説明

表示装置

【課題】強い光源を必要とすることなく、所望の表示輝度で3次元立体画像を表示する表示装置を提供する。
【解決手段】2枚の表示パネル30及び70を多層配置した表示装置において、上パネル70の背面に下偏光板75を配置すると共に上偏光板76を配置し、下パネル30の背面に下偏光板35を配置する。このとき、下パネル30の前面には偏光板を配置しない。これにより、モジュール全体の透過率を上げることができると共に、上下パネルの上下面にそれぞれ偏光板を配置する場合と比較して、偏光板1枚分のコストを削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層の表示パネルを備え、3次元立体画像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の表示パネル(例えば、液晶表示パネル)を、観察者から見て異なった奥行き位置に配置することにより、観察者に3次元立体画像を表示する3次元表示装置が知られている。
このような3次元表示装置としては、各表示パネルの画素パターンの干渉に起因するモアレ(干渉縞)の発生を防止するために、複数の表示パネルの間に拡散板を配置するというものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、3次元表示装置において、各表示パネルは複数の画素を有し、複数の表示パネルの少なくとも1つが、観察者に近い側に配置され、表示パネルの表面に垂直な壁と、当該壁より観察者に近い側に配置される拡散板とを備えることで、表示分解能を低下させることなく、モアレの発生を防止するというものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3335998号明細書
【特許文献2】特開2004−336290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の3次元表示装置のように、表示パネルを2枚使用する表示装置の場合、バックライト(光源)からの光は表示パネル2枚を通ることになる。また、表示パネルの両面には偏光板を貼り付けるのが一般的であり、この場合、光源からの光はさらに4枚の偏光板を通ることになり、モジュール全体としての透過率が低くなる。そのため、モジュール表面上の輝度をある程度確保するには、バックライトの光を強める必要がある。
【0005】
しかしながら、バックライトの光を強めるとモジュール内での発熱が高くなり、偏光板や樹脂材料の部品の過熱保護に悪影響を及ぼすおそれがある。
そのため、モジュールの透過率を上げ、できるだけ多くの光を通すようにすることで、強い光源を必要とすることなく所望の表示輝度を得ることが望まれる。
そこで、本発明は、強い光源を必要とすることなく、所望の表示輝度で3次元立体画像を表示する表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明に係る表示装置は、第1の表示パネルと、該第1の表示パネルの背面に配置される第2の表示パネルとを備える表示装置において、
前記第1の表示パネルの前面に配置される第1の偏光板と、
前記第2の表示パネルの背面に配置される第2の偏光板と、
前記第1の表示パネルの背面に密着して固定、或いは前記第2の表示パネルの前面に密着して固定された第3の偏光板と、を備えることを特徴としている。
【0007】
これにより、第1の表示パネルと第2の表示パネルとの間に配置する偏光板を1枚として、モジュール全体の透過率を上げることができ、強いバックライト輝度を必要とすることなく、パネルの明るさを確保することができる。また、各表示パネルの上下面にそれぞれ偏光板を配置する場合と比較して、偏光板1枚分のコストを削減することができる。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第3の偏光板が、前記第1の表示パネルの背面に密着して固定されており、該第3の偏光板と所定の間隙を隔てて前記第2の表示パネルが配置されていることを特徴としている。
【0008】
これにより、第1の表示パネルと第2の表示パネルとの間に間隔があいていることに起因して、視覚を振ったときに表示が見えない領域が生じるのを確実に防止することができ、パネルの見栄えを向上させることができる。
さらに、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記第2の表示パネルの背面側に照明装置が備えられ、前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとを積層配置して3次元立体画像を表示することを特徴としている。
【0009】
これにより、照明装置からの強い光源を必要とすることなく、所望の表示輝度で3次元立体画像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の表示装置を構成する液晶モジュールを示す分解斜視図である。
この液晶モジュール1は、図1に示すように、バックライトユニット100とパネルユニット200とを備えている。
バックライトユニット100は、裏カバー10と、バックライト20とで構成され、パネルユニット200は、下パネル30と、下ケース40と、拡散板50と、上ケース60と、上パネル70と、前カバー80と、ソース基板90A及び90Bとから構成される。なお、この液晶モジュール1は、前カバー80側を正面、裏カバー側を背面とする。
【0011】
上パネル70及び下パネル30は、透明な絶縁性を有する材料、例えばガラス基板からなる液晶パネルであって、これらパネル70及び30は、2枚の基板を所定の間隔で対向させ、表示領域外周をシール材で接着すると共に液晶を封入した構成となっている。
このように、本実施形態における表示装置は、2枚の液晶パネルを観察者から見て異なった奥行き位置に配置した積層配置とし、例えば、上パネル70に車両などの動画像を表示し、下パネル30に背景画像を表示することで、3次元立体画像を表示することを可能としている。
【0012】
裏カバー10は、例えば金属板から構成され、バックライト20と、前カバー80を除くパネルユニット200とを収納可能な一定収納空間を定義する四方の側壁を有している。
バックライト20は、図示しない周知の光源、反射シート及び導光板を備えている。光源からの光は導光板に入射され、導光板はその光を導光板表面であるパネルユニット200方面へ出射する。また、反射シートは、導光板入射面から入射した光が導光板表面以外の面から出射しないように、導光板の背面に配置される。
【0013】
図2は、下パネル30及び上パネル70の概略構成を示す斜視図である。
下パネル30及び上パネル70は、上述したように、それぞれ上下2枚の基板及びこれらの間に充填された液晶層(図示せず)で構成されている。図2において、符号34aが下パネル30の上部基板、符号34bが下パネル30の下部基板であり、符号74aが上パネル70の上部基板、符号74bが上パネル70の下部基板である。
【0014】
上パネル70の上下基板74a,74bのうち、下部基板74bの一部は上部基板74aからはみ出しており、このはみ出した部分に駆動用ドライバIC71が実装されている。そして、図1に示すように、上パネル70とソース基板90Aとがフレキシブルプリント基板(以下、FPC)72を介して接続され、駆動用ドライバIC71には、FPC72により、ソース基板90Aから所要の駆動信号が供給される。
【0015】
ここで、FPC72とソース基板90Aとの接続部、及びFPC72と上パネル70との接続部は、それぞれ圧接、圧着若しくはコネクタ接続により接続されるようになっている。
上ケース60は、図1に示すように、中央に透孔が形成された枠形状のフレーム部61と、フレーム部61の一辺(図1のフレーム部61の上辺)において、当該フレーム部61の厚さ方向に延在しソース基板90Aを支持する基板受け部62とから構成され、ソース基板90Aは、組み付け時に、FPC72を略直角に折り曲げて上ケース60の基板受け部62にビス止めされる。
【0016】
また、上パネル70の上下面には、それぞれ上偏光板76及び下偏光板75が貼り付けられている(密着して固定されている)。
同様に、下パネル30の上下基板34a,34bのうち、下部基板34bの一部は上部基板34aからはみ出しており、このはみ出した部分に駆動用ドライバIC31が実装されている。そして、図1に示すように、下パネル30とソース基板90Bとがフレキシブルプリント基板(以下、FPC)32を介して接続され、駆動用ドライバIC31には、FPC32により、ソース基板90Bから所要の駆動信号が供給される。
【0017】
ここで、FPC32とソース基板90Bとの接続部、及びFPC32と下パネル30との接続部は、それぞれ圧接、圧着若しくはコネクタ接続により接続されるようになっている。ソース基板90Bは、組み付け時に、FPC32を略直角に折り曲げてバックライト20の側面である基板受け部22にビス止めされる。
また、下パネル30の下面(下パネル30の背面)には、下偏光板35が貼り付けられている。
【0018】
このような構成により、バックライト20からの出射光は下パネル30の背面に入射され、下偏光板35を通って下パネル30の前面から出射する。そして、その光が上パネル70の背面に入射され、下偏光板75と上偏光板76とを通って上パネル70の前面から出射する。
ここで、下偏光板75及び上偏光板76の透過軸はそれぞれ135度に設定されており、下偏光板35の透過軸は、下偏光板75及び上偏光板76の透過軸と90度ずれた45度に設定されているものとする。
【0019】
図1に戻って、下パネル30の前面には中央に透孔が形成された枠形状の下ケース40が配置され、拡散板50は、この下ケース40に支持される。また、拡散板50の前面には上ケース60が配置され、上パネル70は、この上ケース60に支持される。ここで、下ケース40及び上ケース60は、例えば樹脂材料により構成されているものとする。
拡散板50は、上パネル70と下パネル30との間に両パネルから所定の間隔を設けて配置される。
【0020】
すなわち、下パネル30の前面に配置される下ケース40の厚みによって、下パネル30と拡散板50との間に所定間隔(例えば、2mm程度)が確保されると共に、下ケース40の前面に配置される上ケース60のフレーム部61の厚みによって、上パネル70と拡散板50との間に所定間隔(例えば、17mm程度)が確保されるようになっている。
このように、上パネル70と下パネル30との間に拡散板50を配置することで、上パネル70と下パネル30との画素パターンが干渉してモアレ(干渉縞)が発生するのを防止している。なお、上記所定間隔は、モアレが適正に消失する位置に拡散板50が配置されるように設定するものとする。
【0021】
このような構成の液晶モジュール1を組み付ける際には、先ず、バックライト20の前面から下パネル30、下ケース40、拡散板50、上ケース60及び上パネル70を、この順番で積層する。その後、背面側から裏カバー10を被せると共に、前面側から前カバー80を被せ、ネジ等の締結部材81等によって固定することで液晶モジュール1が完成する。
【0022】
なお、図1において、上パネル70が第1の表示パネルに対応し、下パネル30が第2の表示パネルに対応し、上偏光板76が第1の偏光板に対応し、下偏光板35が第2の偏光板に対応し、下偏光板75が第3の偏光板に対応し、バックライト20が照明装置に対応している。
図3は、2枚の表示パネルの上下面にそれぞれ偏光板を貼り付けた場合の概略構成図である。
【0023】
下パネル1030は、基板1034の背面に下偏光板1035が配置されると共に、基板1034の前面に上偏光板1036が配置される。また、上パネル1070は、基板1074の背面に下偏光板1075が配置されると共に、基板1074の前面に上偏光板1076が配置される。
この場合、図示しない光源からの光は、下パネル1030の背面に入射され、下偏光板035と上偏光板1036とを通って下パネル1030の前面から出射する。そして、その光が上パネル1070の背面に入射され、下偏光板1075と上偏光板1076とを通って上パネル1070の前面から出射する。
【0024】
このとき、下偏光板1035及び上偏光板1076の透過軸はそれぞれ135度に設定され、上偏光板1036及び下偏光板1075の透過軸はそれぞれ45度に設定される。
このように、下パネル1030と上パネル1070との間に配置される偏光板1075及び1036の透過軸の角度は等しく、これら偏光板1075及び1036の作用は等しい。
【0025】
ところで、2枚の表示パネルを用いた表示装置において、図3に示すような、各表示パネルの上下面にそれぞれ偏光板を貼り付けた構成の場合、光源からの光は4枚の偏光板(1075,1076,1035,1036)を通ることになるので、全体としての透過率が低くなり、表示面が暗くなってしまう。
そこで、所望の表示輝度を得るためには、光源であるバックライト輝度を強めることが考えられるが、この場合、モジュール内での発熱が高くなり、偏光板や樹脂材料の部品の過熱保護に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0026】
したがって、バックライト輝度を強めることなく所望の表示輝度を得ることが望まれる。
図3からも明らかなように、上パネル1070と下パネル1030との間の2枚の偏光板1075,1036は、透過軸が等しくその作用が等しい。そのため、この2枚の偏光板1075及び1036のうち、何れか一方を削除しても理論上は問題がない。
【0027】
ところが、本実施形態のように、拡散板50を、下パネル30と上パネル70との間に両パネルから所定間隔を設けて配置する場合、下パネル30と上パネル70との間隔が比較的広くなる(例えば、19mm程度)。
このように、2枚の表示パネルの間隔が比較的広い場合に、上述した2枚の偏光板1075及び1036のうち下偏光板1075を削除すると、視覚を振ったときに表示面において表示が見えなくなる領域(非表示領域)が発生する。
【0028】
図4は、視覚を振ったときに発生する非表示領域を示す図である。
下パネル1030と上パネル1070との間に間隔αを設けた場合、視覚を振ったときに(視野角が90度より小さいときに)下パネル1030の端縁が表示面の内側に位置することになる。このとき、下パネル1030の前面に上偏光板1036を貼り付けていても、図4の斜線で示す領域は当該上偏光板1036がカバーできない領域となり、ここが非表示領域となってしまう。
【0029】
そして、この現象は、下パネル1030と上パネル1070との間隔αが広いほど顕著に現れる。このように、下パネル1030と上パネル1070との間に所定間隔が設けられている場合、上パネル1070の背面の下偏光板1075を削除することは製品として成り立たない。
そこで、本実施形態では、下パネル30の前面の偏光板を削除し、下パネル30と上パネル70との間には、上パネル70の背面に貼り付けられた下偏光板75のみが配置された構成とする。これにより、視覚を振ったときに非表示領域が生じるのを確実に防止することができると共に、上下パネルの上下面にそれぞれ偏光板を配置する場合と比較して、モジュール全体の透過率を上げることができる。
【0030】
このように、上記実施形態では、上パネルの前面に配置される第1の偏光板と、下パネルの背面に配置される第2の偏光板と、上パネルの背面及び下パネルの前面の何れか一方に配置される第3の偏光板とを備える構成とするので、上パネルと下パネルとの間に配置する偏光板を1枚にすることができ、モジュール全体の透過率を上げて表示輝度を上げることができる。その結果、強い光源を必要とすることなく所望の表示輝度を得ることができるので、光源の輝度を強めることに起因するモジュールの発熱を抑制し、部品の過熱保護を実現することができる。
【0031】
また、上パネルと下パネルとの間に配置する偏光板を1枚にするので、各表示パネルの上下面にそれぞれ偏光板を配置する場合と比較して、偏光板1枚分のコストダウンを実現することができる。
さらに、上パネルと下パネルとを所定の間隔を設けて配置し、前記第3の偏光板を上パネルの背面に配置するので、視覚を振ったときに表示が見えない領域が生じるのを確実に防止することができ、パネルの見栄えを向上させることができる。
【0032】
また、このような構成の上パネル及び下パネルを積層配置し、下パネルの背面側にバックライトを備えることで、強いバックライト輝度を必要とすることなく、所望の表示輝度で3次元立体画像を表示する表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における実施形態の液晶モジュールを示す分解斜視図である。
【図2】パネルの概略構成を示す斜視図である。
【図3】表示パネルの上下面に偏光板を貼り付けた場合の概略構成図である。
【図4】非表示領域を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1…液晶モジュール、10…裏カバー、20…バックライト、22…基板受け部、30…下パネル、31…駆動用ドライバIC、32…FPC、35…下偏光板、36…上偏光板、40…下ケース、50…拡散板、60…上ケース、61…フレーム部、62…基板受け部、70…上パネル、71…駆動用ドライバIC、72…FPC、75…下偏光板、80…前カバー、90A,90B…ソース基板、100…バックライトユニット、200…パネルユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表示パネルと、該第1の表示パネルの背面に配置される第2の表示パネルとを備える表示装置において、
前記第1の表示パネルの前面に配置される第1の偏光板と、
前記第2の表示パネルの背面に配置される第2の偏光板と、
前記第1の表示パネルの背面に密着して固定、或いは前記第2の表示パネルの前面に密着して固定された第3の偏光板と、を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第3の偏光板が、前記第1の表示パネルの背面に密着して固定されており、該第3の偏光板と所定の間隙を隔てて前記第2の表示パネルが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2の表示パネルの背面側に照明装置が備えられ、前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとを積層配置して3次元立体画像を表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−86124(P2009−86124A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253598(P2007−253598)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】