説明

表面処理に使用される、側鎖シリル基を有するフルオロケミカルウレタン化合物

フルオロケミカルウレタン化合物及びこれから得られるコーティング組成物が記載される。本化合物及び組成物は、基材、特にセラミックス又はガラスなどの硬質表面を有する基材に、撥水性、撥油性、防汚性及び/又は防塵性を付与するために処理するのに使用してもよい。本化合物は、式(R−R(Rを有し、式中、Rはフッ素含有基であり、Rはポリイソシアネートの残基である。Rは式−NH−CO−X−R(CHCH−S−R−Si(Y)(R3pを有し、式中、Xは−O−又は−NR−であり、式中、RはH又はC〜Cアルキルであり、Rは多価のアルキレン基若しくはアリーレン基又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有し、Rは二価のアルキレン基であり、このアルキレン(alkyiene)基は所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有し、Yは加水分解性基であり、Rは一価のアルキル基又はアリール基であり、pは1、2、又は3であり、qは1〜5であり、x及びyはそれぞれ独立して少なくとも1であり、zは1又は2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロケミカルウレタン化合物及びこれから誘導されるコーティング組成物に関し、これらは基材、特にセラミックス又はガラスなどの硬質表面を有する基材の処理に使用され、撥水性、撥油性、防汚性及び防塵性を付与する。
【背景技術】
【0002】
撥油性及び撥水性を与える基材処理のための多数のフッ素化組成物が当技術分野において既知であるが、基材処理、特に、セラミックス、ガラス及び石などの硬質表面を有する基材に撥水性及び撥油性を付与し、容易に洗浄できるようにするために、更に改善された組成物を提供するという要望が引き続き存在している。特に光学分野において、汚れ、塵及び埃への耐性を付与するために、硬質表面としてガラス及びプラスチックを処理する必要性がある。望ましくは、このような組成物及びそれらを用いる方法は、改善された性質を有するコーティングを生み出すことができる。特に、コーティングの改善された磨耗耐性を含む、コーティングの耐久性を改善することが好ましい。更に、より少量の洗剤、水、又はより少ない手作業でありながら、このような基材の洗浄の容易さを向上することは、最終消費者の要望であるだけでなく、環境に対してもプラスの効果を有する。また、コーティングが特に良好な化学及び溶媒耐性を示すことが所望されている。組成物は、容易及び安全な方法で塗布されてもよく、また現在の製造方法と相性が良い。好ましくは、組成物は、要処理基材を作製するために実施される製造プロセスに容易に適合する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、次式のフルオロケミカルウレタン化合物を提供する:
【0004】
【化1】

【0005】
式中、Rは、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロオキシアルキル基、ペルフルオロアルキレン基及びペルフルオロオキシアルキレン基などのフッ素含有基であり、
は、x+yの価数を有するポリイソシアネートの残基であり、
は、チオシランと、ビニル基、アリル基又はアリルオキシ基などの、ポリイソシアネート残基からのエチレン性不飽和基側枝との間のフリーラジカル付加反応から誘導されるシラン含有部分であり、
x及びyはそれぞれ独立して少なくとも1であり、zは1又は2である。
【0006】
1つの態様では、本発明は、少なくとも1個のフッ素含有基を有すると共に、チオシランとポリイソシアネート残基からのエチレン性不飽和基側枝との間の付加反応により誘導される少なくとも1つのシラン含有部分をも有する、1種以上の化合物(式中、zは1である)又はオリゴマー(式中、zは2である)及びこれらの混合物を含む化学組成物に関する。
【0007】
本明細書で使用するとき、用語「オリゴマー」は、少数の、すなわち平均10までの、繰り返し(重合化)又は繰り返し可能な単位のみからなるポリマー分子を意味する。各繰り返し単位は、少なくとも1種の二官能性求核フッ素含有化合物とチオシランとポリイソシアネートとの反応により誘導されるポリイソシアネートの残基を含み、フッ素含有部分は、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロオキシアルキル、及びペルフルオロオキシアルキレンからなる群から選択される。オリゴマーは、1個以上のペルフルオロアルキル基、1個以上のペルフルオロオキシアルキル基、及び/又は1個以上のシリル基を末端としてもよい。
【0008】
これらの化合物又はオリゴマーは、側鎖エチレン性不飽和基(unsaturated group groups)を有するフッ素含有ウレタン化合物との、チオシランのフリーラジカル付加反応生成物を含んでもよく、このウレタン化合物は、1個又は2個の求核イソシアネート反応性官能基を含む求核フッ素化化合物と、少なくとも1種の求核エチレン性不飽和化合物と、ポリイソシアネートとの反応生成物を含む。別の実施形態では、本化合物は、求核エチレン性不飽和化合物とのチオシランの付加反応生成物、及びポリイソシアネートとフッ素含有化合物との後続反応生成物を含む。
【0009】
特に記述しない限り、本明細書及び特許請求の範囲に使用される次の用語は以下に与えられる意味を有する:
「アルキル」は、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、及びペンチルなどの、1〜約12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖、環式又は非環式、飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。
【0010】
「アルキレン」は、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン、及びヘキシレンなどの、1〜約12個の炭素原子を有する直鎖飽和二価炭化水素ラジカル又は3〜約12個の炭素原子を有する分枝鎖飽和二価炭化水素ラジカルを意味する。
【0011】
「アルコキシ」は、例えば、CH−O−及びC−O−などの、末端酸素原子を有するアルキルを意味する。
【0012】
「アラルキレン」は、例えばベンジル、ピリジルメチル、及び1−ナフチルエチルなどの、アルキレンラジカルに結合した芳香族基を有する上記で定義されているアルキレンラジカルを意味する。「硬化化学組成物」は、化学組成物が乾燥するか、又は溶媒が周囲温度以上にて約24時間までの間に乾燥するまで化学組成物から蒸発することを意味する。組成物を、ウレタン化合物間に形成されたシロキサン結合の結果として更に架橋してもよい。
【0013】
「フルオロカーボン求核化合物」は、ヒドロキシル基又はアミン基などの、1個若しくは2個の求核イソシアネート反応性官能基、並びに、例えば、CFSON(CH)CHCHOH、CCHCHOH、CO(CO)CFCONHCOH、c−C11CHOH、及びHOCHCHCHCHOHなどの、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロオキシアルキル基、又はペルフルオロオキシアルキレン基を有する化合物を意味する。
【0014】
「フルオロケミカルウレタン化合物」は、式Iの化合物を指し、それぞれウレタン結合を有するか、又は代替的に尿素及び/若しくはチオ尿素結合を有するものを包含する。
【0015】
「硬質基材」は、その形状を維持するあらゆる剛体材料を意味し、例えば、ガラス、セラミック、コンクリート、天然石、木材、金属、及びプラスチックなどである。
【0016】
「オキシアルコキシ」は、1個以上の酸素原子がアルキル鎖に存在していてもよいこと及び存在する炭素原子の総数が50個まででもよいことを除いて、アルコキシとして上記に与えられた意味を本質的に有し、例えば、CHCHOCHCHO−、COCHCHOCHCHO−、及びCHO(CHCHO)Hなどである。
【0017】
「オキシアルキル」は、1個以上の酸素ヘテロ原子がアルキル鎖に存在してもよいこと及びこれらのヘテロ原子が少なくとも1個の炭素により互いに分離されていることを除いて、アルキルとして上記に与えられた意味を本質的に有し、例えば、CHCHOCHCH−、CHCHOCHCHOCH(CH)CH−、及びCCHOCHCH−などである。
【0018】
「オキシアルキレン」は、1個以上の酸素ヘテロ原子がアルキレン鎖に存在してもよいこと及びこれらのヘテロ原子が少なくとも1個の炭素により互いに分離されていることを除いて、アルキレンとして上記に与えられた意味を本質的に有し、例えば、−CHOCHO−、−CHCHOCHCH−、及び−CHCHOCHCHCH−などである。
【0019】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード、好ましくはフルオロ及びクロロを意味する。
【0020】
「ペルフルオロアルキル」は、アルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられていること及び炭素原子の数が1〜約12であることを除いて、「アルキル」として上記に与えられた意味を本質的に有し、例えば、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、及びペルフルオロオクチルなどである。
【0021】
「ペルフルオロアルキレン」は、アルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられていることを除いて、「アルキレン」として上記に与えられた意味を本質的に有し、例えば、ペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、及びペルフルオロオクチレンなどである。
【0022】
「ペルフルオロオキシアルキル」は、オキシアルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられていること及び炭素原子の数が3〜約100であることを除いて、「オキシアルキル」として上記に与えられた意味を本質的に有し、例えば、CFCFOCFCF−、CFCFO(CFCFO)CFCF−、及びCO(CF(CF)CFO)CF(CF)CF−(式中、sは(例えば)約1〜約50である)などである。
【0023】
「ペルフルオロオキシアルキレン」は、オキシアルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられていること及び炭素原子の総数が3〜約100であることを除いて、「オキシアルキレン」として上記に与えられた意味を本質的に有し、例えば、−CFOCF−、又は−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−(式中、r及びsは(例えば)1〜50の整数である)などである。
【0024】
「ペルフルオロ化基」は、炭素に結合した水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられている有機基を意味し、例えば、ペルフルオロアルキル及びペルフルオロオキシアルキルなどである。
【0025】
「多官能性イソシアネート化合物」又は「ポリイソシアネート」は、多価有機基に結合している平均して1個超の、好ましくは2個以上の、イソシアネート基、すなわち−NCO、を含有する化合物を意味し、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビウレット、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートなどである。
【0026】
「求核エチレン性不飽和化合物」は、分子毎に少なくとも1個の一級又は二級ヒドロキシル基、並びに、ビニル基、アリル基及びアルコキシ基などの少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する有機化合物を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、次式の新規フルオロケミカルウレタン化合物を提供する:
【0028】
【化2】

【0029】
式中、
は、一価のペルフルオロアルキル基又はペルフルオロオキシアルキル基、あるいは二価のペルフルオロアルキレン基又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
は、ポリイソシアネートの残基であり、
は次式を有し:
【0030】
【化3】

【0031】
式中、
は、−O−又は−NR−であり、式中、RはH又はC〜Cアルキルであり、
は、多価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、このアルキレン基は所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、好ましくは3であり、並びに
qは1〜5であり、好ましくは2〜5であり、
x及びyはそれぞれ独立して少なくとも1であり、並びに、zは1又は2である。
【0032】
本発明者らは理論に束縛されることを望むものではないが、上式Iの化合物は、基材表面との縮合反応を経て、式IIの加水分解性「Y」基の加水分解又は置換を介してシロキサン層を形成すると考えられている。この文脈では、「シロキサン」は、式Iの化合物に結合している−Si−O−Si−結合を意味する。水の存在下で、「Y」基は「Si−OH」基の加水分解及び更なる縮合を経て、シロキサンになる。
【0033】
式Iの化合物を包含するコーティング組成物から調製されるコーティングは、それ自体、ペルフルオロポリエーテルシランを包含し、加えて、予め選択された基材の表面への結合から生じたシロキサン誘導体を包含する。本コーティングはまた、未反応又は未縮合の「Si−Y」基も含むことができる。本組成物はまた、オリゴマーペルフルオロポリエーテルモノハイドライドなどの非シラン材料、出発材料及びペルフルオロポリエーテルアルコール及びエステルを更に含有してもよい。同様に、コーティングされたフルオロケミカルウレタンは、それ自体、式Iのシランを包含してもよく、加えて、基材表面との反応から生じるシロキサン誘導体を包含してもよい。
【0034】
1つの実施形態では、本発明は、式Iの化合物、溶媒、並びに所望により水及び酸を、含むコーティング組成物を提供する。別の実施形態では、本コーティング組成物は化合物の水性懸濁液及び分散体を含む。多くの基材、例えばセラミックスに対して、良好な耐久性を得るためには、本発明の組成物は、好ましくは水を包含する。したがって、本発明は、式Iの化合物を含むコーティング組成物及び溶媒と、基材との接触を提供する工程を含むコーティング法を提供する。コーティング組成物は、水及び酸を更に含んでよい。1つの実施形態では、本方法は、式Iのシランを含むコーティング組成物及び溶媒と、基材との接触と、続いて水性酸(aqueous acid)とこの基材との接触と、を含む。
【0035】
フルオロケミカル化合物の調製に有用なポリイソシアネート化合物は、多価脂肪族、脂環式又は芳香族部分(R)を含むことができる多価有機基に結合したイソシアネート基;又はビウレット、イソシアヌレート、若しくはウレトジオンに結合した多価脂肪族部分、脂環式部分又は芳香族部分、又はこれらの混合物、を含む。好ましい多官能性イソシアネート化合物は、少なくとも2個のイソシアネート(−NCO)ラジカルを含有する。少なくとも2個の−NCOラジカルを含有する化合物は好ましくは、−NCOラジカルが結合された、二価若しくは三価の脂肪族基、脂環式基、芳香脂肪族基、又は芳香族基からなる。脂肪族の二価又は三価の基が好ましい。
【0036】
好適なポリイソシアネート化合物の代表的な例には、本明細書で定義されているようなポリイソシアネート化合物のイソシアネート官能性誘導体が挙げられる。誘導体の例には、イソシアネート化合物の、尿素、ビウレット、アロファネート、二量体及び三量体(ウレトジオン及びイソシアヌレーなど)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、又は芳香族ポリイソシアネートのようなあらゆる適した有機ポリイソシアネートが、単独であるいは2種以上の混合物として用いられてもよい。
【0037】
脂肪族ポリイソシアネート化合物は一般に芳香族化合物よりも、より良い光安定性を提供する。一方で芳香族ポリイソシアネート化合物は一般に、脂肪族ポリイソシアネート化合物よりも、経済性に、及び求核性物質に対する反応性に、富む。好適な芳香族ポリイソシアネート化合物には、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート、トリメチロールプロパンによるTDIの付加物(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)CBとして入手可能)、TDIのイソシアヌレートトリマー(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)ILとして入手可能)、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−ナフタレン、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1−メトキシ(methyoxy)−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロフェニル−2,4−ジイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
有用な脂環式ポリイソシアネート化合物の例には、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI、バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手可能なデスモデュア(Desmodur)(商標)として市販)、4,4’−イソプロピル−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート(CHDI)、1,4−シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)(BDI)、二量体酸ジイソシアネート(バイエル社(Bayer)から入手可能)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
有用な脂肪族ポリイソシアネート化合物の例には、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、ジイソシアネート二量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの尿素、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)のビウレット(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(DESMODUR)(商標)N−100及びN−3200)、HDIのイソシアヌレート(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(DEMODUR)(商標)N−3300及びデスモデュア(DESMODUR)(商標)N−3600)、HDIのイソシアヌレートとHDIのウレトジオンのブレンド(デスモデュア(DESMODUR)(商標)N−3400としてバイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手可能)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
有用な芳香脂肪族ポリイソシアネートの例には、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p−TMXDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−(1−イソシアナトエチル)フェニルイソシアネート、m−(3−イソシアナトブチル)フェニルイソシアネート、4−(2−イソシアナトシクロヘキシル−メチル)フェニルイソシアネート及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
好ましいポリイソシアネートには一般に、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカンなど及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。好ましいポリイソシアネートで作製された、化合物又はオリゴマーを含む本発明のフルオロケミカル組成物は、水及びヘキサドデカンの両方に高い動的接触角の後退角を付与する。ヘキサデカンへの高い動的接触角の後退角を伴う、水への高い動的接触角の後退角は典型的には、良好な撥水及び撥油特性の予測因子である。
【0042】
フルオロケミカルウレタンは、部分的に、一官能性又は二官能性ペルフルオロ化基及び少なくとも1個の求核イソシアネート反応性官能基を有するフッ素化化合物の反応生成物(本明細書では「求核フッ素化化合物」)を含む。このような化合物には、次式のものが挙げられる:
−[Q(XH) (III)
式中、
は、一価のペルフルオロアルキル基又はペルフルオロオキシアルキル基、あるいは二価のペルフルオロアルキレン基又はペルフルオロオキシアルキレン基であり、
Qは、共有結合又は価数zの多価アルキレン基であり、このアルキレンは所望により1個以上のカテナリー(鎖中)窒素又は酸素原子を含有し、所望により1個以上のスルホンアミド基、アルボキシアミド基又はカルボキシ官能基を含有し、
は、−O−、−NR−又は−S−であり、式中、RはH又はC〜Cアルキルであり、
yは1又は2であり、並びに
zは1又は2である。
【0043】
式I及びIIIに関して、求核フッ素化化合物(III)とポリイソシアネートのイソシアネート基との間の反応が次式の基を生じ、
【0044】
【化4】

【0045】
式中、R、Q、X、y及びzは式IIIについて前に定義した通りである。
【0046】
式III及びIVのR基は、直鎖、分枝鎖、又は環式のフッ素化基又はこれらの組み合わせを含有することができ、一価又は二価であることができる。R基は、炭素−酸素−炭素鎖(すなわち、オキシアルキレン基)を形成するために、所望により炭素−炭素鎖中に1個以上のカテナリー酸素原子を含有することができる。完全にフッ素化された基が一般に好ましいが、2個の炭素原子毎に1個以下のいずれかの原子が存在するならば、置換基として水素又は塩素原子も存在することができる。
【0047】
いずれかのR基は、少なくとも約40重量%のフッ素、より好ましくは少なくとも約50重量%のフッ素を含有することが更に好ましい。一価のR基の末端部分は、一般に完全にフッ素化されており、好ましくは少なくとも3個のフッ素原子を含有し、例えば、CF−、CFCF−、CFCFCF−、(CFN−、(CFCF−、SFCF−が挙げられる。特定の実施形態では、一価のペルフルオロアルキル基(すなわち、式C2n+1−のもの)又は二価のペルフルオロアルキレン基(すなわち、式−C2n−のもの)(式中、nは2〜12(これらを含む)である)が好ましいR基であり、n=3〜5がより好ましく、n=4が最も好ましい。
【0048】
有用なペルフルオロオキシアルキル基及びペルフルオロオキシアルキレン基は次式に相当し:
W−R−O−R−(R− (V)
式中、
Wは、一価のペルフルオロオキシアルキルについてはF(フッ素)であり、二価のペルフルオロオキシアルキレンについては開殻価電子(open valence)(「−」)であり、
はペルフルオロアルキレン基を示し、Rは、1、2、3若しくは4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンオキシ基又はこのようなペルフルオロアルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を示し、Rはペルフルオロアルキレン基を示し、qは0又は1である。式(IV)中のペルフルオロアルキレン基R及びRは直鎖又は分枝鎖であってもよく、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含んでもよい。典型的な一価のペルフルオロアルキル基はCF−CF−CF−であり、典型的な二価のペルフルオロアルキレンは−CF−CF−CF−、−CF−又は−CF(CF)−である。ペルフルオロアルキレンオキシ基Rの例には、−CF−CF−O−、−CF(CF)−CF−O−、−CF−CF(CF)−O−、−CF−CF−CF−O−、−CF−O−、−CF(CF)−O−、及び−CF−CF−CF−CF−Oが挙げられ、例えば、3〜30回繰り返してもよい。
【0049】
ペルフルオロアルキレンオキシ基Rは、同一のペルフルオロオキシアルキレン単位から、又は異なるペルフルオロオキシアルキレン単位の混合物から、構成されてもよい。ペルフルオロオキシアルキレン基が、異なるペルフルオロアルキレンオキシ単位から構成される場合、これらは、ランダム構成、交互構成で存在することができ、又はブロックとして存在することができる。ペルフルオロ化ポリ(オキシアルキレン)基の典型例には、−[CF−CF−O]−;−[CF(CF)−CF−O]−;−[CFCF−O]−[CFO]−、−[CFCFCFCF−O]及び−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−が挙げられ、式中、r、s、t及びuはそれぞれ1〜50の整数であり、好ましくは2〜25の整数である。式(V)に相当する好ましいペルフルオロオキシアルキル基は、CF−CF−CF−O−[CF(CF)−CFO]−CF(CF)CF−であり、式中、sは1〜50の整数である。
【0050】
ペルフルオロオキシアルキレン及びペルフルオロオキシアルキル化合物は、末端カルボニルフルオリド基を生じる、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により得ることができる。このカルボニルフルオリドを、当業者に周知の反応によって、酸、エステル又はアルコールに変換してもよい。次に、カルボニルフルオリド若しくはカルボニル酸、それらから誘導されるエステル又はアルコールを更に反応させて、既知の手順に従って、所望のイソシアネート反応性基を導入してもよい。
【0051】
式中、x又はzが1である式I〜IIIに関して、モノアルコール及びモノアミンなどの求核フルオロケミカル一官能性化合物が考えられる。有用なフルオロケミカル一官能性化合物の代表的な例としては、次のものが挙げられる:
CF(CFSON(CH)CHCHOH、CF(CFSON(CH)CH(CH)CHOH、
CF(CFSON(CH)CHCH(CH)NH、CF(CFSON(CHCH)CHCHSH、
CF(CFSON(CH)CHCHSCHCHOH、C13SON(CH)(CHOH、
CF(CFSON(H)(CHOH、CSON(CH)CHCHOH、
CF(CFSON(CH)(CHNH、CSON(CH)(CH11OH、
CF(CFSON(CHCH)CHCHOH、CF(CFSON(C)(CHOH、
CF(CFSON(C)(CHOH、CF(CFSON(C)CHOCHCHCHOH、
CF(CFSON(CHCHCH)CHCHOH、
CF(CFSON(CHCHCH)CHCHNHCH
CF(CFSON(C)CHCHNH、CF(CFSON(C)(CH)4SH、
CF(CFCHCHOH、COCOCFCHOCHCHOH;
n−C13CF(CF)CON(H)CHCHOH;C13CF(CF)COCH(CH)OH;
CON(H)CHCHOH;CO(CF(CF)CFO)1〜36CF(CF)CHOH
など、及びこれらの混合物。所望により、その他のイソシアネート反応性官能基が、記載されたものの代わりに使用されてもよい。
【0052】
x又はzが2である式I〜IIIに関して、フッ素化ポリオールが好ましい。好適なフッ素化ポリオールの代表例には、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミドなどのRSON(CHCHOH);ROCSON(CHCHOH);C13SON(C)CHCH(OH)CHOHなどのRSON(R)CHCH(OH)CHOH;RCHCON(CHCHOH);RCON(CHCHOH);CFCF(OCFCFOCFCON(CH3)CH2CH(OH)CH2OH;COCHCH(OH)CHOHなどのROCHCH(OH)CHOH;RCHCHSCOCHCH(OH)CHOH;RCHCHSCCH(CHOH);RCHCHSCHCH(OH)CHOH;RCHCHSCH(CHOH)CHCHOH;C11(CHSCHCH(OH)CHOHなどのRCHCHCHSCHCH(OH)CHOH;C11(CHOCHCH(OH)CHOHなどのRCHCHCHOCHCH(OH)CHOH;RCHCHCHOCOCHCH(OH)CHOH;RCHCH(CH)OCHCH(OH)CHOH;R(CHSCCH(CHOH)CHOH;R(CHSCHCH(CHOH);R(CHSCOCHCH(OH)CHOH;RCHCH(C)SCHCH(OH)CHOH;RCHOCHCH(OH)CHOH;RCH2CH(OH)CHSCHCHOH;RCHCH(OH)CHSCHCHOH;RCHCH(OH)CHOCHCHOH;RCHCH(OH)CHOH;R’’SCH(R’’’OH)CH(R’’’OH)SR’’;(RCHCHSCHCHSCHC(CHOH);((CFCFO(CF(CHSCHC(CHOH);(R’’SCHC(CHOH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFOCO(CFOCOCFCHOH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH);ポリ−3−フォックス(Poly-3-Fox)(商標)(オムノヴァ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)、オハイオ州アクロン(Akron)から入手可能)などのフッ素化オキセタンの開環重合により作製されるフッ素化オキセタンポリオール;米国特許第4,508,916号(ネウェル(Newell)ら)に記載されているような少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する化合物とのフッ素化有機基置換エポキシドの開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール;及びフォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(HOCHCFO(CFO)8〜12(CFCFO)8〜12CFCHOH、アウジモント社(Ausimont)から入手可能)などのペルフルオロポリエーテルジオールが挙げられる(式中、Rは、1〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基又は3〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロオキシアルキル基(存在する全てのペルフルオロ炭素鎖が、6個以下の炭素原子を有する)又はこれらの混合物であり;R’は1〜4個の炭素原子のアルキルであり;R’’は、1〜12個の炭素原子の分枝鎖若しくは直鎖アルキレン、2〜12個の炭素原子のアルキレンチオ−アルキレン、2〜12個の炭素原子のアルキレン−オキシアルキレン、又は2〜12個の炭素原子のアルキレンイミノアルキレンであり、この窒素原子は第三置換基として水素を又は1〜6個の炭素原子のアルキルを含有し;並びに、R’’’は1〜12個の炭素原子の直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、又は式C2r(OC2S(式中、rは1〜12であり、sは2〜6であり、tは1〜40である)のアルキレン−ポリオキシアルキレンである)。
【0053】
好ましいフッ素化ポリオールには、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;ポリ−3−フォックス(Poly-3-Fox)(商標)(オムノヴァ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)、オハイオ州アクロン(Akron)から入手可能)などのフッ素化オキセタンの開環重合により作製されるフッ素化オキセタンポリオール;米国特許第4,508,916号(ネウェル(Newell)ら)に記載されているような少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する化合物とのフッ素化有機基置換エポキシドの開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール;フォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(HOCHCFO(CFO)8〜12(CFCFO)8〜12CFCHOH、アウジモント社(Ausimont)から入手可能)などのペルフルオロポリエーテルジオール;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFOCO(CFOCOCFCHOH);及び1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)が挙げられる。
【0054】
少なくとも1個のフッ素含有基からなるより好ましいポリオールには、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)及びCFCFCF−O−[CF(CF)CFO]3〜25−CF(CF)−が挙げられる。このペルフルオロ化ポリエーテル基は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により誘導されることができる。このようなペルフルオロ化ポリエーテル基は、これらの優れた環境特性により、特に好ましい。
【0055】
フルオロケミカルウレタンは、部分的に、イソシアネート反応性求核官能基及び少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する求核エチレン性不飽和化合物(以降では「求核不飽和化合物」)の反応生成物を含む。不飽和基は、ビニル、アリル又はアリルオキシであってもよく、求核官能基はアミノ又はヒドロキシ基であってもよい。好ましくは、不飽和基は、例えばCH=CH−といったビニルオキシ基ではない。好ましくは、求核不飽和化合物は、ヒドロキシ基及び少なくとも2個の不飽和基を有する多価不飽和化合物である。
【0056】
このような化合物には次式のものが挙げられる:
HX−R−(CH=CH (VI)
式中、
は、−O−又は−NR−であり、式中、RはH又はC〜Cアルキルであり、
は二価のアルキレン基又はアリーレン基又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有し、並びに、
qは1〜5である。
【0057】
好ましくはqは1を超える。得られる求核多価不飽和化合物により、ウレタン化合物への複数のシラン基の付加が可能になる。シラン基対−NH−C(O)−X−基のモル比は、1:1を超えてもよく、又は2:1を超えてもよい。好ましくはHX−は、フェノール性化合物の場合のように、芳香環に直接結合しない。
【0058】
式VIの化合物には、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノール−A、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、テトラエチレングリコール、トリシクロデカンジメタノール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール;グリセロール、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどのポリオールの末端一価、二価又は多価不飽和エーテルが挙げられる。
【0059】
有用な求核不飽和化合物には、アリルアルコール、メタリルアルコール、アリルオキシエチルアルコール、2−アリルオキシメチルプロパノール(ジメチロールエタンから)及び2,2−ジ(アリルオキシメチル)ブタノール(トリメチロールプロパンから)などのヒドロキシアルケン、並びに対応するアミンが挙げられる。
【0060】
求核不飽和化合物(VI)は、ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部と反応して側鎖不飽和基を有するウレタン化合物(下式VI)を形成してもよく、引き続きチオシランと反応して式Iの化合物を形成してもよい。
【0061】
イソシアネートと求核不飽和化合物との反応生成物は次の一般式を有する:
【0062】
【化5】

【0063】
式中、
は、一価のペルフルオロアルキル基又はペルフルオロオキシアルキル基、あるいは二価のペルフルオロアルキレン基又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
は、ポリイソシアネートの残基であり、
は、−O−又は−NR−であり、式中、RはH又はC〜Cアルキルであり、
は、二価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、このアルキレン基は所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
xは1又は2であり、
zは1、2又は3であり、及び、
qは1〜5であり、好ましくは2〜5である。
【0064】
このフルオロケミカルウレタン化合物は、部分的に、式VI又はVIIの化合物の不飽和基とチオシランとのフリーラジカル付加反応生成物を含む。
【0065】
このチオシランは次式を有する:
【0066】
【化6】

【0067】
式中、
は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、並びに、
pは、1、2、又は3である。
【0068】
Yは、式(VIII)中の加水分解性基、例えばハロゲン化物、C〜Cのアルコキシ基、アシルオキシ基、又はポリオキシアルキレン基(米国特許第5,274,159号に開示されているようなポリオキシエチレン基など)などを表す。加水分解性とは、Y基が、水と交換反応を生じて、Si−OH部分を形成し、これが更に反応してシロキサン基を形成することを意味する。加水分解性基の具体例には、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基、塩素及びアセトキシ基が挙げられる。Rは一般に非加水分解性である。
【0069】
このチオシランは、求核不飽和不飽和化合物VIと反応して、すなわち付加生成物を形成してもよく、これは続いてポリイソシアネートと反応してもよい(求核フッ素化化合物による官能化の前又は後のいずれか)。あるいは、式VIの求核不飽和化合物は、まずポリイソシアネートと反応して式VIIのウレタン化合物を形成し、続いて、このウレタン化合物からの側鎖エチレン性不飽和基へこのチオシランをフリーラジカル付加してもよい。好ましくは、この求核不飽和化合物はまずポリイソシアネートと反応(ここでも、求核フッ素化化合物との反応の前又は後で)して、側鎖不飽和基を有するウレタン化合物を形成し、これにフリーラジカル付加によりチオシランを付加させる。一般的な反応スキームは以下に示される:
(R−R−(NCO)+(VI)→(VII)
(VII)+(VIII)→(I)
(VI)+(VIII)→HX−R−[CH−CH−S−R−Si(Y)(R3−p(IX)
IX+(R−R−(NCO)→(I)
有用なチオシランには、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(メルカプトメチル)メチルジエトキシシランが挙げられる。
【0070】
エチレン性不飽和化合物(V又はVI)のいずれかへのメルカプトシラン(VIII)の付加は、フリーラジカル反応開始剤を使用して引き起こされてもよい。有用なフリーラジカル反応開始剤には、無機及び有機過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、アゾ化合物、酸化還元系(例えば、KとNaとの混合物)、並びに「コーティング、インク及びペイントのUV&EB形成の化学&技術(Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints)」(K.K.ディエトリカー(K.K. Dietliker)著、第3巻、276〜298ページ、SITAテクノロジー社(SITA Technology Ltd.)、ロンドン、1991年)によって記載されているようなフリーラジカル光開始剤が挙げられる。代表的実施例としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(VAZO 67)、並びにアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)が挙げられる。当業者は、反応開始剤の選択が、特定の反応条件、例えば溶媒の選択に依存することを理解するであろう。
【0071】
チオシランのフリーラジカル付加は、エチレン性不飽和基の最小又はそれ以上のいずれかの置換炭素原子に行われてもよく、より少ない置換炭素への付加は便宜上、図式に示される。すなわち:
〜R−CH=CH+HS−R〜→〜R−CH−CH−S−R〜及び/又は〜R−CH(CH)−S−R
フルオロケミカル化合物は、求核不飽和化合物(1種又は複数種)、フッ素含有求核化合物(1種又は複数種)、及びポリイソシアネート化合物(1種又は複数種)の単純なブレンドにより作製することができ、続けて不飽和基へのチオシランのフリーラジカル付加を行う。当業者であれば理解するように、ブレンドの順序又は工程の順番は非限定的であり、所望されるフルオロケミカルウレタン化合物を製造するように改善することができる。1つの実施形態では、例えば、ポリイソシアネート化合物(1種又は複数種)について、求核フルオロケミカル化合物をまずイソシアネート基の一部とまず反応させ、続けて残存しているイソシアネート基の一部と求核不飽和化合物(1種又は複数種)とを反応させ、その後、側鎖不飽和基にチオシランをフリーラジカル付加させる。
【0072】
一般に、反応構成成分及び溶媒は、乾燥反応槽に直ちに連続して又は予め作製された混合物として充填される。均一な混合物又は溶液を得るとき、触媒を所望により加え、反応混合物を反応が生じる温度に十分な時間にわたって加熱する。反応の進行は、赤外分光法でのイソシアネートピークの消失をモニタリングすることにより測定することができる。
【0073】
一般に、求核化合物R−Q(XH)(III)を、5〜50モル・パーセントの入手可能なイソシアネート官能基と反応させるのに十分な量で使用する。好ましくは、化合物IIIを使用して、10〜30モル・パーセントのイソシアネート基と反応させる。残存するイソシアネート基約50〜95モル・パーセント、好ましくは70〜90モル・パーセントを求核不飽和化合物(VI)により官能化し、続けてチオシラン(VIII)のフリーラジカル付加を行い、又は式VII及びVIIIの化合物の反応生成物により代替し、側鎖フルオロケミカル基及び側鎖シラン基の両方を有する式Iのウレタン化合物を生じる。
【0074】
好ましくは、(フッ素含有求核化合物及び求核不飽和化合物の両方の)求核基の当量の総数対イソシアネート基の当量の総数の比は、約1:1であり、すなわち、全ての又は実質的に全てのイソシアネート基は反応する。
【0075】
反応条件(例えば、反応温度及び/又は使用されるポリイソシアネート)に依存して、使用してもよい反応混合物の約0.5重量パーセントまでの触媒濃度を使用してイソシアネート縮合反応を引き起こしてもよいが、典型的には約0.00005〜約0.5重量パーセントを使用してもよく、0.02〜0.1重量パーセントが好ましい。一般に、求核基がアミン基である場合、触媒は必要とされない。
【0076】
好適な触媒としては、三級アミン及びスズ化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用なスズ化合物の例には、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジ−2−エチルヘキサノエート、及びジブチルスズオキシドなどの、スズII及びスズIV塩が挙げられる。有用な三級アミン化合物の例には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、トリプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチルモルホリン、及び2,2’−ジモルホリノジエチルエーテルなどのモルホリン化合物、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデカ−7−エン(DBU、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))が挙げられる。スズ化合物が好ましい。酸触媒が使用される場合、反応後に好ましくは酸触媒を生成物から除去又は中和する。触媒の存在は接触角の働きに悪影響を与える恐れがあることが判明している。
【0077】
ウレタン分子の混合物を含む本発明のフルオロケミカル組成物は、バッチ方法に加え、以下の段階的合成で作製することができる。この合成において、ポリイソシアネート及びフッ素化求核化合物(1種又は複数種)を乾燥条件下で、好ましくは溶媒中に、一緒に溶解し、次に得られた溶液を縮合反応を引き起こすのに十分な温度に、所望により触媒の存在下で、加熱する。側鎖フッ素含有基をこれによりイソシアネート官能性ウレタンオリゴマー及び化合物に結合させる。
【0078】
次に、得られたイソシアネートフルオロケミカル官能性ウレタンオリゴマー及び化合物を、上記反応混合物に加えられる上記求核不飽和化合物であって残存しているイソシアネート基又は相当量の残存しているイソシアネート基と反応する上記求核不飽和化合物の1種以上と更に反応させ、側鎖フルオロケミカル基及び側鎖不飽和基の両方を有するウレタン化合物を得る。
【0079】
本発明による組成物を基材上にコーティングし、少なくとも部分的に硬化して、コーティングされた物品を提供してもよい。いくつかの実施形態では、重合化コーティングは耐擦傷性、落書き防止性、耐汚性、接着剥離性、低屈折率、及び撥水性の少なくとも1つを提供する保護コーティングを形成してもよい。本発明によるコーティングされた物品には、例えば、眼鏡レンズ、鏡、窓、接着剥離ライナー、及び落書き防止フィルムが挙げられる。
【0080】
好適な基材には、例えば、ガラス(例えば、窓及び光学素子(例えば、レンズ及び鏡など))、セラミック(例えば、セラミックタイル)、セメント、石、塗装面(例えば、自動車のボディパネル、ボート表面)、金属(例えば、建築用柱)、紙(例えば、接着剥離ライナー)、厚紙(例えば、食品容器)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリスチレン、及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー)及びこれらの組み合わせが挙げられる。基材は、フィルム、シートであってもよく、又は他の何らかの形態を有してもよい。基材は、透明又は半透明な表示素子、任意にその上にセラマー又はシルセスキオキサンハードコートを有するものを含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、フルオロケミカルウレタン化合物及び溶媒の混合物を含むコーティング組成物が提供される。本発明のコーティング組成物は、本発明のフルオロケミカル化合物の溶媒懸濁液、分散体又は溶液を含む。コーティングとして塗布されるとき、本コーティング組成物は、広範囲の種類の基材のいずれに対しても、撥油特性及び撥水特性、並びに/又は、染み放出特性及び防汚特性を付与する。
【0082】
本フルオロケミカル化合物を様々な溶媒中に溶解、懸濁、又は分散して、基材上へのコーティングに使用するのに好適なコーティング組成物を形成することができる。一般に、この溶媒溶液は、約0.1〜約50重量パーセント、更には約90重量パーセントまでの、非揮発性固形分(組成物の総重量に基づく)を含有することができる。好ましくは、本コーティング組成物は、約10〜30パーセントの総固形分を含有する。コーティング組成物は、固形分の重量に基づいて、約0.1〜約10重量パーセントのフルオロケミカルウレタン化合物を含有してもよい。好ましくは、コーティングに使用されるフルオロケミカルウレタン化合物の量は、約0.1〜約5重量パーセントである。性能のバランス(接触角により測定される)、コーティング及びヘーズの均一性のために、コーティング組成物は最も好ましくは約0.1〜約0.5重量パーセントのフルオロケミカルウレタンを有する。好適な溶媒には、アルコール、エステル、グリコールエーテル、アミド、ケトン、炭化水素、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、クロロハイドロカーボン、クロロカーボン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0083】
加工の容易さのために、及び費用を理由として、本発明の組成物は、使用直前に、1種以上のフッ素化ポリエーテルイソシアネート由来のシランの濃縮物を希釈することにより調製することができる。この濃縮物は一般に、有機溶媒中の式Iの化合物の濃縮溶液を含む。該濃縮物は、数週間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間、安定していなければならない。フッ素化イソシアネート由来のシランは、有機溶媒中に高濃度で容易に溶解することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明のコーティング組成物は、式Iの化合物、水、及び所望により酸を含んでもよい。存在する場合、水分量は、典型的には、式Iのシランの重量に対して、0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.5重量%〜15重量%、より好ましくは1重量〜10重量%である。
【0085】
いくつかの好ましい実施形態では、本コーティング組成物は、式Iのウレタン化合物の水性分散体、溶液、又は懸濁液を含む。式II「q」が2以上である場合のように、シリル基が高濃度である結果として、化合物は水に容易に懸濁する。これらの水性コーティング組成物は、加えた水によって、本化合物の有機溶媒溶液を水中に「反転(inverting)」させ、所望により界面活性剤を含有し、攪拌しながら減圧することで有機溶媒を除去することにより、調製してもよい。音波処理は懸濁液を攪拌する好ましい手段である。
【0086】
水に加えて、本発明の組成物はまた、有機酸又は無機酸を含んでもよい。有機酸には、酢酸、クエン酸、及びギ酸などが挙げられ、フッ素化有機酸には例えば、CFSOH、CCOK、又は式R[−(L)−Z](式中、Rは、一価のペルフルオロアルキル基又はペルフルオロオキシ基あるいは2価のペルフルオロアルキレン基又はペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、Lは、有機二価結合基を表し、Zは、カルボキシ基、スルホン基又はホスホン酸基などの酸基を表し、aは0又は1であり、bは1又は2である)により表すことができるものが挙げられる。
【0087】
好適なR基の例としては、上記のRについてのようなものが挙げられる。式(IV)の有機酸の例としては、CO(CF(CF)CF10〜30CF(CF)COOH(デュポン(DuPont)から市販されている)又はCF(CFOCF(CF)COOHが挙げられる。無機酸の例には、硫酸、及び塩酸などが挙げられる。酸は、一般に、組成物中にシラン重量に対して、約0.01重量%〜10重量%、より好ましくは0.05重量%〜5重量%の量で含まれる。
【0088】
酸は、コーティング組成物それ自体へと処方されるか、又はペルフルオロポリエーテルシランと共にコーティングした後で処方されてよく、コーティング基材は、酸溶液に浸漬されて、シロキサン層の形成をもたらす。
【0089】
本発明のコーティング組成物は、シルセスキオキサンを含有する。有用なシルセスキオキサンには、式R10Si(OR11のジオルガノオキシシラン(又はこれらの加水分解物)と式R10SiO3/2のオルガノシラン(又はこれらの加水分解物)とのの共縮合体が挙げられる(式中、各R10は、1〜6個の炭素原子のアルキル基又はアリール基であり、R11は1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す。好ましいシルセスキオキサンは、組成物ヘの添加前には中性又はアニオン性であるシルセスキオキサンである。有用なシルセスキオキサンは、米国特許第3,493,424号(モーロック(Mohrlok)ら)、同第4,351,736号(スタインバーガー(Steinberger)ら)、同第5,073,442号(ノウルトン(Knowlton)ら)、及び同第4,781,844号(コートマン(Kortmann))に記載されている技術により、作製することができる。コーティング溶液は、総固形分(すなわち、式Iのフルオロケミカルウレタン及びシルセスキオキサン)に対して、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、更に好ましくは少なくとも99.5重量%のシルセスキオキサンを含む。
【0090】
このシルセスキオキサンは、水、緩衝剤、界面活性剤及び所望により有機溶媒の混合物にシランを添加して、その間酸性又は塩基性条件下で混合物を攪拌することにより、調製してもよい。200〜500オングストロームの限られた粒径を得るために、一定量のシランを均一にかつゆっくりと添加することが好ましい。添加すべきシランの正確な量は、置換基Rに依存すると共に、アニオン性か又はカチオン性かのどちらの界面活性剤を使用するかに依存する。単位がブロック又はランダム分布で存在することができるシルセスキオキサンの共縮合体は、シランの同時加水分解により形成される。存在するテトラアルコキシシラン及びこれらの加水分解物(例えば式Si(OH)を有する)を包含するテトラオルガノシランの量は、シルセスキオキサンの重量に対して、10重量%未満であり、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%である。
【0091】
以下のシランが、本発明のシルセスキオキサンを調製するのに有用である:メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、2−エチルブチルトリエトキシシラン及び2−エチルブトキシトリエトキシシラン。
【0092】
本組成物は、例えば、噴霧、ナイフコーティング、ノッチコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、フラッドコーティング、又はスピンコーティングなどの従来の基材により塗布してもよい。典型的に、この重合可能な組成物を比較的薄い層として基材に塗布して、約40nm〜約60nmの範囲の厚さを有する乾燥した硬化層を得られるが、より薄い及びより厚い(例えば、100マイクロメートルまで、又はそれ以上の厚さを有する)層を使用してもよい。次に、いずれかの所望の溶媒を典型的には少なくとも一部(例えば、強制空気オーブンを使用して)取り除き、次に本組成物を部分的に硬化して耐久性コーティングを形成する。
【0093】
本発明のフッ素化イソシアネートシランの塗布のための好ましいコーティング方法には、噴霧塗布が挙げられる。典型的には、コーティングされるべき基材を室温(典型的には約20〜約25℃)で処理用組成物に接触させることができる。あるいは、この混合物を、例えば60〜150℃の温度に予め加熱した基材に塗布することができる。これは、例えば、セラミックタイルを生産ラインの終わりにてベーキングオーブン直後に処理できる工業生産にとって、特別な関心事である。塗布後、処理された基材を、乾燥させるのに十分な時間にわたり室温又は高温、例えば40℃〜300℃で乾燥させ硬化させることができる。また、プロセスは過剰の材料を除去するための研磨工程を必要とする可能性もまたある。
【0094】
本発明は、比較的耐久性があり、基材表面そのものよりも、優れた耐汚染性及び洗浄の容易さを有する保護コーティングを基材上に提供する。本発明は、1つの実施形態では、基材を、好ましくは硬質基材を含むコーティングされた物品と、(典型的には基材上に付着した約15オングストロームを超える)単層の防汚性コーティングと、を調製するのに使用するための方法及び組成物を提供する。好ましくは、本発明の防汚性コーティングは、少なくとも約20オングストロームの厚さであり、より好ましくは少なくとも約30オングストロームの厚さである。コーティングの厚さは、一般に10マイクロメートル未満であり、好ましくは5マイクロメートル未満である。コーティング材料は典型的には、物品の外観及び光学的特性を実質的に変化させない量で存在する。
【実施例】
【0095】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲に限定することを意味するものではない。
【0096】
特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載される部、百分率、比率等は全て、重量による。溶媒及び使用される他の試薬は、特に指示がない限り、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手した。
【0097】
試験方法
核磁気共鳴(NMR)
H及び19F NMRスペクトルを、バリアンユニティプラス(Varian UNITYplus)400・フーリエ変換NMRスペクトロメーター(バリアンNMRインスツルメンツ社(Varian NMR Instruments)、カルフォルニア州パロアルト(Palo Alto)から入手可能)にて測定した。
【0098】
赤外線分光分析(IR)
IRスペクトルを、サーモ・ニコレー社(Thermo-Nicolet)製、アバター(Avatar)370 FTIR(サーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corporation)、マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)から入手可能)にて測定した。
【0099】
ポリカーボネート板上コーティングの形成方法
ディップコーティング方法で本発明によるフルオロケミカルウレタン組成物を含むコーティング組成物で、ポリカーボネート板(10cm×10cm)をコーティングした。コーティングを形成するために、各ポリカーボネート板をまずSHP401プライマー中に90cm毎分の速さで浸漬させた。一旦、板全体をプライマー中に浸漬させたら、板をプライマーから90cm毎分の速さで取り出し、室温で10分間にわたって風乾させた。乾燥した板を、次にSHC−1200の溶液中に、又は本発明により調製されたフルオロケミカルウレタンシラン0.3重量パーセントを含有するSHC−1200の溶液中に、浸漬させた。板をコーティング溶液中に90cm毎分の速さで浸漬させ、19cm毎分で引き上げ、室温で20分間にわたって空気乾燥させ、最後にオーブン内で130℃で30分間にわたって加熱した。
【0100】
防インク性試験
この試験は、ポリカーボネート上のコーティングの防インク性を測定するために使用された。コーティングされたポリカーボネート板を上記のように調製した。シャーピー(Sharpie)(商標)ファインポイント(Fine Point)、30000シリーズ永久マーカー(サンフォード(Sanford)(ニューウェルラバーメイド(Newell Rubbermaid)の一部門)から入手可能)により、コーティングされたポリカーボネート板の表面を横切って線分を引いた。外観について及び黒シャーピーマーカーをはじく能力について、試料を評価した。
【0101】
【表1】

【0102】
防インク性耐性試験
コーティングされたポリカーボネート板の防インク性の耐性を測定するために、修正されたオシレーティング・サンド法(a modified Oscillating Sand Method)(ASTM F 735〜94)を使用した。コーティングされたポリカーボネート板(すなわち、上記のように調製した試験試料)をビニルテープ及びゴムバンドを使用して、50グラムの未使用の20〜30メッシュ・オタワ・サンド(VWR社、コネチカット州ブリストル(Bristol)から入手可能)を含有する内径87mmを有するジャー(VWR 36318−860、VWR社(コネチカット州ブリストル(Bristol)から入手可能)の中に固定した。このジャーを、底部に試験試料を含有する側部を有する振盪器(VWR DS−500E、VWR社(コネチカット州ブリストル(Bristol)から入手可能)の中に定置し、振盪器を操作して225rpmの速度で10分間にわたって振動させた。10分後に、ポリカーボネート板は取り出され、砂と接触している板の表面を横切ってシャーピー永久マーカーを使用して線分を引いた。玉状化しなかった87mmインク線分の正規化された(%)長さを測定し、防インク性喪失パーセントとして報告した。報告したデータは3回の独立した試験の平均である。
【0103】
テーバーヘーズ(Taber Haze)試験
この試験は上記のようなコーティングされたポリカーボネート板上で実施された。試験手順は、米国国立労働安全衛生研究所(National Institute of Occupational Safety and Health)による2005年10月24日付けの手順第CET−APRS−STP−0316、改訂1.1のものであった。4未満の数が所望される。
【0104】
スチールウール耐久性試験(Steel Wool Durability Test)
硬化されたポリカーボネート板(上記のように調製)の磨耗耐性を、スタイラスに固定されているスチールウールシートをフィルム表面を横切って振動させることができる機械装置を用いることによって、コーティング方向に対してクロスウェブに試験した。スタイラスは90mmの掃引幅、315mm/秒(3.5回/秒の拭き取り動作)で振動させたが、この場合の「拭き取り動作」とは、1工程90mmと定義する。スタイラスは平坦な円筒型の形状をしており、直径3.2cmを有した。スタイラスは、追加的な重量を取り付けてフィルムの表面に垂直なスチールウールによりかけられる力を増やすことができるように設計された。試料を500g荷重、25回の拭き取り動作で試験した。#0000スチールウールシートは、ハット・プロダクツ(Hut Products)(ミズーリ州フルトン(Fulton))から入手可能な「マジック・サンド−サンディング・シート(Magic Sand-Sanding Sheets)」であった。#0000の規定グリット同等物は600〜1200グリットのサンドペーパーである。3.2cmのスチールウールディスクをこのサンドシートからダイカットし、3Mブランドのスコッチパーマネントアドヒーシブトランスファー(Scotch Permanent Adhesive Transfer)というテープで3.2cmのスタイラス基部に固定した。スチールウールの磨耗後に磨耗痕跡について、及び、スチールウールの痕跡により影響を受けていない(すなわち、スチールウール試験前に)、この磨耗痕跡に近接した板の領域について、接触角を測定した。下記の「接触角の測定方法」を使用して、接触角の測定を行った。報告したデータは、3枚の板について行った測定の平均を表す。3滴を各板の上に配置し、各滴の右側及び左側について接触角を測定した。
【0105】
接触角の測定方法
コーティングされたポリカーボネート板(上記のように調製)を、水接触角の測定にかけられる前に、IPA中で手による攪拌により1分間にわたってすすいだ。濾過システム(ミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)、マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)から入手)を通して濾過した、購入したままの試薬グレードのヘキサデカン及び脱イオン水を用い、ビデオ接触角分析計(ASTプロダクツ(AST Products)、マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)から製品番号VCA−2500XEとして入手可能)により、測定を行った。報告される値は、滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴についての測定値の平均である。滴の容量は、静的測定の場合5μLであった。
【0106】
溶媒抵抗試験
4つのチャンバに異なる溶媒を充填した:エタノール、イソプロパノール、トルエン及びMEK。上記のように調製した各板を4つの全てのチャンバの中に60秒間にわたって定置した。層間剥離、亀裂、変色、及びコーティング中の他のあらゆる変化などの観測結果を記録した。次に、各板を溶媒チャンバ中に更に300秒間にわたって定置した。全ての観測結果を再び記録した。
【0107】
材料
ヘキサメチレンジイソシアネート(デスモデュア(Desmodur)(商標)N100)をバイエル・ポリマー社(Bayer Polymers LLC)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手した。
【0108】
ヘキサメチレンジイソシアネート(デスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A)をバイエル・ポリマー社(Bayer Polymers LLC)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手した。
【0109】
メチルイソブチルケトン(MIBK)をバーディック&アセトン・ソルベンツ(Burdick & Jackson Solvents)(ハニーウェル・インターナショナル社(Honeywell International, Inc.)、ニュージャージー州モリスタウンシップ(Morris Township)の一部署)から入手した。
【0110】
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO(商標)33LV、エアー・プロダクト・アンド・ケミカルズ社(Air Product and Chemicals, Inc.)(ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown))から入手可能。
【0111】
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(バゾ(Vazo)(商標)67)をEIデュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(El DuPont de Nemours & Co.)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))から入手した。
【0112】
MeFBSE(CSON(CH)CHCHOH)を米国特許第6,664,354号(サヴ(Savu)ら)の実施例2、パートAに記載されている手順に本質的に従うことにより調製した。
【0113】
HFPO−C(O)N(H)CHCHOH(HFPOアミドール)を米国特許公開第2004−0077775号、表題「フッ素化ポリマーを含むフルオロケミカル組成物及びこれによる繊維状基材の処理(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorinated Polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」に記載されているものと同様の手順により調製した。
【0114】
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)をサートマー社(Sartomer Company)(ペンシルバニア州ウォリントン(Warrington))から入手した。
【0115】
ポリ(メチルメタクリレート)プライマー(SHP(商標)401)をGEシリコーンズ(GE Silicones)(ニューヨーク州ウォーターフォード(Waterford))から入手した。
【0116】
メチルシルセスキオキサン溶液(SHC(商標)1200)をGEシリコーンズ(GE Silicones)(ニューヨーク州ウォーターフォード(Waterford))から入手した。
【0117】
N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAPTMS)をユニオンカーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス社(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.)(コネチカット州ダンブリー(Danbury))から入手した。
【0118】
ビス(プロピル−3−トリメトキシシラン)アミンをゲレスト(Gelest)(ペンシルバニア州モリスヴィル(Morrisville))から入手した。
【0119】
アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)をシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手した。
【0120】
メルカプトプロピルトリメトキシシランをシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手した。
【0121】
ペンタエリスリトールトリアリルエーテルを70%工業銘柄溶液として、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手した。
【0122】
ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)をシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手した。
【0123】
ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)をシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手した。
【0124】
ポリカーボネート板をミネソタ・モールド&エンジニアリング(Minnesota Mold & Engineering)(ミネソタ州バドネイスハイツ(Vadnais Heights))により成型した(GEレキサン(Lexan)(商標)101、インディアナ州マウントバーノン(Mount Vernon)から)。
【0125】
(実施例1)
30g、0.15当量のイソシアネート、すなわちデスモデュア(Desmodur)N3300A、40.3g、0.05モルのHFPOアミドール、43.8gのペンタエリスリトールアリルエーテル溶液(31g、0.12モルを含有)、及び445gのMIBKを1Lフラスコ中に充填した。混合物を攪拌しながら80℃に加熱して、溶液を形成した。溶液をNで1分間にわたってパージして、DBTDL及びDABCO 33LVをそれぞれ3滴溶液に加えた。次に、得られた溶液を110℃で15時間にわたって加熱した。15時間後に、試料の赤外光スペクトルはNCO基に対応するピークを有さなかった。次に溶液を70℃に冷ましておき、70.7g、0.36モルのメルカプトプロピルトリメトキシシランをこれに加えた。溶液をNで3分間にわたってパージした後に、0.7gのバゾ(Vazo)67をこれに加え、溶液を70℃で16時間にわたって加熱した。この期間に続いて、試料の赤外光スペクトルから分かるような残存しているアリル基は存在しなかった。生成物フルオロケミカルウレタンシランは28%固形分量を有する金色の溶液(golden solution)であった。
【0126】
(実施例2)
30g、0.15当量のイソシアネート、すなわちデスモデュア(Desmodur)N3300A、40.3g、0.05モルのHFPOアミドール、10.7g、0.03モルのMEFBSE、33gのペンタエリスリトールアリルエーテル溶液(23g、0.09モルを含有)、及び445gのMIBKを1Lフラスコ中に充填した。混合物を攪拌しながら80℃に加熱して、溶液を形成した。溶液をNで1分間にわたってパージして、DBTDL及びDABCO 33LVをそれぞれ3滴溶液に加えた。得られた溶液を110℃で15時間にわたって加熱した。15時間後に、試料の赤外光スペクトルはNCO基に対応するピークを有さなかった。次に溶液を70℃に冷ましておき、53g、0.26モルのメルカプトプロピルトリメトキシシランをこれに加えた。得られた溶液をNで3分間にわたってパージした後に、0.7gのバゾ(Vazo)67をこれに加え、溶液を70℃で16時間にわたって加熱した。この期間に続いて、試料の赤外光スペクトルから分かるような残存しているアリル基は存在しなかった。生成物フルオロケミカルウレタンシランは25%固形分量を有する金色の溶液(golden solution)であった。
【0127】
(実施例3)
30g、0.15当量のイソシアネート、すなわちデスモデュア(Desmodur)N100、28.6g、0.05モルのHFPOアミドール、43.8gのペンタエリスリトールアリルエーテル溶液(31g、0.12モルを含有)、及び445gのMIBKを1Lフラスコ中に充填した。混合物を攪拌しながら80℃に加熱して、溶液を形成した。溶液をNで1分間にわたってパージして、DBTDL及びDABCO 33LVをそれぞれ3滴溶液に加えた。得られた溶液を110℃で15時間にわたって加熱した。15時間後に、試料の赤外光スペクトルはNCO基に対応するピークを有さなかった。次に溶液を70℃に冷まさせ、70.7g、0.36モルのメルカプトプロピルトリメトキシシランをこれに加えた。得られた溶液をNで3分間にわたってパージした後に、0.7gのバゾ(Vazo)67をこれに加え、溶液を70℃で16時間にわたって加熱した。この期間に続いて、試料の赤外光スペクトルから分かるような残存しているアリル基は存在しなかった。生成物フルオロケミカルウレタンシランは27.2%固形分量を有する金色の溶液(golden solution)であった。
【0128】
(実施例4)
28.6g、0.15当量のイソシアネート、すなわちデスモデュア(Desmodur)N100、40.3g、0.05モルのHFPOアミドール、10.7g、0.03モルのMeFBSE、33gのペンタエリスリトールアリルエーテル溶液(23g、0.09モルを含有)、及び445gのMIBKを1Lフラスコ中に充填した。混合物を攪拌しながら80℃に加熱して、溶液を形成した。溶液をNで1分間にわたってパージして、DBTDL及びDABCO 33LVをそれぞれ3滴溶液に加えた。得られた溶液を110℃で15時間にわたって加熱した。15時間後に、試料の赤外光スペクトルはNCO基に対応するピークを有さなかった。次に溶液を70℃に冷ましておき、53g、0.26モルのメルカプトプロピルトリメトキシシランをこれに加えた。得られた溶液をNで3分間にわたってパージした後に、0.7gのバゾ(Vazo)67をこれに加え、溶液を70℃で16時間にわたって加熱した。この期間に続いて、試料の赤外光スペクトルから分かるような残存しているアリル基は存在しなかった。生成物フルオロケミカルウレタンシランは25.6%固形分量を有する金色の溶液(golden solution)であった。
【0129】
実施例1〜4の材料を使用して、上記「ポリカーボネート板上コーティングの形成方法」に従って、ポリカーボネート板上にコーティングを調製した。次に、得られたコーティングの性能を上記のテーバーヘーズ変化、防インク性試験、防インク性耐性試験、スチールウール試験及び溶媒試験を使用して評価した。
【0130】
下の表1は、フルオロケミカルウレタンシランを加えずにSHC−1200を使用して作製したコーティング、及び実施例1〜4の材料についてのテーバーヘーズ試験、防インク性試験及び防インク性耐性試験の結果を要約する。
【0131】
【表2】

【0132】
下の表2は、フルオロケミカルウレタンシランを加えずにSHC−1200を使用して作製したコーティング、及び実施例1〜4の材料についてのスチールウール試験の結果を要約する。
【0133】
【表3】

【0134】
下の表3は、フルオロケミカルウレタンシランを加えずにSHC−1200を使用して作製したコーティング、及び実施例2〜4の材料についての溶媒試験の結果を要約する。
【0135】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】

を有する化合物であって、式中、Rはフッ素含有基であり、
はポリイソシアネートの残基であり、
は次式:
【化2】

を有し、式中、
は、−O−又は−NR−であり、式中、RはH又はC〜Cアルキルであり、
は、多価アルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
は、二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基は所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、並びに
qは1〜5であり、
x及びyはそれぞれ独立して少なくとも1であり、並びに、zは1又は2である、化合物。
【請求項2】
が、一価のペルフルオロアルキル基及びペルフルオロオキシアルキル基、並びに二価のペルフルオロアルキレン基及びペルフルオロオキシアルキレン基から選択されるフッ素含有基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】

【化3】

であり、式中、
は一価のペルフルオロアルキル基若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロオキシアルキレン基であり、
Qは共有結合又は価数zの多価アルキレン基であり、
は−O−、−NR−又は−S−であり、式中、RはH又はC〜Cアルキルであり、
yは1又は2であり、並びに、
zは1又は2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、−(C2n)−、−(C2nO)−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2nO)−、−(C2nCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−及びこれらの組み合わせ(式中、nは1〜4であり、Zはペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基又はペルフルオロエーテル基である)からなる群から選択されるペルフルオロ化反復単位を含むペルフルオロオキシアルキレン基を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が次式:
W−R−O−R−(R
の基を含み、式中、
Wは、一価のペルフルオロオキシアルキルについてはFであり、二価のペルフルオロオキシアルキレンについては開殻価電子(「−」)であり、
はペルフルオロアルキレン基を示し、
は、1、2、3若しくは4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンオキシ基又はこのようなペルフルオロアルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を示し、
はペルフルオロアルキレン基を示し、並びに、
qは0又は1である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
前記ペルフルオロオキシアルキレン基が、−[CF−CF−O]−、−[CF(CF)−CF−O]−、−[CFCF−O]−[CFO]−、−[CFCFCFCF−O]及び−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−(式中、r、s、t及びuはそれぞれ1〜50の整数である)の1つ以上から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
が一価のペルフルオロオキシアルキレン基であり、zが1である、請求項1に記載のペルフルオロポリエーテルシラン。
【請求項8】
シラン基対−NH−C(O)−X−基のモル比が1:1を超える、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
がフッ素化ポリオールから誘導される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
エチレン性不飽和基へのチオシランのフリーラジカル付加により誘導される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Yがハロゲン、C〜Cアルコキシ基、又はC〜Cアシルオキシ基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物のうちの少なくとも1種、及び溶媒を含むコーティング組成物。
【請求項13】
シルセスキオキサンを更に含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物の水性分散体又は懸濁液を含む組成物。
【請求項15】
側鎖エチレン性不飽和基を有するフルオロケミカルウレタン化合物との、チオシランのフリーラジカル付加反応生成物を含む化合物であって、前記フルオロケミカルウレタン化合物が、ポリイソシアネートと、求核フッ素化化合物と、求核エチレン性不飽和化合物との反応生成物を含む、化合物。
【請求項16】
次式:
【化4】

のウレタン化合物にチオシランをフリーラジカル付加する工程を含む請求項1に記載の化合物を調製する方法であって、式中、
はペルフルオロ化基であり、
はポリイソシアネートの残基であり、
は−O−又は−NR−であり、式中、RはH又はC〜Cアルキルであり、
は、二価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基が1個以上のカテナリー酸素原子を含有し、
zは1又は2であり、並びに、
qが1〜5である、方法。
【請求項17】
前記チオシランが次式:
【化5】

を有し、式中、
が二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基が所望により1個以上のカテナリー酸素原子を含有し、
Yは、加水分解性基であり、
が一価のアルキル又はアリール基であり、並びに、
pが1、2、又は3である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
部分−R−(CH=CH)がビニル基、アリル基又はアリルオキシ基を含む、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513294(P2010−513294A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541460(P2009−541460)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/085340
【国際公開番号】WO2008/073689
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】