説明

表示装置

【課題】構造色による発色機構を利用し、簡易な構成で白色表示が可能な表示装置を低コストに提供する。
【解決手段】構造色による発色機構を利用した色調変化部材を透明板側へ押圧し、色調変化部材を厚さ方向に変形させることにより色調変化部材の基材を弾性変形させる押圧部材と、透明板と色調変化部材の間に設けられたマイクロプリズム型再帰反射部材とを備えた表示装置であって、白色表示を行う場合には、押圧部材によって色調変化部材を押圧せず、色調変化部材とマイクロプリズム型再帰反射部材とを離間させ、外部から透明板を透過して入射した入射光を、マイクロプリズム型再帰反射部材によって再帰反射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、詳しくは、構造色による発色機構を利用した表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、構造色を利用した表示装置がある。
構造色とは、特定の周期構造を有する材料において、ブラッグの法則に基づき特定の波長の光を干渉反射することにより得られるものである。
【0003】
特許文献1には、構造色を利用した表示装置が開示されている。
すなわち、特許文献1の技術は、規則的な間隔で配列されたコロイド粒子と、そのコロイド粒子の間に介在し弾性変形可能である充填材とを有し、コロイド粒子の間隔を変更することで特定の波長の可視光を反射するように構成された表示素子と、その表示素子を弾性変形させてコロイド粒子の間隔を複数の変位で変えると共に当該変位を維持させる形状保持部材と、その形状保持部材に外力を与える変形駆動部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−20435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、周期構造を有する単一の材料を利用して構造色を変化させているが、単一の材料では白色の構造色を得ることが困難である。
すなわち、コロイド粒子は反射する波長帯域が狭いため、光の三原色(RGB)を表示することは容易であるが、単一のコロイド粒子では三原色全ての光が必要である白色光を表示することはできない。
そこで、特許文献1には、隣接する3個の前記表示素子を1組にして、三原色全ての反射波長を作成することにより白色表示を行うことが開示されている(段落[0017]参照)。
しかし、この場合には、1画素当たり3個の独立した前記表示素子を用い、各表示素子の表示色をそれぞれ最適な三原色にする必要があるため、前記表示素子毎に前記形状保持部材および前記変形駆動部を制御するのが難しくなり、表示装置が高コスト化するという問題がある。
【0006】
ところで、周期構造を有する材料を複数使用して白色の構造色を得ることも考えられる。
すなわち、複数の種類のコロイド粒子を用い、コロイド粒子の種類毎に間隔を制御することにより、1画素当たり1個の前記表示素子で白色表示を行うわけである。
しかし、この場合には、周期構造を変化させるためにコロイド粒子の種類毎に間隔を制御するのが難しくなるため、表示装置の高コスト化を避けられないという問題がある。
【0007】
本発明は前記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、構造色による発色機構を利用した表示装置であって、簡易な構成で白色表示が可能な表示装置を低コストに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明の各局面に想到した。
【0009】
<本発明の第1の局面>
第1の局面は、規則的な間隔で配列された粒子と、その粒子の間に介在して弾性変形可能な基材とを有し、基材を弾性変形させて粒子の間隔を変更し、粒子の間隔に応じた特定の波長の可視光を反射することにより、色調が変化する色調変化部材と、
表示側に設けられた透明板と、
前記色調変化部材を前記透明板側へ押圧し、前記色調変化部材を厚さ方向に変形させることにより前記基材を弾性変形させる押圧部材と、
前記透明板と前記色調変化部材の間に設けられたマイクロプリズム型再帰反射部材と
を備えた表示装置であって、
白色表示を行う場合には、前記押圧部材によって前記色調変化部材を押圧せず、前記色調変化部材と前記マイクロプリズム型再帰反射部材とを離間させ、外部から前記透明板を透過して入射した入射光を、前記マイクロプリズム型再帰反射部材によって再帰反射させ、
白色以外の色表示を行う場合には、前記押圧部材によって前記色調変化部材を押圧し、前記色調変化部材の基材の中に前記マイクロプリズム型再帰反射部材のマイクロプリズム素子を埋め込ませてプリズム機能を失わせることにより、前記マイクロプリズム型再帰反射部材を透光状態にさせ、前記透明板を介して外部から前記色調変化部材を視認できる状態にする表示装置である。
従って、第1の局面によれば、簡易な構成で白色表示が可能な表示装置を低コストに提供できる。
【0010】
<本発明の第2の局面>
第2の局面は、第1の局面において、前記マイクロプリズム型再帰反射部材は、前記透明板における前記色調変化部材と対向する面に固定された多数個のマイクロプリズム素子から成る表示装置である。
従って、第1の局面によれば、簡易な構成でマイクロプリズム型再帰反射部材を提供可能であり、表示装置の更なる低コスト化を図ることができる。
【0011】
<本発明の第3の局面>
第3の局面は、規則的な間隔で配列された粒子と、その粒子の間に介在して弾性変形可能な基材とを有し、基材を弾性変形させて粒子の間隔を変更し、粒子の間隔に応じた特定の波長の可視光を反射することにより、色調が変化する色調変化部材と、
表示側に設けられた透明板と、
前記色調変化部材を前記透明板側へ押圧し、前記色調変化部材を厚さ方向に変形させることにより前記基材を弾性変形させる押圧部材と、
前記透明板と前記色調変化部材の間に設けられたマイクロプリズム型再帰反射部材と、
前記透明板と前記マイクロプリズム型再帰反射部材の間に設けられた弾性変形可能な透明部材と
を備えた表示装置であって、
白色表示を行う場合には、前記押圧部材によって前記色調変化部材を押圧せず、前記透明部材と前記マイクロプリズム型再帰反射部材とを離間させ、外部から前記透明板および前記透明部材を透過して入射した入射光を、前記マイクロプリズム型再帰反射部材によって再帰反射させ、
白色以外の色表示を行う場合には、前記押圧部材によって前記色調変化部材を介して前記透明部材を押圧し、前記透明部材の中に前記マイクロプリズム型再帰反射部材のマイクロプリズム素子を埋め込ませてプリズム機能を失わせることにより、前記マイクロプリズム型再帰反射部材を透光状態にさせ、前記透明板および前記透明部材を介して外部から前記色調変化部材を視認できる状態にする表示装置である。
【0012】
従って、第3の局面によれば、簡易な構成で白色表示が可能な表示装置を低コストに提供できる。
加えて、第3の局面では、マイクロプリズム素子を透明部材に埋め込ませてプリズム機能を失わせるため、色調変化部材の表面側がマイクロプリズム素子により傷付けられて破損するのを防止することが可能になり、色調変化部材の発色性能の低下を回避できる。
【0013】
<本発明の第4の局面>
第4の局面は、第1〜第3の局面において、前記色調変化部材と前記押圧部材の間に黒色の部材が設けられている表示装置である。
第4の局面では、色調変化部材が押圧されて透明になると、色調変化部材を透過して外部から黒色の部材が視認されるため、黒色表示を行うことができる。
従って、第4の局面によれば、簡易な構成で黒色表示が可能な表示装置を低コストに提供できる。
尚、黒色の部材は、押圧部材と別体に設けてもよい。
また、押圧部材の押圧面を黒色に着色することにより、押圧部材を黒色の部材として機能させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を具体化した各実施形態の表示装置10,100,110の斜視図。
【図2】図1(A)におけるX−X線断面図であり、第1実施形態の表示装置10の要部縦断面構造を説明するための概略断面図。
【図3】表示装置10における押圧部材30の押圧状態と色調変化部材50の色調の変化を説明するための説明図であり、表示装置10の1画素分の構成を示す概略断面図。
【図4】図1(A)におけるX−X線断面図であり、第2実施形態の表示装置100の要部縦断面構造を説明するための概略断面図。
【図5】図1(A)におけるX−X線断面図であり、第3実施形態の表示装置110の要部縦断面構造を説明するための概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、各実施形態において、同一の構成部材および構成要素については符号を等しくすると共に、同一内容の箇所については重複説明を省略してある。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、各実施形態の表示装置10,100,110の斜視図である。
第1実施形態の表示装置10は収納ケース(ハウジング)11を備え、収納ケース11は上面側が額縁状に開口した略平板状を成している。
収納ケース11の上面側開口から透明板12の表面12aが露出し、その露出した表面12aが表示装置10の表示部Rになる。つまり、透明板12は、表示装置10,100,110の表示側に設けられている。
【0017】
図2は、図1(A)におけるX−X線断面図であり、第1実施形態の表示装置10の要部縦断面構造を説明するための概略断面図である。
表示装置10は、収納ケース11、透明板12、マイクロプリズム型再帰反射シート(マイクロプリズム型再帰反射フィルム)20、押圧部材30、黒色シート材40、色調変化部材(表示素子)50などから構成されている。
【0018】
透明板12は、表面(上面)12aおよび裏面(下面)12bが平坦であり、無色透明で透光性を有し、一部分が押圧されても変形することが無い十分な強度を有した板材から成り、例えば、ガラス板、アクリル板などの各種合成樹脂板などから形成されている。
透明板12の裏面12b側には、マイクロプリズム型再帰反射シート20が無色透明の接着層(図示略)を介して貼着固定されている。
【0019】
収納ケース11の内底面には、複数個の押圧部材30が等間隔に配設固定されている。
押圧部材30は、表面が平坦な押圧面30aを備え、その押圧面30aを当該面に対する垂直方向に任意の移動量(変位量)だけ移動させ、その移動させた位置(変位)を保持させることができる。
尚、押圧部材30の押圧面30aを移動させるための機構は、どのような構成によって具体化してもよく、例えば、ばね機構、エアプレッシャー機構、電動モータなどを用いればよい。
【0020】
各押圧部材30の押圧面30a上には、黒色シート材40が張り渡されて貼着固定されている。
黒色シート材40は、弾性変形可能な黒色のシート材であり、例えば、クロロプレンゴム製の薄膜によって形成されている。
黒色シート材40上において、各押圧部材30の押圧面30aに対応する箇所には、各色調変化部材50が貼着固定されている。つまり、押圧部材30の押圧面30a上には、黒色シート材40を介して色調変化部材50が配設されている。
【0021】
黒色シート材40は、後述する黒色表示に用いられる他に、押圧部材30の押圧面30aを色調変化部材50に押圧させた際に色調変化部材50が破損するのを防止するため緩衝材として機能すると共に、押圧面30aと色調変化部材50が癒着するのを防止する機能もある。
尚、押圧部材30の押圧面30aを黒色に着色しておくことにより、黒色シート材40を省いてもよい。
【0022】
色調変化部材50は平板状を成し、色調変化部材50の平坦な表面50aは、透明板12の裏面12bに対して平行に配置されている。
各押圧部材30の押圧面30aの平面形状および寸法は、非押圧状態(定常状態)における色調変化部材50の平面形状および寸法と略同一に形成されている。
そして、各色調変化部材50は透明板12を区画するように配置され(図1参照)、個々の色調変化部材50によって表示装置10の画素(ピクセル)が構成されている。そのため、色調変化部材50毎に設けられた押圧部材30も、表示装置10の画素毎に設けられている。
【0023】
尚、押圧部材30の押圧面30aが最も退縮している状態(初期状態)では、マイクロプリズム型再帰反射シート20と色調変化部材50の表面50aとが一定の間隔を空けて離間するように配置され、マイクロプリズム型再帰反射シート20と色調変化部材50の表面50aとが接触しないようになっている。
また、各色調変化部材50の間には空隙Sが設けられている。
【0024】
[マイクロプリズム型再帰反射シート20の構成]
マイクロプリズム型再帰反射シート20は、透明シート材(フィルム材)20aおよびマイクロプリズム素子20bから構成されている。
透明シート材20aは、無色透明で両面が平坦な合成樹脂材料によって形成されている。
マイクロプリズム素子20bは、無色透明のガラス材料または合成樹脂材料から成り、適宜な角錐状(例えば、三角錐、四角錐、六角錐など)のプリズムである。
【0025】
透明シート材20aの裏面には、多数個のマイクロプリズム素子20bが隙間無く配置(配列)され、例えば、透明シート材20aの1cm四方に数千個のマイクロプリズム素子20bが配置されている。
そして、透明シート材20aには、各マイクロプリズム素子20bの一つの面が無色透明の接着層(図示略)を介して接着固定されている。
尚、図面では、構造をわかり易くするため、マイクロプリズム素子20bを大きく誇張して図示してある。
【0026】
マイクロプリズム型再帰反射シート20によれば、透明シート材20a側から入射した入射光が、各マイクロプリズム素子20bにより屈折されるため、入射光の大部分を入射方向に再帰反射させることができる
【0027】
[色調変化部材50の構成]
色調変化部材50は構造色による発色機構を利用する。
すなわち、色調変化部材50は、規則的な間隔で配列された粒子と、その粒子の間に介在して弾性変形可能(可逆的に変形可能)で無色透明の基材(充填材)とを有し、基材を弾性変形させて粒子の間隔を変更し、粒子の間隔(色調変化部材50の厚さ方向の変形量)に応じた特定の波長の可視光を反射することにより、色調を変化させることができる。
【0028】
押圧部材30は、色調変化部材50を透明板12側へ押圧し、色調変化部材50を厚さ方向に変形させることにより基材を弾性変形させる。
基材の材料としては、例えば、スチレン系軟質樹脂、軟質ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ハイドロエチルメタクリレート(HEMA)、アクリル系モノマーをポリマー化したアクリル系エラストマーなどの有機系高分子材料がある。
【0029】
このような材料で色調変化シート材50の基材を形成すれば、色調変化シート材50が押圧部材30によって押圧されて変形しても、押圧されていない状態(非押圧状態)になれば、押圧された状態(押圧状態)になる前の形状に戻すことができる。
さらに、押圧状態と非押圧状態とを繰り返しても、色調変化部材50の非押圧状態(定常状態)の形状は変化し難い。
【0030】
基材の中における粒子の規則的な配列としては、フォトニック結晶構造がある。フォトニック結晶構造では、可視域周辺の光の波長と同程度の周期で粒子が配列分布されている。
フォトニック結晶構造によれば、粒子配列の周期と同程度の波長の光をブラッグ反射し、それに起因して特定の波長の光が増幅されて、その特定の波長の光(いわゆる構造色)を発することができる。
このようなブラッグ反射による構造色の色調は、フォトニック結晶構造を形成する粒子配列の周期に依存するため、粒子配列の周期を適宜設定することで所望の色調の構造色が得られる。さらに、粒子配列の周期を変化させることにより、構造色の色調も変化させることができる。
【0031】
構造色は外光を利用して発色することができるため、外光として自然光を利用すれば、発光表示用の光源やバックライト装置が不要になり、表示装置10の消費電力を低減させると共に、表示装置10の構成の簡易化を図ることができる。さらに、自然光を利用すれば、屋外でも明るく発色するため視認性を向上できる。
尚、表示装置10を夜間や暗所で使用するためには、発光表示用の光源やバックライト装置を使用してもよい。
【0032】
フォトニック結晶構造の例としては、単分散微粒子(コロイド粒子)によるコロイド結晶構造、ブロック共重合体のミクロドメイン構造、界面活性剤のラメラ構造、薄膜を積層した構造(薄膜積層構造)などがある。
【0033】
コロイド結晶構造は、コロイド粒子が所定間隔で周期的に配列された構造である。
コロイド粒子の材料には、粒径が約1nm〜約1000nmであり、可視光が透過可能で、略球形になる材料であれば、どのような材料を用いてもよく、例えば、二酸化珪素、ホウ珪酸ガラス、アルミン酸カルシウム、ニオブ酸リチウム、カルサイト、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化イットリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、セレン化亜鉛、臭ヨウ化タリウム、ダイアモンド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタル酸、塩化ビニル、アクリル、酸化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチルなど、珪素、ゲルマニウム、各種強誘電体(チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)など)などを用いればよい。
また、コロイド粒子の材料には、ポリスチレン,ポリメタクリル酸メチル,二酸化珪素,二酸化チタンの内のいずれか2種以上の混合体や、これらの内の1種をコアとして他の1種以上によりコアを被覆したコアシェル構造なども用いることができる。
【0034】
尚、コロイド粒子の配列における規則性は、特に限定されないが、例えば、面心立方構造、体心立方構造、単純立方構造などにすればよく、特に面心立方構造(六方最密充填構造)が好ましい。
【0035】
コロイド粒子の製造方法には、例えば、UV(紫外線)重合法、乳化重合法、懸濁重合法、二段階鋳型重合法、化学気相反応法、電気炉加熱法、熱プラズマ法、レーザ加熱法、ガス中蒸発法、共沈法、均一沈殿法、化合物沈殿法、金属アルコキシド法、水熱合成法、ゾルゲル法、噴霧法、凍結法、硝酸塩分解法などがある。
【0036】
そして、コロイド粒子を基材に懸濁させた後に、各種方法(例えば、重力沈降法、毛管法、電気泳動法、基板引き上げ法など)により、基材中にコロイド結晶構造を形成する。
基板引き上げ法では、コロイド粒子が懸濁した基材溶液を基板上に塗布して乾燥させた後に基板から引き剥がして分割することにより、色調変化部材50を作製できる。
基板引き上げ法によれば、基材中にコロイド粒子が自己組織的にコロイド結晶構造を形成するため、色調変化部材50の作製が容易である。
【0037】
ミクロドメイン構造は、異種の高分子が化学結合してブロック共重合体を形成する構造である。
ブロック共重合体には、例えば、ポリ(スチレン−co−イソプレン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−ビニルピリジン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−エチレンプロピレン)ブロック共重合体などがある。
尚、ブロック共重合体は、複数の繰り返し単位を有していてもよい。
【0038】
薄膜積層構造は、例えば、厚さ約5nm〜約20nmの薄膜を、約100nm〜約1000nmの間隔で積層した構造である。
薄膜の間には透明性を有する有機あるいは無機高分子材料からなる中間体を介在させることにより、積層する薄膜を所定の間隔に維持することができる。
薄膜には、例えば、各種単体金属(金、銀、銅、アルミなど)や各種合金による金属薄膜や、各種誘電体(酸化チタン、シリカなど)の薄膜を用いればよい。
【0039】
色調変化部材50は、押圧部材30による押圧状態により、色調変化部材50の厚さ方向への変形量が十分確保されるように、十分な厚さを有する必要がある。
例えば、色調変化部材50の厚さの範囲は、約0.001mm〜約10mm、好ましくは約0.01mm〜約1.00mmにすればよい。
色調変化部材50を十分な厚さにすることにより、押圧状態で色調変化部材50が十分に変形し、粒子の配列に変化が生じ、表示装置10の外部から色調変化部材50を視認した際の色調が変化する。
例えば、色調変化部材50にコロイド結晶構造を用いた場合には、色調変化部材50が変形すると、その変形量に応じてコロイド結晶構造が変化し、構造色が変化する。
【0040】
尚、色調変化部材50の基材中に、規則的に配列される粒子の他に、染料や顔料、光散乱材などを含ませてもよい。
また、色調変化部材50と透明板12の間に色変換層を設けてもよい。
【0041】
各色調変化部材50の間には空隙Sが設けられているため、押圧部材30によって色調変化部材50を押圧した際に、押圧された色調変化部材50の変形が、隣合う色調変化部材50によって阻害されることがなく、個々の色調変化部材50を自由に変形させることが可能であることから、良好な発色表示が得られる。
尚、空隙Sの幅は、色調変化部材50の寸法形状に応じて適宜設定すればよい。例えば、色調変化部材50の平面形状が矩形状で、色調変化部材50の縦横寸法および厚さが約0.5mmの場合には、空隙Sの幅を約0.2mmにすればよい。
【0042】
ちなみに、本出願人は、色調変化部材50として、新中村化学工業株式会社製のNKエステルAM−90G(メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート)を97wt%、新中村化学工業株式会社製のNKエステルA−600(ポリエチレングリコール#600ジアクリレート)を3wt%の割合で混合した混合溶液からポリマー化させた基材に、コロイド結晶として二酸化珪素を配列分布させたコロイド結晶シートを作製し、そのコロイド結晶シートを所望の寸法形状に分割したものを使用している。
【0043】
[第1実施形態の作用・効果]
図3は、表示装置10における押圧部材30の押圧状態と色調変化部材50の色調の変化を説明するための説明図であり、表示装置10の1画素分の構成を示す概略断面図である。
ここでは、色調変化部材50として、アクリル系エラストマーからなる基材に、粒径が約200nmの二酸化珪素をコロイド結晶として配列分布させ、基材の厚さを約0.5mmに形成したものを用いている。
【0044】
図3(A)に示す第1の状態(初期状態)では、押圧部材30の押圧面30aが最も退縮した初期位置にあり、マイクロプリズム型再帰反射シート20と色調変化部材50の表面50aとが接触していない。
【0045】
そのため、第1の状態において、表示装置10の外部から透明板12を透過して入射した入射光Lは、マイクロプリズム型再帰反射シート20の透明シート材20aを通ってマイクロプリズム素子20bにより屈折され、入射光Lの大部分が入射方向に再帰反射される。
その結果、第1の状態において、入射光Lが自然光などの白色光であれば、表示部Rに白色表示を行うことができる。
【0046】
図3(B)に示す第2の状態では、色調変化部材50の表面50a側にマイクロプリズム素子20bが完全に埋まり込んだ状態で、且つ、色調変化部材50が押圧されない状態になるまで、押圧部材30の押圧面30aを透明板12側へ移動する。
【0047】
すると、色調変化部材50を構成する弾性変形可能で無色透明の基材の中に完全に埋め込まれたマイクロプリズム素子20bはプリズム機能を失うため、マイクロプリズム型再帰反射シート20も再帰反射機能を失って無色透明状態(透光状態)になることから、表示装置10の外部から透明板12を透過して入射した入射光Lは、マイクロプリズム型再帰反射シート20を透過する。
そのため、透明板12を介して表示装置10の外部から色調変化部材50を視認できる状態になる。
【0048】
そして、第2の状態では、色調変化部材50が非押圧状態(定常状態)であるため、色調変化部材50を構成するコロイド粒子の配列は実質的に変化せず、色調変化部材50の構造色は非押圧状態の赤色になることから、表示部Rに赤色表示を行うことができる。
【0049】
図3(C)に示す第3の状態では、色調変化部材50が押圧された状態になるまで、第2の状態から所定移動量(例えば約0.1mm)だけ、押圧部材30の押圧面30aを透明板12側へ移動する。
すると、マイクロプリズム素子20bが色調変化部材50の表面50a側に埋め込まれてプリズム機能を失い、マイクロプリズム型再帰反射シート20も再帰反射機能を失って無色透明状態になったままで、色調変化部材50が押圧される。
【0050】
そのため、第3の状態では、色調変化部材50を構成するコロイド粒子の配列が変化し、コロイド粒子の間隔が狭くなるため、色調変化部材50の構造色は緑色になることから、表示部Rに緑色表示を行うことができる。
【0051】
図3(D)に示す第4の状態では、第3の状態から所定移動量(例えば約0.1mm)だけ、押圧部材30の押圧面30aを透明板12側へ移動する。
すると、マイクロプリズム素子20bが色調変化部材50の表面50a側に埋め込まれてプリズム機能を失い、マイクロプリズム型再帰反射シート20も再帰反射機能を失って無色透明状態になったままで、色調変化部材50がさらに押圧される。
【0052】
そのため、第4の状態では、色調変化部材50を構成するコロイド粒子の配列が第3の状態よりもさらに変化し、コロイド粒子の間隔が第3の状態よりも狭くなるため、色調変化部材50の構造色は青色になることから、表示部Rに青色表示を行うことができる。
【0053】
図3(E)に示す第5の状態では、第4の状態から所定移動量(例えば約0.05mm)だけ、押圧部材30の押圧面30aを透明板12側へ移動する。
すると、マイクロプリズム素子20bが色調変化部材50の表面50a側に埋め込まれてプリズム機能を失い、マイクロプリズム型再帰反射シート20も再帰反射機能を失って無色透明状態になったままで、色調変化部材50がさらに押圧される。
【0054】
そのため、第5の状態では、色調変化部材50を構成するコロイド粒子の配列が第4の状態よりもさらに変化し、コロイド粒子の間隔が第4の状態よりも狭くなるため、色調変化部材50の構造色は無色透明になる。
その結果、第5の状態では、色調変化部材50の下側(背後)に設けられている黒色シート材40の黒色が、無色透明になった色調変化部材50を透過して表示装置10の外部から視認されるため、表示部Rに黒色表示を行うことができる。
【0055】
以上のように、第1実施形態の表示装置10では、透明板12と色調変化部材50の間にマイクロプリズム型再帰反射シート20を設けている。
そして、白色表示を行う場合には、押圧部材30によって色調変化部材50を押圧せず、色調変化部材50とマイクロプリズム型再帰反射シート20とを離間させ、表示装置10の外部から透明板12を透過して入射した入射光Lを、マイクロプリズム型再帰反射シート20によって再帰反射させている。
【0056】
また、白色以外の色表示を行う場合には、押圧部材30によって色調変化部材50を押圧し、色調変化部材50の基材の中にマイクロプリズム型再帰反射シート20のマイクロプリズム素子20bを埋め込ませてプリズム機能を失わせることにより、マイクロプリズム型再帰反射シート20を透光状態にさせ、透明板12を介して表示装置10の外部から色調変化部材50を視認できる状態にしている。
従って、第1実施形態によれば、簡易な構成で白色表示が可能な表示装置10を低コストに提供できる。
【0057】
そして、表示装置10では、各押圧部材30の押圧面30aの移動量(押圧状態)を適宜変更することにより、画素を構成する色調変化部材50の構造色を赤色,緑色,青色,無色透明のいずれかに変化させ、構造色が赤色,緑色,青色の場合には当該構造色を表示部Rに表示させ、構造色が無色透明の場合には黒色シート材40の黒色を表示部Rに表示させることができる。
従って、第1実施形態の表示装置10によれば、各画素の色調を任意に設定することが可能であり、複数の画素から成る所望の画像を表示部Rにフルカラーで表示できる。
【0058】
<第2実施形態>
図4は、図1(A)におけるX−X線断面図であり、第2実施形態の表示装置100の要部縦断面構造を説明するための概略断面図である。
表示装置100は、収納ケース11、透明板12、マイクロプリズム素子20b、押圧部材30、黒色シート材40、色調変化部材50などから構成されている。
【0059】
第2実施形態の表示装置100において、第1実施形態の表示装置10(図2参照)と異なるのは、マイクロプリズム型再帰反射シート20が省かれ、各マイクロプリズム素子20bの一つの面が、透明板12の裏面(色調変化部材50と対向する面)12bに対して直接、無色透明の接着層(図示略)を介して接着固定されている点だけである。
【0060】
そのため、第2実施形態の表示装置100によれば、第1実施形態の表示装置10と同様の作用・効果が得られる。
加えて、第2実施形態によれば、第1実施形態のマイクロプリズム型再帰反射シート20を構成する透明シート材20aを省くことが可能になるため、部品点数を減らして更なる低コスト化を図ることができる。
【0061】
<第3実施形態>
図5は、図1(A)におけるX−X線断面図であり、第3実施形態の表示装置110の要部縦断面構造を説明するための概略断面図である。
表示装置110は、収納ケース11、透明板12、マイクロプリズム型再帰反射シート20、押圧部材30、黒色シート材40、色調変化部材50、透明シート材111(透明部材)などから構成されている。
【0062】
第3実施形態の表示装置110において、第1実施形態の表示装置10(図2参照)と異なるのは、各色調変化部材50の表面50a上に透明シート材111が配設されている点だけである。つまり、透明シート材111は、透明板12とイクロプリズム型再帰反射シート20の間に設けられている。
透明シート材111は、平坦で均一な厚さであり、弾性変形可能で無色透明であれば、どのような材料によって形成してもよい。
【0063】
図5(A)に示す第1の状態(初期状態)では、押圧部材30の押圧面30aが最も退縮した初期位置にあり、マイクロプリズム型再帰反射シート20と透明シート材111とが一定の間隔を空けて離間するように配置され、マイクロプリズム型再帰反射シート20と透明シート材111とが接触しないようになっている。
そのため、第3実施形態においても、第1の状態では、第1実施形態と同じく(図3(A)参照)、表示部Rに白色表示を行うことができる。
【0064】
図5(B)に示す第2の状態では、透明シート材111にマイクロプリズム素子20bが完全に埋まり込んだ状態で、且つ、色調変化部材50が押圧されない状態になるまで、押圧部材30の押圧面30aを透明板12側へ移動する。
【0065】
すると、弾性変形可能で無色透明の透明シート材111の中に完全に埋め込まれたマイクロプリズム素子20bはプリズム機能を失うため、マイクロプリズム型再帰反射シート20も再帰反射機能を失って無色透明状態(透光状態)になることから、表示装置10の外部から透明板12を透過して入射した入射光Lは、マイクロプリズム型再帰反射シート20を透過する。
そして、マイクロプリズム型再帰反射シート20を透過した入射光Lは、透明シート材111も透過して色調変化部材50へ入射する。
そのため、透明板12および透明シート材111を介して表示装置10の外部から色調変化部材50を視認できる状態になる。
【0066】
その結果、第3実施形態においても、第2の状態では、第1実施形態と同じく(図3(B)参照)、表示部Rに赤色表示を行うことができる。
尚、第3実施形態における第3〜第5の状態については、第1実施形態と同様である(図3(C)〜図3(E)参照)。
【0067】
以上のように、第3実施形態の表示装置110によれば、第1実施形態の表示装置10と同様の作用・効果が得られる。
ところで、第1実施形態では、マイクロプリズム素子20bを色調変化部材50の基材に埋め込ませてプリズム機能を失わせるため、色調変化部材50の表面50a側がマイクロプリズム素子20bにより傷付けられて破損し、色調変化部材50による構造色の発色性能が低下するおそれがある。
【0068】
それに対して、第3実施形態では、マイクロプリズム素子20bを透明シート材111に埋め込ませてプリズム機能を失わせるため、色調変化部材50の表面50a側がマイクロプリズム素子20bにより傷付けられて破損するのを防止することが可能になり、色調変化部材50による構造色の発色性能の低下を回避できる。
【0069】
本発明は、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせて実施してもよく、その場合には、両実施形態の相乗効果を得ることができる。
また、本発明は、前記各局面および前記各実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0070】
10,100,110…表示装置
11…収納ケース
12…透明板
12a…透明板12の表面
12b…透明板12の裏面(色調変化部材50と対向する面)
20…マイクロプリズム型再帰反射シート(マイクロプリズム型再帰反射部材)
20a…透明シート材
20b…マイクロプリズム素子(マイクロプリズム型再帰反射部材)
30…押圧部材
30a…押圧面
40…黒色シート材(黒色の部材)
50…色調変化部材
50a…色調変化部材50の表面
111…透明シート材(透明部材)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則的な間隔で配列された粒子と、その粒子の間に介在して弾性変形可能な基材とを有し、基材を弾性変形させて粒子の間隔を変更し、粒子の間隔に応じた特定の波長の可視光を反射することにより、色調が変化する色調変化部材と、
表示側に設けられた透明板と、
前記色調変化部材を前記透明板側へ押圧し、前記色調変化部材を厚さ方向に変形させることにより前記基材を弾性変形させる押圧部材と、
前記透明板と前記色調変化部材の間に設けられたマイクロプリズム型再帰反射部材と
を備えた表示装置であって、
白色表示を行う場合には、前記押圧部材によって前記色調変化部材を押圧せず、前記色調変化部材と前記マイクロプリズム型再帰反射部材とを離間させ、外部から前記透明板を透過して入射した入射光を、前記マイクロプリズム型再帰反射部材によって再帰反射させ、
白色以外の色表示を行う場合には、前記押圧部材によって前記色調変化部材を押圧し、前記色調変化部材の基材の中に前記マイクロプリズム型再帰反射部材のマイクロプリズム素子を埋め込ませてプリズム機能を失わせることにより、前記マイクロプリズム型再帰反射部材を透光状態にさせ、前記透明板を介して外部から前記色調変化部材を視認できる状態にすることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記マイクロプリズム型再帰反射部材は、前記透明板における前記色調変化部材と対向する面に固定された多数個のマイクロプリズム素子から成ることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
規則的な間隔で配列された粒子と、その粒子の間に介在して弾性変形可能な基材とを有し、基材を弾性変形させて粒子の間隔を変更し、粒子の間隔に応じた特定の波長の可視光を反射することにより、色調が変化する色調変化部材と、
表示側に設けられた透明板と、
前記色調変化部材を前記透明板側へ押圧し、前記色調変化部材を厚さ方向に変形させることにより前記基材を弾性変形させる押圧部材と、
前記透明板と前記色調変化部材の間に設けられたマイクロプリズム型再帰反射部材と、
前記透明板と前記マイクロプリズム型再帰反射部材の間に設けられた弾性変形可能な透明部材と
を備えた表示装置であって、
白色表示を行う場合には、前記押圧部材によって前記色調変化部材を押圧せず、前記透明部材と前記マイクロプリズム型再帰反射部材とを離間させ、外部から前記透明板および前記透明部材を透過して入射した入射光を、前記マイクロプリズム型再帰反射部材によって再帰反射させ、
白色以外の色表示を行う場合には、前記押圧部材によって前記色調変化部材を介して前記透明部材を押圧し、前記透明部材の中に前記マイクロプリズム型再帰反射部材のマイクロプリズム素子を埋め込ませてプリズム機能を失わせることにより、前記マイクロプリズム型再帰反射部材を透光状態にさせ、前記透明板および前記透明部材を介して外部から前記色調変化部材を視認できる状態にすることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示装置において、
前記色調変化部材と前記押圧部材の間に黒色の部材が設けられていることを特徴とする表示装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−186271(P2011−186271A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52755(P2010−52755)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】