説明

表面あらさを有するセラミック本体を用意するための方法

【課題】表面あらさを有するセラミック本体を用意するための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、表面あらさを有するセラミック本体を用意するための方法に関する。この方法は、セラミック基本本体の表面上にセラミック材料の粒子を配置するステップを有する。この方法は、少なくとも2つの粒子と、該粒子を結合する結合材とを含む別個の塊を前記セラミック基本本体に向けて射出することによって、セラミック基本本体の表面に前記塊が配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の記載に従う、表面あらさを有するセラミック本体を用意するための方法に関し、また、請求項15の記載に従う、この方法によって取得可能なセラミック本体に関し、さらに、請求項16の記載に従う、インプラント、特に、歯科用インプラントとしてのセラミック本体を用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用インプラント等のインプラントは、当業者には良く知られている。これらは、一般的に、生体適合性を有し、さらに、低弾性率で高強度を有する材料からなる。
【0003】
その生体適合性及び機械的特性から離れて、インプラントの骨統合特性は、通常、特に重要である。「骨統合(osteointegration)」という言葉は、生きている骨と耐荷重性のあるインプラントの表面との間の直接の構造的かつ機能的な連結を表す。良好な骨統合は、インプラントを骨の中にねじ込むことによって初期の安定性に到達した後、インプラントが、短い治療時間内に安全に骨化し、その結果、インプラントと骨との間に永久的な結合が得られることを意味する。
【0004】
現在使用中の歯科用インプラントは、生体適合性及びこれらの材料の好ましい機械的特性により、一般的に金属、例えば、チタンまたはセラミック、あるいは、セラミックベースのジルコニアから作られる。
【0005】
チタン製インプラントは、暗い色で、それゆえ、自然の歯の色とはミスマッチであるが、これに対比して、セラミック材料は、それらの色が、自然の歯の色に適合できる利点を有する。こうして、歯科用インプラントを提供するために、多くの努力がなされてきたが、少なくとも、挿入後に見えるインプラントの部品は、セラミックで作られている。
【0006】
色に関してこれらの好ましい特定にも係わらず、多くの場合、歯科用インプラントに対するセラミック材料の使用は、その疲労安定性が一般的に低いために、制限されている。
【0007】
高い機械的強度を有するセラミック材料は、特許文献1に開示されており、ここでは、焼結された半完成部品を製造するために、ほとんどが正方形状のイットリウムで安定化された酸化ジルコニウムに関連している。
【0008】
十分な機械的安定性を達成するために、上記特許文献1に開示されたジルコニア製セラミックは、高密度でなければならない。このような高密度のジルコニア製セラミックの表面は、きれいに切断され、特に硬くかつ本質的に多孔性を有していない。このようなジルコニア製セラミックで作られた歯科用インプラントは、生体不活性であり、かつ、唯一弱い生体適合特性を有している。
【0009】
生体適合性のあるセラミック表面を与えるために、多くの異なる技術が提案されてきた。
【0010】
特許文献2は、歯科用の取り付けを用意するための方法に関係し、ここでは、第1の多孔性を有する基板上に分散が加えられ、この分散は、第2の多孔性を有するセラミック層を焼結する際に形成される。
【0011】
特許文献3は、ジルコニア等の高強度材料のコアを有する歯科用保持力要素に関し、このコアは、化学的および/または機械的に処理されるセラミック材料が被膜されている。
【0012】
特許文献2及び特許文献3に開示された複合構造体は、セラミック被膜が容易に剥離するという欠点を有する。
【0013】
代わりに、セラミック製のインプラント表面に生体適合特性を与えるための研磨ブラスト及び酸化エッチングを含む処理が、特許文献4,5によって提示されている。
【0014】
特許文献4は、ジルコニア製セラミックから作られた歯科用インプラントに関しており、このセラミックは、研磨ブラスト後に、リン酸、硫酸、塩酸、又はそれらの混合物を用いる処理にさらされる。
【0015】
特許文献5は、フッ化水素酸を含むエッチング溶液を用いてインプラントのエッチングを行う前に、サンドブラスト法、ミーリング、及び射出成形技術によって、歯科用インプラントの表面に所定の表面あらさが設けられる処理に関する。
【0016】
この特許文献5に開示された処理は、優れた骨統合特性を有するインプラントを導くが、これらの技術は、いくつかの欠点を有するエッチングの前に行われる。
【0017】
例えば、サンドブラストは、浸食技術であるという事実によって材料の損失を同時に伴う。特に、セラミック製インプラントに関して、表面の比較的荒い処理が、欠点を形成する結果となり、また、単斜晶系のジルコニア相に対して正方晶の相変換を生じ、その結果、インプラントの機械的安定性に悪い影響を与える。
【0018】
特許文献5には、サンドブラストの代わりとして、比較的複雑で、それゆえ高価となるミーリング加工又は射出成形の技術により、一つの構造体を提供することが示されている。特に、射出成形技術では、例えば、金型から取り出すことに関して高度なアプローチが必要となる。
【0019】
セラミック製インプラントの表面構造を与える更なる代替技術が、特許文献6に記載されており、これは、焼結の前に、いわゆるグリーン本体および/またはブラウン本体の表面に対して尖った粒子を加えることにより、表面あらさを荒くさせる方法に関係する。
それゆえ、好ましくは、グリーン本体および/またはブラウン本体に粒子を固着させるために結合材を被膜する。特許文献6に記載された技術の別の実施形態によれば、これらの粒子は、結合材とともに混合され、グリーン本体および/またはブラウン本体上に付加される。
【0020】
特許文献6は、インプラント本体の表面上に付加される単一の粒子群を提示しており、この複数の粒子の形状に突起を与える。上述したように、特許文献6によれば、これらの粒子は、尖った形状を有することが重要である。
【0021】
インプラントに損傷を与えないために、特許文献6は、圧力を加える(「drucklos」)ことなく、グリーン本体および/またはブラウン本体上に複数の粒子が滴り落ちることを提示している。特許文献6に図示されているように、その結果、基本本体と付加される粒子との間に境界面を備える本体が得られる。
【0022】
しかしながら、特許文献6に従うプロセスは、実行することが比較的難しい。特に、複数の粒子に関して、圧力を加えることなく滴下されると、粒子が付加された表面から離れ落ちる傾向にある。また、滴下された粒子が、地形学的に頂部よりも表面の谷部に蓄積するという事実により、粒子の均等な分散を得るのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6165925号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/027771号公報
【特許文献3】欧州特許公開第0870478号公報
【特許文献4】欧州特許第1450722号明細書
【特許文献5】欧州特許公開第1982670号公報
【特許文献6】ドイツ特許公開第102006062712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、均質な表面あらさを有するセラミック本体を用意するための方法を提供することであり、この方法は、向上した骨統合特性を有する表面を実行しかつ導くことを容易にしている。
【0025】
本発明の目的は、請求項1に従う方法によって達成される。好ましい実施形態は、従属する請求項で与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
請求項1によれば、本発明の方法は、セラミック本体の表面上にセラミック材料の粒子を堆積するステップを含んでいる。それゆえ、少なくとも2つの粒子と、これらの粒子を結合する結合材とを含んでいる別個の塊が、セラミック本体に向けて射出されることによって、セラミック本体の表面に堆積される。特許文献6の記載内容と対比すると、本発明は、表面上に単一の粒子群を堆積させることではなく、尖った突起を有する複数の粒子の塊を達成することが重要である。
【0027】
これらの塊は、セラミック本体の表面に向かって射出されるという事実により、特許文献6に従うものとは完全に異なる構造となる。これらの構造は、例えば、以下に示すように、壁に向かって射出される、スノーボールという類比によって説明することができる。
【0028】
本発明に従う塊は、一般的に、本体に衝突したときスノーボールのように変形し、塊と本体との間の接触面積が増加する。この結果、堆積した材料が良好に固着する。堆積した塊は、比較的大きなベース領域と先細った丸い頂部を有する粗い高台形状を有する。
【0029】
さらに、特許文献6に記載されたものと対比すると、本発明は、インプラントの表面近くに、表面の方向に向かって密度を次第に減少させる領域が得られることを可能にする。この結果、特許文献6のように、分離した粒子が付加される個別の境界面がない。従って、本発明は、この境界面から粒子が離れ落ちる問題を回避することができる。
【0030】
個々の粒子の代わりに複数の粒子の塊を用いることにより、本発明は、非常に単純な方法で、均質な表面あらさを得ることができる。上述したように、これは、特許文献6に従う方法の場合ではない。上述したスノーボールの類比を適用して、特許文献6によって教示された個別の粒子を滴下することは、雪片を散り落とすことに相当し、また、地形的に頂部よりも谷部に多く蓄積する傾向を有するので、均質に分散させることができない。
【0031】
本発明に従って得られる表面あらさは、優れた骨統合特性を有することが見いだされた。
特別の望ましい骨統合特性に基づいて、表面あらさは、さらに、次に続くエッチング、特にエッチング溶液が、特許文献5に記載された方法に従うフッ化水素酸を含むエッチングに適用することができる。特許文献5の開示内容は、参考としてここに包含される。
【0032】
圧力を加えることなく粒子を滴下する特許文献6の開示内容と対比して、本発明に従う塊は、好ましくは、キャリアガスの流れによって本体に向けて射出される。
一般に、キャリアガスは、塊に対して、かつ、好ましくは、空気に対して、不活性である。キャリアガスの流れを使用することによって、固体粒子の塊は、本体に衝突したとき、その塊の変形が成し遂げられ、上述した高台を導くように、前記塊を加速させることができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、射出されるべき塊の破壊荷重(または破壊力)は、1〜7mN、好ましくは、2〜6mN、さらに好ましくは、3〜5mNの範囲である。これに関してさらに、射出されるべき塊の特別な破壊強度の平均値は、0.4〜1.5MPa、好ましくは、0.5〜1.4MPa、さらに好ましくは、0.6〜1.3MPa、最良では、0.8〜1.2MPaの範囲である。
【0034】
実際に、破壊荷重値は、シリンダラムの変位の関数としてのラムによって、単一の塊に付加される力を絶えず測定することによって決定される。測定された破壊荷重Fb(即ち、所定変位に対して付加された力が減少する力/変位曲線における点)と、塊の直径とに基づいて、特定の破壊強度σが、以下の式に従って決定することができる。
【0035】
σ=4・F/(n(pi)・d2
上記に与えられた好ましい破壊荷重及び平均特定破壊強度値は、約80μmの直径を有する塊に特に適用する。
【0036】
上記記載の破壊荷重及び特定の破壊強度値を有する塊を用いることによって、一方で、比較的高い流速を有するキャリアガスの流れを用いるときでさえ、基本本体の表面は損傷しない。また他方で、衝突する塊の粒子の広がりは、好ましい表面形状に最終的に導かれるセラミック本体の表面上に上記記載の高台が形成されるようになる。
【0037】
さらに好ましい実施形態によれば、塊は、特に高い骨統合特性を有する表面を導くように、20μm〜100μm、好ましくは、50μm〜70μmの範囲の平均直径を有する。
【0038】
例えば、ジルコニア粉末のグレードTZ-3YSB-E(トーソー(tosoh) コーポレーション)を用いるとき、セラミック粒子の粒度は、一般的に、約30nm〜70nm、例えば、360Å(36nm)であり、塊によって構成される粒子の数は、一般的に、数100万または10億個の範囲である。
【0039】
別の好ましい実施形態によれば、粒子のセラミック材料は、セラミック基本本体のセラミック材料と同一であり、その結果、十分に均質なセラミック本体を導く。代わりに、基本本体の材料と互換性のある他のいかなるセラミック材料も堆積され得る。
【0040】
結合材は、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)とすることができる。代わりに本発明の目的に適している他の結合材も使用することができる。
【0041】
好ましい上述した破壊荷重及び特定の破壊強度値は、ポリエチレン グリコール(PEG)をさらに含む塊によって、及び、PEGに対するPVAの割合を適当に設定することによって、達成できることが見出された。
特に、PVAの量は、約0.1〜3.6重量パーセントの範囲であり、及びPEGの量は、約0.5〜4.0重量パーセントの範囲とすることができる。PEGに対するPVAの重量比は、一般的に、約7:1〜約1:40の範囲となり、好ましくは、PEGに対するPVAの重量比は、約1:1.4〜1:5の範囲となる。
【0042】
セラミック基本本体の材料は、一般的に、加圧薬剤を含むので、塊は、十分に均質なセラミック本体に達するために加圧薬剤を含むことが望ましい。
【0043】
本発明に従って、単一の粒子群の代わりに塊が、基本本体に向かって射出される事実を考えると、サンドブラスト装置が用いられる。サンドブラスト装置による射出は、それぞれの必要に適合して、堆積される材料の量、ブラスト圧力、ブラスト距離、及びブラスト持続時間等のパラメータが可能になるので、特に好ましい。
特に、これらのパラメータは、塊の運動量が基本本体の表面上の塊の良好な固着を大いに高めるように選択でき、かつ表面上の損傷を十分低く抑えることができる。
【0044】
与えられる表面形状の構造は、特に、ブラスト距離及びブラストコーンに適合することによって制御される。
【0045】
必要ならば、サンドブラスト装置は、さらに、ブラストノズルでの塊の有機成分が溶けるのを防止するための冷却手段を含むことができる。
【0046】
一般的に、セラミック本体は、焼結処理によって用意される。それぞれの焼結処理は、当業者に良く知られ、例えば、国際出願WO2005/115268に記載されており、この開示内容は、参考としてここに包含される。
【0047】
焼結に関して、本発明の方法では、好ましくは、さらに以下のステップを有する。
(a)セラミック材料と結合材の複数の粒子を含むグリーン基本本体を形成し、前記セラミック材料と結合材は、塊のセラミック材料と結合材に対して、それぞれ互いに独立して異なりまたは同一となっており、
(b) ブラウン基本本体を前記グリーン基本本体から結合材を取り除くことによって形成し、
(c)前記ブラウン基本本体を焼結することによって、セラミック本体を形成する。
【0048】
その結果、塊は、グリーン基本本体の表面上に堆積されることが好ましい。これは、グリーン本体が、ブラウン基本本体よりも良い塊の運動量に一般的に耐える結合材を含むという事実による。また、この実施形態に従う基本本体とこれに堆積した塊は、同一のステップで焼結されるので、焼結中、材料の収縮により生じるクラックは形成されない。
【0049】
好ましくは、塊の組成は、グリーン基本本体の組成と同一である。一般的に、グリーン基本本体は、本発明に従う塊に相当する粒状の材料をプレスすることによって形成される。
【0050】
セラミック基本本体および/または塊が、イットリア安定化ジルコニアの粒子を含んでいるとき、特に好ましい機械的特性を有するセラミック本体が得られる。一般的に、ISO13356に従うイットリア安定化ジルコニアが用いられる。好ましいイットリア安定化ジルコニアの例は、トーソーのグレードTZ-3YSB-Eのジルコニア粉末(トーソー コーポレーション)であり、この成分は、4.95〜5.35重量%のY23、0.15〜0.35重量%のAl23、せいぜい0.02重量%のSiO2、せいぜい0.01重量%のFe23、せいぜい0.04 重量%のNa2Oを含み、さらに、2.7〜3.9重量%のIg損失に相当する量の結合材を含んでおり、このパーセントは、ジルコニア粉末の全重量に基づいている。
【0051】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、さらに、以下のステップを含む。
(d)熱後処理、特に、セラミック本体の熱間静水圧プレス(HIP)、一般的に、熱間静水圧プレスは、不活性加圧ガス内でセラミック本体の処理後、空気中で該本体を処理することを含んでいる。
【0052】
更なる構成によれば、本発明は、上述した処理によって得られるセラミック本体に関係する。
【0053】
高い骨統合特性により、上記処理によって得られるセラミック本体は、好ましくは、インプラントとして用いられ、さらに好ましくは、歯科用インプラントとして用いられる。
【0054】
本発明は、さらに、添付の図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】歯科用インプラントの形で、本発明に従うセラミック本体の斜視図である。
【図2】図1のX部分の概略断面図である。
【図3】実例1に従って得られるセラミック本体の表面部分の走査電子顕微鏡写真を示し、この写真に示されたスケール倍率は、200μmに相当する。
【図4】実例1で与えられた走査電子顕微鏡写真の拡大図を示し、この写真のスケール倍率は、2μmに相当する。
【図5】実例2に従って得られるセラミック本体の表面部分の走査電子顕微鏡写真を示し、この写真に示されたスケール倍率は、200μmに相当する。
【図6】実例2で与えられた走査電子顕微鏡写真の拡大図を示し、この写真のスケール倍率は、2μmに相当する。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1に見られるように、歯科用インプラントは、骨に埋設されることを意図する骨接触表面4を含み、そして、ネジ部6を含んでいる。
【0057】
移植後歯科用インプラントの初期安定性を良好にするために、少なくとも骨接触表面4は、本発明に従う表面あらさを備えている。
【0058】
図2に示すように、この表面あらさは、複数の粒子10を含む塊8によって形成される。この塊8は、基本本体12に向けて射出される。塊8は、基本本体12上に衝突するとき、変形され、その結果、上述したスノーボールの類比によって記述される「マクロ的あらさ」を生じる。本発明の特定の方法によると、基本本体12と付加される粒子10との間に個別の境界面はないが、表面14の方向に次第に密度が減少する密度勾配がある。これは、多孔の増加とともに密度が連続して減少し、「ミクロ的あらさ」を形成する表面14に空洞16を導く。
【0059】
本発明は、以下の実例によって、より具体的に記載される。
(実施例)
【0060】
実例1
上記したグレードTZ-3YSB-E(トーソー コーポレーション)のジルコニア粉末の約5gが、約110MPa(約34.5kN)のプレス力のプレス(ツビック ユニバーサルプリュフマシーネ)を用いて、複動式の粉末圧縮ツール(ポール オットー ウェーバー マシーネン ウント アパラテバウ ゲーエムベーハー;モデル20;サイズII、直径20mm)によって、約360Åの粒度サイズを有する結晶をプレスした。
【0061】
これにより、約2.8g/cm3の密度を有するグリーン基本本体が得られる。
結晶の粒度サイズに関して、約700Å(70nm)までより高い値を考えることができる。
【0062】
本発明の塊に相当するジルコニア粉末は、サンドブラスト装置(レンフェルト ベーシック クアトロ)にロードされ、そして、約5.5バールのブラスト圧力で、約14cmのブラスト距離の下で約2秒〜3秒間、グリーン本体に向かって射出された。
【0063】
グリーン本体は、付加された塊を含み、以下のプログラムに従って、高温度の窯(ミーム ホグト ホッホテンパーラトゥロッフェン HT)で処理された。
(a) 1℃/min〜600℃の加熱速度で加熱し、そして、2時間600℃の温度を維持して、ブラウン本体を得る。
(b) 5℃/min〜1450℃の加熱速度で加熱し、そして、2時間1450℃の温度を維持して、十分焼結した(ホワイト)本体を得る。
(c) 1000℃まで10℃/minの冷却速度で冷却し、そして、1000℃から室温まで自然冷却する。
焼結後、サンプルは、約6.07g/cm3の密度を有する。
【0064】
実例2
上述の実例に類比して、本発明の方法は、グリーン基本本体の代わりに、焼結した基本本体に向けて塊を射出することによって実行された。
【0065】
実例1,2の結果は、図3〜図4及び図5〜図6にそれぞれ示されている。
これらの図面から明らかなように、本発明によれば、それぞれ滑らかな頂部と谷部を有する表面あらさが得られる。本発明は、参考文献6による尖ったエッジ構造と対照的である。
説明的に、この表面形状は、壁に向けて射出されるスノーボールの類推によって記載されている。
【0066】
図5に示すように、実例2に従って得られる表面は、即ち、既に焼結した基本本体に向けて複数の塊を射出することにより、クラックを含むことができる。理論によって拘束されるいかなる意図もなしに、実例2において、基本本体の収縮によって補償されないこれらのクラックは、焼結中の堆積した材料の収縮によって形成されると思われる。
【0067】
選択された表面面積0739×0736mm2に対して、平均あらさSaと、谷部と頂部との高さStは、いくつかの他のあらさのパラメータの間で決定された。この目的のために、表面の写真は、共焦点白色光の顕微鏡(ナノサーフ アーゲー スイス国)を用いて撮られた。あらさパラメータを計算するために、30μmのカットオフ周波数(X=31μm、y=30μm;20×19ピクセル)を有する「移動平均」ガウスフィルターが、加えられた。あらさパラメータの決定は、KFL分析(ソフトウエア WinSAM;エルランゲン大学)によって実行された。
【0068】
選択された領域に対して、決定された平均あらさSaは、約0.6μm〜約0.85μmの範囲にあり、谷部から頂部までの高さStは、約3.5μmm〜約6.0μmであった。しかし、これらの値は、本発明に従って得られた表面に対して完全に異なる値が考えられるので、制限的な意味で理解されることは少しもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面あらさを有するセラミック本体を用意するための方法であって、該方法は、
セラミック基本本体の表面上にセラミック材料の複数の粒子を堆積するステップを含み、
別個の塊が、少なくとも2つの粒子と、該粒子と一緒に結合する結合材とを含んでおり、前記セラミック基本本体に向けて前記塊を射出することによって、前記塊が前記セラミック基本本体の表面上に堆積されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記塊は、キャリアガスの流れによって前記セラミック基本本体に向けて射出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塊は、前記セラミック基本本体に衝突するとき、変形し、その結果、前記塊と前記セラミック基本本体との接触面積が、衝突の間に増加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
射出される前記塊の破壊荷重は、1〜7mNの範囲であり、好ましくは、2〜6mNの範囲であり、より好ましくは、3〜5mNの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
射出される塊の平均特定破壊強度は、0.4〜1.5MPaの範囲であり、好ましくは、0.5〜1.4MPaの範囲であり、より好ましくは、0.6〜1.3MPaの範囲であり、最良には、0.8〜1.2MPaの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記塊は、20μm〜100μm、好ましくは、50μm〜70μmの範囲の平均直径を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記粒子の前記セラミック材料は、前記セラミック基本本体のセラミック材料と同一であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記塊は、サンドブラスト装置によって前記基本本体に向けて射出されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記塊は、さらに加圧用薬剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
a. セラミック材料の複数の粒子と結合材を含むグリーン基本本体を形成し、前記セラミック材料と前記結合材は、それぞれの塊のセラミック材料と結合材に、互いに独立して異なるかまたは同一であり、
b. 前記クリーン基本本体から前記結合材を取り除くことにより、ブラウン基本本体を形成し、
c. 前記セラミック本体を、前記ブラウン基本本体を焼結することによって形成する、各工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記塊は、グリーン基本本体の表面上に堆積していることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記塊は、酸化イットリウム−安定化ジルコニアの粒子を含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記塊の組成は、前記グリーン基本本体の組成と同一であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
さらに続いて、
(d)セラミック本体の熱的後処理の工程をさらに含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の方法によって得られるセラミック本体。
【請求項16】
インプラントとして請求項15に記載のセラミック本体の使用。
【請求項17】
インプラントが歯科用インプラントである請求項16に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−509346(P2013−509346A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535681(P2012−535681)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006615
【国際公開番号】WO2011/050970
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(506415207)ストラウマン ホールディング アーゲー (25)
【Fターム(参考)】