表裏判別装置
【課題】円板状の部品の表裏判別を比較的簡単な構成でもって、高速かつ正確に安定して行うことができる表裏判別装置を提供する。
【解決手段】部品1の周側面を垂直方向から照明手段2によって照明し、部品1の中心軸の真上方向から撮像手段5で撮像した画像データに基づいて外周円算出手段8で部品1の外周円の中心座標と半径を算出する。そして、この外周円の情報から、表裏判別マークエッジ点抽出手段9で表裏判別マークのエッジ点を全周にわたって抽出していく処理を表裏2枚の画像データに対して行い、こうして抽出された表裏判別マークのエッジ点の総数の大小を表裏決定手段10で比較して部品1の表裏を決定する。
【解決手段】部品1の周側面を垂直方向から照明手段2によって照明し、部品1の中心軸の真上方向から撮像手段5で撮像した画像データに基づいて外周円算出手段8で部品1の外周円の中心座標と半径を算出する。そして、この外周円の情報から、表裏判別マークエッジ点抽出手段9で表裏判別マークのエッジ点を全周にわたって抽出していく処理を表裏2枚の画像データに対して行い、こうして抽出された表裏判別マークのエッジ点の総数の大小を表裏決定手段10で比較して部品1の表裏を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状の部品の表裏判別を行うための表裏判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品の表裏を判別する装置として、例えば、特許文献1に記載のものがある。この特許文献1記載の技術では、透光性のある板の上方にシルエット画像撮像用の照明装置を、下方に反射画像撮像用の照明装置とCCDカメラを配置する。そして透光性のある板上に部品をセットしてから、上方の照明装置のみによる照明を行い、下方にあるCCDカメラで部品のシルエット画像を得て、そのシルエット画像から部品の重心位置、面積値、周囲長などを検出する。
【0003】
続いて、下方の照明装置のみによる照明を行い、CCDカメラで部品の反射画像を得てから、部品の重心を通る複数方向に延びる線分を設定し、前記反射画像から各線分上の濃淡情報を抽出し、その濃淡情報に対して、重心からの距離について一次微分値を算出し、一次微分値のうちから極大値を抽出して、抽出された極大値のうち、所定のしきい値よりも大きい極大値をエッジとして抽出する。
【0004】
また、重心からの距離毎に、エッジ度数を得てヒストグラムを作成し、各度数と対応する重み付けとの積を算出し、積の総和を算出する。この積の算出および積の総和の算出は表用の重み付けおよび裏用の重み付けのそれぞれについて行われ、両総和の大小を比較することにより、識別対象部品が表か裏かを識別する。
【0005】
なお、前記ヒストグラムの各度数に対する重み付けは、予め、別途教示用部品を用意し、その教示用部品の基準点を通る複数本の線分上の濃淡情報の一次微分値の極大に基いてエッジを抽出し、距離毎のエッジの度数を得て度数の多少に対応する重み付けを表、裏に対応させて設定している。
【0006】
【特許文献1】特開平08−168940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1のような従来技術では、判別対象物である部品の位置を検出する上でシルエット画像と反射画像をそれぞれ撮像することが不可欠であり、そのため、個別に専用の照明装置が必要になることから、照明系の小型化が難しい。
【0008】
また、2台の照明装置を切り替え制御しながら画像処理をしていく必要があることから、画像処理自体が複雑化し、全体的に処理時間がかかってしまう。
【0009】
また、予め別途教示用部品を用意して、その表裏について重み付けを教示する作業が必要になるため、多品種の部品を取り扱う場合には、その重み付けのための教示作業だけでも作業者に多大なる負担がかかる。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、比較的簡単な構成でもって、円板状をした部品の表裏判別を高速かつ正確に安定して行うことができる表裏判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明における表裏判別装置は、上記部品と同心状に配置されたリング状の照明手段と、上記部品を表裏反転させる表裏反転手段と、上記部品の表裏の画像を軸方向の判別位置から撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像して得られた上記部品の表裏2枚の画像データから表裏を判定する表裏判定手段とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照明手段で部品の周側面を垂直方向から照明するとともに、表裏反転手段によって部品の表裏を反転して、部品の表裏それぞれの画像を撮像手段で撮像して画像データを得、これら表裏2枚の画像データから表裏判定手段で部品の表裏を判定するので、比較的簡単な構成でもって、円板状をした部品の表裏判別を高速かつ正確に安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における円板状の部品の表裏を判別する表裏判別装置の構成を示すブロック図、図2は表裏判別対象となる部品と照明手段との配置関係を示す図である。
【0014】
これらの図において、符号Aは表裏判別装置の全体を示し、また符号1は当該装置Aの表裏判別対象となる円板状の部品である。この部品1は、例えば回転羽根車等を製作する際に使用されるものであって、この部品1の表裏のいずれかの片面には、表裏判別マークMが当該部品1と同心円状に形成されている。この表裏判別マークMは、例えば、部品1が金属製のものではリング状の窪みをパンチ等で形成することにより成形され、また、部品1が樹脂製のものでは予めモールドする際に形成される。
【0015】
2はリング状の照明手段であって、この照明手段2は、部品1の周側面1aを垂直方向(照射角0°)から照明できるように部品1と同心状に配置されている。なお、この照明手段2としては、例えばLEDなどの光源が用いられ、図示しない制御手段によって照明強度が制御される。
【0016】
3は照明手段2を上下動させる照明移動手段で、この照明移動手段3は、部品1の表裏判別時は当該部品1の周側面を垂直方向(照射角0°)から照明されるように照明手段2を部品1の周側面1aとの対面位置まで下降させる一方、部品1の入れ替えや表裏反転手段4によって部品1を表裏反転させるときは照明手段2を上昇させて部品1の周側面1aとの対面位置から離間させることで照明手段2と周辺機構とが衝突しないように制御している。
【0017】
4は、部品1を周側面1aの方向から把持して表裏反転させる表裏反転手段で、例えば、産業用ロボットのアーム先端に設けたクリップ機構などで構成される。
【0018】
5は部品1の表裏の面を撮像する撮像手段である。この撮像手段5は、部品1の中心軸の真上方向に配置されて部品1からの反射光を受光してその濃淡の画像データを生成するものあって、例えばCCD(電化結合デバイス;Charge Coupled Device)によるテレビカメラなどが適用され、部品1や照明手段2との距離を調整する図示しない駆動手段を含んで構成されている。
【0019】
6は撮像手段3で得られる部品1の画像データを処理して部品1の表裏を判定する表裏判定手段としてのデータ処理装置であって、例えば電子計算機で構成されている。そして、このデータ処理装置6は、画像データ記憶手段7、外周円算出手段8、表裏判別マークエッジ検出手段9、および表裏決定手段10を含む。
【0020】
ここに、上記の画像データ記憶手段7は、撮像手段5より入力された部品1の濃淡画像データを格納するもので、例えば、ハードディスク装置やCD−ROM、DVDなどの記憶媒体によって実現される。
【0021】
外周円算出手段8は、撮像手段5で撮像して得られた画像データに基づいて部品1の外周縁を検出し、この外周縁の位置からこの外周縁をなぞる外周円の中心座標および半径を算出するものである。
【0022】
表裏判別マークエッジ点抽出手段9は、外周円算出手段8で算出された外周円の中心座標を基準として表裏判別マークMの窪み部分のエッジ点を全周にわたって順次抽出するものである。
【0023】
表裏決定手段10は、表裏判別マークエッジ点抽出手段9で抽出された部品1の表裏それぞれのエッジ点の総数の大小を比較することにより部品1の表裏を最終的に決定するものである。
【0024】
次に、上記構成を備えた表裏判別装置1の表裏判別動作について、図3に示すフロー図を参照して説明する。なお、以下において符号STは各処理ステップを意味する。
【0025】
まず、照明移動手段3によって、部品1の周側面1aを垂直方向から光が照明されるように照明手段2の位置を調整するとともに、撮像手段5の撮像視野範囲内に部品1全体が入るように部品1を配置する。
【0026】
この状態で照明手段2を点灯すると、部品1の周側面1aに対してその垂直方向から照明光が照射されるので、その照明光は、部品の周側面1aで上方へ反射する。そのため、図4に示すように、撮像手段5によって得られる部品1の画像形状は真円になる。また、表裏判別マークMについては、その窪みの内部は照明されないので、表裏判別マークMが形成された窪みの部分と、それ以外の部品1の平坦な表面部分とで撮像手段5で得られる画像Fの濃淡色に違いが生じる。
【0027】
なお、撮像手段5に受光される部品1の表面からの反射光の強度が大きくなるように、図示しない位置調整手段を用いて部品1、照明手段3、および撮像手段5のそれぞれの相対間距離を調整するようにしてもよい。
【0028】
その後、撮像手段5は、撮像した画像Fのデータをデータ処理装置6内の画像データ記憶手段7に格納する(ST1)。
【0029】
次に、外周円算出手段8は、表裏判別マークMの誤検出を防止するために、予め画像データ記憶手段7に格納されている画像データに基づいて部品1の外周縁の位置座標を検出する(ST2)。
【0030】
これには、まず、図5に示すように、撮像手段5で撮像して得られた画像Fの中心位置(例えば対角線の交わる位置)を仮想的に部品1の中心位置O’として設定する。次に、この中心位置O’から径方向に放射状に延ばした検出ラインLa上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を算出し、その微分値から濃度値が暗(黒)から明(白)、または明(白)から暗(黒)へと変化するエッジ点Paを求める。そして、このエッジ点Paを部品1の外周縁の一つの位置座標とする。同様の処理を、検出ラインLaを所定角度θ1(例えば、θ1=1°)のピッチで全周にわたって(この例では計360箇所)設定して、総計360個の各エッジ点Paにおける位置座標をそれぞれ検出する。
【0031】
このエッジ点Paの検出に際して、個々の部品1の状態や照明の当たり具合によっては、その画像Fの外周縁と背景との境目が不鮮明で見えにくい場合がある。その場合でも安定して外周縁の位置座標を検出できるようにするため、ここでは、例えば図6に示すように、予め上限しきい値と下限しきい値を設定しておき、エッジ点Paを検出する際のしきい値を上限しきい値から段階的に下限しきい値まで一定のステップ幅で下げていき、初めてしきい値を上回った位置をエッジ点Paとして検出する。
【0032】
引き続いて、外周円算出手段8は、上記のST2で検出された各エッジ点Paにおける位置座標のデータから、この外周縁をなぞる外周円Qの中心Oの位置座標(a,b)および半径rを算出する(ST3)。
【0033】
その具体的な手法としては、図7(a)に示すように、先に検出した各エッジ点Paの位置座標のデータ群(総計360点)に基づいて、LMedSロバスト円回帰アルゴリズムを用いて、図7(b)に示すような基準円における下記の式(1)中の定数a、b、rを求める。
(x−a)2+(y−b)2−r2=0 (1)
【0034】
ここで、LMedSロバスト円回帰アルゴリズムについて説明する。
LMedS(=Least Median of Squares)基準はロバストな当てはめ基準の1つであり、Rousseeuwによって提案されたものである。なお、参考文献として、Rousseeuw R.J.、Leroy A.M.:Robust Regression and Outlier Detection、John Wiley & Sons 1986などがある。
【0035】
この当てはめ基準は、下記の式(2)で表され、偏差riの2乗のメディアンを最小にする基準である。
LMedS=min[median(ri2)] (2)
【0036】
一方、最も一般的な当てはめ基準である最小2乗法(LMS=Least Minimum of Squares)は、下記の式(3)で表される。
LMS=min[Σ(ri2)] (3)
【0037】
LMedS基準の大きな特長は、はずれ値(Outlier)と呼ばれる、通常の測定値から飛びぬけてはずれている例外値を自動的に計算からはずし、常に安定な結果が得られるという点である。
【0038】
最小2乗法の当てはめ基準では、データに1つでもはずれ値があると、推定した回帰パラメータ((x−a)2+(y−b)2−r2=0)の円に当てはめる場合は、中心座標(a,b)と半径rが回帰パラメータとなるが、本来の値と全く異なってしまう。
【0039】
これに対して、LMedS基準を用いた場合は、理論的にははずれ値が測定値の50%未満ならば、そのようなはずれ値が含まれていても正しい中心座標(a,b)と半径rの値を推定することができる。
【0040】
こうして、外周円算出手段8によって部品1の外周縁をなぞる外周円Qの中心Oの位置座標(a,b)および半径rが算出されると、次に、表裏判別マークエッジ点抽出手段9は、外周円Qの中心座標(a,b)を基準として表裏判別マークMの窪み部分のエッジ点Pbを全周にわたって順次抽出する(ST4)。
【0041】
この場合も、部品1の外周縁のエッジ点Paを全周にわたって検出した場合と同様、図8に示すように、外周円算出手段8で得られた外周円Qの中心Oの位置座標(a,b)から径方向に放射状に延ばした検出ラインLb上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を算出し、その微分値から濃度値が暗(黒)から明(白)または明(白)から暗(黒)へと変化したときに、これを表裏判別マークMのエッジ点Pbとして抽出する。同様の処理を、検出ラインLbを所定角度θ2(例えば、θ2=1°)のピッチで全周にわたって(この例では計360箇所)設定して、それぞれ抽出された全周にわたるエッジ点Pbの総数SUM1を保持しておく(ST4)。
【0042】
この表裏判別マークMのエッジ点Pbの抽出に際して、表裏判別マークMの成形具合によっては、その窪みの境目が不鮮明で抽出しにくい場合がある。その場合でも安定してエッジ点Pbを抽出できるようにするため、この場合も、例えば図9に示すように、予め上限しきい値と下限しきい値を設定しておき、エッジ点Pbを検出する際のしきい値を上限しきい値から段階的に下限しきい値まで一定のステップ幅で下げていき、初めてしきい値を上回った位置をエッジ点Pbとして抽出する。なお、下限しきい値に達しても先の一次微分値がしきい値を上回る箇所が見つからなければ、エッジ点Pbは抽出できなかったものとする。
【0043】
次に、部品1の表裏両面について同様の処理内容を実施したかどうかを判断し(ST5)、未だ片面のみしか処理を実施していない場合は、照明移動手段3で照明手段2を部品11の対面位置から一旦上部に移動させた後、表裏反転手段4で部品1をつかんで表裏反転させてから照明手段2を元の位置まで下降させて(ST6)、ST1からST4の処理を行う。これにより、部品1のもう片面の画像が撮像され、上記で述べたようにして表裏判別マークMのエッジ点Pbが抽出されてその総数SUM2が保持される。なお、このとき、表裏判別マークMが形成されていなければ、SUM2は零である。
【0044】
部品1の表裏両面についての処理が終了すれば、次に、表裏決定手段10は、部品1の表裏両面についての表裏判別マークMのエッジ点Pbの総数SUM1,SUM2を比較する。このとき、部品1の表面側に表裏判別マークMが予め形成されているならば、SUM1>SUM2となるので、総数がSUM1の側を表面側として決定する。これとは逆に、部品1の裏面側に表裏判別マークMが予め形成されているならば、SUM1<SUM2となるので、総数がSUM2の側を裏面側として決定する。なお、SUM1=SUM2の場合は表裏判別不能とする(ST7)。
【0045】
以上のように、この実施の形態1によれば、部品1の周側面1aを垂直方向から照明手段2によって照明し、部品1の中心軸の真上方向から撮像した画像データに基づいて部品1の外周縁をなぞる外周円の中心座標と半径を算出し、その外周円の情報から、表裏判別マークMのエッジ点Pbを全周方向に抽出していく処理を表裏2枚の画像データに対してそれぞれ行い、表裏2枚の画像データから抽出された表裏判別マークのエッジ点Pbの総数の大小を比較して表裏を判別するようにしたので、比較的簡単な構成でありながら、表面皮膜や加工仕上げの状態によって照明光の反射が変化し易い金属などのような材質であっても、乱反射の影響を受けることなく、高速かつ正確に安定して表裏の判定を行うことが可能となる。
【0046】
特に、照明移動手段3を設けた場合には、表裏判別時には照明手段2を部品1の対面位置まで降下させることで部品1の周側面1aに対して垂直な方向から照明できる一方、照明手段2を部品1の対面位置から上昇させれば部品1の設置や表裏反転取を容易に行うことができて便利である。
【0047】
さらに、表裏判定手段6として、外周円算出手段8で部品1の外周縁をなぞる外周円Qを先に求めた後、表裏判別マークエッジ点抽出手段9でこの外周円Qと同心状に形成された表裏判別マークMのエッジ点Pbを抽出するので、部品1の設置位置が多少ずれた場合でも、正確に部品1の位置と表裏判別マークMの位置を把握することができ、表裏判別マークMの誤検出を防ぐことができる。また、表裏決定手段8は表裏2枚の画像データのエッジ点総数の大小だけで表裏を判定するので、高速な判別処理ができるようになる。
【0048】
さらにまた、外周円算出手段8による部品1の外周縁のエッジ点Paの検出や、表裏判別マークエッジ点抽出手段9による表裏判別マークMのエッジ点Pbの抽出に際して、検出ラインLa,Lb上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を求め、その微分値から濃度値が暗から明または明から暗へと変化する箇所の有無を、しきい値を段階的に一定値ずつ下げながら判定するので、表裏判別マークMの窪みが均一に形状されていなくても、安定して表裏判別マークMのエッジ点Pbを抽出することができ、表裏判別の誤認識がなくなり、装置の信頼性を高めることができる。
【0049】
なお、上記の実施の形態1では、部品1の片面についてST1からST4までの処理を実行した後、ST6で表裏を反転して再びST1からST4までの処理を実行しているが、これに限らず、最初に部品1の片面ずつを撮像手段5で撮像して表裏2枚分の画像データを最初に画像データ記憶手段7に取り込んだ後、2枚の画像データについてそれぞれST2〜ST4の処理を実行してエッジ点の各総数SUM1,SUM2を求めた後、ST7の処理を実行することも可能である。
【0050】
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、表裏判別装置Aによる表裏判別処理の動作のみに着目して説明したが、この装置Aの表裏判別結果をもとに、表裏反転手段4を用いて部品1の上面を一定面(表面のみまたは裏面のみ)に整列させてから搬出させるようにしてもよい。
【0051】
このようにすると、図10に示すように、表裏判別装置Aに対して表裏がバラバラの状態で多数の部品1を投入しても、当該装置Aによって自動的に一定面(表面のみまたは裏面のみ)に整列された状態で搬出されるので、従来の目視による表裏確認と手作業による整列作業を全自動化できるようになり、大幅に作業効率を高めることができる。
【0052】
実施の形態3.
上記の実施の形態1では、表裏判別処理についてのみ説明したが、表裏判別で参照するエッジ点総数が予め設定した最低エッジ点総数を下回っていた場合、表裏判別マークMの成形不良として装置から排出するようにしてもよい。
【0053】
すなわち、図11(a)に示すように、表裏判別マークMの成形具合が不良で不鮮明になっていた場合、表裏判別マークMの位置で極大になる検出ラインLb上の一次微分値は、図11(b)に示すような裏判別マークMが鮮明な場合に比べて小さな値になっている場合が多く、このときには表裏判別マークMのエッジ点Pbを確実に抽出できなくなる。その結果、表裏判別マークMの全周にわたって抽出されるエッジ点Pbの総数が少なくなるので、このように抽出したエッジ点Pbの総数が予め設定した最低エッジ点総数を下回っていた場合には、表裏判別マークMの成形不良と判断することができる。このように、本装置Aでは、表裏判別マークMのエッジ点Pbの総数から表裏判別マークMの形成状態の良/不良も自動判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1における表裏判別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同装置により部品の表裏判別を行う際の照明手段による部品の照明状態を説明するための図である。
【図3】同装置の表裏判別動作の処理手順を示すフロー図である。
【図4】同装置の撮像手段で撮像された画像の一例を示す説明図である。
【図5】同装置の外周円算出手段による部品の外周縁のエッジ点を検出する際の説明図である。
【図6】同装置の外周円算出手段による部品の外周縁のエッジ点の検出精度を高めるための手順の説明図である。
【図7】同装置の外周円算出手段による外周円の算出手順の説明図である。
【図8】同装置の表裏判別マークエッジ点抽出手段による表裏判別マークのエッジ点を抽出する際の説明図である。
【図9】同装置の表裏判別マークエッジ点抽出手段による表裏判別マークのエッジ点の抽出精度を高めるための手順の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態2の表裏判別装置による部品の整列の様子を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態3において表裏判別マークの良/不良を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
A 表裏判別装置、1 円板状の部品、2 照明手段、3 照明移動手段、
4 表裏反転手段、5 撮像手段、6 データ処理装置(表裏判定手段)、
7 画像データ記憶手段、8 外周円算出手段、9 表裏判別マークエッジ点抽出手段、10 表裏決定手段、F 画像、M 表裏判別マーク、La 検出ライン、
Lb 検出ライン、Q 外周円、Pa 部品の外周縁のエッジ点、
Pb 表裏判別マークのエッジ点。
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状の部品の表裏判別を行うための表裏判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品の表裏を判別する装置として、例えば、特許文献1に記載のものがある。この特許文献1記載の技術では、透光性のある板の上方にシルエット画像撮像用の照明装置を、下方に反射画像撮像用の照明装置とCCDカメラを配置する。そして透光性のある板上に部品をセットしてから、上方の照明装置のみによる照明を行い、下方にあるCCDカメラで部品のシルエット画像を得て、そのシルエット画像から部品の重心位置、面積値、周囲長などを検出する。
【0003】
続いて、下方の照明装置のみによる照明を行い、CCDカメラで部品の反射画像を得てから、部品の重心を通る複数方向に延びる線分を設定し、前記反射画像から各線分上の濃淡情報を抽出し、その濃淡情報に対して、重心からの距離について一次微分値を算出し、一次微分値のうちから極大値を抽出して、抽出された極大値のうち、所定のしきい値よりも大きい極大値をエッジとして抽出する。
【0004】
また、重心からの距離毎に、エッジ度数を得てヒストグラムを作成し、各度数と対応する重み付けとの積を算出し、積の総和を算出する。この積の算出および積の総和の算出は表用の重み付けおよび裏用の重み付けのそれぞれについて行われ、両総和の大小を比較することにより、識別対象部品が表か裏かを識別する。
【0005】
なお、前記ヒストグラムの各度数に対する重み付けは、予め、別途教示用部品を用意し、その教示用部品の基準点を通る複数本の線分上の濃淡情報の一次微分値の極大に基いてエッジを抽出し、距離毎のエッジの度数を得て度数の多少に対応する重み付けを表、裏に対応させて設定している。
【0006】
【特許文献1】特開平08−168940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1のような従来技術では、判別対象物である部品の位置を検出する上でシルエット画像と反射画像をそれぞれ撮像することが不可欠であり、そのため、個別に専用の照明装置が必要になることから、照明系の小型化が難しい。
【0008】
また、2台の照明装置を切り替え制御しながら画像処理をしていく必要があることから、画像処理自体が複雑化し、全体的に処理時間がかかってしまう。
【0009】
また、予め別途教示用部品を用意して、その表裏について重み付けを教示する作業が必要になるため、多品種の部品を取り扱う場合には、その重み付けのための教示作業だけでも作業者に多大なる負担がかかる。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、比較的簡単な構成でもって、円板状をした部品の表裏判別を高速かつ正確に安定して行うことができる表裏判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明における表裏判別装置は、上記部品と同心状に配置されたリング状の照明手段と、上記部品を表裏反転させる表裏反転手段と、上記部品の表裏の画像を軸方向の判別位置から撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像して得られた上記部品の表裏2枚の画像データから表裏を判定する表裏判定手段とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照明手段で部品の周側面を垂直方向から照明するとともに、表裏反転手段によって部品の表裏を反転して、部品の表裏それぞれの画像を撮像手段で撮像して画像データを得、これら表裏2枚の画像データから表裏判定手段で部品の表裏を判定するので、比較的簡単な構成でもって、円板状をした部品の表裏判別を高速かつ正確に安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における円板状の部品の表裏を判別する表裏判別装置の構成を示すブロック図、図2は表裏判別対象となる部品と照明手段との配置関係を示す図である。
【0014】
これらの図において、符号Aは表裏判別装置の全体を示し、また符号1は当該装置Aの表裏判別対象となる円板状の部品である。この部品1は、例えば回転羽根車等を製作する際に使用されるものであって、この部品1の表裏のいずれかの片面には、表裏判別マークMが当該部品1と同心円状に形成されている。この表裏判別マークMは、例えば、部品1が金属製のものではリング状の窪みをパンチ等で形成することにより成形され、また、部品1が樹脂製のものでは予めモールドする際に形成される。
【0015】
2はリング状の照明手段であって、この照明手段2は、部品1の周側面1aを垂直方向(照射角0°)から照明できるように部品1と同心状に配置されている。なお、この照明手段2としては、例えばLEDなどの光源が用いられ、図示しない制御手段によって照明強度が制御される。
【0016】
3は照明手段2を上下動させる照明移動手段で、この照明移動手段3は、部品1の表裏判別時は当該部品1の周側面を垂直方向(照射角0°)から照明されるように照明手段2を部品1の周側面1aとの対面位置まで下降させる一方、部品1の入れ替えや表裏反転手段4によって部品1を表裏反転させるときは照明手段2を上昇させて部品1の周側面1aとの対面位置から離間させることで照明手段2と周辺機構とが衝突しないように制御している。
【0017】
4は、部品1を周側面1aの方向から把持して表裏反転させる表裏反転手段で、例えば、産業用ロボットのアーム先端に設けたクリップ機構などで構成される。
【0018】
5は部品1の表裏の面を撮像する撮像手段である。この撮像手段5は、部品1の中心軸の真上方向に配置されて部品1からの反射光を受光してその濃淡の画像データを生成するものあって、例えばCCD(電化結合デバイス;Charge Coupled Device)によるテレビカメラなどが適用され、部品1や照明手段2との距離を調整する図示しない駆動手段を含んで構成されている。
【0019】
6は撮像手段3で得られる部品1の画像データを処理して部品1の表裏を判定する表裏判定手段としてのデータ処理装置であって、例えば電子計算機で構成されている。そして、このデータ処理装置6は、画像データ記憶手段7、外周円算出手段8、表裏判別マークエッジ検出手段9、および表裏決定手段10を含む。
【0020】
ここに、上記の画像データ記憶手段7は、撮像手段5より入力された部品1の濃淡画像データを格納するもので、例えば、ハードディスク装置やCD−ROM、DVDなどの記憶媒体によって実現される。
【0021】
外周円算出手段8は、撮像手段5で撮像して得られた画像データに基づいて部品1の外周縁を検出し、この外周縁の位置からこの外周縁をなぞる外周円の中心座標および半径を算出するものである。
【0022】
表裏判別マークエッジ点抽出手段9は、外周円算出手段8で算出された外周円の中心座標を基準として表裏判別マークMの窪み部分のエッジ点を全周にわたって順次抽出するものである。
【0023】
表裏決定手段10は、表裏判別マークエッジ点抽出手段9で抽出された部品1の表裏それぞれのエッジ点の総数の大小を比較することにより部品1の表裏を最終的に決定するものである。
【0024】
次に、上記構成を備えた表裏判別装置1の表裏判別動作について、図3に示すフロー図を参照して説明する。なお、以下において符号STは各処理ステップを意味する。
【0025】
まず、照明移動手段3によって、部品1の周側面1aを垂直方向から光が照明されるように照明手段2の位置を調整するとともに、撮像手段5の撮像視野範囲内に部品1全体が入るように部品1を配置する。
【0026】
この状態で照明手段2を点灯すると、部品1の周側面1aに対してその垂直方向から照明光が照射されるので、その照明光は、部品の周側面1aで上方へ反射する。そのため、図4に示すように、撮像手段5によって得られる部品1の画像形状は真円になる。また、表裏判別マークMについては、その窪みの内部は照明されないので、表裏判別マークMが形成された窪みの部分と、それ以外の部品1の平坦な表面部分とで撮像手段5で得られる画像Fの濃淡色に違いが生じる。
【0027】
なお、撮像手段5に受光される部品1の表面からの反射光の強度が大きくなるように、図示しない位置調整手段を用いて部品1、照明手段3、および撮像手段5のそれぞれの相対間距離を調整するようにしてもよい。
【0028】
その後、撮像手段5は、撮像した画像Fのデータをデータ処理装置6内の画像データ記憶手段7に格納する(ST1)。
【0029】
次に、外周円算出手段8は、表裏判別マークMの誤検出を防止するために、予め画像データ記憶手段7に格納されている画像データに基づいて部品1の外周縁の位置座標を検出する(ST2)。
【0030】
これには、まず、図5に示すように、撮像手段5で撮像して得られた画像Fの中心位置(例えば対角線の交わる位置)を仮想的に部品1の中心位置O’として設定する。次に、この中心位置O’から径方向に放射状に延ばした検出ラインLa上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を算出し、その微分値から濃度値が暗(黒)から明(白)、または明(白)から暗(黒)へと変化するエッジ点Paを求める。そして、このエッジ点Paを部品1の外周縁の一つの位置座標とする。同様の処理を、検出ラインLaを所定角度θ1(例えば、θ1=1°)のピッチで全周にわたって(この例では計360箇所)設定して、総計360個の各エッジ点Paにおける位置座標をそれぞれ検出する。
【0031】
このエッジ点Paの検出に際して、個々の部品1の状態や照明の当たり具合によっては、その画像Fの外周縁と背景との境目が不鮮明で見えにくい場合がある。その場合でも安定して外周縁の位置座標を検出できるようにするため、ここでは、例えば図6に示すように、予め上限しきい値と下限しきい値を設定しておき、エッジ点Paを検出する際のしきい値を上限しきい値から段階的に下限しきい値まで一定のステップ幅で下げていき、初めてしきい値を上回った位置をエッジ点Paとして検出する。
【0032】
引き続いて、外周円算出手段8は、上記のST2で検出された各エッジ点Paにおける位置座標のデータから、この外周縁をなぞる外周円Qの中心Oの位置座標(a,b)および半径rを算出する(ST3)。
【0033】
その具体的な手法としては、図7(a)に示すように、先に検出した各エッジ点Paの位置座標のデータ群(総計360点)に基づいて、LMedSロバスト円回帰アルゴリズムを用いて、図7(b)に示すような基準円における下記の式(1)中の定数a、b、rを求める。
(x−a)2+(y−b)2−r2=0 (1)
【0034】
ここで、LMedSロバスト円回帰アルゴリズムについて説明する。
LMedS(=Least Median of Squares)基準はロバストな当てはめ基準の1つであり、Rousseeuwによって提案されたものである。なお、参考文献として、Rousseeuw R.J.、Leroy A.M.:Robust Regression and Outlier Detection、John Wiley & Sons 1986などがある。
【0035】
この当てはめ基準は、下記の式(2)で表され、偏差riの2乗のメディアンを最小にする基準である。
LMedS=min[median(ri2)] (2)
【0036】
一方、最も一般的な当てはめ基準である最小2乗法(LMS=Least Minimum of Squares)は、下記の式(3)で表される。
LMS=min[Σ(ri2)] (3)
【0037】
LMedS基準の大きな特長は、はずれ値(Outlier)と呼ばれる、通常の測定値から飛びぬけてはずれている例外値を自動的に計算からはずし、常に安定な結果が得られるという点である。
【0038】
最小2乗法の当てはめ基準では、データに1つでもはずれ値があると、推定した回帰パラメータ((x−a)2+(y−b)2−r2=0)の円に当てはめる場合は、中心座標(a,b)と半径rが回帰パラメータとなるが、本来の値と全く異なってしまう。
【0039】
これに対して、LMedS基準を用いた場合は、理論的にははずれ値が測定値の50%未満ならば、そのようなはずれ値が含まれていても正しい中心座標(a,b)と半径rの値を推定することができる。
【0040】
こうして、外周円算出手段8によって部品1の外周縁をなぞる外周円Qの中心Oの位置座標(a,b)および半径rが算出されると、次に、表裏判別マークエッジ点抽出手段9は、外周円Qの中心座標(a,b)を基準として表裏判別マークMの窪み部分のエッジ点Pbを全周にわたって順次抽出する(ST4)。
【0041】
この場合も、部品1の外周縁のエッジ点Paを全周にわたって検出した場合と同様、図8に示すように、外周円算出手段8で得られた外周円Qの中心Oの位置座標(a,b)から径方向に放射状に延ばした検出ラインLb上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を算出し、その微分値から濃度値が暗(黒)から明(白)または明(白)から暗(黒)へと変化したときに、これを表裏判別マークMのエッジ点Pbとして抽出する。同様の処理を、検出ラインLbを所定角度θ2(例えば、θ2=1°)のピッチで全周にわたって(この例では計360箇所)設定して、それぞれ抽出された全周にわたるエッジ点Pbの総数SUM1を保持しておく(ST4)。
【0042】
この表裏判別マークMのエッジ点Pbの抽出に際して、表裏判別マークMの成形具合によっては、その窪みの境目が不鮮明で抽出しにくい場合がある。その場合でも安定してエッジ点Pbを抽出できるようにするため、この場合も、例えば図9に示すように、予め上限しきい値と下限しきい値を設定しておき、エッジ点Pbを検出する際のしきい値を上限しきい値から段階的に下限しきい値まで一定のステップ幅で下げていき、初めてしきい値を上回った位置をエッジ点Pbとして抽出する。なお、下限しきい値に達しても先の一次微分値がしきい値を上回る箇所が見つからなければ、エッジ点Pbは抽出できなかったものとする。
【0043】
次に、部品1の表裏両面について同様の処理内容を実施したかどうかを判断し(ST5)、未だ片面のみしか処理を実施していない場合は、照明移動手段3で照明手段2を部品11の対面位置から一旦上部に移動させた後、表裏反転手段4で部品1をつかんで表裏反転させてから照明手段2を元の位置まで下降させて(ST6)、ST1からST4の処理を行う。これにより、部品1のもう片面の画像が撮像され、上記で述べたようにして表裏判別マークMのエッジ点Pbが抽出されてその総数SUM2が保持される。なお、このとき、表裏判別マークMが形成されていなければ、SUM2は零である。
【0044】
部品1の表裏両面についての処理が終了すれば、次に、表裏決定手段10は、部品1の表裏両面についての表裏判別マークMのエッジ点Pbの総数SUM1,SUM2を比較する。このとき、部品1の表面側に表裏判別マークMが予め形成されているならば、SUM1>SUM2となるので、総数がSUM1の側を表面側として決定する。これとは逆に、部品1の裏面側に表裏判別マークMが予め形成されているならば、SUM1<SUM2となるので、総数がSUM2の側を裏面側として決定する。なお、SUM1=SUM2の場合は表裏判別不能とする(ST7)。
【0045】
以上のように、この実施の形態1によれば、部品1の周側面1aを垂直方向から照明手段2によって照明し、部品1の中心軸の真上方向から撮像した画像データに基づいて部品1の外周縁をなぞる外周円の中心座標と半径を算出し、その外周円の情報から、表裏判別マークMのエッジ点Pbを全周方向に抽出していく処理を表裏2枚の画像データに対してそれぞれ行い、表裏2枚の画像データから抽出された表裏判別マークのエッジ点Pbの総数の大小を比較して表裏を判別するようにしたので、比較的簡単な構成でありながら、表面皮膜や加工仕上げの状態によって照明光の反射が変化し易い金属などのような材質であっても、乱反射の影響を受けることなく、高速かつ正確に安定して表裏の判定を行うことが可能となる。
【0046】
特に、照明移動手段3を設けた場合には、表裏判別時には照明手段2を部品1の対面位置まで降下させることで部品1の周側面1aに対して垂直な方向から照明できる一方、照明手段2を部品1の対面位置から上昇させれば部品1の設置や表裏反転取を容易に行うことができて便利である。
【0047】
さらに、表裏判定手段6として、外周円算出手段8で部品1の外周縁をなぞる外周円Qを先に求めた後、表裏判別マークエッジ点抽出手段9でこの外周円Qと同心状に形成された表裏判別マークMのエッジ点Pbを抽出するので、部品1の設置位置が多少ずれた場合でも、正確に部品1の位置と表裏判別マークMの位置を把握することができ、表裏判別マークMの誤検出を防ぐことができる。また、表裏決定手段8は表裏2枚の画像データのエッジ点総数の大小だけで表裏を判定するので、高速な判別処理ができるようになる。
【0048】
さらにまた、外周円算出手段8による部品1の外周縁のエッジ点Paの検出や、表裏判別マークエッジ点抽出手段9による表裏判別マークMのエッジ点Pbの抽出に際して、検出ラインLa,Lb上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を求め、その微分値から濃度値が暗から明または明から暗へと変化する箇所の有無を、しきい値を段階的に一定値ずつ下げながら判定するので、表裏判別マークMの窪みが均一に形状されていなくても、安定して表裏判別マークMのエッジ点Pbを抽出することができ、表裏判別の誤認識がなくなり、装置の信頼性を高めることができる。
【0049】
なお、上記の実施の形態1では、部品1の片面についてST1からST4までの処理を実行した後、ST6で表裏を反転して再びST1からST4までの処理を実行しているが、これに限らず、最初に部品1の片面ずつを撮像手段5で撮像して表裏2枚分の画像データを最初に画像データ記憶手段7に取り込んだ後、2枚の画像データについてそれぞれST2〜ST4の処理を実行してエッジ点の各総数SUM1,SUM2を求めた後、ST7の処理を実行することも可能である。
【0050】
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、表裏判別装置Aによる表裏判別処理の動作のみに着目して説明したが、この装置Aの表裏判別結果をもとに、表裏反転手段4を用いて部品1の上面を一定面(表面のみまたは裏面のみ)に整列させてから搬出させるようにしてもよい。
【0051】
このようにすると、図10に示すように、表裏判別装置Aに対して表裏がバラバラの状態で多数の部品1を投入しても、当該装置Aによって自動的に一定面(表面のみまたは裏面のみ)に整列された状態で搬出されるので、従来の目視による表裏確認と手作業による整列作業を全自動化できるようになり、大幅に作業効率を高めることができる。
【0052】
実施の形態3.
上記の実施の形態1では、表裏判別処理についてのみ説明したが、表裏判別で参照するエッジ点総数が予め設定した最低エッジ点総数を下回っていた場合、表裏判別マークMの成形不良として装置から排出するようにしてもよい。
【0053】
すなわち、図11(a)に示すように、表裏判別マークMの成形具合が不良で不鮮明になっていた場合、表裏判別マークMの位置で極大になる検出ラインLb上の一次微分値は、図11(b)に示すような裏判別マークMが鮮明な場合に比べて小さな値になっている場合が多く、このときには表裏判別マークMのエッジ点Pbを確実に抽出できなくなる。その結果、表裏判別マークMの全周にわたって抽出されるエッジ点Pbの総数が少なくなるので、このように抽出したエッジ点Pbの総数が予め設定した最低エッジ点総数を下回っていた場合には、表裏判別マークMの成形不良と判断することができる。このように、本装置Aでは、表裏判別マークMのエッジ点Pbの総数から表裏判別マークMの形成状態の良/不良も自動判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1における表裏判別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同装置により部品の表裏判別を行う際の照明手段による部品の照明状態を説明するための図である。
【図3】同装置の表裏判別動作の処理手順を示すフロー図である。
【図4】同装置の撮像手段で撮像された画像の一例を示す説明図である。
【図5】同装置の外周円算出手段による部品の外周縁のエッジ点を検出する際の説明図である。
【図6】同装置の外周円算出手段による部品の外周縁のエッジ点の検出精度を高めるための手順の説明図である。
【図7】同装置の外周円算出手段による外周円の算出手順の説明図である。
【図8】同装置の表裏判別マークエッジ点抽出手段による表裏判別マークのエッジ点を抽出する際の説明図である。
【図9】同装置の表裏判別マークエッジ点抽出手段による表裏判別マークのエッジ点の抽出精度を高めるための手順の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態2の表裏判別装置による部品の整列の様子を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態3において表裏判別マークの良/不良を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
A 表裏判別装置、1 円板状の部品、2 照明手段、3 照明移動手段、
4 表裏反転手段、5 撮像手段、6 データ処理装置(表裏判定手段)、
7 画像データ記憶手段、8 外周円算出手段、9 表裏判別マークエッジ点抽出手段、10 表裏決定手段、F 画像、M 表裏判別マーク、La 検出ライン、
Lb 検出ライン、Q 外周円、Pa 部品の外周縁のエッジ点、
Pb 表裏判別マークのエッジ点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の部品の表裏を判別する装置であって、上記部品と同心状に配置されたリング状の照明手段と、上記部品を表裏反転させる表裏反転手段と、上記部品の表裏の画像を軸方向の判別位置から撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像して得られた上記部品の表裏2枚の画像データから表裏を判定する表裏判定手段と、を備えることを特徴とする表裏判別装置。
【請求項2】
上記部品の表裏判別時は当該部品の周側面を垂直方向から照明するように上記照明手段を移動し、上記表裏反転手段によって上記部品の表裏反転を行うときは上記照明手段を上記部品の周側面との対面位置から離間させる照明移動手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の表裏判別装置。
【請求項3】
上記部品の表裏のいずれかの片面には表裏判別マークが当該部品と同心円状に形成される一方、上記表裏判定手段は、上記撮像手段が撮像した画像データに基づいて上記部品の外周縁を検出し、この外周縁の位置からこの外周縁をなぞる外周円の中心座標および半径を算出する外周円算出手段と、この外周円算出手段で算出された外周円の中心座標を基準として上記表裏判別マークの窪み部分のエッジ点を全周にわたって順次抽出する表裏判別マークエッジ点抽出手段と、この表裏判別マークエッジ点抽出手段で抽出された上記部品の表裏それぞれのエッジ点の総数の大小を比較して上記部品の表裏を決定する表裏決定手段と、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の表裏判別装置。
【請求項4】
上記外周円算出手段は、上記撮像手段で撮像して得られた画像に基づいて、この画像の中心位置から周方向に沿う所定のピッチ角ごとに、画像の中心位置から半径方向に沿って放射状に延長された検出ライン上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を求め、その微分値から濃度値が暗から明または明から暗へと変化するエッジ点を、しきい値を段階的に一定値ずつ下げながら検出し、こうして検出された周方向に沿う所定のピッチ角ごとのエッジ点の位置座標に基づいて上記部品の外周縁をなぞる外周円の中心座標および半径を算出するものである、ことを特徴とする請求項3記載の表裏判別装置。
【請求項5】
上記表裏判別マークエッジ点抽出手段は、上記外周円算出手段で検出された外周円の周方向に沿う所定のピッチ角ごとに、当該外周円の中心座標から半径方向に沿って放射状に延長された検出ライン上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を求め、その微分値から濃度値が暗から明または明から暗へと変化するエッジ点を、しきい値を段階的に一定値ずつ下げながら抽出し、こうして全周にわたって抽出された上記部品の表裏それぞれのエッジ点の総数の大小を比較して上記部品の表裏を決定するものである、ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の表裏判別装置。
【請求項1】
円板状の部品の表裏を判別する装置であって、上記部品と同心状に配置されたリング状の照明手段と、上記部品を表裏反転させる表裏反転手段と、上記部品の表裏の画像を軸方向の判別位置から撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像して得られた上記部品の表裏2枚の画像データから表裏を判定する表裏判定手段と、を備えることを特徴とする表裏判別装置。
【請求項2】
上記部品の表裏判別時は当該部品の周側面を垂直方向から照明するように上記照明手段を移動し、上記表裏反転手段によって上記部品の表裏反転を行うときは上記照明手段を上記部品の周側面との対面位置から離間させる照明移動手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の表裏判別装置。
【請求項3】
上記部品の表裏のいずれかの片面には表裏判別マークが当該部品と同心円状に形成される一方、上記表裏判定手段は、上記撮像手段が撮像した画像データに基づいて上記部品の外周縁を検出し、この外周縁の位置からこの外周縁をなぞる外周円の中心座標および半径を算出する外周円算出手段と、この外周円算出手段で算出された外周円の中心座標を基準として上記表裏判別マークの窪み部分のエッジ点を全周にわたって順次抽出する表裏判別マークエッジ点抽出手段と、この表裏判別マークエッジ点抽出手段で抽出された上記部品の表裏それぞれのエッジ点の総数の大小を比較して上記部品の表裏を決定する表裏決定手段と、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の表裏判別装置。
【請求項4】
上記外周円算出手段は、上記撮像手段で撮像して得られた画像に基づいて、この画像の中心位置から周方向に沿う所定のピッチ角ごとに、画像の中心位置から半径方向に沿って放射状に延長された検出ライン上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を求め、その微分値から濃度値が暗から明または明から暗へと変化するエッジ点を、しきい値を段階的に一定値ずつ下げながら検出し、こうして検出された周方向に沿う所定のピッチ角ごとのエッジ点の位置座標に基づいて上記部品の外周縁をなぞる外周円の中心座標および半径を算出するものである、ことを特徴とする請求項3記載の表裏判別装置。
【請求項5】
上記表裏判別マークエッジ点抽出手段は、上記外周円算出手段で検出された外周円の周方向に沿う所定のピッチ角ごとに、当該外周円の中心座標から半径方向に沿って放射状に延長された検出ライン上で一次元微分フィルタを用いて一次微分値を求め、その微分値から濃度値が暗から明または明から暗へと変化するエッジ点を、しきい値を段階的に一定値ずつ下げながら抽出し、こうして全周にわたって抽出された上記部品の表裏それぞれのエッジ点の総数の大小を比較して上記部品の表裏を決定するものである、ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の表裏判別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−276679(P2008−276679A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122330(P2007−122330)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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