説明

表示装置

【課題】画像のエッジ部分や文字部分等の視認性の低下を抑制する。
【解決手段】情報データの画像をスクリーンに投影する投影手段と、前記投影手段により投影される画像の形状を変形させるキーストン補正手段と、前記情報データの種類を判定する判定手段と、前記判定手段により判定された情報データの種類に応じて、前記キーストン補正手段による画像の形状の変形の制限の度合いを決定する制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、例えば、画像を表示するための液晶パネルを駆動する駆動回路を内蔵し、液晶パネルにより生成された画像をスクリーンに投影する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、液晶パネルにより生成された画像をスクリーンに投影するプロジェクタが知られている。プロジェクタにより、スクリーンに対して斜め方向から映像を投影した場合に投影画面が例えば台形状に歪んでしまうことがある。そこで、プロジェクタでは、投影画像に対し台形状の歪みを打ち消すような補正を加えることにより、投影画面の台形状の歪みを解消するキーストン補正機能を備えたものがある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−122617
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のプロジェクタにおいては、キーストン補正をする際は、液晶パネルの表示素子上に形成される投影用画像を、水平方向、垂直方向に拡大したり、縮小したりしていた。このようにして、投影画面の台形状の歪みと表示素子上での映像領域の歪みとが相殺し、正常なアスペクト比の長方形の映像表示領域に近づくようにしてスクリーンに表示させていた。この動作は、自動で行われることもあるし、手動で行われることもあった。
【0004】
しかし、キーストン補正をする際に、画像が縮小される部分については、本来の投影画像の画素データの一部を間引くことにより縮小していたので、画像が縮小される部分については解像度が低下してしまうことになる。画像の解像度が落ちると、例えば、画像のエッジ部分(高周波成分)が見難くなったり、細かい文字等が見難くなったりしてしまう。すなわち、キーストン補正により画像が縮小(圧縮)される部分については、画像のエッジ部分や文字部分等の視認性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、視認性の低下を抑制することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な課題を解決するために、本発明の投影装置は、記憶媒体からファイルを読み出して再生する再生手段と、前記再生された画像をスクリーンに投影する投影手段とを有し、前記投影手段により投影される画像の形状を変形させるキーストン補正手段と、前記ファイルの種類を判定する判定手段と、前記判定手段により判定されたファイルの種類に応じて、前記キーストン補正手段による画像の形状の変形の制限の度合いの決定する制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、投影画像に文字や高周波成分が含まれる場合に、キーストン補正動作を制限するので、視認性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
本実施例では、液晶パネルを内蔵したプロジェクタについて説明する。
【0010】
図1は、本実施例のプロジェクタの主要な構成を示した図である。
【0011】
100は、プロジェクタ本体である。101は、プロジェクタの各ブロックを制御するための制御部である。102は、ユーザからの操作を受け付ける操作部である。103は、プロジェクタの各ブロックへの電源供給を制御する電源部である。
【0012】
104は、液晶部であり、1枚の液晶パネルや3枚の液晶パネル等で構成されており、この液晶パネル状に画像を形成する。105は、入力された画像信号に基づいて、液晶部104の液晶パネルに画像を形成させるための液晶駆動部である。106は液晶部104に光を供給する光源である。107は、光源106から発せられた光を液晶部104に供給することにより得られた光学像を不図示のスクリーンに投影するための投影光学系である。108は、光源106の光量等を制御するための光源制御部108である。また、109は、投影光学系107のズームレンズやフォーカスレンズ等の動作を制御し、ズーム倍率や焦点調整等を行う光学系制御部109である。
【0013】
110は、PCやDVDプレイヤー、テレビチューナー等からのアナログ映像信号を受け付けるアナログ入力部であり、RGB端子、S端子等からなる。111は、アナログ入力部により得られた映像信号をデジタル信号に変換するDA変換部である。112は、PCやDVDプレイヤー等からデジタル映像信号を受け付けるデジタル入力部であり、HDMI端子等からなる。HDMI端子の場合には、外部から制御信号も同時に送信されてくる場合があり、これにより、映像の制御等が行われることもある。113は、外部から映像データ、画像データ、映像ファイル等の各種の情報データのファイルを受け取る、又は外部に書き出す、USBインタフェースである。また、ポインティングデバイスや、キーボード、USB型のフラッシュメモリ等も接続されることもある。114は、カード型の記録媒体に対し、映像データ、画像データ、映像ファイル等の各種の情報データのファイルを読み書きするカードインタフェースであり、SDカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)等が挿入可能になっている。115は、イントラネット、インターネットから映像データ、画像データ、映像ファイル等の各種の情報データのファイル、その他の命令信号を受信したり送信したりする通信部であり、例えば、有線LANや無線LAN等で構成されている。116は、映像データ、画像データ、映像ファイル等の各種の情報データのファイルを保存する内蔵メモリであり、半導体メモリやハードディスク等で構成される。
【0014】
例えば、カードインタフェース114より入力されたドキュメントファイルは、ファイル再生部132により再生される。そして、ファイル再生部は、ドキュメントファイルから、ユーザに掲示するための画像信号を生成して、画像処理部117に出力する。
【0015】
また、デジタル入力部112により入力された映像信号や画像信号は直接、画像処理部117に送信される。
【0016】
画像処理部117は、これらのインタフェース、ファイル再生部132により得られた画像信号や制御部101により得られた映像信号等に、液晶部104で表示するのに適した補正を行う。例えば、画像信号の画素数を液晶パネルの画素数にあわせて変換し、液晶パネルの交流駆動のため、入力された映像信号のフレーム数を倍にし、液晶パネルによる画像形成に適した補正をする。因みに、液晶パネルの交流駆動とは、液晶パネルの液晶にかける電圧の方向を交互に入れ替えて表示させる方法であり、液晶パネルは、液晶にかける電圧の方向が正方向でも逆方向でも画像を生成できる性質を利用したものである。このとき、液晶駆動部105には、正方向用の画像と、逆方向用の画像が1枚ずつ送る必要があるので、画像処理部117では、映像信号のフレームの数を倍にする処理を行う。液晶駆動部105は、画像処理部117により得られた画像信号に基づいて、液晶部104の液晶パネルに画像を形成させる。
【0017】
また、画像処理部117は、スクリーンに対して斜め方向から映像を投影し投影画面が例えば台形状に歪んでしまう場合に、投影画像に対し台形状の歪みを打ち消すように画像の形状を変形させるキーストン補正も行う。キーストン補正をする際は、液晶パネルに表示される画像の水平方向及び/又は垂直方向の拡大/縮小率を変更している。このようにして、投影画面の台形状の歪みと表示素子上での映像領域の歪みとが相殺し、正常なアスペクト比の長方形の映像表示領域に近づくようにしてスクリーンに表示させるのである。このキーストン補正は、後述する傾きセンサ118により得られた傾き角に基づいて、自動的に動作しても良いし、ユーザが操作部102等を操作することにより、動作させてもよい。
【0018】
118は、プロジェクタ100の傾きを検出する傾きセンサである。119は、プロジェクタ100の動作時間、各ブロックの動作時間等を検出するタイマである。120は、プロジェクタの光源106の温度、液晶部104の温度、外気温等を計測する温度計である。
【0019】
121、122は、プロジェクタ100付属のリモコンやその他の機器からの赤外線を受信し、制御部101に信号を送る赤外線受信部であり、例えば、プロジェクタの前後方向等の複数箇所に設置されている。本実施例では、赤外線受信部121はプロジェクタ本体の後方、赤外線受信部122はプロジェクタ本体の前方に配置されている。
【0020】
123は、プロジェクタ100と不図示のスクリーンの距離を検出し、焦点距離を検出する焦点検出部である。124は、不図示のスクリーンの方向を撮像する撮像部である。125は、スクリーンにより反射される光の光量や輝度を計測するスクリーン測光部である。126は、光源から発せられる光の光量や輝度を計測する光源測光部である。
【0021】
127は、プロジェクタ100本体に配置され、プロジェクタの状態や警告等を表示する表示部である。128は、表示部127を制御する表示制御部である。
【0022】
129は、プロジェクタ100本体を持ち運んで使用するとき等に、電力を供給するバッテリである。130は、外部からの交流電力を受け入れ、所定の電圧に整流して電源部103に供給する電源入力部である。
【0023】
131は、プロジェクタ100内の熱を外部に放出するなどして、冷却するための冷却部であり、例えば、ヒートシンクとファンにより構成されている。
【0024】
ここで、プロジェクタ100の通常の動作について説明する。
【0025】
本実施例のプロジェクタの制御部101は、操作部102により電源ONの指示がなされたことにより、電源部103に各ブロックに電源を供給するように指示をだし、各ブロックを待機状態にする。そして、電源が投入された後、制御部101は、光源制御部108に光源106からの発光を開始するように指示をだす。次に、制御部101は、焦点検出部123により得られた焦点の情報等から、投影光学系107を調整するよう光学系制御部109に指示をだす。光学系制御部109は、投影光学系107のズームレンズやフォーカスレンズを動作させてスクリーン画面上に投影光が結像するよう制御する。
【0026】
このようにして、投影の準備が整う。次に、例えば、デジタル入力部112に入力された映像信号は、画像処理部117により液晶部104に適した解像度に変換され、また、ガンマ補正や輝度ムラ対策用補正、キーストン補正が加えられる。そして、画像処理部117により補正を加えられた映像信号は、液晶駆動部105により液晶部104に画像として形成される。
【0027】
そして、液晶部104の液晶パネルに形成された画像は、光源106から発せられた光により投影光学系107に導かれ、投影光学系107は不図示のスクリーンに画像を投影する。
【0028】
投影中は、制御部101は、光源106等の温度を温度計120により検出し、例えば、光源の温度が40度以上になったとき等に、冷却部131を動作させて冷却する。
【0029】
そして、操作部102により電源OFFの指示がなされたことにより、制御部101は、各ブロックに終了処理を行うよう通信をする。そして、終了の準備が整うと、電源部103は各ブロックへの電源供給を順次終了する。冷却部131は、電源OFFされた後しばらく動作し、プロジェクタを冷却する。
【0030】
ここでは、デジタル入力部112から入力された映像信号を表示する場合について説明したが、上記各種インタフェースから入力された映像データを表示する場合も同様の処理を行う。
【0031】
次に、キーストン補正について説明する。本実施例では、手動でキーストン補正を行う場合について説明する。本実施例では、プロジェクタ100が水平から約10度の上向きに投影している場合について説明する。
【0032】
図2、図3、図4は、キーストン補正について説明するための図であり、キーストン補正が施されていないときの、スクリーン投影画像と、画像処理部117により出力されているソース画像を並べて示した図である。201は、スクリーンに投影されている画像を示している。202は、画像処理部117により出力されているソース画像を示している。
【0033】
例えば、プロジェクタ100が水平から上向きに投影している場合、投影面の上端と下端とでは光学系107とスクリーンとの距離が異なる。そのため、画像の上の部分が引き延ばされてしまうことになり、投影画像201に示すような画像が投影されることになる。この時、ソース画像202は、通常の縦横比の画像を出力している。
【0034】
そこで、ユーザは画面を確認しながら、操作部102を操作し、キーストン補正を行うことになる。即ち、画像処理部117では、操作部102によって設定されたキーストン補正値に応じて、投影画像に対するキーストンの補正度合いを変更する。例えば、本実施例では、補正値を大きくするほど、画面の下端に比べて上端が短くなるようにキーストン補正処理を行う。具体的には、キーストン値を+5とすると、画像処理部117は、図3のようにソース画像302の画像を台形に変形させる。このような補正を行うことにより、投影画像301は、台形の歪みが少なくなる。
【0035】
ユーザは、画面を確認し、まだ歪んでいることを確認すると、更に操作部102を操作し、キーストン補正を行うことになる。例えば、キーストン値を+10とすると、画像処理部117は、図4のようにソース画像402の画像を更に変形させる。この様な補正を行うことにより、投影画像401は台形状歪みがほぼなくなり、通常のアスペクト比の投影画像を表示することができるようになる。
【0036】
本実施例では、手動でキーストン値を入力する手動キーストン補正について説明したが、傾きセンサ118の出力に応じて自動で行っても良い。この場合、傾きセンサ118によって、水平からプロジェクタ100が傾いていることを検知すると、制御部101は、傾いている角度に応じて、キーストン値を自動的に設定し、画像処理部117にソース画像を変形させるように指示を出す。
【0037】
以上の説明では、キーストン値を正の値に設定して、ソース画像の形状の上の部分を縮小していた。逆に、キーストン値を負の値に設定すると、ソース画像の形状の下の部分を縮小する。
【0038】
次に、本実施例のキーストン補正の制限について説明する。
【0039】
本実施例においては、USBインタフェース部113、カードインタフェース114、通信部115、内蔵メモリ116等から入力されたファイル(情報データ)に基づく画像を表示する場合について説明する。本実施例では、入力されたファイル(情報データ)の種類に基づいて、キーストン補正の制限値(キーストン制限値)を決める場合ついて説明する。
【0040】
図5は、本実施例のプロジェクタのキーストン補正の手順について説明するためのフロー図である。
【0041】
まず、プロジェクタの投影準備が完了した後に、例えば、カードインタフェース114により入力されたファイルは、ファイル再生部132により再生される。そうすると、ファイル再生部132は、再生したファイルからユーザに提示するための画像信号を生成し、画像処理部117に出力する。画像処理部117は、入力された画像信号を液晶駆動部105に送り、スクリーンに投影させる。
【0042】
この時、制御部101は、ファイル再生部132により再生されたファイルの拡張子、ファイルのデータ構造、ファイルヘッダ等から、ファイルの形式を判定する(S501)。
【0043】
次に、制御部101は、ファイル再生部132により再生されたファイルが画像ファイルであるか否かを判定する(S502)。画像ファイルである場合には(S502でYes)、制御部101は、キーストン制限値を例えば±15に決定する(S503)。画像ファイルであるかどうかを判定するには、拡張子が例えば「.JPG」や「.GIF」であることを判定すればよい。画像ファイルには、ビットマップ形式、TIFF形式、PNG形式などのファイルが含まれる。なお、これらのファイルフォーマットはほんの一例である。
【0044】
次に、ファイル再生部132により再生されたファイルが、画像ファイルでない場合には(S502でNo)、制御部101は、発表資料ファイルあるか否かを判定する(S504)。発表資料ファイルである場合には(S504でYes)、制御部101は、キーストン制限値を例えば±10に決定する(S505)。ファイル形式が発表資料ファイルであるかどうかを判定するには、拡張子が例えば「.PPT」であることを判定すればよい。
【0045】
次に、ファイル再生部132により再生された再生したファイルが、発表資料ファイルでない場合(S504でNo)制御部101は、ドキュメントファイルあるか否かを判定する(S506)。ドキュメントファイルである場合には(S506でYes)、制御部101は、キーストン制限値を例えば±5に決定する(S507)。ドキュメントファイルであるかどうかを判定するには、拡張子が例えば、「.TXT」や「.DOC」であることを判定すればよい。
【0046】
そして、再生したファイルがドキュメントファイルでない場合(S506でNo)制御部101は、キーストン制限値を決定しない(S508)。
【0047】
本実施例では、この様に再生したファイル(情報データ)の種類によってキーストン制限値を決定する。
【0048】
そして、キーストン制限値が設定された後に、操作部102によってキーストン補正の指示があった場合(S509)は、以下のような動作をする。
【0049】
例えば、ドキュメントファイルが再生されている場合、キーストン制限値は±5に設定されている(S507)。操作部102によってキーストン補正の指示があった場合、例えば、キーストン値+5までは、通常通りにキーストン補正をすることができる。しかし、キーストン値+5以上に補正をかけようとした場合には、制御部101は、投影画面にキーストン制限値を越えてしまうことを報知するための画面を生成して、画像処理部117に送信する。そして、キーストン補正の制限をするか、制限をしないか選択する画面を同時に表示させる。
【0050】
ユーザは、この表示を見ながら操作部102を操作し、キーストン補正の制限をするか、制限をしないかを選択する(S510)。
【0051】
キーストン補正の制限をする場合には(S510でYes)、キーストン値は±5以内の範囲で補正が可能であり、それ以上の補正は禁止されることになる(S511)。キーストン補正の制限をしない場合には(S510でNo)、従来の通り、キーストン値は、制限を受けずに設定可能であり、キーストン補正により投影画面を長方形に近づける補正が可能になる(S512)。ただし、S508でキーストン制限値を設定しなかった場合にも、S510で、選択画面を表示させずに、キーストン補正制限なしのキーストン補正を行う(S512)。
【0052】
そして、ファイルの再生が終了するまでの間は(S513)、キーストン補正の指示がなされるたびに、キーストン補正の制限をするか、制限をしないかを選択させるようにする(S510)。
【0053】
この様に、本実施例では、画像ファイルであると判定されたとき、ドキュメントファイルであると判定されたとき、発表資料ファイルであると判定されたときにキーストン補正に制限がかけられるようにしている。そして、文字(テキスト)が含まれる可能性の高い、ドキュメントファイルや発表資料ファイルが表示されていると判定されたときには、画像ファイルであると判定されたときに比べて、キーストン補正の制限の度合いを強めている。さらに、ドキュメントファイルであると判定されたときには、発表資料ファイルよりも小さい文字が表示される可能性が高いので、更にキーストン補正の制限の度合いを強めている。すなわち、第1の種類(テキストを含む種類)のファイルであると判定されたときは、第2の種類(画像、映像)のファイルであると判定されたときによりもキーストン補正の動作の制限の度合いを強くしている。
【0054】
これは、キーストン補正をする際に、自然画や風景画等と同じように、文字を縮小してしまうと文字の画像が潰れ、認識できなくなってしまうおそれがあるためである。そのため、ドキュメントファイルや発表資料ファイルであると判定された場合には、キーストン補正の制限率を高くし、文字が読めなくなってしまわないようにしている。さらに、文字のサイズが小さければ、少しのキーストン補正によって縮小されてしまった部分であっても文字が読めなくなってしまうことがあるので、ドキュメントファイルであると判定された場合には、キーストン補正の制限率を更に高くしている。
【0055】
本実施例では、ファイルの拡張子を確認することにより、ファイルの種類を特定していたが、このファイルの拡張子は、上述した以外にも考えられるし、ユーザにより、登録されたファイルの拡張子を確認するようにしても良い。また、例えば、ファイルの拡張子、ファイルのデータ構造、ファイルヘッダ、等からファイルの種類を判定してもよい。
【0056】
また、キーストン制限値の設定がされた段階で、既に設定されたキーストン設定値を超えていた場合について説明する。制御部101は、投影中の画面に設定されたキーストン制限値に従ったキーストン補正を行うか、現状のキーストン補正を維持するかの選択画面を表示させるようにする。制御部101は、選択画面を投影中の画面に表示するよう、画像処理部117に通信をする。画像処理部117は、制御部101により再生されているファイルの画像に対して、選択画面を重畳表示した画像を生成することにより、投影中の画面に選択画面を表示することができる。
【0057】
ユーザが操作部102を操作することにより、設定されたキーストン制限値に従ったキーストン補正を行うことが選択される。そうすると、制御部101は、画像処理部117に設定されたキーストン制限値に従ったキーストン補正を行うよう指示を出す。これにより、例えば+10のキーストン補正を施していた画像に対するキーストン補正が+5の補正に変更される。また、ユーザが操作部102を操作することにより、現状のキーストン補正を維持することが選択される。そうすると、制御部101は、キーストン補正に特に制限をかける指示をだすことはしない。
【0058】
また、操作部102にキーストン補正の制限を行うか否かを設定するボタンを設けて、ボタンを押す度に、キーストン制限値を採用するか否かを切換えるようにしても良い。この様にすることにより、普段は長方形に近いキーストン補正をかけていて、文字等が潰れて見づらくなった際に、ユーザがこのボタンを操作することにより、すぐに、キーストン制限をかけた画像を表示させることができる。言い換えれば、ボタンを押すことにより、キーストン補正値を、制限値に切換えることができるので、すぐに人が文字を認識しやすいキーストン補正に変更することができるようになるのである。
【0059】
また、傾きセンサ118によって検出された角度から、自動的にキーストン補正をする場合のキーストン補正の制限について説明する。例えば水平から10度上向きに傾いていることを検出したが、ドキュメントファイルを再生している場合、本来キーストン制限値は+5となる。また、この場合、ドキュメントファイルを再生しているので、キーストン制限値までの補正しかしないモードと制限値に関係なくキーストンを設定できるモードの2種類をユーザにより選択させても良い。
【0060】
また、制御手段101は、画像ファイルでないと判定した後(S502)、さらに、ファイル内に、文字のフォントに関する情報が記載されているかどうかを判定するようにしても良い。この場合、文字のフォントが記載されていなければ、制御手段101はキーストン制限値の設定を行わずに制限値設定フローを終了する。文字(テキスト)のフォントが記載されていた場合には、制御部101は、そのフォントのうち、最小サイズのフォントの情報を取得し、その最小サイズのフォントに応じたキーストン制限値を設定する。具体的には、例えば、最小サイズのフォントが8ポイントであれば、キーストン制限値を±4にし、20ポイントであれば、±10に設定し、30ポイントであれば、±15に設定し、31ポイント以上であればキーストン制限値を設定しない。
【0061】
この様にすることにより、制御部101がドキュメントファイルや発表資料ファイルであると判定した場合であっても、フォントサイズに応じてキーストンの制限の割合を詳細に設定することができる。
【0062】
また、キーストン補正により、図4に示すような補正を行った場合には、投影画面の図4の上方向に行くにしたがって、画像が縮小されている割合が高くなる。すなわち、投影画面の上方向に行くに従ってキーストン補正による影響を受けやすくなる。そこで、制御部101は、文字のフォントが記載されていた場合には、さらに、文字の表示位置を判定し、その表示位置に応じたキーストン制限値を設定する。例えば、20ポイントのフォントの文字のみが含まれている場合について説明する。文字の表示位置が、図4の投影画面の上方向であった場合には、キーストン制限値を+10〜−15程度に設定し、中間位置であれば、±12に設定し、下方向であった場合には、+15〜−10に設定する。
【0063】
この様にすることにより、制御部101がドキュメントファイルや発表資料ファイルであると判定した場合であっても、文字の表示位置に応じてキーストンの制限の割合を詳細に設定することができる。
【0064】
また、制御部101は、文字のフォントが記載されていた場合には、文字の大きさ及び表示位置に応じて、キーストン制限値を設定するようにしても良い。すなわち、テキストの最小サイズのフォントが、20ポイントであった場合には、制限値は±10とするが、表示位置が中間位置であった場合には、制限値を±12に決定する。
【0065】
この様にすることにより、制御部101がドキュメントファイルや発表資料ファイルであると判定した場合であっても、文字の大きさ及び表示位置に応じてキーストンの制限の割合をより詳細に設定することができる。
【0066】
なお、本実施例では、操作部102による指示を出す場合について説明したが、赤外線受光部121、122に入力された制御信号に基づいて指示されても良い。
【0067】
本実施例では、液晶パネルを内蔵したプロジェクタについて説明したが、DMDパネルを内蔵したプロジェクタであっても、キーストン補正を必要とする表示装置であれば、どのような形態のものであっても適用することができる。
【実施例2】
【0068】
実施例1では、特定の種類のファイルが再生されている場合に、キーストン補正に制限をかけていた。本実施例のプロジェクタでは、ファイル形式のデータ以外に、アナログ入力部110やデジタル入力部112、通信部115から画像信号を入力して表示することができる。そこで、本実施例では、投影画像の空間周波数を検出し、検出された空間周波数の最大値に基づいて、キーストン補正に制限をかけるようにしている点で実施例1と異なる。
【0069】
本実施例のプロジェクタは、図1に示すプロジェクタと構成は同様である。
【0070】
次に、本実施例のキーストン補正処理の制限について説明する。
【0071】
本実施例においては、アナログ入力部110、デジタル入力部112から取得した映像データを再生している際のキーストン補正の制限について説明する。
【0072】
図6は、本実施例の画像処理部117に入力される画像を示す図である。図6において、601、602、603は、それぞれ画像の上部分、中部分、下部分を示している。本実施例では、制御部101は、この領域単位で画像の周波数解析を行う。
【0073】
図6の例では、601の領域に文字が含まれているので、周波数解析をすることにより、601の領域に高周波成分が検出される。
【0074】
高周波成分の含まれる画像は、キーストン補正によって画像が縮小されてしまった部分の画像のつぶれにより、例えば文字が読めなくなったり、画質の劣化が目立ってしまったりすること等がある。
【0075】
また、キーストン補正により、図4に示すような補正を行った場合には、投影画面の図4の上方向に行くにしたがって、画像が縮小されている割合が高くなる。すなわち、投影画面の上方向に行くに従ってキーストン補正による影響を受けやすくなる。
【0076】
そこで、図4に示すような補正を行おうとする場合、本実施例では、制御部101の設定するキーストン制限値は、以下のように設定される。
【0077】
まず、領域601、602、603の周波数解析を行い各領域の最大周波数を検出する。そうすると、図6の例の場合、領域601に高周波成分が検出される。
【0078】
すなわち、投影画面の上方向の領域に最大高周波成分が含まれると検出されたことになるので、キーストン制限値を、+5〜−15程度に設定する。
【0079】
同様に、中間領域に最大高周波成分が含まれる検出されたときには、±7に設定し、下方向の領域に最大高周波成分が含まれると検出されたときには、+15〜−5に設定する。また、上方向の領域の最大高周波成分、下方向の領域の最大高周波成分が共に同程度である場合には、±5に設定する。
【0080】
この様にしてキーストン制限値を設定することにより、画像の性質に応じたキーストン制限をかけることができるようになる。
【0081】
本実施例では、画像の上部分、中部分、下部分それぞれについて、周波数解析を行ったが、画像の左部分、中部分、右部分について周波数解析をしても良く、画像全体にわたって領域を細かく分けて周波数解析をしてもよい。
【0082】
このようにすることにより、高周波成分が画像上のどの部分に含まれるのかを詳細に知ることができ、キーストン制限値についても詳細に設定することができるようになる。そして、文字や、高周波成分を含む自然画であっても、それぞれの画像激しく劣化させることがなくなる。
【0083】
また、本実施例では、高周波成分の有無によってキーストン制限値を設定したが、周波数解析により得られた最大周波数の大きさに応じたキーストン制限値を設定しても良い。例えば、領域601に文字が含まれ、その他の領域が無字の画像であったとする。領域601の最大周波数WmaxがW1よりも大きい場合には、制御部101は、キーストン制限値を+5〜−15に、W1からW2の間であった場合には、+6〜−15に設定する。同様に、W2からW3の間であった場合には、+7〜−15に、W3からW4の間であった場合には+8〜−15という順でキーストン制限値を設定することになる。
【0084】
仮に、領域603の最大周波数がW3からW4の間であり、領域601の最大周波数がW1より大きい場合には、キーストン制限値は、+5〜−8に設定されることになる。
【0085】
このようにして、キーストン制限値を設定することにより、画像のコントラストに応じた、キーストン制限をすることができる。
【0086】
また、最大周波数を検出する際には、ノイズの影響による誤検出を避けるために、ある程度以上の振幅レベルを有する周波数の値を最大周波数として見なすようにしても良い。
【0087】
また、USBインタフェース部113、カードインタフェース114、通信部115、内蔵メモリ116等からファイルを再生して投影している際の、キーストン補正の制限も同様の動作を行う。
【0088】
なお、本実施例では、操作部102による指示を出す場合について説明したが、赤外線受光部121、122に入力された制御信号に基づいて指示されても良い。
【0089】
また、本実施例では、液晶パネルを内蔵したプロジェクタについて説明したが、DMDパネルを内蔵したプロジェクタであっても、キーストン補正を必要とする表示装置であれば、どのような形態のものであっても適用することができる。
【0090】
また、第1の実施例と適宜組み合わせても良い。
【0091】
(他の実施例)
本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、装置に供給することによっても、達成されることは言うまでもない。このとき、供給された装置の制御部を含むコンピュータ(またはCPUやMPU)は、記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。
【0092】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0093】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0094】
また、上述のプログラムコードの指示に基づき、装置上で稼動しているOS(基本システムやオペレーティングシステム)などが処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0095】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、装置に挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれ、前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。このとき、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行う。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明を適用した液晶プロジェクタのブロック図である。
【図2】プロジェクタのキーストンについて説明するための図である。
【図3】プロジェクタのキーストンについて説明するための図である。
【図4】プロジェクタのキーストンについて説明するための図である。
【図5】実施例1のプロジェクタのキーストン制限値設定のフロー図である。
【図6】実施例2の周波数解析領域について説明するための図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報データの画像をスクリーンに投影する投影手段と、
前記投影手段により投影される画像の形状を変形させるキーストン補正手段と、
前記情報データの種類を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された情報データの種類に応じて、前記キーストン補正手段による画像の形状の変形の制限の度合いを決定する制御手段を有することを特徴とする投影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、情報データが第1の種類の情報データであると判定されたときは、前記情報データが第2の種類の情報データであると判定されたときによりもキーストン補正手段による画像の形状の変形の制限の度合いを高くすることを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項3】
前記第1の種類の情報データは、テキストを含むファイルであって、前記第2の種類の情報データは、画像ファイルであることを特徴とする請求項2記載の投影装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記情報データがテキストを含むファイルであるときは、前記テキストのサイズを判定し、
前記制御手段は、前記判定手段により判定されたテキストのサイズに応じて、前記キーストン補正手段による画像の形状の変形の制限の度合いを決定することを特徴とする請求項3記載の投影装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記情報データがテキストを含むファイルであるときは、前記テキストの表示位置を判定し、
前記制御手段は、前記判定手段により判定されたテキストの表示位置に応じて、前記キーストン補正手段による画像の形状の変形の制限の度合いを決定することを特徴とする請求項3または4記載の投影装置。
【請求項6】
画像をスクリーンに投影する投影手段と、
前記投影手段により投影される画像の形状を変形させるキーストン補正手段と、
前記投影手段により投影される画像の周波数を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された周波数に応じて、前記キーストン補正手段の動作による画像の形状の変形の制限の度合いを決定する制御手段を有することを特徴とする投影装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記検出手段により検出された周波数のうち最大の周波数に応じて前記キーストン補正手段の動作による画像の形状の変形の制限の度合いを決定することを特徴とする請求項6記載の投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−11060(P2010−11060A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167680(P2008−167680)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】