表示装置
【課題】本発明の課題は、表示部が巻取り収容および引き出し可能な表示装置を提供することである。
【解決手段】表示部および該表示部を駆動するための回路部を備え、該表示部はフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板上に一対の電極、および該電極間に少なくとも1層の表示要素を挟持した表示素子を有し、所定の方向に巻取り収容および引き出し可能である表示装置であって、前記電極の一方は金属電極であり、前記電極の他方は金属酸化物よりなるストライプ状電極であり、該ストライプの長辺を該表示装置の巻取り方向に対して直角方向に配置して有することを特徴とする。
【解決手段】表示部および該表示部を駆動するための回路部を備え、該表示部はフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板上に一対の電極、および該電極間に少なくとも1層の表示要素を挟持した表示素子を有し、所定の方向に巻取り収容および引き出し可能である表示装置であって、前記電極の一方は金属電極であり、前記電極の他方は金属酸化物よりなるストライプ状電極であり、該ストライプの長辺を該表示装置の巻取り方向に対して直角方向に配置して有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部が巻取り収容および引き出し可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データー処理装置やテレビ等の表示装置は、陰極線管が主流であった。その後、省スペース化を目的とした平面表示装置には、例えばプラズマ表示素子、液晶表示素子、エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子と呼ぶ。)等が用いられるようになった。しかし、これらの表示装置は、ガラス等のフレキシブル性を有しない基板上に形成されているため、表示装置の容積を小さくして移動、および携帯することが困難であった。また、このようなガラス基板を用いた表示素子では、落下等の衝撃によって破損しやすく、取り扱いに注意が必要であった。さらに、表示装置の大画面化にともない、装置重量が増加する傾向にあった。
【0003】
近年、表示素子を収容して移動および携帯を容易にするためのフレキシブル性を有する表示装置が、いくつか提案されている。例えば、ロールスクリーン状に表示素子を巻き取り可能な表示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、円筒形の収容器に表示素子を巻取り収容可能な表示装置も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。これら表示装置は、プラスティック等のフレキシブル性を有する基板上にEL素子を形成し、巻取り収容可能な構造を有している。
【特許文献1】特開2002−15858号公報
【特許文献2】特開2002−328625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フレキシブル基板を用いた表示素子では、巻取り収容および引き出しで加わる曲げ応力により表示素子が破損してしまうという、ガラス基板では起こらなかった新たな問題が発生してしまうことがわかった。特に、巻取り方向に延在するストライプ電極は、大きな曲げ応力を受けるため破損しやすく、巻取り収容および引き出しを繰り返すことで画像を表示できなくなるという問題があった。
【0005】
本発明では、巻取り収容および引き出しを繰り返した場合でも表示素子の破損が起こらない表示装置を提供することを目的とする。それによって、画面の大型化と表示装置の小型化、軽量化を両立した表示装置を提供するとともに、落下等による衝撃にも強い表示装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決された。
【0007】
<1> 表示部および該表示部を駆動するための回路部を備え、該表示部はフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板上に一対の電極、および該電極間に少なくとも1層の表示要素を挟持した表示素子を有し、所定の方向に巻取り収容および引き出し可能である表示装置であって、前記電極の一方は金属電極であり、前記電極の他方は金属酸化物よりなるストライプ状電極であり、該ストライプの長辺を該表示装置の巻取り方向に対して直角方向に配置して有することを特徴とする表示装置。
<2> 前記表示装置は、前記表示部と前記回路部とを収容するための収容部をさらに有することを特徴とする<1>に記載の表示装置。
<3> 前記表示装置は、前記収容部に前記表示部を出し入れするための開口部をさらに有し、該開口部は前記表示部を湾曲保持するため円弧形状を有することを特徴とする<2>に記載の表示装置。
<4> 前記表示装置は、前記表示部を巻取りするための巻取り部をさらに有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の表示装置。
<5> 前記回路部は、前記巻取り部の内部に配置されていることを特徴とする<3>又は<4>に記載の表示装置。
<6> 前記表示素子は、印加された電界により発光、又は変化する光学特性を有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の表示装置。
<7> 前記表示素子は、発光素子であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の表示装置。
<8> 前記表示素子は、有機EL素子であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載の表示装置。
【0008】
本発明の表示装置は、表示部および該表示部を駆動するための回路部を備え、該表示部はフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板上に一対の電極、および該電極間に少なくとも1層の表示要素を挟持した表示素子を有し、所定の方向に巻取り収容および引き出し可能である表示装置であって、前記電極の一方は金属電極(以後、第1電極と称することがある。)であり、前記電極の他方は金属酸化物よりなるストライプ状電極(以後、第2電極と称することがある。)であり、該ストライプの長辺を該表示装置の巻取り方向に対して直角方向に配置して有することを特徴とするものである。この構成によれば、曲げ強度の弱い材料からなる第2電極は、巻取り収容および引き出される際に、曲げ応力がほとんどかからないため破損することがなく、長期に安定した表示を可能にする。
ここで、前記巻取り方向と前記ストライプ状電極の長辺のなす角度が、厳密に90°である必要はなく、90°からある程度傾いても同様の効果が得られる。また、任意に電極を傾けて、画素をデルタ配列とすることも可能である。したがって、本発明の直角方向とは、90°±30°の範囲を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表示装置によれば、繰り返し巻取り収容および引き出しによる表示素子の電極破損が防止され、それによって長期に安定した画像の表示が可能となる。また、このような巻取り収容および引き出し可能な表示装置は、大画面表示に好適に用いることができるとともに、表示素子の収容により保管場所の省スペース化を向上することができる。さらに、フレキシブル基板を用いることにより、表示装置の軽量化が計れ、携帯性を向上するとともに、落下等の衝撃による表示素子の破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ここでは、表示素子として有機ELを備えた表示装置を例に用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明を適用した有機EL表示装置の構成を示した概略斜視図であって、表示部が引き出された使用状態を示している。そして、図2は、図1の有機EL表示装置の表示部を収容した状態を示している。有機EL表示装置1は、表示部2と、表示部2の一側端部に配置され、表示部2の駆動制御を行う駆動回路、有機EL表示装置1全体に電源を供給する電源回路、表示信号を受信する信号処理回路等が収容された回路部3と、回路部3のまわりに配置され、表示部2を収容する収容部4とを備えて構成されている。ここで、回路部3は、円筒状で、表示部2を巻き取る巻取り部を兼ねている。収容部4は、収容部本体4aと、収容部蓋4bを備え、表示部2と回路部3を収容部本体に収容したのち、収容部蓋4bを閉じることで収容部4が密閉されている。
有機EL表示装置1は、図1の状態が動作状態であり表示部2に情報を表示することが出来る。使用しない状態あるいは携帯時には、図2の状態に巻き取り収容して行う。その後使用する場合、再び、表示部2を引き出して図1の状態にする。本有機EL表示装置1は、このように図1の作動状態と図2の不作動の収容状態とを反復する。
【0012】
図3は、表示部2と回路部3の構成を示した要部斜視図である。回路部3は、回路収容部本体3aと回路収容部蓋3bに分割されるよう構成されている。回路収容部本体3aには、表示部2の一側端部に配置された駆動回路7、電源回路(図示せず)、信号処理回路(図示せず)等が収容されており、回路収容部蓋3bをかぶせることで回路部3が密閉される。また、回路部3の回転中心には、回転軸6が備えられ、収容部4の軸受け部(図示せず)に回転自在に係合されている。ここで、回転軸6近傍には、回路部3に収容された回路から信号や電源を入出力するためのロータリーコネクターを備えても良い。これによって、回路部3から電源回路等を外に出すことが可能となり回路部3の体積を小さくし設計の自由度を向上でき、また、外部から充電することができるため好ましい。さらに、回転軸6と収容部4の間に、渦巻きバネやクラッチ等を備えても良い。これによって、引き出された表示部2を自動的に収容部4に収容したり、表示部2を必要量引き出すことが可能となるため好ましい。
【0013】
図4は、表示部2と回路部3の電気接続状態を示す平面図である。表示部2は、透明のフィルム状プラスティック基板上に有機EL素子が複数形成されて構成された画素部10と、各有機EL素子20を駆動するために各有機EL素子20と各駆動回路7とを電気接続し、縦配線11と横配線12とからなる配線13が配置された配線部16とを備えている。ここでは、説明の便宜上、回路部3と対向した辺を第1の辺14、第1の辺14と直交した辺を第2の辺15と呼ぶこととする。
【0014】
画素部10は、有機EL素子20をマトリックス状に複数配列することにより形成されている。図5に有機EL素子の構成を示す要部斜視図を、また、図6に要部縦断面図を示す。画素部10は、透明基板であるフィルム状プラスティック21上にストライプ状(帯状)に透明電極である陽極22が複数設けられ、その上に正孔輸送層23、発光層24、および電子輸送層25とが積層されてなるシート状の有機EL層28が設けられている。そして、さらに陽極22と直交するようにしてストライプ状の陰極26が複数設けられ、その上に保護層27が設けられて構成されたもので、透明電極である陽極22と陰極26とが交差する位置に有機EL素子20が形成されている。ここで、画素部10は、陽極22と直交するX方向に巻取り収容される。これによって、陽極22には、巻取り収容において曲げ応力が加わらない構成とすることができる。
【0015】
フィルム状プラスティック基板21は、有機EL素子20の支持体となるものであり、このフィルム状プラスティック基板21上に有機EL素子20を構成する各層が形成される。有機EL素子20のフィルム状プラスティック基板に対向する面上に、有機EL素子をさらに保護する目的で、プラスティックフィルム等を備えることも好ましい。
【0016】
フィルム状プラスティック基板21に用いる材料としては、透過率の高い材料であれば特に制限はなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等のプラスティックフィルムを好ましく用いることができる。また、フィルム状プラスティック基板21には、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、有機EL素子20の傷付きを防止するためのハードコート層、フィルム状プラスティック基板21の平坦性や陽極22との密着性を向上するためのアンダーコート層等を備えることも好ましい。
【0017】
ここで、フィルム状プラスティック基板21の厚みは、50μm以上500μm以下とすることが好ましい。これは、フィルム状プラスティック基板基板21の厚みを50μm未満とした場合には、フィルム状プラスティック基板21自体が十分な平坦性を保持することが難しいため、有機EL素子20を構成した際に、有機EL素子20の良好な平坦性を維持することが困難になる虞があるからである。また、フィルム状プラスティック基板21の厚みを500μmよりも厚くした場合には、フィルム状プラスティック基板21自体を自由に曲げることが困難になる、すなわちフィルム状プラスティック基板21自体の可撓性が乏しくなるため、有機EL素子20を構成した際に、有機EL素子20の可撓性が悪くなるからである。
【0018】
陽極22に用いる陽極材料としては、有機EL層28に正孔を供給し、有機EL層からの発光を透過する電極としての機能を有していれば特に制限はなく、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。例えば、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、アルミニウムやガリウムをドープした酸化亜鉛(AZO、GZO)等の金属酸化物を好ましく用いることができる。有機EL素子に用いる陽極材料として、より好ましくは、正孔注入性、生産性、導電性、透明性等の点でITOである。
【0019】
ここで、陽極22の厚みは、100nm以上500nm以下とすることが好ましい。これは、陽極22の厚みが100nm未満の場合、厚みが薄すぎるために陽極22として十分に機能しなくなるからである。また、陽極22の厚みが500nmよりも厚い場合には、可視光の透過率が悪くなり、実用に適さなくなるからである。陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0020】
陽極材料として用いられる前述の金属酸化物は、いずれも後述の陰極26に用いられる材料に比べて曲げ強度が小さい。ここで、曲げ強度とは、電極に曲げ応力が加えられたときの破断強度を意味する。材料としては、脆弱な金属酸化物の方が、金属や合金のような展性の大きい材料よりも曲げ強度は小さい。
【0021】
正孔輸送層23は、陽極22から正孔を受け取り発光層24に輸送する機能を有する層である。正孔輸送層23に使用する材料としては、例えばカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、フェニルアゾールやフェニルアジンを配位子に有するIr錯体に代表される各種金属錯体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
発光層24は、正孔輸送層23から正孔を受け取り、電子輸送層25から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。本発明における発光層24は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。
【0023】
本発明に使用できる蛍光発光材料としては、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、および有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。ランタノイド原子としては、好ましくはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられ、より好ましくはネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムである。
【0025】
錯体の配位子としては、例えばハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、およびシアノ配位子等が挙げられ、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
【0026】
燐光発光材料は、発光層24中に、0.1質量%〜40質量%含有されることが好ましく、0.5質量%〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0027】
また、本発明における発光層24に含有されるホスト材料としては、例えばカルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、前述の正孔輸送層23、後述の電子輸送層25の項で例示されている材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
電子輸送層25は、陰極26から電子を受け取り発光層24に輸送する機能を有する層である。電子輸送層25に使用する材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
陰極26は、有機EL層に電子を注入する電極としての機能を有していれば特に制限はなく、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。例えば、金属、合金等が挙げられるが、好ましくは金属である。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、またはCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属等の低仕事関数を有する金属材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
保護層27は、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有していれば、特に制限はなく、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、またはNi等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、またはTiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxOy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
以上のように構成された画素部10は、有機EL素子20の陽極22と陰極26との間に直流電圧を選択的に印可することにより、陽極22から注入された正孔が正孔輸送層23を経て、また陰極26から注入された電子が電子輸送層25を経て移動し、それぞれ発光層24に到達する。その結果、発光層24においては、電子と正孔との再結合が生じ、ここから所定の波長で発光が生じる。また、発光層24の材料を選択することにより、R、G、Bの三色を発光するフルカラー用、マルチカラー用の画素部とすることができる。
【0032】
配線部16は、有機EL素子20の陰極26とから引き出された縦配線11と、陽極22から引き出された横配線12との2種類の配線により構成された配線13が配置されている。
【0033】
縦配線11は、陰極26より引き出され、表示部2上において回路部3と直交する方向、すなわち、回路部3と第1の辺14とに略直角な方向に配置されている。そして、縦配線11は、図4に示すように、画素部10からそのまま略直線状に回路部3まで配置され、各有機EL素子20と駆動回路7とを接続している。
【0034】
また、横配線12は、陽極22より引き出され、表示部2上において回路部3と平行な方向に対して約45°の角度で回路部3の方向に引き出され、そののち略直線状に回路部3まで配置され、各有機EL素子20と駆動回路7とを接続している。
【0035】
図4では、横配線12は、画素部10の両方向に引き出されている。このように画素部10を表示部2の第1の辺14と平行な方向において、略中心部に配置し、横配線12を画素部10の両方向に引き出すことにより、画素部10を表示部の第1の辺14と平行な方向において、略中心部に配置することができる。また、横配線12は、必ずしも画素部10の両方向に引き出す必要はなく、横配線12を画素部10のどちらか一方のみに引き出しても良い。
【0036】
また、縦配線11及び横配線12の材料としては、例えばAu、Cr、Al、Cu等の比抵抗率が低く、化学的に安定な材料が挙げられる。
【0037】
以上のように構成された表示部2において、画素部10の陽極22は、巻取り方向Xに対して垂直な方向に配置されている。したがって、表示部2の巻取り収容に際して、陽極22には曲げ応力が加えられず、結果として繰り返し巻取り収容において、陽極22の破断が発生せず、表示部の長期に安定な表示が可能となる。
上記においては、巻取り方向Xと陽極22のなす角度が90°になる場合について説明したが、本発明に係わる有機EL表示装置は、必ずしも前記角度が90°である必要はない。
例えば、製造上の誤差等により、90°から多少傾いても陽極22の破断防止の効果を得ることが可能である。また、高品質の画像表示を目的として、画素をデルタ配列とした場合、パッシブマトリックス型表示素子では、陽極と陰極を直交させず、陽極を画素配列に合わせて傾けることもできる。このとき、陽極と陰極のなす角は、10°〜30°となる。このような観点から、本発明の垂直方向とは、90°±30°の範囲を利用できる。
【0038】
また、表示部2の基板と、画素部10の基板、すなわち画素部10を構成する有機EL素子20の基板とは兼用されており、可撓性を有する透明基板が用いられている。表示部2の基板として、可撓性を有する基板を用いることにより、表示部2に可撓性を付与することが可能となる。そして、表示部2に可撓性が付与されることにより、表示部2を折曲して巻取りすることが可能とされ、その結果、表示部2を巻取り収納することが可能となる。
【0039】
回路部3は、表示部2の一側端部に配置され、有機EL素子20の駆動制御を行う駆動回路7、有機EL表示装置1全体に電源を供給する電源回路(図示せず)、表示信号を受信する信号処理回路(図示せず)等が収納されている。また、回路部3は、回路類を回路収納部3aと3bで覆うことにより構成されている。回路収納部は、回路類を保護し、また、表示部2を巻取り収納する際の軸となるものである。回路収納部の形状は、円筒形とされることが好ましい。これは、表示部2を巻取り収納する際に、表示部2表面に傷を付けたり、不均一な応力がかからないようにするためである。また、表示部2を巻取り収納する際の軸としての機能を考慮した場合、回路収納部の直径又は太さは、表示部2を構成する材料の機械的強度等を考慮して所定の寸法とすることが好ましい。
【0040】
収納部4は、表示部2を巻取り収納する部分であり、図1に示すように回路収納ケースを略中心として回路収納ケースを覆うように角柱状の画面収納部本体4aを配することにより構成されている。ここで、画面収納本体4aには、その長手方向に沿って表示部2の厚みよりもやや大とされた幅を有する開口部5が設けられている。開口部5を設けることにより、表示部2を収納又は引き出す場合には、この開口部5より表示部2が出入可能とされる。
【0041】
また、本発明においては、画面収納部3aの形状は、机上等に載置したときの安定性を考慮して角柱状としたが、これ限定されることはない。例えば、有機EL表示装置を巻回収納した際に、傷が付きにくく、外力に強い円筒形とされても良い。
【0042】
また、図7に示すように、表示部2の巻取り部31が設けられた辺と対向する一辺には、収納部4に設けられた開口部5の幅よりもやや大とされた幅と厚みを有する把手32を設けておくことが好ましい。表示部2の端部に把手32を設けることにより、表示部2が全て収納部4に入り込んでしまい、表示部2が引き出せなくなる不具合を防止することができる。このような構成にした場合、表示部2を駆動するための回路は、巻取り部31と把手32のいずれにも配置することができる。
【0043】
また、上記においては、有機EL表示装置1が収納部4を備えて、表示部2が収納部4内に収納される場合について説明したが、本発明に係る有機EL表示装置は、必ずしも収納部を備えている必要はない。
【0044】
例えば、収容部を設けずに、回路部3を軸として表示部2を巻回収納しても良い。この場合は、表示部2の一主面、すなわち、表示部において画像等が表示される主面とは反対側の主面に、プラスティックフィルムを保護シートとして配置しておくことが好ましい。
プラスティックフィルムを配置することにより、巻取り収納した際に表示部2に傷等が付くことを防止することができる。また、ガスバリア性を有するプラスティックフィルム用いることにより、巻取り収納した際に有機EL表示装置を外部の水分から保護することができる。
【0045】
また、収容部を設けない場合には、表示部2を巻取り収納した状態に保持する手段を設けることが好ましい。例えば、単にバンド等により巻取り収納した表示部2が広がらないようにしても良い。また、巻取り収納した際に、最外周に位置する表示部の所定の位置とそれに対応する位置とを、図8に示すようにマグネット33等により係止するようにしても良い。
【0046】
また、上記においては、有機EL表示装置1が収容部4を備えて表示部2が1つの収納部4内に収納される場合について説明したが、本発明に係る有機EL表示装置は、必ずしも1つの収容部に表示部を収容する必要はなく、2つの収容部に収容しても良い。
【0047】
図9に示すように、表示部2の両端に第1の巻取り部を兼ねる回路部3及び第2の巻取り部34を備え、表示部2の両端からそれぞれ巻き取る構成とすることができる。回路部3は第1の収容部4に、第2の巻取り部34は第2の収容部35にそれぞれ収容される。図9は、有機EL表示装置を使用するため、表示部2を引き出し画像表示を行う作動状態を示しているが、図10は、この有機EL表示装置を収容した状態を示している。収納状態から第1の収容部4と第2の収容部34を、互いに引っ張ることで表示部2が第1の収容部4と第2の収容部34から引き出され作動状態となる。表示部2を駆動するための駆動回路等は、回路部3に全て収容しても良いし、第2の巻取り部34にその一部を分割して収容することもできる。
【0048】
また、上記においては、有機EL表示装置1が表示部2を収容部4から平坦な形状で引き出す場合について説明したが、本発明に係る有機EL表示装置は、表示部2を平坦な形状で引き出す必要はない。
【0049】
図11に示すように、表示部2は収容部36に設けた開口部37より引き出し又は収容される。ここで、開口部37は円弧形状を有し、表示部2は開口部37の円弧に沿って引き出されるよう構成される。したがって、表示部2は引き出された状態では、凹面形状を保持することができる。また、開口部37の円弧形状を上下逆にすることで、表示部2が引き出された状態で、凸面形状を保持することもできる。表示部2と開口部37との摺動による表示部2の傷付きを防止するため、開口部37の形状に合わせて表示部2又は表示部2の基板を成形することも好ましい。これにより、表示部2に表示された画像の認識性を向上させることができる。
【0050】
また、上述した有機EL表示装置1においては、保護層27側から有機EL素子20の発光を取り出す構成とすることもできる。このような場合には、有機EL素子の構成がフィルム状プラスチック基板側から発光を取り出す有機EL素子20を用いた場合とは逆になり、図12及び図13に示すような構成の有機EL素子40とされる。すなわち、有機EL素子40は、基板41と、基板41上に形成された陰極26と、陰極上26に形成された電子輸送層25と、電子輸送層25上に形成された発光層24と、発光層24上に形成された正孔輸送層23と、正孔輸送層22上に形成された陽極22と、陽極22上に形成された保護層27とを備えて構成される。
【0051】
以上のように構成された有機EL素子40を備えた表示部2において、画素部10の陽極22は、巻取り方向Yに対して垂直な方向に配置されている。したがって、表示部2の巻取り収容に際して、陽極22には曲げ応力が加えられず、結果として繰り返し巻取り収容において、陽極22の破断が発生せず、表示部の長期に安定な表示が可能となる。
【0052】
ここで、基板41は、フィルム状プラスティック基板でも良いが、有機EL素子40からの発光を取り出す必要がないため、フィルム状金属基板等の不透明基板も用いることができる。フィルム状金属基板は、フィルム状プラスティック基板よりもガスバリア性が高いため好ましい。フィルム状金属を有機EL素子40の基板として用いる場合には、基板41と陰極26との間に、陰極26どうしの電気絶縁性を確保するための絶縁層を、さらに設ける必要がある。
【0053】
このようなフィルム状金属基板41に用いる材料としては、例えばステンレス、Fe、Al、Ni、Co、またはCuやこれらの合金等、常温・常圧においてフィルム状態とすることが可能な金属であれば何れの金属も用いることができる。
【0054】
以上のように構成された有機EL表示装置1は、例えば以下のようにして作製することができる。
【0055】
まず、フィルム状プラスチック基板71上に、陽極として透明導電材料であるITO膜を成膜し、これをパターニングすることにより図16に示すようなストライプ状の透明電極、すなわち陽極72を形成する。
【0056】
次に、上記において形成したストライプ状の陽極72を覆った状態に陽極72上に絶縁材料を塗布して絶縁膜を成膜し、さらにこれをパターニングすることにより図17に示すように、陽極72上に開口部73を有する絶縁層74を形成する。
【0057】
次に、真空蒸着法により陽極72上の全面に有機EL層用の有機材料を成膜し、これにより図18に示すように絶縁層74上を覆うとともに、上述した開口部73内においては、陽極72上面に当接する有機EL層75を形成する。ここで、有機EL層75は、例えば正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層をこの順に真空蒸着により成膜することにより形成する。
【0058】
その後、有機EL層75をマスクを用いてパターニングし、図19に示すように陽極に直交するストライプ状の陰極76を形成することにより有機EL素子を用いた画素部を得ることができる。
【0059】
次いで、各有機EL素子と各回路との接続に関して説明する。ここで、図4における配線部16には、マスクによるパターニングにより予め配線13、すなわち縦配線11及び横配線12が形成されており、上記において陽極72を形成することにより、図20に示すように陽極72と横配線12は電気的につながった状態とされている。
【0060】
また、上記において絶縁層74、有機EL層75を形成した後に、陰極76を形成するが、陰極76は縦配線11と重なる部分ができるように画素部10よりやや広い領域においてマスクによりパターニングし形成する。このことにより、予め形成された縦配線11と陰極76が電気的に接合される。このようにして、陰極76から縦配線11を、陽極72から横配線12を引き出す。
【0061】
次いで、CVD法により保護層を有機層75が被覆されるよう形成する。
【0062】
次いで、上記において形成した縦配線11と横配線12を駆動回路5に接続することにより、各有機ELと回路とを接続することができる。
【0063】
次いで、駆動回路等の回路類を回路収容部3aと3bで密閉する。
【0064】
最後に、密閉された回路部3を、回路部に備えた回転軸6と収容部に備えた軸受け部が係合するように収容部4に取り付けることにより、図1に示すような有機EL表示装置を得ることができる。
【0065】
また、上記において、画素部10が有機EL素子20により構成された有機EL表示装置とされているが、本発明に係るEL表示装置は、これに限定されることはなく、画素部10が無機EL素子から構成された無機EL表示装置とされても良い。
【0066】
無機EL表示装置は、画素部が無機EL素子をマトリックス状に多数配列した構成とされている。図14に無機EL素子50の構成を示す要部縦断面図を示す。すなわち、無機EL表示装置の画素部は、例えば透明基板であるフィルム状プラスチック基板51上にストライプ状透明電極である第1電極52が複数設けられ、その上に第1誘電体層53と発光層54と第2誘電体層55とが積層されてなるシート状の無機EL層58が設けられ、第1電極52と直交するようにして、反射電極としてのストライプ状の第2電極56が複数設けられ、さらに、第2電極56上に保護層57が設けられて構成されたもので、透明電極である第1電極52と第2電極56とが交差する位置に無機EL素子50が形成された構成となっている。
【0067】
ここで、発光層54に用いる材料としては、ZnS、CaS、SrS、またはBaAl2S4等の硫化物母体に、Mn、Cu等の遷移金属元素やEu,Ce,Tb、Er、またはTm、Sm等の希土類元素をドーパントとして加えた材料を用いることが好ましく、第1誘電体層53及び第2誘電体層55に用いる材料としては、Y2O3、Ta2O5、TiO2、BaTiO3、またはSrTiO3等の高誘電率を有する材料を用いることが好ましく、第1電極52に用いる材料としては、ITO、IZO、AZO、またはGZO等の透過率の高い材料を用いることが好ましく、第2電極56に用いる材料としては、Al、Cr、Au、またはAg等の反射率の高い金属、及びそれらの合金を用いることが好ましい。
【0068】
上記において、フィルム状プラスチック基板51を用いたが、フィルム状金属基板等の不透明基板も用いることができる。フィルム状金属基板は、フィルム状プラスティック基板よりも耐熱性が高いため、成膜時の基板温度が必要な発光層54及び誘電体層を形成するのに好ましい。フィルム状金属を無機EL素子50の基板として用いる場合には、第1電極52と第2電極56の位置を逆にして保護層57側から無機EL層58からの発光を取り出すように構成し、基板51と第2電極56との間に、第2電極56どうしの電気絶縁性を確保するための絶縁層を、さらに設ける必要がある。
【0069】
以上のように構成された無機EL素子50を備えた表示部2において、画素部10の第1電極22は、有機EL素子の場合と同様に巻取り方向に対して垂直な方向に配置されている。したがって、表示部2の巻取り収容に際して、第1電極52には曲げ応力が加えられず、結果として繰り返し巻取り収容において、第1電極52の破断が発生せず、表示部の長期に安定な表示が可能となる。
【0070】
また、上記において、画素部10が有機EL素子20により構成された有機EL表示装置とされているが、本発明に係る表示装置は、これに限定されることはなく、画素部10が電気泳動素子から構成された電気泳動表示装置とされても良い。
【0071】
電気泳動表示装置は、画素部が電気泳動素子をマトリックス状に多数配列した構成とされている。図15に電気泳動素子60の構成を示す要部縦断面図を示す。すなわち、電気泳動表示装置の画素部は、例えば透明基板であるフィルム状プラスチック基板61上にストライプ状透明電極である第1電極62が複数設けられ、その上に誘電体層63と誘電体層63中に分散され、2色の異なる電荷に帯電した顔料を有するマイクロカプセル64とからなる表示層66が設けられ、さらに、第1電極62と直交するようにして、反射電極としてのストライプ状の第2電極65が複数設けられて構成されたもので、透明電極である第1電極62と第2電極65とが交差する位置に電気泳動素子60が形成された構成となっている。
【0072】
以上のように構成された電気泳動素子を備えた表示部2において、画素部10の第1電極52は、有機EL素子の場合と同様に巻取り方向に対して垂直な方向に配置されている。したがって、表示部2の巻取り収容に際して、第1電極62には曲げ応力が加えられず、結果として繰り返し巻取り収容において、第1電極62の破断が発生せず、表示部の長期に安定な表示が可能となる。
【0073】
上記において、画素部がEL素子や電気泳動素子により構成されたパッシブマトリックス型のフレキシブル表示装置について記載したが、本発明はこれらに限定されることはなく、信号配線、又は表示素子の一方のストライプ状表示電極の材料に金属酸化物を用いた表示素子から構成されるフレキシブル表示装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明を適用した有機EL表示装置の一例の概略斜視図であって、使用する状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示した有機EL表示装置であって、その巻取り収容した状態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明を適用した有機EL表示装置の表示部と回路部の構成を示した要部斜視図である。
【図4】本発明を適用した有機EL表示装置の表示部と回路部の構成を示した要部平面図である。
【図5】本発明を適用した有機EL表示装置に備えられた有機EL素子の構成を示す要部斜視図である。
【図6】本発明を適用した有機EL表示装置に備えられた有機EL素子の構成を示す要部断面図である。
【図7】表示部の一側端部に把手が配置された本発明を適用した有機EL表示装置の概略斜視図であって、使用する状態を示す概略斜視図である。
【図8】本発明を適用した有機EL表示装置を巻取り収納した状態に保持する手段としてマグネットを配置した状態を示す斜視図である。
【図9】表示部の両端に巻取り部を配置した本発明を適用した有機EL表示装置の概略斜視図であって、使用する状態を示す概略斜視図である。
【図10】図9に示した有機EL表示装置であって、その巻取り収容した状態を示す概略斜視図である。
【図11】表示部を凹面保持するための円弧形状を有する開口部を備えた本発明を適用した有機EL表示装置を使用する状態を示す概略斜視図である。
【図12】有機EL素子の一構成例を示す要部斜視図である。
【図13】有機EL素子の一構成例を示す要部断面図である。
【図14】無機EL素子の構成を示す要部断面図である。
【図15】マイクロカプセル型電気泳動素子の構成を示す要部断面図である。
【図16】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す縦断面図である。
【図17】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す縦断面図である。
【図18】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す縦断面図である。
【図19】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す縦断面図である。
【図20】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す平面図である。
【符号の説明】
【0075】
1:有機EL表示装置、
2:表示部、
3:回路部、
3a:回路部本体、3b:回路部蓋、
4:収容部、
4a:収容部本体、4b:収容部蓋、
5:開口部、
6:回転軸、
7:駆動回路、
10:画素部、
13:配線
11:縦配線、12:横配線、
16:配線部、
20:有機EL素子、
21:フィルム状プラスティック基板、
22:陽極、
26:陰極、
27:保護層、
28:有機EL層、
23:正孔輸送層、24:有機発光層、25:電子輸送層、
32:把手、
33:マグネット、
34:第2の収容部、
35:第2の巻取り部、
36:収容部、
37:円弧形の開口部、
40:トップエミッション型有機EL素子
41:フィルム状金属基板、
50:無機EL素子、
51:フィルム状プラスティック基板、
52:第1電極、
58:無機EL層、
53:第1誘電体層、54:無機発光層、55:第2誘電体層、
56:第2電極、
57:保護層
60:電気泳動素子
61:フィルム状プラスティック基板、
62:第1電極、
65:第2電極、
66:表示層、
63:誘電体層、64:マイクロカプセル、
71:フィルム状プラスティック基板、
72:陽極、
73:陽極開口部、
74:絶縁層、
75:有機EL層、
76:陰極、
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部が巻取り収容および引き出し可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データー処理装置やテレビ等の表示装置は、陰極線管が主流であった。その後、省スペース化を目的とした平面表示装置には、例えばプラズマ表示素子、液晶表示素子、エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子と呼ぶ。)等が用いられるようになった。しかし、これらの表示装置は、ガラス等のフレキシブル性を有しない基板上に形成されているため、表示装置の容積を小さくして移動、および携帯することが困難であった。また、このようなガラス基板を用いた表示素子では、落下等の衝撃によって破損しやすく、取り扱いに注意が必要であった。さらに、表示装置の大画面化にともない、装置重量が増加する傾向にあった。
【0003】
近年、表示素子を収容して移動および携帯を容易にするためのフレキシブル性を有する表示装置が、いくつか提案されている。例えば、ロールスクリーン状に表示素子を巻き取り可能な表示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、円筒形の収容器に表示素子を巻取り収容可能な表示装置も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。これら表示装置は、プラスティック等のフレキシブル性を有する基板上にEL素子を形成し、巻取り収容可能な構造を有している。
【特許文献1】特開2002−15858号公報
【特許文献2】特開2002−328625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フレキシブル基板を用いた表示素子では、巻取り収容および引き出しで加わる曲げ応力により表示素子が破損してしまうという、ガラス基板では起こらなかった新たな問題が発生してしまうことがわかった。特に、巻取り方向に延在するストライプ電極は、大きな曲げ応力を受けるため破損しやすく、巻取り収容および引き出しを繰り返すことで画像を表示できなくなるという問題があった。
【0005】
本発明では、巻取り収容および引き出しを繰り返した場合でも表示素子の破損が起こらない表示装置を提供することを目的とする。それによって、画面の大型化と表示装置の小型化、軽量化を両立した表示装置を提供するとともに、落下等による衝撃にも強い表示装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決された。
【0007】
<1> 表示部および該表示部を駆動するための回路部を備え、該表示部はフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板上に一対の電極、および該電極間に少なくとも1層の表示要素を挟持した表示素子を有し、所定の方向に巻取り収容および引き出し可能である表示装置であって、前記電極の一方は金属電極であり、前記電極の他方は金属酸化物よりなるストライプ状電極であり、該ストライプの長辺を該表示装置の巻取り方向に対して直角方向に配置して有することを特徴とする表示装置。
<2> 前記表示装置は、前記表示部と前記回路部とを収容するための収容部をさらに有することを特徴とする<1>に記載の表示装置。
<3> 前記表示装置は、前記収容部に前記表示部を出し入れするための開口部をさらに有し、該開口部は前記表示部を湾曲保持するため円弧形状を有することを特徴とする<2>に記載の表示装置。
<4> 前記表示装置は、前記表示部を巻取りするための巻取り部をさらに有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の表示装置。
<5> 前記回路部は、前記巻取り部の内部に配置されていることを特徴とする<3>又は<4>に記載の表示装置。
<6> 前記表示素子は、印加された電界により発光、又は変化する光学特性を有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の表示装置。
<7> 前記表示素子は、発光素子であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の表示装置。
<8> 前記表示素子は、有機EL素子であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載の表示装置。
【0008】
本発明の表示装置は、表示部および該表示部を駆動するための回路部を備え、該表示部はフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板上に一対の電極、および該電極間に少なくとも1層の表示要素を挟持した表示素子を有し、所定の方向に巻取り収容および引き出し可能である表示装置であって、前記電極の一方は金属電極(以後、第1電極と称することがある。)であり、前記電極の他方は金属酸化物よりなるストライプ状電極(以後、第2電極と称することがある。)であり、該ストライプの長辺を該表示装置の巻取り方向に対して直角方向に配置して有することを特徴とするものである。この構成によれば、曲げ強度の弱い材料からなる第2電極は、巻取り収容および引き出される際に、曲げ応力がほとんどかからないため破損することがなく、長期に安定した表示を可能にする。
ここで、前記巻取り方向と前記ストライプ状電極の長辺のなす角度が、厳密に90°である必要はなく、90°からある程度傾いても同様の効果が得られる。また、任意に電極を傾けて、画素をデルタ配列とすることも可能である。したがって、本発明の直角方向とは、90°±30°の範囲を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表示装置によれば、繰り返し巻取り収容および引き出しによる表示素子の電極破損が防止され、それによって長期に安定した画像の表示が可能となる。また、このような巻取り収容および引き出し可能な表示装置は、大画面表示に好適に用いることができるとともに、表示素子の収容により保管場所の省スペース化を向上することができる。さらに、フレキシブル基板を用いることにより、表示装置の軽量化が計れ、携帯性を向上するとともに、落下等の衝撃による表示素子の破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ここでは、表示素子として有機ELを備えた表示装置を例に用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明を適用した有機EL表示装置の構成を示した概略斜視図であって、表示部が引き出された使用状態を示している。そして、図2は、図1の有機EL表示装置の表示部を収容した状態を示している。有機EL表示装置1は、表示部2と、表示部2の一側端部に配置され、表示部2の駆動制御を行う駆動回路、有機EL表示装置1全体に電源を供給する電源回路、表示信号を受信する信号処理回路等が収容された回路部3と、回路部3のまわりに配置され、表示部2を収容する収容部4とを備えて構成されている。ここで、回路部3は、円筒状で、表示部2を巻き取る巻取り部を兼ねている。収容部4は、収容部本体4aと、収容部蓋4bを備え、表示部2と回路部3を収容部本体に収容したのち、収容部蓋4bを閉じることで収容部4が密閉されている。
有機EL表示装置1は、図1の状態が動作状態であり表示部2に情報を表示することが出来る。使用しない状態あるいは携帯時には、図2の状態に巻き取り収容して行う。その後使用する場合、再び、表示部2を引き出して図1の状態にする。本有機EL表示装置1は、このように図1の作動状態と図2の不作動の収容状態とを反復する。
【0012】
図3は、表示部2と回路部3の構成を示した要部斜視図である。回路部3は、回路収容部本体3aと回路収容部蓋3bに分割されるよう構成されている。回路収容部本体3aには、表示部2の一側端部に配置された駆動回路7、電源回路(図示せず)、信号処理回路(図示せず)等が収容されており、回路収容部蓋3bをかぶせることで回路部3が密閉される。また、回路部3の回転中心には、回転軸6が備えられ、収容部4の軸受け部(図示せず)に回転自在に係合されている。ここで、回転軸6近傍には、回路部3に収容された回路から信号や電源を入出力するためのロータリーコネクターを備えても良い。これによって、回路部3から電源回路等を外に出すことが可能となり回路部3の体積を小さくし設計の自由度を向上でき、また、外部から充電することができるため好ましい。さらに、回転軸6と収容部4の間に、渦巻きバネやクラッチ等を備えても良い。これによって、引き出された表示部2を自動的に収容部4に収容したり、表示部2を必要量引き出すことが可能となるため好ましい。
【0013】
図4は、表示部2と回路部3の電気接続状態を示す平面図である。表示部2は、透明のフィルム状プラスティック基板上に有機EL素子が複数形成されて構成された画素部10と、各有機EL素子20を駆動するために各有機EL素子20と各駆動回路7とを電気接続し、縦配線11と横配線12とからなる配線13が配置された配線部16とを備えている。ここでは、説明の便宜上、回路部3と対向した辺を第1の辺14、第1の辺14と直交した辺を第2の辺15と呼ぶこととする。
【0014】
画素部10は、有機EL素子20をマトリックス状に複数配列することにより形成されている。図5に有機EL素子の構成を示す要部斜視図を、また、図6に要部縦断面図を示す。画素部10は、透明基板であるフィルム状プラスティック21上にストライプ状(帯状)に透明電極である陽極22が複数設けられ、その上に正孔輸送層23、発光層24、および電子輸送層25とが積層されてなるシート状の有機EL層28が設けられている。そして、さらに陽極22と直交するようにしてストライプ状の陰極26が複数設けられ、その上に保護層27が設けられて構成されたもので、透明電極である陽極22と陰極26とが交差する位置に有機EL素子20が形成されている。ここで、画素部10は、陽極22と直交するX方向に巻取り収容される。これによって、陽極22には、巻取り収容において曲げ応力が加わらない構成とすることができる。
【0015】
フィルム状プラスティック基板21は、有機EL素子20の支持体となるものであり、このフィルム状プラスティック基板21上に有機EL素子20を構成する各層が形成される。有機EL素子20のフィルム状プラスティック基板に対向する面上に、有機EL素子をさらに保護する目的で、プラスティックフィルム等を備えることも好ましい。
【0016】
フィルム状プラスティック基板21に用いる材料としては、透過率の高い材料であれば特に制限はなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等のプラスティックフィルムを好ましく用いることができる。また、フィルム状プラスティック基板21には、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、有機EL素子20の傷付きを防止するためのハードコート層、フィルム状プラスティック基板21の平坦性や陽極22との密着性を向上するためのアンダーコート層等を備えることも好ましい。
【0017】
ここで、フィルム状プラスティック基板21の厚みは、50μm以上500μm以下とすることが好ましい。これは、フィルム状プラスティック基板基板21の厚みを50μm未満とした場合には、フィルム状プラスティック基板21自体が十分な平坦性を保持することが難しいため、有機EL素子20を構成した際に、有機EL素子20の良好な平坦性を維持することが困難になる虞があるからである。また、フィルム状プラスティック基板21の厚みを500μmよりも厚くした場合には、フィルム状プラスティック基板21自体を自由に曲げることが困難になる、すなわちフィルム状プラスティック基板21自体の可撓性が乏しくなるため、有機EL素子20を構成した際に、有機EL素子20の可撓性が悪くなるからである。
【0018】
陽極22に用いる陽極材料としては、有機EL層28に正孔を供給し、有機EL層からの発光を透過する電極としての機能を有していれば特に制限はなく、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。例えば、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、アルミニウムやガリウムをドープした酸化亜鉛(AZO、GZO)等の金属酸化物を好ましく用いることができる。有機EL素子に用いる陽極材料として、より好ましくは、正孔注入性、生産性、導電性、透明性等の点でITOである。
【0019】
ここで、陽極22の厚みは、100nm以上500nm以下とすることが好ましい。これは、陽極22の厚みが100nm未満の場合、厚みが薄すぎるために陽極22として十分に機能しなくなるからである。また、陽極22の厚みが500nmよりも厚い場合には、可視光の透過率が悪くなり、実用に適さなくなるからである。陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0020】
陽極材料として用いられる前述の金属酸化物は、いずれも後述の陰極26に用いられる材料に比べて曲げ強度が小さい。ここで、曲げ強度とは、電極に曲げ応力が加えられたときの破断強度を意味する。材料としては、脆弱な金属酸化物の方が、金属や合金のような展性の大きい材料よりも曲げ強度は小さい。
【0021】
正孔輸送層23は、陽極22から正孔を受け取り発光層24に輸送する機能を有する層である。正孔輸送層23に使用する材料としては、例えばカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、フェニルアゾールやフェニルアジンを配位子に有するIr錯体に代表される各種金属錯体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
発光層24は、正孔輸送層23から正孔を受け取り、電子輸送層25から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。本発明における発光層24は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。
【0023】
本発明に使用できる蛍光発光材料としては、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、および有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。ランタノイド原子としては、好ましくはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられ、より好ましくはネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムである。
【0025】
錯体の配位子としては、例えばハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、およびシアノ配位子等が挙げられ、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
【0026】
燐光発光材料は、発光層24中に、0.1質量%〜40質量%含有されることが好ましく、0.5質量%〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0027】
また、本発明における発光層24に含有されるホスト材料としては、例えばカルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、前述の正孔輸送層23、後述の電子輸送層25の項で例示されている材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
電子輸送層25は、陰極26から電子を受け取り発光層24に輸送する機能を有する層である。電子輸送層25に使用する材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
陰極26は、有機EL層に電子を注入する電極としての機能を有していれば特に制限はなく、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。例えば、金属、合金等が挙げられるが、好ましくは金属である。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、またはCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属等の低仕事関数を有する金属材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
保護層27は、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有していれば、特に制限はなく、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、またはNi等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、またはTiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxOy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
以上のように構成された画素部10は、有機EL素子20の陽極22と陰極26との間に直流電圧を選択的に印可することにより、陽極22から注入された正孔が正孔輸送層23を経て、また陰極26から注入された電子が電子輸送層25を経て移動し、それぞれ発光層24に到達する。その結果、発光層24においては、電子と正孔との再結合が生じ、ここから所定の波長で発光が生じる。また、発光層24の材料を選択することにより、R、G、Bの三色を発光するフルカラー用、マルチカラー用の画素部とすることができる。
【0032】
配線部16は、有機EL素子20の陰極26とから引き出された縦配線11と、陽極22から引き出された横配線12との2種類の配線により構成された配線13が配置されている。
【0033】
縦配線11は、陰極26より引き出され、表示部2上において回路部3と直交する方向、すなわち、回路部3と第1の辺14とに略直角な方向に配置されている。そして、縦配線11は、図4に示すように、画素部10からそのまま略直線状に回路部3まで配置され、各有機EL素子20と駆動回路7とを接続している。
【0034】
また、横配線12は、陽極22より引き出され、表示部2上において回路部3と平行な方向に対して約45°の角度で回路部3の方向に引き出され、そののち略直線状に回路部3まで配置され、各有機EL素子20と駆動回路7とを接続している。
【0035】
図4では、横配線12は、画素部10の両方向に引き出されている。このように画素部10を表示部2の第1の辺14と平行な方向において、略中心部に配置し、横配線12を画素部10の両方向に引き出すことにより、画素部10を表示部の第1の辺14と平行な方向において、略中心部に配置することができる。また、横配線12は、必ずしも画素部10の両方向に引き出す必要はなく、横配線12を画素部10のどちらか一方のみに引き出しても良い。
【0036】
また、縦配線11及び横配線12の材料としては、例えばAu、Cr、Al、Cu等の比抵抗率が低く、化学的に安定な材料が挙げられる。
【0037】
以上のように構成された表示部2において、画素部10の陽極22は、巻取り方向Xに対して垂直な方向に配置されている。したがって、表示部2の巻取り収容に際して、陽極22には曲げ応力が加えられず、結果として繰り返し巻取り収容において、陽極22の破断が発生せず、表示部の長期に安定な表示が可能となる。
上記においては、巻取り方向Xと陽極22のなす角度が90°になる場合について説明したが、本発明に係わる有機EL表示装置は、必ずしも前記角度が90°である必要はない。
例えば、製造上の誤差等により、90°から多少傾いても陽極22の破断防止の効果を得ることが可能である。また、高品質の画像表示を目的として、画素をデルタ配列とした場合、パッシブマトリックス型表示素子では、陽極と陰極を直交させず、陽極を画素配列に合わせて傾けることもできる。このとき、陽極と陰極のなす角は、10°〜30°となる。このような観点から、本発明の垂直方向とは、90°±30°の範囲を利用できる。
【0038】
また、表示部2の基板と、画素部10の基板、すなわち画素部10を構成する有機EL素子20の基板とは兼用されており、可撓性を有する透明基板が用いられている。表示部2の基板として、可撓性を有する基板を用いることにより、表示部2に可撓性を付与することが可能となる。そして、表示部2に可撓性が付与されることにより、表示部2を折曲して巻取りすることが可能とされ、その結果、表示部2を巻取り収納することが可能となる。
【0039】
回路部3は、表示部2の一側端部に配置され、有機EL素子20の駆動制御を行う駆動回路7、有機EL表示装置1全体に電源を供給する電源回路(図示せず)、表示信号を受信する信号処理回路(図示せず)等が収納されている。また、回路部3は、回路類を回路収納部3aと3bで覆うことにより構成されている。回路収納部は、回路類を保護し、また、表示部2を巻取り収納する際の軸となるものである。回路収納部の形状は、円筒形とされることが好ましい。これは、表示部2を巻取り収納する際に、表示部2表面に傷を付けたり、不均一な応力がかからないようにするためである。また、表示部2を巻取り収納する際の軸としての機能を考慮した場合、回路収納部の直径又は太さは、表示部2を構成する材料の機械的強度等を考慮して所定の寸法とすることが好ましい。
【0040】
収納部4は、表示部2を巻取り収納する部分であり、図1に示すように回路収納ケースを略中心として回路収納ケースを覆うように角柱状の画面収納部本体4aを配することにより構成されている。ここで、画面収納本体4aには、その長手方向に沿って表示部2の厚みよりもやや大とされた幅を有する開口部5が設けられている。開口部5を設けることにより、表示部2を収納又は引き出す場合には、この開口部5より表示部2が出入可能とされる。
【0041】
また、本発明においては、画面収納部3aの形状は、机上等に載置したときの安定性を考慮して角柱状としたが、これ限定されることはない。例えば、有機EL表示装置を巻回収納した際に、傷が付きにくく、外力に強い円筒形とされても良い。
【0042】
また、図7に示すように、表示部2の巻取り部31が設けられた辺と対向する一辺には、収納部4に設けられた開口部5の幅よりもやや大とされた幅と厚みを有する把手32を設けておくことが好ましい。表示部2の端部に把手32を設けることにより、表示部2が全て収納部4に入り込んでしまい、表示部2が引き出せなくなる不具合を防止することができる。このような構成にした場合、表示部2を駆動するための回路は、巻取り部31と把手32のいずれにも配置することができる。
【0043】
また、上記においては、有機EL表示装置1が収納部4を備えて、表示部2が収納部4内に収納される場合について説明したが、本発明に係る有機EL表示装置は、必ずしも収納部を備えている必要はない。
【0044】
例えば、収容部を設けずに、回路部3を軸として表示部2を巻回収納しても良い。この場合は、表示部2の一主面、すなわち、表示部において画像等が表示される主面とは反対側の主面に、プラスティックフィルムを保護シートとして配置しておくことが好ましい。
プラスティックフィルムを配置することにより、巻取り収納した際に表示部2に傷等が付くことを防止することができる。また、ガスバリア性を有するプラスティックフィルム用いることにより、巻取り収納した際に有機EL表示装置を外部の水分から保護することができる。
【0045】
また、収容部を設けない場合には、表示部2を巻取り収納した状態に保持する手段を設けることが好ましい。例えば、単にバンド等により巻取り収納した表示部2が広がらないようにしても良い。また、巻取り収納した際に、最外周に位置する表示部の所定の位置とそれに対応する位置とを、図8に示すようにマグネット33等により係止するようにしても良い。
【0046】
また、上記においては、有機EL表示装置1が収容部4を備えて表示部2が1つの収納部4内に収納される場合について説明したが、本発明に係る有機EL表示装置は、必ずしも1つの収容部に表示部を収容する必要はなく、2つの収容部に収容しても良い。
【0047】
図9に示すように、表示部2の両端に第1の巻取り部を兼ねる回路部3及び第2の巻取り部34を備え、表示部2の両端からそれぞれ巻き取る構成とすることができる。回路部3は第1の収容部4に、第2の巻取り部34は第2の収容部35にそれぞれ収容される。図9は、有機EL表示装置を使用するため、表示部2を引き出し画像表示を行う作動状態を示しているが、図10は、この有機EL表示装置を収容した状態を示している。収納状態から第1の収容部4と第2の収容部34を、互いに引っ張ることで表示部2が第1の収容部4と第2の収容部34から引き出され作動状態となる。表示部2を駆動するための駆動回路等は、回路部3に全て収容しても良いし、第2の巻取り部34にその一部を分割して収容することもできる。
【0048】
また、上記においては、有機EL表示装置1が表示部2を収容部4から平坦な形状で引き出す場合について説明したが、本発明に係る有機EL表示装置は、表示部2を平坦な形状で引き出す必要はない。
【0049】
図11に示すように、表示部2は収容部36に設けた開口部37より引き出し又は収容される。ここで、開口部37は円弧形状を有し、表示部2は開口部37の円弧に沿って引き出されるよう構成される。したがって、表示部2は引き出された状態では、凹面形状を保持することができる。また、開口部37の円弧形状を上下逆にすることで、表示部2が引き出された状態で、凸面形状を保持することもできる。表示部2と開口部37との摺動による表示部2の傷付きを防止するため、開口部37の形状に合わせて表示部2又は表示部2の基板を成形することも好ましい。これにより、表示部2に表示された画像の認識性を向上させることができる。
【0050】
また、上述した有機EL表示装置1においては、保護層27側から有機EL素子20の発光を取り出す構成とすることもできる。このような場合には、有機EL素子の構成がフィルム状プラスチック基板側から発光を取り出す有機EL素子20を用いた場合とは逆になり、図12及び図13に示すような構成の有機EL素子40とされる。すなわち、有機EL素子40は、基板41と、基板41上に形成された陰極26と、陰極上26に形成された電子輸送層25と、電子輸送層25上に形成された発光層24と、発光層24上に形成された正孔輸送層23と、正孔輸送層22上に形成された陽極22と、陽極22上に形成された保護層27とを備えて構成される。
【0051】
以上のように構成された有機EL素子40を備えた表示部2において、画素部10の陽極22は、巻取り方向Yに対して垂直な方向に配置されている。したがって、表示部2の巻取り収容に際して、陽極22には曲げ応力が加えられず、結果として繰り返し巻取り収容において、陽極22の破断が発生せず、表示部の長期に安定な表示が可能となる。
【0052】
ここで、基板41は、フィルム状プラスティック基板でも良いが、有機EL素子40からの発光を取り出す必要がないため、フィルム状金属基板等の不透明基板も用いることができる。フィルム状金属基板は、フィルム状プラスティック基板よりもガスバリア性が高いため好ましい。フィルム状金属を有機EL素子40の基板として用いる場合には、基板41と陰極26との間に、陰極26どうしの電気絶縁性を確保するための絶縁層を、さらに設ける必要がある。
【0053】
このようなフィルム状金属基板41に用いる材料としては、例えばステンレス、Fe、Al、Ni、Co、またはCuやこれらの合金等、常温・常圧においてフィルム状態とすることが可能な金属であれば何れの金属も用いることができる。
【0054】
以上のように構成された有機EL表示装置1は、例えば以下のようにして作製することができる。
【0055】
まず、フィルム状プラスチック基板71上に、陽極として透明導電材料であるITO膜を成膜し、これをパターニングすることにより図16に示すようなストライプ状の透明電極、すなわち陽極72を形成する。
【0056】
次に、上記において形成したストライプ状の陽極72を覆った状態に陽極72上に絶縁材料を塗布して絶縁膜を成膜し、さらにこれをパターニングすることにより図17に示すように、陽極72上に開口部73を有する絶縁層74を形成する。
【0057】
次に、真空蒸着法により陽極72上の全面に有機EL層用の有機材料を成膜し、これにより図18に示すように絶縁層74上を覆うとともに、上述した開口部73内においては、陽極72上面に当接する有機EL層75を形成する。ここで、有機EL層75は、例えば正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層をこの順に真空蒸着により成膜することにより形成する。
【0058】
その後、有機EL層75をマスクを用いてパターニングし、図19に示すように陽極に直交するストライプ状の陰極76を形成することにより有機EL素子を用いた画素部を得ることができる。
【0059】
次いで、各有機EL素子と各回路との接続に関して説明する。ここで、図4における配線部16には、マスクによるパターニングにより予め配線13、すなわち縦配線11及び横配線12が形成されており、上記において陽極72を形成することにより、図20に示すように陽極72と横配線12は電気的につながった状態とされている。
【0060】
また、上記において絶縁層74、有機EL層75を形成した後に、陰極76を形成するが、陰極76は縦配線11と重なる部分ができるように画素部10よりやや広い領域においてマスクによりパターニングし形成する。このことにより、予め形成された縦配線11と陰極76が電気的に接合される。このようにして、陰極76から縦配線11を、陽極72から横配線12を引き出す。
【0061】
次いで、CVD法により保護層を有機層75が被覆されるよう形成する。
【0062】
次いで、上記において形成した縦配線11と横配線12を駆動回路5に接続することにより、各有機ELと回路とを接続することができる。
【0063】
次いで、駆動回路等の回路類を回路収容部3aと3bで密閉する。
【0064】
最後に、密閉された回路部3を、回路部に備えた回転軸6と収容部に備えた軸受け部が係合するように収容部4に取り付けることにより、図1に示すような有機EL表示装置を得ることができる。
【0065】
また、上記において、画素部10が有機EL素子20により構成された有機EL表示装置とされているが、本発明に係るEL表示装置は、これに限定されることはなく、画素部10が無機EL素子から構成された無機EL表示装置とされても良い。
【0066】
無機EL表示装置は、画素部が無機EL素子をマトリックス状に多数配列した構成とされている。図14に無機EL素子50の構成を示す要部縦断面図を示す。すなわち、無機EL表示装置の画素部は、例えば透明基板であるフィルム状プラスチック基板51上にストライプ状透明電極である第1電極52が複数設けられ、その上に第1誘電体層53と発光層54と第2誘電体層55とが積層されてなるシート状の無機EL層58が設けられ、第1電極52と直交するようにして、反射電極としてのストライプ状の第2電極56が複数設けられ、さらに、第2電極56上に保護層57が設けられて構成されたもので、透明電極である第1電極52と第2電極56とが交差する位置に無機EL素子50が形成された構成となっている。
【0067】
ここで、発光層54に用いる材料としては、ZnS、CaS、SrS、またはBaAl2S4等の硫化物母体に、Mn、Cu等の遷移金属元素やEu,Ce,Tb、Er、またはTm、Sm等の希土類元素をドーパントとして加えた材料を用いることが好ましく、第1誘電体層53及び第2誘電体層55に用いる材料としては、Y2O3、Ta2O5、TiO2、BaTiO3、またはSrTiO3等の高誘電率を有する材料を用いることが好ましく、第1電極52に用いる材料としては、ITO、IZO、AZO、またはGZO等の透過率の高い材料を用いることが好ましく、第2電極56に用いる材料としては、Al、Cr、Au、またはAg等の反射率の高い金属、及びそれらの合金を用いることが好ましい。
【0068】
上記において、フィルム状プラスチック基板51を用いたが、フィルム状金属基板等の不透明基板も用いることができる。フィルム状金属基板は、フィルム状プラスティック基板よりも耐熱性が高いため、成膜時の基板温度が必要な発光層54及び誘電体層を形成するのに好ましい。フィルム状金属を無機EL素子50の基板として用いる場合には、第1電極52と第2電極56の位置を逆にして保護層57側から無機EL層58からの発光を取り出すように構成し、基板51と第2電極56との間に、第2電極56どうしの電気絶縁性を確保するための絶縁層を、さらに設ける必要がある。
【0069】
以上のように構成された無機EL素子50を備えた表示部2において、画素部10の第1電極22は、有機EL素子の場合と同様に巻取り方向に対して垂直な方向に配置されている。したがって、表示部2の巻取り収容に際して、第1電極52には曲げ応力が加えられず、結果として繰り返し巻取り収容において、第1電極52の破断が発生せず、表示部の長期に安定な表示が可能となる。
【0070】
また、上記において、画素部10が有機EL素子20により構成された有機EL表示装置とされているが、本発明に係る表示装置は、これに限定されることはなく、画素部10が電気泳動素子から構成された電気泳動表示装置とされても良い。
【0071】
電気泳動表示装置は、画素部が電気泳動素子をマトリックス状に多数配列した構成とされている。図15に電気泳動素子60の構成を示す要部縦断面図を示す。すなわち、電気泳動表示装置の画素部は、例えば透明基板であるフィルム状プラスチック基板61上にストライプ状透明電極である第1電極62が複数設けられ、その上に誘電体層63と誘電体層63中に分散され、2色の異なる電荷に帯電した顔料を有するマイクロカプセル64とからなる表示層66が設けられ、さらに、第1電極62と直交するようにして、反射電極としてのストライプ状の第2電極65が複数設けられて構成されたもので、透明電極である第1電極62と第2電極65とが交差する位置に電気泳動素子60が形成された構成となっている。
【0072】
以上のように構成された電気泳動素子を備えた表示部2において、画素部10の第1電極52は、有機EL素子の場合と同様に巻取り方向に対して垂直な方向に配置されている。したがって、表示部2の巻取り収容に際して、第1電極62には曲げ応力が加えられず、結果として繰り返し巻取り収容において、第1電極62の破断が発生せず、表示部の長期に安定な表示が可能となる。
【0073】
上記において、画素部がEL素子や電気泳動素子により構成されたパッシブマトリックス型のフレキシブル表示装置について記載したが、本発明はこれらに限定されることはなく、信号配線、又は表示素子の一方のストライプ状表示電極の材料に金属酸化物を用いた表示素子から構成されるフレキシブル表示装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明を適用した有機EL表示装置の一例の概略斜視図であって、使用する状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示した有機EL表示装置であって、その巻取り収容した状態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明を適用した有機EL表示装置の表示部と回路部の構成を示した要部斜視図である。
【図4】本発明を適用した有機EL表示装置の表示部と回路部の構成を示した要部平面図である。
【図5】本発明を適用した有機EL表示装置に備えられた有機EL素子の構成を示す要部斜視図である。
【図6】本発明を適用した有機EL表示装置に備えられた有機EL素子の構成を示す要部断面図である。
【図7】表示部の一側端部に把手が配置された本発明を適用した有機EL表示装置の概略斜視図であって、使用する状態を示す概略斜視図である。
【図8】本発明を適用した有機EL表示装置を巻取り収納した状態に保持する手段としてマグネットを配置した状態を示す斜視図である。
【図9】表示部の両端に巻取り部を配置した本発明を適用した有機EL表示装置の概略斜視図であって、使用する状態を示す概略斜視図である。
【図10】図9に示した有機EL表示装置であって、その巻取り収容した状態を示す概略斜視図である。
【図11】表示部を凹面保持するための円弧形状を有する開口部を備えた本発明を適用した有機EL表示装置を使用する状態を示す概略斜視図である。
【図12】有機EL素子の一構成例を示す要部斜視図である。
【図13】有機EL素子の一構成例を示す要部断面図である。
【図14】無機EL素子の構成を示す要部断面図である。
【図15】マイクロカプセル型電気泳動素子の構成を示す要部断面図である。
【図16】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す縦断面図である。
【図17】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す縦断面図である。
【図18】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す縦断面図である。
【図19】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す縦断面図である。
【図20】本発明を適用した有機EL表示装置の製造工程を示す平面図である。
【符号の説明】
【0075】
1:有機EL表示装置、
2:表示部、
3:回路部、
3a:回路部本体、3b:回路部蓋、
4:収容部、
4a:収容部本体、4b:収容部蓋、
5:開口部、
6:回転軸、
7:駆動回路、
10:画素部、
13:配線
11:縦配線、12:横配線、
16:配線部、
20:有機EL素子、
21:フィルム状プラスティック基板、
22:陽極、
26:陰極、
27:保護層、
28:有機EL層、
23:正孔輸送層、24:有機発光層、25:電子輸送層、
32:把手、
33:マグネット、
34:第2の収容部、
35:第2の巻取り部、
36:収容部、
37:円弧形の開口部、
40:トップエミッション型有機EL素子
41:フィルム状金属基板、
50:無機EL素子、
51:フィルム状プラスティック基板、
52:第1電極、
58:無機EL層、
53:第1誘電体層、54:無機発光層、55:第2誘電体層、
56:第2電極、
57:保護層
60:電気泳動素子
61:フィルム状プラスティック基板、
62:第1電極、
65:第2電極、
66:表示層、
63:誘電体層、64:マイクロカプセル、
71:フィルム状プラスティック基板、
72:陽極、
73:陽極開口部、
74:絶縁層、
75:有機EL層、
76:陰極、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部および該表示部を駆動するための回路部を備え、該表示部はフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板上に一対の電極、および該電極間に少なくとも1層の表示要素を挟持した表示素子を有し、所定の方向に巻取り収容および引き出し可能である表示装置であって、前記電極の一方は金属電極であり、前記電極の他方は金属酸化物よりなるストライプ状電極であり、該ストライプの長辺を該表示装置の巻取り方向に対して直角方向に配置して有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示装置は、前記表示部と前記回路部とを収容するための収容部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示装置は、前記収容部に前記表示部を出し入れするための開口部をさらに有し、該開口部は前記表示部を湾曲保持するため円弧形状を有することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示装置は、前記表示部を巻取りするための巻取り部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記回路部は、前記巻取り部の内部に配置されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示素子は、印加された電界により発光、又は変化する光学特性を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示素子は、発光素子であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示素子は、有機EL素子であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項1】
表示部および該表示部を駆動するための回路部を備え、該表示部はフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板上に一対の電極、および該電極間に少なくとも1層の表示要素を挟持した表示素子を有し、所定の方向に巻取り収容および引き出し可能である表示装置であって、前記電極の一方は金属電極であり、前記電極の他方は金属酸化物よりなるストライプ状電極であり、該ストライプの長辺を該表示装置の巻取り方向に対して直角方向に配置して有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示装置は、前記表示部と前記回路部とを収容するための収容部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示装置は、前記収容部に前記表示部を出し入れするための開口部をさらに有し、該開口部は前記表示部を湾曲保持するため円弧形状を有することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示装置は、前記表示部を巻取りするための巻取り部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記回路部は、前記巻取り部の内部に配置されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示素子は、印加された電界により発光、又は変化する光学特性を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示素子は、発光素子であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示素子は、有機EL素子であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−52040(P2008−52040A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228025(P2006−228025)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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