタイミングで、バックライト232を点灯させる。かくして、第2制御部250は、クロストークの因子となるオブジェクトの表示位置に基づき、バックライト232の点灯期間Jのタイミングを適切に変更する。クロストークの因子となるオブジェクトの表示位置に基づくクロストークを低減させる制御の結果、視聴者は、クロストークの少ない(あるいは、無い)高品位の立体映像を視聴することができる。
【0110】
第1実施形態と同様に、開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離に対して設定された閾値を用いて、映像信号処理部210は、当該オブジェクトが上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3のいずれにあるかを判定してもよい。開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が第1閾値未満であるとき、映像信号処理部210は、上部領域D1に当該オブジェクトが存すると判定してもよい。開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が、第1閾値と、第1閾値よりも大きい第2閾値との間の値であるとき、映像信号処理部210は、中間領域D2に当該オブジェクトが存すると判定してもよい。開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が、第2閾値より大きな値であるとき、映像信号処理部210は、下部領域D3に当該オブジェクトが存すると判定してもよい。
【0111】
開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が、第1閾値を超えたとき、第2制御部250は、当該オブジェクトが上部領域D1に存するときよりも点灯期間Jのタイミングを遅らせる。開始位置Sとクロストークの因子となるオブジェクトとの間の距離が、第2閾値を超えたとき、第2制御部250は、当該オブジェクトが中間領域D2に存するときよりも点灯期間Jのタイミングを遅らせる。かくして、第2制御部250は、クロストークの因子となるオブジェクトの表示位置に基づき、点灯期間Jのタイミングを適切に変更する。
【0112】
第1実施形態と同様に、液晶パネル231の分割数は、2或いは4以上であってもよい。クロストークの因子となるオブジェクトが存在しないとき、点灯期間Jに対して予め定められたデフォルトタイミング(例えば、図6(a)のセクション(B1)に示されるタイミング)で、第2制御部250は、バックライト232を点灯させてもよい。
【0113】
映像信号処理部210は、1つのフレーム画像中のクロストークの因子となる複数のオブジェクトに対して、優先度を設定してもよい。映像信号処理部210は、(1)各オブジェクトと各オブジェクトの周囲の像との輝度差、(2)左眼用映像と右眼用映像との間での各オブジェクトの視差量、(3)オブジェクトの面積といった情報に基づき、クロストークとして最も知覚されやすいオブジェクトを選択してもよい。代替的に、(1)各オブジェクトと各オブジェクトの周囲の像との輝度差、(2)左眼用映像と右眼用映像との間での各オブジェクトの視差量、(3)オブジェクトの面積といったクロストークに影響し得る特性情報に重み付けをし、クロストークとして最も知覚されやすいオブジェクトを決定してもよい。第2制御部250は、映像信号処理部210の選択・決定に基づき、点灯期間Jのタイミング制御を行う。
【0114】
<第3実施形態>
第3実施形態において、クロストークの因子となるオブジェクトの表示位置に応じて、映像信号の書き込み開始位置が変更される。
【0115】
図7は、第3実施形態に係る映像視聴システム100Aの構成を概略的に示すブロック図である。第3実施形態に係る映像視聴システム100Aと、第1実施形態に係る映像視聴システム100との相違点が説明される。
【0116】
映像視聴システム100Aは、左眼用映像及び右眼用映像を表示する表示装置200Aと、表示装置200Aが表示する映像の視聴を補助する眼鏡装置300を備える。表示装置200Aは、映像信号処理部210、液晶駆動部220、表示部230、第1制御部240及び第2制御部250に加えて、第3制御部260を備える。本実施形態において、第3制御部260は、位置制御部として例示される。
【0117】
映像信号処理部210は、第1実施形態と同様に、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの有無及び液晶パネル231中の当該オブジェクトの位置を検出及び/又は演算する。第3制御部260は、液晶駆動部220を制御し、映像信号処理部210の演算結果に応じて、液晶パネル231への映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)の走査の開始位置を制御する。
【0118】
図8は、クロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。図8(a)は、映像視聴システム100Aの制御を概略的に表す制御タイミングチャートである。図8(a)のセクション(A1)及びセクション(A2)は、液晶パネル231に対する映像信号の走査タイミングを概略的に示す。図8(a)のセクション(B)は、バックライト232の点灯制御を示す。図8(a)のセクション(C)は、眼鏡装置300の左眼フィルタ311によって調整される左眼光量の変動並びに右眼フィルタ312によって調整される右眼光量の変動を概略的に表す。図8(b)及び図8(c)それぞれは、図8(a)のセクション(A1)乃至セクション(A2)に示される走査タイミングの制御により生ずるクロストーク量と液晶パネル231中の位置との関係を概略的に示す模式図である。図5、図7及び図8を参照しつつ、クロストークを低減させるための制御が説明される。
【0119】
本実施形態において、図8(a)のセクション(B)に示されるように、バックライト232は常時点灯されている。したがって、眼鏡装置300が左眼光量を増大させたとき、視聴者は左眼で液晶パネル231が表示する映像を視聴することができる。また、眼鏡装置300が右眼光量を増大させたとき、視聴者は右眼で液晶パネル231が表示する映像を視聴することができる。
【0120】
図8(a)のセクション(C)に示される如く、第1制御部240は、眼鏡装置300の光学フィルタ部310を制御し、光量増大期間Iを左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻前に開始させ、切り換え時刻に終了させる。
【0121】
図8(a)のセクション(A1)に示される液晶パネル231には、第1実施形態と同様に、最初にL信号が書き込まれ、次に、R信号が書き込まれている。液晶パネル231の上端は、映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)の走査の開始位置Sである。また、液晶パネル231の下端は、映像信号の走査の終了位置Eである。L信号及びR信号は、開始位置Sから終了位置Eに向けて、順次、液晶パネル231に書き込まれている。尚、第1実施形態と同様に、開始位置Sから終了位置EまでL信号又はR信号を書き込むのに、1フィールド(60Hz=16.7m秒)の約4分の1の時間かかっている。図8(a)のセクション(A1)中、液晶パネル231の縦位置と書き込み時刻との関係は、矢印Aで示されている。
【0122】
図8(a)のセクション(A1)には、矢印Aを左側の境界として、第1実施形態と同様の応答時間領域R及び応答時間領域Rの右側境界線として示される応答完了時刻を示す直線Lが示されている。直線Lは、開始位置Sにおいて入力された映像信号に基づく映像が最初に表示され、終了位置Eにおいて、入力された映像信号に基づく映像が最後に表示されることを表している。図8(a)のセクション(A1)の液晶パネル231の表示面は、説明の明瞭化のため、上部領域D1及び下部領域D3に分割して示されている。液晶パネル231上の左眼用映像又は右眼用映像は、上部領域D1から下部領域D3へ映像信号の走査が行われることにより形成される。
【0123】
図8(a)のセクション(A2)に示される液晶パネル231において、書き込みの開始位置S及び終了位置Eは、上部領域D1と下部領域D3との間の境界(液晶パネル231の表示面の縦方向の略中心位置)に設定されている。図8(a)のセクション(A2)中、矢印Aによって示される如く、映像信号(L信号及びR信号)は、上部領域D1と下部領域D3との間の境界に設定された開始位置Sから書き込まれる。液晶パネル231の下端まで映像信号が書き込まれた後、液晶パネル231の上端から終了位置Eへの映像信号の書き込みがなされる。図8(a)のセクション(A2)に示される直線Lは、下部領域D3において入力された映像信号に基づく映像が表示された後、上部領域D1において入力された映像信号に基づく映像が表示されることを示す。
【0124】
図8(a)のセクション(A1)に示される液晶パネル231に対する映像信号の走査タイミングは、図5(a)のセクション(A)に示される走査タイミングと同様である。また、バックライト232の点灯条件及び光量増大期間Iのタイミングそれぞれは、図5(a)のセクション(B)及びセクション(C1)に示される条件と同様である。したがって、図8(b)に示されるクロストーク量の分布は、図5(b)に示されるクロストーク量の分布と同様となる。図8(b)に示されるクロストーク量の分布は、下部領域D3において、クロストーク量が大きくなることを示す。
【0125】
一方、図8(a)のセクション(A2)に示される液晶パネル231に対する映像信号の走査タイミングでは、上述の如く、下部領域D3において、入力された映像信号に基づく映像が先に表示され、上部領域D1において、入力された映像信号に基づく映像が後に表示される。したがって、下部領域D3におけるクロストーク量は小さくなる一方で、上部領域D1におけるクロストーク量は大きくなる(図8(c)参照)。
【0126】
映像信号処理部210は、第1実施形態と同様に、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの有無及び液晶パネル231中の当該オブジェクトの位置を検出及び/又は演算する。クロストークとして知覚されやすいオブジェクトが上部領域D1に存するとき、映像信号処理部210の演算結果に基づき、第3制御部260は、液晶駆動部220を制御し、図8(a)のセクション(A1)で示される走査タイミングでの映像(左眼用映像及び右眼用映像)の走査を液晶駆動部220に実行させる。クロストークとして知覚されやすいオブジェクトが下部領域D3に存するとき、映像信号処理部210の演算結果に基づき、第3制御部260は、液晶駆動部220を制御し、図8(a)のセクション(A2)で示される走査タイミングでの映像(左眼用映像及び右眼用映像)の走査を液晶駆動部220に実行させる。この結果、液晶パネル231の下部領域D3において液晶の応答が完了し、その後、液晶パネル231の上部領域D1において液晶の応答が完了する。したがって、下部領域D3において、低いクロストーク量が得られることとなる。一方、上部領域D1において、光量増大期間I中、液晶の応答は完了していない。したがって、上部領域D1におけるクロストーク量は大きくなる。かくして、図8(c)に示される如く、上部領域D1において大きなクロストーク量となり、下部領域D3において小さなクロストーク量(略ゼロ)となるクロストーク量の分布が得られる。したがって、下部領域D3においてクロストークとして知覚されやすいオブジェクトが存する場合、図8(a)のセクション(A2)で示される走査タイミングでの走査により、クロストークが有効に低減される。クロストークとして知覚されやすいオブジェクトが開始位置Sに近い表示領域に存するように開始位置Sを調整する制御の結果、当該オブジェクトが存する位置において、クロストーク量の分布が低減される。かくして、視聴者は、クロストークの少ない(あるいは、無い)高品位の立体映像を視聴することができる。
【0127】
映像信号処理部210は、液晶パネル231の任意の位置(例えば、液晶パネル231の上端)を基準にクロストークの因子となるオブジェクトまでの距離を演算してもよい。この結果、液晶パネル231上の当該オブジェクトの位置が把握される。第3制御部260は、開始位置Sからクロストークの因子となるオブジェクトまでの距離が、予め定められた値以下となるように、開始位置Sを決定してもよい。
【0128】
液晶パネル231の表示面に設定される領域の分割数は、3以上であってもよい。第3制御部260は、分割された領域に応じて、開始位置Sの位置や走査タイミングが調整されてもよい。
【0129】
映像信号処理部210は、第1実施形態及び/又は第2実施形態と同様に、1つのフレーム画像中のクロストークの因子となる複数のオブジェクトに対して、優先度を設定してもよい。映像信号処理部210は、(1)各オブジェクトと各オブジェクトの周囲の像との輝度差、(2)左眼用映像と右眼用映像との間での各オブジェクトの視差量、(3)オブジェクトの面積といった情報に基づき、クロストークとして最も知覚されやすいオブジェクトを選択してもよい。代替的に、(1)各オブジェクトと各オブジェクトの周囲の像との輝度差、(2)左眼用映像と右眼用映像との間での各オブジェクトの視差量、(3)オブジェクトの面積といったクロストークに影響し得る特性情報に重み付けをし、クロストークとして最も知覚されやすいオブジェクトを決定してもよい。第3制御部260は、映像信号処理部210の選択・決定に基づき、走査タイミングを制御する。
【0130】
映像信号処理部210がクロストークの因子となるオブジェクトが左眼用映像及び/又は右眼用映像中に存在しないと判定する場合には、走査タイミングに対して予め定められたデフォルトタイミング(例えば、図8(a)のセクション(A1)に示されるタイミング)で、第3制御部260は、液晶駆動部220に映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)の走査を実行させてもよい。
【0131】
<第4実施形態>
第4実施形態において、1フレーム画像全体からクロストークに影響し得る特性が評価される。クロストークに影響し得る特性の評価結果に基づき、潜在的に知覚されるクロストークを低減させるための制御がなされる。
【0132】
図9は、第4実施形態に係る映像視聴システム100Bの構成を概略的に示すブロック図である。第4実施形態に係る映像視聴システム100Bと、第1実施形態に係る映像視聴システム100との相違点が説明される。
【0133】
映像視聴システム100Bは、左眼用映像及び右眼用映像を表示する表示装置200Bと、表示装置200Bが表示する映像の視聴を補助する眼鏡装置300を備える。表示装置200Bは、映像信号処理部210B、液晶駆動部220、表示部230、第1制御部240及び第2制御部250を備える。本実勢形態において、第1制御部240は、第1実施形態と同様にタイミング制御部として例示される。
【0134】
映像信号処理部210Bは、1フレーム画像全体からクロストークに影響し得る特性が定量化された総合指標を算出する算出部211と、算出された総合指標の値に基づき、潜在的に知覚されるクロストークを低減させるための制御の有無を判定する判定部212とを備える。
【0135】
算出部211は、映像信号処理部210Bに入力された左眼用映像信号及び右眼用映像信号から、例えば、(1)各オブジェクトと各オブジェクトの周囲の像との輝度差、(2)左眼用映像と右眼用映像との間での各オブジェクトの視差量、(3)オブジェクトの面積といった情報を抽出する。算出部211は更に、抽出された情報からクロストークとして知覚されやすいオブジェクトの個数やクロストークの知覚されやすさが定量化された値(各オブジェクトに対して)を算出する。クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの抽出手法やクロストークの知覚されやすさに対する定量化手法は、例えば、特開2001−258052号公報に開示される技術に従うものであってもよい。
【0136】
算出部211は、既知のオブジェクト識別手法を用いて、左眼用映像信号及び右眼用映像信号で表現されるフレーム画像中のオブジェクトを識別することができる。その後、算出部211は、図4に関連して説明された領域K2,K3における輝度差を、左眼用映像信号及び右眼用映像信号から算出することができる。算出部211は、領域K2,K3において所定値以上の輝度差を有するオブジェクトの数をカウントすることによって、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの個数を求めてもよい。また、算出部211は、領域K2,K3における輝度差及び領域K2,K3の面積をパラメータとする任意の関数(例えば、領域K2,K3における輝度差と領域K2,K3の面積との乗算項を含む関数)の値を用いて、クロストークの知覚されやすさに対する定量化を行ってもよい。算出部211は、他の適切な手法を用いて、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの個数及びクロストークの知覚されやすさの定量化値を算出してもよい。
【0137】
算出部211は、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの個数及びクロストークの知覚されやすさの定量化値を用いて、更に、表示される映像全体のクロストークに影響し得る特性の総合指標を算出する。以下の数式は、総合指標CTALLの算出手法を例示する。以下の数式において、記号Nは、クロストークとして知覚されやすいオブジェクトの個数を表す。また、記号CTL(i)は、各オブジェクトに対するクロストークの知覚されやすさの定量化値を表す。
【0138】
【数1】

【0139】
判定部212は、総合指標CTALLが所定の値以上であるとき、クロストークを低減させるための制御が必要であると判断する。また、判定部212は、総合指標CTALLが所定の値未満であるとき、クロストークを低減させるための制御が不要であると判断する。
【0140】
判定部212がクロストークを低減させるための制御が必要でないことを判定するとき、第1制御部240は、予め定められたタイミングで左眼光量及び右眼光量が増大されるように眼鏡装置300の光学フィルタ部310を制御する。また、判定部212がクロストークを低減させるための制御が必要でないことを判定するとき、第2制御部250は、予め定められた輝度でバックライト232を点灯させる。
【0141】
判定部212がクロストークを低減させるための制御が必要であると判断するとき、第1制御部240は、左眼光量及び右眼光量が増大される光量増大期間のタイミングを調整し、クロストークを低減させるための制御を行う。また、判定部212がクロストークを低減させるための制御が必要であると判断するとき、第2制御部250は、バックライト232の輝度を調整し、第1制御部240によるクロストークを低減させるための制御の間の映像の視聴を補助する制御を行う。
【0142】
図10及び図11は、クロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。図10は、判定部212がクロストークを低減させるための制御が必要でないことを判定するときの制御を示す。図11は、判定部212がクロストークを低減させるための制御が必要であると判断するときの制御を示す。図10と図11との比較を通じて、クロストークを低減させるための制御が説明される。
【0143】
図10(a)及び図11(a)は、映像視聴システム100Bの制御を概略的に表す制御タイミングチャートである。図10(a)及び図11(a)のセクション(A)は、液晶パネル231に対する映像信号の走査タイミングを概略的に示す。図10(a)及び図11(a)のセクション(B)は、バックライト232の点灯制御を示す。図10(a)及び図11(a)のセクション(C)は、眼鏡装置300の左眼フィルタ311によって調整される左眼光量の変動並びに右眼フィルタ312によって調整される右眼光量の変動を概略的に表す。図10(b)は、図10(a)に示される液晶パネル231に対する走査タイミング、バックライト232の点灯制御及び左眼光量/右眼光量の変動タイミングといった条件下で生ずるクロストーク量と液晶パネル231中の位置との関係を概略的に示す模式図である。図11(b)は、図11(a)に示される液晶パネル231に対する走査タイミング、バックライト232の点灯制御及び左眼光量/右眼光量の変動タイミングといった条件下で生ずるクロストーク量と液晶パネル231中の位置との関係を概略的に示す模式図である。図9乃至図11を参照しつつ、クロストークを低減させるための制御が説明される。
【0144】
図10(a)及び図11(a)のセクション(A)に示される液晶パネル231には、第1実施形態と同様に、最初にL信号が書き込まれ、次に、R信号が書き込まれている。液晶パネル231の上端は、映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)の走査の開始位置Sである。また、液晶パネル231の下端は、映像信号の走査の終了位置Eである。L信号及びR信号は、開始位置Sから終了位置Eに向けて、順次、液晶パネル231に書き込まれている。尚、第1実施形態と同様に、開始位置Sから終了位置EまでL信号又はR信号を書き込むのに、1フィールド(60Hz=16.7m秒)の約4分の1の時間かかっている。図10(a)及び図11(a)のセクション(A)中、液晶パネル231の縦位置と書き込み時刻との関係は、矢印Aで示されている。
【0145】
図10(a)及び図11(a)のセクション(A)には、矢印Aを左側の境界として、第1実施形態と同様の応答時間領域R及び応答時間領域Rの右側境界線として示される応答完了時刻を示す直線Lが示されている。直線Lは、開始位置Sにおいて入力された映像信号に基づく映像が最初に表示され、終了位置Eにおいて、入力された映像信号に基づく映像が最後に表示されることを表している。図10(a)及び図11(a)のセクション(A)の液晶パネル231の表示面は、説明の明瞭化のため、第1実施形態と同様に、上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3に分割して示されている。液晶パネル231上の左眼用映像又は右眼用映像は、上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3の順で映像信号の走査が行われることにより形成される。
【0146】
図10(a)のセクション(A)に示される液晶パネル231に対する映像信号の走査タイミングは、図5(a)のセクション(A)に示される走査タイミングと同様である。また、バックライト232の点灯条件及び光量増大期間Iのタイミングそれぞれは、図5(a)のセクション(B)及びセクション(C1)に示される条件と同様である。したがって、図10(b)に示されるクロストーク量の分布は、図5(b)に示されるクロストーク量の分布と同様となる。図10(b)に示されるクロストーク量の分布は、下部領域D3において、クロストーク量が大きくなることを示す。
【0147】
上述の如く、判定部212は、総合指標CTALLが所定の値以上であるとき(即ち、フレーム画像中にクロストークとして知覚されやすいオブジェクトが存在するとき)、クロストークを低減させるための制御が必要であると判定する。判定部212は、総合指標CTALLが所定の値未満であるとき(即ち、フレーム画像中にクロストークとして知覚されやすいオブジェクトが存在しないとき)、クロストークを低減させるための制御が不要であると判定する。判定部212の判定結果は、映像信号処理部210が出力する120Hzの同期信号に加えて、第1制御部240及び第2制御部250へ出力される。クロストークを低減させるための制御が不要であるとの判定がなされたとき、図10に示される光量増大期間Iのタイミングとなるように光学フィルタ部310を制御する。また、クロストークを低減させるための制御が不要であるとの判定がなされたとき、第2制御部250は、図10に示される輝度(「100」の数値で例示される)でバックライト232を点灯させる。
【0148】
クロストークを低減させるための制御が必要であるとの判定結果が入力された第1制御部240は、眼鏡装置300の光学フィルタ部310を制御し、光量増大期間Iを短縮させる。図10(a)及び図11(a)のセクション(C)に示される光量増大期間Iの終了時刻は、左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻に略一致する一方で、図11(a)のセクション(C)に示される光量増大期間Iの開始時刻は、図10(a)のセクション(C)に示される光量増大期間Iの開始時刻よりも遅い。尚、図11(a)のセクション(C)中、図10(a)のセクション(C)に示される光量増大期間Iは点線で示されている。この結果、図11(b)に示されるように、クロストーク量は全体的に低減される。尚、図11(b)中において、図10(b)に示されるクロストーク量が点線で示されている。
【0149】
第2制御部250は、第1制御部240が光量増大期間Iを短縮させる制御を行っている間、バックライト232の輝度を増加させる制御を行う。この結果、視聴者が知覚する映像の輝度の低下(当該輝度の低下は、光量増大期間Iの短縮に起因して生ずる)が抑制される。図10(a)のセクション(B)に示される如く、クロストークを低減させる制御が実行されていないとき、バックライト232の輝度レベルは「100」であるのに対し、クロストークを低減させる制御が実行されている間、図11(a)のセクション(B)に示される如く、バックライト232の輝度レベルは、1.5倍(「150」の輝度レベル)まで引き上げられる。上述の制御の結果、視聴者は、輝度レベルが適切に保たれ、且つ、クロストークの少ない立体映像を視聴することができる。
【0150】
バックライト232の発光輝度は、LEDへの駆動電流及び発光期間(発光デューティ)のうち少なくとも一方が変更されることにより調整される。LEDの駆動電流は、LEDの動作寿命に影響を与えない範囲、発光色の変化による表示色変化に大きな影響を与えない範囲及び/又は省電力の観点から許容できる発光効率の範囲で調整されることが好ましい。この結果、動作寿命の短縮、発光色(色度)の変化及び/又は発光効率の低下が好適に抑制される。
【0151】
図10及び図11において示される1.5倍の発光輝度の増加率に代えて、他の増加率で、LED素子の種類や駆動電流と発光デューティとの組み合わせに応じて、バックライト232の発光輝度が変更されてもよい。バックライト232の発光輝度の増加率は、好ましくは、例えばLED素子の寿命に応じて決定される。LED素子への駆動電流によるバックライト232の発光輝度の調整に代えて、LED素子をパルス幅変調(PWM)駆動することにより、バックライト232の発光輝度の調整がなされてもよい。パルス幅変調(PWM)駆動を用いて、バックライト232の発光輝度を低減させる制御が実行されてもよい。
【0152】
液晶パネル231の表示面全体の総合指標CTALLに基づく制御に代えて、視聴者が最も注視する液晶パネル231の表示面の中央部分の領域における部分指標に基づく制御がなされてもよい。また、液晶パネル231の表示面全体の総合指標CTALL或いは部分指標の算出因子として、液晶パネル231の表示面の面積が考慮されてもよい。
【0153】
<第5実施形態>
図9に関連して説明された映像視聴システム100Bの構成は、第5実施形態に援用される。第5実施形態において、液晶パネル231の表示面全体の総合指標CTALLに基づき、バックライト232の点灯期間及び輝度の調整がなされる。尚、本実施形態の光学フィルタ部310及びバックライト232の動作が、第4実施形態の光学フィルタ部310及びバックライト232の動作と相違する。また、本実施形態において、第1制御部240及び第2制御部250は、タイミング制御部として例示される。
【0154】
図12及び図13は、クロストークを低減させるための制御を概略的に説明する図である。図12は、判定部212がクロストークを低減させるための制御が必要でないことを判定するときの制御を示す。図13は、判定部212がクロストークを低減させるための制御が必要であると判断するときの制御を示す。図12と図13との比較を通じて、クロストークを低減させるための制御が説明される。
【0155】
図12(a)及び図13(a)は、映像視聴システム100Bの制御を概略的に表す制御タイミングチャートである。図12(a)及び図13(a)のセクション(A)は、液晶パネル231に対する映像信号の走査タイミングを概略的に示す。図12(a)及び図13(a)のセクション(B)は、バックライト232の点灯制御を示す。図12(a)及び図13(a)のセクション(C)は、眼鏡装置300の左眼フィルタ311によって調整される左眼光量の変動並びに右眼フィルタ312によって調整される右眼光量の変動を概略的に表す。図12(b)は、図12(a)に示される液晶パネル231に対する走査タイミング、バックライト232の点灯制御及び左眼光量/右眼光量の変動タイミングといった条件下で生ずるクロストーク量と液晶パネル231中の位置との関係を概略的に示す模式図である。図13(b)は、図13(a)に示される液晶パネル231に対する走査タイミング、バックライト232の点灯制御及び左眼光量/右眼光量の変動タイミングといった条件下で生ずるクロストーク量と液晶パネル231中の位置との関係を概略的に示す模式図である。図9、図12及び図13を参照しつつ、クロストークを低減させるための制御が説明される。
【0156】
図12(a)及び図13(a)のセクション(A)に示される液晶パネル231には、第1実施形態と同様に、最初にL信号が書き込まれ、次に、R信号が書き込まれている。液晶パネル231の上端は、映像信号(左眼用映像信号及び右眼用映像信号)の走査の開始位置Sである。また、液晶パネル231の下端は、映像信号の走査の終了位置Eである。L信号及びR信号は、開始位置Sから終了位置Eに向けて、順次、液晶パネル231に書き込まれている。尚、第4実施形態と同様に、開始位置Sから終了位置EまでL信号又はR信号を書き込むのに、1フィールド(60Hz=16.7m秒)の約4分の1の時間かかっている。図12(a)及び図13(a)のセクション(A)中、液晶パネル231の縦位置と書き込み時刻との関係は、矢印Aで示されている。
【0157】
図12(a)及び図13(a)のセクション(A)には、矢印Aを左側の境界として、第4実施形態と同様の応答時間領域R及び応答時間領域Rの右側境界線として示される応答完了時刻を示す直線Lが示されている。直線Lは、開始位置Sにおいて入力された映像信号に基づく映像が最初に表示され、終了位置Eにおいて、入力された映像信号に基づく映像が最後に表示されることを表している。図12(a)及び図13(a)のセクション(A)の液晶パネル231の表示面は、説明の明瞭化のため、第4実施形態と同様に、上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3に分割して示されている。液晶パネル231上の左眼用映像又は右眼用映像は、上部領域D1、中間領域D2及び下部領域D3の順で映像信号の走査が行われることにより形成される。
【0158】
図12(a)及び図13(a)のセクション(C)に示される如く、第1制御部240は、眼鏡装置300の光学フィルタ部310を制御し、光量増大期間Iを左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻前に開始させ、切り換え時刻に終了させる。光量増大期間Iは、バックライト232の点灯タイミングの調整範囲を規定する。
【0159】
第4実施形態と同様に、判定部212は、算出部211によって算出された総合指標CTALLが所定の値以上であるとき、クロストークを低減させるための制御が必要であると判断する。また、判定部212は、総合指標CTALLが所定の値未満であるとき、クロストークを低減させるための制御が不要であると判断する。判定部212の判定結果は、映像信号処理部210が出力する120Hzの同期信号に加えて、第2制御部250へ出力される。第2制御部250は、判定部212の判定結果に応じて、バックライト232の点灯タイミング及び発光輝度を調整する。
【0160】
クロストークを低減させるための制御が不要であるとの判定結果が入力された第2制御部250は、光量増大期間Iの開始時刻と略同時刻にバックライト232を点灯させる。その後、第2制御部250は、光量増大期間Iの終了時刻と略同時刻にバックライト232を消灯させる。バックライト232の点灯期間Jの間のみ、視聴者は右眼用映像又は左眼用映像を視聴することができる。したがって、このことは、光学フィルタ部310が点灯期間Jと等しいタイミング並びに長さで左眼光量又は右眼光量を増大させていることと等価である。このようなバックライト232の制御下におけるクロストーク量の分布は、図12(b)に示されている。尚、クロストークを低減させるための制御が不要であるとの判定がなされたときのバックライト232の相対輝度は、「100」の数値で表されている。
【0161】
クロストークを低減させるための制御が必要であるとの判定結果が入力された第2制御部250は、バックライト232を制御し、点灯期間Jを短縮させる。図12(a)及び図13(a)のセクション(B)に示される点灯期間Jの終了時刻は、左眼走査区間と右眼走査区間との切り換え時刻に略一致する一方で、図13(a)のセクション(B)に示される点灯期間Jの開始時刻は、図12(a)のセクション(B)に示される点灯期間Jの開始時刻よりも遅い。尚、図13(a)のセクション(B)中、図12(a)のセクション(B)に示される点灯期間Jは点線で示されている。クロストークを低減させるための制御が必要であるとの判定がなされた場合、短縮された点灯期間Jの間、液晶パネル231が表示する映像を視聴することができる。このことは、光量増大期間Iを短縮することと略等しい視覚的効果をもたらす。この結果、図13(b)の実線で示されるように、クロストーク量は全体的に低減される。尚、図13(b)中において、図12(b)に示されるクロストーク量が点線で示されている。
【0162】
第2制御部250は、点灯期間Jの短縮に加えて、バックライト232の輝度を増加させる制御を行う。この結果、視聴者が知覚する映像の輝度の低下(当該輝度の低下は、点灯期間Jの短縮に起因して生ずる)が抑制される。図12(a)のセクション(B)に示される如く、クロストークを低減させる制御が実行されていないとき、バックライト232の輝度レベルは「100」であるのに対し、クロストークを低減させる制御が実行されている間、図13(a)のセクション(B)に示される如く、バックライト232の輝度レベルは、1.5倍(「150」の輝度レベル)まで引き上げられる。上述の制御の結果、視聴者は、輝度レベルが適切に保たれ、且つ、クロストークの少ない立体映像を視聴することができる。
【0163】
第4実施形態と同様に、バックライト232に用いられるLEDの駆動電流は、LEDの動作寿命に影響を与えない範囲、発光色の変化による表示色変化に大きな影響を与えない範囲及び/又は省電力の観点から許容できる発光効率の範囲で調整されることが好ましい。この結果、動作寿命の短縮、発光色(色度)の変化及び/又は発光効率の低下が好適に抑制される。
【0164】
第4実施形態と同様に、液晶パネル231の表示面全体の総合指標CTALLに基づく制御に代えて、視聴者が最も注視する液晶パネル231の表示面の中央部分の領域における部分指標に基づく制御がなされてもよい。また、液晶パネル231の表示面全体の総合指標CTALL或いは部分指標の算出因子として、液晶パネル231の表示面の面積が考慮されてもよい。
【0165】
表示装置200,200A,200Bに用いられる液晶パネル231とバックライト232とを有する液晶ディスプレイ装置に代えて、例えば、有機ELディスプレイ装置が映像を表示する表示装置200,200A,200Bとして用いられてもよい。
【0166】
上述の実施形態を通じて説明された原理が逸脱されない限り、当業者が想到することができる様々な変更がなされてもよい。また、上述の様々な実施形態に示される構成要素が組み合わされた形態は、上述された説明の要旨の範囲内に含まれる。
【0167】
上述された実施形態は、すべての点で例示的なものであって制限的なものではないと考えられるべきである。上述された説明の要旨の範囲は、詳述された実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、クロストークの低減が可能な表示装置及び映像視聴システムとして好適である。
【符号の説明】
【0169】
100,100A,100B・・・・・映像視聴システム
200,200A,200B・・・・・表示装置
210,210B・・・・・・・・・・映像信号処理部
211・・・・・・・・・・・・・・・算出部
212・・・・・・・・・・・・・・・判定部
230・・・・・・・・・・・・・・・表示部
231・・・・・・・・・・・・・・・液晶パネル
232・・・・・・・・・・・・・・・バックライト
240・・・・・・・・・・・・・・・第1制御部
250・・・・・・・・・・・・・・・第2制御部
260・・・・・・・・・・・・・・・第3制御部
300・・・・・・・・・・・・・・・眼鏡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左眼で視聴されるための左眼用映像を表現するための左眼用映像信号と、右眼で視聴されるための右眼用映像を表現するための右眼用映像信号と、を含む映像信号に基づき、前記左眼用映像と、前記右眼用映像と、を含む映像を表示する表示装置であって、
前記左眼用映像信号が走査されることによって前記左眼用映像を表示するとともに、前記右眼用映像信号が走査されることによって前記右眼用映像を表示する表示部と、
前記左眼用映像と前記右眼用映像との間のクロストークに影響し得る特性を解析する解析部と、
前記クロストークに影響し得る前記特性に応じて、前記左眼用映像が前記左眼で視聴される期間及び前記右眼用映像が前記右眼で視聴される期間のうち少なくとも一方の視聴期間のタイミングを調整し、前記クロストークを低減するタイミング制御部と、を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記左眼用映像及び前記右眼用映像は、オブジェクトを表現し、
前記解析部は、前記映像信号の走査が開始される開始位置に対する前記オブジェクトの位置を解析し、
前記表示部は、前記開始位置を含む第1表示領域と、該第1表示領域よりも前記開始位置から離間した第2表示領域と、を含み、
前記オブジェクトが前記第2表示位置に存するとき、前記タイミング制御部は、前記視聴期間のタイミングを遅延させることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記タイミング制御部は、前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する第1制御部を含み、
該第1制御部の制御下で、前記左眼フィルタは前記左眼用映像が表示されている間、前記左眼へ到達する光量を増大させ、前記右眼フィルタは、前記右眼用映像が表示されている間、前記右眼へ到達する光量を増大させ、
前記オブジェクトが前記第2表示領域に存するとき、前記第1制御部は、前記左眼フィルタが前記左眼へ到達する光量を増大させるタイミング及び前記右眼フィルタが前記右眼へ到達する光量を増大させるタイミングのうち少なくとも一方を、前記オブジェクトが前記第1表示領域に存するときよりも遅らせることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記映像信号が走査される液晶パネルと、該液晶パネルに光を照射するバックライトと、を含み、
前記タイミング制御部は、前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する第1制御部と、前記バックライトを制御する第2制御部と、を含み、
前記第1制御部の制御下で、前記左眼フィルタは前記左眼用映像が表示されている間、前記左眼へ到達する光量を増大させ、前記右眼フィルタは、前記右眼用映像が表示されている間、前記右眼へ到達する光量を増大させ、
前記オブジェクトが前記第2表示領域に存するとき、前記左眼フィルタが前記左眼へ到達する光量を増大させている期間及び前記右眼フィルタが前記右眼へ到達する光量を増大させている期間のうち少なくとも一方の光量増大期間内において、前記第2制御部は前記バックライトの前記点灯タイミングを前記オブジェクトが前記第1表示領域に存するときよりも遅らせることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2制御部は、前記オブジェクトが前記第2表示領域に存するとき、前記バックライトの点灯開始時刻を遅らせることによって前記バックライトの点灯期間を短縮するとともに前記バックライトの輝度を増加させることを特徴とする請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記オブジェクトを表現する映像領域と前記オブジェクトの周囲を表現する映像領域との間の輝度差を解析し、
該輝度差が所定の値以上であるとき、前記タイミング制御部は、前記視聴期間の前記タイミングを遅延させることを特徴とする請求項2乃至5いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記解析部は、前記左眼用映像に表現される前記オブジェクトと前記右眼用映像に表現される前記オブジェクトとの間の視差量を解析し、
該視差量が所定の値以上であるとき、前記タイミング制御部は、前記視聴期間の前記タイミングを遅延させることを特徴とする請求項2乃至6いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記解析部は、前記クロストークに影響し得る前記特性を定量化した指標を算出する算出部を含み、
前記タイミング制御部は、前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する第1制御部を含み、
該第1制御部の制御下で、前記左眼フィルタは前記左眼用映像が表示されている間、前記左眼へ到達する光量を増大させ、前記右眼フィルタは、前記右眼用映像が表示されている間、前記右眼へ到達する光量を増大させ、
前記第1制御部は、前記指標に応じて、前記左眼フィルタが前記左眼へ到達する光量を増大させている期間及び前記右眼フィルタが前記右眼へ到達する光量を増大させている期間のうち少なくとも一方の光量増大期間の開始時刻を遅くすることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記映像信号が走査される液晶パネルと、該液晶パネルに光を照射するバックライトと、を含み、
前記タイミング制御部は、前記バックライトを制御する第2制御部と、を含み、
前記第2制御部は、前記指標に応じて、前記光量増大期間中における前記バックライトの輝度を増大させることを特徴とする請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
前記解析部は、前記クロストークに影響し得る前記特性を定量化した指標を算出する算出部を含み、
前記タイミング制御部は、前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置を制御する第1制御部と、前記バックライトを制御する第2制御部と、を含み、
前記第1制御部の制御下で、前記左眼フィルタは前記左眼用映像が表示されている間、前記左眼へ到達する光量を増大させ、前記右眼フィルタは、前記右眼用映像が表示されている間、前記右眼へ到達する光量を増大させ、
前記第2制御部は、前記指標に応じて、前記左眼フィルタが前記左眼へ到達する光量を増大させている期間及び前記右眼フィルタが前記右眼へ到達する光量を増大させている期間のうち少なくとも一方の光量増大期間中の前記バックライトの点灯開始時刻を遅らせることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項11】
前記第2制御部は、前記指標に応じて、前記光量増大期間中における前記バックライトの輝度を増大させることを特徴とする請求項10記載の表示装置。
【請求項12】
前記左眼用映像及び前記右眼用映像は、オブジェクトを表現し、
前記算出部は、前記オブジェクトを表現する映像領域と前記オブジェクトの周囲を表現する映像領域との間の輝度差及び前記左眼用映像に表現される前記オブジェクトと前記右眼用映像に表現される前記オブジェクトとの間の視差量のうち少なくとも一方を用いて前記指標を算出することを特徴とする請求項8乃至11いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
左眼で視聴されるための左眼用映像を表現するための左眼用映像信号と、右眼で視聴されるための右眼用映像を表現するための右眼用映像信号と、を含む映像信号に基づき、前記左眼用映像と、前記右眼用映像と、を含む映像を表示する表示装置であって、
前記左眼用映像信号が走査されることによって前記左眼用映像を表示するとともに、前記右眼用映像信号が走査されることによって前記右眼用映像を表示する表示部と、
前記左眼用映像と前記右眼用映像との間のクロストークに影響し得る特性を解析する解析部と、
前記クロストークに影響し得る前記特性に応じて、前記映像信号の走査が開始される開始位置を調整し、前記クロストークを低減する位置制御部と、を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項14】
前記左眼用映像及び前記右眼用映像は、オブジェクトを表現し、
前記解析部は、前記左眼用映像及び前記右眼用映像中の前記オブジェクトの位置を解析し、
前記位置制御部は、前記開始位置が前記オブジェクトの位置に近づくように前記開始位置を調整することを特徴とする請求項13記載の表示装置。
【請求項15】
前記解析部は、前記オブジェクトを表現する映像領域と前記オブジェクトの周囲を表現する映像領域との間の輝度差を解析し、
該輝度差が所定の値以上であるとき、前記位置制御部は、前記開始位置が前記オブジェクトの位置に近づくように前記開始位置を調整することを特徴とする請求項14記載の表示装置。
【請求項16】
前記解析部は、前記左眼用映像に表現される前記オブジェクトと前記右眼用映像に表現される前記オブジェクトとの間の視差量を解析し、
該視差量が所定の値以上であるとき、前記位置制御部は、前記開始位置が前記オブジェクトの位置に近づくように前記開始位置を調整することを特徴とする請求項14又は15に記載の表示装置。
【請求項17】
請求項1乃至16いずれか1項に記載の表示装置と、
該表示装置が表示する前記映像から前記左眼へ到達する光量を調整する左眼フィルタと前記映像から前記右眼へ到達する光量を調整する右眼フィルタとを含む眼鏡装置と、を備えることを特徴とする映像視聴システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−237687(P2011−237687A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110498(P2010−110498)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】