説明

表面処理フィルムおよびその製造方法

【課題】表面形状を調整することなく、ギラツキの発生が抑制された表面処理フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の表面処理フィルムは、透光性樹脂と透光性微粒子とを含む光拡散層を有し、当該光拡散層中における透光性微粒子の体積充填率をP(%)、光拡散層の厚さをl(μm)とした場合に、下記の式(1)で規定される線充填指数A(μm)は、4.5以上である。
A=l×(P/100) 式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散層を有する表面処理フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。従来、このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、および反射光を利用して表示を行なう携帯電話などにおいては、画像表示装置の表面に外光の映り込みを防止するための処理が施されている。このような画像表示装置の表面に施される処理は、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理と、表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理とに大別される。前者の無反射処理は、均一な光学膜厚の多層膜を形成する必要があるため、コスト高になる。これに対して、後者の防眩処理は、比較的安価に行なうことができるため、大型のパーソナルコンピュータやモニタなどの用途に広く用いられている。
【0003】
上記画像表示装置の防眩処理は、典型的には、画像表示装置の表面に防眩性が付与された防眩フィルムを貼合することによりなされる。防眩フィルムは従来、たとえば、微粒子を分散させた樹脂溶液を、基材シート上に膜厚を調整して塗布し、該微粒子を塗布膜表面に露出させることでランダムな表面凹凸を基材シート上に形成する方法などにより製造されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、このような防眩フィルムによると、画像表示素子から前方に向かって発せられる光が防眩フィルムの凹凸形状を透過する際に、ギラツキ(シンチレーション)と言われるきらきらと光る輝きが発生し、表示画面の視認性が低下する問題があった。
【0004】
なお、画像表示装置の表面には、広視野角を得るための光拡散フィルムなどの表面処理フィルムが用いられることもあるが、このような光拡散フィルムにおいても、ギラツキが生じる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−152268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、バインダー樹脂とこれに分散される微粒子との間に屈折率差を設けて光を散乱させるとともに、表面形状を調整することによりギラツキを解消することが記載されている。しかしながら、最近の画像表示装置の高精細化に伴なって、画像表示装置の画素と表面処理フィルムの凹凸形状とが干渉することによりギラツキが生じやすく、このようなギラツキを十分に抑制することは難しかった。また、表面処理フィルムの表面形状を調整しているため、表示画面に白ちゃけが生じたり、表示品質が損なわれたりする問題があった。
【0007】
本発明は、表面形状を調整することなく、ギラツキの発生が抑制された表面処理フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透光性樹脂と透光性微粒子とを含む光拡散層を有する表面処理フィルムにおいて、パターン遮蔽効果と密接に相関がある線充填指数を見出し、線充填指数を所定値以上とすることにより、ギラツキを有効に抑制できることを見出しなされたものである。
【0009】
本発明の表面処理フィルムは、透光性樹脂と透光性微粒子とを含む光拡散層を有し、上記光拡散層中における透光性微粒子の体積充填率をP(%)、光拡散層の層厚をl(μm)とした場合に、下記の式(1)で規定される線充填指数A(μm)が4.5以上である。
【0010】
A=l×(P/100) 式(1)
上記光拡散層は、上記透光性微粒子の体積充填率が好ましくは25%以上である。
【0011】
さらに、上記光拡散層において、透光性樹脂と透光性微粒子との屈折率の差が0.02〜0.05であることが好ましい。
【0012】
上記透光性微粒子は、好ましくは、第1透光性微粒子と、第1透光性微粒子より重量平均粒径が大きい第2透光性微粒子とを含む。第1透光性微粒子に対する第2透光性微粒子の重量平均粒径の比率は、好ましくは1より大きくかつ8以下である。上記光拡散層の層厚は、好ましくは9μm以上30μm以下である。
【0013】
また、本発明は、上記表面処理フィルムを製造する方法であって、上記光拡散層は、透光性樹脂および透光性微粒子を含有する塗工液を塗工して塗工層を形成する塗工工程と、塗工層の表面に平坦面を押し当て塗工層を圧縮する圧縮工程と、塗工層を硬化する硬化工程とを有する方法により形成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の表面処理フィルムの好ましい例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の表面処理フィルムの好ましい例を示す概略断面図である。
【図3】(a)1種類の透光性微粒子を含む、(b)2種類の透光性微粒子を含む光拡散層の断面図である。
【図4】試験例1におけるギラツキの評価方法を模式的に示す図である。
【図5】試験例1における大粒子の配合比と線充填指数および透過画像鮮明度の関係を示す図である。
【図6】試験例2における拡散光強度の測定方法を模式的に示す図である。
【図7】実施例1および実施例2の表面処理フィルムの拡散角度に対する拡散光強度の関係を示す図である。
【図8】実施例1の表面処理フィルムの光拡散層の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図9】実施例2の表面処理フィルムの光拡散層の光学顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[表面処理フィルム]
本発明の表面処理フィルムは、光拡散層を有する。光拡散層は、たとえば基材フィルム上に積層されている。表面処理フィルムは、上述の光拡散層および基材フィルム以外の別の層を有してもよい。
【0016】
図1および図2は、本発明の表面処理フィルムの好ましい例を示す概略断面図である。本発明に係る図1および図2に示されるに示される表面処理フィルム100,300は、基材フィルム101と、基材フィルム101上に積層された光拡散層102とを備える。光拡散層102は、透光性樹脂103を基材とする層であって、透光性樹脂103中に透光性微粒子104が分散されてなる。
【0017】
本発明の表面処理フィルムは、図1および図2に示される例のように、光拡散層102の表面が平坦面から構成されていてもよく、あるいは凹凸面から構成されていてもよい。また、光拡散層102中の透光性微粒子104は、図1に示される例のように1種類の透光性微粒子104からなるものであってもよいし、図2に示される例のように重量平均粒径が異なる2種類の透光性微粒子104a,104bからなるものであってもよいし、あるいは3種類以上の透光性微粒子からなるものであってもよいが、重量平均粒径が異なる2種類以上の透光性微粒子からなる構成の方が後述する線充填指数、体積充填率が所定の値以上となるように構成することが容易であるため好ましい。
【0018】
<光拡散層中の透光性微粒子の線充填指数>
光拡散層中102の透光性微粒子104の以下の式(1)で算出される線充填指数A(μm)は4.5以上である。さらには、20以下であることが好ましい。
【0019】
A=l×(P/100) 式(1)
式(1)において、P(%)は体積充填率を表し、l(μm)は光拡散層の層厚を表す。
【0020】
線充填指数A(μm)が4.5以上である場合、透過画像鮮明度が十分に低下し、高いパターン遮蔽効果が得られる。高いパターン遮蔽効果は、ギラツキの防止に寄与する。
【0021】
<光拡散層中の透光性微粒子の体積充填率>
光拡散層102中の透光性微粒子104の体積充填率は、好ましくは25%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。透光性微粒子104の体積充填率がこの範囲内にあることにより、光拡散層102による高いパターン隠蔽効果が得られる。また、同時に高密度充填であるため透光性微粒子104が規則的に配置されるので、正面方向のコントラストの低減が少なく、光を広角に散乱でき、高画質を保つことができる。高いパターン遮蔽効果は、ギラツキの防止に寄与する。
【0022】
本明細書でいう透光性微粒子104の充填率は、次のように算出する。まず、光学顕微鏡によって光拡散層102の画像を取得し、50μm×50μの領域を無作為に選定し透光性微粒子104の数を計測し(5回平均)、総微粒子数を透光性微粒子の配合によって分け、各微粒子の体積から微粒子が占める総体積を算出する。そして、光拡散層102の平均層厚を測定し、50μm×50μmの面積を掛け、測定領域における光拡散層の総体積とする。透光性微粒子104が占める総体積を光拡散層の総体積で除し、100を掛けることによって透光性微粒子104の体積充填率を得る。
【0023】
<光拡散層>
図1および図2に示す表面処理フィルム100,300は、基材フィルム101上に積層された光拡散層102を備える。光拡散層102は、透光性樹脂103を基材とする層であって、透光性樹脂103中に透光性微粒子104が分散されてなる。
【0024】
透光性樹脂103としては、透光性を有するものであれば特に限定はなく、たとえば、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの電離放射線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂、金属アルコキシドの硬化物などを用いることができる。電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合は、電離放射線の照射または加熱により当該樹脂を硬化させて透光性樹脂103が形成される。この中でも、高い硬度を有し、液晶表示装置表面に設ける表面処理フィルムとして用いる場合に、高い耐擦傷性を付与できることから、電離放射線硬化型樹脂が好適である。
【0025】
電離放射線硬化型樹脂としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート;ジイソシアネートと多価アルコールおよびアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等とから合成されるような多官能のウレタンアクリレートなどが挙げられる。また、これらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。
【0026】
熱硬化型樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂のほか、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0027】
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニルおよびその共重合体、塩化ビニルおよびその共重合体、塩化ビニリデンおよびその共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;アクリル樹脂およびその共重合体、メタクリル樹脂およびその共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0028】
金属アルコキシドとしては、珪素アルコキシド系の材料を原料とする酸化珪素系マトリックス等を使用することができる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等であり、加水分解や脱水縮合により無機系または有機無機複合系マトリックス(透光性樹脂)とすることができる。
【0029】
また、本発明で使用する透光性微粒子104としては、透光性を有する有機微粒子または無機微粒子を用いることができる。たとえば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体等からなる有機微粒子や、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス等からなる無機微粒子等が挙げられる。また、有機重合体のバルーンやガラス中空ビーズも使用できる。透光性微粒子104として、アクリル樹脂、またはポリスチレンからなる無機微粒子が好ましく用いられる。透光性微粒子104は、1種類の微粒子から構成されていてもよいし、2種類以上の微粒子を含んでいてもよい。透光性微粒子104の形状は、球状、扁平状、板状、針状、不定形状等いずれであってもよいが、球状または略球状が好ましい。
【0030】
ここで、透光性微粒子104の重量平均粒径は、0.5μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上9μm以下であることがより好ましい。透光性微粒子104の重量平均粒径が0.5μm未満であると、波長領域が380nmから800nmの可視光を十分に散乱しない場合がある。また、重量平均粒径が15μmを超える場合、光拡散層102全体の厚みが厚くなり、ディスプレイの薄型化の妨げとなる場合がある。なお、透光性微粒子104の重量平均粒径は、コールター原理(細孔電気抵抗法)を用いたコールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)を用いて測定される。
【0031】
透光性微粒子104は、図2に示す例のように、第1透光性微粒子104bと、第1透光性微粒子より重量平均粒径が大きい第2透光性微粒子104aとを含むことが好ましい。このような2種類の透光性微粒子104を配合することにより、透光性微粒子104の線充填指数を4.5以上、さらには体積充填率を25%以上とすることが容易となる。
【0032】
図3を用いて、重量平均粒径が異なる複数種類の透光性微粒子を用いることにより、光拡散層102中の透光性微粒子の体積充填率を向上させることができる原理を説明する。図3(a)は図1に示すような1種類の透光性微粒子を含む光拡散層102の断面図の一例を示し、図3(b)は図2に示すような第1透光性微粒子104bと第2透光性微粒子104aとを含む光拡散層の断面図の一例を示す。図3(a)に示すような単一粒径の透光性微粒子を用いた場合、体積充填率は理論上約74%を上限とし、実際に構成する場合はそれほど高くすることができない。一方、図3(b)に示すように複数の異なる粒径の透光性微粒子が含まれる場合は、各粒子の粒径、配合量を適宜選択することによりより高い充填率を実現することが可能となる。
【0033】
第1透光性微粒子104bに対する第2透光性微粒子104aの重量平均粒径の比率は1より大きくかつ8以下であることが好ましい。粒径が大きい方の第2透光性微粒子104aの重量平均粒径は1〜12μmであることが好ましい。
【0034】
また、透光性樹脂および透光性微粒子を含有する塗工液を塗工して塗工層を形成する塗工工程と、塗工層の表面に平坦面を押し当て塗工層を圧縮する圧縮工程と、塗工層を硬化する硬化工程とを有する方法により光拡散層を形成することによっても、透光性樹脂中103の透光性微粒子104の線充填指数を4.5以上、さらには体積充填率を25%以上とすることが容易となり、上記所定の値以上の体積充填率、線充填指数を有する表面処理フィルムを作製することが容易となる。塗工層の表面を圧縮することにより、光拡散層中の透光性微粒子の上下方向の配置が均一化され、したがって体積充填率、線充填指数を所望の値以上とする効果を有し、さらに高いパターン隠蔽効果が得られる。当該平坦面は、均一な平面を有しているものであれば限定されることはなく、たとえば、ガラス、金属などからなる、板状またはロール状のものを用いることができる。また、圧縮による効果は、微細凹凸エンボスを有する平面でも得ることができる。
【0035】
透光性微粒子104の屈折率は、透光性樹脂103の屈折率と異なることが好ましく、その差は0.02〜0.05であることが好ましい。透光性微粒子104と透光性樹脂103との屈折率差を上記範囲内とすることによって、透光性微粒子104と透光性樹脂103との屈折率差による適度な内部散乱が生じ、光拡散機能を有効に付与することが可能なる。
【0036】
光拡散層102の厚さは、9μm以上30μm以下であることが好ましい。9μm未満の場合、透光性微粒粒子104が光拡散層102の表面から突出することがあり、見映えを損なう。一方、30μmを超えると、表面処理フィルムの全体が厚くなり、カールしやすくなったり、割れやすくなったりするため、取り扱いの点で不利である。
【0037】
なお、本発明の表面処理フィルムは、図1および図2に示す光拡散層102上(基材フィルム101とは反対側の面)に積層された反射防止層をさらに備えていてもよい。反射防止層は、反射率を限りなく低くするために設けられるものであり、反射防止層の形成により、表示画面への映り込みを防止することができる。反射防止層としては、光拡散層102の屈折率よりも低い材料から構成された低屈折率層;光拡散層102の屈折率より高い材料から構成された高屈折率層と、この高屈折率層の屈折率より低い材料から構成された低屈折率層との積層構造などを挙げることができる。
【0038】
<基材フィルム>
基材フィルム101の材料は特に限定されず、公知の材質を使用できる。たとえば、トリアセチルセルロース(TAC)のようなセルロースアセテート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂のような環状オレフィン系樹脂などを包含する合成高分子、また、二酢酸セルロースや三酢酸セルロースのようなセルロース系樹脂などを包含する天然高分子が挙げられる。基材フィルム101は、無色透明であることが好ましいが、面の識別などを目的として、欠陥検出性に支障のない範囲で、有色であっても半透明であってもよい。
【0039】
上述の材料を用いて基材フィルム101を製造する方法は特に限定されることはなく、溶剤キャスト法、押出法など、公知の方法により製造することができる。また、フィルム成形後に、一軸延伸または二軸延伸等の延伸処理を施した基材フィルム101を用いることができる。基材フィルム101として、好ましくはTACや、延伸処理を施したポリエステル系樹脂からなる基材フィルム101が用いられる。
【0040】
延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向、その進行方向と垂直の方向、またはその両方へ延伸される。加熱炉の温度は、通常、基材フィルム101を構成する樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃までの範囲である。
【0041】
基材フィルム101として用いられるポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分とするフィルムであり、ポリエステルを主成分とする単層フィルムであってもよいし、ポリエステルを主成分とする層を有する多層フィルムであってもよい。また、これら単層フィルム又は多層フィルムの両面又は片面に表面処理が施されたものであってもよく、この表面処理は、コロナ処理、ケン化処理、熱処理、紫外線照射、電子線照射等による表面改質であってもよいし、高分子や金属等の塗布や蒸着等による薄膜形成であってもよい。ポリエステルフィルム全体に占めるポリエステルの重量割合は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0042】
ポリエステルとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0043】
ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する構成単位と、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する構成単位とを有するポリエステルであり、全繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるのが好ましく、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、4,4’−ジカルボキシジフェニール、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等のジカルボン酸成分や、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分が挙げられる。
【0044】
これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記カルボン酸成分やジオール成分と共に、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が用いられていてもよい。ポリエチレンテレフタレートの製造法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、並びに必要に応じて他のジカルボン酸及び/又は他のジオールを直接反応させるいわゆる直接重合法や、テレフタル酸のジメチルエステルとエチレングリコール、並びに必要に応じて他のジカルボン酸のジメチルエステル及び/又は他のジオールをエステル交換反応させる、いわゆるエステル交換反応法等の任意の製造法を適用することができる。
【0045】
ポリエステルには、必要に応じて公知の添加剤を配合してもよく、その例としては、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤が挙げられる。ただし、ポリエステルフィルムを防眩フィルムの基材フィルムとして用いる場合は、一般に透明性が必要とされるため、添加剤の添加量は最小限にとどめておくことが好ましい。
【0046】
ポリエステルフィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されていることが好ましい(このように一軸延伸又は二軸延伸されたポリエステルフィルムを以下単に「延伸ポリエステルフィルム」とも記す)。延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コスト等に優れたフィルムであり、このようなポリエステルフィルムを用いた光学フィルムは、機械的強度等に優れるとともに、厚みの低減を図ることができる。
【0047】
ポリエステルをフィルム状に成形し、一軸延伸処理又は二軸延伸処理を施すことにより、延伸されたポリエステルフィルムを作製することができる。延伸処理を行うことにより、機械的強度の高いポリエステルフィルムを得ることができる。延伸されたポリエステルフィルムの作製方法は任意であり、特に限定されるものではないが、たとえば一軸延伸ポリエステルフィルムとしては、ポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度においてテンターで横延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。また、二軸延伸ポリエステルフィルムでは、ポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度においてテンターで縦延伸後、熱固定処理を施し、次いで横延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。この場合、延伸温度は通常80〜130℃、好ましくは90〜120℃であり、延伸倍率は通常2.5〜6倍、好ましくは3〜5.5倍である。延伸倍率が低いと、ポリエステルフィルムが十分な透明性を示さない傾向にある。
【0048】
また、配向主軸の歪みを低減するために、延伸後熱固定処理を行う前に、ポリエステルフィルムを弛緩処理することが望ましい。弛緩処理時の温度は通常90〜200℃、好ましくは120〜180℃である。弛緩量は、延伸条件によって異なり、弛緩処理後のポリエステルフィルムの、150℃における熱収縮率が2%以下になるように弛緩量及び弛緩処理時の温度を設定することが好ましい。
【0049】
熱固定処理温度は180〜250℃とすることができ、好ましくは200〜245℃である。熱固定処理においては、まず定長で熱固定処理を行った後、配向主軸の歪みが低減され、耐熱性等の強度を向上させるために、さらに幅方向の弛緩処理を行うことが好ましい。この場合の弛緩量は、弛緩処理後のポリエステルフィルムの、150℃における熱収縮率が1〜10%となるように調整されることが好ましく、より好ましくは2〜5%である。本発明において用いられる延伸ポリエステルフィルムの配向主軸の歪みの最大値は、通常10度以下、好ましくは8度以下、さらに好ましくは5度以下である。配向主軸の最大値が10度より大きいと、液晶表示画面に貼合したときに色付不良が大きくなる傾向にある。なお、延伸ポリエステルフィルムの「配向主軸の歪みの最大値」は、たとえば、大塚電子株式会社製の位相差フィルム検査装置RETSシステムにより測定することができる。
【0050】
基材フィルム101の厚みは、20〜100μmとすることが好ましく、30〜80μmとすることがより好ましい。基材フィルム101の厚みが20μm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みが100μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。
【0051】
<表面処理フィルムの製造方法>
次に、図1および図2に示す表面処理フィルムを製造するための方法について説明する。表面処理フィルム100,300は、好ましくは、次の工程(A)および(B)を含む方法によって製造される。
(A)基材フィルム101上に、透光性微粒子104が分散された、透光性樹脂を含有する塗工液を塗工して塗工層を形成する塗工工程、および、
(B)上記塗工層を硬化する硬化工程。
【0052】
上記工程(A)で用いる塗工液は、透光性微粒子104、光拡散層102を構成する透光性樹脂103またはこれを形成する樹脂(たとえば、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシド)、および必要に応じて溶媒等のその他の成分を含む。透光性樹脂103を形成する樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合、上記塗工液は、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含む。光重合開始剤としては、たとえば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキサジアゾール系光重合開始剤などが用いられる。また、光重合開始剤として、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等も用いることができる。光重合開始剤の使用量は、通常、塗工液に含有される樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部であり、好ましくは、1〜5重量部である。なお、表面処理フィルムの光学特性および表面形状を均質なものとするために、塗工液中の透光性微粒子104の分散は等方分散であることが好ましい。
【0053】
上記塗工液の基材フィルム上への塗布は、たとえば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ダイコート法などによって行なうことができる。塗工液の塗工にあたっては、上述のように、硬化後の光拡散層102の層厚が、9μm以上30μm以下となるように、塗工層厚を調整することが好ましい。
【0054】
塗工液の塗工性の改良または光拡散層102との接着性の改良を目的として、基材フィルム101の表面(光拡散層側表面)には、各種表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、酸表面処理、アルカリ表面処理、紫外線照射処理などが挙げられる。また、基材フィルム上に、たとえばプライマー層等の他の層を形成し、この他の層の上に、塗工液を塗工するようにしてもよい。
【0055】
また、本発明の表面処理フィルムと偏光子との接着性を向上させるために、基材フィルム101の表面(光拡散層とは反対側の表面)を各種表面処理によって親水化しておくことが好ましい。
【0056】
上記工程(B)においては、塗工層を硬化する。透光性樹脂103を形成する樹脂として電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合は、上記塗工層を形成し、必要により乾燥(溶媒の除去)を行ない、好ましくはその塗工層の表面に平坦面を押し当て塗工層を圧縮した状態で、または圧縮させた後、電離放射線の照射(電離放射線硬化型樹脂を用いる場合)または加熱(熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合)により塗工層を硬化する。電離放射線としては、塗工液に含まれる樹脂の種類に応じて紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、これらの中で紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが得られることから紫外線が好ましい。
【0057】
紫外線の光源としては、たとえば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。これらの中でも、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンアーク、メタルハライドランプが好ましく用いられる。
【0058】
また、電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0059】
[偏光板]
本発明の表面処理フィルムは、たとえば、偏光子の表面に貼合され、偏光子保護フィルムとして用いることができる。本発明の表面処理フィルムは、ギラツキの発生が抑えられ、広視野角が得られることから、これを用いた偏光板は、これと同様、ギラツキの発生が抑えられ、広視野角の偏光板となる。偏光子としては、公知の偏光子を用いることができる。偏光子は、一般に、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる。偏光子の少なくとも一方の面に本発明の表面処理フィルムを貼合して、偏光板を構成する。
【0060】
[画像表示装置]
本発明の表面処理フィルムを用いた偏光板は、画像表示素子とともに用いられ画像表示装置を構成する。ここで、画像表示素子は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行う液晶パネルが代表的である。このように、本発明の表面処理フィルムを備えた画像表示装置は、ギラツキの発生が抑えられる上、広視野角の画像表示が可能となる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における表面処理フィルムの光学特性、透光性微粒子の重量平均粒径の測定方法、光拡散層の層厚の測定方法は次のとおりである。また、線充填指数および体積充填率の算出方法は上述のとおりである。
【0062】
(a)表面処理フィルムの透過画像鮮明度
本発明の表面処理フィルムは、透過画像鮮明度測定試験における透過画像鮮明度C(%)の総和値T(%)を以下のように測定・算出した。
【0063】
透過画像鮮明度測定試験は、試験片(表面処理フィルム)の透過光の光量を、透過光の光線軸に直交し、速度10mm/minで移動する幅n(mm)の光学くしを通して測定した。具体的には、写像性測定器(スガ試験機(株)製)を用いて測定した。写像性測定器は、スリットを透過した光を平行光線として、試験片に垂直に入射させ、その反射光を移動する光学くしを通して検知する光学装置と、検知した光量の変動を波形として記録する計測系装置とから構成される。光学くしは、明部と暗部の幅の比が1:1で、その幅n(mm)は、0.125、0.5、1、2の4種類とし、移動速度は10mm/minとした。
【0064】
透過画像鮮明度T(%)は、透過画像鮮明度測定試験において光線軸上に光学くしの透過部分(明部)があるときの反射光量の最高値をM、光線軸上に光学くしの遮光部分(暗部)があるときの反射光量の最小値をmとした場合に、下記の式(2):
={(M−m)/(M+m)}×100 式(2)
で算出される。
【0065】
総和値T(%)は、光学くしの幅n(mm)が、それぞれ0.125、0.5、1、2である場合の4つの透過画像鮮明度C0.125(%)、C0.5(%)、C(%)、C(%)の総和値であり、したがって取りうる最大値は400%である。
【0066】
(b)透光性微粒子の重量平均粒径
コールター原理(細孔電気抵抗法)を用いたコールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)を用いて測定した。
【0067】
(c)光拡散層の層厚
表面処理フィルムの層厚をNIKON社製 DIGIMICRO MH−15(本体)およびZC−101(カウンター)を用いて測定し、基材フィルムの厚さ80μmを測定層厚から差し引くことにより光拡散層の層厚を測定した。
【0068】
<試験例1>
(1)鏡面金属製ロールの作製
直径200mmの鉄ロール(JISによるSTKM13A)の表面に工業用クロムめっき加工を行ない、ついで表面を鏡面研磨して鏡面金属製ロールを作製した。得られた鏡面金属製ロールのクロムめっき面のビッカース硬度は1000であった。なお、ビッカース硬度は、超音波硬度計MIC10(Krautkramer社製)を用い、JIS Z 2244に準拠して測定した(以下の例においてもビッカース硬度の測定法は同じ)。
【0069】
(2)表面処理フィルムの作製
ペンタエリスリトールトリアクリレート60重量部、および多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)40重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液に混合し、固形分濃度60重量%となるように調整して紫外線硬化性樹脂組成物を得た。なお、該組成物からプロピレングリコールモノメチルエーテルを除去して紫外線硬化した後の硬化物の屈折率は1.53であった。
【0070】
次に、上記紫外線硬化性樹脂組成物の固形分100重量部に対して、透光性微粒子として重量平均粒径が7.2μmのポリスチレン系粒子(大粒子)と重量平均粒径が5.5μmのポリスチレン系粒子(小粒子)とを合計で35重量部、光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を5重量部添加し、固形分率が60重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈して塗工液を調製した。
【0071】
この塗工液を、基材フィルムとして用いる厚さ80μmのTAC上に塗工し、80℃に設定した乾燥機中で1分間乾燥させた。乾燥後の基材フィルムを、上記(1)で作製した鏡面金属製ロールの鏡面に、紫外線硬化性樹脂組成物層がロール側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態で基材フィルム側より、強度20mW/cmの高圧水銀灯からの光をh線換算光量で300mJ/cmとなるように照射して、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させ、平坦な表面を有する厚さ約11μmの光拡散層と基材フィルムとからなる、図2に示す構成の表面処理フィルムを得た。これを試験例1の表面処理フィルムとした。試験例1の表面処理フィルムとして、大粒子の配合比率が重量比で0%、25%、50%、75%、100%である場合の表面処理フィルムを作製した。
【0072】
(3)ギラツキの評価
ギラツキは、以下の方法で評価した。まず、図4(a)に平面図で示すようなユニットセル60のパターンを約40mm×約25mmの範囲に規則的に配列させたフォトマスクを用意した。ユニットセル60においては、透明な基板上に、線幅10μmでカギ形のクロム遮光パターン61が形成され、そのクロム遮光パターン61の形成されていない部分が開口部62となっている。このようなフォトマスクにユニットセルの寸法に応じて「解像度呼び」〔単位:ppi(pixel per inch)〕を与えた。ここで用いた解像度呼び240ppiのフォトマスクのユニットセル縦×ユニットセル横は105μm×35μm、開口部縦×開口部横は95μm×25μmである。
【0073】
次に、図4(b)に示すように、フォトマスク63のクロム遮光パターン61を上にしてライトボックス65(ライトボックス内にはライト66が設置されている)に置き、1.1mm厚のガラス板67に20μm厚みの粘着剤で表面処理フィルム70を貼合したサンプルをフォトマスク63上に置き、サンプルから約30cm離れた場所(目視観察場所69)から目視観察することにより、ギラツキ発生の有無を次の基準:
1:比較的ギラツキ発生の少ないもの
2:比較的ギラツキ発生があるもの
で官能評価した。また、体積充填率P(%)、光拡散層の層厚l(μm)を測定し、これらの値から線充填指数(μm)を求めた。さらに透過画像鮮明度C0.125(%)、C0.5(%)、C(%)、C(%)を測定し、その総和値T(%)を求めた。以上の結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
図5は、表1に示す大粒子の配合比と、線充填指数および透過画像鮮明度の関係を示す。表1に示す結果からわかるように、線充填指数4.5以上である場合、ギラツキの発生はほとんどなかった。また、図5に示す結果からわかるように、最表面の形状が略等しいとき、線充填指数と透過画像鮮明度は相関関係があり、線充填指数が上がると透過画像鮮明度は小さくなる関係にある。透過画像鮮明度が小さいことは、隠蔽効果が高いことを意味する。したがって、線充填指数が4.5以上であれば良好な遮蔽効果が得られ、ギラツキの発生を十分に抑制できることがわかる。
【0076】
<試験例2>
大粒子の配合比率を50%として、試験例1と同様にして実施例1の表面処理フィルムを作製した。また、塗工層に鏡面ロールを押し付けて圧縮する工程を行なわなかった点以外は、実施例1と同様にして実施例2の表面処理フィルムを作製した。実施例1,2の表面処理フィルムはともに、光拡散層における透光性微粒子の線充填指数は4.5以上、体積充填率は25%以上であり、ギラツキ抑制効果を有しているものであった。
【0077】
(1)拡散光強度の測定
実施例1および実施例2の表面処理フィルムに対して各拡散角度の拡散光強度を測定した。図6に示すように、表面処理フィルムに対して垂直に入射する光A1に対して、出射後に角度θの方向に進行する光A2の強度をゴニオフォトメーター(商品名:GC5000LT、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。角度θが光の拡散角度であり、光A2の強度が拡散光強度である。
【0078】
図7は、実施例1および実施例2の表面処理フィルムの拡散角度に対する拡散光強度の測定結果を示す。実施例1の表面処理フィルムの方が、実施例2の表面処理フィルムより広角散乱効果を有する広視野角の表面処理フィルムであることがわかる。
【0079】
(2)光学顕微鏡写真
図8は実施例1の表面処理フィルムの光拡散層の光学顕微鏡写真を示し、図9は実施例2の表面処理フィルムの光拡散層の光学顕微鏡写真を示す。図8と図9とを比較するとわかるように、図8では透光性微粒子はほぼ同じ明るさで写っているが、図9では明るく写っている透光性微粒子と暗く写っている透光性微粒子とが存在する。これは透光性微粒子の焦点が同一平面上にないため、透光性微粒子の明るさに差が生じていると解される。すなわち、図8に示す実施例1では、透光性微粒子は光拡散層の上下方向の配置が均一化されているのに対して、図9に示す実施例2では、透光性微粒子は光拡散層の上限方向の配置が均一ではない。このような構成の違いが原因で、上記に示したような広角散乱効果の違いが生じていることがわかる。
【符号の説明】
【0080】
100 光学フィルム、101 基材フィルム、102 光拡散層、103 透光性樹脂層、104 透光性微粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性樹脂と透光性微粒子とを含む光拡散層を有し、
前記光拡散層中における前記透光性微粒子の体積充填率をP(%)、前記光拡散層の層厚をl(μm)とした場合に、下記の式(1)で規定される線充填指数A(μm)が4.5以上である、表面処理フィルム。
A=l×(P/100) 式(1)
【請求項2】
前記光拡散層は、前記透光性微粒子の体積充填率が25%以上である、請求項1に記載の表面処理フィルム。
【請求項3】
前記光拡散層において、前記透光性樹脂と前記透光性微粒子との屈折率の差が0.02〜0.05である、請求項1または2に記載の表面処理フィルム。
【請求項4】
前記透光性微粒子は、第1透光性微粒子と、前記第1透光性微粒子より重量平均粒径が大きい第2透光性微粒子とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理フィルム。
【請求項5】
前記第1透光性微粒子に対する前記第2透光性微粒子の重量平均粒径の比率が1より大きくかつ8以下である、請求項4に記載の表面処理フィルム。
【請求項6】
前記光拡散層の層厚が9μm以上30μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理フィルムを製造する方法であって、
前記光拡散層は、前記透光性樹脂および前記透光性微粒子を含有する塗工液を塗工して塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層の表面に平坦面を押し当て前記塗工層を圧縮する圧縮工程と、前記塗工層を硬化する硬化工程とを有する方法により形成される、表面処理フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−198312(P2012−198312A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61071(P2011−61071)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】