説明

表示装置及び表示装置の製造方法並びに電子ペーパー

【課題】低消費電力化を維持しつつ大画面化に対応することができると共に、下線やメモなどを表示画面上に直接入力して表示させることができ、表示された画像を外部から読み出すことが可能な表示装置及び表示装置の製造方法並びに電子ペーパーを提供すること。
【解決手段】複数の画素領域のそれぞれに、画素領域への信号の供給をスイッチング制御するTFT素子22と、外部からの圧力の入力に応じて画素領域への信号の供給をスイッチング制御するスイッチング素子23と、画素領域に供給された信号を保持する保持容量24とが設けられ、スイッチング素子23が、チャネル領域42aを有する半導体層42と、チャネル領域42a上に形成された圧電強誘電体膜34とを有し、保持容量24が、容量電極44及び分岐部28aと、容量電極44及び分岐部28aで挟持された圧電強誘電体膜34とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気泳動表示装置などの表示装置及び表示装置の製造方法並びに電子ペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気泳動材料や液晶材料などにおいて、各種の電気光学材料を用いた表示装置が提供されている。また、従来、例えば発光ダイオードを用いたディスプレイパネル(表示装置)に対するデジタイジングタブレット(デジタイジング装置)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、デジタイジング装置としては、特許文献1における従来の技術においても記載されているように、種々のタイプのものが知られている。
【0003】
デジタイザ装置は、ユーザが文字や図を書いたり、デジタイザアレイに対してスタイラスの位置を指示したりすることにより、直接データ入力ができるようにしたものである。具体的には、以下に示すものが知られている。
(1)容量性−抵抗性アレイに対してスタイラスの先端部を直接接触させるもの。
(2)ユーザがデータを入力して所望の動作を実行する際に磁気先端構造のスタイラスや電磁界発生型のスタイラスと相互作用する電磁デジタイザを用いるもの。
(3)デジタイジングアレイに信号を送信するためのRF送信機が設けられたスタイラスを備えるもの。
(4)パッドから反射する可視光源あるいは赤外光源などの光源をスタイラスの先端部内に組み込んだもの。
一般に、デジタイザ装置は、表示装置となるモニタの大きさに比べて大きな作業面積が必要であるときに表示装置と別途用意されており、可搬性が必要なときに表示装置と一体的に組み込まれている。
【特許文献1】特開2003−223272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のデジタイザ装置においても、以下の課題が残されている。すなわち、上記従来のデジタイザ装置は、処理速度がプロセッサの能力に比例するため、大画面化に対応することが困難である。また、直接入力を行わない待機時においても電力を必要とするため、低消費電力化が困難である。さらに、表示装置に表示された画像を外部にデータとして出力することも求められている。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、低消費電力化を維持しつつ大画面化に対応することができると共に、下線やメモなどを表示画面上に直接入力して表示させることができ、表示された画像を外部から読み出すことが可能な表示装置及び表示装置の製造方法並びに電子ペーパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかる表示装置は、複数の画素領域が平面状に配置されたアクティブマトリックス駆動の表示装置であって、前記複数の画素領域のそれぞれに、該画素領域への信号の供給をスイッチング制御する選択スイッチング素子と、外部からの圧力の入力に応じて前記画素領域への信号の供給をスイッチング制御する感圧スイッチング素子と、前記画素領域に供給された信号を保持する保持容量とが設けられ、前記感圧スイッチング素子が、チャネル領域を有する半導体層と、該チャネル領域と積層される圧電体膜とを有し、前記保持容量が、一対の容量電極と、該一対の容量電極で挟持された強誘電体膜とを有することを特徴とする。
【0007】
この発明では、感圧スイッチング素子を設けることで、選択スイッチング素子を介した通常の表示の上に、ペンなどの直接入力による別の表示を行うことができる。また、画素領域が表示の保持性を有しているので、低消費電力化及び大画面化が可能となる。そして、画素領域への電気信号の供給により保持容量にも電荷が蓄積されるので、画素領域の表示状態を外部から読み出すことができる。
すなわち、感圧スイッチング素子に圧力を加えると、半導体層のチャネル領域と積層される圧電体膜において圧電変換により電荷が発生する。そして、発生した電荷により、感圧スイッチング素子がオン状態になる。そのため、画素領域に信号が供給される。このようにして、選択スイッチング素子を介した信号の供給による通常の表示のほかに、感圧スイッチング素子を介した直接入力による下線やメモなどの別の表示を行うことができる。ここで、感圧スイッチング素子が圧力センサであるので、電源や特別な機能を有する専用のペンなどではなく加圧が可能な通常のペンなどを用いて直接入力を行うことができる。
このとき、画素領域自体が表示の保持性を有しているので、各画素領域の座標位置を常に検出する必要がない。そのため、座標位置を検出するためのプロセッサを別途設ける必要がなくなる。これにより、待機時においても表示状態を保持するための電力を必要とせず、低消費電力化が図れる。そして、感圧スイッチング素子が画素領域のそれぞれに対して設けられていると共にそれぞれ独立して機能しており、画素領域が表示の保持性を有していることから、表示画面の大画面化が容易である。
また、保持容量と選択スイッチング素子とによって1T1C型強誘電体不揮発メモリが構成される。そのため、感圧スイッチング素子または選択スイッチング素子を介して保持容量に蓄積された電荷量(分極の向き)を検出することにより、画素領域における表示状態をデータとして外部に読み出すことができる。
そして、感圧スイッチング素子が積層構造を有しており、外部から圧力を加えた際の可動部分が設けられていないので、例えば空隙を介して対向配置された一対の電極に対して圧力を入力することにより電極同士が接触する機械的なスイッチング素子と比較して、スイッチング素子として高い信頼性を得ることや長寿命化が図れる。つまり、例えば上述の構成を有する機械的なスイッチング素子では、繰り返しの使用により電極が変形することで電極同士が接触したまま離間せずに短絡状態となったり、電極同士が接触しない開放状態となったりすることがある。そこで、圧電変換を利用することにより、このような短絡状態や開放状態を抑制できる。また、積層構造であることにより、感圧スイッチング素子の製造が容易となる。
【0008】
また、本発明にかかる表示装置は、前記半導体層が、信号線と導通するソース領域を有することとしてもよい。
この発明では、感圧スイッチング素子がオン状態となったときに、信号が信号線からソース領域を介して画素領域に供給される。
【0009】
また、本発明にかかる表示装置は、前記選択スイッチング素子が、前記信号線に接続されることが好ましい。
この発明では、選択スイッチング素子から画素領域に供給する信号と感圧スイッチング素子から画素領域に供給する信号とをそれぞれ共通の信号線から供給することで、信号線の本数を削減でき、構造が容易になる。
【0010】
また、本発明にかかる表示装置は、前記選択スイッチング素子が、他の信号線に接続されることが好ましい。
この発明では、通常の表示を行うための駆動と、直接入力による駆動とをそれぞれ異なる表示特性となるように調整できる。また、直接入力を行う際、選択スイッチング素子が接続される他の信号線への電圧の印加を行わないことで、選択スイッチング素子を原因としたリーク電流の発生を抑制できる。同様に、通常の表示を行う際、感圧スイッチング素子が接続される信号線への電圧の印加を行わないことで、感圧スイッチング素子を原因としたリーク電流の発生を抑制できる。
【0011】
また、本発明にかかる表示装置は、前記圧電体膜と前記強誘電体膜とが、同一材料で構成されていることが好ましい。
この発明では、圧電体膜と強誘電体膜とを同一工程において形成でき、製造工程の簡略化が図れる。
【0012】
また、本発明にかかる表示装置は、前記圧電体膜と前記強誘電体膜とが、有機材料で構成されていることが好ましい。
この発明では、圧電体膜及び強誘電体膜を例えば液滴吐出法やスピンコート法などの液相法を用いて形成できるので、製造コストの削減が図れる。また、圧電体膜及び強誘電体膜を無機材料で形成することと比較して、低温プロセスを用いることができる。
【0013】
また、本発明にかかる表示装置は、前記選択スイッチング素子及び前記感圧スイッチング素子が、無機半導体を主体として構成されていることとしてもよい。
この発明では、選択スイッチング素子を構成する半導体層と感圧スイッチング素子を構成する半導体層とを同一工程において形成することができる。
【0014】
また、本発明にかかる表示装置は、電気泳動分散液を封入したマイクロカプセルと、該マイクロカプセルを挟持する一対の基板とを備えることとしてもよい。
この発明では、電気泳動分散液を封入したマイクロカプセルにより、表示の保持性を有する画素領域を形成する。
【0015】
また、本発明にかかる表示装置の製造方法は、複数の画素領域が平面状に配置されたアクティブマトリックス駆動の表示装置であって、前記画素領域への信号の供給をスイッチング制御する選択スイッチング素子を形成する工程と、外部からの圧力の入力に応じて前記画素領域への信号の供給をスイッチング制御する感圧スイッチング素子を形成する工程と、前記画素領域に供給される信号を保持する保持容量を形成する工程とを備え、前記感圧スイッチング素子を形成する工程が、チャネル領域を有する半導体層を形成する工程と、前記チャネル領域と積層される圧電体膜を形成する工程とを有し、前記保持容量を形成する工程が、一対の容量電極を形成する工程と、該一対の容量電極で挟持された強誘電体膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
この発明では、上述と同様に、通常の表示の上に別の表示を行うことができると共に、低消費電力化及び大画面化が図れる。また、画素領域の表示状態を外部から読み出すことができる。
【0016】
また、本発明にかかる表示装置の製造方法は、前記圧電体膜と前記強誘電体膜とが、同一材料で構成されていることが好ましい。
この発明では、上述と同様に、圧電体膜と強誘電体膜とを同一工程において形成でき、製造工程の簡略化が図れる。
【0017】
また、本発明にかかる電子ペーパーは、上記記載の表示装置を備えることを特徴とする。
この発明では、上述と同様に、通常の表示の上に別の表示を行うことができると共に、低消費電力化及び大画面化が図れる。また、画素領域の表示状態を外部から読み出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔電気泳動表示装置〕
以下、本発明における電気泳動表示装置の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。ここで、図1は電気泳動表示装置の概略断面図、図2は電気泳動表示装置の等価回路図、図3は電気泳動表示装置の画素領域を示す平面構成図、図4(a)は図3のA−A’矢視断面図、図4(b)は図3のB−B’矢視断面図である。
【0019】
最初に、本実施形態における電気泳動表示装置(表示装置)1の概略構成について説明する。
本実施形態における電気泳動表示装置1は、図1に示すように、アクティブマトリックス基板である第1基板(一方の基板)11と、第1基板11と対向配置された第2基板(他方の基板)12と、第1基板11及び第2基板12に挟持された電気泳動層13とを備えている。ここで、電気泳動表示装置1は、第2基板12の外面(電気泳動層13から離間する側)が表示面となっている。また、電気泳動表示装置1は、第2基板12の外面の全面を被覆する保護フィルム14を備えている。
また、電気泳動表示装置1には、電気泳動層13が形成された領域内に画像表示領域が設けられている。
【0020】
そして、電気泳動表示装置1の画像表示領域には、図2に示すように、複数の画素領域15がマトリックス状に配置されている。
複数の画素領域15のそれぞれには、画素電極21と、画素電極21をスイッチング制御するためのTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)素子(選択スイッチング素子)22とスイッチング素子(感圧スイッチング素子)23とが設けられている。また、画像表示領域には、複数のデータ線(信号線)25、走査線26、分極処理線27及び容量線28が格子状に配置されている。
【0021】
TFT素子22は、ソースがデータ線25に接続され、ゲートが走査線26に接続され、ドレインが画素電極21に接続されている。また、スイッチング素子23は、TFT素子22と同様の構成を有しており、ソースがデータ線25に接続され、ゲートが分極処理線27に接続され、ドレインが画素電極21に接続されている。そして、保持容量24は、画素電極21と共通電極29との間に形成される容量成分と並列接続するように付与されており、画像信号及び直接入力による信号を保持する構成となっている。
データ線25は、画像表示領域の外部に設けられた駆動回路(図示略)から供給される画像信号を各画素領域15に供給する構成となっている。また、走査線26は、駆動回路から供給される走査信号を画素領域15に供給する構成となっている。そして、容量線28は、各画素領域15に設けられた保持容量24を接続している。さらに、分極処理線27は、各画素領域15に設けられたスイッチング素子23のゲートを接続している。
【0022】
次に、電気泳動表示装置1の詳細な構成について、図3及び図4を参照しながら説明する。なお、図3及び図4は、画素領域15の構成の一例を示すものであって、設計に応じて各部材の配置を適宜変更してもよい。ここで、図3では、第2基板12の図示を省略している。また、図2において、平面視でほぼ矩形状の画素領域15の一辺に沿う方向をX軸方向、これと直交する他の一辺に沿う方向をY軸方向とする。
第1基板11は、基板本体31と、基板本体31の内側(電気泳動層13側)の表面に順次積層されたゲート絶縁膜32、層間絶縁膜33、圧電強誘電体膜(圧電体膜、強誘電体膜)34及び保護膜35とを備えている。また、第1基板11は、基板本体31の内側の表面に配置された半導体層41、42と、ゲート絶縁膜32の内側の表面に配置された走査線26と、層間絶縁膜33の内側の表面に配置されたデータ線25、接続電極43及び容量電極(一方の容量電極)44と、圧電強誘電体膜34の内側の表面に配置された分極処理線27及び容量線28と、保護膜35の内側の表面に配置された画素電極21とを備えている。
【0023】
基板本体31は、例えばガラスや石英などのようにポリシリコンなどの向き半導体を形成する際のプロセスダメージに対して耐性を有する材料で構成されている。
ゲート絶縁膜32は、例えばSiO(二酸化シリコン)などの絶縁材料で構成されており、基板本体31上に形成された半導体層41、42を覆うように設けられている。
層間絶縁膜33は、例えばSiNx(窒化シリコン)などの絶縁材料で構成されており、ゲート絶縁膜32及びゲート絶縁膜32上に形成された走査線26を覆うように設けられている。
【0024】
圧電強誘電体膜34は、例えばフッ化ビニリデン(VDF)と三フッ化エチレン(TrFE)との共重合体(誘電率が例えば6〜13、圧電定数が例えば0.32〜0.38Vm/N)などの圧電効果を有する有機材料からなる強誘電体で構成されている。そして、圧電強誘電体膜34は、層間絶縁膜33上に形成されたデータ線25、接続電極43及び容量電極44を覆うように設けられている。また、圧電強誘電体膜34は、ゲート絶縁膜32及び層間絶縁膜33を貫通するコンタクトホールH1を介して半導体層42の後述するチャネル領域42aを被覆している。
保護膜35は、例えばアクリルなどで構成されており、圧電強誘電体膜34上に形成された分極処理線27及び容量線28を覆うように設けられている。
【0025】
半導体層41は、図3及び図4に示すように、平面視でゲート絶縁膜32を介して走査線26と重なる領域を含んで形成され、ポリシリコンなどの無機半導体で構成されている。そして、半導体層41には、平面視でゲート絶縁膜32を介して走査線26と重なる領域にチャネル領域41aが設けられている。さらに、半導体層41には、ポリシリコンに不純物イオンを打ち込むことによって形成されたソース領域41b及びドレイン領域41cが設けられている。この半導体層41を主体として、TFT素子22が構成される。
なお、TFT素子22としては、半導体層41のソース領域41b及びドレイン領域41cにそれぞれ不純物濃度が相対的に高い高濃度領域と相対的に低い低濃度(LDD:Lightly Doped Drain)領域とを形成したLDD構造を採用してもよい。
【0026】
半導体層42は、半導体層41と同様に、平面視でゲート絶縁膜32を介して分極処理線27と重なる領域を含んで形成され、ポリシリコンなどの無機半導体で構成されている。そして、半導体層42には、平面視で圧電強誘電体膜34を介して分極処理線27と重なる領域にチャネル領域42aが設けられている。さらに、半導体層42には、ポリシリコンに不純物イオンを打ち込むことによって形成されたソース領域(一方のドープ領域)42b及びドレイン領域(他方のドープ領域)42cが設けられている。この半導体層42及び圧電強誘電体膜34を主体として、スイッチング素子23が構成される。
なお、スイッチング素子23としては、TFT素子22と同様に、LDD構造を採用してもよい。
【0027】
走査線26は、平面視で矩形状の画素領域15の一辺方向(Y軸方向)に沿って配置されており、例えばAl(アルミニウム)などの金属材料で構成されている。また、走査線26には、平面視でゲート絶縁膜32を介してチャネル領域41aと重なってゲート電極として機能する分岐部26aが設けられている。
【0028】
データ線25は、平面視で画素領域15の他の一辺方向(X軸方向)に沿って配置されており、例えばAl/Cu(銅)などの金属材料で構成されている。また、データ線25には、平面視でゲート絶縁膜32及び層間絶縁膜33を介して半導体層41のソース領域41bと重なる分岐部25aと、半導体層42のソース領域42bと重なる分岐部25bとが設けられている。そして、分岐部25aは、ゲート絶縁膜32及び層間絶縁膜33を貫通するコンタクトホールH2を介して半導体層41のソース領域41bに接続されている。さらに、分岐部25bは、ゲート絶縁膜32及び層間絶縁膜33を貫通するコンタクトホールH3を介して半導体層42のソース領域42bに接続されている。
【0029】
接続電極43は、データ線25と同一材料である例えばAl/Cuなどの金属材料で構成されている。そして、接続電極43は、ゲート絶縁膜32及び層間絶縁膜33を貫通するコンタクトホールH4を介して半導体層41のドレイン領域41cに接続されると共に、ゲート絶縁膜32及び層間絶縁膜33を貫通するコンタクトホールH5を介して半導体層42のドレイン領域42cに接続されている。
容量電極44は、データ線25及び接続電極43と同一材料である例えばAl/Cuなどの金属材料で構成されている。そして、容量電極44は、接続電極43と一体的に形成されており、圧電強誘電体膜34を介して容量線28の後述する分岐部28aと重なっている。
【0030】
分極処理線27は、平面視で画素領域15の一辺方向(Y軸方向)に沿って配置されており、例えばAg(銀)などの金属材料で構成されている。また、分極処理線27には、平面視で圧電強誘電体膜34を介して半導体層42のチャネル領域42aと重なってゲート電極として機能する分岐部27aが設けられている。そして、分極処理線27は、電圧を印加することにより、各画素領域15におけるスイッチング素子23を構成する圧電強誘電体膜34の分極処理を行う構成となっている。
容量線28は、平面視で画素領域15のY軸方向に沿って配置されており、分極処理線27と同一材料で構成されている。また、容量線28には、平面視で圧電強誘電体膜34を介して容量電極44と重なる分岐部(他方の容量電極)28aが設けられている。そして、これら容量電極44、圧電強誘電体膜34及び分岐部28aによって保持容量24が構成される。
なお、分極処理線27及び容量線28は、圧電強誘電体膜34と直接接触しているため、この圧電強誘電体膜34にプロセスダメージを与えない方法で成膜することが望ましい。すなわち、分極処理線27及び容量線28は、メッキ法やインクジェット法、スピンコート法などの液相成膜を用いて形成されることが好ましく、材料としてAgやNiなどの金属材料やポリアニリンなどの電子導電性高分子を用いることが好ましい。
【0031】
画素電極21は、例えばCuなどの金属材料で構成されており、平面視でほぼ矩形状を有している。なお、画素電極21としては、AlやAu(金)、Ag、Pt(白金)、Ni(ニッケル)、Sn(スズ)などの金属やこれらの合金のほか、ITO(インジウムスズ酸化物)などの導電性酸化物類や、ポリアニリンなどの電子導電性高分子類、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂などのマトリックス樹脂中にNaCl、LiClO、KClなどのイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子類を用いてもよい。
また、画素電極21は、圧電強誘電体膜34及び保護膜35を貫通するコンタクトホールH6を介して接続電極43と接続されている。これにより、画素電極21と半導体層41のドレイン領域41c及び半導体層42のドレイン領域42cとが導通する。
【0032】
一方、第2基板12は、図4に示すように、基板本体50と、基板本体50の電気泳動層13側の表面に積層された共通電極29とを備えている。
基板本体50は、例えば透明ガラスや樹脂フィルムなどの透光性を有する可撓性材料で構成されている。ここで、基板本体50としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)を用いることができる。
共通電極29は、例えばITOなどの透光性導電材料で構成されている。なお、共通電極29としては、他の導電性酸化物類やポリアニリンなどの電子導電性高分子類、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂などのマトリックス樹脂中にNaCl、LiClO、KClなどのイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子類などが用いられる。
【0033】
電気泳動層13は、多数のマイクロカプセル51が密に配置された構成となっている。マイクロカプセル51は、電気泳動粒子52とこれを分散させる液相分散媒53とからなる電気泳動分散液54を封入したもので、すべてがほぼ同一の直径に形成されている。ここで、マイクロカプセル51の直径は、例えば50μmとなっている。電気泳動分散液54は、電界を印加することにより、電気泳動粒子52の分布状態が変化し、電気泳動分散液54の光学特性が変化するものである。
【0034】
ここで、電気泳動粒子52は、液相分散媒53中で電位差による電気泳動により移動する性質を有する有機あるいは無機の粒子(高分子あるいはコロイド)である。そして、電気泳動粒子52としては、例えば、アニリンブラックやカーボンブラック、チタンブラックなどの黒色顔料、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモンなどの白色顔料、モノアゾ、ジイスアゾン、ポリアゾなどのアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモンなどの黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾなどのアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオンなどの赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、アントラキノン系染料、紺青、群青、コバルトブルーなどの青色顔料、フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などの1種または2種以上を用いることができる。また、これらの顔料には、必要に応じて、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤などの分散剤、潤滑剤、安定化剤などを添加してもよい。
なお、電気泳動粒子52としては、正に帯電している黒色顔料であるカーボンブラックと、負に帯電している白色顔料である二酸化チタンとの2種類を用いている。
【0035】
また、液相分散媒53としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブなどのアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの各種エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ペンタン、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサンなどの脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンなどの長鎖アルキル基を有するベンゼン類などの芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、カルボン酸塩またはその他の種々の油類などの単独、またはこれらの混合物に界面活性剤などを配合したものを用いてもよい。
そして、マイクロカプセル51の壁膜を形成する材料としては、アラビアゴム・ゼラチンの複合膜、ウレタン樹脂、メラニン樹脂、尿素樹脂などの化合物が用いられる。
【0036】
また、マイクロカプセル51は、第1及び第2基板11、12に対してバインダ(図示略)により固定されている。ここで、バインダは、マイクロカプセル51の壁膜に対する親和性が良好で、共通電極29に対する密着性に優れ、かつ絶縁性を有するものが用いられている。そして、バインダに用いられるバインダ材としては、例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリプロピレン、ABS樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール−塩化ビニル共重合体、プロピレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、セルロース系樹脂などの熱可塑性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリレート、グラフト化ポリフィニレンエーテル、ポリエーテルエテルケトン、ポリエーテルイミドなどの高分子、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化エチレンプロピレン、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化塩化エチレン、フッ素ゴムなどのフッ素系樹脂、シリコン樹脂、シリコンゴムなどの珪素樹脂、その他として、メタクリル酸−スチレン共重合体、ポリブチレン、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体などが用いられる。
【0037】
〔電気泳動表示装置の製造方法〕
次に、以上のような構成の電気泳動表示装置1の製造方法について、図5及び図6を参照しながら説明する。ここで、図5及び図6は、第1基板11の製造工程を示す工程図である。
まず、基板本体31上に半導体層41、42を形成する。ここでは、最初にPECVD(Plasma Enhancement Chemical Vapor Deposition:プラズマCVD)法などを用いてアモルファスシリコンからなる非晶質半導体層を堆積する。そして、例えばXeCl(キセノンクロライド)のエキシマレーザなど照射して非晶質半導体層を結晶化させて、多結晶半導体層を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングし、半導体層41、42を形成する(図5(a))。
【0038】
次に、半導体層41、42及び基板本体31を被覆するゲート絶縁膜32を形成する。ここでは、CVD法などを用いてゲート絶縁膜32を形成する。
続いて、ゲート絶縁膜32上に走査線26を形成する。ここでは、ゲート絶縁膜32上にスパッタ法などを用いて走査線26を構成する金属膜を形成し、フォトリソグラフィ技術などを用いてこの金属膜をパターニングする。これにより、走査線26が形成される。
そして、半導体層41、42に高濃度の不純物イオンを注入する。ここでは、半導体層42のうちチャネル領域42aとなる領域を被覆するレジスト層(図示略)を形成する。その後、レジスト層の開口領域に高濃度の不純物イオン(リンイオン)を注入する。このとき、レジスト層及び走査線26がマスクとして機能する。その後、レジスト層を除去する。これにより、ソース領域41b、42b及びドレイン領域41c、42cが形成される(図5(b))。
【0039】
次に、ゲート絶縁膜32上に走査線26を被覆する層間絶縁膜33を形成する。ここでは、CVD法などを用いて層間絶縁膜33を形成する。そして、ゲート絶縁膜32及び層間絶縁膜33を貫通するコンタクトホールH1〜H5を形成する。このとき、コンタクトホールH1により、半導体層42のチャネル領域42aが露出する。
続いて、層間絶縁膜33上にデータ線25、接続電極43及び容量電極44を形成する。ここでは、層間絶縁膜33上にスパッタ法などを用いてデータ線25や接続電極43、容量電極44を構成する金属膜を形成し、フォトリソグラフィ技術などを用いてこの金属膜をパターニングする。これにより、データ線25、接続電極43及び容量電極44が形成される(図5(c))。このとき、データ線25の分岐部25aがコンタクトホールH2を介してソース領域41bに接続され、分岐部25bがコンタクトホールH3を介してソース領域42bに接続され、接続電極43がコンタクトホールH4を介してドレイン領域41cに接続されると共にコンタクトホールH5を介してドレイン領域42cに接続される。
【0040】
次に、データ線25、接続電極43及び容量電極44と層間絶縁膜33とを被覆する圧電強誘電体膜34を形成する。ここでは、圧電強誘電体膜34を構成する有機材料を溶媒中に分散または溶解させた液状体をスピンコート法やインクジェット法、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition:液体ミスト化学体積)法やスピンコート法などを用いて塗布し、溶媒を除去する。また、必要に応じて低温加熱処理(例えば140℃程度)を施す。ここで、LSMCD法は、粒径の整ったミストを作り出し、常温下で均一な膜を形成するものである。これにより、圧電強誘電体膜34が形成される(図6(a))。
続いて、圧電強誘電体膜34上に分極処理線27及び容量線28を形成する。ここでは、分極処理線27や容量線28を構成する金属膜を無電解メッキ法などの液相法を用いて形成し、フォトリソグラフィ技術やウェットエッチング法を用いてこれをパターニングする。これにより、分極処理線27及び容量線28が形成される(図6(b))。
【0041】
次に、分極処理線27及び容量線28と圧電強誘電体膜34を被覆する保護膜35を形成する。ここでは、保護膜35を構成するアクリルを溶媒中に分散または溶解させた液状体をスピンコート法などを用いて塗布し、溶媒を除去する。これにより、保護膜35が形成される(図6(c))。そして、圧電強誘電体膜34及び保護膜35を貫通するコンタクトホールH6を形成する。
続いて、保護膜35上に画素電極21を形成する。ここでは、画素電極21を構成する導電材料を無電解メッキ法などの液相法を用いて形成し、フォトリソグラフィ技術やウェットエッチング法を用いてこれをパターニングする。これにより、画素電極21が形成される。なお、他の方法を用いて画素電極21を形成してもよい。このとき、画素電極21がコンタクトホールH6を介して接続電極43に接続される(図4参照)。以上のようにして、第1基板11を製造する。
【0042】
その後、第1基板11と第2基板12との間にバインダを用いてマイクロカプセル51を固着し、電気泳動層13を形成する。以上のようにして、図1から図4に示すような電気泳動表示装置1を製造する。
【0043】
〔電気泳動表示装置の動作〕
次に、以上のような構成の電気泳動表示装置1の動作について簡単に説明する。
まず、通常の画像表示方法について説明する。画像表示領域の外部に設けられた駆動回路により走査線26から走査信号を入力すると、TFT素子22が一定期間だけオン状態となる。そして、オン状態となったTFT素子22に画像信号が入力されることで、画素電極21に画像信号が書き込まれる。書き込まれた画像信号は、画素電極21と共通電極29との間で保持される。そのため、例えば画素電極21が正、共通電極29が負となるような画像信号を入力すると、画素電極21と共通電極29との間に配置された電気泳動層13を構成して正に帯電している黒色の電気泳動粒子52が共通電極29に移動する。これにより、画素領域15の黒表示が行われる。以上のようにして、通常の画像表示を行う。
このとき、電気泳動層13が表示の保持性を有しているため、画素領域15の表示状態は保持される。したがって、一度所望の表示を行えば他の表示を行うまで電力を供給する必要がなく、再び信号が供給されるまで表示状態が保持される。また、画素電極21に入力された画像信号は、保持容量24で保持される。なお、画素電極21と共通電極29との間に逆の電圧、すなわち画素電極21が負、共通電極29が正となるような信号を入力することで、画像の表示状態を初期状態に戻すことができる。
【0044】
次に、通常の画像表示のほかに下線やメモなどの直接入力による他の画像表示方法について説明する。第2基板12側から例えばペンなどにより画素領域15に圧力を加えると、圧電強誘電体膜34に圧電変換による電荷が発生する。これにより、スイッチング素子23が一定期間だけオン状態となる。そして、オン状態となったスイッチング素子23にデータ線25から信号が入力されることで、上述と同様に、画素電極21に信号が書き込まれる。これにより、上述と同様に、圧力が加えられた画素領域15の黒表示が行われる。以上のようにして、直接入力による他の画像表示を行う。
このとき、スイッチング素子23に対して適当な圧力を加えることができればよいため、電源や特別な機能を有する専用のペンなどを用いる必要がない。また、上述と同様に、一度所望の表示を行えば他の表示を行うまで電力を供給する必要がなく、再び信号が供給されるまで表示状態が保持される。また、上述と同様に、画素電極21に入力された信号は、保持容量24でも保持される。なお、画素電極21と共通電極29との間に逆の電圧となるような信号を入力することで、画像の表示状態を初期状態に戻すことができる。
【0045】
続いて、画素領域15の画像の読み取り方法について説明する。容量線28からパルス信号である読出信号を保持容量24に向けて入力すると、入力した信号は、保持容量24及びTFT素子22を経てデータ線25から外部に出力される。このとき、読出信号の入力に合わせて走査線26からTFT素子22に走査信号を入力することで、読出信号を入力した画素領域15に設けられたTFT素子22をオン状態とする。ここで、保持容量24で保持されている分極の向きに応じて、出力される読出信号の強度が変化する。以上のようにして、画素領域15の表示状態を外部から読み出す。
【0046】
〔電子ペーパー〕
以上のような構成の電気泳動表示装置1は、例えば図7に示すような電子ペーパー100の表示部101として用いられる。電子ペーパー100は、表示部101と、本体部102と、操作部103とを備えている。
電子ペーパー100は、本体部102に設けられた記録部(図示略)に記録されているデータなどを表示部101に表示すると共に、当該データが表示された状態で、ペン104により所望の内容を加筆することができる、いわゆる「電子お絵かきボード」である。また、操作部103には、表示部101に表示された画像を全消去するオールクリアボタンや上述した部分消去ボタンが設けられている。
このような電子ペーパー100は、営業マンが少人数の商談において商品説明をする際に用いるのに好適であり、例えば商品のカタログが表示されている状態で、商品のアピールポイントを強調しながら説明することができる。
【0047】
また、電気泳動表示装置1は、例えば図8に示すような電子ペーパー110の表示部111として用いてもよい。電子ペーパー110は、基板本体31が可撓性材料で構成されていると共に、基板本体31と同様の可撓性を有する本体部112と、複数のメンブレンスイッチで構成された操作部113とを備えている。なお、素子基板31をポリオレフィン系樹脂フィルムなどの可撓性材料で構成するためには、例えば本出願人による特開平10−125929や、特開平10−125931などに記載されている技術を好適に用いることができる。
操作部113には、上述したオールクリアボタンや部分消去ボタンなどが含まれており、このボタン部分をペン114や、指で押すことにより希望する機能を実現することができる。また、複数のボタンは、スイッチング素子23と同様の構成としてもよい。この場合、表示部111の外周部に上述と同様のプロセスにより、必用な数量のスイッチング素子23を形成する。
電子ペーパー110の態様は、紙に近いものであり、例えば1mm以下の厚さに構成することができる。このため、軽量で持ち易く、例えば薄手のペーパフォルダによって持ち歩き、必要な場面で取り出し、その場で要点をマーキングしながら説明するなど、使い勝手に優れている。
【0048】
以上のように、本実施形態における電気泳動表示装置1及び電気泳動表示装置1の製造方法並びに電子ペーパー100によれば、TFT素子22を介した通常の画像表示のほかに、スイッチング素子23による直接入力による画像表示が行える。また、画素領域15を構成する電気泳動層13が表示の保持性を有しているので、低消費電力化及び大画面化が図れる。そして、保持容量24に画像信号や直接入力による信号に応じた電荷量が蓄積されるので、画素領域15の表示状態を外部に出力できる。
【0049】
また、スイッチング素子23が圧力センサであるので、電源などを必要としない通常のペンなどを用いた直接入力が可能となる。このとき、スイッチング素子23が半導体層42と圧電強誘電体膜34とを積層した構成となっており、外部からの圧力を加えた際の可動部分が設けられていないので、スイッチング素子23の信頼性が向上する。
そして、TFT素子22とスイッチング素子23とを共通のデータ線25に接続しているので、構成の簡略化が図れる。
さらに、スイッチング素子23を構成する圧電体膜と保持容量24を構成する強誘電体膜として圧電強誘電体膜34を用いることで、同一工程で形成することができる。また、圧電強誘電体膜34を有機材料で構成することで、安価な液相法を適用できて製造コストの削減が図れると共に、無機材料で構成することと比較して低温プロセスを用いることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、スイッチング素子は、基板本体側から順に半導体層と圧電強誘電体膜とを積層した構成となっているが、基板本体側から順に圧電強誘電体膜と半導体層とを積層した構成としてもよい。
また、各画素領域において、TFT素子とスイッチング素子とが共通のデータ線に接続されているが、TFT素子とスイッチング素子とをそれぞれ異なるデータ線(信号線)に接続してもよい。これにより、通常の表示を行うための駆動と直接入力による駆動とをそれぞれ異なる表示特性とすることができる。例えば、スイッチング素子に接続されるデータ線に印加する電圧を他方のデータ線と比較して低くし、スイッチング素子をオン状態としたときに蓄積される電荷量を少なくすることで、より容易に濃淡の表現を行うことができる。また、直接入力を行う際、TFT素子に接続されるデータ線への電圧の印加を行わないことで、TFT素子を原因としたリーク電流の発生を抑制できる。同様に、通常の表示を行う際、スイッチング素子に接続されるデータ線への電圧の印加を行わないことで、スイッチング素子を原因としたリーク電流の発生を抑制できる。
【0051】
また、圧電強誘電体膜が層間絶縁膜を被覆するように設けられているが、少なくともスイッチング素子を構成する半導体層のチャネル領域と保持容量を構成する容量電極とを被覆するように設けられていればよいため、液滴吐出法などを用いて所望の領域にのみ部分的に形成してもよい。このように圧電強誘電体膜をスイッチング素子及び保持容量と対応する領域にのみ形成することで、他の領域に寄生容量成分が形成されることを防止できる。
そして、スイッチング素子を構成する圧電体膜と保持容量を構成する強誘電体膜とを同一材料としているが、それぞれ異なる材料を用いてもよい。ここで、圧電体膜と強誘電体膜とをそれぞれ異なる層上に形成してもよい。
また、各画素領域において、スイッチング素子を接続すると共に圧電強誘電体膜の分極処理を行う分極処理線が設けられているが、分極処理線を設けなくてもよい。
【0052】
また、選択スイッチング素子としてTFT素子を用いているが、画素電極をスイッチング制御する素子であれば、TFD(Thin Film Diode:薄膜ダイオード)など他の素子であってもよい。
【0053】
また、電気泳動層は、黒色と白色との2種類の電気泳動粒子を用いているが、黒色の電気泳動粒子を用いると共に白色の液相分散媒を用いた構成としてもよく、マイクロカプセルを用いずに、第1及び第2基板の間に電気泳動粒子と液相分散媒とを封止した構成としてもよい。
そして、表示装置として電気泳動層を有する電気泳動表示装置としているが、画素領域において表示の保持性があればよく、例えばコレステリック液晶を用いた液晶素子からなる表示装置や、酸化還元反応を用いたエレクトロクロミック素子からなる表示装置、異なる二つの色を有する粒子を反転させることで表示を行う素子からなる表示装置など、他の表示装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】一実施形態の電気泳動表示装置を示す概略断面図である。
【図2】図1の等価回路図である。
【図3】画素領域を示す平面構成図である。
【図4】図3のA−A’矢視断面図及びB−B’矢視断面図である。
【図5】第1基板の製造工程を示す工程図である。
【図6】同じく、第1基板の製造工程を示す工程図である。
【図7】電気泳動表示装置を有する電子ペーパーを示す斜視図である。
【図8】電気泳動表示装置を有する他の電子ペーパーを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 電気泳動表示装置(表示装置)、11 第1基板(一方の基板)、12 第2基板(他方の基板)、15 画素領域、22 TFT素子(選択スイッチング素子)、23 スイッチング素子(感圧スイッチング素子)、24 保持容量、25 データ線(信号線)、28a 分岐部(他方の容量電極)、34 圧電強誘電体膜(圧電体膜、強誘電体膜)、42 半導体層、42a チャネル領域、42b ソース領域、44 容量電極(一方の容量電極)、51 マイクロカプセル、54 電気泳動分散液、100,110 電子ペーパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素領域が平面状に配置されたアクティブマトリックス駆動の表示装置であって、
前記複数の画素領域のそれぞれに、該画素領域への信号の供給をスイッチング制御する選択スイッチング素子と、外部からの圧力の入力に応じて前記画素領域への信号の供給をスイッチング制御する感圧スイッチング素子と、前記画素領域に供給された信号を保持する保持容量とが設けられ、
前記感圧スイッチング素子が、チャネル領域を有する半導体層と、該チャネル領域と積層される圧電体膜とを有し、
前記保持容量が、一対の容量電極と、該一対の容量電極で挟持された強誘電体膜とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記半導体層が、信号線と導通するソース領域を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記選択スイッチング素子が、前記信号線に接続されることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記選択スイッチング素子が、他の信号線に接続されることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記圧電体膜と前記強誘電体膜とが、同一材料で構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記圧電体膜と前記強誘電体膜とが、有機材料で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記選択スイッチング素子及び前記感圧スイッチング素子が、無機半導体を主体として構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
電気泳動分散液を封入したマイクロカプセルと、該マイクロカプセルを挟持する一対の基板とを備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
複数の画素領域が平面状に配置されたアクティブマトリックス駆動の表示装置であって、
前記画素領域への信号の供給をスイッチング制御する選択スイッチング素子を形成する工程と、
外部からの圧力の入力に応じて前記画素領域への信号の供給をスイッチング制御する感圧スイッチング素子を形成する工程と、
前記画素領域に供給される信号を保持する保持容量を形成する工程とを備え、
前記感圧スイッチング素子を形成する工程が、チャネル領域を有する半導体層を形成する工程と、前記チャネル領域と積層される圧電体膜を形成する工程とを有し、
前記保持容量を形成する工程が、一対の容量電極を形成する工程と、該一対の容量電極で挟持された強誘電体膜を形成する工程とを有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記圧電体膜と前記強誘電体膜とが、同一材料で構成されていることを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子ペーパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−176196(P2008−176196A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11379(P2007−11379)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】