説明

表示装置

【課題】フリック入力時の誤入力を防止でき、文字入力の作業効率の向上が可能な、予測変換候補を表示する表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る表示装置101は、文字が割り当てられたキーを表示する表示部101と、接触物が接触すると、該接触の位置を検出し、検出結果を出力するタッチセンサ104と、タッチセンサ104の出力に基づき、接触物が接触し、接触物の接触の位置が接触された位置を始点として変位したと判定すると、接触の始点の位置に対応するキーに割り当てられた文字に関連する予測変換候補を表示部103に表示させ、予測変換候補が表示された状態で、タッチセンサ104が予測変換候補に対応する位置を検出すると、検出された位置に対応する予測変換候補を選択する制御部106とを備える表示装置において、制御部106は、始点を基準とした変位の方向を除く領域に、予測変換候補を表示するように表示部103を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサを備える表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサを備えるタッチパネルは、キーレイアウトの自由度の高さや、直感的な操作が可能であることなど多くの利点を有している。そのため、近年、タッチパネルが搭載された表示装置が急激に増加している。タッチパネルが搭載された表示装置としては、例えば、銀行のATM(Automated Teller Machine)、駅の券売機、iPhone(登録商標)やXperia(登録商標)などの携帯端末が挙げられる。特に携帯端末には、操作性を向上させるための様々な機能が存在する。
【0003】
例えば、iPhoneやXperiaなどには、「フリック入力」という文字入力方式が採用されている。フリック入力とは、ユーザがあるキーを基点にタッチパネル上で指を移動(スライド)させると、移動方向に対応付けられた文字が入力される文字入力方式である。具体的には、フリック入力が可能なタッチパネルでは、1つのキーに複数の文字が割り当てられている。これらの文字には、それぞれ異なる指のスライド方向が対応付けられている。ユーザが指でキーに触れ、タッチパネルから離さずに指をスライドさせると、スライド方向に対応付けられた文字が文章表示部(ディスプレイ)に表示される。例えば、ユーザが「こ」を入力する場合について図13を用いて説明する。なお、「こ」は、「か」キーに割り当てられ、「か」キーを基点とする右方向へのスライドに「こ」が対応付けられているものとする。まず、ユーザは、キー表示部に表示されている「か」キーに触れる。そして、ユーザは、指を離さずに、指を右方向にスライドさせる。このとき、図13のように、ユーザがスライド方向とそれに対応付けられた文字の関係を認識できるように、スライド方向に対応付けられた文字「こ」が表示されることがある。スライド後、ユーザが指をタッチパネルから離すと、文字「こ」が文章表示部に表示される。
【0004】
また、タッチパネルが搭載された携帯端末には、操作性を向上させるための予測変換機能を有するものも数多く存在する。予測変換機能を有する携帯端末のタッチパネルでは、ある文字がフリック入力されると、ユーザの過去の入力情報などから、続いて入力される文字(文字列)が予測される。以下、予測された文字(文字列)を予測変換候補とする。予測変換候補は、図13のように予測変換候補表示部に表示される。ユーザが指で予測変換候補に触れることにより、予測変換候補は文章表示部に表示される。
【0005】
予測変換候補表示部には、文章表示部やキー表示部とは独立した小さな領域が予め割り当てられている。よって、予測変換候補表示部に表示される予測変換候補は小さくなる。そのため、ユーザは、誤って所望の予測変換候補以外の予測変換候補に触れてしまい、誤入力してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、従来、予測変換候補表示部を設けずに予測変換候補を表示する表示装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の表示装置では、ユーザがあるキーを基点にフリック入力を行うと、スライド方向に対応付けられた文字がガイド表示として当該キーに隣接するように表示される。ガイド表示は、ユーザがスライド方向とそれに対応付けられた文字の関係を認識できるようにするために表示される。そして、このガイド表示の下などに、スライド方向に対応付けられた文字の予測変換候補が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−282380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の表示装置では、フリック入力における指のスライド方向上に予測変換候補が表示されることがある。例えば、ユーザが、「お」を入力するために、「あ」キーを基点に下方向に指をスライドさせた場合に、「あ」キーの下に表示された「お」のガイド表示の下に「お」の予測変換候補が表示されることがある。ユーザは、フリック入力を素早く行うと、誤って予測変換候補まで指をスライドさせてしまうことがある。ユーザが誤って予測変換候補にまで指をスライドさせてしまうと、当該予測変換候補が入力され、文章表示部に表示されることになる。文章表示部に表示された予測変換候補が所望の文字(文字列)ではない場合、つまり予測変換候補が誤入力されてしまった場合、ユーザは、当該文字を削除し、正しい文字を入力し直さなければならない。このような誤入力の訂正はユーザにとって手間がかかる作業であり、文字入力の作業効率を下げる要因となる。
【0009】
従って、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、フリック入力時の誤入力を防止でき、文字入力の作業効率の向上が可能な、予測変換候補を表示する表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による表示装置は、
文字が割り当てられたキーを表示する表示部と、
接触物が接触すると、該接触の位置を検出し、検出結果を出力するタッチセンサと、
前記タッチセンサの出力に基づき、前記接触物が接触し、前記接触物の接触の位置が前記接触された位置を始点として変位したと判定すると、前記接触の始点の位置に対応するキーに割り当てられた文字に関連する予測変換候補を前記表示部に表示させ、
前記予測変換候補が表示された状態で、前記タッチセンサが前記予測変換候補に対応する位置を検出すると、前記検出された位置に対応する予測変換候補を選択する制御部と
を備える表示装置において、
前記制御部は、前記始点を基準とした前記変位の方向を除く領域に、前記予測変換候補を表示するように前記表示部を制御することを特徴とするものである。
【0011】
また、前記制御部は、複数の予測変換候補を前記表示部に表示させる場合、前記始点を基準とした前記変位の方向に向かって両側に振り分けて前記予測変換候補を表示するように前記表示部を制御することが望ましい。
【0012】
また、第2の観点による表示装置は、
文字が割り当てられたキーを表示する表示部と、
接触物が接触すると、該接触の位置を検出し、検出結果を出力するタッチセンサと、
前記タッチセンサの出力に基づき、前記接触物が接触し、前記接触物の接触の位置が前記接触された位置を始点として変位したと判定すると、前記接触の始点の位置に対応するキーに割り当てられた文字に関連する予測変換候補を前記表示部に表示させ、
前記予測変換候補が表示された状態で、前記タッチセンサが前記予測変換候補に対応する位置を検出すると、前記検出された位置に対応する予測変換候補を選択する制御部と
を備える表示装置において、
前記制御部は、前記変位の速度を求め、当該速度が速度閾値以上の場合は、前記始点を基準とした前記変位の方向を除く領域に前記予測変換候補を表示するように前記表示部を制御し、当該速度が速度閾値未満の場合は、少なくとも前記始点を基準とした前記変位の方向上に前記予測変換候補を表示するように前記表示部を制御することを特徴とするものである。
【0013】
また、前記制御部は、複数の予測変換候補を前記表示部に表示させる場合、前記複数の予測変換候補に対して優先度を設定し、前記速度が速度閾値以上の場合は、1番目及び2番目に優先度の高い予測変換候補を、前記始点を基準とした前記変位の方向に向かって両側に振り分けて表示するように前記表示部を制御し、その後、前記速度が速度閾値未満になると、3番目に優先度の高い予測変換候補を、前記始点を基準とした前記変位の方向上に表示するように前記表示部を制御することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成された本発明にかかる表示装置によれば、素早いフリック入力によりユーザが誤って予測変換候補にまで接触物をスライドさせてしまうという状況を避けることができる。よって、予測変換候補への誤接触により誤入力された予測変換候補を削除する必要がなくなるため、文字入力の作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、図1の表示装置が行う処理を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図1の表示部の表示画面例である。
【図4】図4は、図1の表示部の表示画面例である。
【図5】図5は、図1の表示装置による従属文字の表示例である。
【図6】図6は、図1の表示部の表示画面例である。
【図7】図7は、図1の表示部の表示画面例である。
【図8】図8は、図1の表示部の表示画面例である。
【図9】図9は、図1の表示部の表示画面例である。
【図10】図10は、図1の表示部の表示画面例である。
【図11】図11は、図1の表示部の表示画面例である。
【図12】図12は、図1の表示部の表示画面例である。
【図13】図13は、従来のタッチパネルの表示画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。本発明の表示装置101の一例としては、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話端末、携帯音楽プレイヤー、携帯テレビ、銀行のATM(Automated Teller Machine)、駅の券売機が挙げられる。この表示装置101は、表示部103及びタッチセンサ104を備えるタッチパネル102と、記憶部105と、制御部106とを有する。
【0018】
表示部103は、文字を入力するためのキー又はボタン(以下、キー、ボタン及び文字を入力するためのオブジェクト等を、キーと略する)などを表示するものであり、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等を用いて構成される。文字とは、ひらがな、片仮名、アルファベットのみならず、数字や記号等も含むものとする。キーには、文字が割り当てられている。フリック入力が可能な表示装置101では、1つのキーに、複数の文字が割り当てられている。複数の文字のうちの1つは、ユーザが、指やスタイラスペン等(接触物)をキーに接触させ、接触物を変位(スライド)させることなくキーから離すと、表示部103に表示される。このような文字を以下、代表文字と称する。代表文字以外の文字には、接触物の変位の方向(変位方向)が対応付けられている。以下、代表文字以外の文字を従属文字と称する。ユーザが、接触物をキーに接触させ、接触が継続された状態で接触物を変位させ、キーから離すと、変位方向に対応付けられた従属文字が表示部103に表示される。
【0019】
タッチセンサ104は、接触物によるタッチパネル102への接触の位置(接触位置)を検出し、検出結果を制御部106に出力するもので、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の公知の方式のもので構成される。なお、タッチセンサ104が接触位置を検出する上で、接触物がタッチセンサ104を物理的に押下することは必須ではない。例えば、光学式のタッチセンサ104は、タッチセンサ104の赤外線が指やスタイラスペン等で遮られた位置を検出するため、接触物がタッチセンサ104を押下することは不要である。
【0020】
記憶部105は、入力された各種情報、変位方向と従属文字との関係、文字(文字列)に関連する予測変換候補、変位の速度に関する閾値などを記憶するとともに、ワークメモリ等としても機能する。予測変換候補とは、接触物が接触したキーの代表文字又は従属文字を含む単語又は文章のうち、ユーザが入力する可能性の高い文字(文字列)である。
【0021】
制御部106は、表示装置101の各機能ブロックをはじめとして表示装置101の全体を制御及び管理する。ここで、制御部106は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることができる。制御部106は、タッチセンサ104の出力に基づき、接触物が接触し、接触物の接触の位置が接触された位置を始点として変位したと判定すると、接触の始点の位置に対応するキーに割り当てられた文字に関連する予測変換候補を表示部103に表示させる。キーに割り当てられた文字に関連する予測変換候補とは、キーに割り当てられた代表文字又は従属文字の予測変換候補を指す。代表文字の予測変換候補を表示するか、従属文字の予測変換候補を表示するかについては、制御部106が変位距離に応じて任意に設定できる事項である。例えば、制御部106は、変位距離が所定の値未満では、代表文字の予測変換候補を表示し、変位距離が所定の値以上になると、当該変位方向に対応付けられた従属文字の予測変換候補を表示することができる。制御部106の行うその他の処理については、後述の図2の説明にて詳述する。
【0022】
以下、ユーザが「今度(こんど)」と表示部103に表示させようとする場合について説明する。
【0023】
図2は、図1の表示装置が行う処理を示すフローチャートである。図3は、表示部の表示画面例である。表示部103は、例えば図3のように文章表示部111及びキー表示部112で構成されている。キー表示部112は、ユーザが入力を行うためのものであり、代表文字及び従属文字が割り当てられたキーを複数表示する。文章表示部111は、キー表示部112への入力結果を表示させるためのものである。本実施形態では、代表文字は、あ段の文字、つまり「あ」、「か」、「さ」、「た」、「な」、「は」、「ま」、「や」、「ら」、「わ」であるとする。また、従属文字は、五十音図における各代表文字の行に含まれる文字である。例えば、代表文字「あ」に関する従属文字は、「い」、「う」、「え」、「お」である。なお、「ん」は、代表文字「わ」の従属文字であるとする。図3では、各キーに代表文字のみが表示されているが、従属文字も併せて表示することもできる。また、従属文字と接触物のスライド方向との関係は、各キーの代表文字の正位置を基準として、上方向へのスライドが「い」段の文字に、左方向へのスライドが「う」段の文字に、下方向へのスライドが「え」段の文字に、右方向へのスライドが「お」段の文字にそれぞれ対応するとする。なお、従属文字と接触物のスライド方向との関係は、上記関係に限定されるものではなく、例えば、左方向へのスライドに「い」段の文字を、上方向へのスライドに「う」段の文字を、右方向へのスライドに「え」段の文字を、下方向へのスライドに「お」段の文字を対応させることもできる。なお、以下、方向に関する記載は、キーに表示されている代表文字の正位置を基準とする。
【0024】
まず、キー表示部112に表示されたキー(「か」キー)に、ユーザの指やスタイラスペン等の接触物が接触すると、タッチセンサ104は、この接触の位置(接触位置)を検出する(ステップS101)。そして、タッチセンサ104は、検出結果を制御部106に出力する。
【0025】
制御部106は、タッチセンサ104からの出力(接触位置情報)から、接触物がどのキーに接触したかを特定する(ステップS102)。本実施形態では、制御部106は、接触物が接触したキーは「か」キーであると特定する。
【0026】
続いて、制御部106は、接触が継続された状態で、接触物の接触位置が変位したか否かを判定する(ステップS103)。この変位の基準となる始点は、ステップS101において、接触物が最初に触れた位置である。接触物の接触位置が変位せずに(ステップS103のNo)、接触物がタッチセンサ104から離れると(ステップS108)、制御部106は、ステップS102で特定されたキーの代表文字を文章表示部111に表示すべき文字として選択し、当該代表文字を文章表示部111に表示させる(ステップS109)。なお、接触物の接触位置が変位したか否かの判定基準は、厳密に変位距離が0(ゼロ)であるか否かに限定されるものではない。例えば、制御部106は、距離閾値を設け、当該距離閾値未満の変位であれば、接触位置は変位していないと判断することができる。
【0027】
ユーザは、「こ」を入力するために、接触が継続された状態で、図4のように右方向に指を変位(スライド)させることになる。なお、制御部106は、図4のように、指の変位に併せて変位方向に対応付けられた従属文字を代表文字の周囲に表示するように表示部103を制御することができる。また、制御部106は、図5のように、タッチセンサ104があるキー(図5では「か」キー)への接触物の接触を検出すると、当該キーに割り当てられた従属文字(「き」、「く」、「け」、「こ」)を接触されたキーを基準に対応付けられた方向に表示するように表示部103を制御することができる。
【0028】
制御部106は、接触位置が変位したと判定すると(ステップS103のYes)、当該変位方向に対応付けられた従属文字を特定する。つまり、本実施形態では、変位方向に基づいて従属文字「こ」が特定される。そして、制御部106は、変位の速度を算出する(ステップS104)。制御部106は、例えば、始点の位置と変位後の位置とから距離を算出し、当該距離を変位にかかった時間で除算することにより変位の速度を求めることができる。時間の測定は、例えば、制御部106がRTC(Real Time Clock:リアルタイムクロック)を有することにより実現される。
【0029】
そして、制御部106は、算出した速度が記憶部105に記憶されている速度閾値以上であるか否か判定する(ステップS105)。当該速度閾値は、制御部106が任意に設定できる事項であり、変位の方向上、つまり始点の位置と変位後の位置とを結ぶ線分の延長線上に予測変換候補が表示された場合に、ユーザが誤って予測変換候補にまで接触物をスライドさせてしまう速度か否かを基準に定められるものである。
【0030】
変位の速度が速度閾値以上である場合(ステップS105のYes)、制御部106は、始点を基準とした変位の方向を除く領域に予測変換候補(「今度」、「これから」、「ごめん」)を表示部103に表示させる(ステップS106)。例えば、制御部106は、予測変換候補が複数存在する場合は、図6のように、始点を基準とした変位の方向に向かって両側に振り分けて予測変換候補を表示するように表示部103を制御することができる。これにより、始点を基準とした変位の方向に向かって片側のみに予測変換候補を表示するよりも多くの予測変換候補を変位後の接触位置から等距離の位置に表示することができる。
【0031】
なお、制御部106は、予測変換候補が複数存在する場合は、優先度に基づいて予測変換候補の表示位置を決定することもできる。制御部106は、ユーザが入力する可能性の高い予測変換候補ほど優先度を高く設定する。制御部106は、過去のユーザの入力履歴を記憶部105に記憶させ、入力頻度の高い言葉ほど優先度を高く設定することができる。また、制御部106は、過去のユーザの入力履歴を記憶部105に記憶させ、直近の入力で文章表示部111に表示された言葉であるほど優先度を高く設定することもできる。制御部106は、優先度の高い予測変換候補を変位後の接触位置から近い位置に表示するように表示部103を制御することができる。これにより、ユーザは、所望の予測変換候補を選択しやすくなる。
【0032】
また、制御部106は、始点を基準とした変位の方向を除く領域であり、且つ変位後の接触位置から上側の領域のみに予測変換候補を表示部103に表示させることもできる。なお、上側とは、キーに表示されている代表文字の正位置を基準としたときの上側であるとする。変位後の接触位置から下側の領域には、表示部103の表示が指等の接触物の陰になって見難い領域が存在しやすい。よって、予測変換候補を上側の領域のみに表示することにより、ユーザは表示されている予測変換候補を認識しやすくなる。
【0033】
なお、制御部106は、始点を基準とした変位の方向を除く領域に予測変換候補を表示させるが、この「始点を基準とした変位の方向を除く領域」とは、例えば、以下のように判断される領域である。まず、制御部106は、接触物がタッチセンサ104に最初に触れた際、接触物とタッチセンサ104とが接触している接触面積の中心点又は重心点を算出し、この点を始点とする。次に、制御部106は、始点を基準として接触物の接触位置が変位したと判定すると、制御部106が接触物の接触位置が変位したと判定した際に接触物とタッチセンサ104とが接触している接触面積の中心点又は重心点を算出し、この点を変位点とする。そして、制御部106は、始点を基点として、始点と変位点とを結ぶ線分の延長線(半直線)上を除く領域を、前述した「始点を基準とした変位の方向を除く領域」と判断し、この領域に予測変換候補を表示させる。
【0034】
また、「始点を基準とした変位の方向を除く領域」とは、例えば、以下のように判断される領域であってもよい。まず、制御部106は、上述した処理と同様に、接触物がタッチセンサ104に最初に触れた際、接触物とタッチセンサ104とが接触している接触面積の中心点又は重心点を算出し、この点を始点とする。次に、制御部106は、始点を基準として接触物の接触位置が変位したと判定すると、制御部106が接触物の接触位置が変位したと判定した際に接触物とタッチセンサ104とが接触している接触面積を求める。そして、制御部106は、接触物が接触面積を維持したままで、変位の方向を変えることなく変位を続けた場合に、接触物とタッチセンサとの接触面積に含まれることになる領域を除く領域を、前述した「始点を基準とした変位の方向を除く領域」と判断し、この領域に予測変換候補を表示させる。
【0035】
ステップS105において、変位の速度が速度閾値未満である場合(ステップS105のNo)、制御部106は、図7のように、始点を基準とした変位の方向上に予測変換候補を表示することができる(ステップS107)。制御部106は、優先度に基づいて予測変換候補の表示位置を決定することができ、例えば、制御部106は、1番目及び2番目に優先度の高い予測変換候補を、始点を基準とした変位の方向に向かって両側に振り分けて表示し、3番目に優先度の高い予測変換候補を、始点を基準とした変位の方向上に表示することができる。
【0036】
制御部106は、予測変換候補の表示部103上への表示後、タッチセンサ104からの出力結果(接触位置情報)に基づいて、接触物がタッチセンサ104から離れたか否かを判定する(ステップS108)。タッチセンサ104が表示部103上の予測変換候補に対応する位置を検出した後、その位置で接触物がタッチセンサ104から離れると、制御部106は、最後に検出された位置に対応する予測変換候補を文章表示部111に表示すべき文字として選択する。そして、制御部106は、選択された予測変換候補を文章表示部111に表示させる(ステップS109)。つまり、ユーザは、指をスライドさせて予測変換候補「今度」の領域に触れた後、指をタッチセンサ104から離すことにより、図8のように「今度」が文章表示部111に表示される。
【0037】
なお、接触位置は変位したものの、接触物がタッチパネル102から離れた位置が予測変換候補上ではなかった場合には、制御部106は、変位方向に対応付けられた従属文字を文章表示部111に表示すべき文字として選択し、当該従属文字を文章表示部111に表示させる(ステップ109)。
【0038】
また、図9のように、接触物が予測変換候補(「今度」)の表示をまたぐようにスライドした場合、制御部106は、図10のように、表示部103の表示を文章表示部111と予測変換候補のみを表示する予測変換候補表示部113とで構成される画面配置に変更することができる。更に、制御部106は、接触物が予測変換候補(「今度」)の表示をまたぐようにスライドし、且つスライド距離が所定の値以上になった場合に、表示部103の表示を図10のような表示に変更することもできる。これにより、予測変換候補は、キーに重なって表示されることはないため、ユーザは、予測変換候補を見やすくなる。なお、予測変換候補の表示をまたぐとは、厳密に予測変換候補の文字そのものをまたぐことに限定されるものではない。例えば、予測変換候補の文字の周囲を囲むキーやボタン等を模した表示をまたぐことも含むものであることに留意されたい。
【0039】
ステップS108において、接触物がタッチセンサ104から離れない場合は(ステップS108のNo)、ステップS103〜S107の処理が繰り返される。以下、接触物がタッチパネル102から離れる間に、変位の速度が閾値以上から閾値未満に変化した場合の制御部106の処理について説明する。
【0040】
変位の速度が閾値以上の場合(ステップS105のYes)、制御部106は、始点を基準とした変位の方向を除く領域に予測変換候補を表示する(ステップS106)。このとき、制御部106は、1番目及び2番目に優先度の高い予測変換候補を、始点を基準とした変位の方向に向かって両側に振り分けて表示するように表示部103を制御することができる。例えば、予測変換候補の「今度」の優先度が1番目に高く、予測変換候補の「これから」の優先度が2番目に高いとすると、表示部103の表示は図11のようになる。
【0041】
その後、接触物がタッチセンサ104から離れる間に(ステップS108のNo)、変位の速度が閾値未満になるとする(ステップS105のNo)。このとき、制御部106は、3番目に優先度の高い予測変換候補を、始点を基準とした変位の方向上に表示するように表示部103を制御することができる。例えば、予測変換候補の「ごめん」の優先度が3番目に高いとすると、表示部103の表示は図12のようになる。
【0042】
なお、変位の速度が閾値未満から閾値以上に変化した場合は、制御部106は、ステップS106の処理を行わないこともできる。変位の速度が閾値未満から閾値以上に変化する場合としては、例えば、ユーザが、予測変換候補が表示された後、所望の予測変換候補を認識し、当該予測変換候補に接触するために指のスライド速度を上げることが考えられる。この場合、制御部106は、ユーザによる一回の入力操作(接触物をキーに接触させ、離すまでの一連の動作)の間は、表示部103上に一旦表示された予測変換候補の位置を変更しないことができる。制御部106の当該処理により、所望の予測変換候補へ指をスライドさせている間に変位速度が速度閾値以上になったために予測変換候補の位置が変更されるという状況を避けることができる。
【0043】
このように本実施形態では、表示装置101の制御部106は、始点を基準とした変位の方向を除く領域に、予測変換候補を表示するように表示部103を制御する。つまり、制御部106は、フリック入力による指のスライドの方向上には、予測変換候補を表示しない。これにより、素早くフリック入力が行われることで、ユーザが誤って予測変換候補にまで指をスライドさせてしまうという状況を避けることができる。よって、誤った予測変換候補が文章表示部111に表示される(誤入力される)ことを防止でき、ユーザが誤入力文字を訂正する必要もなくなる。そのため、文字入力の作業効率が向上する。
【0044】
また、本実施形態では、制御部106は、複数の予測変換候補を表示部103に表示させる場合、始点を基準とした変位の方向に向かって両側に振り分けて予測変換候補を表示するように表示部103を制御することができる。これにより、始点を基準とした変位の方向に向かって片側のみに予測変換候補を表示するよりも多くの予測変換候補を変位後の接触位置から等距離の位置に表示することができる。つまり、変位後の接触位置から近い位置に表示できる予測変換候補の数が多いため、所望の予測変換候補が変位後の接触位置から近い位置に表示される可能性が高い。そのため、ユーザが所望の予測変換候補を少ない操作負担で選択できる可能性が高くなる。
【0045】
また本実施形態では、制御部106は、変位の速度を求め、速度が速度閾値以上の場合は、始点を基準とした変位の方向を除く領域に予測変換候補を表示するように表示部103を制御し、速度が速度閾値未満の場合は、少なくとも始点を基準とした変位の方向上に予測変換候補を表示するように表示部103を制御する。速度閾値は、変位の方向上、つまり始点の位置と変位後の位置とを結ぶ線分の延長線上に予測変換候補が表示された場合に、ユーザが誤って予測変換候補にまで指をスライドさせてしまう速度か否かを基準に定められるものである。つまり、速度が速度閾値以上の場合にのみ、始点を基準とした変位の方向を除く領域に予測変換候補を表示すれば、ユーザが誤って予測変換候補にまで指をスライドさせてしまうという状況を避けることができる。また、そもそもユーザが誤って予測変換候補にまで指をスライドさせてしまう可能性がない状況では、始点を基準とした変位の方向上に予測変換候補は表示される。つまり、予測変換候補は、ユーザが指の移動方向を変えずに最も少ない操作負担で選択できる位置に表示されることになる。
【0046】
また本実施形態では、制御部106は、複数の予測変換候補に対して優先度を設定し、速度が速度閾値以上の場合は、1番目及び2番目に優先度の高い予測変換候補を、始点を基準とした変位の方向に向かって両側に振り分けて表示するように表示部103を制御し、その後、速度が速度閾値未満になると、3番目に優先度の高い予測変換候補を、始点を基準とした変位の方向上に表示するように表示部103を制御することができる。つまり、ユーザが誤って予測変換候補にまで指をスライドさせてしまう可能性がなくなると、始点を基準とした変位の方向上にも予測変換候補が表示される。ユーザは、速度閾値以上の速度で指を変位させてしまった場合にも、変位速度を下げることにより、より多くの予測変換候補を表示部103に表示させることができる。また、始点を基準とした変位の方向上には3番目に優先度の高い予測変換候補が表示され、1番目及び2番目に優先度の高い予測変換候補の表示は変化しない。つまり、3番目に優先度の高い予測変換候補の表示により、ユーザが1番目及び2番目に優先度の高い予測変換候補を選択しにくくなることはない。
【0047】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0048】
上述の本発明の実施形態の説明において、例えば、荷重閾値「以上」または荷重閾値「未満」のような表現の技術的思想が意味する内容は必ずしも厳密な意味ではなく、入力装置の仕様に応じて、基準となる値を含む場合又は含まない場合の意味を包含するものとする。例えば、荷重閾値「以上」とは、押下荷重が荷重閾値に達した場合のみならず、荷重閾値を超えた場合も含意し得るものとする。また、例えば荷重閾値「未満」とは、押下荷重が荷重閾値を下回った場合のみならず、荷重閾値に達した場合、つまり荷重閾値以下になった場合も含意し得るものとする。
【0049】
また、本実施形態の説明において、制御部は、変位の速度が閾値以上から閾値未満に変化した場合に、始点を基準とした変位の方向上に3番目に優先度の高い予測変換候補を表示部に表示させると説明したが、優先度が3番目以外の予測変換候補を変位の方向上に表示することもできる。例えば、制御部は、始点を基準とした変位の方向上に1番目に優先度の高い予測変換候補を表示部に表示させることができる。これにより、ユーザは、1番目に優先度の高い予測変換候補を、指の移動方向を変えずに最も少ない操作負担で選択することが可能になる。なお、この場合、制御部は、変位の速度が閾値未満になる前に既に表示されている1番目に優先度の高い予測変換候補を3番目に優先度の高い予測変換候補に変更することもできる。
【0050】
また、本実施形態の説明における「文章表示部」と「キー表示部」又は「予測変換候補表示部」とは、それぞれ別個のハードウェアにより2画面で構成されていてもよいし、1のハードウェアにより1画面で構成され、2つの表示領域により構成されていてもよい。また、文字が割り当てられたキーを複数表示するキー表示部は、タッチセンサと一体となって構成され、タッチセンサ上にキー等を描画することにより、該キーを表示すると共に、該キーに対する入力を検出してもよい。
【0051】
また、本実施形態の説明における「表示部」及び「タッチセンサ」は、表示部とタッチセンサとの両機能を共通の基板に持たせる等により、一体化した装置によって構成されてもよい。このような表示部とタッチセンサとの両機能を一体化した装置の構成の一例としては、液晶パネルが有するマトリクス状配列の画素電極群に、フォトダイオード等の複数の光電変換素子を規則的に混在させたものがある。この装置は、液晶パネル構造によって画像を表示する一方で、パネル表面の所望位置をタッチ入力するペンの先端で液晶表示用のバックライトの光を反射し、この反射光を周辺の光電変換素子が受光することにより、タッチ位置を検出することができる。
【符号の説明】
【0052】
101 表示装置
102 タッチパネル
103 表示部
104 タッチセンサ
105 記憶部
106 制御部
111 文章表示部
112 キー表示部
113 予測変換候補表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字が割り当てられたキーを表示する表示部と、
接触物が接触すると、該接触の位置を検出し、検出結果を出力するタッチセンサと、
前記タッチセンサの出力に基づき、前記接触物が接触し、前記接触物の接触の位置が前記接触された位置を始点として変位したと判定すると、前記接触の始点の位置に対応するキーに割り当てられた文字に関連する予測変換候補を前記表示部に表示させ、
前記予測変換候補が表示された状態で、前記タッチセンサが前記予測変換候補に対応する位置を検出すると、前記検出された位置に対応する予測変換候補を選択する制御部と
を備える表示装置において、
前記制御部は、前記始点を基準とした前記変位の方向を除く領域に、前記予測変換候補を表示するように前記表示部を制御することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、前記制御部は、複数の予測変換候補を前記表示部に表示させる場合、前記始点を基準とした前記変位の方向に向かって両側に振り分けて前記予測変換候補を表示するように前記表示部を制御することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
文字が割り当てられたキーを表示する表示部と、
接触物が接触すると、該接触の位置を検出し、検出結果を出力するタッチセンサと、
前記タッチセンサの出力に基づき、前記接触物が接触し、前記接触物の接触の位置が前記接触された位置を始点として変位したと判定すると、前記接触の始点の位置に対応するキーに割り当てられた文字に関連する予測変換候補を前記表示部に表示させ、
前記予測変換候補が表示された状態で、前記タッチセンサが前記予測変換候補に対応する位置を検出すると、前記検出された位置に対応する予測変換候補を選択する制御部と
を備える表示装置において、
前記制御部は、前記変位の速度を求め、当該速度が速度閾値以上の場合は、前記始点を基準とした前記変位の方向を除く領域に前記予測変換候補を表示するように前記表示部を制御し、当該速度が速度閾値未満の場合は、少なくとも前記始点を基準とした前記変位の方向上に前記予測変換候補を表示するように前記表示部を制御することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置において、前記制御部は、
‐ 複数の予測変換候補を前記表示部に表示させる場合、前記複数の予測変換候補に対して優先度を設定し、
‐ 前記速度が速度閾値以上の場合は、1番目及び2番目に優先度の高い予測変換候補を、前記始点を基準とした前記変位の方向に向かって両側に振り分けて表示するように前記表示部を制御し、
‐ その後、前記速度が速度閾値未満になると、3番目に優先度の高い予測変換候補を、前記始点を基準とした前記変位の方向上に表示するように前記表示部を制御する
ことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−89020(P2012−89020A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236666(P2010−236666)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】