説明

表面処理した粉炭

【課題】粉炭は汚れる性質であり、特にセメントに混合すると水和反応が阻害されて固化はするが強度が生じない特性がある。
【解決手段】ビニル系樹脂やデンプン糊を粉炭表面に接着させて、粉炭表面を樹脂やデンプンの性質に変化させ、強度を有し汚れにくい表面処理粉炭を得た。
特にビニル系樹脂をコーティングしたものはセメントとの親和性があり、セメントに混合しても水和反応を阻害せず強度が低下しないので、粉炭含有率の高いセメント成形物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
汚れない粉炭の製造方法及びセメント成形物における粉炭含有比率の増大が可能な表面処理粉炭
【背景技術】
【0002】
特願2000−070612のごとくにセメントに粉炭を混合する技術はあるが、粉炭量を多くすると正常な水和反応が起こらず強度が低下する。
このため、粉炭を使用する場合には、配合比は3パーセントが限度で望ましくは1パーセントまでである。
【参考文献】
【0003】
特願2000−070612
【解決しようとする課題】
【0004】
炭を身体に近接させると、赤血球がサラサラな状態に変化して血流が良くなることや、細胞が活性化して体表温度が上昇することは既に発明者が試験によって確認している。
【0005】
また、果実に近接させるとトマトやキウイフルーツなどには効果が及ばないが、桃、枇杷、メロン他多くの果実の鮮度保持、糖度向上が可能であることは発明者が試験によって確認している。
【0006】
しかし、身体や食品に炭を使用するためには汚れない炭を得ることが必要になる。特に粉炭は汚れるために使い勝手が悪く、身の回りに容易に使用できなかった。
【0007】
しかし、ペレット状などより粉体状の炭が肌への違和感がないので、粉炭を不織布に封入してシーツなどに使用すれば心地の好い寝具になり、コストも安い。
また、不織布に封入すると自在に曲げることができるため、食品の鮮度保持や果実の糖度向上用の低コスト資材としても容易に使用できる。
【0008】
一定量以上の粉炭を含有したセメント成型物ができれば、鮮度保持、糖度向上、健康保持用途のほかに、低コストで水路や壁が容易にできて水の浄化や室内空間の改善ができる。
【0009】
しかし、粉炭をセメントに混入すると水和反応が阻害されるためコンクリートの強度が低下する。このため粉炭の混入比率は1〜3パーセント重量程度が限界であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1では、粉炭表面に満遍なく接着剤が付着するように粉炭と接着剤と水を混合混練した後乾燥して、粉炭表面に樹脂を接着させることによって、表面の性質を炭からビニル系樹脂に変えて、汚れにくく破砕しにくいビニル系樹脂コーティング粉炭にしたことが特徴である。
【0011】
使用する接着剤は安価なものが望ましくエマルジョン系酢酸ビニル樹脂接着剤、エマルジョン系ビニルウレタン樹脂接着剤、ポリビニルアルコール水溶性接着剤からなる群より選ばれる単一または複数の接着剤である。
【0012】
エマルジョン系酢酸ビニル樹脂接着剤、エマルジョン系ビニルウレタン樹脂接着剤使用時には併せて架橋剤イソシアネートを接着剤中に混合して使用してもよい。
【0013】
請求項2では小麦粉、コーンスターチ、タピオカ、片栗粉、米粉等のデンプン系接着剤からなる群より選ばれる単一または複数のデンプン系接着剤を粉炭表面に満遍なく付着するように粉炭とデンプン系接着剤と水を混合混練した後乾燥して、粉炭表面にデンプンを接着させることによって、表面の性質をデンプンに変えて、汚れにくく破砕しにくいデンプンコーティング粉炭にしたことが特徴である。
【0014】
ビニル系樹脂コーティング粉炭やデンプンコーティング粉炭を表面処理粉炭と呼ぶ。
【0015】
請求項3では請求項1によって得た、表面がセメントと親和性あるビニル系樹脂の性質を有するビニル系樹脂コーティング粉炭とセメントを混合して成形物にした。
【0016】
粉炭はセメントの水和反応を阻害するが、ビニル系樹脂コーティング粉炭は表面がビニル系樹脂の性質であり、混入量を多くしてもセメントの水和反応は正常に行われセメント成形物強度は低下しないため、用途に応じてビニル系樹脂コーティング粉炭含有量を調製することができる。
【0017】
更に、粗骨材、細骨材を加えて炭含有コンクリートにすれば、河川や建築に容易に用いることができ、遠赤外線放出機能、吸着機能による水の浄化効果、快適空間創出、健康効果を得ることが可能である。
【0018】
請求項4では、請求項1または請求項2のビニル樹脂コーティング粉炭またはデンプンコーティング粉炭を均一な厚みの層にするために、図4のように不織布シート上に均一に配置した後、不織布を被せて熱シールによって仕切って封入する。
【0019】
コーティング粉炭入り不織布シートはシーツや枕などの寝具や衣服、温熱パッドに使用する。
【0020】
また、食品や花卉の梱包材や、食品や花卉を直接包む包装材に使用するが、食品や花卉保管庫内部の壁面に貼って使用することもできる。
【0021】
コーティング粉炭入り不織布シートを近接すると鮮度保持効果の他に枇杷や桃、メロンなど多くの果実の糖度が増加する。
【0022】
一部の果実は摘果後9日間以下の期間粉炭入り不織布シートに近接させておくと鮮度保持に並行して糖度が3以上向上することを発明者は発見した。
【0023】
このような高級果実は糖度の向上によって価値が上がるため、コーティング粉炭入り不織布シートを使用することで大きな経済効果を生む。
【0024】
コーティング粉炭入り不織布シートを身体に近接すると、赤血球の粘度が低下して血液の流れがよくなる。
【0025】
さらに、炭入り不織布シートを身体の一部に近接すると、全身の細胞活動が活性化されて炭入り不織布シートを外した後も1時間以上に渡って体表温度が高い。これは細胞が活性化されていることであり健康保持に役立つ。
【0026】
従来の炭は目の細かい不織布に封入しても粉が表面に出てホコって汚れていたが、表面をデンプンやビニル系樹脂でコーティングした表面処理粉炭は、手や紙や布に付着しにくく破砕しにくいため不織布に直接封入するだけで汚れない。
【0027】
ビニル系樹脂コーティング粉炭を混入した炭含有セメント成形物や炭含有コンクリートも遠赤外線を放出し動物の細胞を活性化する健康空間を創造する。また、吸着作用や遠赤外線作用で水を活性化して、綺麗な水に変える作用があるため水路に適切な材料になる。
【0028】
本発明で使用する粉炭は備長炭や活性炭のような硬いものが破砕しにくいため最も望ましく、竹炭や広葉樹炭が望ましいが、有機物を炭化したものや石炭でも使用できる。
粉炭の大きさは0.1mm〜2mmで望ましくは0.5mm〜1.0mmである。
【実施例1】
【0029】
図1のようにエマルジョン系酢酸ビニル樹脂接着剤または水で1.2〜2.0重量に希釈したエマルジョン系酢酸ビニル樹脂接着剤1重量と粉炭3〜10重量を素早く混合撹拌して、粉炭表面に均等にビニル系樹脂を接着させた後乾燥して得るビニル系樹脂コーティング粉炭。このときイソシアネート0.1重量を加えると、耐水性や接着強度が更に向上する。
【0030】
エマルジョン系酢酸ビニル樹脂接着剤の配合比率が多いと埃が生じにくいが吸着性能が低下するため、用途に応じて配合比率を適正にする。
【実施例2】
【0031】
図2のように例えばデンプン系小麦粉糊と粉炭を、リボン混合機やコンクリートミキサーのような混合機で素早く混合撹拌して粉炭表面をデンプン糊で覆った後乾燥して得る、表面にデンプンが接着したデンプンコーティング粉炭。
【0032】
デンプン小麦粉糊は例えば小麦粉1重量に対して水5〜12重量の比率で溶解した後、水酸化ナトリュウム20パーセント溶液を1〜2重量加えて糊化したものか、80度に加熱して糊化したものである。
【0033】
混合比はデンプン小麦粉糊1重量に対して粉炭3〜10重量であり、4〜6重量が好ましい。デンプン糊原料は小麦粉、コーンスターチ、米粉、片栗粉、タピオカなどであり、糊化するデンプンであれば原料はどのようなものでも良い。
【実施例3】
【0034】
表面処理粉炭は埃が発生しないため粉炭のように汚れないので、不織布に封入して広い用途に使用ができる。ビニル系樹脂コーティング粉炭またはデンプンコーティング粉炭を図4のように不織布シートに仕切りを入れて分割封入して圧着加工した粉炭入り不織布シートにした。分割封入することで、表面処理粉炭の移動が仕切り内に限定され一定の厚さに保たれる。
【0035】
不織布はヒートシール性を有し、メッシュは1ミクロン程度以下が好ましい。
【発明の効果】
【0036】
炭は優れた機能を有するが、汚れるために使用用途は少なかった。特に粉炭はホコって汚れるために使用用途は限られていた。
【0037】
本発明の表面に樹脂やデンプンを接着させた表面処理粉炭は、表面が接着した材質の性質になり、汚れにくく強度が増して安価であるため、多くの産業分野での使用用途の開発が可能である。
【0038】
更に従来は粉炭を3%重量以上混入したコンクリートの製造は困難であったが、ビニル系樹脂コーティング粉炭は表面の性質がビニル系樹脂に変化するため水和反応を阻害せず、70%重量以上の混入が可能であり、様々な場所に炭の機能を有するコンクリートを施工することができる。
【産業上の利用分野】
【0039】
消臭、健康、鮮度保持、糖度向上、空気浄化、水質浄化作用を有するコンクリートを含む炭成形物及びそれらの材料。
【0040】
粉炭入り不織布シートを使用した健康を維持するための寝具や身の回り品、容器内部に粉炭入り不織布シートを貼った鮮度保持と糖度向上容器、粉炭入り不織布シートを使用した消臭関連商品、粉炭入り不織布シートを使用した調湿商品などに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】 ビニル系樹脂コーティング粉炭の製造工程図
【図2】 デンプン糊コーティング粉炭の製造工程図
【図3】 ビニル系樹脂コーティング粉炭を混入したセメント成形物の製造工程図
【図4】 粉炭を分割して封入した不織布シートの平面図と断面図
【符号の説明】
【0042】
1 表面処理粉炭
2 不織布
3 シール部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョン系酢酸ビニル樹脂接着剤、エマルジョン系ビニルウレタン樹脂接着剤、ポリビニルアルコール水溶性接着剤からなる群より選ばれる単一または複数の接着剤と水を加えたものを、粉炭と混合混練した後、未固結で乾燥させて得た、表面がビニル系樹脂の性質を有するビニル系樹脂コーティング粉炭。
【請求項2】
小麦粉、コーンスターチ、タピオカ、片栗粉、米粉等のデンプン系接着剤からなる群より選ばれる単一または複数の接着剤と水を加えたものを、粉炭と混練した後、未固結で乾燥させて得た、表面がデンプンの性質を有するデンプンコーティング粉炭。
【請求項3】
請求項1のビニル系樹脂コーティング粉炭にセメントを混合して得た粉炭含有セメント成形物
【請求項4】
小部屋に仕切った不織布中に請求項1のビニル系樹脂コーティング粉炭または請求項2のデンプンコーティング粉炭を封入した不織布シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−46375(P2009−46375A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238512(P2007−238512)
【出願日】平成19年8月18日(2007.8.18)
【出願人】(598095042)株式会社森林研究所 (24)
【Fターム(参考)】