説明

表示装置

【課題】モニター素子を含む回路の障害の発生時においても、表示素子の表示状態を維持することができる表示装置を提供すること。
【解決手段】定電流源1よりモニター素子Exに電流が供給され、この時のモニター素子の順方向電圧値Vfを検出するモニター回路2と、前記モニター回路で検出された前記順方向電圧値に応じて生成される第一の電圧Vc1を、表示パネル7に配置された表示素子に駆動電圧として供給する駆動電源回路3とが具備されている。前記モニター素子もしくは前記モニター回路の故障を検出する故障検出手段4と、前記故障検出手段によって前記故障が検出された場合に、前記駆動電圧を前記第一の電圧以外の第二の電圧Vc2に切り替える駆動電圧切替え手段5がさらに備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の自発光素子を表示画素として例えばマトリクス状に配列した表示パネルの駆動技術に関し、特に前記自発光素子の経時変化等により発生する発光特性の変化を抑制することができるようにした表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯型情報端末機(PDA)などの普及によって、高精細な画像表示機能を有し、薄型かつ低消費電力化を実現することができる表示パネルの需要が増大しており、従来より液晶表示パネルがその要求を満たす表示パネルとして多くの製品に採用されてきた。一方、昨今においては自発光型素子であるという特質を生かした有機EL素子を用いた表示パネルが実用化され、これが従来の液晶表示パネルに代わる次世代の表示パネルとして注目されている。
【0003】
前記有機EL素子は、基本的にはガラス等の透明基板上に、例えばITOによる透明電極と有機物質からなる発光機能層と金属電極とが順次積層されることで構成されている。そして、前記発光機能層は有機発光層の単一層、あるいは有機正孔輸送層と有機発光層からなる二層構造、または有機正孔輸送層と有機発光層および有機電子輸送層からなる三層構造、さらにこれらの適切な層間に電子もしくは正孔の注入層を挿入した多層構造になされる場合もある。
【0004】
図1は、このような有機EL素子の発光静特性を示したものである。これによれば、有機EL素子は図1(a)に示すように、駆動電流Iにほぼ比例した輝度Lで発光し、図1(b)に実線で示すように駆動電圧Vが発光閾値電圧Vth以上の場合において急激に電流Iが流れて発光する。
【0005】
換言すれば、駆動電圧が発光閾値電圧Vth以下の場合には、EL素子には電流は殆ど流れず発光しない。したがって、EL素子の輝度特性は図1(c)に実線で示すように前記閾値電圧Vthより大なる発光可能領域においては、それに印加される電圧Vの値が大きくなるほど、その発光輝度Lが大きくなる特性を有している。
【0006】
一方、前記した有機EL素子は、長期の使用によって素子の物性が変化し、順方向電圧Vfが大きくなることが知られている。このために、有機EL素子は図1(b)に示したように実使用時間によって、V−I特性が矢印に示した方向(破線で示した特性)に変化し、したがって、輝度特性も低下することになる。また、前記した有機EL素子は、素子の成膜時における例えば蒸着のばらつき等によっても初期輝度にばらつきを発生させるという問題も抱えており、これにより、入力映像信号に忠実な輝度階調を表現することが困難になる。
【0007】
さらに、有機EL素子の輝度特性は、動作温度によって概ね図1(c)に破線で示すように変化することも知られている。すなわちEL素子は、前記した発光閾値電圧より大なる発光可能領域においては、それに印加される電圧Vの値が大きくなるほどその発光輝度Lが大きくなる特性を有するが、高温になるほど発光閾値電圧が小さくなる。したがって、有機EL素子は高温になるほど小さい印加電圧で発光可能な状態となり、同じ発光可能な印加電圧を与えても、高温時は明るく低温時は暗いといった輝度の温度依存性を有している。
【0008】
加えて、前記したEL素子はその発光色に応じて駆動電圧に対する発光効率が異なるという問題を有しており、現状において実用化し得るR(赤)、G(緑)、B(青)の各色をそれぞれ発光するEL素子の発光効率は、初期の段階においては概ね図1(d)に示したようにGの発光効率が高く、Bの発光効率が最も低いという状況にある。そして、これらR,G,Bを発光する各EL素子の個々においても、図1(b)および(c)で示したような経時変化および温度依存性をそれぞれ有している。
【0009】
前記した経時変化および温度依存性は、特にEL素子を定電圧で駆動した場合において顕著に現れる。これは素子の順方向のインピーダンスが累計駆動時間や周囲環境によって変化するため、これに伴ってEL素子に流れる電流が変化するためである。
【0010】
そこで、表示パネルに配列されて発光表示を行なうEL素子とは別に、その順方向電圧Vfを測定するモニター用のEL素子を具備し、モニター用のEL素子より得られる順方向電圧Vfを利用して、前記電源部からもたらされる駆動電圧を制御することが特許文献1〜3に開示されている。
【0011】
この特許文献1〜3に開示された構成によると、EL素子の経時変化や環境温度の変化に対応して電源部からもたらされる駆動電圧が制御され、EL素子の経時変化等による発光特性の変化を抑制させることができる。またこの構成によると、EL素子の発光駆動に必要な電圧値を常に確保することができ、余分な電圧マージンを少なくすることができるので、電源の利用効率を向上させることができる。
【特許文献1】特開2004−252036号公報
【特許文献2】特開2005−107003号公報
【特許文献3】特開2006−79077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前記した特許文献1に開示の発明においては、モニター素子のアノード電位(順方向電圧Vf)をフィードバック電圧として利用し、表示素子に与える駆動電圧を制御するものである。このために、モニター素子に障害が発生して例えばショート状態となった場合、モニター素子のカソード電位(例えばグランド電位などの低い電位)をフィードバック電圧として検出するために、表示素子(有機EL素子)に供給される駆動電圧が極端に低下して表示を行うことができなくなるという問題を抱えている。
【0013】
また、前記した特許文献2に開示の発明は、表示素子をモニター素子に兼用したものであり、いずれかのモニター素子が開放(オープン)状態となった場合において、フィードバック動作により表示素子に供給される駆動電圧が極端に上昇するのを防止するため、表示素子に供給される駆動電圧を生成するスイッチングレギュレータの動作を停止させるようにしたものである。これによると、いずれかのモニター素子がオープン状態となった場合においては、表示素子に供給される駆動電圧値はほぼゼロとなるため表示動作は不能となる。
【0014】
さらに、前記した特許文献3に開示の発明は、モニター素子が短絡(ショート)状態となった場合において、ショートしたモニター素子への電流供給を自動的に遮断する機能を備えたものであり、モニター素子の障害の発生をユーザに知らせる機能がなく、またモニター素子に接続されたスイッチを含む回路が故障した場合には、同様に表示が正常に行われなくなるという問題が発生する。
【0015】
前記した特許文献1〜3に開示の発明は、いずれもモニター素子等に障害が発生した時に、回路を保護するために表示素子に与える駆動電圧を低下させる対策を施したものであり、これによるとモニター素子等に障害が生じた時に、表示が消灯状態になされる。
【0016】
ところで、医療機器や航空機の計器などに採用される表示装置においては、表示が消灯状態になされた場合においては人命に影響を及ぼす度合いが非常に大きい。したがって、携帯電話機やカーオーディオなどのコンシューマー機器に採用される表示装置よりも表示に厳しい信頼性が要求され、この点の改善が望まれる。
【0017】
この発明は、前記したような観点に基づいてなされたものであり、前記したモニター素子のショート状態のみならず、モニター素子の開放(オープン)状態や、モニター素子の順方向電圧値を検出するモニター回路の障害の発生時において、所望の表示状態(発光輝度など)とは異なる状態ではあるが、表示素子の表示状態を維持することができる表示装置を提供し、さらには、障害が発生したことを報知する手段を持つことにより該表示装置の修理や交換を促す機能を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる表示装置における好ましい基本形態は、請求項1に記載のとおり、表示に寄与する複数の表示素子と、複数の前記表示素子によって構成された表示画面と、表示に寄与しない少なくとも1つのモニター素子と、前記モニター素子に電流が供給された時の前記モニター素子の順方向電圧値を検出するモニター回路と、前記モニター回路で検出された前記順方向電圧値に応じて生成した第一の電圧を、前記複数の表示素子に駆動電圧として供給する駆動電源回路とを具備した表示装置であって、前記モニター素子もしくは前記モニター回路の故障を検出する故障検出手段と、前記故障検出手段によって前記故障が検出された場合に、前記駆動電圧を前記第一の電圧以外の第二の電圧に切り替える駆動電圧切替え手段とを備えた点に特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明にかかる表示装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図2はその第1の実施の形態をブロック図で示したものであり、電圧源Vccによって駆動される定電流源1が具備されると共に、カソード端子が基準電位点に接続されたモニター素子Exのアノード端子に、前記定電流源1より定電流が供給されるように構成されている。
【0020】
なお、前記モニター素子Exは後述する表示画素を構成する有機EL素子E1と同一の電気的特性(同一の仕様)を有する素子が使用されていることが望ましい。好ましくは、モニター素子Exは表示画素を構成する後述する有機EL素子E1と共に、同一の表示パネル上の一部に同一の製造プロセスによって同時に成膜されて形成される。
【0021】
前記モニター素子Exのアノード端子には、前記定電流の印加によりモニター素子Exの順方向電圧Vfが生成され、これはモニター回路2に供給される。前記モニター回路2は、例えばサンプリングホールド回路により構成されており、これによりホールドされた前記順方向電圧Vfに基づく出力は、駆動電源回路3に供給されるように構成されている。
【0022】
前記駆動電源回路3は例えばバッテリを電源とするスイッチングレギュレータにより構成されており、前記モニター回路2より出力される前記順方向電圧Vfに基づく制御電圧に応じて、出力電圧Vc1を制御するように動作する。なお、前記出力電圧Vc1を第一の電圧と称呼することとし、この第一の電圧Vc1は駆動電圧切替え手段5に供給されるように構成されている。
【0023】
前記駆動電圧切替え手段5は、例えばFETなどのアナログスイッチにより構成されており、通常時においては前記駆動電源回路3からもたらされる前記第一の電圧Vc1を表示パネル7に配置された表示画素に駆動電圧として供給するように構成されている。したがって、表示パネル7に配置された後述する表示画素は、前記したモニター素子Exにより得られる順方向電圧Vfに基づく駆動電源回路3からもたらされる駆動電圧により点灯駆動される。
したがって、表示パネル7に配置された後述する表示画素は、経時変化ならびに環境温度に依存されることなく発光駆動される。
【0024】
なお、前記表示パネル7には縦および横方向に多数の表示画素がマトリクス状に配置されてアクティブマトリクス型表示パネルが構成されているが、図においては紙面の都合により表示パネル7には一つの表示画素の画素構成を示している。すなわち、前記表示パネル7内に描いた画素構成は、有機EL素子を表示素子として使用した場合の最も基本的な構成例を示したものであり、制御用トランジスタT1、駆動用トランジスタT2、電荷保持用キャパシタCs、および発光素子として機能する有機EL素子E1により構成されている。
【0025】
そして、制御用トランジスタT1のゲートに供給されるゲートドライバ8からのゲート制御パルスに同期して、制御用トランジスタT1のソースに供給されるデータドライバ9からのデータ信号に基づいて、有機EL素子E1は選択的に点灯駆動される。
【0026】
一方、モニター回路2より出力される制御電圧(以下、これをモニター出力とも言う。)は、故障検出手段4にも供給されるように構成されている。前記故障検出手段4は、前記モニター出力を受けて、前記モニター素子Exおよびモニター回路2を含む回路構成の故障を検出する機能を備えている。
【0027】
そして、前記故障検出手段4が前記モニター素子Exおよびモニター回路2を含む回路構成の故障を検出した場合には、前記駆動電圧切替え手段5を切替え制御し、駆動電源回路3からもたらされる第一の電圧Vc1から、固定電圧である第二の電圧源Vc2に切替えるように動作する。なお、前記第二の電圧源Vc2による固定電圧は、前記表示パネル7に配置された各表示画素を点灯駆動することができる予め定められた値に設定されている。これにより、表示パネル7に配置された表示画素は、前記第二の電圧源Vc2からの固定電圧により点灯駆動されるようになされる。
【0028】
図3aは、図2に示す故障検出手段4の第一の例を示したものである。この図3に示す故障検出手段4は、1つの電圧コンパレータCo1により構成されており、電圧コンパレータCo1は、基準電圧入力端子Co1aと信号電圧入力端子Co1bと比較結果出力端子Co1cを備えている。基準電圧入力端子Co1aには、基準電圧Va(以下、第1の基準電圧とも言う。)が供給されており、信号電圧入力端子Co1bには前記したモニター出力が供給されている。基準電圧入力端子Co1aの電圧よりも信号電圧入力端子Co1bの電圧が高くなった場合、すなわち、前記モニター出力が前記基準電圧Vaの値よりも大きな値となった場合には、比較結果出力端子Co1cから故障状態を示す論理信号Aが出力されるように作用する。
【0029】
図3bは、図2に示す故障検出手段4の第二の例を示したものである。前記第一の例と同様に1つの電圧コンパレータCo2により構成されており、基準電圧入力端子Co2aと信号電圧入力端子Co2bと比較結果出力端子Co2cを備えている。基準電圧入力端子Co2aには、基準電圧Vb(以下、第2の基準電圧とも言う。)が供給されており、信号電圧入力端子Co2bには前記したモニター出力が供給されている。基準電圧入力端子Co2aの電圧よりも信号電圧入力端子Co2bの電圧が低くなった場合、すなわち、基準電圧Vbよりもモニター出力の電圧が低くなった場合に、比較結果出力端子Co2cに故障状態を示す論理信号Bが出力される。
【0030】
図4は、図2に示す故障検出手段4の第三の例を示したものである。この図4に示す故障検出手段4は、図3aに示したコンパレータCo1と図3bに示したコンパレータCo2とを組み合わせ、更に論理回路を追加した構成となっている。一方のコンパレータCo1は、図3aに示したコンパレータCo1と同一の機能を果たす。また他方のコンパレータCo2は、図3bに示したコンパレータCo2と同一の機能を果たす。そして、前記第1の基準電圧Vaと第2の基準電圧Vbとの関係は、Va>Vbになされている。2つのコンパレータの比較結果出力端子Co1cとCo2cは論理回路OR1のゲートに接続され、少なくともいずれか一方の比較結果出力端子から故障状態を示す論理信号が出力された場合には論理回路の出力端子から故障状態を示す論理信号Cが出力されるように構成されている。
【0031】
したがって、図4に示した故障検出手段4の構成によると、前記モニター出力が前記基準電圧Vaの値よりも大きな値となった場合及び前記モニター出力が前記第2の基準電圧Vbの値よりも小さな値となった場合には、前記論理回路OR1の出力端子から故障状態を示す論理信号Cが出力されるように作用する。すなわち、図4に示した故障検出手段4の構成によると故障の有無及び故障モードを検出することができる。
【0032】
図5はモニター素子Exおよびモニター回路2において発生する故障状態と、図3および図4に示した故障検出手段4により検出される故障検出動作を説明するものである。なお、図5においては図2に示したモニター素子Exおよびモニター回路2を含む回路構成に加えてトランジスタT3が具備され、トランジスタT3のソース電極およびドレイン電極が、定電流源1とモニター素子Exとの間に挿入されている。
【0033】
前記トランジスタT3は、前記表示パネル7に配置された各表示画素を構成する有機EL素子E1の平均的な点灯時間と、モニター素子Exへの通電時間とを概ね一致させるために設けられたものであり、トランジスタT3のゲートにはパルス幅変調(PWM=Pulse Width Modulation)信号が供給されるように構成される。
【0034】
これにより、モニター素子Exによって得られる順方向電圧Vfの経時変化と、表示パネル7における各EL素子E1の平均した順方向電圧の経時変化とを概ね一致させることが可能となる。したがって、駆動電源回路3から表示パネル7に配置された各表示画素にもたらされる駆動電圧の良好な補償特性を得ることができる。
【0035】
図5に示す構成において、モニター素子Exおよびモニター回路2を含む回路構成における故障態様としては、図5に示したDa,Db,Dcの箇所における断線、また定電流源1、トランジスタT3、モニター素子Exの開放(オープン)状態、さらにモニター素子Exが短絡(ショート)状態となることが考えられる。
【0036】
図3に示した1つの電圧コンパレータCo1により構成された故障検出手段4の構成によると、トランジスタT3のオープン状態、図5のDcで示す箇所における断線、モニター素子Exのオープン状態のそれぞれにおいて、コンパレータCo1からは論理信号Aが出力される。これにより、図2に示す駆動電圧切替え手段5は、第二の電圧源Vc2を選択するように動作する。
【0037】
前記した故障態様によると、駆動電源回路3からもたらされる第一の電圧Vc1は、高圧の状態になされ、表示パネル7に配置された各表示画素に対して障害を与えるという問題を招来させる。しかしながら、表示パネル7には第二の電圧源Vc2が供給されることで、温度および経時変化による補償は得られないものの、表示パネル7に配置された各表示画素は発光駆動動作が継続されることになる。
【0038】
次に図4に示した2つの電圧コンパレータCo1,Co2により構成された故障検出手段4の構成によると、第1のコンパレータCo1においては、図3に示す例と同様に、トランジスタT3のオープン状態、図5のDcで示す箇所における断線、モニター素子Exのオープン状態のそれぞれにおいて、コンパレータCo1からは論理信号Aが出力され、論理回路OR1からは論理信号Cが出力される。これにより、図2に示す駆動電圧切替え手段5は、第二の電圧源Vc2を選択するように動作し、図3に示す例と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
また、第2のコンパレータCo2においては、定電流源1の開放(オープン)状態、図5のDa,Dbで示す箇所における断線、モニター素子Exの短絡(ショート)状態、トランジスタT3のショート状態のそれぞれにおいて、コンパレータCo2からは論理信号Bが出力され、論理回路OR1からは論理信号Cが出力される。これにより、図2に示す駆動電圧切替え手段5は第二の電圧源Vc2を選択するように動作する。
【0040】
前記した故障態様によると、駆動電源回路3からもたらされる第一の電圧Vc1は、低圧の状態になされ、表示パネル7に配置された各表示画素を発光駆動させることが不可能になるという問題を招く。しかしながら、表示パネル7には第二の電圧源Vc2が供給されることで、温度および経時変化による補償は得られないものの、表示パネル7に配置された各表示画素は発光駆動動作が継続されることになる。
【0041】
図6は、この発明にかかる表示装置の第2の実施の形態をブロック図で示したものである。なお、この図6に示す実施の形態においては、図2に示す構成に比較して符号6で示す故障報知手段が加わっており、他は図2に示す構成と同一である。したがって図6においては図2に示した各部と同一の機能を果たす各ブロックを同一の符号で示し、その説明は省略する。
【0042】
図6に示す故障報知手段6は、故障検出手段4からもたらされる前記した論理信号A又は論理信号B又は論理信号Cを受けた時に動作するように構成されている。すなわち、故障報知手段6は前記駆動電圧切替え手段5が第二の電圧源Vc2を選択するのに同期して動作する。
【0043】
故障報知手段6としては、ブザーによる音で報知するかスピーカを用い音声によりアナウンスする手段、発光ダイオード等の光電変換素子を利用して光で報知する手段、もしくは予め定められた警報メッセージを表示パネル7の一部にスーパーインポーズさせるなどの手段を採用することができる。これにより、モニター素子Exおよびモニター回路2を含む回路構成の一部に故障が発生し、表示パネル7は第二の電圧源Vc2からの固定電圧により点灯駆動されていることが報知される。
【0044】
なお、前記故障検出手段4として図4に示すように故障の有無及び故障モードを検出可能な構成を採用した場合においては、故障報知手段6は前記した論理信号Aまたは論理信号Bを判別して故障モードを特定することができる。したがって、前記故障報知手段6は特定した故障モードに応じて、異なった報知動作を行うように構成することもできる。
【0045】
以上説明した実施の形態は、いわば単色の自発光素子を表示画素に使用したモノクローム表示パネルを用いた表示装置を前提にしている。そこで、前記した有機EL素子に代表されるこの種の発光素子を用いて、カラー画像を表示しようとする場合には、例えば光の三原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)を個別に発光する素子を備えた各サブ画素を組として1つのカラー表示画素が構成される。
【0046】
この場合、前記R,G,Bの各サブ画素を構成するEL素子は、すでに説明したとおりそれぞれ発光効率が異なり、また表示画像に応じて点灯時間および点灯輝度も異なることから、各色の素子において経時変化の度合いに相違が発生することになる。さらに各サブ画素を構成するEL素子は、温度依存性もそれぞれの発光色の素子において異なる特性を有している。
【0047】
したがって、前記したようにカラー画像を表示する表示パネルを用いた装置においては、前記各素子の発光色に対応したモニター素子、モニター回路、駆動電源回路、故障検出手段、駆動電圧切替え手段がそれぞれ備えられていることが望ましい。前記した構成にすることで、経時変化および温度変化に対応して発生するカラーバランスの崩れを効果的に抑制させることができる。
【0048】
図7は、前記したR,G,Bの各サブ画素を備えるカラー表示パネルを用いた装置において好適に採用し得るこの発明の第3の実施の形態を示したものである。この図7に示す実施の形態は、1つの発光色に対応した故障検出手段により故障が検出された場合においては、駆動電圧切替え手段は、故障が検出されていない他の発光色に対応したモニター回路により検出された前記第二の電圧に切り替えるように動作する。
【0049】
すなわち、図7に示す実施の形態においては、前記したとおりサブ画素を構成する各素子の発光色に対応したモニター素子Ex、モニター回路2、駆動電源回路3がそれぞれ備えられ、さらにRのサブ画素に対応して故障検出手段4と、この故障検出手段4により切替え制御を受ける駆動電圧切替え手段5が備えられている。なお、図7においては図2に示した各部と同一の機能を果たす各ブロックを同一の符号で示すとともに、各符号の末尾に前記したR,G,Bの各符号を付けて示している。
【0050】
図7に示す構成においては、Rのサブ画素に対応するモニター回路2Rの出力を故障検出手段4が受けるように構成されている。そして、モニター素子Ex(R)およびモニター回路2Rを含む回路構成において故障が生じた場合には、駆動電圧切替え手段5は故障検出手段4からの前記した故障状態を示す論理信号を受けて、オフセット回路10Bまたは10Gからの出力を第二の電圧Vc2として選択し、これを表示パネル7に配置したRのサブ画素に駆動電圧として印加するように動作する。
【0051】
なお、前記オフセット回路10Bおよび10Gは、前記BおよびGのサブ画素に対応するそれぞれの駆動電圧源3B,3Gからの出力を、Rのサブ画素に対応した適正な電圧レベルに設定するようにレベルシフトさせるものである。
【0052】
斯くして図7に示した構成によると、Rのサブ画素に対応するモニター素子Ex(R)およびモニター回路2Rを含む回路構成において故障が生じた場合においては、BまたはGのサブ画素に対応する駆動電源回路3Bまたは3Gの出力を、第二の電圧Vc2として利用するように動作する。そして、オフセット回路10Bまたは10Gによりレベルシフトすることで、よりRのサブ画素に近似した温度依存性および経時変化特性を得ることができる。
【0053】
なお、図7に示す構成においては、Rのサブ画素に対応するモニター回路2Rに故障検出手段4が接続されているが、この故障検出手段4は、BおよびGのサブ画素に対応して同様に設けることができる。また、図7に示す実施の形態においても、故障検出手段4の出力を利用して、図6に示したように故障報知手段6を駆動させるように構成することができる。
【0054】
図8は、前記したR,G,Bの各サブ画素を備えるカラー表示パネルを用いた装置において好適に採用し得るこの発明の第4の実施の形態を示したものである。なお、図8においては図7に示した各部と同一の機能を果たす各ブロックを同一の符号で示しており、したがってその説明は省略する。
【0055】
図8に示す実施の形態においては、R,G,Bに対応する各モニター回路2R,2G,2Bのモニター出力が、それぞれ駆動電圧切替え手段5に供給されるように構成されている。そして、前記駆動電圧切替え手段5は、Rに対応するモニター回路2Rのモニター出力によって検出される故障検出手段4の出力によって、切替え動作されるように構成されている。
【0056】
すなわち、故障検出手段4がモニター回路2Rの出力をモニターし、故障が検出されない通常状態においては、駆動電圧切替え手段5は図8に示すようにモニター回路2Rの出力を駆動電源回路3Rに供給するように動作する。これにより駆動電源回路3Rは、モニター回路2Rの出力に基づく第一の駆動電圧Vc1を、Rに対応する各画素に供給する。またモニター回路2Bおよび2Gの出力は、それぞれ駆動電源回路3Bおよび3Gに供給され、駆動電源回路3Bおよび3Gからの駆動電圧はBおよびGに対応する各サブ画素に供給される。
【0057】
図8に示す構成において、モニター回路2Rの出力をモニターする故障検出手段4が、モニター素子Ex(R)等の故障を検出した場合には、駆動電圧切替え手段5はモニター回路2Bまたは2Gの出力を選択して、駆動電源回路3Rに供給するように動作する。斯くして、図8に示す構成においても、Rのサブ画素に対応するモニター素子Ex(R)およびモニター回路2Rを含む回路構成において故障が生じた場合においては、BまたはGのサブ画素に対応するモニター回路の出力を利用して、駆動電源回路3Rにより駆動電圧を生成するように動作する。
【0058】
なお、図8に示す構成においては、Rのサブ画素に対応するモニター回路2Rに故障検出手段4が接続されているが、この故障検出手段4はBおよびGのサブ画素に対応して同様に設けることができる。また、図8に示す実施の形態においても、故障検出手段4の出力を利用して、図6に示したように故障報知手段6を駆動させるように構成することができる。
【0059】
以上説明した実施の形態においては、各画素を構成する発光素子として有機EL素子を用いた例を示したが、経時変化および温度依存性を有する他の発光素子を画素に用いた表示装置に適用することで、同様の作用効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】有機EL素子の諸特性を示す図である。
【図2】この発明にかかる表示装置の第1の実施の形態を示したブロック図である。
【図3a】図2に示す故障検出手段の第1の例を示した回路構成図である。
【図3b】同じく故障検出手段の第2の例を示した回路構成図である。
【図4】同じく故障検出手段の第3の例を示した回路構成図である。
【図5】モニター素子およびモニター回路において発生する故障の態様を説明する回路構成図である。
【図6】この発明にかかる表示装置の第2の実施の形態を示したブロック図である。
【図7】同じく第3の実施の形態を示したブロック図である。
【図8】同じく第4の実施の形態を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1,1R,1G,1B 定電流源
2,2R,2G,2B モニター回路
3,3R,3G,3B 駆動電源回路
4 故障検出手段
5 駆動電圧切替え手段
6 故障報知手段
7 表示パネル
8 ゲートドライバ
9 データドライバ
E1 発光素子(有機EL素子)
Ex モニター素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示に寄与する複数の表示素子と、複数の前記表示素子によって構成された表示画面と、表示に寄与しない少なくとも1つのモニター素子と、前記モニター素子に電流が供給された時の前記モニター素子の順方向電圧値を検出するモニター回路と、前記モニター回路で検出された前記順方向電圧値に応じて生成した第一の電圧を、前記複数の表示素子に駆動電圧として供給する駆動電源回路とを具備した表示装置であって、
前記モニター素子もしくは前記モニター回路の故障を検出する故障検出手段と、前記故障検出手段によって前記故障が検出された場合に、前記駆動電圧を前記第一の電圧以外の第二の電圧に切り替える駆動電圧切替え手段とを備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記モニター素子もしくは前記モニター回路の故障を報知する故障報知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記故障報知手段は、音もしくは光を発することにより、または前記表示画面の少なくとも一部の領域に表示を行うことにより、前記故障を報知するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
複数の前記表示素子として複数の異なる発光色からなる表示素子が具備され、前記各表示素子の発光色に対応して前記モニター素子、前記モニター回路、前記駆動電源回路、前記故障検出手段、前記駆動電圧切替え手段がそれぞれ備えられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第二の電圧の値は、複数の前記表示素子を点灯駆動することができる予め定められた値に設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
1つの発光色に対応した前記故障検出手段により故障が検出された場合においては、前記駆動電圧切替え手段は、故障が検出されていない他の発光色に対応したモニター回路により検出された前記第二の電圧に切り替えることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記故障検出手段は、前記モニター回路で検出された前記順方向電圧値を所定の基準電圧と比較することにより故障の判定を行うように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記基準電圧は複数種類設定され、前記故障検出手段は前記順方向電圧と前記複数の基準電圧との比較結果に応じて故障モードを特定するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−223145(P2009−223145A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69268(P2008−69268)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】