説明

表示装置及び表示パネルの駆動方法

【課題】 アノード電位の分布に起因して表示面に生じる表示ムラを低減する。
【解決手段】 表示パネル110は、複数の行配線330を有する電子源320と、電子源320に対向する表示部材210と、表示部材210に重なるアノード220と、アノード220に接続部240で接続された給電部材230と、を有し、複数の行配線330は、第1行配線331と、第1行配線331よりも接続部240から離れて位置する第2行配線332とを含んでおり、1走査期間内の第1選択期間に、第1へ選択電位Vを付与するとともに、第2行配線332へ非選択電位Vを付与し、電子源310の電位よりも高い第1電位Vb1を給電部材230へ付与し、1走査期間内の第1選択期間とは別の第2選択期間に、第1行配線331へ非選択電位Vを付与し、第2行配線332へ選択電位Vを付与し、第1電位Vb1よりも高い第2電位Vb2を給電部材へ付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特にフィールドエミッションディスプレイのアノード電位の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
フィールドエミッションディスプレイ(FED)の表示パネルは、電子源と、電子源と対向するアノード及び発光層を備えている。そして、電子源から放出された電子を、アノードに付与されたアノード電位と電子源の電位との電位差(アノード電圧)によって加速することにより電子にエネルギーを付与して、発光層を励起発光させて表示を行う。FEDにおいては、アノードの面積は表示面の面積と同程度である。そのため、表示面が大きくなるほど、アノードに生じる電位分布(アノード電位の分布)が顕著になる。
【0003】
特許文献1には、メタルバック(アノード)における加速電圧源からの給電点から離れるにつれて、メタルバックにおける電圧が低下することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、アノード電圧を印加する電圧供給部とアノード電圧を調整する電圧調整部を有する画像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−332200号公報
【特許文献2】特開2004−246250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アノード電位に分布が生じると、表示パネルの表示面に表示ムラが生じることがある。本発明は表示面に生じる表示ムラを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第1は、複数の行配線及び複数の列配線からなるマトリックス配線と、前記マトリックス配線に接続された複数の電子放出素子とからなる電子源と、前記電子源に対向する表示部材と、前記表示部材に重なるアノードと、前記アノードに接続部で接続された給電部材と、を有する表示パネルと、前記複数の行配線に接続された走査回路と、前記複数の列配線に接続された変調回路と、前記給電部材に接続された電位生成回路と、を備える表示装置であって、前記複数の行配線は、第1行配線と、前記第1行配線よりも前記接続部から離れて位置する第2行配線とを含んでおり、前記走査回路は、1走査期間内の第1選択期間に、前記第1行配線へ選択電位を出力するとともに、前記第2行配線へ非選択電位を出力し、前記1走査期間内の前記第1選択期間とは別の第2選択期間に、前記第1行配線へ前記非選択電位を出力するとともに、前記第2行配線へ前記選択電位を出力するものであり、前記変調回路は、前記複数の列配線に変調電位を出力するものであり、前記電位生成回路は、前記電子源の電位よりも高い第1電位と、前記第1電位よりも高い第2電位とを出力可能であって、前記電位生成回路は、前記第1選択期間に前記第1電位を前記給電部材へ出力し、前記第2期間に前記第2電位を前記給電部材へ出力することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するための本発明の第2は、複数の行配線及び複数の列配線からなるマトリックス配線と、前記マトリックス配線に接続された複数の電子放出素子とからなる電子源と、前記電子源に対向する表示部材と、前記表示部材に重なる領域を有するアノードと、前記領域の外側に設けられ前記アノードに接続部で接続された給電部材と、を有する表示パネルと、前記給電部材に接続された電位生成回路と、前記複数の行配線に接続された走査回路と、前記複数の列配線に接続された変調回路と、前記給電部材に接続され、前記電子源の電位よりも高い供給電位を前記給電部材へ出力する電位生成回路と、を備える表示装置であって、前記接続部は、前記複数の行配線が延在する方向と同じ方向に延在し、かつ、前記複数の行配線が配列された方向における前記アノードの少なくとも一方の側に設けられており、前記走査回路は、前記複数の行配線を1走査期間内に線順次に走査し、前記表示部材には、前記1走査期間内の前記走査に対応して線順次に発光部が形成されるものであり、前記電位生成回路は、前記1走査期間内における前記接続部と前記発光部との距離の増加に応じて、前記1走査期間内に前記供給電位を上昇させることと、前記1走査期間内における前記接続部と前記発光部との距離の減少に応じて、前記1走査期間内に前記供給電位を低下させることとの少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明の第3は、表示パネルの駆動方法であって、前記表示パネルは、複数の行配線及び複数の列配線からなるマトリックス配線と、前記マトリックス配線に接続された複数の電子放出素子とからなる電子源と、前記電子源に対向する表示部材と、前記表示部材に重なるアノードと、前記アノードに接続部で接続された給電部材と、を有し、前記複数の行配線は、第1行配線と、前記第1行配線よりも前記接続部から離れて位置する第2行配線とを含んでおり、1走査期間内の第1選択期間に、前記第1行配線へ選択電位を付与するとともに、前記第2行配線へ非選択電位を付与し、前記1走査期間内の前記第1選択期間とは別の第2選択期間に、前記第1行配線へ前記非選択電位を付与するとともに、前記第2行配線へ前記選択電位を付与し、前記第1選択期間に前記電子源の電位よりも高い第1電位を前記給電部材へ付与し、前記第2期間に前記第1電位よりも高い第2電位を前記給電部材へ付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アノード電位の分布を補償するように電位生成回路の出力を変化させることにより、表示面に生じる表示ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】表示装置の一例を説明する模式図。
【図2】表示パネルの一例を説明する模式図。
【図3】表示装置の一例を説明する模式図。
【図4】本発明を説明するための模式図。
【図5】表示パネルの一例を説明する模式図。
【図6】実施例1を説明する模式図。
【図7】実施例2を説明する模式図。
【図8】実施例3を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態の一例を説明する。
【0013】
図1は表示装置100の構成の概要を示す模式図である。図1に示すように、表示装置100は表示パネル110と、電位生成回路120と走査回路130と変調回路140とを備えている。加えて表示装置100は制御回路150を備えることができる。
【0014】
まず、表示パネル110について、その概要を説明する。図2(a)、(b)、(c)、(d)はFEDの表示パネル110の一例の概要を示す模式図である。図2(a)は表示パネル110の一部を切り欠いた斜視図であり、図2(b)は表示パネル110の断面図であり、図2(c)、(b)は表示パネル110の分解平面図である。
【0015】
表示パネル110は、互いに対向するフェイスプレート200とリアプレート300とを備えている。
【0016】
フェイスプレート200は、透明な絶縁性の第1基板201と、表示部材210と、アノード220とを備えている。表示部材210が表示装置100の表示面(スクリーン)を構成する。表示部材210とアノード220は、第1基板201上に重ねられて設けられている。図2(b)に示す例では、第1基板201とアノード220との間に表示部材210が位置した構成であるが、第1基板201と表示部材210との間に透明なアノード220を設けた構成とすることもできる。図2(b)に示すように、表示部材210は、電子線の照射によって発光する発光層211を少なくとも含み、さらに、発光層211同士の間に設けられた遮光層212を含むことができる。アノード220は単一部材又は複合部材で構成される。
【0017】
アノード220は照射領域221と、照射領域221よりも外側の部分である非照射領域222とに区分けすることができる。アノード220の照射領域221とは、アノード220が表示部材210と重なり合う部分(表示部材210の正射影の領域)である。アノード220の大部分は、照射領域221で占められる。アノード220の非照射領域222とは、アノード220が表示部材210と重なり合わない部分であって、アノード220の端部である。本発明のアノード220は完全導体ではなく、抵抗性を有している。
【0018】
リアプレート300は絶縁性の第2基板301と、電子源310を備えている。電子源310は、第2基板301上に設けられており、マトリックス配列された複数の電子放出素子320と、マトリックス配線350とからなる。マトリックス配線350は、複数の行配線330と、複数の列配線340とを備えている。マトリックス配線350では、複数の行配線330の各々は同じ方向(X方向)に延在しており、複数の行配線330が延在する方向と交差する方向(Y方向)に配列されてなる。マトリックス配線350では、複数の列配線340の各々は同じ方向(Y方向)に延在しており、複数の列配線340が延在する方向と交差する方向(X方向)に配列されてなる。そして、複数の行配線330と複数の列配線340は互いに交差している。行配線330と列配線340の交差部には不図示の絶縁層が設けられて行配線330と列配線340とを絶縁している。複数の電子放出素子320の各々は、複数の行配線330の各々と複数の列配線340の各々の近傍に設けられて、複数の行配線330の各々と複数の列配線340の各々に接続されている。詳細には、電子放出素子320は、行配線330上、列配線340上、互いに隣り合う行配線330同士の間、互いに隣り合う列配線340同士の間、の少なくとも何れかの部分に設けられる。図2(a)では、電子放出素子320が、互いに隣り合う行配線330同士の間かつ互いに隣り合う列配線340同士の間に設けられている形態を示している。
【0019】
以下の説明では、図2(d)に示すように、行配線330の数をM本(M≧2)として、行配線330が配列された方向と同じ方向(Y方向)における−Y側から+Y側に向かって順に、1本目、2本目、・・・、M−1本目、M本目の行配線と呼ぶことにする。そして、行配線330が配列された方向と同じ方向(Y方向)における表示パネル110の−Y側を上側、+Y側を下側と呼ぶことにする。
【0020】
フェイスプレート200とリアプレート300とは、封止部材400を介して接合されている。そして、フェイスプレート200とリアプレート300との間の空間(内部空間)は、封止部材400によって気密に封止されている。その結果、第1基板201と第2基板301と封止部材400とが気密容器を構成している。気密容器の内部空間は真空に保持される。以上のように、表示パネル110は、気密容器の内部に、電子源310と、アノード220及び表示部材210とが対向して配置されている構成となっている。電子源310は、アノード220の照射領域221と対向している。図2(b)の形態では、気密容器が大気圧に耐えられるように、基板201と基板301との間には、スペーサ410が配置されている。
【0021】
表示パネル110は、アノード220に接続された給電部材230を備えている。図2(b)では、給電部材230を給電電極231と給電端子232とで構成した例を示している。給電部材230はアノード220の非照射領域222(端部)の少なくとも一部に電気的に接続されている。給電部材230はアノード220の非照射領域222と接触するように設けられており、給電部材230とアノード220とが接触している部分の、照射領域221側の端が、給電部材230とアノード220との接続部240である。したがって、接続部240は、アノード220の非照射領域222に位置している。図1、2では、接続部240を太線で示している。図1、2の例では、接続部240は、行配線330が延在する方向と同じ方向(X方向)に延在して設けられている。また、接続部240は、アノード220の上側(−Y側)の非照射領域222(端部)のみに設けられている。
【0022】
ここで、接続部240から各行配線330までの距離をD(変数)とする。特に、接続部240から距離Dだけ離れたある行配線330を第1行配線331とし、接続部240から距離Dだけ離れたある1本の行配線330を第2行配線332とする。ここで、D<Dであり、第2行配線332は、第1行配線331よりも、接続部240から離れて位置している。例えば、図1において、第1行配線331を1本目の行配線と定めると、第2行配線332は2〜M本目の何れかの行配線である。例えば、第1行配線331をM−1本目の行配線と定めると、第2行配線332はM本目の行配線である。なお、M本目の行配線よりも接続部240から離れた行配線は存在しないので、M本目の行配線は第1行配線331とはなり得ない。
【0023】
次に、表示パネル110の駆動方法について表示装置100の構成を交えて説明する。図3は表示装置100において、表示パネル110の駆動のために用いられる信号の一例を示す模式図である。
【0024】
電位生成回路120は、図1に示すように給電部材230(例えば、給電端子232)に接続されており、給電部材230(給電電極231、給電端子232)へ供給電位Vを付与する。その結果、接続部240の電位はVとなる。供給電位Vは電子源310の電位よりも高い電位である。電子源310の電位については、後述する。供給電位Vは、実用的には+1k以上+50kV以下であり、好ましくは+3kV以上+30kV以下、より好ましくは+5kV以上+15kV以下である。本発明の電位生成回路120は、複数の異なる供給電位Vを生成することが可能である。ここで、複数の異なる供給電位Vのうち、ある電位を第1電位Vb1とし、第1電位Vb1よりも高い電位を第2電位Vb2とする。電位生成回路120が給電部材230に供給電位Vを付与することにより、給電部材230に接続されたアノード220は、アノード電位Vに規定される。アノード電位Vは、電子源310の電位よりも高い電位である。アノード電位Vは、実用的には+1kV以上+50kV以下であり、好ましくは+3kV以上+30kV以下、より好ましくは+5kV以上+15kV以下である。このようにアノード電位Vは供給電位Vと同程度の高電位である。しかし、詳細は後述するが、ある時点でのアノード電位Vはアノード220内で一様ではなく、アノード220の抵抗性に起因した電位分布が生じる。
【0025】
複数の電子放出素子320の各々をマトリックス配線350を介して駆動すること(マトリックス駆動)により、電子源310の任意の位置(任意の電子放出素子320)から電子(電子線)を放出させることができる。このとき、電子源310の電位よりも高い電位(アノード電位V)がアノード220に付与されることにより、電子源310とアノード220との間に、電子源310の電位とアノード電位との電位差(アノード電圧)が生じる。そして、アノード電圧によって生じる電界により、電子源310から放出された電子を加速して、電子にエネルギーを付与する。したがって、アノード電圧は加速電圧と呼ぶことができ、アノード電位Vは、加速電位と呼ぶことができる。エネルギーを持った電子が発光層211を照射することにより、発光層211が電子線励起により発光(カソードルミネッセンス)する。その結果、表示部材210に発光部が形成される。このときの発光層211の発光輝度は、電子放出素子320から放出された電子線の電流(放出電流I)に比例する。なお、電子源310から放出た電子線はアノード220の照射領域221の一部を照射し、照射された電子線の一部はアノード220に吸収される。
【0026】
電子源310の駆動は、走査回路130及び変調回路140を用いて行われ、電子源310のうちの、電子を放出させる電子放出素子320の選択は、少なくとも走査回路130を用いて行われる。
【0027】
走査回路130は、複数の行配線330に接続されており、複数の行配線330に走査信号を入力する。走査回路130は、走査信号によって、1走査期間内の1選択期間に、複数の行配線330の一部(典型的には1本)を選択する。そして、選択する行配線330を走査することにより、1走査期間内に複数の行配線330の全てを1回ずつ選択する。上記「選択」は、選択期間に選択している行配線330に選択電位Vを付与し、選択していない行配線330に、選択電位Vとは異なる非選択電位Vを付与することによって行われる。以下、複数の行配線330のうち、選択電位Vが付与されている行配線330を選択配線と呼び、非選択電位Vが付与されている行配線330を非選択配線と呼ぶ。上記「走査」は、選択配線を1走査期間内の別々の選択期間毎に変更することによって行われる。
【0028】
変調回路140は、複数の列配線340に接続されており、複数の列配線340に変調信号を入力する。変調回路140は、変調信号は変調電位Vを有しており、選択期間内に変調電位Vを複数の列配線340の一部又は全部(典型的には全部)に付与する。選択配線に接続された電子放出素子320には、それぞれに変調電位Vと選択電位Vとの電位差(駆動電圧V)が印加され、駆動電圧V=|V−V|に応じた量の電子を放出する。このときの電子の量が放出電流Iである。一方、非選択配線に接続された電子放出素子320には、それぞれに変調電位Vと非選択電位Vとの電位差が生じる。しかし、この電位差は、電子放出素子320が実質的に電子を放出しないとみなせる電圧(閾値電圧)以下となるように非選択電位Vが設定されている。そのため、1選択期間内には選択配線に接続された電子放出素子のみから電子線が放出されるとみなすことができる。
【0029】
電子源310の電位は、上記した走査信号および変調信号の電位(選択電位V、非選択電位V、変調電位V)によって決定される。典型的には、選択電位V、非選択電位V、変調電位Vは、接地電位(0V)に対して±100V以内であり、好ましくは接地電位に対して±20V以内である。電子源310の電位は、これらの電位のうちの最も高い電位である。
【0030】
制御回路150は、電位生成回路120、走査回路130、変調回路140に接続されている。制御回路150には画像信号が入力され、画像信号に応じた同期信号と階調信号を出力する。階調信号は変調回路140に入力され、変調回路140は階調信号を所定の変調方法を用いて変調し、変調信号を出力する。同期信号は走査回路130に入力され、走査回路130は同期信号に基づいて走査信号を出力する。具体的には、同期信号は1走査期間の開始のタイミングや各選択期間のタイミングを制御する。また、同期信号は変調回路140にも入力され、変調回路140は選択配線に接続された電子放出素子320から所望の放出電流を得るべく、各選択期間に同期して所望の変調電位を出力する。
【0031】
このようにして、複数の行配線330は、1走査期間内に線順次走査が行われる。その結果、1走査期間内に線順次に発光部が形成され、1走査期間に1枚の画像(1フレームの画像)が表示される。したがって、1走査期間は1フレーム期間と言い換えることができる。なお、上記「線順次走査」とは「面順次走査」との比較の上での意味であって、しばしば線順次走査とも呼ばれる「プログレッシブ走査」と、「インターレース走査(飛び越し走査)」との比較での線順次走査という意味ではない。プログレッシブ走査では、1走査期間内に、行配線330が配列されている方向の順で、表示パネル110の上側から下側に向かって、互いに隣り合う行配線330が順次選択される。その結果、1フレームの画像は、画像の上側から表示され、かくしてプログレッシブ表示が行われる。インターレース走査では、1フレーム内に奇数フィールドと偶数フィールドを有している。奇数フィールドでは、行配線330が配列されている方向の順で、表示パネルの上側から下側に向かって、奇数番目の行配線330が順次選択される。偶数フィールドでは、表示パネルの上側から下側に向かって、行配線330が配列されている方向の順で、偶数番目の行配線330が順次選択される。その結果、1フレームの画像は、奇数フィールドと偶数フィールドとの合成で表示され、かくして、インターレース表示が行われる。上記「線順次走査」は行配線330の選択の順番が行配線330が配列されている方向の順である、プログレッシブ走査とインターレース走査の両方を包含している。また、上記「線順次走査」は、行配線330の選択の順番が行配線330が配列されている方向の順でないものも(例えばランダムなもの)も含んでいる。
【0032】
本発明では、第1行配線331を選択する選択期間を第1選択期間TSL1とし、第2行配線332を選択する選択期間を第2選択期間TSL2とする。第1選択期間TSL1及び第2選択期間TSL2は何れも1走査期間TSC内の期間である。複数の行配線330を接続部240に近いほうから順に選択する場合、つまり1本目の行配線からM本目の行配線に向かって走査する場合には、第2選択期間TSL2は第1選択期間TSL1より後の期間である。複数の行配線330を接続部240から遠いほうから順に選択する場合、つまりM本目の行配線から1本目の行配線に向かって選択走査する場合には、第2選択期間TSL2は第1選択期間TSL1より前の期間である。
【0033】
本発明では、第1選択期間TSL1に給電部材230へ付与する供給電位Vを第1電位Vb1とし、第2選択期間TSL2に給電部材230へ付与する供給電位Vを第2電位Vb2とする。このようにすることで、表示面に生じる表示ムラを低減することができる。以下に、その理由を図2(b)、図4(a)、図4(b)を用いて説明する。なお、第1選択期間TSL1、第2選択期間TSL2は、或る程度の時間幅を持った期間であるが、図4(a)、図4(b)では、そのタイミングのみを示しており、便宜的に時間幅は示していない。また、図4(a)、図4(b)では、表示パネル110について、接続部240と行配線(第1行配線331、第2行配線332)との位置関係のみを模式的に示している。
【0034】
各選択期間に放出された電子線は、アノード220の照射領域221の任意の位置に照射部を形成する。この照射部のおおよその位置は、アノード220上の、選択配線からアノード220までの最短距離の位置の近傍であり、選択配線に接続された電子放出素子320からアノード220までの最短距離の位置の近傍である。照射部と発光部は重ねられているために、照射部の位置は、表示部材210の発光部として容易に確認することができ、照射部と発光部の位置はX−Y面内(表示面に平行な面内)において実質的に同じとみなすことができる。照射部の形状は、第1行配線331、第2行配線332に接続された電子放出素子320の配列パターンと同様の形状の線状となる。各選択期間における照射部(又は発光部)から接続部240までの距離をLとする。なお、典型的には、電子源310とアノード220との距離H(フェイスプレート200とリアプレート300との間隔H)は5mm以下であり、表示パネル110のY方向の長さは5cm以上である。そのため、実用的には距離Dと距離Lは略等しい(D=√(H+L)=L√(H/L+1)≒L)とみなすことができる。特に、図2(b)に示すように、第1選択期間TSL1に第1行配線331に接続された電子放出素子320から放出された電子線の照射部を第1照射部2211とし、第1照射部2211から接続部240までの距離をL(≒D)とする。また、第2選択期間TSL2に第2行配線332に接続された電子放出素子320から放出された電子線の照射部を第1照射部2212とし、第2照射部2212から接続部240までの距離をL(≒D)とする。
【0035】
電子放出素子320から放出された電子線の一部はアノード220に吸収され、給電部材230からアノード220の照射部に向かって、放出電流Iに略等しいアノード電流Iが流れる。アノード220はある程度の抵抗を有しており、アノード電流Iによって、照射部と接続部240との間には電位差ΔVが生じる。そのため、アノード220の照射部のアノード電位VはV−ΔVとなる。照射部と接続部240との間の、アノード220の抵抗値をRとすると、ΔV=R×Iで表される。Rはアノード220の抵抗率、及び、照射部と接続部240との距離Lに比例し、R=rLで表すことができる。ここで、rは定数またはLの関数であり、照射部と接続部240と間の単位長さあたりの抵抗値である。
【0036】
上記したように、照射部及び発光部の位置は、選択配線及びそれに接続された電子放出素子320の位置に対応するため、Rは選択配線と接続部240との距離Dに比例する。上記したように、走査回路130による走査により、照射部及び発光部の位置は選択期間毎に変化する。そのため、距離D、距離Lも時間的に変化する。例えば、走査が接続部240に近い行配線330から行われる場合には、距離D、距離Lは増加していく。逆に、走査が接続部240から遠い行配線330から行われる場合には、距離D、距離Lは減少していく。そして、本発明では、接続部240と選択配線との距離D、接続部240と照射部および発光部との距離Lの変化と、供給電位Vの変化が対応づけられている。そして、供給電位Vを時間的に制御することにより、アノード220の抵抗性に起因して空間的に生じるアノード電位Vの分布を、実質的に低減することができる。
【0037】
第1選択期間TSL1では、第1照射部2211のアノード電位Va1=Vb1−ΔVa1=V−rLである。第2選択期間TSL2では、第2照射部2212のアノード電位Va2=V−ΔVa2=V−rLである。以下、説明のためにrが定数、Iが選択期間毎に一定として単純化する。このような場合では、L<Lであるから、rL<rLとなる。
【0038】
図4(a)は供給電位VがVb0で一定の場合を表している。給電部材230へ供給電位Vb0を付与する第1選択期間TSL1では、第1照射部2211のアノード電位Va1=Vb0−ΔVa1=Vb0−rLである。給電部材230へ供給電位Vb0を付与する第2選択期間TSL2では、第2照射部2212のアノード電位Va2=Vb0−ΔVa2=Vb0−rLである。rL<rLであるから、Va1>Va2となる。
【0039】
図4(b)は供給電位Vが第1電位Vb1、第2電位Vb2(Vb1<Vb2)を出力する場合を表している。給電部材230へ第1電位Vb1を付与する第1選択期間TSL1では、第1照射部2211のアノード電位Va1=Vb1−ΔVa1=Vb1−rLである。給電部材230へ第2電位Vb2を付与する第2選択期間TSL2では、第2照射部2212のアノード電位Va2=Vb2−ΔVa2=Vb2−rLである。Vb1<Vb2であるから、Va1とVa2との差が、VがVb0で一定の場合(図4(a))に比べて小さくなる。そのため、選択期間毎に選択配線に接続された電子放出素子320から放出される電子に付与されるエネルギーの差が小さくなり、発光層211の発光輝度の差が小さくなる。その結果、表示ムラが低減される。
【0040】
b1とVb2は、Vb2−Vb1=r(L−L)Iとなるように供給電位を設定することが好ましい。このように供給電位V設定すれば、上記計算では、Va1=Va2とすることができる。なお、Vb2をVb1より極端に大きくすると、Vの分布が却って大きくなってしまう。そのため、0<Vb2−Vb1<2r(L−L)Iとすることが好ましい。この条件は、全ての行配線330について満たされることがより好ましい。しかし、Lの最小値LminとLの最大値Lmaxについて満たされていれば十分である。すなわち、接続部240に最も近い行配線330を第1行配線331とし、接続部240から最も遠い行配線330を第2行配線332としたときの、L=Lmin、L=Lminについて満たされればよい。だたし、Vが大きくなると発光層211の発光部の発光輝度は飽和するので、上記条件を多少外れても、つまりVb2−Vb1≧2r(L−L)Iとなっても、Vが一定の場合に比べて、表示ムラを低減することができる。
【0041】
の値は、放出電流Iに置き換えて設定しても十分な精度を得ることができる。特に、発光部の輝度が最大輝度の25〜75%、好ましくは50%となるときの放出電流Iに置き換えて設定すると好適である。
【0042】
ここまで、供給電位を第1電位Vb1と第2電位Vb2の2値を用いて説明してきたが、電位生成回路120はVb1とVb2とは異なる供給電位をさらに出力することが好ましい。たとえば、第1行配線331と第2行配線332との間に位置する行配線330を選択する選択期間には、Vb1とVb2との間の供給電位を給電部材230に付与するとよい。第1行配線331よりも接続部240に近い行配線330を選択する選択期間には、Vb1よりも低い供給電位を給電部材230に付与するとよい。第2行配線332よりも接続部240から遠い行配線330を選択する選択期間には、Vb2よりも高い供給電位を給電部材230に付与するとよい。
【0043】
また、複数の行配線330を、接続部240からの距離に応じて、各々が複数の行配線330で構成される複数の行配線群に区分して、行配線群毎に供給電位Vを制御してもよい。たとえば、接続部240からの距離に応じて、第1行配線331を含む第1行配線群、第2行配線332を含む第2行配線群、第1行配線群と第2行配線332群の間の第3行配線群に区分することができる。そして、第1行配線群に含まれる各行配線の各選択期間には給電部材にVb1を付与し、第2行配線群に含まれる各行配線の各選択期間には、給電部材にVb2を付与する。第3行配線群に含まれる各行配線の各選択期間には、給電部材230にVb1とVb2との間の供給電位を付与する。
【0044】
より高精度に照射部のアノード電位Vを制御するために、各行配線330の選択期間毎に、供給電位Vを変化させることが好ましい。電位生成回路120が行配線330の数(M)と同じ数のレベル(波高値)を有する供給電位を離散的(段階的)に変更して出力してもよいし、複数の供給電位を連続的に変更して出力しても良い。連続的に変更する方が、電位生成回路120の構成を簡単にできる。
【0045】
以上のように、接続部240と選択配線との距離Dの増加、また、接続部240と照射部及び発光部との距離Lの増加に応じて、供給電位Vを上昇させることにより、アノード電位Vの分布を実効的に低減することができる。同様に、接続部240と選択配線との距離Dの減少、すわなち、接続部240と照射部及び発光部との距離Lの減少に応じて、供給電位Vを低下させることにより、アノード電位Vの分布を実効的に低減することができる。
【0046】
次に、表示パネル110の構成要素について詳細に説明する。
【0047】
なお、本発明において、導電体、抵抗体、絶縁体は、それらが接した場合における、それぞれの抵抗率の相対的な大小関係によって定義する。すなわち、導電体、抵抗体、絶縁体が互いに接する時、それらの抵抗率は、導電体<抵抗体<絶縁体となる。実用的には、体積抵抗率が10−5Ωm以下の材料を導電体、抵抗率が10Ωm以上の材料を絶縁体、抵抗率が10−5Ωmより大きく10−8Ωmより小さい材料を抵抗体とみなすことができる。
【0048】
同様に、本発明において、導電膜、抵抗膜、絶縁膜は、それらが接した場合における、それぞれのシート抵抗の相対的な大小関係によって定義する。すなわち、導電体、抵抗体、絶縁体が互いに接する時、それらのシート抵抗は、導電膜<抵抗膜<絶縁膜となる。実用的には、シート抵抗が10Ω/□以下の膜を導電膜、シート抵抗が1014Ω/□以上の膜を絶縁膜、シート抵抗が10Ω/□より大きく1014Ω/□より小さい膜を抵抗膜とみなすことができる。
【0049】
<表示部材210について>
表示部材210の発光層211としては、電子線励起によって発光する材料を用いればよく、典型的には蛍光体層を使用する事ができる。蛍光体層の具体的な材料としては、例えば「蛍光体ハンドブック」蛍光体同学会編(オーム社発行)に記載された、従来のCRTなどに用いられている蛍光体結晶材料などを用いる事ができる。蛍光体の厚さは加速電圧や蛍光体の粒径、蛍光体の充填密度などによって適宜設定される。加速電圧が5kVから15kV程度の場合、一般の蛍光体の平均粒径である3μmから10μmに対して、その1.5倍から3倍の厚さである4.5μmから30μm、好ましくは5μmから15μm程度に蛍光体層の厚さが設定される。表示部材210の遮光層212としては、CRT等で公知のブラックマトリクスあるいはブラックストライプを採用できる。遮光層212は、一般に、黒色の金属、黒色の金属酸化物、又は、カーボンなどで構成される。黒色の金属酸化物としては、たとえば酸化ルテニウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化銅などが挙げられる。表示部材210は、発光層211、遮光層212に加えて、不図示のカラーフィルタを備えることもできる。カラーフィルタは発光層211と第1基板201との間に設けるとよい。
【0050】
<アノード220について>
アノード220を表示部材210の電子源310側に設ける場合には、電子線の少なくとも一部がアノード220を通過して発光層211を照射する必要がある。そのため、アノード220は薄膜(膜厚が1μm以下)が用いられる。アノード220の膜厚は、電子のエネルギー損失やアノード電位Vに応じて適宜設定される。アノード電位Vが5kVから15kVの場合には、アノード220の膜厚は50〜300nmに設定される。このようにアノード220が薄膜である場合には、アノード220は抵抗性を有することになる。
【0051】
アノード220を表示部材210と第1基板201との間に設ける場合には、アノード220は透明性を有する必要があるため透明導電膜を用いる。しかしながら、一般的な透明導電膜(例えばITOやATO)は金属膜等の一般的な導電膜に比べて抵抗率が高い。従って、アノード220は抵抗性を有することになる。
【0052】
アノード220の抵抗性は、アノード220の抵抗自体がアノード電位Vの分布を極端に大きくしない程度に高くすることが好ましい。フェイスプレート200(アノード220)とリアプレート300(電子源310)との間には上記Vによって高電界が形成される。そのため、フェイスプレート200とリアプレート300との間に、意図しない放電が生じる場合がある。このような放電によって電子源310に電流(放電電流)流れる可能性がある。放電電流が大きいと、電子源310や走査回路130、変調回路140を損傷する可能性がある。そこで、アノード220の抵抗性を高くすることにより、放電電流を低減することができる。具体的には、アノード220の照射領域221のシート抵抗を100Ω/□以上とすることが好ましく、100kΩ/□以上とすることがより好ましい。
【0053】
アノード220のシート抵抗は、行配線330が配列された方向(Y方向)に、所定長さwの一対の電極をY方向に所定長さlだけ離してアノード220に接触させて計測することができる。一対の電極に電圧Vを印加したときに流れる電流Iから抵抗値R=V/Iが求められる。シート抵抗RsはR×w/lを求め、さらにw,lを大きくしていった時にR×w/lがほぼ一定になったときの値を採用する。このようにすることで、アノード220が構成単位が繰り返し配列された複合部材からなる場合でも、適切にシート抵抗Rsを求めることができる。
【0054】
アノード220の抵抗性を所望の値にするために、例えば図5(a)に示すように、アノード220の照射領域221を、複数の導電膜223と、当該複数の導電膜223を互いに接続する抵抗膜224とで構成することができる。このような形態は、特開2006−12062号公報、特開2005−235470号公報を参照することができる。抵抗膜224によって、アノード220の何れかの位置で放電が生じても、放電箇所に電流が集中することを抑制することができる。この時に、抵抗膜224を介して互いに隣り合う導電膜223間の抵抗値を1kΩ以上1MΩ以下とすることが好ましく、100kΩ以上とすることがより好ましい。図5(a)では抵抗膜224がY方向で導電膜223を接続しているが、X方向でも導電膜223を接続しても良い。
【0055】
少なくともY方向に抵抗膜224を設けることにより、アノード220のY方向における抵抗値が高くなる。そのため、Y方向のアノード電位分布を低減できる本発明の効果は顕著になる。
【0056】
上記したアノード220の抵抗膜224は、遮光層212上に設けることが好ましいが、遮光層212自体を抵抗体で構成することにより、遮光層212を抵抗膜224として用いることもできる。この場合は、遮光層212が表示部材210の機能の一部とアノード220の機能の一部とを担っていると云える。
【0057】
アノード220を表示部材210の電子源310側に設ける場合には、アノード220として、アルミニウムなどの金属膜を用いることが好ましい。このような金属膜はメタルバックと呼ばれる。なお、本発明において、金属は単体の金属だけでなく合金も含むものとする。メタルバックは、発光層211の電子源310側に重ねられた金属膜の光反射性を利用して、発光層211から発せられた光を観察者側に反射することができる。メタルバックは薄膜にする必要があるために、金属膜といえども、或る程度の抵抗性を有する。メタルバックは連続した金属膜を表示部材210の全体に渡って積層することによって得ることができる。しかし、上記のように放電電流を低減するためには、上記複数の導電膜223として金属膜(メタルバック)を用い、金属膜間を抵抗膜224で接続することが好ましい。
【0058】
<給電部材230について>
給電部材230は、例えば、導電膜である給電電極231と導電体からなる棒状(針状)部材である給電端子232を含むことができる。給電電極231は、基板201上に設けられてアノード220と接触して接続部240を構成している。給電端子232は、第2基板301を貫通しており、気密容器の内部で給電電極231に接触している。このようにして、気密容器の外部から給電部材230がアノード220と電気的に接続されている。給電部材230から給電電極231を省略して、給電端子232をアノード220に直接接触させることもできる。あるいは、給電部材230から給電端子232を省略して、給電電極231を気密容器の外部に延在させることもできる。給電電極231をアノード220と同じ材料で構成して、給電電極231をアノード220に接続した場合には、給電電極231とアノード220の接続部240が明確でない場合がある。そのような場合には、アノード220の非照射領域222を給電電極231とみなして、照射領域221と非照射領域222との境界部を接続部240とみなせばよい。
【0059】
給電部材230は供給電位Vをアノード220に付与できる程度の導電性を有していればよい。具体的には、電位生成回路120から高電圧を供給した時に給電部材230自体での電圧降下を小さくする為、接続部240のうち、電位生成回路120との接続部から電気的に最も離れた部分までを低抵抗にすることが好ましい。具体的には、電位生成回路120との接続部から電気的に最も離れた部分まで抵抗値を1kΩ以下に設定することが好ましい。
【0060】
また、給電部材230(特に給電電極231)の一部に抵抗部233を設けることが好ましい。特に、抵抗部233がアノード220と接触して接続部240を構成するように、給電電極231のアノード220と接触する部分に抵抗部233を設けることが好ましい。このような構成によれば、アノード220において、特に給電電極231の接続部240側近傍で放電が発生した場合に、放電電流が増大することを抑制することができる。これは、給電電極231に充電されていた電荷が放電電流としてリアプレート300側に流れ込むことを、抵抗部233によって制限することができるためである。このとき、給電部材230(給電電極231)は、上記したように給電部材230自体の低抵抗化と、給電部材230とアノード220との間の高抵抗化を両立することが好ましい。そのために、給電部材230を、抵抗部233と導電部234とで構成する。たとえば、給電電極231を、抵抗部233を構成し、アノード220の非照射領域222に接続する抵抗膜と、導電部234を構成し、抵抗部233に接続する導電膜とで構成できる。抵抗部233の、アノード220と導電部234との間の抵抗値は1MΩ以上100MΩ以下とすることが好ましい。給電電極231の導電部234の導電膜は連続膜でもよいし、特開2006−185614号公報に記載されているように、互いに分離した複数の導電膜でもよい。
【0061】
給電端子232は、第2基板301を貫通して、第2基板301に固定されることから、第2基板301の熱膨張率と同程度(±20%以内)の熱膨張率を有することが好ましい。典型的には、給電端子232には426合金やインバー合金等のFeとNiとを含有する合金(Niの含有率<Feの含有率)が用いられる。
【0062】
<接続部240について>
接続部240は、各行配線330からの距離が、行配線330毎に異なるような位置に配置すればよい。接続部240は実線状または破線状に配置することが好ましい。特に接続部240が行配線330が延在する方向と同じ方向(X方向)に延在することが好ましい。このようにすることにより、アノード220の、行配線330が延在する方向と同じ方向(X方向)における、アノード電位Vの分布を低減することができる。接続部240を、アノード220の、行配線330に平行な1辺のみ、すなわち、Y方向におけるアノード220の上側または下側の非照射領域222(一方の端部)のみに、設けてもよい。接続部240を、行配線330に平行な互いに対向する2辺、すなわち、Y方向におけるアノード220の上側と下側の両側の非照射領域222(両端部)に設けても良い。図5(b)、(c)には、接続部240を2辺に設けた形態を示しており、それぞれの接続部を第1接続部241、第2接続部242で示している。図5(b)では、給電電極231がアノード220の3辺に位置して接続部240を2辺に設けた形態を表している。図5(c)では、給電電極231がアノード220を囲むように4辺に配置して、接続部240を上側と下側の2辺に設けた形態を表している。図5(b)、(c)では給電電極231を上側と下側の2辺間で延在させることによって、接続部240を2辺に設けている。しかし、別々の給電電極231を2辺に設けて、それぞれに給電端子232を接続し、それぞれの給電端子232へ電位生成回路120の出力を分配する構成としてもよい。
【0063】
このように、接続部240が複数ある場合には、行配線330が配列された方向(Y方向)における両端の行配線330の少なくとも一方が接続部240に最も近い行配線となる。複数の行配線330のうちの、任意の2本の行配線330を比較した場合、第1接続部241と第2接続部242のいずれかとの距離がより短い方の行配線330が行配線が第1行配線331である。例えば、99本の行配線330が、第1接続部241と第2接続部242の間に、等間隔で配列されている場合を説明する。第1接続部241から数えて30本目の行配線と、第2接続部242から数えて60本目の行配線とでは、30本目の行配線が第1行配線331であり、60本目の行配線が第2行配線332である。50本目の行配線が、第1接続部241及び第2接続部242から最も離れた行配線である。従って、このような形態の場合は、50本目の行配線が選択配線となるような選択期間に、最高の供給電位Vを給電部材230に付与することが好ましい。
【0064】
<ガード電極250について>
高電位(V,V)に規定されるアノード220や給電部材230と封止部材400との間に、アノード電位Vよりも低い電位に規定される電極であるガード電極250を配置することが好ましい。ガード電極250の電位は接地電位(0V)とすること好ましい。アノード220は高電位であるために、フェイスプレート200とフェイスプレート200との間だけでなく、封止部材400表面や第1基板201表面にも電位分布を生じさせる。そこで、低電位に規定されたガード電極250を配置することによって、ガード電極250のアノード220とは反対側の領域の電位をアノード電位よりも低くすることができる。ガード電極250は、アノード220及び給電部材230(給電電極231)を囲むようにループ状に設けることが好ましい。
【0065】
<スペーサ410について>
スペーサ410は、ガラス等の絶縁性の部材を用いることができる。さらに、絶縁体母材に導電体粒子を分散したり、絶縁体の表面を抵抗膜で被覆したりした構成とすることが望ましい。このように、スペーサ410に僅かな導電性を付与すると、スペーサ410の帯電を抑制することができる。スペーサ410の形状は、柱状でもよいし、板状(壁状)でもよい。板状のスペーサ410を用いる場合には、板状のスペーサ410を、行配線330上に、行配線330が延在する方向と同じ方向に延在するように配置することが好ましい。
【0066】
<電子放出素子320について>
本発明において、電子放出素子320は特に限定されないが、電界放出型(冷陰極型)であることが好ましい。電界放出型としては、例えば、SCE型(表面伝導型)、Spindt型、CNT型、MIM型、MIS型、BSD型の各種電子放出素子を用いることができる。SCE型は特開平07−235255号公報に開示されているような形態のものや、特開2001−167693号公報に開示されているような形態のものが知られている。
【0067】
<走査回路130について>
M本の行配線330の走査は、例えば図3に示すように、次のようにして行われる。走査期間T内の最初の選択期間T11において、1本目の行配線には選択電位Vを付与し、残りのM−1本の行配線には非選択電位Vを付与する。走査期間T内の、選択期間T11の直後の選択期間T12において、2本目の行配線には選択電位Vを付与し、残りのM−1本の行配線には非選択電位Vを付与する。走査期間T内の、選択期間T1M−1において、M−1本目の行配線にはM本目の行配線には選択電位Vを付与し、残りのM−1本の行配線には非選択電位Vを付与する。走査期間T内の、選択期間T1M−1の直後かつ最後の選択期間TMにおいて、M本目の行配線には選択電位Vを付与し、残りのM−1本の行配線には非選択電位Vを付与する。これにより、走査期間Tが終了する。走査期間Tの直後に走査期間Tが開始する。走査期間T内の最初の選択期間T21において、再び1本目の行配線には選択電位Vを付与し、残りのM−1本の行配線には非選択電位Vを付与する。以後、同様に走査期間T内の選択期間T22、・・・、T2Mに各行配線を選択する。上記の例では、Tが1走査期間TSCであり、上記T11、T12、・・・、T1Mの各々が1走査期間内の選択期間である。選択期間T11、・・・、T1M−1の何れかが第1選択期間TSL1であり、選択期間T12、・・・、T1Mの何れかのうち第1選択期間TSL1より後の選択期間が第2選択期間TSL2である。
【0068】
なお、上記説明では、走査期間同士の関係及び選択期間同士の関係を「直後」と説明した。しかし、各期間同士の間には画像の連続性を損なわない程度に、どの電子放出素子320も駆動しない期間(ブランキング期間)があっても、実質的には「直後」と考えてよい。
【0069】
良好な表示品質を得るためには、一般的に1秒あたりに15フレーム以上の表示を行う。1秒あたり15フレームとすると1走査期間は1/15秒(約67ms)である。したがって、1走査期間は1/15秒以下とすることが好ましい。なお、さらに良好な画質を得るために例えば1秒あたり120フレームとすると、1走査期間は1/120秒(約8ms)である。1選択期間の長さは、行配線330の数と1走査期間の長さにもよるが、1走査期間が1/15秒であって行配線330が2本の場合には、1選択期間は1/30秒(約33ms)以下である。1走査期間が1/15秒で行配線330が240本の場合には1選択期間は1/3600秒(約278μs)以下、1走査期間が1/120秒で行配線330が1080本の場合には1選択期間は1/129600秒(約7.7μs)以下である。
【0070】
<変調回路140について>
変調信号は、典型的には、階調信号に応じて変調されたパルス波形を有する。変調信号の変調方法は、パルス幅変調(PWM)やパルス振幅変調(PAM)、パルス幅変調とパルス振幅変調とを組み合わせた変調(PWM−PAM)を用いることができる。表示する画像によって階調信号は異なるが、本発明が課題とする表示ムラは複数の列配線340の各々に、同じ中間階調信号に対応した変調信号を入力して発光層211を発光させた時に顕著になる。従って、供給電位Vを設定したり、その効果を確認する際には、画面全体を均一な中間階調にした表示を行うと良い。勿論、通常の画像を表示する際にも表示ムラは潜在的に生じ得るので、本発明を採用すると、通常の画像を表示する際にも良好が表示品質が得られる。
【0071】
<電位生成回路120について>
電位生成回路120の構成は、所望の供給電位Vを出力できるものであれば特に限定されるものではないが、電位生成回路120は、例えば波形生成部121と高電圧生成部122とで構成することができる。
【0072】
波形生成部121は、数Vの波高値を有する周期波形を出力可能なものを用いることができる。波形の周期は、プログレッシブ走査の場合には、走査期間と同じ周期の波形を生成可能なもの、インターレース走査の場合には、走査期間の半分の周期の波形を生成可能なものを用いることができる。プログレッシブ走査あるいはインターレース走査を行う場合には、波形形状としては、例えば階段波、鋸波、正弦波、三角波が挙げられる。特に、鋸波は、接続部240がY方向の一方のみに設けられている場合に好ましく用いることができ、三角波は、接続部240がY方向の両方に設けられている場合に好ましく用いることができる。
【0073】
そして、1つの例では、高電圧生成部122が信号波形の周期を維持したまま、波高値を+数kV〜数10kVまで増幅して供給電位を出力する。別の例では、波形生成部121が出力した信号波形に、高電圧生成部122生成した直流高電圧を重畳する。波形形状は、走査期間内の供給電位Vの高低が、走査期間内における選択配線と接続部240との距離の増減と対応していること、つまり、Dが長い選択期間ほど波形の電位を高くし、Dが短い選択期間ほど波形の電位を低くする。
【0074】
例えば、接続部240がY方向の一方のみに設けられており、表示パネル110をプログレッシブ走査する場合を例に挙げて説明する。アノード220のY方向の両端の抵抗値(r(Lmax−Lmin))がRmax[Ω]である場合には、Vの最低値と最高値の差は0Vより大きく(2Rmax)[V]より小さくなるようにする。好ましくは、Vの最低値と最高値の差を、(Rmax)[V]となるようにする。そして、電位生成回路120はこのような最低値と最高値の差を持った鋸波を出力すればよい。インターレース走査を行う場合には、鋸波の周期を半分にすればよい。接続部240がY方向の両方に設けられている場合には、(r(Lmax−Lmin))がRmaxの約半分になり、アノード電流が流れる経路が2つに別れるので、Vの最低値と最高値の差を、0Vより大きく(Rmax/2)[V]より小さくなるようにする。好ましくは、Vの最低値と最高値の差を、(Rmax/4)[V]となるようにする。そして、電位生成回路120はこのような最低値と最高値の差を持った三角波を出力すればよい。典型的な表示パネル110では、上記Rmaxは1MΩ以上1GΩ以下であり、Iは1μA以上20μA以下である。従って、Vの最低値と最高値の差は、RmaxやIに応じて、1V〜20kVの範囲で適宜設定される。
【0075】
電位生成回路120が、表示する画像、すわなち発光部の輝度に応じて供給電位Vを調整するように表示装置100を構成することもできる。上述したように、ΔVはIによっても変動するので、Iの変動すなわち表示する画像の輝度の変動に応じてVを調整すると、より好適に表示ムラを低減することができる。このような形態は、変調回路140が、PAMあるいはPAM−PWMを用いる場合に効果的である。
【0076】
具体的には、走査期間毎に、電位生成回路120の出力波形を変更可能なように電位生成回路120を構成すればよい。その結果、走査期間毎に第1電位Vb1と第2電位Vb2の少なくとも一方が変更可能となる。例えば、電位生成回路120の波形生成部121に画像信号を入力することによって、画像信号に基づいて、波形生成部121が出力波形の波高値を調整する構成とすることができる。あるいは、電位生成回路120の高電圧生成部122に画像信号を入力することによって、画像信号に基づいて、高電圧生成部122がその増幅率を調整する。
【0077】
<制御回路150について>
図3に示す例では、同期信号は走査期間の始まりを規定するパルスを出力するトリガ信号である。走査回路130は、トリガ信号のパルスが入力されたタイミングで、同期信号をトリガとして、予め定められた順で複数の行配線330の走査を開始する。一方、変調回路140は、トリガ信号のパルスが入力されたタイミングで、すなわち同期信号をトリガとして、選択配線に接続された電子放出素子320に付与すべき変調電位Vを逐次出力する。電位生成回路120は、トリガ信号のパルスが入力されたタイミングで、すなわち同期信号をトリガとして、所定の供給電位Vを出力する。ここでは、同期信号にトリガ信号を用い、同期信号をトリガとして、電位生成回路120、走査回路130、変調回路140がそれぞれが走査期間内の動作を行う例を示した。しかし、制御回路150はこのような形態に限定されることはなく様々な変更が可能である。例えば、同期信号として複数のパルスからなるクロック信号を用いて、各回路がパルス数をカウントすることにより走査期間内の動作を行うようにしてもよい。
【0078】
<電位生成回路120について>で説明した、電位生成回路120が表示する画像に応じて供給電位Vを調整する形態においては、上述したように画像信号を電位生成回路120に入力することができる。しかしながら、制御回路150がその機能を担う構成にすることが好ましい。図1に示すように、制御回路150は、入力された画像信号に基づいて、調整信号を出力する。電位生成回路120(波形生成部121又は高電圧生成部122)に調整信号が入力されることにより、電位生成回路120に画像信号が入力される場合と同様にして、電位生成回路120が調整信号に基づいて出力波形は増幅率を調整する。例えば、制御回路150において入力する画像信号に応じてアノード220の照射領域221で発生する電圧降下量ΔVを各選択期間ごとに算出し、1走査期間毎に平均的に発生する電圧降下量算出する。この算出結果を調整信号として波形生成部121に入力する。波形生成部121は、調整信号に応じた波形を出力するように構成されている。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
高歪み点ガラスからなる第1基板201の表面に、遮光層212として、カーボンブラックからなるブラックマトリックスを形成した。ブラックマトリックスの開口内に発光層211としてR,G,Bの蛍光体からなる蛍光体層を形成して、蛍光体層をマトリックス配列し、マトリックス配列されたそれぞれの蛍光体層を1サブピクセルとした。そして各発光層211上にAlからなる導電膜223(メタルバック)をフィルミング法により成膜した。導電膜223は、Y方向で隣り合う2サブピクセルに渡って形成した。隣り合う導電膜223を接続するように遮光層212上に酸化ルテニウムからなる抵抗膜224を2サブピクセルおきに成膜した。尚、抵抗膜224の抵抗値は200kΩとした。これにより、矩形状のアノード220を形成した。これによって得られるアノード220のY方向の両端の抵抗値は、100MΩ程度となる。そして、アノード220の、非照射領域222の一辺に沿って、アノード220に接続するように給電電極231を設けた。給電電極231は、上記抵抗膜224と同じ膜厚の酸化ルテニウムからなる抵抗部233としての抵抗膜と、Agからなる金属膜としての導電部234とで構成した。これにより、導電部234とアノード220との間の抵抗値は24MΩとなった。また、給電電極231及びアノード220を取り囲むように、カーボンブラックからなるガード電極250を形成した。このようにして、給電電極231が設けられたフェイスプレート200を作製した。
【0080】
高歪み点ガラスからなる第2基板301の表面に、従来公知の方法で、1080本の行配線330と5760本の列配線340とからなるマトリックス配線350と、電子放出素子320を形成して、電子源310とした。電子放出素子320としては、SCE型を用いた。このようにして、リアプレート300を作製した。第2基板301には隅部に貫通穴を設けた。
【0081】
リアプレート300上に、電子源310を取り囲むように、枠状の封止部材400を配置し、行配線330上に板状のスペーサ410を配置した。なお、尚、板状のスペーサ410は、高歪み点ガラスを、タングステンとゲルマニウムとの窒化物からなる半導体膜で被膜した物を用いた。リアプレート300上にフェイスプレート200を対向させて載せた。給電端子232を第2基板301の貫通孔に挿入して、給電電極231に当接させた後、貫通孔に接着剤を充填して、貫通孔を封止した。
【0082】
真空チャンバー内で封止部材400を加熱してリアプレート300とフェイスプレート200とを封着した。このとき、給電電極231とアノード220との接続部240が行配線330及びスペーサ410と平行になるようにした。以上のようにして表示パネル110を作製した。
【0083】
そして、図1で示すように、行配線330に走査回路130を、列配線340に変調回路140を接続した。給電端子232には電位生成回路120を接続した。さらに、電位生成回路120、走査回路130、変調回路140に制御回路を接続した。電位生成回路120は、波形生成部121と高電圧生成部122とで構成した。図6に示すように、波形生成部121の出力波形を、波高値が6.0V〜6.2V、周波数が60Hzの鋸波となるように設定した。高電圧生成部122を波形生成部121で生成された波形の波高値(電位振幅)を2000倍に増幅して出力するように設定した。したがって、電位生成回路120は、波高値が12kV〜12.4kV、周波数が60Hzの鋸波の供給電位Vを出力する。
【0084】
走査回路130が、選択電位が−10V、非選択電位が0V、走査期間が11/60秒、選択期間が1/64800秒で、フレーム周波数60Hzでプログレッシブ走査を行う走査信号を出力するように制御回路150を設定した。変調回路140が、変調電位が波高値+10V、周波数が64.8kHzのPWMによるパルス変調信号を出力するように制御回路150を設定した。なお、効果を確認するために、変調信号のパスル幅及び波高値は1選択期間内の全ての列配線330に対して均一とし、さらに1走査期間内で一定とすることで、一様な表示を行っている。このとき、1つの電子放出素子320からの放出電流Iは約4μAであった。
【0085】
その結果、図1における、表示面の上端部(−Y側)での輝度と表示面の下端部(+Y側)での輝度を比較すると、1%以下の輝度差となった。これに対し、波形生成部121の出力を直流として、電位生成回路120の出力を一定とした場合、表示面の上端部と表示面の下端部での輝度差を比較すると、10%程度の輝度差が発生した。
【0086】
この様に、本実施例においては、波形生成部121の出力波形、即ち電位生成回路120の出力電位Vを制御する事で、特に複雑な構成をとる事無く、又放電時の放電電流制限効果を損なう事無く、大幅に輝度の分布(表示ムラ)を改善する事が出来た。
【0087】
(実施例2)
基本的な構成については実施例1と同様であり、本実施例が実施例1と異なる点は、図6の(b)に示す構成のフェースプレートを用いた点と、波形生成部121が生成する信号波形が異なる点のみである。図7に示すように、波形生成部121の出力波形を、波高値が6.0V〜6.05V、周波数が60Hzの三角波となるように設定した。高電圧生成部122を波形生成部121で生成された波形の波高値(電位振幅)を2000倍に増幅して出力するように設定した。したがって、電位生成回路120は、波高値が12.0kV〜12.1kV、周波数が60Hzの三角波の供給電位Vを出力する。
【0088】
その結果、図1における、表示面の上端部(−Y側)及び下端部(+Y側)での輝度と表示面の中央部(上端部と下端部との中間の部分)での輝度を比較すると、1%以下の輝度差となった。これに対し、波形生成部121の出力を直流として、電位生成回路120の出力を一定とした場合、中央部と上下端部でのアノード電位Vの電位差は、100V程度であった。そして、表示面の上端部と表示面の下端部での輝度差を比較すると、1.5%程度の輝度差が発生した。
【0089】
(実施例3)
基本的な構成については実施例1と同様であり、本実施例が実施例1と異なるのは、波形生成部121の出力波形を各走査期間ごとに変更可能にした点と、変調回路140にPAMを用いた点である。
【0090】
図8に示すように、走査回路130が、選択電位が−10V、非選択電位が0V、走査期間が16.7ms、選択期間が15.5μsの走査信号を出力するように制御回路150を設定した。変調回路140が、変調電位が波高値+5〜+10V、周波数が64.8kHzのPAMによる変調信号を出力するように制御回路150を設定した。なお、効果を確認するために、変調信号の波高値及びパルス幅はは1選択期間内の全ての列配線330に対して均一とし、さらに1走査期間内で一定とすることで、一様な表示を行っている。さらに、5秒ごとに画像信号を変更して、ある5秒間には変調電位の波高値が+9.0Vとなるように、直後の5秒間には変調電位の波高値が+9.7Vとなるように、表示を行った。図8に示すのは、表示が切り替わる瞬間の前後の走査期間(フレーム)である。変調電位の波高値が+9.0Vの時には、1つの電子放出素子320からの放出電流Iは約2μAであった。変調電位の波高値が+9.7Vの時には、1つの電子放出素子320からの放出電流Iは約3μAであった。そのため、変調電位の波高値が+9.7Vの場合には、変調電位の波高値が+9.0Vの場合よりも輝度が高くなる。
【0091】
電位生成回路120は、波形生成部121と高電圧生成部122とで構成した。画像信号を切り換える直前の走査期間では、波形生成部121の出力波形を、波高値が6.00V〜6.10V、周波数が60Hzの鋸波となるように設定した。画像信号を切り換えた直後の走査期間では、波形生成部121の出力波形を、波高値が6.00V〜6.15V、周波数が60Hzの鋸波となるように設定した。高電圧生成部122を波形生成部121で生成された波形の波高値(電位振幅)を2000倍に増幅して出力するように設定した。したがって、電位生成回路120は、画像信号を切り換える直前の走査期間では、波高値が12.0kV〜12.2kV、周波数が60Hzの鋸波の供給電位Vを出力する。画像信号を切り換えた直後の走査期間では、波高値が12.0kV〜12.3kV、周波数が60Hzの鋸波の供給電位Vを出力する。
【0092】
このように構成したところ、画像信号を切り換えても、表示ムラが低減された良好な画像が得られた。
【符号の説明】
【0093】
100 表示装置
110 表示パネル
120 電位生成回路
130 走査回路
140 変調回路
150 制御回路
210 表示部材
220 アノード
230 給電部材
240 接続部
310 電子源
320 電子放出素子
330 行配線
331 第1行配線
332 第2行配線
340 列配線
350 マトリックス配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行配線及び複数の列配線からなるマトリックス配線と、前記マトリックス配線に接続された複数の電子放出素子とからなる電子源と、前記電子源に対向する表示部材と、前記表示部材に重なるアノードと、前記アノードに接続部で接続された給電部材と、を有する表示パネルと、
前記複数の行配線に接続された走査回路と、前記複数の列配線に接続された変調回路と、前記給電部材に接続された電位生成回路と、を備える表示装置であって、
前記複数の行配線は、第1行配線と、前記第1行配線よりも前記接続部から離れて位置する第2行配線とを含んでおり、
前記走査回路は、1走査期間内の第1選択期間に、前記第1行配線へ選択電位を出力するとともに、前記第2行配線へ非選択電位を出力し、前記1走査期間内の前記第1選択期間とは別の第2選択期間に、前記第1行配線へ前記非選択電位を出力するとともに、前記第2行配線へ前記選択電位を出力するものであり、前記変調回路は、前記複数の列配線に変調電位を出力するものであり、
前記電位生成回路は、前記電子源の電位よりも高い第1電位と、前記第1電位よりも高い第2電位とを出力可能であって、前記電位生成回路は、前記第1選択期間に前記第1電位を前記給電部材へ出力し、前記第2期間に前記第2電位を前記給電部材へ出力することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記接続部は、前記複数の行配線が延在する方向と同じ方向に延在して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
画像信号が入力される制御回路を備え、
前記制御回路は前記画像信号に応じた階調信号及び同期信号を出力し、前記変調回路は前記階調信号に基づいて前記変調電位を出力し、前記走査回路は前記同期信号に基づいて前記選択電位及び前記非選択電位を出力し、前記電位生成回路は前記同期信号に基づいて前記第1電位及び前記第2電位を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記電位生成回路は、前記画像信号に応じて前記第1電位と前記第2電位の少なくとも一方を変更すること特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
複数の行配線及び複数の列配線からなるマトリックス配線と、前記マトリックス配線に接続された複数の電子放出素子とからなる電子源と、前記電子源に対向する表示部材と、前記表示部材に重なる領域を有するアノードと、前記領域の外側に設けられ前記アノードに接続部で接続された給電部材と、を有する表示パネルと、
前記給電部材に接続された電位生成回路と、前記複数の行配線に接続された走査回路と、前記複数の列配線に接続された変調回路と、前記給電部材に接続され、前記電子源の電位よりも高い供給電位を前記給電部材へ出力する電位生成回路と、を備える表示装置であって、
前記接続部は、前記複数の行配線が延在する方向と同じ方向に延在し、かつ、前記複数の行配線が配列された方向における前記アノードの少なくとも一方の側に設けられており、
前記走査回路は、前記複数の行配線を1走査期間内に線順次に走査し、前記表示部材には、前記1走査期間内の前記走査に対応して線順次に発光部が形成されるものであり、
前記電位生成回路は、前記1走査期間内における前記接続部と前記発光部との距離の増加に応じて、前記1走査期間内に前記供給電位を上昇させることと、前記1走査期間内における前記接続部と前記発光部との距離の減少に応じて、前記1走査期間内に前記供給電位を低下させることとの少なくとも一方を行うことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
前記接続部は、前記複数の行配線が配列された方向と同じ方向における前記アノードの一方の側のみに設けられており、前記走査回路は、プログレッシブ走査またはインターレース走査を行い、前記電位生成回路は鋸波を出力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記接続部は、前記複数の行配線が配列された方向と同じ方向における前記アノードの両側に設けられており、前記走査回路は、プログレッシブ走査またはインターレース走査を行い、前記電位生成回路は三角波を出力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記電位生成回路は、前記発光部の輝度に応じて、前記供給電位を変更することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記アノードは、複数の導電膜と、前記複数の導電膜を互いに接続する抵抗膜とで構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
表示パネルの駆動方法であって、
前記表示パネルは、複数の行配線及び複数の列配線からなるマトリックス配線と、前記マトリックス配線に接続された複数の電子放出素子とからなる電子源と、前記電子源に対向する表示部材と、前記表示部材に重なるアノードと、前記アノードに接続部で接続された給電部材と、を有し、前記複数の行配線は、第1行配線と、前記第1行配線よりも前記接続部から離れて位置する第2行配線とを含んでおり、
1走査期間内の第1選択期間に、前記第1行配線へ選択電位を付与するとともに、前記第2行配線へ非選択電位を付与し、前記1走査期間内の前記第1選択期間とは別の第2選択期間に、前記第1行配線へ前記非選択電位を付与するとともに、前記第2行配線へ前記選択電位を付与し、
前記第1選択期間に前記電子源の電位よりも高い第1電位を前記給電部材へ付与し、前記第2期間に前記第1電位よりも高い第2電位を前記給電部材へ付与することを特徴とする表示パネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−237591(P2011−237591A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108787(P2010−108787)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】